【平成25年度第2回企画展示】旅館とホテルの文化史

H25第2回企画展示

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展示概要

神奈川県内には様々な観光名所が存在しています。例えば、鎌倉や大山は信仰の地として、箱根や湯河原は温泉地として、江戸時代から現在に至るまで賑わいをみせています。こうした観光地を訪れる旅人の憩いの場として、かつては街道の宿場町、現在は各地の旅館・ホテルが発展してきました。
このような中で旅館・ホテルは宿泊の場としてだけではなく、政治的な会合が行われ、かつ新たな文化の発信源ともなりました。今回の展示は、そうした旅館・ホテルの役割を、当館が収蔵する60万点に及ぶ歴史的公文書や古文書・私文書から紹介していきます。

展示構成

第1章 江戸時代の宿駅と行楽

当館収蔵資料である「神奈川宿本陣石井家文書」から「神奈川本陣」関係資料を取り上げ、本陣がどのように利用されてきたかを紹介します。
また、現在の神奈川県域で江戸時代に信仰・物見遊山の対象として多くの人が訪れた大山、鎌倉、江ノ島、箱根の資料を取り上げ、当時の人々の行楽の様子を紹介します。

第2章 近代の観光文化と旅館・ホテル-箱根を中心に-

明治時代のリゾート地として形成されつつあった当時の状況や、外国人招致のために発足した「神奈川県外人招致委員会」及び「国立公園」制定運動の歩みを紹介します。また、第二次大戦中、ソ連のマリク駐日大使と広田弘毅首相の秘密会談が行われた箱根の強羅ホテルに疎開していたソ連大使館員を、当時の県警察部が尾行していたこと等も紹介します。

第3章 湯河原箱根屋旅館の世界

箱根屋旅館は宝暦元年(1751)頃から当地で湯屋を営んでおり、著名な国学者であった小田原藩士吉岡信之も訪れた湯河原の代表的な旅館のひとつでした。
本章は当館の所在調査により発見された貴重な資料から、江戸時代から昭和期までの旅館の姿を紹介します。

第4章 文化財としての旅館・ホテル

宿泊という非日常の時間と空間を演出するために、デザインや造作に凝った結果、時代を超える普遍性を獲得した建造物として今に残り、さらには後世に残す価値のある「文化財」として継承していくべきものとしての旅館・ホテル建造物を紹介します。

第5章 文化(創作物)を生み出す場としての旅館・ホテル

宿泊施設である旅館・ホテルが文学や美術といった文化的な創作物が生み出される「場」としてかかわった事実として、『鞍馬天狗』の生みの親である大佛次郎とホテル・ニューグランドの事例や、京都画壇の巨匠である竹内栖鳳と天野屋旅館の事例をあげて、文化史との接点を明らかにします。

第6章 学童集団疎開と旅館・ホテル

昭和19年夏、サイパン陥落を目前にして、全国13都市の学童を地方に疎開させることになりましたが、神奈川県では政府案を変更し、県内三市の学童すべてを神奈川県内で受け入れることにしました。その結果、県内の旅館とホテルは、集団疎開先として大きな役割を果たすことになりました。当時の状況を裏付ける当館収蔵資料「葛野重雄氏旧蔵資料」を中心に、当時の状況を語る資料を紹介します。

第7章 大正天皇の崩御

葉山御用邸で療養していた大正天皇は、大正15年12月頃より病状が悪化し、やがて葉山の地で崩御します。そのため、皇族はもとより内閣の閣僚や陸海軍・枢密院関係者等が、逗子・葉山の旅館・ホテルに滞在していました。そうした政治の舞台としての実相を明らかにします。

第8章 2・26事件で襲われた旅館

昭和11年の2・26事件において、東京以外で唯一の舞台となったのが、湯河原の旅館でした。この老舗旅館伊東屋の元別館光風荘には、襲撃の対象となった前内大臣の牧野信顕伯爵が静養のため家族使用人とともに滞在しており、2月26日早朝に襲撃を受けました。この事件について、当館収蔵資料「神奈川県特高関係史料」から、当時の状況を明らかにします。

第9章 皇室と旅館・ホテル

当館収蔵資料である「皇室関係書類綴」から、当時の皇太子同妃殿下の昭和38年第19回冬季スケート競技会行啓及び、昭和39年のオリンピック行啓に係る旅館やホテルの記録、そして、明治26年に箱根に設置した「宮ノ下御用邸」が、昭和21年に富士屋ホテルの別館に払い下げられ、「菊花荘」となって現在に至る過程を紹介します。

第10章 東京オリンピックと旅館・ホテル

昭和39年(1964)の東京オリンピック開催に際し、大きな課題のひとつが外国人観覧客への接遇でした。東京同様、オリンピック競技の会場にもなった神奈川は対応に追われますが、この時期のさまざまな対策は、後の外国人観光客誘致増大と県民の公衆道徳の向上の契機となっていきます。その中で、オリンピック開催に向けたホテルや旅館建設の過程や、外国人を迎えるために県や宿泊施設が行った施策を当館所蔵資料から紹介します。

展示期間・場所等

展示期間・場所等
期間 平成25年8月24日(土曜)から平成25年12月1日(日曜)まで
休館日 毎週月曜日と祝日及び月曜が祝日の場合の火曜日は休館
時間 午前9時から午後5時
展示場所 神奈川県立公文書館1階展示室(横浜市旭区中尾1-6-1)
(相鉄線二俣川駅から徒歩17分、または相鉄バス「運転試験場循環」で「運転試験場」下車徒歩3分)
入場料 無料