公文書館だより 35号

公文書館だより 35号

写真でみるありし日のシルクセンター 蚕業センター

シルクセンターは昭和33年に内山岩太郎知事(当時)の発案で開館し、日本の蚕業をアピールする場となりました。また、昭和42年には複数の県蚕業機関を統合する形で蚕業センターが発足し、養蚕に関する様々な業務が行われました。

シルクセンター開館

シルクセンター開館 (広報課撮影写真ID:4199203291)

蚕業センター建物

蚕業センター建物(広報課撮影写真ID:4199204772)

蚕業センターの仕事

蚕業センターの仕事 (広報課撮影写真ID:4199204544)

企画展示 蚕とかながわの人々

開催期間 9月24日(土曜日)から平成29年1月15日(日曜日)

養蚕は、昭和の中期頃まで、神奈川県中央部から丹沢地域を中心として、全県的に盛んに行われていた一大産業でした。とりわけ明治以降急激に広まり、神奈川県としても様々な取組みに力を注いできました。このように以前は隆盛を誇った養蚕ですが、残念ながら現在では廃れてしまいました。とはいえ、かつて県域に暮らしていた多くの人々にとって、蚕を飼い、そこから生糸をとることは、かけがえのない大切な営みだったことに間違いありません。

おりしも今年は、明治29(1896)年に横浜に生糸検査所が設立されてから、ちょうど120年を迎えます。そこで今年度の企画展示では、神奈川県の人々の暮らしを支えた養蚕について、当館が収蔵している古文書や歴史的公文書などを主に用い、その歴史や文化、県としての取組みをご紹介します。

1 江戸時代の養蚕

江戸時代には相模国津久井県や愛甲郡など山間部を中心に、養蚕が行われていました。また、全国各地で養蚕書とよばれる技術指南書が次々に刊行され、神奈川県内にもそのうちのいくつかが残っています。

養蚕秘録

養蚕秘録 上巻 沢井村石井達也家文書 (ID2200716752)

2 横浜開港と海外輸出

幕末の安政6(1859)年6月に横浜が開港すると、生糸は輸出品首位の座に躍り出ます。海外輸出用の生糸は、国内各地から絹の道を通って横浜に集められました。明治29年には、国の検査機関である横浜生糸検査所が発足しました。

3 生産の拡大

明治政府は農家に対し、盛んに養蚕を奨励しました。神奈川県内でも昭和初期に生産のピークを迎えます。しかし、関東大震災や昭和恐慌による打撃などで次第に衰退の途をたどります。昭和30年代後半以降、養蚕農家の相次ぐ廃業により、大幅な後退を余儀なくされました。

養蚕証票

養蚕証票・製紙証票 多摩村平楽家文書 (ID2200451789)

4 暮らしの中の養蚕

「お天気虫」ともいわれる蚕の飼育は天候や温湿度に左右され、病気に対する有効な予防法も少なかった頃に養蚕に従事していた人々は、良好な蚕が育つように祈るしかありませんでした。このコーナーでは、繭の豊作の願いを、様々なモノに託し信仰の対象としてきた様子や、飼育する上での過程や工夫、女性の活躍など、資料を通して迫っていきます。

蚕糸広報 養蚕婦人の歌

昭和41年度から43年度蚕糸広報 養蚕婦人の歌 (ID1200013794)

5 神奈川県の取組みと出来事

このコーナーでは、神奈川県として養蚕業にどのように取り組んできたのか、また、養蚕に関してどのようなトピックがあったのかをご紹介します。

展示場所は、当館1階展示室で、入場は無料です。ご自由にご覧ください。なお、展示期間中、展示解説も実施します。10月22日(土曜日)、11月19日(土曜日)、12月17日(土曜日)、1月14日(土曜日)の、いずれも14時から1時間程度の予定です。事前申込みは不要です。

ご来館をお待ちしております。

記録で見る相模鉄道の百年

―アーカイブズ講座で取り上げた事例から― 

本年は、当館の最寄駅がある相模鉄道の前身である神中軌道株式会社が、軌道敷設の特許を得た年から100年に当たります。そこで、8月に開催したアーカイブズ講座では、当館所蔵資料を活用して相模鉄道の歩みを紹介しました。

1 「相模鉄道」と「神中軌道」

現相模鉄道株式会社の前身は、旧「相模鉄道株式会社」と「神中軌道株式会社(後に神中鉄道株式会社に改称)」で、両者はともに大正6(1917)年にほぼ同じ規模と目的をもって設立されました。

両社ともに、折からの鉄筋コンクリートに対する需要の高まりを受けて相模川の砂利の運搬・販売を主体に経営しましたが、昭和18年4月、相模鉄道が神中鉄道を吸収合併しました。その後、太平洋戦争の推移により、昭和19年6月、旧相模鉄道部分が国に強制買収されました。これが現在のJR東日本の相模線です。

このように、旧相模鉄道は「名」を、神中鉄道は「実」を残しているといえるでしょう。

2 神中軌道敷設特許への道のり

大正初期、県内では鉄道網が急速に普及しましたが、県央部の交通機関は未発達でした。現在海老名市に属する有馬村の小学生が箱根大涌谷へ遠足に行くには、社家の渡船場を午前2時に出発し、帰りは夜の10時でした。農作物の輸送にも支障が大きく、鉄道敷設への要望が高まりました。そこで、大正4年6月25日、「神中軌道敷設特許請願書」が、橘樹郡役所及び神奈川県庁を経由して鉄道院に提出されました。県が添付した副申には、軌道敷設が必要な理由が詳しく述べられています。

この請願書の提出者は、どのような人たちだったのでしょうか。発起人資産信用調を見ると、職業や資産保有状況が判明します。

請願を受けた内務省では、陸軍省と協議を行い、同省から軌道を敷設する道路の拡幅を求められ、これを了承するという一幕もありました。

3 開業へ向けての苦労

大正5年8月22日、念願の特許状が下付されました。軌間は762ミリのナローゲージ、レールの重さは1メートル当たり9キロと、森林鉄道か、遊園地の豆汽車レベルです。時速制限は13キロでした。

大正6年12月15日、神中軌道株式会社が設立されましたが、当時は第一次世界大戦による好況期で、諸物価が高騰し鉄材が入手できず、測量技術者の不足から設計の適任者が得られない状況に陥りました。

開業までの間、線路の規格変更や関東大震災による工事遅延もありましたが、大正15年5月12日、ついに二俣川―厚木間の営業が開始されました。運転本数は一日上下各7本、所要時間は44分、運賃は59銭でした。

4 多様なアーカイブズの世界

今回の講座は、主として県史写真製本「運輸省文書課資料」を基に構成しましたが、それ以外にも、歴史的公文書、図書、私文書、さらには今回紹介した「神奈川ニュース」のような映像資料など、様々な資料を参照しました。資料の種類によって、異なった視点から歴史的事実を調べることができます。

当館が所蔵する70万点余の資料は、全て資料検索システムに登録されていますので、当館ホームページの「アーカイブズの検索」を使って資料を探すことができます。

神中軌道敷設特許状案

「神中軌道敷説特許状案」(県史写真製本「運輸省文書課資料」ID220015005)

二俣川駅

「昭和30年代の二俣川駅」(「相模鉄道二俣川駅開業八十周年記念展示写真」請求番号K686-0-251)

機関車

「開業時の八輪連結タンク機関車」(「相鉄五十年史」請求番号K686-0-7)

ミニ展示 入営へのそなえ ー徴兵保険ー

戦前・戦中期の日本には徴兵保険という保険商品が存在しました。この商品は、その名が示す通り、徴兵されたら保険金が支払われるというものでした。

当時の日本は、国民に兵役義務がありました。徴兵検査に合格し入営する場合、入営者の徴兵期間における収入はなくなります。また、入営に掛かる諸経費の一部は、個人負担でした。これらの負担は、入営者およびその家族の生活を圧迫するものでした。この現状を目の当たりした人物がいます。滋賀県武佐(むさ)村(現、滋賀県近江八幡市)で兵役事務を担当していた成田文吉です。成田は、入営者と非入営者の経済的な不均衡をなくすために徴兵保険の必要性を説きました。その構想を基に設立されたのが徴兵保険株式会社(明治30年(1897)10月5日設立、翌31年5月1日営業開始)です。同社の設立以後、徴兵保険会社が乱立するなど、徴兵保険事業は隆盛を極めます。しかし、その多くは資金繰りの問題などから営業停止・解散に陥りました。このような徴兵保険事業は、戦後、徴兵制度の廃止とともに終焉を迎えることとなります。

今回、ご紹介する資料は、前述の徴兵保険株式会社の代理店に掲げられていたと考えられる看板です。会社設立当初の代理店の数は230店舗でしたが、昭和20年(1945)には、約9200店舗まで増加しました。店舗数からも、徴兵保険事業の隆盛をうかがうことができます。残念ながら今回ご紹介した看板は、来歴不明のため、どこの代理店で掲げられていたものなのかは不明ですが、当時の世相を伝える貴重な資料といえます。

徴兵保険(株)看板

「徴兵保険株式会社代理店[木製看板]」平成27年度に富濱利郎氏から寄贈していただきました。

利用案内

当館では、県が作成した歴史的に重要な文書や、神奈川に関わりのある古文書、図書などを収集、保存しています。 

これらの資料は、閲覧室でご覧いただくことができます。また、年間を通じ、さまざまな形で資料を展示し、皆様のご来館をお待ちしています。

展示のご案内

企画展示

「蚕とかながわの人々」 平成29年1月15日(日曜日)まで

常設展示

「公文書館の仕事紹介」 平成29年3月31日(金曜日)まで

収蔵資料展示

「古文書・公文書は面白い」 平成29年1月28日(土曜日)から3月31日(金曜日)まで

講座のご案内

古文書講座応用編(定員140名)

平成28年11月6日(日曜日)から12月4日(日曜日)の各日曜日(全5回)

館利用のご案内

(利用時間)

閲覧室 午前9時から午後5時

会議室 午前9時から午後9時

(休館日)

月曜日、国民の祝日(月曜日と重なる場合は翌日)、年末年始12月28日から1月4日

(利用方法)

閲覧室に開架されている資料は自由に閲覧できます。また、書庫内の資料は受付に請求してください。

展示見学は無料です。ご自由にご覧ください。

自治会や学校など各種団体の見学も随時受け付けています。

会議室は、施設利用予約システムでお申し込みください。

このページのお問い合わせ先
神奈川県立公文書館 資料課
TEL:045-364-4461
FAX:045-364-4459