公文書館だより 30号(P6からP8まで)
神奈川県立公文書館 開館二十周年記念事業のご案内
神奈川県立公文書館は、平成5年11月、都道府県の(公)文書館としては全国で21番目の公文書館施設として開館し、平成25年度に二十周年を迎えることになりました。
当館では、開館二十周年を記念し、次の特別展示及び講演を予定しております。
開館二十周年記念特別展示
「記録遺産は時を越えて かながわのアーカイブズ」
- 場所 神奈川県立公文書館 1階 展示室
- 期間 平成25年12月14日(土曜日)から平成26年3月30日(日曜日)まで
(月曜日、祝日及び月曜日が祝日の場合の翌火曜日は休館) - 時間 9時から17時まで
- 入場無料
今回の二十周年特別展示では、まず人々がどのように古文書や行政文書などの記録類(アーカイブズ)を保存・管理してきたのかを、江戸時代から戦後を対象にみていきます。
下の写真は皆瀬川村(現山北町)で明治十年代の戸長交代の際に作成された公文書の引継目録です。
この中には戸長役場で作成した文書のほかに、「万治三年検地帳」のような江戸時代はじめに作られた土地の基本台帳も存在しています。
当時は市町村合併や町村長交代の際などに必ずこのような目録が作られており、人々が記録の保存を重視した姿勢が見てとれます。
「村務引渡書」当館寄託井上家文書2199401385
次に、昭和42年の神奈川県史編さん事業から公文書館開館に至る当県における記録保存のあり方について取りあげます。
昭和42年に始まった神奈川県史編さん事業は、県下の古文書を調査するだけでなく、県機関が作成した行政文書も収集しました。この間に「文書館」的機能を持った施設の建設を求める市民の声は高まっていました。
下の写真は、これらの要望書を綴ったものです。
「公文書館設置要望関係書類」H15-235-02
さらに、かながわの「あの時」を振り返ると題して、当館が収蔵する約70万点の記録遺産から、どのように活用するのかを、様々な事例から紹介します。
最後に、平成23年3月に発生した東日本大震災で被災した水損公文書の修復など、記録を未来に残す修復技術の紹介も行います。
開館二十周年記念特別講演
「近現代史研究とアーカイブズ(仮題)」
加藤陽子氏
- 日時 平成26年2月22日(土曜日)14時から16時まで
- 場所 神奈川県立公文書館 2階大会議室
内閣府公文書管理委員会委員であり、ベストセラーとなった『それでも日本人は戦争を選んだ』の著者である加藤陽子東京大学大学院教授を講師に迎えて記念講演を開催します。
講演会への参加申し込み方法等の詳細については、当館ホームページやポスター、チラシ、県のたより等でお知らせします。たくさんの方のご参加をお待ちしております。
公文書館資料徹底利用法
アーカイブズ講座で取りあげた事例から
公文書館で収蔵している資料は、1 歴史的公文書、2 古文書・私文書、3 図書・行政刊行物が中核をなしていますが、それ以外にも、写真、マイクロフィルム、ビデオテープ類などがあります。ここでは、先日開催しましたアーカイブズ講座で取り上げた事例を題材に、公文書館資料の利用方法の例をご紹介します。
朝鮮戦争中の昭和25年11月15日、日本人船員が運航する船舶「LT636号が朝鮮で触雷・沈没し、多数の日本人が死亡した事件を調べているが、関係資料はあるか。
このケースでは、調査内容が具体的なので、まず、情報検索システムでキーワード(この場合は「LT636号」)で検索します。すると、2件の歴史的公文書がヒットしますので、受付に閲覧を請求します。
これらの文書から、殉職者、生存者の氏名、年齢や各種の給付金支払、葬祭など、県当局の事故への対応状況がわかります。
また、これだけの大事故なので、新聞、県公報などに掲載されていることも考えられますから、当時の神奈川新聞や県公報を、閲覧室にあるマイクロフィルムで探します。ただし、当時この事故は一般には秘密にされていたため、載っていませんでした。
LT636号遭難に関する歴史的公文書
(写真左:昭和30年 駐留軍関係船員事故苦情関係綴 1200418060、写真右:昭和25年11月起 LT636号関係綴 1199612549)
昭和39年の東京オリンピックの時に神奈川県の果たした役割を知りたい。
このときは、県内でヨット、カヌー、サッカー、バレーボールの4種目が行われ、大磯、相模湖町に選手村の分村が設けられました。
県でも、実行委員会、オリンピック課を設置し、準備にあたりました。
したがって、これらの組織が作成した文書が歴史的公文書として多数保存されています。
それに加え、行政刊行物・図書類も多数収蔵しています。これらの資料は、結果を要領よくまとめてありますので、オリンピック開催に向けての準備状況の概要をつかむには適しています。一方、結果に至る検討過程については、歴史的公文書や私文書に手掛かりがあることが多いものです。
一例をあげると、刊行物には県内の聖火リレーのコースを試走して多くの教訓が得られたとされていますが、具体例(引継ぎに時間がかかる等)は歴史的公文書を見ないとわかりません。
これらを関連付けながら読み解いていくことで、かなりのことがわかってきますが、イメージを手っ取り早くつかむためには、文字資料よりも写真や映像の方が優れている場合もあります。
写真資料としては「広報課撮影写真コレクション」、映像資料としては「神奈川ニュース県政版」がそれぞれ代表的なものですが、いずれも東京オリンピック関連のものがあります。これらは、閲覧室に目録が備え付けられていますので、興味のあるものを選んで請求することができます。
聖火リレー試走の模様(広報課撮影写真コレクションより)
聖火リレー本番の沿道の模様(広報課撮影写真コレクションより)
以上2つの例でご紹介したように、公文書館で収蔵する資料は多様であり、出典をたどることで関連する資料を次々と探し出すこともできます。
これを機会に、アーカイブズの世界に足を踏み入れてみませんか。
公文書館設立20周年を迎えて
館長 古藤哲朗
公文書館が緑豊かな横浜市旭区中尾に平成5年11月に開館し、今年で20周年を迎えました。
開設時、狸がいたという土地は、今でも、多くの木々に囲まれ、鳥のさえずりが聞こえます。公文書館が風景の一部となり、人々に暖かく受け入れられていることをうれしく思います。
さて、公文書館ですが、神奈川における公文書館開設は、昭和57年に神奈川県情報公開推進懇話会が、知事に提出した「神奈川県の情報公開制度に関する提言」に、情報公開制度充実のための課題として、「公文書館新設」の提案が含まれていたことに始まります。
この提案は、昭和62年に交付された公文書館法に5年先行するものであり、今、振り返って考えてみても、懇話会が全国的にも早い時期から、「公文書館制度を情報公開制度とセット」で考えていたことがうかがわれます。
現在、公文書館は、
- 歴史資料として重要な行政文書、古文書等の記録類を継続的に収集
- 保存し
- 県民共有の記録遺産(アーカイブズ)として後世に伝え
- それらを広く閲覧、公開すること
を目的に、書庫、閲覧室で70万点ほどの歴史資料を保存し、これまでに35万人を超える方が閲覧室や展示室を利用しています。また、1万人を超える方にアーカイブズ講座等を受講していただいています。
「市民と行政が情報を共有すること」の重要性を認識し、そのために、「行政機関の職員は経緯も含めた意思決定に至る課程」や「事務、事業の実績を合理的に裏づけ、検証」することができるよう文書を作成すること、そして、「公文書館が、保存、公開すること」は、健全な民主主義の根幹を支える仕事です。
職員一同は、次の20年に向け、公文書館の役割を改めて認識し、より多くの方に公文書館を知ってもらい、利用していただけるよう、力を合わせて進んでまいります。引き続き、皆様からのご意見、ご支援をお願い申しあげます。
開館20周年記念事業
特別展示
- 「記録遺産は時を越えて かながわのアーカイブズ」
12月14日(土曜日)から3月30日(日曜日)まで
特別講演
- 「近現代史研究とアーカイブズ(仮題)」
平成26年2月22日(土曜日)14時から16時まで
展示のご案内
企画展示 12月1日(日曜日)まで
- 旅館とホテルの文化史
ミニ展示 12月22日(日曜日)まで
- 村田五三郎の日記 大正時代の日常生活
常設展示 平成26年3月30日(日曜日)まで
- 記録が歴史を語るまで
- 公文書館てなに?
- 記録の整理から公開へ
- 行政文書から歴史的公文書へ
- 歴史資料所在調査事業
- 資料の修復
講座のご案内
- 古文書解読応用講座(定員140人)
2月16日、2月23日、3月2日の各日曜日(全3回)
館利用のご案内
- 開館時間 午前9時から午後5時まで
- 休館日 月曜日、国民の祝日(月曜日と重なる場合は翌日)、12月28日から1月4日まで
- 利用方法 閲覧室に開架されている資料は自由に閲覧できます。また、書庫内の 資料は受付に請求してください。
- 展示見学は無料です。ご自由にご覧ください。
- 自治会や学校など各種団体の視察・見学(無料)も随時受け付けています。まずはお電話ください。
外壁等改修工事のお知らせ
3月上旬まで外壁等の改修工事を行っています。通常より駐車スペースが少ないため、ご来館の際には公共交通機関をご利用ください。また、大きな音や臭気がでたりすることがあります。御理解と御協力をお願いいたします。
このページのお問い合わせ先
神奈川県立公文書館 資料課
TEL:045-364-4461
FAX:045-364-4459