公文書館だより 28号

公文書館だより 28号

読み仲間をつくろう

昭和34年当時移動図書館(公文書館所蔵『県のたより写真アルバム』から)

子供たちは到着したばかりの移動図書館の前で、草の上に座り込んでいます。

お気に入りの本を探しているのでしょうか。大人たちもちょっと嬉しそう・・・。

写真は、昭和34年当時の県内の様子です。

県立公文書館では文書だけでなく、こうした写真も収蔵しています。

記録を伝える

この写真は、神奈川県の移動図書館(ブック・モービル)です。昭和30年から昭和59年まで、県内の読書施設のない市町村を定期的に巡回しながら図書館の普及活動を行いました。写真の「さがみの号」には約1、200冊の貸し出し用図書のほか、映写機、レコード・プレーヤーなどが積まれ、夜間照明も備えられていました(『神奈川県立図書館50年の歩み』から)。

写真は、『県のたよりNo8』(昭和34年3月)に掲載されたもの。公文書館の書庫で保管されているオリジナル写真の台紙には、「読み仲間をつくろう」「津久井郡城山町における移動図書館」という手書きのメモが添えられています。

記録のリサイクル ー公文書館で記録は生き返るー

リサイクルというと廃棄物や不用品の再利用、あるいは環境問題などを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、リサイクルできる対象にはいわゆる物以外にも、記録や情報があります。ここでは公文書館の役割を「リサイクル」という視点からご紹介しましょう。

記録の目的

公文書館には様々な記録が保存されています。県の機関で作成・取得された公文書や、県内の個人のお宅に保管されていた昔の書類、例えば江戸時代のパスポート(往来手形)や手紙、明治時代の家計簿や教科書、学習帳、昭和戦前期の写真など、その種類や時代は実に様々です。

しかし、これらの記録は公文書館で保管するために作られたものではありません。公文書は県の事務や事業を実施するときの計画・執行の記録であり、行政事務を適切に施行し説明責任を遂行するために作られるものです。江戸時代の往来手形は人々が関所を通過するときに欠かせない旅のパスポートでした。家計簿は家の出費を計画的にするための備忘の記録であり、学習帳は勉強の効果を上げるための帳面として使われたものです。それぞれの記録は、それぞれの目的のために作られたものであり、当初の目的が終わればそれらの多くは用済みとなり、人々から忘れ去られてしまうか廃棄されてきました。

新たな役割

ところが記録の中には、作成当初の目的が果たされても、時を経ることにより新たな役割を持つようになるものがあります。それらには、公文書館で保存されるときある共通の特徴が現れます。それは記録のリサイクルということです。

公文書館はこうした記録をアーカイブズ(記録資料)と呼び、平成5年の開館以来、作成元の種類あるいは作成時期を問わず、持続的な価値を持つと考えられる記録を、見出だし、収集し、整理し、保存して、県民の皆様に提供しています。これが、公文書館の記録のリサイクルです。

公文書館でリサイクルされた記録は、人々や組織の活動、出来事を後世に伝えるという重要な役割のもと、公文書館での閲覧はもちろんのこと、公文書館が開催する展示や講座などで活躍を始めます。

神奈川の歴史をたどる資料がたくさん保管されている公文書館に、皆さんも一度足を運んでみてはいかがでしょうか。

津久井郡役所「行政裁判関係書類」津久井郡役所『行政裁判関係書類』 明治29年(郡ー11-4)

 

企画展示

鉄道がかさねた日々2 開催期間 9月15日から12月16日まで

日本最初の鉄道が新橋・横浜間に開業したのは、明治5(1872)年のことでした。本年は鉄道開業140周年にあたり、神奈川県の鉄道にとっても記念の年です。

本展ではそうした鉄道の歴史を、当館収蔵の歴史資料である公文書や古文書、私文書などにより紹介します。昨年実施した「鉄道がかさねた日々」展に引き続き、今回は駅・車両・路線・工事・事故の記録などから、明治から昭和にいたるまでの県内の隠れた鉄道の歴史を振り返ります。

和田町駅付近の踏切相模鉄道 和田町駅付近の踏切(昭和40年)神奈川新聞社所蔵

内容別のテーマは次のとおりです。 

(1)東神奈川駅ができるまで

(2)駅名はなぜ「大雄山」なのか?

(3)鉄道省の海の家

(4)戦時下の路面電車

(5)超特急への挑戦

(6)歩道上に張り出した旧桜木町駅

(7)桜大線が根岸線になるまで

(8)和田町四号踏切と第三帷子川橋りょう

(9)バスが燃えて横浜市電は…

(10)横浜市電井土ヶ谷線の開通

(11)横浜市のトロリーバス

(12)京王相模原線の橋本延伸

当館1階の展示室で開催しております。皆さまのお越しをお待ちしております。

 

Let’ Try! こもんじょ 

当館で保存している古文書を紹介しながら、その読み方などを解説するコーナーです。当館ホームページ「古文書解読Web講座」にも掲載していますので、合わせてご覧ください。

初級2 

小塩家文書「往来手形」から

往来手形

今回取り上げる資料は、「往来手形」とよばれるものです。これは、江戸時代、庶民が旅行をする際に必ず携帯した身分証明書になります。1行目の「表題」部分を読んでみましょう。
表題

1文字目の差「差」は、三画目の横棒が省略されていますが、それ以外は楷書と同じです。

2文字目の上「上」は、楷書では二画目の横棒が一画目に書かれている上に、「ヽ」になっているのでわかりづらいかもしれません。

3文字目の申「申」は、「中」と似ていますが、資料最終行の「御役人中様」にあるように、「中」は楷書と同じ形で書かれることが多いです。「差」も「上」も「差上申・・・」という表題に多用されることがわかれば、判断しやすいです。

4文字目の手「手」は楷書と同じですが、この資料の「手」は縦棒が若干短くなっているので、注意しましょう。

5文字目の形「形」は、部首のさんづくり(さんづくり)がわかれば判断できます。

6文字目ののは「之」、7文字目のことは「事」で、いずれも楷書と同じです。

以上で表題は「差上申手形之事(さしあげもうすてがたのこと)」となります。

この往来手形は、一般的な往来手形と違い、関所を通行するために記されたもので、手形所有者の名前や檀那寺(だんなでら)が省略され、通行者の人数と旅の目的が記されているだけになっています。

ミニ展示

「公文書館資料にみる大正100年」 開催期間 10月5日から12月27日まで

今年は大正元(1912)年から数えてちょうど100年に当たります。多くの書籍や雑誌などで「大正100年」と銘打つ特集が組まれています。

公文書館にはこの時期の資料も多数収蔵されており、そこから明らかとなる当時の状況や未発見の事実等も少なくありません。そこで、平成24年度第3回のミニ展示では、「公文書館資料にみる大正100年」と題して、大正という時代の諸相を、前期と後期に分けて紹介していきます。

前期は「神奈川から描く大正の始まりと終わり」と題し、大正天皇の即位と崩御を取り上げ、それにかかわる様々な事象を当館所蔵の歴史資料である公文書や古文書・私文書などを用いることで、当時の人々が大正天皇の即位と崩御をどう捉え、そして行動していたのかを描きます。

後期は「地方名望家にみる大正」と題し、地域の政治・経済面の指導者であった「地方名望家」が大正という時代をどのように生きたのかを紹介します。

写真の資料は大正天皇即位時に大綱村(現在の横浜市港北区)の飯田助大夫が新たな時代への期待を込めた所感を述べたものです。この他にも地域社会の様子や、関東大震災、公害問題などへの取り組みを展示する予定です。

海山集

「海山集(大正4年11月号)」ID2200710062 当館寄託:飯田家文書

展示のご案内

企画展示

  • 鉄道がかさねた日々 2 12月16日(日曜日)まで
  • 「春・夏・秋・冬」記録のはなし 1月17日(木曜日)から3月31日(日曜日)まで

ミニ展示

  • 公文書館資料にみる大正100年 10月5日(金曜日)から12月27日(木曜日)まで
  • 関口家文書にみる江戸時代 村の事件 1月5日(土曜日)から3月31日(日曜日)まで

常設展示 

「記録が歴史を語るまで」 3月31日(日曜日)まで

  • 歴史的公文書の保存
  • 古文書・私文書の整理から公開へ
  • 歴史資料所在調査の概要
  • 資料の修復 

講座のご案内

  • アーカイブズ出張講座(定員100人) 10月27日(土曜日)10時30分から16時まで 

<終了しました>

横浜市長浜ホール(横浜市金沢区)

※往復はがきかメールで10月15日までにお申し込みください。

  • 古文書解読入門1日講座 (定員50人) 12月2日(日曜日)
  • 古文書解読入門講座 (定員140人) 2月3日から3月10日各日曜日全6回

 

館利用のご案内

利用時間 閲覧室 午前9時から午後5時まで

会議室 午前9時から午後9時まで

利用方法 閲覧室に開架されている資料は自由に閲覧できます。また、書庫内の資料は受付に請求してください。展示は無料です。ご自由にご覧ください。

このページのお問い合わせ先
神奈川県立公文書館 資料課
TEL:045-364-4461
FAX:045-364-4459