神奈川県 神奈川県史 資料編12 近代・現代(2)政治・行政2 相澤氏は明治十八年から昭和三十七年までの七十八年間日記を書きつづけられた 近代資料としてすぐれた歴史的価値をもっている 写真は昭和二十年八月十五日の部分である(本文六三一ページ参照) 相澤菊太郎日記 相模原市元橋本 相澤栄久氏蔵 敗戦直後に米軍に接収された横須賀軍港の一部である 手前に特殊潜航艇が放置されたままになっている この写真は米兵によって撮影されたものである 敗戦直後の横須賀軍港 横浜市神奈川区 斎藤秀夫氏蔵 横須賀市のやみ市 横浜市神奈川区 斎藤秀夫氏蔵 敗戦により県民は生活物資の不足という大津波にのまれ このため各地にやみ市が横行した これは敗戦直後に横須賀市に出現したやみ市の様子である 米軍政部の指令には 教職員がすべて指令文書に押印することになっていた これは湘南中学校(現湘南高校)の一例である(資料一五七 本文四三〇ページ参照) 米軍政部の教育に関する指令文 県立湘南高等学校蔵 左は 神奈軍川政部より川崎市に宛てられた「市政月報」提出指令書であり 右は 川崎市がそれに基づいて作製した報告書の一例である 川崎市市政月報提出に関する指令書 川崎市市政月報 川崎市役所蔵 神奈川新聞社が昭和三十年五月現在で調査した町村合併の状況(資料二三二 本文五八一ページ参照) 神奈川県の町村合併の様子 神奈川新聞社蔵 横須賀市水爆被害実情報告大会 東京都江東区 広田重道氏蔵 ビキニ環礁水爆実験は 県内漁業関係者に深刻な問題を投げかけた(資料二八一本文九六五ページ等参照) 水爆実験を契機として 県内には原水爆禁止を求める平和運動が育ち始めた この横須賀平和の会は 先駆的役割を担った(資料二八三 本文九八三ページ参照) 横須賀平和の会結成大会ポスター 東京都江東区 広田重道氏蔵 公害反対神奈川県民集会ちらし 川崎医療生活協同組合蔵 地域住民から告発された「公害」は次第に「公害」反対運動という大きな潮流となっていった 上中下共に県庁舎 上 横浜市金沢区 小柴俊雄氏蔵 中 横浜市図書館蔵 下 神奈川県庁蔵 上の庁舎は震災で破壊され 中は昭和三年にたてられ現存する 下は昭和四十一年に完成した 序 この資料編12近代・現代⑵政治・行政2は政治・行政1(昭和四十九年発行)を引き継いで、昭和初期から昭和四十年代後半までの期間を対象としています。この時期は戦争、敗戦、占領、戦後民主化、独立、高度成長時代と、目まぐるしい激動の歳月でした。 日本の歴史のなかでも、これだけはげしく揺れ動いた時代は、他に比類をみないのではないでしょうか。それだけに、この時代を生きてきた私たちの記録というものが、大きな意味をもってくると考えます。 本巻では、この間の政治・行政の実態とその動きを基軸とする諸問題が、神奈川の地域と県民を通じて、どのようにあらわれているかを伝える資料に編集の重点を置きました。 この巻の刊行にあたり、貴重な資料の提供や紹介に御協力下さった諸機関や多くの方々および多数の資料の調査・収集と編集にあたられた執筆委員の皆様に対し、心から感謝申し上げます。 昭和五十二年三月 神奈川県知事 長洲一二 凡例 一 神奈川県史資料編、近代・現代編は政治・行政関係資料と産業・経済関係資料とを収録する。本巻は政治・行政編二巻の第二巻として昭和初期から昭和四十年代までの県政の推移に関する資料を収録した。なお、戦後は社会運動関係資料も収録した。 一 資料はテーマ別に分類し、それを原則として年代の順に従って収録したが、資料の前後関係によって配列し直す等の処置を講じた場合もある。 一 各資料の標題は、編者がつけた。しかし原資料の標題が内容に照応するものはそのまま採用した。 一 各資料にはすべて一連番号をつけ、さらに小番号を付して一括したものもある。 一 収録した資料は、いずれも原資料の形態を残すように努めたが、編集の都合上と資料を理解しやすくするため、原資料の意味を損じない限り、次のように扱った。 ㈠ 字体は、当用漢字表にある漢字については原則として当用漢字体表を用い、この表にない漢字は原資料に従った。 ㈡ 明らかな誤字は訂正したが、あて字、俗字等は原資料に従った。 ㈢ 戦後資料のおくりがなについては、原資料に従った。 ㈣ 各資料の欄外に書きこまれた所見の類は、編者において、〔欄外注記〕として表記した。 ㈤ 脱字は該当部分に〔 脱〕の傍注を付した。 ㈥ 虫くい、破損等は、□□・□でその状態を示した。 ㈦ 抹消部分は原則として省いたが、必要な場合は資料の末尾に編者注として表記した。 ㈧ 敬字の欠字は一字あけとし、改行の場合は原資料に従った。 ㈨ 署名簿等で人数が多い場合は、二段組みにしてすべてを収録した。 (一〇) 編者のつけた注にはすべて〔 〕を用いた。 (一一) 別記・別紙資料で原資料に記載のないものは編者が〔別記〕〔別紙〕として区分した。 一 収録した資料はその末尾に出典および所蔵者名を付記し、解説の末尾に所蔵者一覧表を掲げた。 一 本巻の編集は、大久保利謙・金原左門が担当した。 目次 表紙題字 前知事 津田文吾 序 凡例 第一編 昭和準戦時戦時 第一章 国民更生経済更生運動 第一節 県更生計画 資料番号 ページ 一 神奈川県国民更生運動実施計画要綱 1 二 農山漁村経済更生計画樹立に関する件通牒 6 三 時局匡救国民更生に関する県知事横山助成の訓示要旨 8 四 昭和八年度町村長会における県知事横山助成の訓示要旨 10 五 神奈川県農山漁村経済更生計画協議会指示事項 13 六 昭和九年度町村長会における県知事横山助成の訓示要旨 17 七 昭和十年度町村長会における県知事石田馨の訓示要旨 19 八 昭和十一年度町村長会における県知事半井清の訓示要旨 21 九 神奈川県農山漁村経済更生特別助成要旨 22 一〇 神奈川県農山漁村経済更生計画再検討の方針 27 第二節 自力更生対策 一一 昭和七年度神奈川県副業奨励計画概要 29 一二 失業対策事業に関する国庫補助の件通牒 34 一三 神奈川県納税奨励規程 39 一四 養蚕実行組合設置奨励に関する件通知 41 一五 足柄下郡町村長会の時局匡救に関する調査報告 41 一六 神奈川県農村匡救耕地拡張改良事業補助規則 43 一七 小田原土木出張所農村振興土木事業等に関する事務打 合会議案 46 一八 時局に対する国民の信念培養の指導要項実施事項 52 一九 神奈川県精神作興週間に関する件要項 53 二〇 神奈川県下自力更生町村の事例㈠ 54 二一 神奈川県下自力更生町村の事例㈡ 61 二二 昭和十年度精神作興週間ならびに運動に関する件要項 64 二三 建国祭行事徹底に関する件通知 67 第三節 経済更生実施事情 二四 足柄下郡吉浜村経済更生計画書 68 二五 中郡大磯町大磯漁業組合経済更生計画書 101 二六 中郡成瀬村経済更生計画実行費調 113 二七 神奈川県下農山漁村経済更生計画実施概況(一―四) 151 二八 中郡成瀬村経済更生進行状況 158 第二章 戦争体制の組織 第一節 国民精神総動員 二九 国民精神総動員第二回強調週間実施要綱および実情 (一―二) 163 三〇 国民精神総動員第二回強調週間実践要綱 165 三一 神奈川県民の国民精神総動員運動に対する態度 165 三二 昭和十三年度市町村長会議における県知事半井清の 訓示指示注意(一―二) 167 三三 藤沢町戦勝行事の件届 183 三四 自治振興運動実施要項ならびに運動指定町村の状況 (一―二) 184 第二節 総動員 三五 日中戦争勃発一周年記念献納運動実施要綱 185 三六 一戸一品献納代金蒐集の件報告 187 三七 昭和十三年八月経済戦強調週間実施要綱 189 三八 昭和十三年十二月経済戦強調週間実施要綱 192 三九 戦時下配給統制に関する件通牒 194 四〇 重要物資の廃品回収に関する件通牒 196 四一 中郡農会の農業労働力補給調整に関する会議事項 197 四二 中郡秦野町第九回経済警察協議会開催の件通知 199 四三 中郡秦野経済報国会会則草案 199 第三節 大政翼賛の進行過程 四四 大政翼賛会神奈川県郡市町村支部結成式に関する件通牒 202 四五 大政翼賛会支部規定 202 四六 大政翼賛会神奈川県支部第一回協力会議における支部 長松村光磨の挨拶 204 四七 大政翼賛会神奈川県支部第一回協力会議における運動 経過報告 206 四八 大政翼賛会神奈川県支部第一回協力会議の指示事項 208 四九 興亜奉行日新方策実施要綱 213 五〇 神奈川県農山漁村経済更生整備計画樹立要綱 214 五一 輸送力強化協力に関する件要請 220 五二 神奈川県郷土芸術振興資料調査に関する件依頼 221 五三 木灰供出強化運動に関する実施要綱 222 五四 戦時下仙石原村年末年始対策要綱 224 五五 足柄上郡仙石原村常会要綱(一―四) 225 五六 大政翼賛会推進の報道網確立に関する件通牒 232 五七 翼賛壮年団員の立候補等取扱方針決定に関する件通牒 232 五八 昭和十七年四月八日大詔奉戴日実施方策 234 五九 天長節国民奉祝実施要綱 236 六〇 大政翼賛会構成員と選挙に関する件通牒 237 六一 大政翼賛会神奈川県支部役員協力会議員更新方針 239 六二 昭和十七年度神奈川県町村長会の宣言決議 241 六三 昭和十六年度大政翼賛会神奈川県支部事業報告 242 六四 大政翼賛会神奈川県支部常会徹底事項説明資料 247 六五 大日本体育会神奈川県支部設置に関する注意事項 250 六六 農家増加収益の貯蓄化運動実施要綱 251 六七 戦時下衣生活簡素化実施に関する件通牒 252 六八 第二期町村決戦体制確立実行方策要綱 254 六九 非常回収物件の回収対象および範囲に関する件通知 258 七〇 神奈川県一億敢闘総決起大会開催要項 259 七一 翼賛壮年団の活動に関する件通牒 259 七二 大政翼賛会神奈川県支部決戦生活実践促進要綱 260 七三 足柄上郡仙石原村常会徹底事項 270 七四 町内会部落会等の機構整備指導に関する件通牒 271 七五 常会指導員選定に関する件通牒 272 七六 アメリカなど交戦国の文書図画等届出制周知徹底の件 通知 273 七七 空襲時における情報放送の周知に関する件通知 274 七八 撃墜敵機搭乗員に対する地方官民の措置に関する件 通知 275 第二編 昭和戦後(一) 第一章 政治改革 第一節 敗戦と県民地域 七九 横須賀終戦連絡委員会業務報告(一―二) 277 八〇 アメリカ合衆国進駐軍軍人宿舎勤務誓約書 282 八一 敗戦後の旧日本国軍隊の国家再建参加 283 八二 時局転換下の軍事援護に関する件通達 283 八三 神奈川県下全市民代表の食糧供出懇請電報文案 284 八四 横須賀市の食糧危機に関する陳情書(一―二) 285 八五 敗戦後の町村常会等指導方針要旨 286 八六 神奈川県足柄下郡常会(一―六) 288 八七 横須賀市戦災学徒数調査ノ件通達 297 八八 横須賀市汐入国民学校欠食および虚弱学童数調 298 八九 連合国の指令占領目的に対する有害行為処罰の件通知 298 九〇 ポツダム宣言遵守に関する経済界取締強化の件通達 299 九一 神奈川県出身満州開拓移民等救済の件通達 300 九二 神奈川県遺族会結成の趣旨 301 九三 平塚市の危機打開と「甲地」への引上げに関する陳情書 301 九四 敗戦後横須賀市の財政事情 303 九五 伊勢原警察署管内の盗難事故防止要請 305 第二節 占領と県政 九六 終戦連絡横浜事務局等設置の経緯と業務組織 306 九七 極東委員に対する神奈川県管内事情説明 311 九八 第八軍を中心とする軍政機構 316 九九 連合国軍隊横須賀進駐にともなう注意の件布告(一―二) 317 一〇〇神奈川県下の治安状況等に関する証言 318 一〇一連合国軍隊進駐地域の住民の心得事項 321 一〇二連合軍憲兵と日本国警察との事務打合会報告 322 一〇三物品買受等取締に関する件通牒 324 一〇四神奈川県下連合軍兵士関係の事故防止対策 325 一〇五連合国軍隊兵士による危害等防止心得事項 327 一〇六進駐軍兵士の不法不当行為等防止の件指示 329 一〇七連合国軍隊に対する食糧品供給に関する件通達 331 一〇八市町村長懇談会における県知事藤原孝夫の訓示要綱 332 一〇九昭和二十二年県知事内山岩太郎の年頭の辞 338 一一〇旧日本軍隊の軍需品の無断持出等注意の件通達 340 一一一旧戦力増強関連企業の転用および金属回収に関する善 後措置の件通牒 341 一一二戦時補償打切の件通達 343 一一三昭和二十一年度開拓増産隊要綱概要 345 一一四神奈川県下の食糧情報第四報 346 一一五神奈川県市町村長懇談会の食糧対策決議 353 一一六食糧危機突破対策の件通達 354 一一七昭和二十二年度米穀甘藷の買入対策要綱 354 一一八神奈川県食糧緊急対策 358 一一九神奈川県食糧調整委員会協議会決議文 362 一二〇経済危機緊急対策実施にともなう経済道義昂揚に関す る件 363 一二一経済緊急対策抄 365 一二二物価引下運動実施に関する件通達 366 一二三統制物資不正売買取締徹底の件通達 367 一二四物価安定署名運動展開に関する要請の件 368 一二五物価監視委員任期延長の件通達 369 一二六連合国総司令部の横浜市等地方財政状況視察 370 一二七座間相模原町地域の進駐軍の不法事件処理経過(一―二)370 一二八講和後横浜市の接収地処理に関する要望書 372 第三節 復興民主化政策 一二九神奈川県戦災都市復興都市計画事業概要 376 一三〇横須賀市更生対策要項 379 一三一川崎市民需対策委員会規程 382 一三二武器引渡命令に対する緊急措置の件通牒 383 一三三神社への寄進行為等禁止および注意の件通牒(一―二) 385 一三四旧大政翼賛団体等解散団体の資産接収の件通牒 386 一三五戦後国民貯蓄増強方策に関する件説明 387 一三六金融緊急措置等実施にともなう国民貯蓄増強の件指針 397 一三七救国貯蓄運動要綱 402 一三八中等学校長常会通達事項 403 一三九校長会議事項 404 一四〇教職員の教育研究協議会新設に関する件通知 405 一四一復員軍人の教育職復帰又は採用等に関する件通知 407 一四二教職員適格審査に関する件通知 408 一四三昭和二十一年度母親学級開設要項 409 一四四昭和二十二年度母親学級開設要項 410 一四五公民啓発運動に関する青年常会開催の件通牒 412 一四六総選挙に関する公民啓発運動実施の件通牒 415 一四七公民館設置運営の件通知 415 一四八社会教育関係事項情況調査に関する件通知 416 一四九連合軍の教育関係等指令の徹底に関する件通知(一―二) 416 一五〇国民学校後期用図書中の削除修正箇所徹底の件通牒 418 一五一教科用図書使用に関する注意の件通牒 419 一五二国民学校青年学校中等学校師範学校青年師範学校用旧 教科書の使用禁止の件通知 419 一五三師範学校中等学校教科書中発行供給中止図書取扱の件要項420 一五四修身国史地理教科用図書の回収に関する件通知 422 一五五国史の授業再開に関する注意の件通知 424 一五六国史授業指導要項 425 一五七行進徒手体操等実施に関する注意の件通知 430 一五八演劇脚本および紙芝居の検閲に関する件通知 433 一五九御真影奉還に関する件通牒 432 一六〇国家神道神社神道に対する政府の保証支援保全監督お よび弘布禁止に関する件通牒 433 一六一勅語および詔書の取扱措置に関する件通知 434 一六二学校における宮城遥拝等禁止の件通牒 435 一六三学校生徒の神社関係行事等への参加禁止徹底の件通知 435 一六四忠霊塔忠魂碑等撤去の徹底に関する件通知 436 一六五国旗掲揚の制限に関する件通知(一―二) 437 一六六国旗掲揚の制限措置解除の件通知 437 一六七戦後民主教育の理念と実践要項 438 一六八中郡成瀬村小学校時報創刊号 454 一六九農地改革に関する歎願書 457 一七〇農地改革数え唄 458 一七一足柄下郡湯本町町民の政治関心調査結果 459 一七二憲法精神普及徹底の指導者講習会の件通知 469 一七三憲法普及に関する実施事項および計画案 470 一七四憲法施行記念週間 472 一七五憲法施行記念週間行事および憲法に関する論文の募集 の件通知 474 一七六憲法普及会編「新しい憲法明るい生活」配布の件通知 475 一七七憲法討論会要領 476 一七八憲法の普及徹底の件通知 479 一七九憲法実施記念郡市対抗駅伝競争第一回打合会事項ならび に第二回全日本毎日マラソン大会要項に関する件通知 480 一八〇憲法施行記念植林の件通知 482 一八一憲法普及会神奈川県支部主催憲法精神普及徹底指導 者講習会の件通知 482 一八二憲法普及夏季大学講座の件通知 483 一八三各種団体の集会運動等届出に関する徹底の件通知 485 一八四集会示威運動の届出の件通知 485 一八五軍国主義的政治団体結社等禁止に関する件通牒 486 一八六軍国主義的政治団体結社等の禁止に関する調査の件 通知 488 一八七足柄上郡仙石原村の軍国主義的政治団体結社等解散状 況報告 489 一八八政治団体の結成変更届等の励行に関する指導の件通牒 491 一八九川崎市集会集団行進および集団示威運動に関する 条例の設定理由と条例(一―二) 492 第二章 地方行政改革 第一節 県行政 一九〇 地方制度改正にともなう公民啓発運動に関する件通知 495 一九一 公務員の集団欠勤に関する警告書 496 一九二 自治体警察署警察官募集の件通知 497 一九三 神奈川県自治体警察署設置町村および町村長名 498 一九四 神奈川県自治体警察町村連絡協議会規約 499 一九五 自治体警察町村連絡協議会(仮称)発足打合会の件通知 500 一九六 自治体警察事務再配分に関する意見書提出依頼の件および中郡伊勢原町の所見 500 一九七 高座郡座間町警察職員の宣誓教育訓練礼式および服装に関する規則 503 一九八 高座郡座間町自治体警察廃止の件報告 503 一九九 中郡伊勢原町自治体警察廃止の件決定 504 二〇〇 政府自治体の広報活動に関する原則 504二〇一 神奈川県下の地方自治に対する世論調査等結果調 507 第二節 市町村行政 二〇二 民主自治発展協議懇談会要綱 517 二〇三 町村庶務主任会議開催の件通知 518 二〇四 民主自治発展協議懇談会開催の件通知 518 二〇五 特別市制に関する件報告 518二〇六 町内会設置規程等廃止の件告示 520 二〇七 町内会部落会等の運営に関する件通牒 520 二〇八 部落会町内会規約準則案協定の件通知 523 二〇九 足柄下郡湯本町部落会町内会規約準則 523 二一〇 町内会部落会等の神道に関する諸行為禁止徹底の件通牒 507 二一一 戦災復興等常会での徹底事項指示 528 二一二 町内会部落会等長の選挙に関する件指示 529 二一三 町内会部落会の廃止ならびに措置の徹底に関する件通牒 529 二一四 町内会部落会等長の公的活動の禁止に関する件通牒 531 二一五 町内会部落会等の解散およびその他の行為制限に関する件通知 532 二一六 隣組制度廃止にともなう主要食糧の戸別配給の件通知 535 二一七地方税制度財政制度改正事項 536 二一八県民税の創設および町村民税の拡充の件通知 537 二一九神奈川県町村長会の農山漁村行財政刷新拡充の件決議 538 二二〇神奈川県町村会会則 539 二二一昭和二十一年度神奈川県町村長会会務報告 543 二二二昭和二十二年度神奈川県町村会会務報告 545 二二三神奈川県町村会の宣言決議(一―三) 548 二二四昭和二十二年度町村予算編成の件通牒 551 二二五昭和二十六年度予算編成方針の件通知 552 二二六県知事内山岩太郎の特別市制案に対する意見 555 二二七特別市制反対意見書(一―二) 560 二二八地方制度改正にともなう神奈川県訓令第四十九号 565 二二九第二十二回神奈川県町村合併促進審議会議録 566 二三〇神奈川県町村合併計画案 573 二三一神奈川県町村合併一覧表 579 二三二神奈川県町村合併促進審議会の町村合併の結果報告 581 二三三中郡成瀬村の町村合併の動き(一―八) 582 二三四県知事内山岩太郎の伊勢原町新町建設計画案に対する意見619 二三五中郡伊勢原町建設計画 620 二三六中郡伊勢原町等関係町村現況表 626 相澤菊太郎日記 昭和二十年~昭和二十四年 631 第三編 昭和戦後(二) 第一章 労働社会状態 第一節 農村労働問題 二三七 神奈川県民主団体協議会活動状況 643 二三八 物価値上反対神奈川県民大会等関係資料(一―三) 648 二三九 神奈川県取引高税反対同盟等決議(一―三) 651 二四〇神奈川県労調査部の津久井郡串川村実態調査報告 655 二四一産別会議等の昭和電工川崎工場爆発事件調査報告 657 二四二神奈川県下組織労働者の消費生活調査報告 659 二四三中小企業労働者余暇利用調査報告 676 第二節 基地問題 二四四全駐労神奈川地区本部関係労働協議会議事録(一―二) 678 二四五全駐労神奈川地区本部の労働者失業反対要求 695 第三節 公害問題対策 二四八神奈川県事業場公害防止条例同施行規則 744 二四九神奈川県公害の防止に関する条例同施行規則 748 二五〇産業公害による農作物被害調査(一―二) 762 二五一ヨコハマゼンソクの実態 764 二五二川崎市煤煙防止対策協議会調査報告 771 二五三昭和三十二年度横浜川崎市の公害に関する請願陳情 778 二五四朝日製鉄株式会社の公害問題(一―五) 780 二四六厚木航空基地騒音問題等関係資料(一―六) 700 二四七神奈川県基地関係県市町連絡協議会の提供施設返還要望書734 二五五日の出製鋼公害問題の陳情および報告書(一―三) 795 二五六昭和三十六年度中小企業公害除去施設資金助成事業場の公害状況 800 二五七昭和三十六年度現在公害陳情問題処理概要 806 二五八昭和三十七年上期神奈川県公害業務概要 807 二五九公害防止条例の沿革公害発生経過 810 二六〇昭和四十年五月現在公害処理状況 816 第二章 社会運動 第一節 労働運動 二六一昭和二十一年一月~二十四年六月月別型態別発生労働 争議調 824 二六二昭和二十一年五月一日現在労働組合名簿 826 二六三昭和二十一年現在神奈川県下労働組合連合体組織実態調 844 二六四昭和二十二年六月現在単位労働組合および労働協約締結 状況 855 二六五昭和二十二年十一月現在単位労働組合の組織状況 858 二六六昭和二十三年四月分労働紛争争議 867 二六七昭和二十四年一月~五月末現在工場閉鎖ならびに人員整理状況 873 二六八昭和二十四年六月現在神奈川県主要単位労働組合調 889 二六九昭和二十四年十一月現在産業別事務所別労働組合の 組織等実態調 895 二七〇産別会議神奈川地方会議の賃金問題等に関する要請書 902 二七一昭和二十二年産別会議神奈川地方会議運動方針 903 二七二産別会議神奈川地方会議の企業整備反対声明書 910 二七三昭和二十三年メーデー世話人会議事録 911 二七四産別会議神奈川地方会議の労働戦線統一声明書 912 二七五神奈川県労働組合会議運動関係記録(一―四) 913 二七六東神奈川電車区国鉄人員整理反対運動経過(一―八) 921 二七七川崎地区労働組合連絡協議会の弾丸道路調査報告(一―二)949 二七八神奈川県下基地労働者解雇反対運動(一―三) 952 二七九昭和三十三年十月現在基地労働者組織状況一覧表 960 第二節 原水爆禁止平和運動 二八〇神奈川県平和評議会規約草案 964 二八一第十三光栄丸船員一同の原水爆実験禁止の訴え 965 二八二横須賀市市民大会の水爆実験反対決議 967 二八三世界平和大集会神奈川県準備会活動記録(一―五) 967 二八四逗子原水爆禁止促進協議会ニュース第一号 987 二八五横須賀平和の会便り第三号 991 二八六神奈川平和祭原水爆禁止運動に関する決議案 998 二八七逗子平和懇談会ニュース第十九号 999 二八八神奈川平和評議会ニュース第五号 1001 二八九足柄原水爆禁止運動ニュース 1004 二九〇逗子平和懇談会第五回定期総会資料 1006 二九一横浜市岸根基地反対連絡会議の訴え 1018 二九二軍事基地反対県民大会 1020 二九三神奈川県原水爆禁止運動センター設立の呼びかけ 1025 二九四原水爆禁止横浜市協議会の結成 1026 二九五原水爆禁止神奈川県協議会規約活動記録(一―七) 1027 二九六横浜市原水爆禁止協議会の運動趣旨 1051 二九七第二回神奈川県婦人大会宣言決議 1051 二九八横須賀在住婦人の生活記録 1053 二九九第一回横浜母親大会記録 1076 三〇〇鎌倉の自然をまもる会の結成 1079 三〇一風致特別保護地区自然擁護の共同見解 1081 三〇二神奈川自然保護連盟の結成 1085 解説 一 政治・行政編2の「戦後」の構成をめぐって 1 二 昭和準戦時戦時 4 三 昭和戦後(一) 10 四 昭和戦後(二) 18 収録資料所蔵者一覧 26 あとがき 口絵 相澤菊太郎日記(相澤栄久氏蔵) 敗戦直後の横須賀軍港(斎藤秀夫氏蔵) 横須賀市のやみ市(斎藤秀夫氏蔵) 米軍政部の教育に関する指令文(県立湘南高等学校蔵) 川崎市政月報提出に関する指令書(川崎市役所蔵) 川崎市政月報(川崎市役所蔵) 神奈川県の町村合併の様子(神奈川新聞社蔵) 横須賀市水爆被害実情報告大会(広田重道氏蔵) 横須賀平和の会結成大会ポスター(広田重道氏蔵) 公害反対神奈川県民集会ちらし(川崎医療生活協同組合蔵) 県庁舎(小柴俊雄氏蔵・横浜市図書館蔵) 付録 横浜港隣接地帯接収現況図(県史編集室蔵) 神奈川県管内提供施設区域現況図(神奈川県渉外部基地対策課蔵) 神奈川県管内在日合衆国軍の使用施設および区域 (神奈川県渉外部基地対策課蔵) 装てい 原弘 (裏表紙・遊び紙のマークは県章) 第一編 昭和準戦時戦時 第一章 国民更生経済更生運動 第一節 県更生計画 一 神奈川県国民更生運動実施計画要綱 七農第五一六六号 昭和七年九月五日 内務部長 学務部長 足柄下郡仙石原村農会長殿 国民更生運動ニ関スル件 現時未曾有ノ難局ニ際シ之カ打開ヲ策スル為九月五日ヲ期シ全国一斉ニ国民更生運動ヲ開始スル事ト相成本県ニ於テモ同日知事ヨリ県民更生ニ関スル告諭ヲ発シ県民ノ自覚自奮ヲ促スト共ニ市町村長宛別冊所載ノ通リ通牒相成候就テハ市町村ト相提携シテ速ニ別冊国民更生運動実施計画要項ニ基キ夫々地方ノ実状ニ応シ最適切有効ナル計画ヲ樹立シ之カ実効ヲ収メラレ度依命及通牒候也 〔別冊〕(表紙)「国民更生運動実施計画要綱神奈川県」 目次 一 国民更生運動ノ趣旨 二 国民更生運動ニ関スル告諭 三 国民更生運動ニ関スル件依命通牒 四 神奈川県市町村更生委員会設置ノ趣旨並規程 一 国民更生運動ノ趣旨 (昭和七年八月二十七日発社第九一号内務次官並社会局長官連名通牒別冊) 我国ハ今ヤ未曾有ノ難局ニ直面セリ財界ノ不況ハ益々深刻トナリ商工業ハ萎靡沈滞シ農山漁村ノ疲弊困憊更ニ甚シク国際関係亦弥々重大ヲ加ヘツツアリ仍チ時局匡救ノ根本対策ヲ樹立シ民心ノ安定ヲ図ルノ緊要ナルハ言ヲ俟タスト雖殊ニ之カ応急的諸施設ヲ講スルハ正ニ焦眉ノ急務ナリト謂ハサルヘカラス依テ政府ハ各種匡救施設ヲ行ハントス此ノ秋ニ方リ国民亦内外ノ情勢ト困難ノ実相トヲ真ニ理解シテ自奮自励以テ生活全般ノ一新ヲ画スルト共ニ公共奉仕ノ精神ヲ発揮シ愛国的熱情ト信念トヲ以テ挙国一致曠古ノ難局打開ニ協力邁進セサルヘカラス之レ即チ本運動ヲ計画実施セントスル所以ニシテ其ノ要目並方法ヲ定ムルコト概ネ次ノ如シ 第一 国民更生運動ノ要目 一 建国ノ大義ニ則リ挙国一致国難打開ニ協力邁進セシムルコト 現下我国ハ内外共ニ未曾有ノ難局ニ直面セリ此ノ国難ニ際シテハ国民ハ能ク其ノ難局ノ真相ヲ認識スルト共ニ我建国ノ大義ニ立脚シ一致協力難局ノ打開ニ向ツテ邁進セサルヘカラス 二 自力更生ノ気風ヲ振作スルコト 凡ソ民心ニシテ消極退嬰ニ傾キ徒ニ他力ニ依頼セントスル弊風瀰漫スル時ハ国家凡百ノ救済保護ノ施設モ其ノ実効ヲ挙クルコト難シ仍チ時局匡救ノ第一義ハ国民ヲシテ積極敢為ノ精神ト新興ノ鋭気トヲ以テ自力ニ依ル生活ノ確立向上ヲ図ラシムルニ在リ 三 経済ノ組織化計画化ヲ図リ之カ実行ヲ期セシムルコト 自力更生ノ方途ハ経済ノ組織化計画化ヲ基調トシテ生産消費ノ両方面ニ亘リ共同ノ組織ヲ整備シ計画アル経済ヲ確立シ国民経済ノ全般ニ亘リテ根本的工夫改善ヲ加へ地方財政ニ於テモ亦之カ趣旨ニ鑑ミ其ノ合理化ヲ計リ以テ公私両方面ニ於ケル経済的更新ヲ期スルノ要緊切ナリト謂ハサルヘカラス 四 国民各自ヲシテ其ノ分ニ応シ社会公共ニ奉仕セシムルコト 社会生活ハ社会連帯ノ本義ニ基キ相互扶助共存共栄ノ実ヲ挙クヘキハ論ヲ俟タスト雖往々一己ノ利害ニ膠着シテ之カ本義ヲ没却スルモノナシトセス然レトモ自力更生ハ国民全般ノ協力提携ヲ俟ツニ非レハ其ノ実効ヲ収メ難キモノナルヲ以テ此ノ際国民タルモノ各自其ノ財力資産職業ニ応ジ社会公共ニ奉仕スルノ覚悟ナカルヘカラス 第二 国民更生運動ノ方法 一 新聞雑誌等ト連絡ヲ図リ其ノ協力ヲ求ムルコト 二 教化団体実業団体(農会商工会議所水産会山林会等)男女青年団在郷軍人会婦人団体等民間団体トノ連絡ヲ図ルト共ニ学者教育者実業家宗教家其他ノ篤志者ノ協力ヲ求ムルコト 三 各種冊子ノ頒布映画ノ作製利用懇談会講演会講習会等ノ開催ヲ為スコト 四 学校寺院教会劇場活動写真館其他ノ場所ニ於テ多数集合ノ機会ヲ利用シ国民更生運動ニ関スル趣旨ノ徹底ヲ図ルコト 二 国民更生運動ニ関スル告諭 (昭和七年九月五日神奈川県告諭第一号) 国家興隆ノ本ハ国民精神ノ剛健ニ在リ今ヤ我カ国ハ内外多事殊ニ財界ノ不況弥々深刻ニシテ商工業ハ萎靡沈滞シ農山漁村ハ疲弊困憊其極ニ達セリ而モ人心動モスレハ倚恃退嬰ニ傾キ軽佻詭激ニ流レントス真ニ国歩艱難非常戒慎ノ秋ナリ方ニ応急的施設ヲ講シテ以テ焦眉ノ急ヲ済フト共ニ大イニ国民ノ意気ヲ振作シテ質実剛健ニ趨キ経済生活ヲ改善シテ国力ヲ不抜ニ培ハサル可ラス 畏クモ 皇室ニ於カセラレテハ夙ニ時局ニ軫念アラセラレ先般救療並学術振興ノ思召ヲ以テ巨額ノ内帑ヲ賜フ 聖慮広大洵ニ恐懼感激ノ至リニ勝ヘス政府ニ於テモ這般臨時議会ヲ召集シテ専ラ時局匡救ノ応急対策ニ関シ協賛ヲ経ル所アリ本県亦之ニ対応シテ各般ノ施設ヲ実行センカ為臨時県会ヲ開クニ至レリ 惟フニ時局匡救ノ方途多岐ナリト雖汎ク国民ノ自奮自励ニ愬へ徒ニ他ニ依頼スルノ弊風ヲ排除シ独立自主ノ下ニ積極敢為ノ精神ト新興溌溂ノ鋭気トヲ以テ産業経済公私生活其ノ他各般ニ亘リテ更生ノ方策ヲ樹立シ之ヲ実行スルヲ以テ第一義トス是レ政府ガ全国ニ向テ国民更生運動ヲ強調スル所以ノモノナリ 茲ニ本県ハ政府ノ方針ニ則リ神奈川県市町村更生委員会ヲ設置シ市町村ニ於ケル自主的更生ノ諸施設ニ対スル指導誘掖ニ任セシメントス必スヤ県下各市町村ハ一斉ニ蹶起シ学校並教育教化産業其ノ他ノ各種団体及一般篤志家ノ協力援助ト相俟ツテ更生ノ実効ヲ挙クルニ至ル可キヲ期待スルモノナリ 想起ス九年前彼ノ大震火災ノ惨禍頗ル激甚ヲ極メタリシモ百六十万県民不撓不屈ノ努力ハ灰燼ノ中ニ復興ヲ志シ荒蕪ノ裡ニ更生ヲ策シ遂ニ今日ノ盛運ヲ再現スルニ至レリ曩日既ニ克ク此ノ試練ニ堪ヘタル県民ハ亦克ク現下ノ難局ヲ打開シテ正ニ更生シ得ルノ県民タルヲ信シテ疑ハサルナリ 冀クハ県民諸士清新溌溂タル意気ヲ以テ協心戮力本運動ノ旨意達成ニ邁進セラレンコトヲ 昭和七年九月五日 神奈川県知事 横山助成 三 国民更生運動ニ関スル件依命通牒 (昭和七年九月五日付七地第四三二二号ヲ以テ市町村長宛内務部長及学務部長連名通牒) 現時未曾有ノ難局ニ際シ之カ打開ヲ策スル為九月五日ヲ期シ全国一斉ニ国民更生運動ヲ開始スル事ト相成本県ニ於テモ同日知事ヨリ県民更生ニ関スル告諭ヲ発シ県民ノ自覚自奮ヲ促カス事ト相成候ニ就テハ各市町村共該告諭並左記各項御了知ノ上速ニ別紙国民更生運動計画ニ基キ夫々地方ノ実情ニ応シ最適切ノ有効ナル計画ヲ樹立シ之カ実効ヲ収メラレ度依命通牒候也 記 一 本運動ノ趣旨ハ急速且ツ敏活ニ之カ徹底ヲ期セラルヘキコト 二 本運動ノ実施ニ当リテハ既設ノ教化団体農会漁業組合其他各種産業団体男女青年団在郷軍人会婦人団体等ノ民間団体等トノ連絡提携ヲ図リ其ノ自発的活動ヲ促シ本運動ノ趣旨ノ徹底ニ努ムルコト 三 本運動ハ国民ノ自主的更生ヲ目標トスルモノナルヲ以テ国民更生ニ関スル講演会ヲ開催シ其ノ趣旨ヲ徹底セシムルノ外政府並ニ県ノ時局匡救施設ト相俟ツテ特ニ前記諸団体ヲ中心トシテ懇談会座談会等ヲ開キ自力更生ニ関シ各市町村各部落或ハ各種組合等ニ適切ナル各般ノ具体的申合セ又ハ実際的計画ヲ樹立セシメ之ガ実行ヲ期セシムルコト 右申合セ又ハ計画ヲ樹立スルニ当リテハ特ニ左ノ諸点ニ留意スルコト ⑴ 申合セ又ハ計画ノ内容ハ当該地方ノ実情ニ適応シタルモノタルコト ⑵ 申合セ又ハ計画ハ之カ実行実現ニ重キヲ置クコト ⑶ 申合セ又ハ計画ハ当該地方住民又ハ組合員等ノ自主的更生ノ意気ニ依リ之ヲ定メ且ツ実行セシムル様指導誘掖ヲ為スコト 尚右具体的申合セ又ハ実際的計画ノ事例トシテハ産業上必要ナル事項例ヘバ農家経営ノ総合的改善作業ノ共同化物資ノ共同購入生産品ノ共同販売等ニ関スル計画負債ノ整理ニ関スル計画地方団体又ハ組合等ノ財政ヲ確立スル計画社交儀礼ニ於ケル弊風打破其ノ他合理化ニ関スル申合セ等当該地方ニ適切ナル事項ニ付定メシムルコト 四 尚本運動ノ趣旨ヲ徹底セシメ其ノ実効ヲ挙ゲシムルノ目的ヲ以テ本県ニ於テハ県ニ神奈川県市町村更生委員会ヲ設置シタルヲ以テ其ノ設立ノ趣旨並委員会規程ノ趣旨ニ従ヒ各市町村ハ之ガ善用ニ努メラレタキコト 国民更生運動ニ関スル件 (昭和七年九月五日付七社第七九九号(産業団体ヘハ七農第五一六六号)ヲ以テ学校長青年訓練所主事男女青年団長在郷軍人分会長教化団体長各種産業団体長宛学務部長内務部長連名通牒) 現時未曾有ノ難局ニ際シ之カ打開ヲ策スル為九月五日ヲ期シ全国一斉ニ国民更生運動ヲ開始スル事ト相成本県ニ於テモ同日知事ヨリ県民更生ニ関スル告諭ヲ発シ県民ノ自覚自奮ヲ促カスト共ニ市町村長宛別冊所載ノ通牒ノ次第モ有之候ニ就テハ市町村ト相提携シテ速ニ別冊国民更生運動計画要項ニ基キ夫々地方ノ実情ニ応シ最適切有効ナル計画ヲ樹立シ之カ実効ヲ収メラレ度依命及通牒候也 四 神奈川県市町村更生委員会設置ノ趣旨並規程 神奈川県市町村更生委員会設置ノ趣旨 現下極度ニ窮迫セル市町村ノ不況打開ニ就テハ素ヨリ国家並ニ上級団体ニ於テ時局匡救ノ根本対策ヲ樹立シ民心ノ安定ヲ図ルト共ニ之カ応急的諸施設ヲ講スルハ将ニ焦眉ノ急務ナリト謂ハサルヘカラス依テ政府並ニ県ハ臨時応急ノ各種匡救施設ヲ講シ以テ此ノ未曾有ノ難局打開ニ邁進セントス然レトモ真ニ能ク時局匡救ノ目的ヲ達セムカ為ニハ市町村自体ノ自覚ニ依ル自力更生ノ方途ニ従ヒ必死ノ努力ヲナスニ非サレハ到底其ノ不況打開ヲ求ムルコト至難ナリト信ス然ルニ市町村ノ現状ヲ観ルニ非常ノ難局ニ際シテ動モスレハ徒ニ他ニ依頼スルノ弊ニ陥ルノ傾アルハ洵ニ遺憾ニ堪ヘサル所ナリ依テ此ノ弊風ヲ去リ積極敢為ノ精神ト新興ノ鋭気トヲ以テ独立自主ノ信条ノ下ニ自力ニ依リ産業経済公私生活其ノ他各般ニ亘リテ更生ノ策ヲ講セシメ統制アル指導方針ノ下ニ専ラ市町村ノ自主的更生ヲ企画セシムルノ要緊切ナルヲ認ム茲ニ於テ県ハ之レカ指導誘掖ノ機関トシテ神奈川県市町村更生委員会ヲ設置シ県下市町村ヲシテ自力更生ノ実ヲ挙ケシメムトス 神奈川県市町村更生委員会規程 (昭和七年九月五日付神奈川県告示第六一四号) 第一条 本委員会ハ現時ノ難局ニ当リ県下ノ市町村ヲシテ自主的更生ノ精神ヲ振起セシムルト共ニ経済更生ノ実ヲ挙ケシムルタメ之カ指導誘掖ヲナスヲ以テ目的トス 第二条 本委員会ハ自主的更生ニ自覚セル市町村ニ対シ概ネ左記事項ニ関シ特別指導ノ任ニ当ル 一 産業計画ヲ樹立実行セシムルコト 二 町村財政ノ樹テ直シヲ為サシムルコト 三 公私生活ノ改善ヲ徹底セシムルコト 第三条 本委員会ハ前条ノ事業ヲ行フ外左ノ事項ヲ行フ 一 自力ニ依リ更生シタル市町村ノ実例ヲ「パンフレツト」トナシ関係方面ニ頒布スルコト 二 懇談会座談会講演会映画会等ヲ開催スルコト 三 更生運動指導者講習会ヲ開催スルコト 四 其ノ他必要ト認メタル事業 第四条 本委員会ハ会長一名委員若干名ヲ以テ組織ス 第五条 会長ハ本県知事之ニ当リ委員ハ知事之ヲ任命又ハ委嘱ス 第六条 会長ハ会務ヲ総理シ本委員会ヲ代表ス会長事故アルトキハ会長ノ指名シタル委員其職務ヲ代理ス 第七条 本委員会ニ幹事若干名ヲ置キ委員中ヨリ会長之ヲ委嘱ス幹事ハ会長ノ指揮ヲ受ケ庶務ヲ整理ス (仙石原村農会「農会書類綴」(昭和七年)箱根町役場蔵) 〔注〕本規定は昭和八年二月十七日付県告示第一〇二号で次の部分が改正された。 第二条 本委員会ハ自主的更生ニ自覚セル市町村ニ対シ概ネ左ノ事項ニ関シ特別指導ノ任ニ当ル 一 経済更生計画ヲ樹立実行セシムルコト 二 市町村財政ノ樹テ直シヲ為サシムルコト 三 公私生活ノ改善ヲ徹底セシムルコト 第三条 本委員会ハ前条ノ事業ヲ行フ外左ノ事項ヲ行フ 一 本県農林漁業其ノ他産業全般ニ亘ル組織的統制計画ニ関スル調査及立案 二 当該年度内ニ於テ経済更生計画ヲ樹立スヘキ農山漁村ノ選定及更生計画ノ審査 三 自力ニ依リ更生シタル市町村ノ実例ヲ「パンフレツト」トナシ関係方面ニ頒布スルコト 四 懇談会座談会講演会映画会等ヲ開催スルコト 五 更生運動指導者講習会ヲ開催スルコト 六 其ノ他必要ト認メタル事業 二 農山漁村経済更生計画樹立に関する件通牒 七農第七九九四号 昭和七年十二月十三日 内務部長 古川静夫 町村長殿 農山漁村経済更生計画ニ関スル件 標記ノ件ニ関シテハ政府ハ曩ニ農林省ニ経済更生部ヲ設置シ農山漁村経済全般ニ亘リ計画的組織的ニ整備改善ヲ図ルコトヽ相成本県亦之レカ趣旨ヲ体シ神奈川県市町村更生委員会ヲ設置シ農山漁村経済更生計画樹立及実行ニ関スル指導督励ヲ為スコトヽ相成候ニ就テハ部内一般ニ周知ノ上町村ニ於テモ自主的ニ同様委員会ヲ設置セラレ夫々更生計画ノ樹立実行ニ御考慮相成度尤モ県ニ於テハ毎年十五ケ町村ヲ指定シ次第ニ各町村ニ及サントスル方針ニ付御含ミ相成度尚今般農林省ニ於テ農山漁村経済更生計画樹立方針決定相成候ニ付一部及送付候条左記事項御留意ノ上之レカ計画樹立実行ノ指針トセラレ度依命此段及通牒候也 追テ為参考町村ノ経済更生計画樹立実行ノ場合ニ於ケル委員会規程準則別紙ノ通作製致候ニ付御了知相成度申添候 記 一 農山漁村経済更生計画ハ農村経済ノ運営及組織ノ根本的改善ニ付農山漁家ノ自醒ヲ促シ隣保共助共同融和ノ精神ト自奮更生ノ熱意トニ依リ農山漁村経済全般ニ亘リ整備改善ヲ加へ農山漁家ノ経済生活ノ安定ヲ図リ奨来ニ向ヒテ其ノ福利ノ増進ヲ図ルヲ以テ目的トスルモノニシテ別冊「農山漁村経済更生計画樹立方針」ハ此ノ趣旨ニ依リ農山漁村ヲ通シ経済更生上必要ナリト認ムル原則ヲ広ク網羅セルモノニ有之従ツテ個々ノ町村ニ就テハ具体的ニ立案スルニ当リテハ当該町村ノ実情ト本書ノ第二以下各項目ニ示セル精神トヲ能ク照合スルヲ要シ徒ニ形式ニ拘泥シ本方針第二以下各項目ノ全部又ハ大部分ヲ其ノ儘ニ強ヒテ取入レントスルノ結果却テ緊要ナル経済更生計画ノ樹立及実行上支障ヲ来スカ如キコト無キ様充分留意シ其ノ実行ヲ主眼トシ現状ニ顧ミ本書一ノ第二以下ニ掲クル事項ノ取捨配分宜シキヲ得最モ実行性アル適切ナル経済更生計画ヲ樹ツル様致度尚経済更生計画ハ確定不動ノモノニ非ズシテ各種ノ事情ニ依リ逐次修正ヲ為シ又計画及実行事項ハ漸ヲ以テ進ムコト寧ロ可ナルコト多カルベキヲ以テ注意セラレ度キコト 二 経済更生計画ノ樹立実行ノ完璧ヲ期スルニハ各種団体ヲシテ各分野ニ応シテ充分ナル活動ヲ為サシメ且ツ其ノ間充分ナル協調ヲ保タシムルハ勿論ナルモ町村内ニ於テモ町村吏員小学校教員其他団体役職員等ノ密接ナル連絡融和ト経済更生ノ理解トニ依リ統制的ニ之カ計画ノ樹立実行ニ当ルヲ最モ緊要トスルモノナルヲ以テ此点特ニ注意セラレタキコト 〔別紙〕 何町(村)更生委員会規程準則 第一条 自主的更生ノ精神ヲ振起セシムルト共ニ経済更生ノ実行ヲ挙ケシムル為メ本町(村)ニ更生委員会(以下単ニ委員会ト称ス)ヲ設置ス 第二条 委員会ハ左ノ事業ヲ行フ 一 経済更生計画ノ樹立 二 県委員会ノ審査ヲ経テ決定セラレタル経済更生計画実行ノ指導及督励 三 町村財政ノ樹直シニ関スル事項 四 公私生活ノ改善ニ関スル事項 五 其ノ他自力更生ニ関シ必要ナル事項 第三条 委員会ハ会長一人副会長一人委員若干名ヲ以テ組織ス 会長ハ町(村)長ヲ以テ充ツ 副会長ハ委員ノ互選ニ依ル 委員ハ町(村)吏員町(村)会議員区長小学校長産業組合長 町(村)農会役職員農事実行組合長養蚕実行組合長在郷軍人 分会長青年団長其他農林漁業ニ経験アル者ノ中ヨリ町(村)長之ヲ命シ又ハ嘱託ス 第四条 会長ハ会務ヲ総理シ会議ノ議長トナル 副会長ハ会長ヲ補佐シ会長事故アルトキハ其ノ職務ヲ代理ス 第五条 委員会ニ幹事及書記若干人ヲ置ク 幹事及書記ハ会長ノ指揮ヲ受ケ庶務会計ニ従事ス (仙石原村役場「勧業書類綴」(昭和七年)箱根町役場蔵) 〔注〕別冊省略。 三 時局匡救国民更生に関する県知事横山助成の 訓示要旨 横山神奈川県知事訓示要旨 本日時局重大ノ秋ニ当リ爰ニ諸君ノ会同ヲ煩シ過般地方長官会議ニ於テ総理大臣以下各省大臣ヨリ訓達セラレタル事項ヲ伝達シ併テ所懐ノ一端ヲ披瀝シ諸君ト共ニ当面焦眉ノ問題ニ付隔意ナキ意見ヲ交換スルコトヲ得ルハ洵ニ欣幸トスルトコロナリ 敬神尊皇ノ精神ヲ振作シ国本ノ培沃ヲ図ルハ何レノ時代ニ在リテモ極メテ緊要ノ事ナリト雖殊ニ現下ノ情勢ニ於テハ最モ其ノ必要ヲ痛感スルモノナリ這般ノ日支事変ニ際シ我カ派遣将兵カ競フテ尽忠報国ノ赤誠ヲ捧ケ国民挙テ亦後援ニ努メタル摯情ハ正ニ皇国ノ精華タル敬神尊皇ノ精神自然ノ発露ニシテ他国民ノ断シテ追随ヲ宥ササル美点ナリトス予ハ諸君ト共ニ今後益々民心ヲシテ此ノ堅実性ヲ発揚セシメ国威ヲ中外ニ宣揚セシムル為一段ノ力ヲ竭サムコトヲ期ス 我カ国ハ今ヤ未曾有ノ難局ニ直面シ貿易ハ減退シ国内産業ハ萎靡不振ニ陥リ都市農村ノ別ナク殆ト疲弊困憊ノ極ニ達シ殊ニ農山漁村民及中小商工業者ノ窮状ハ実ニ見ルニ忍ヒサルモノアリ今ニシテ之カ救済ノ策ヲ講シ人心ノ不安ヲ除キ前途ニ希望ヲ認メシムルニ非サレハ国運ノ隆興ヲ期スルコト能ハサルヘキヲ惧ル依テ速ニ深刻ナル財界ノ不況ヲ克服シ国民経済ノ更生ヲ図ルニ足ルヘキ適切有効ナル対策ヲ樹立実行スルハ実ニ喫緊ノ要務ナリト信ス 然レ共此ノ種ノ問題ハ単ニ一地方一局部ニ限定セラレタル問題ニ非サルヲ以テ政府ノ対策方針ト相呼応シ施設宜シキヲ制スルニ非サレハ其ノ効果ヲ挙クルコト至難ナリ依テ県ハ過般臨時帝国議会ノ協賛ヲ経タル政府ノ時局匡救対策ニ基キ本県ノ実情ヲ顧ミ最モ緊要ト認ムル各種ノ事業ヲ計画シ臨時県会ノ議決ヲ経今ヤ正ニ之カ実行ニ入ラムトシツヽアリ而シテ該施設事業中最モ重要ナルモノハ所謂土木事業ニシテ之ヲ農村振興土木事業及農業土木事業ニ大別シ事業ノ性質ニ応シ或ハ県ノ直営ニ依ルモノ或ハ町村事業トシテ施行セシムルモノ又ハ組合個人等ヲシテ之ヲ施行セシムルモノ等ニ区分セリ 農村振興土木事業中県ニ於テ直接施行セムトスルモノハ府県道改良費二十万円砂防費二十万円ニシテ計四十万円町村ヲシテ施行セシムルモノ町村道改良費ニ於テ四十四万円河川改修費十八万円港湾改良費三万円計六十五万円ノ予定ナリ然シテ町村施行ノ工事ニ対シテハ国庫ヨリ何レモ其ノ工費ノ四分ノ三ヲ補助シ且不足財源ヲ起債ニ求メムトスル場合ハ全部預金部低利資金ノ融通ヲ為シ七、八、九、三年度間利子ノ補給ヲ為サムトスル予定ナリ 農業土木事業ニ於テハ県直営ニ係ルモノハ僅ニ用排水幹線改良費及荒廃地復旧工事費合セテ八万六千余円ニ過キス其ノ余ハ主トシテ組合又ハ個人等民間ノ事業トシテ施行セシメムトスルモノニシテ内耕地拡張改良ニ関スル事業其ノ大部ヲ占メ総額五十八万四千余円ニ上リ之ヲ開墾助成法ニ依ル開墾小開墾小用排水改良暗渠排水小設備ノ五種ニ区分ス是等事業ハ何レモ之ニ依リ直接農民ニ労銀ヲ取得セシムルト同時ニ将来生産費ノ低下ヲ図リ土地ノ生産能率ヲ向上セシメ永ク地方民ノ収入増加ノ源泉タラシメムトスルモノノミナリ右ノ内国庫ハ開墾助成法ニ依ル開墾ニ付テハ四割其ノ他ノ事業ニ付テハ五割ノ補助ヲ為スト雖疲弊困憊ノ極ニ達セル農家ノ現状ニ在リテハ残余ノ六割乃至五割ノ負担ヲ為ス事ハ此ノ際頗ル困難ナリト認メタルヲ以テ県ニ於テハ財政窮迫ノ折柄ナルニ拘ラス是等事業費ニ対シ二割ノ追加補助ヲ為シ以テ事業ノ実行ヲ遂ケシメムトセリ 其ノ他山村及漁村ニ対スル事業トシテハ林道ノ開設船溜及築磯ノ築造ヲ為スモノニ対シ補助金交付ノ計画ヲ樹テタリ 以上叙説シタル各種ノ土木事業ハ可成之ヲ農山漁村ニ普遍的ニ配分施行セシメ而モ之カ就労者ハ主トシテ地元居住者ヲ使役セシムル予定ニシテ之ニ依リ地元居住者ニ労銀取得ノ機会ヲ与へ以テ収入ノ増加ヲ図リ自力更生ノ資タラシムルト共ニ将来地方産業ノ進展ニ寄与セシメムトスルニ在リ従テ之等事業ノ町村配当ニ就テハ最モ慎慎ナル調査ヲ遂ケ普ク公平ニ分布セムカ為大半ハ之ヲ農家戸数ニ按分シ之ヲ基根トシテ特ニ窮乏ノ程度深刻ナリト認ムル町村ノ特殊事情ヲ加味シ且各種事業ノ重複ヲ避クル等適当ニ之ヲ按配シテ出来得ル限リ公平ナル分配ヲ為サムコトヲ期シタリ 其ノ他農村振興ニ関スル施設トシテ県ニ於テハ国庫補助ノ下ニ農村経済ノ更生蚕糸業ノ振興施設共同作業場ノ設置農業倉庫ノ設置肥料ノ改良増殖炭窯ノ構築等ヲ奨励助成セムトシ相当ノ県費ヲ投シテ之カ実施ニ違算ナキヲ期シタリ 次ニ中小商工業者ノ匡救ニ関シテハ以上農村振興諸施設ノ実施ニ依リ農村経済ハ漸次更生シ其ノ購買力ノ回復ニ伴ヒ自ラ商工業ニ好影響ヲ及ホスモノト信スルモ当面ノ緊急問題トシテ中小商工業者ニ対スル金融梗塞ノ現状ニ鑑ミ之カ円滑疎通ノ途ヲ講スルコトノ最モ緊要ナルヲ認ムルニ依リ政府ニ於テ示サレタル補償制度ニ依ル低利資金融通ノ方法ニ依リ県ハ市町村ト協力シ資金貸出ニ対スル一定限度ノ補償ヲ為スコト、シ当業者ノ金融疏通ニ最善ノ努力ヲ払ハムトシ既ニ必要ナル事案ノ議決ヲ経着々準備ヲ進メツヽアリ 以上数項ニ亘ル本県ノ対策ハ何レモ政府ノ施設及方針ニ基キ一面本県ノ実情ニ照シ適切有効ト認ムル施設事業ナルヲ以テ之カ実行ニ拠リテ相当地方経済ニ好影響ヲ期待シ得ヘシト雖素ヨリ限リアル経費ヲ以テ限リアル事業ヲ遂行スルニ過キサルヲ以テ独リ政府又ハ県市町村等ノ公施設ニノミ依リテ之カ匡救ノ完キヲ望ムハ至難ナリ要ハ国民各自カ克ク内外ノ情勢ト国難ノ実相トヲ理解シ徒ニ他力ノ救援ニノミ俟ツコトナク相率ヰテ自奮自励全能力ヲ傾注シテ勤倹業ニ励ミ自力ニ依リテ窮迫ノ悲境ヲ離脱スルノ勇気ト発奮更生ノ決心トヲ以テ難局ノ打開ニ当リ更生ヲ期スルニ在リ若シ此ノ自力更生ノ建設的努力ヲ基調トセス徒ニ政府又ハ県等ノ保護救済ニノミ倚頼セムトスルノ傾向ヲ馴致スルニ於テハ政府及県市町村ニ於ケル今回ノ匡救施設モ啻ニ所期ノ効果ヲ挙ケ得サルノミナラス却テ依頼心ヲ助長セシメ国民ノ士気ヲ消磨セシムルノ結果ニ終ルナキヲ保シ難シ之大ニ警メテ諸君ト共ニ協力策励ヲ要スヘキ点ナリト思料ス 政府ハ夙ニ此ノ点ヲ考慮シ本月五日臨時帝国議会閉会ノ日ヲ期シ全国一斉ニ国民自力更生ノ一大愛国運動ヲ開始セラレタリ本県亦同日ヲ以テ県民ニ告諭スルト同時ニ市町村更生委員会ヲ設ケテ本運動ノ趣旨ノ徹底ヲ図リ且市町村ノ更生施設ニ対シ特別ノ指導誘掖ノ任ニ当ラシムルコトヽ為セリ諸君ハ時局匡救並ニ国民更生運動ノ第一線ニ立チ直接ニ施設策励ノ途ヲ講スヘキ重大ナル責任ノ地位ニ在ルヲ以テ各其ノ市町村ノ事情ニ即シタル機宜ノ施設ヲ実行スルト共ニ当面ノ匡救施設事業ヲシテ一時的効果ニ止マラシメス将来永久ニ亙リテ人心ノ健実ナル伸展ヲ期シ弛緩ナカラシメムカ為大ニ自力更生ノ民風ヲ興起セシメ地方経済生活ノ整備振作ニ格段ノ力ヲ致サレムコトヲ切望シテ已マス 以下細目ニ就テハ別ニ項ヲ別チテ指示スルトコロアルヘキニ依リ諸君ハ十分其ノ意ヲ体シ其ノ措置ヲ謬ラス部民ヲ善導シテ実効ヲ収メラレムコトヲ望ム (仙石原村役場場蔵)「神奈川県町村長足柄下郡町村長小田原外廿五ケ町村組合会長会書類」(昭和七―八年)箱根町役 四 昭和八年度町村長会における県知事横山助成の訓示要旨 昭和八年六月 横山神奈川県知事訓示要旨 本日茲ニ諸君ノ会同ヲ煩ハシ過般地方長官会議ニ於テ総理大臣以下各省大臣ヨリ訓達セラレタル事項ヲ伝達シ併セテ所信ノ一端ヲ披瀝シ諸君ト共ニ当面ノ問題ニ就キ隔意ナキ意見ヲ交換スルコトヲ得ルハ洵ニ欣幸トスル所ナリ 今次帝国カ国際連盟ヲ離脱シタルニ際シ去ル三月二十七日畏クモ大詔ヲ渙発セラレ国民ノ嚮フヘキ鍼路ヲ示サセ給ヒシコトハ 聖旨宏遠寔ニ恐懼感激ニ禁ヘサル所ナリ 現下我国ハ内外極メテ多事多難ニシテ 詔書ニ宣ハセラルル通リ正ニ非常ノ時艱ニ遭遇シツツアリ此ノ機ニ於テ宜シク挙国一心 聖旨ヲ奉体シテ刻苦淬励シ協力一致難局打開ニ当リ苟モ秋毫ノ弛緩ヲ容ササルノ秋ナリ諸君ハ此ノ 大詔ノ 聖旨ヲ遵奉シ更ニ一段ノ緊張ヲ以テ事ニ当リ建国ノ大義ニ則リテ愈々惟神ノ日本精神ヲ更張シ庶政ノ刷新ニ努メ国力ノ充実ヲ図ルト共ニ皇威ヲ中外ニ宣揚セシメムカ為此ノ際一段ノ力ヲ竭シ以テ時局ニ善処セラレムコトヲ望ム 現下ノ世相ハ経済界ノ不況其ノ他ニ因由スル一種ノ社会的焦躁ノ裡ニ在ルノ実状ニシテ此ノ不安ヲ一掃シ国民生活ノ安定ト向上トヲ期図スルハ方今喫緊ノ要務ナリ之カ対策トシテ健全ナル国民思想ヲ培養シ事端ノ発生ヲ未然ニ防止スルハ固ヨリ緊要ノ事ニ属スト雖更ニ現下ノ状勢ニ鑑ミ各般ノ行政及財政ノ上ニ社会的意義ヲ拡充スルコト亦最モ急務ナリトス彼ノ各種社会運動ニシテ我カ建国ノ大義ト絶体ニ相容レサルモノニ在リテハ固ヨリ之ヲ排撃セサルヘカラサルモ然ラサルモノニ在リテハ徒ニ之ヲ抑圧スルハ努メテ之ヲ避ケ常ニ正確ナル判断ト理解アル態度ヲ以テ之ニ臨ミ更ニ進ムテハ克ク其ノ真相ヲ究明シテ之ヲ健実中正ナル方向ニ誘導スルト共ニ之カ根本的解決ニ努力セサルヘカラサルヲ以テ諸君ハ常ニ各種ノ施設ヲ通シ適切有効ナル措置ヲ講セラレムコトヲ望ム 政府ニ於テハ経済難局ノ打開ニ全力ヲ注キ之カ為時局匡救事業ノ執行ヲ始トシ恩賜救療事業失業応急事業其ノ他各種ノ方策ヲ講シ其ノ遂行ニ努メツツアリ本県ニ於テモ亦政府ノ対策方針ト相呼応シテ最モ緊要ト認ムル各種ノ事業ヲ計画施行シツツアリ而シテ之カ目的達成ニ付テハ前途尚一段ノ努力ヲ要スルモノアリ随テ右ニ関スル施措画策ニ付テハ諸君ノ留意ヲ望ムヘキ幾多ノ事項アルモ特ニ左記諸項ニ関シテハ今後慎重ナル調査研究ヲ遂ケ万遺漏ナキヲ期セラレムコトヲ切望ス ㈠ 市町村財政ハ益々窮迫ニ陥リツツアルニ拘ラス時局ノ為ニ要スル必要経費ハ却テ漸次増嵩スルノ傾向ヲ示シツツアリ随テ此ノ間ニ処シ累ヲ将来ニ貽スカ如キコトナキ様予メ充分ナル考慮ヲ為スハ財政爕理上極メテ肝要ノ事ナリ仍テ事業ノ計画ニ当リテハ緩急軽重ヲ精査シ苟モ放漫ニ流ルルカ如キハ厳ニ戒メサルヘカラサルハ勿論予算ノ経理ニ当リテモ専ラ浪費ヲ制シ冗費ヲ省キ殊ニ収支ノ適合ニ意ヲ注キ以テ財政ノ基礎ヲ堅実ナラシムルコト最モ緊要ナリ而シテ負担ノ関係ニ付テモ深ク経済並社会事情ノ動向ニ稽ヘテ宜シキヲ制シ徒ニ従来ノ行懸リニ囚ハレ若ハ地方ノ情実ニ左右セラルルコトナク緩急ノ序ヲ制スルニ於テ一ニ公正ナル判断ヲ愆ラサル様一段ノ注意ヲ切望ス ㈡ 農村振興土木事業ハ幸ニ諸君ノ熱誠ナル努力ニ依リ幾多ノ困難ヲ排除シテ各市町村何レモ予期ノ通リ年度内ニ事業ヲ完成シ概ネ良好ノ成果ヲ収メ得タルハ一ニ諸君ノ努力ニ依ルモノニシテ茲ニ深ク謝意ヲ表スル次第ナリ 政府ニ於テハ昭和八年度ニ於テモ前年度同様県市町村ニ対シ補助金ヲ交付シテ土木事業ヲ執行セシメ以テ時局匡救ニ資セムトス而シテ本県ニ於ケル市町村土木事業費ハ総額金九拾七万弐千円ノ見込ニシテ近ク各市町村配当額ヲ決定スヘキヲ以テ諸君ハ宜シク本事業企興ノ趣旨ニ鑑ミ工事箇所ノ決定工種ノ選択等ニ就キ深甚ナル注意ヲ払ヒ既往ノ経験ニ顧ミテ更ニ一段ノ工夫ヲ重ネ関係吏僚ヲ督励シテ一層緊張事ニ当ラシメ本事業ノ目的達成ニ万遺憾ナキヲ期セラレムコトヲ望ム由来土木事業ハ地方住民ノ利害休戚ニ関係スル所極メテ大ナルモノアルヲ以テ従来動モスレハ種々ノ運動ニ禍セラレ又ハ権勢情実ニ偏倚スルノ虞ナシトセス諸君ハ常ニ公正ナル判断ニ依リ之等運動ノ渦中ニ投セラルルカ如キコトナキヲ期スルハ勿論工事ノ執行ニ当リ苟モ綱紀ノ問題ヲ惹起スルカ如キコトナキ様自他共ニ深ク戒慎ヲ加へ間隙ナカラシメラレムコトヲ望ム ㈢ 農山漁村ニ対スル時局匡救施設ニ付テハ爾来官民一致ノ努力ト機宜ノ措置トニ依リ稍々更生ノ曙光ヲ望ミ得ルニ至リタルハ洵ニ慶賀ニ堪ヘサル所ナリ然リト雖農山漁村振興ノ恒久的対策ハ其ノ経済ノ根柢ニ横ハル諸種ノ禍因ヲ芟除シ其ノ経済ヲ組織的計画的ニ整備スルヲ最モ緊要ナリトス即チ生産費ノ可及的逓減ト生産物ノ合理的配給トヲ計ルヲ根本義トス之カ為ニハ農山漁村ニ於ケル余剰労力ノ活用休閑地ノ利用等ヲ策進シ又一面農漁業ノ機械化優良品種ノ改良普及等一層ノ改善発達ヲ計リ以テ個人経済ノ改善ニ資スルト共ニ農山漁村ニ現存スル各種産業団体ノ連絡協調ヲ図リ各其ノ分野ニ応シ充分其ノ機能ヲ発揮セシムヘキナリ 本県ニ於テハ昨秋設置セル市町村更生委員会ヲシテ専ラ如上ノ目的ヲ達成セシメムカ為自力更生ニ関スル各種ノ施設ヲ企画実行セシメツツアリ各位ニ於テモ一層其ノ意ヲ体シ近時漸ク盛ナラムトスル自力更生ノ気運ヲ善導シ以テ農山漁村更生ノ実ヲ挙ケラレムコトヲ望ム ㈣ 医療救護ノ普及充実ハ国民保健上並救護上最モ緊要ナルモノアリ客年八月畏クモ救療ノ資トシテ御内帑金御下賜ノ御沙汰ヲ拝シタルハ誠ニ感激ニ堪ヘサル所ナリ政府ニ於テモ亦救療ニ要スル経費ヲ支出セラレタルヲ以テ之ニ県費ヲ加へ恩賜救療事業ヲ開始セル処幸ニ諸君ノ尽力ニ依リ着々所期ノ効果ヲ挙ケツツアリ本年度ニ於テモ過去ノ実績ニ鑑ミ非常時施設トシテノ機能ヲ十分発揮シ 聖旨ニ副ヒ奉ラムコトヲ期シツツアルヲ以テ諸君ニ於テモ本施設ノ趣旨ヲ諒セラレ一層協力援助ヲ与ヘラレムコトヲ望ム 終リニ今夏八月初旬ニ於テ帝都ヲ中心トシ東京神奈川千葉埼玉及茨城ノ一府四県ニ亘リ実施セラルル関東防空演習ニ関シテハ諸君ノ既ニ了知セラルル所ナリ本演習ハ単ニ防空知識ノ普及宣伝ヲ目的トスルモノニ非スシテ防空施設ノ訓練向上ヲ図ルニ在リ且ツ其ノ規模ノ広大ナル其ノ地域ノ重要ナルトニ於テ従来此ノ比ヲ見サル所ニシテ演習実施ノ成績如何ハ将来ノ国防上ニ至大ノ関係ヲ有スルヲ以テ之カ所期ノ目的達成ニ就キ充分ナル協力ヲ与ヘラレ実施上万遺算ナキヲ期セラレムコトヲ望ム 以上ノ外諸君ノ協力ヲ請ヒタキ事項ニ付テハ別ニ指示注意スル所アルヘキヲ以テ諸君ハ克ク其ノ意ヲ体シ益々庶政ノ刷新ニ力ヲ協セ此ノ難局ニ善処スルノ策ヲ愆ラサラムコトヲ切望ス (人事課「地方長官会議書類」(昭和八年)神奈川県庁蔵) 五 神奈川県農山漁村経済更生計画協議会指示事項 「昭和八年七月十三日 農山漁村経済更生計画協議会指示事項」 指示事項 第一 農山漁村経済更生計画樹立根本方針ニ関スル件 曩ニ農林省ニ於テ農山漁村経済更生計画樹立方針別冊ノ通決定セラレ本県ニ於テモ同一方針ニ拠リ該計画ヲ樹立セシメムトス抑モ農山漁村経済更生計画ノ樹立ハ農山漁家ノ嚮フベキ進路ノ確立ニシテ一町村ノ共同目標ナルヲ以テ之レガ樹立ニ当リテハ左記ノ点特ニ留意ノ上当該村ノ実情ニ即シ適切ナル計画ヲ樹立シ之カ実行ヲ期スル様一段ノ努力アランコトヲ望ム 一 農林省ノ示セル農山漁村経済更生計画樹立方針ハ農山漁村ヲ通シ経済更生上必要ナリト認ムル原則ヲ広ク網羅セルモノニシテ従テ個々ノ町村ニ就キ具体的ニ立案スルニ当リテハ当該村ノ実情ト該方針第二以下各項目ニ示セル精神トヲ照会スルヲ要シ徒ニ形式ニ拘泥シ該項目ノ全部又ハ大部分ヲ其ノ儘ニ強ヒテ取入レントスルノ結果却テ緊要ナル経済更生計画ノ樹立及実行上支障ヲ来スガ如キコト無キヤウ充分留意シ其ノ実行ヲ主眼トシ現状ニ鑑ミ該項目ノ取捨配分宜シキヲ得最モ実行性アル適切ナル経済更生計画ヲ樹立スルコト 二 計画実現ニ要スル年限ハ五ケ年位ヲ目標トシ特殊ナル事項ニ付テハ適宜伸縮スルコト 三 計画遂行ハ急ヲ要スルモノヨリ着手スルコト但シ直ニ着手シ難キモノト雖モ其ノ実行方法ノミハ決定シ置クコト 四 完成迄ニ数年ヲ要スルモノハ年次計画ヲ樹立スルコト 五 負債ノ整理ニ関シテハ特ニ留意スルコト 六 余剰労力ノ利用ニ関シテハ特ニ留意スルコト 七 従来ヨリ懸案トナレル諸問題ノ如キハ此際計画シテ其ノ解決ヲ図ルコト 第二 農山漁村経済更生計画樹立実行ノ具体的方針ニ関スル件 一 町村経済更生委員会ノ設置 町村経済更生委員会ハ経済更生計画ノ樹立及実行ノ中枢機関ナルヲ以テ之レガ組織ニ当リテハ左記標準ニ依リ人選等ニハ特ニ留意シ極力情実ヲ排シ適任者ヲ任命又ハ嘱託セラレンコトヲ望ム ㈠ 委員会規程 別紙準則ニ依ルコト ㈡ 委員会ノ構成 ⑴ 会長ハ原則トシテ計画樹立団体長ヲ以テ之ニ充ルコト ⑵ 委員ハ村吏員村会議員区長各種団体長及農山漁業ニ精通セルモノ等二十名乃至三十名ヲ以テ之ニ充ルコト ⑶ 幹事ハ村吏員及各種団体ノ実際事務ヲ鞅掌スルモノヲ以テ之ニ充ルコト 二 基本調査ニ関スル件 基本調査ノ項目ハ余リニ多岐三旦リ理想ニ走ルトキハ調査ノ為ニ意外ニ長時日ヲ要シ却テ調査倒レニ傾ク虞アルヲ以テ町村ノ経済事情ヲ透視シ得ル範囲ニ於テ成ル可ク簡明ナルヲ望ムモ本調査ノ目的ハ町村ノ真相ヲ観察セムガ為ニ行フモノナルガ故ニ之レガ調査ハ成ル可ク正確ヲ期スル必要アルヲ以テ左記ノ方法ニ依リ万全ヲ期セラレンコトヲ望ム ㈠ 調査員ノ設置 調査員ハ常任調査員ト部落調査員トノ二種トス常任調査員ハ役場吏員技術員町村経済更生委員中ノ適任者等ヲ任命又ハ嘱託シ公簿統計又ハ認定ニ依リ調査ス 部落調査員ハ町村経済更生委員ニ統計調査委員各種団体(特ニ青年団)ノ幹部ヲ嘱託シ各個人ニ付各般ノ調査ヲナス ㈡ 調査方法 部落調査委員ハ一人ニテ数戸ヲ分担シ予メ調査用紙ヲ各戸ニ配付シ置キ申告ノ能力アルモノハ自ラ申告セシメ能力無キモノハ調査員ガ聴取リ調査ヲ行フ而シテ調査ノ事実ハ成ル可ク現在若ハ最近ノモノヲトルコト尚借金貯金ニ付テハ実数ヲ得ンガ為メ特ニ無記名申告ヲ為サシムルコト ㈢ 調査ノ項目ハ別冊(町村単位及個人単位)ニ依ルコト ㈣ 調査集計方法 部落調査員ハ各部落毎ニ集計ヲナシ之ヲ常任調査員ニ提出ス常任調査員ハ之等ヲ集計シテ全町村ノ調査書ヲ作製ス ㈤ 町村更生委員会ニ於テ調査ノ結果ニ付各部落毎ニ各項目ニ付長所短所ヲ検討シ后町村全体ノ批判ヲ下ス 三 計画ノ樹立 経済更生計画ハ町村共同ノ目標ナルヲ以テ之ガ樹立ニ際シテハ左記ニ依リ慎重審議実情ニ即セル適切ナル計画ヲ樹立セラレンコトヲ望ム ㈠ 計画案ノ作成 計画ハ町村経済更生委員会ニ於テ基本調査ノ批判ニ基キ樹立スヘキモノナルガ其ノ原案ハ多人数ニテ作成スルハ困難ナルヲ以テ全委員会ニ於テ各委員ノ意見ヲ充分ニ聴取シ置キ委員ヲ産業部経済部社会部等ノ部門ニ分ケ各部ニ於テ委員会ノ総意ニ基キ別紙計画書例ニ依リ夫々分野ニ対スル計画案ヲ作成シ后役場吏員技術員委員中ノ各部長等数名ニテ全計画書ノ原案ヲ作成スルコト ㈡ 計画書ノ提出 前項ノ如クニシテ作成シタル計画ノ原案ハ町村経済更生委員会ノ承認ヲ経タル后基本調査書ト共ニ三部宛ヲ県へ提出スルコト県ニ於テ各課各係ニ於テ之ヲ訂正補足シ町村へ返戻ス而シテ町村ニ於テハ之ヲ再ビ町村経済更生委員会ノ承認ヲ受ケ印刷ニ附シ基本調査書ト共ニ各々四十部宛ヲ県へ提出シ県市町村経済更生委員会ノ審査ヲ受クルコト ㈢ 町村経済更生委員会ノ指導 町村経済更生委員会開催ノ際ハ成ル可ク県、県郡農会関係職員ノ参列ヲ乞ヒ指導ヲ受クルコト ㈣ 計画樹立促進ニ関スル件 計画樹立ヲ促進スル為メ左記日程ニ依リ進行セラレンコトヲ望ム ㈠ 町村経済更生委員会ノ組織 七月中 ㈡ 第一回村民大会(趣旨ノ徹底)㈢ 部落懇談会(趣旨ノ徹底)㈣ 基本調査ノ着手}七月中 ㈤ 基本調査書ノ完成 九月 ㈥ 計画案ヲ作成シテ県へ提出十一月 ㈦ 計画案ノ審議(県関係職員) 十二月 ㈧ 県関係職員ノ審議ヲ経タル計画案ヲ町村経済更生委員会ノ承認ヲ経印刷シテ県へ提出 一月 ㈨ 市町村経済更生委員会ニ於テ計画ノ審査 二月 (一〇) 第二回村民大会(基本調査及計画ノ内容ヲ発表シ実行ヲ誓約セシム) 三月 ㈤ 計画ノ実行 計画ハ実行ヲ主眼トスルモノナルガ故ニ之レガ実行ニ関シテハ極力工夫ヲ凝ラシ実績ヲ挙ゲラレンコトヲ望ム ㈠ 計画趣旨ノ徹底 経済更生計画ハ町村挙テノ大事業ナル故左記方法ニ依リ其ノ趣旨ヲ各戸各人ニ徹底セシムルコト 1 計画書ヲ簡易ニ印刷シ(一枚刷)各戸ニ配付スルコト 2 町村民大会 町村民ヲ一堂ニ集メ調査現況及計画ヲ説明シ同時ニ其ノ実行ノ決意ヲ固メセシムル方法ヲ講スルコト 3 部落座談会ノ開催 町村民大会ノミニテハ町村民ノ全部ニ徹底シ難キ虞アルヲ以テ更ニ各部落毎ニ座談会ヲ開催シ成ル可ク家族全員ヲ集合セシメテ町村民大会同様ノ説明ヲ為シ一層其ノ徹底ヲ期ス尚部落座談会ハ毎月一回之ヲ開催シ計画実行ニ付協議ヲナスコト ㈡ 実行機関 経済更生ノ実行ハ町村経済更生委員会ノ統制ノ下ニ左記各機関互ニ連絡協調ヲ図リ各々其ノ分野ニ応シテ其ノ分担スル計画ノ遂行ニ当ルモノトス 1 経済的事項ハ総テ町村区域トスル産業組合ニ於テ行フ 2 農林漁業改良ノ指導督励ハ町村農会森林組合漁業組合等之ニ当ル 3 各部落ニ農事実行組合(養蚕実行組合)ヲ設置シ之ヲ以テ基礎的実行機関トス其他養豚組合養鶏組合園芸組合等ハ便宜其ノ分担又ハ補助機関トス 4 村内各種団体ノ幹部其ノ他村内ノ有力者ヲ計画実行督励員ニ嘱託シ経済更生委員ト共ニ自ラ範ヲ示シ他ヲ指導セシム ㈢ 実行奨励方法 1 成績審査会ノ開催 町村又ハ町村農会主催ニテ部落ヲ単位トシテ計画実行成績審査会ヲ開催シ団体的競争心ヲ刺戟シテ各個人ノ実行成績ヲ平行的ナラシム 2 計画進度表ノ作成 計画年度ノ終リハ勿論同一年度内ニ於テモ時々実行ノ経過ト計画トヲ照合シタル表ヲ作成シ部落座談会ニ於テ発表シ実行不充分ナル事項ニ付テハ更ニ発奮セシムルコト (水産課「経済更生関係」(昭和八年)神奈川県庁蔵) 〔注〕別紙、別冊共省略。 六 昭和九年度町村長会における県知事横山助成の訓示要旨 横山神奈川県知事訓示要旨 昭和九年六月 本日茲ニ諸君ノ会同ヲ煩ハシ過般地方長官会議ニ於テ別冊総理大臣以下各省大臣ヨリ訓達セラレタル事項ヲ伝達シ併セテ所信ノ一端ヲ披瀝シ諸君ト共ニ当面ノ問題ニ就キ隔意ナキ意見ヲ交換シ以テ行政ノ更新ニ資スルハ洵ニ欣幸トスル所ナリ 昨年末畏クモ 皇太子殿下御降誕アラセラレ益々御健カニ御成育遊バサレ給フハ皇室ノ御繁栄天壌ト共ニ窮リナク国礎弥々鞏キヲ加ヘタル次第ニシテ寔ニ慶賀ニ堪ヘザル所ナリ本年二月此ノ慶福ヲ治ク国民ニ頒タセ給フノ 聖旨ヲ以テ畏クモ恩赦ノ 大詔ヲ渙発アラセラルルト共ニ更ニ児童並母性ニ対スル教化及養護施設ノ資トシテ多額ノ御内帑金ヲ下シ賜ヒシハ国民トシテ寔ニ恐懼感激ノ至リニ堪ヘザル次第ナリ 選挙制度ハ現代ニ於ケル政治機構ノ根柢ヲ成スモノニシテ弊竇ノ存スル限リ政治ノ純化ハ恐ラク期シ難ク而モ既往ノ実績ニ徴シ遺憾ノ点尠カラザルヲ以テ政府ハ今回先ヅ衆議院議員選挙法ノ改正ヲ行ヒ之ガ法律ハ未ダ公布ヲ見ルニ至ラザルモ其ノ内容ハ選挙方法ノ整備改善選挙運動ノ取締強化選挙犯罪ニ対スル刑罰ノ加重所謂選挙公営ノ実施等相当広汎多岐ニ渉レリ右ハ畢竟中央地方ノ別ナク等シク選挙ニ関スル多年ノ積弊ヲ芟除シ其ノ自由ト公正トヲ図ラムトスル趣旨ニ出デタルモノニ外ナラザルヲ以テ諸君ハ十分ノ研究ヲ重ネ其ノ実施ニ際リテハ克ク此ノ趣旨ヲ体シテ適正ナル運用ヲ期シ以テ選挙ノ浄化政治ノ純化ニ一段ノ努力アラムコトヲ望ム 地方自治ヲシテ健全ナル発達ヲ為サシムルト否トハ国家ノ隆替ニ至大ノ関係ヲ有スルヤ論ヲ俟タズ顧フニ我カ国ノ地方自治ハ制度実施以来既ニ四十有余年ノ実験ト訓練トヲ積ミ逐年改善刷新ノ域ニ進ミツツアリト雖現下ニ於ケル自治ノ実状ニ察スルニ未ダ依然トシテ旧套ヲ脱セズ其ノ成績遅々トシテ不振ノ感ナキ能ハザルハ甚ダ遺憾トスル所ナリ以是地方自治体ヲシテ益々自主自立ノ気風ヲ旺ナラシメ以テ自治ノ健全ナル発達ヲ遂ゲシムルハ極メテ喫緊ノコトタルヲ信ズ県ハ茲ニ鑑ミル所アリ本年度ヨリ優良町村ノ建設並特別町村ノ指導計画ヲ樹テ一面ニ於テハ所謂優良町村ヲ建設シ専ラ之ヲ中心トシテ県内他市町村ノ同化遷善ヲ図ルト共ニ他面成績不振ノ町村ニ対シ特別ノ指導監督ヲ施シテ町村治ノ改善刷新ヲ期セムトシ既ニ之ガ実行ニ着手セリ市町村ニ首長タル諸君ハ克ク此ノ趣旨ヲ体シ自治行政ノ改善刷新上更ニ一段ノ努力アラムコトヲ望ム 政府ニ於テハ農山漁村民及中小商工業者ノ救済ニ関シ或ハ時局匡救事業ヲ興シテ地方民ニ直接収入ヲ得ルノ道ヲ与へ或ハ米穀蚕糸等ニ関スル諸般ノ施設ヲ為シテ生産物ノ価格ヲ維持スルノ方途ヲ講ジ或ハ金銭債務臨時調停法農村負債整理組合法ニ依リ負債ノ重圧ニ苦メル農民等ニ之ガ整理ヲ容易ニシテ更生ノ曙光ヲ得シメ或ハ商業組合法ヲ制定シテ中小商工業者ノ経営ヲ合理化シ又金融難ヲ緩和スルノ途ヲ開ク等鋭意力ヲ之ガ解決ニ致シツツアリ県ニ於テモ政府ノ対策方針ト相呼応シテ之ガ救済ノ策ヲ講ジ爾来諸君ノ努力ト県民ノ自力更生ノ意気トニ依リ著々所期ノ成績ヲ挙ゲツツアルハ洵ニ同慶ニ堪ヘザル所ナリ然リト雖不況ノ因テ来ル所遠ク且深キモノアルヲ以テ之ガ更生ハ永続的ニシテ且永遠三旦ル計画ヲ樹立実行スルニ非ザレバ到底之ガ更生ノ実ヲ挙グルコト至難ナリ而シテ時局匡救事業ハ今ヤ茲ニ第三年ヲ迎ヘタルモ更ニ一段ノ緊張ト努力トヲ以テ過去ノ経験ト地方ノ実状トヲ考慮シ最公正適切ナル計画ヲ樹立シ以テ本事業ノ目的達成ニ万遺憾ナキヲ期セラレムコトヲ望ム 近年我ガ国ニ於ケル社会運動ハ異常ニ深刻且複雑ノ度ヲ加へ殊ニ共産主義運動ノ如キハ厳密ナル取締ヲ受クルニモ拘ラズ執拗ナル潜行的策動ヲ為スノ傾向アリ又近時頓ニ興リ来リタル右翼急進ノ思想ニ在リテモ革新ヲ希求スルノ余リ其ノ運動動モスレバ常軌ヲ逸シテ或ハ矯激ナル思想ヲ宣伝シ或ハ直接行動ニ訴フル等不穏ノ策謀ヲ敢テスル者アルハ洵ニ寒心ニ堪ヘザル所ナリ依テ政府ニ於テハ夙ニ力ヲ思想対策ノ樹立ニ効シ健全ナル思想ノ培沃ニ努メ各般ノ方策ヲ講ジテ之ガ徹底ヲ期シツツアリ諸君ニ於テモ十分此ノ趣旨ヲ体シ克ク地方民衆ノ思想傾向ニ留意シ日本精神ノ作興ヲ基調トシテ普ク国民思想ノ善導ニ最善ノ努力ヲ払ハレムコトヲ望ム 近時世相ノ変転ト産業経済ノ発展トニ伴ヒ著シク社会生活ノ不安ヲ醸成セルハ真ニ憂慮ニ堪ヘザル所ナリ之ヲ打開シテ人心ノ安定ヲ期スル為政府ニ於テハ土木事業ノ施行医療救護ノ徹底失業救済事業ノ実施其ノ他社会事業施設ノ整斉普及等各般ノ経営ニ力ヲ効シツツアリト雖国民生活ノ不安ハ尚未ダ除去セラルルニ至ラズ随テ今後ニ於テモ益々都市農村ヲ通ジテ有効適切ナル社会政策施設ノ充実ヲ図リ以テ社会生活ノ安定ヲ期図スルハ最緊切ノ要務ナリ諸君ハ克ク部内ノ実情ヲ考察シ各般ノ施設常ニ宜シキヲ制シ人心ノ安定ヲ図ルニ就キ善処セラレムコトヲ望ム 以上ノ外諸君ノ協力ヲ請ヒタキ事項ニ付テハ別ニ項ヲ別チテ指示注意スル所アルベキニ依リ克ク其ノ意ヲ体シ益々庶政ノ刷新ニ力ヲ効サレムコトヲ切望ス (知事官房「地方長官会議書類」(昭和九年)神奈川県庁蔵) 〔注〕別冊省略。 七 昭和十年度町村長会における県知事石田馨の訓示要旨 石田神奈川県知事訓示要旨 昭和十年六月 本年一月本県ニ着任後茲ニ初メテ各位ノ会同ヲ煩ハシ過般地方長官会議ニ於テ内閣総理大臣以下各省大臣ヨリ訓達セラレタル事項ヲ伝達シ併セテ所懐ノ一端ヲ披瀝シ各位ト共ニ当面ノ諸問題ニ就キ隔意ナキ意見ヲ交換スルノ機会ヲ得タルハ予ノ深ク欣幸トスル所ナリ 建国以来上ニ万世一系ノ 皇統ヲ奉戴シ下ニ衆庶至誠ヲ傾倒シテ奉公ノ道ニ粉骨砕身スルハ実ニ我カ国体ノ精華ニシテ世界万邦ニ其ノ比ヲ見サル所ナリ方今人心動モスレハ詭激ニ趨ツテ中正ヲ失ハムトスルノ風潮アルニ鑑ミ苟モ国体ノ本義ニ疑惑ヲ生スルカ如キ言説ハ厳ニ之ヲ戒メ愈々国体ノ本義ヲ明徴ニシ醇厚中正ノ美風ヲ振起シ国民精神ノ振作更張ヲ図ラサルヘカラス各位ハ常ニ中正ヲ保持シテ時代ノ進運ニ適応シ益々日本精神ノ闡明ニ努メ以テ時弊ノ匡正ト国運ノ伸張トニ力ヲ致サレムコトヲ望ム 敬神崇祖ハ我カ国民精神ノ精髄ニシテ神社祭祀ハ実ニ一貫セル我カ邦政教ノ枢軸ナリ近時日本精神愈々作興セラレ神社崇敬ノ淳俗大ニ興ラムトスルヲ見ルト雖尚一層神社祭祀ノ本義ヲ明徴ニシテ敬神崇祖ノ美風ヲ涵養助長スルハ最喫緊ノ要務ナリト信ス各位ハ宜シク此ノ趣旨ヲ体シ益々神社ノ機能発揚ニ努メ神社行政ノ振粛ニ遣憾ナキヲ期セラレムコトヲ望ム 我カ国選挙界ノ弊竇年ト共ニ漸ク甚シク自由公正ナル民意ノ発露ヲ妨ケ憲政ノ基礎ヲ危ウシ諸般ノ政弊其ノ因ヲ此処ニ発スルモノ尠カラス今ニ於テ此ノ弊風ヲ矯正スルニ非サレハ憲政ノ前途寔ニ寒心ニ堪ヘサルモノアリ仍テ政府ハ這般選挙粛正委員会令ヲ公布シテ府県ニ選挙粛正委員会ヲ設ケ選挙粛正ニ関スル国民的運動ノ本源タラシメムトセリ本委員会ハ広ク有識経験者ヲ以テ組織シ選挙ニ関スル弊害ノ防止公正ナル選挙観念ノ普及等選挙粛正ニ関スル事項ヲ調査審議セシメ其ノ結果得タル諸方策ハ各其ノ分担ニ応シテ直ニ之ヲ実行ニ移シ官民相協力シテ選挙界ノ廓清ヲ期セムトスルモノナルヲ以テ各位ニ於テモ克ク其ノ趣旨ノ存スル所ヲ体シ本運動ノ徹底ニ協力援助アラムコトヲ望ム 農山漁村及中小商工業ノ不況ハ依然トシテ解消ヲ見ルニ至ラサルモ其ノ後政府並県ノ種々ナル匡救的施設ト官民一致ノ努力トニ依リ漸ヲ逐フテ更生ノ歩ヲ進メ稍々其ノ曙光ヲ望ミ得タリト雖不況ノ因テ来ル所深遠ナルノミナラス各種ノ天災等ノ為一層其ノ度ヲ深カラシムルハ寔ニ遺憾トスル所ナリ是ヲ以テ各位ハ益々自主的精神ヲ振起シ隣保共助堅忍不抜ノ気風ヲ根本義トシ進ンテ農家並中小商工業者ノ経営ヲ合理的ニ計画樹立セシメ以テ農山漁村及中小商工業ノ経済更生ノ実ヲ挙クルニ一層ノ努力ヲ払ハレムコトヲ望ム 今般政府ハ従来ノ実業補習学校及青年訓練所ノ特徴ヲ統合シテ青年学校ヲ創設シ其ノ施設経営ノ努力ヲ一ニ集中スルト共ニ其ノ内容ニ於テモ亦夫々改善ヲ加へ青年大衆ヲシテ真ニ堅実有為ノ国民タラシムヘク一層青年教育ノ普及徹底ヲ期セラレタリ各位ハ克ク新制度ノ趣旨ヲ体シ其ノ組織内容ノ整備充実ヲ期スルト共ニ之カ目的達成ノ為一段ノ努力ヲ致サレムコトヲ望ム 輓近時勢ノ進運ニ伴ヒ自治体ノ事務ハ日ヲ逐フテ其ノ量ヲ増スト共ニ其ノ内容亦著シク複雑多岐ヲ極メ之カ為市町村吏員ノ職責愈々重且大ヲ加フルニ至レリ宜シク忠実精励其ノ重責ニ任シ以テ市町村民ノ福祉増進ヲ図ルヲ念トシ深ク自ラ戒メテ過ナカラムコトヲ期スヘキモノナルニモ拘ラス往々ニシテ其ノ職責ヲ誤リ甚シキニ至リテハ刑辟ニ触ルル者ヲモ見ルニ至ルハ寔ニ遺憾ニ堪ヘサル所ナリ謂フ迄モナク綱紀ノ振張ハ庶政刷新ノ根本ヲ為スモノナルヲ以テ各位ハ特ニ此ノ点ニ留意シ部下吏員ノ規律ニ些ノ弛緩ヲ生スルコトナク常ニ公正真摯ノ態度ヲ以テ事ニ当リ大ニ庶政ノ刷新ニ力ヲ協セ実効ヲ収メラレムコトヲ望ム 終リニ本年十月一日ヲ以テ施行セラルル国勢調査ハ法律ノ規定ニ依ル簡易調査ナリト雖国勢ノ基本ヲ明ニスヘキ目的ニ於テ毫モ大規模ノ調査ト異ル所ナク我カ帝国ノ全版図ニ亘リ人口現象ノ実状ヲ調査シ複雑ナル社会組織及国民生活ノ実況ヲ審ニシ又過去ノ調査ト比較シテ我カ国勢ノ動向ヲ明ナラシメ以テ行政経済其ノ他各般ノ基礎資料タラシムヘキ重要ナル調査ナルヲ以テ各位ハ克ク現下ノ国情ト本調査ノ重要性トニ鑑ミ万遺漏ナキヲ期セラレムコトヲ望ム 以上ノ外各位ノ協力ヲ請ヒタキ事項ニ付テハ別ニ項ヲ別チテ指示注意スル所アルヘキニ依リ克ク其ノ意ノ存スル所ヲ体シ各種ノ機関ト連繋シテ其ノ実効ヲ挙クルニ善処セラレムコトヲ望ム (人事課「地方長官会議書類」(昭和十年)神奈川県庁蔵) 八 昭和十一年度町村長会における県知事半井清の訓示要旨 昭和十一年五月 半井神奈川県知事訓示要旨 現下時局極メテ重大ナル秋ニ当リ先般図ラスモ本県知事ヲ拝命シ茲ニ地方長官会議ニ於ケル内閣総理大臣以下各大臣ノ訓示ノ趣旨ヲ伝達シ相共ニ此ノ非常時局ニ処シテ奉公ノ誠ヲ効サントス 近時世相ノ推移ニ伴ヒ時ニ矯激ナル思想ニ趨リ動モスレハ国体ノ本義ニ悖ルカ如キ言動ヲナスモノアルハ寔ニ憂慮ニ堪ヘサルトコロニシテ殊ニ去ル二月二十六日輦轂ノ下ニ於テ異常ノ事変起リ上ハ宸襟ヲ悩マシ奉リ下ハ人心ニ衝動ヲ与へ治安乱レテ遂ニ戒厳ノ布告ヲ見ルニ至リシコトハ真ニ恐懼措ク能ハサルトコロナリ 今次ノ不祥事件ハ固ヨリ一部不穏分子ノ策動ニ基クモノニシテ皇軍ノ基礎ハ之カ為ニ毫モ微動スルモノニアラス而モ其ノ前後措置ニ関シテハ軍部ニ於テ確固タル決意ヲ以テ軍紀ノ粛正ニ努メラレ国民ハ深ク其ノ措置ニ信頼シテ益々軍民一致ノ実ヲ挙ケ弥々皇軍ノ精華発揮ニ協力スル所ナルヲ以テ各位ハ宜シク時局ヲ正視シ本事件ノ影響ニ依リ崇高ナル兵役義務ノ観念ニ疑惑ヲ抱カシメ或ハ国民的支援ヲ減退セシムルカ如キコトナキヤウ努メラレンコトヲ望ム 抑々我カ国体ノ崇高尊厳ハ炳トシテ日星ノ如ク世界万邦ニ其ノ比ヲ見サルトコロナリ此ノ崇高尊厳ナル国体ノ精華ヲ顕揚シ以テ一君万民挙国一体ノ美ヲ済スハ庶政百般ノ基調ニシテ国民ノ方ニ率由スヘキハ言ヲ俟タサルトコロニシテ鞏固ナル国体観念ヲ愈々明徴ニシ苟モ国体ト相容レサル思想ハ断シテ之ヲ芟除シ常ニ国憲国法ヲ遵守シ其ノ尊厳ヲ保持スルコトニツトムルハ特ニ現下ノ時局ニ処シテ最モ緊要ナルコトナリ 惟フニ国家興隆ノ淵源ハ一ニ教育ノ振興ニ俟ツトコロニシテ教育ノ振興ハ一ニ教育者自身ノ向上ト其ノ熱意トニ依ルニアラサレハ其ノ実績ヲ挙クル能ハサルコト亦明ラカナリ今ヤ国家非常ノ時艱ニ直面シ其ノ淵源スルトコロ甚ダ深キモノアリ挙国一心一段ノ真剣味ヲ以テ之カ打開ニ勇往邁進スヘキノ秋ニ拘ラス国民ノ間ニハ軽佻浮華ノ風尚其ノ跡ヲ絶タサルハ洵ニ遺憾トスルトコロニシテ各位ハ此ノ際一段ノ緊張ヲ以テ教育ニ当リ大ニ国民精神ヲ更張シテ堅実真摯ナル民風ヲ振作スルヤウ剴切ナル施設経営ヲ講シ其ノ効果ヲ挙クルニ一層意ヲ用ヒラレンコトヲ望ム更ニ公職ニ従フモノハ公明ナル心事ト中正ナル態度トヲ以テ上下相共ニ吏道刷新ニ勇往スルノ秋各位ハ宜シク躬ヲ以テ範ヲ垂レ部下職員ヲ督励シテ相共ニ師表タルベキ徳操ヲ磨キ学力識見ノ増進ヲ図リ学校長ヲ中心トシテ全職員協力一致以テ教育ノ徹底ニ最善ノ努力ヲ払ハレンコトヲ希望シテ已マサルトコロナリ 以上ハ此ノ際特ニ教育関係者ニ対シ考慮ヲ煩ハスヘキ事項ニツキ述ヘタルニ過キスト雖各位ハ現下社会情勢ノ実相ヲ洞察認識セラレ教育ノ進展ニ格段ノ努力ヲ効サレンコトヲ切望シテヤマサル次第ナリ (人事課「地方長官会議書類」(昭和十一年)神奈川県庁蔵) 九 神奈川県農山漁村経済更生特別助成要旨 「昭和十二年七月経済更生特別助成要旨神奈川県 」 農村経済更生と特別助成 一 農村経済更生の趣旨 農山漁村を根本的に振興せしむるには其の経済力を伸張しなければならない。之が為には各種の農村政策を続けて実行し更に益々之を拡充しなければならぬが之だけでは未だ充分でない。国の農村政策と相俟て農山漁村民をして経済更生計画の実行に邁進せしむる事が極めて必要である。 それでは農村経済更生計画とはどう云ふものであるかと云ふにそれは農山漁家が有機的一体となつて自治協同の精神を作興し自奮自励協力一致して各々其の村の実情に即して樹てらるべきものである。そして其の目標とする所は土地水面共同施設等の基本的要素を整備総合し産業及経済を組織的計画的にする。そして又肥料食糧等の自給範囲を拡大し負債を整理し生活の改善を行ふ。斯くて其の収入を増加し支出を合理化し更に備荒共済―不時の用意や互に助け合ふ施設を充実して更生の目的を達し生活の安定を齎らさんとするのである。 この農村経済更生計画の樹立実行は昭和七年以来全国の農山漁村に於て逐次之を実行し相当の実績を挙げつゝあるが若し農山漁村に此の経済更生計画の樹立実行と云ふ自奮更生自力更生の意気と努力とがなかつたならばどうであらうか。国に於て如何に農村政策を継続実施し益々之を拡充しても其の効果を充分に発揮せしむる事は出来ない。農山漁村に於ける経済更生計画の樹立実行と云ふ自力更生運動は国の他の施設を効果あらしむる為にも極めて必要なことである。 二 農村更生運動の進展 農村経済更生計画の樹立実行即ち農村の自力更生運動が全国的に開始せらるゝや旺盛なる更生精神が全国各地に燃え上り本運動は山村水郭にまで拡大進展し爾来相当の熱意を以て迎へられ既に計画を樹立した町村は六千五百九十九(昭和十一年度現在)の多きに達した。 本運動の開始当初農林省の計画では一年に一千町村経済更生計画を樹立実行せしむる予定であつたが本運動は常に予定計画を突破して進展し五ケ年にして六千五百九十九町村正に全国農山漁村の六十%以上に経済更生計画が樹立実行され引続いて全国農山漁村に及ぼさんとしてゐる。 三 経済更生の効果 然し経済更生計画の樹立実行は計画樹立町村の多きを以て満足すべきでない。要は其の実行にある。実績が如何に挙りつゝあるかにある。さうして此の点に於ても経済更生計画は年一年と実行が確保され相当な成績を挙げつゝある。例へば計画実行一両年にして既に赤字を黒字に転化し或は五ケ年計画を両三年にして実行し終り更に第二次計画に突入した町村も決して尠くない。 農村経済更生計画樹立実行の目標は農山漁家をして村計画部落計画の下に各戸計画を樹立実行せしめ赤字を黒字とし負債を整理し其の更生状態を恒久化するにある。計画樹立町村は何れも此の目標に向かつて進みつゝあるが赤字を黒字とする計画は大体五ケ年を以て完成するものが多く従て其の目標を完全に達成した町村は未だ多くはない。赤字黒字の関係は以上の如くであるが此の計画の実行が農山漁村民に及ぼした影響は其の他に於て相当大なるものがある。 その第一は全村民が協力一致更生の意気に燃ゆるに至つた事である。不況下の農山漁村民は前途に光明を失ひ何を為すべきかに迷つたものも尠くなかつたが経済更生計画の樹立即ち自村建直しの計画を樹てゝ之によつて村民の進むべき道が示されて以来村民は其の前途に光明を認め全村老若男女に至るまで各々其の分担事項に対して活動し自奮更生の意気に燃え協力一致更生の一路を邁進しつゝあることは本運動の齎らした著しき効果と云ふべきであらう。 第二は各種機関団体が連絡協調して活動しつゝある事である。経済更生計画樹立実行以来町村長は常に其の第一線に立つて活動し小学校長亦経済更生委員として町村民の教育教化の方面に於て重要な役割を演じ農会産業組合部落の農事実行組合養蚕実行組合等村内の各種機関団体が連絡協調して自村の更生に活溌なる活動を為すやうになつた事も本運動の著しい効果である。 第三は産業の総合化多角形化である。経済更生計画樹立実行以来町村を一有機体と考へ之を総合的に指導しようとする気運が生じ特に農村指導者の方面で農林漁業の一部門に膠着することなく産業の多角形化によつて町村経済の安定を図る傾向に進み漸次産業の総合化多角形化が実現されつゝある。 第四は農家経済及農村生活の改善である。経済更生の進むに従つて予算生活の実行農家簿が記帳されて農家経済の合理化が行はるゝと共に冠婚葬祭等の改善を始めとし農村生活が漸次改善されつゝある。 第五は男女青年及婦人の活動である。経済更生の為に青年が各戸調査を行ひ又は産業開発の自発的研究を為すと共に共同作業場の利用共同開墾等常に協同運動の先頭に立つて活動しつゝあることは相当各地に見受けらるゝ所である。又之と同様に農村の主婦女子青年達が生活改善副業等に活動し始めた事も経済更生計画樹立実行以来の著しい現象である。 四 経済更生特別助成 特別助成の趣旨 農山漁村経済更生の趣旨及更生運動の進展状況並に其の効果は大体以上の如くであるが全国六千有余の経済更生指定町村中には村民の熱意と努力とに拘らず資力が乏しいと云ふ一事によつて重要な計画事項を実行することが出来ず其の為に計画全体を水泡に帰する虞ある町村も尠くない。仍て昨年度から此の如き町村に対しては其の実情に適した町村単位の総合助成をして基礎的要素の整備自給範囲の拡充其の他農村経済の建直しに必要欠くべからざる重要計画事項を実行せしむる事となつた。昭和十一年六月二十三日農林省令第十号を以て農山漁村経済更生特別助成規則が定められたが之が即ち農村経済更生特別助成施設である。 特別助成の効果 然らば此の特別助成は農山漁村経済更生の上に如何なる効果を齎らすであらうか次にそれを簡単に述ぶることゝする。 此の施設によつて特別助成を受くる農山漁村は之に依て経済更生の基礎要素―土地水面共同施設等を整備し産業経済の全般を組織的計画的にし恒久的更生の基礎を確立する事が出来よう。又村民は此の基礎の上に立つて従来に倍して計画の実行に邁進する様になり更生目標を容易に且確実に実現して其の収支の均衡を図り負債の整理を促進して生活の安定を齎らすであらう。 然し此の特別助成は自力更生の方向転換でなく其の生成発展である。何となれば此の特別助成は本来村民に更生の熱意が無く協力一致を欠き村民自体に於て為すべきことを為さない町村には助成しないからである。村民の更生の熱意が旺盛であつて克く協力一致し村の建直し計画の実行に邁進しつゝある町村に対して助成するものであるから自力更生に拍車を加へこそすれ毫も其の方向を転換するものでない。従て動もすれば助成金交付等に伴つて生ずる村民の依頼心を誘起する虞もなく却つて更生の熱意旺盛となり計画の実行を迅速に且つ之を徹底せしむるであらう。 尚此の特別助成は現に更生計画の実行に邁進しつゝある町村に対して其の全体の実行を可能ならしむる為村民の自力を以てしては実行することが出来ないものに総合的に助成するものである。従て其の助成は克く農山漁村の実情に即することが出来独り経済更生計画の実行に効果があるのみならず国の他の助成施設と相関係を保つて農山漁村の振興に資することが極めて多大であらう。 特別助成の種類及条件 特別助成には経済更生計画の実行費に対する国の助成と経済更生計画実行の為の借入金に対する利子一部補給との二種がある。 前者即ち経済更生計画の実行費に対する国の助成は当該町村の経済事情諸施設の有無村民の経済力負債国及道府県の助成施設の程度町村財政の状況其の他各般の経済事情特に村民の協力一致更生の熱意の有無等を検討する。そして委員会の審査を経て自力に依ては実現困難な計画事項に対して之を交付するものである。 後者即ち経済更生計画実行の為の借入金に対する利子の一部補給は経済更生の計画事項の中には借入金を以て之を実行するものがあるから此等に対して低利な資金を供給し更に利子負担の軽減を必要とするものに対しては利子の一部を補助するものである。 特別助成の金額 特別助成の金額は町村の更生計画に応じて夫々異るべき事は勿論である。然し之を平均して一ケ町村の事業分量約四万円に対し助成金一万五千円低利資金の融通一万五千円材料供給労力奉仕負担金等に依る自己負担一万円の割合とする。又低利資金に対しては満五ケ年間年一分二厘の利子を補給するものとする。尚昭和十二年度予算に計上された助成金総額は五百万円で内十二年度二百五十万円十三年度分二百五十万円である。 更に此の農村経済更生特別助成は其の助成の趣旨方法効果等に於て従来の補助助成施設と相当異る所があるから特に此の点について其の主なるものゝ二三を挙げることゝする。 その第一は総合助成であることである。経済更生特別助成は個々の具体的町村を指定して其の総合的指導をすると共にそれに総合助成をして経済更生計画を完成せしめようとするものであつて単なる事業別助成でない。従て其の助成たるや克く当該農山漁村の実情に即して農山漁村別に其の窮乏の原因が審にされ各村の環境に応じて総合的に更生の基礎的条件を整備する事が出来る。 第二は特別助成は村の人的精神的協同の力を重視してゐる事である。何となれば其の町村の選定に当つては中心人物の有無村民が自力を以て更生せんとする熱意と努力村内各種団体の協調連絡の程度はどうか等の人的要素が重視されるからである。此の点に於て此の施設は単なる生産助長政策と全然異つた画期的政策と云ひ得るであらう。殊に村民に更生の熱意なく協力一致を欠き村民自体に於て為すべき事を為さゞる町村は如何に窮乏しても此の助成金を交付しないから一般町村の経済更生運動をも更に大いに活溌に進展せしむるであらう。 又特別助成を受くる町村の計画実行に当つても経済更生の本旨に鑑みて村民の一致協力徹底的に自力更生の精神に終始することを厳重なる指令条件とするから特別助成をすることによつて自力更生の精神を高めこそすれ之を阻害するやうな虞は絶対にない。 第三は特別助成は一時的救済でないことである。此の特別助成は匡救土木事業のやうに労賃収入によつて村民の経済を一時的に救済せんとするものでない。真に村民の更生の為必要な計画事項を村民の自力更生の精神を基調として完成せしめんとするものである。従つて労力の如きも村民の労力奉仕によるものが多い。特に此の施設は青年男女が村の更生計画の完成の為に総動員すると云ふ農村独特の美風を徹底せしむることが出来よう。 第四は全村民の生活の安定を目標とすることである。此の特別助成は正確な基本調査の下に村民の総意によつて樹てた自主的計画を完成せしめんとするものである。そして其の目標とする所は全村民の収支の均衡を図り負債を整理し其の生活を安定せしめんとするにある。故に単に少数者の模範的施設を奨励せんとするものでなく又単なる各種の共同施設を充実せしめんとするものでもない。従て特別助成を受くる町村は必ず負債整理計画と部落計画それから各戸計画の樹立実行を条件とする。 第五は此の特別助成は全村民を更生せしむることである。経済更生計画の樹立実行は隣保共助の精神によつて村民の生活の安定負債の整理を行はしめんとするものである。従て従来の助成施設のように助成の結果が却て貧富の懸隔を大にし動もすれば少数有志の利得に帰する様な虞はない。此の点については特に留意した為耕地の少ない零細農民に耕地を得せしめようとする計画や部落民の労力奉仕によつて共同に開墾し共同に耕作して其の収益を積立て備荒共済に充てんとする計画や共同負債償還農地の経営共同農具の利用共同種畜の経営等零細農民を対象とする計画事項の多いことは従来の助成施設とは大いに異るものである。 斯様に此の経済更生特別助成は従来のやうな単なる生産助長政策でなく又村民の一時的救済を目的とするものでもない。村民の自力更生協力一致の精神を一層強調して個々の村の実情に応じ町村自ら樹立した経済更生計画を完成せしめ農村に対する国策と相俟つて農山漁村を永遠に更生繁栄せしめんとするものである。 (新磯村役場「経済更生特別助成関係書類」(昭和十三年)相模原市立図書館蔵) 一〇 神奈川県農山漁村経済更生計画再検討の方針 時局対処農山漁村経済更生計画再検討方針 第一 指導精神 昭和七年農山漁村経済更生運動創始以来満六ケ年ヲ経過シ此ノ間指定町村数ハ逐年増加シ既ニ九十三ケ町村ニ達シ県下全町村数ノ約六割強ニ及ベリ 戦時体制下ニ際会セル之等農山漁村経済更生計画ハ既往ニ於ケル実行経過ト時局ノ推移ニ鑑ミ当初計画ニ適切ナル検討ヲ加へ以テ経済更生計画ノ完璧ヲ期スルヲ要ス而シテ之ガ修正増補ニ当リテハ当該農山漁村ノ既往計画ノ実績ヲ検討シ自村ノ実情ニ即セシムルヲ要スルハ勿論ナルモ特ニ左記事項ヲ強調セシメムトス 第二 実施要項 一 精神作興ニ関スル事項 1 所謂全村学校ヲ設ケ年一、二回之ヲ開設スルコト 即チ一回ハ三日間ニ亘リ第一日ハ男女青少年第二日ハ戸主第三日ハ主婦ヲ招集シテ講演会ヲ開催シ全村民ニ対シ時局認識ノ強化徹底ニ努ムルコト 2 部落常会ノ励行共同収益地ノ設置等ニ依リ精神的結合ヲ一層強固ナラシムルコト 3 町村経済更生委員会ハ隔月一回同委員会部長会議ハ毎月一回之ヲ開催シ経済更生計画ノ反省是正ニ関シ協議シ其ノ結果ヲ部落常会ニ於テ徹底セシムルコト 4 青年ニ農民道場ヘノ入場ヲ勧奨シ農村中堅人物ノ養成ニ努ムルコト 5 学校児童生徒ノ開墾植林其他ノ共同労働ニ依ル勤労奉仕ヲ行フコト 6 随時各種強調週間ヲ設定シ強調項目ノ実践窮行ニ努ムルト共ニ一面精神訓練ニ資スルコト 7 町村区域ノ短期合宿講習会等ヲ行ヒ特ニ部落指導ノ中心タルベキ男女青年ノ養成ニ努ムルコト 二 農山漁村民ノ保健栄養ニ関スル事項 農山漁村民ノ保健栄養ノ改善ヲ図リ特ニ婦人ノ労働増加ニ稽へ農繁期共同炊事同託児所等ノ普及ニ努メ又医療衛生施設ノ整備充実ヲ図ルコト 三 生産力ノ維持拡充ニ関スル事項 1 部落実行組合ノ組織ノ整備充実ヲ図リ該実行組合ヲ中心トシテ村計画ニ即応セル部落計画ヲ樹立実行セシムルコト 2 軍需関係作物(甘藷苧麻飼料作物等)ハ部落計画ニ基キ農家各個ガ其ノ責任分量ヲ協約実行スル様各戸計画ヲ樹立実行セシムルコト 3 開墾ニ依ル耕地ノ拡張其他資源ノ開発ヲ図ルコト 4 種苗燃料肥料等ノ生産資材並ニ生産資金ノ供給ヲ円滑ナラシムルニ努ムルコト 四 農林漁業経営改善ニ関スル事項 1 労力ノ減少ニ依リ経営ニ欠陥ナカラシムル為勤労奉仕共同作業共同経営共同利用施設ノ拡充強化ヲ図ルコト 2 産業ノ基本的要素ノ整備充実ヲ図ルコト 3 町村ノ自然的経済事情ノ変化ニ応ズル経営規模経営方式ヲ考究シテ之ニ応ズル如ク計画ヲ再検討スルコト 4 購買販売ノ改善統制ヲ一層徹底強化スルコト 五 労働力ノ調整ニ関スル事項 1 町村毎ニ労働力調整計画ヲ樹テ村内所要労力ヲ確保スルト共ニ村外供給労力ノ調節ヲ図ルコト 2 勤労奉仕ヲ一層組織的ニ計画化シ且之ガ施設ヲ恒久化スルコト 3 児童生徒婦人其他ノ未利用労力ノ活用ヲ図ルコト 4 役畜ノ共同利用ヲ普及スルコト 六 金融調整ニ関スル事項 1 国民貯蓄奨励ノ方針ニ対応シ各種貯金ヲ一層励行セシムルコト 特ニ農山漁村ニ於テ軍需労務軍備品ノ供出農林水産物ノ価格騰貴ニ依リ収入ノ増加シタルモノニ対スル特別ノ貯蓄計画ヲ樹ツルコト 2 産業組合及漁業組合ハ生産拡充ノ資金ニ対シ努メテ融通ヲ図ルコト 3 有畜農業ヲ徹底スル為農業動産信用法ノ制度ヲ一層活用スルコト 4 負債整理委員会ノ一層積極的ナル活動ヲ促シ負債ノ整理ヲ徹底スルコト 七 満洲農業移民 満洲集団農業移民ヲ実施シ農村ニ於ケル土地ト人口ノ調整ヲ図リ以テ根本的ニ農村ノ更生ヲ図ルコト 第三 実施方法 一 本要項ニ依リ樹立セラルベキ第二期計画又ハ追補計画ハ町村経済更生委員会ノ審議ヲ経テ之ヲ決定スルコト 二 第一期計画ヲ完了シ又ハ完了セントスル町村(昭和七年度指定及昭和八年度指定)ハ既往ノ実績ヲ全面的ニ検討シ尚本要項ニ留意シ第二次五ケ年計画ヲ樹立スルコト 三 第一期計画ノ未完了町村ハ一応残余ノ実行期間ヲ目標トシ本要項ニ依ル追補計画ヲ樹立スルコト (仙石原村役場「経済更生計画樹立実行ニ関スル書類綴」(昭和十三年)箱根町役場蔵) 第二節 自力更生対策 一一 昭和七年度神奈川県副業奨励計画概要 七農号外 昭和七年六月六日 内務部長 各市町村各郡市農会各郡市水産会足柄上郡津久井郡木炭同業組合}長殿 昭和七年度副業奨励計画書送付ノ件 副業奨励参考資料トシテ昭和七年度副業奨励計画別冊ノ通及送付候 〔別冊〕 昭和七年度神奈川県副業奨励計画概要 社会生活ノ向上ト経済界変動ノ影響トハ動モスレバ中小産業者ノ経済ヲ圧迫シ其生活ヲ脅威スルコト漸ク甚シク殊ニ農山漁村ニ於テハ主業収入ノミヲ以テ生活ノ安固ヲ期シ難キノ状態ナリ故ニ産業組織ノ拡張経営方法ノ改善労働能率ノ増進ヲ図ルト共ニ主業ノ傍余剰労力ヲ以テ適当ナル副業ヲ経営セシメ収入ノ増加ヲ計リ生活ノ安固ヲ期セシムルコトハ県下ノ現状ニ鑑ミ最緊要ノコトナリ県ハ前年度ニ引続キ昭和七年度ニ於テ県費九千五百八円ヲ支出シテ左ノ通副業奨励計画ヲ実施シ副業ノ扶殖副業ノ共同経営又ハ生産販売ノ改善ヲ図ラントス 第一 副業奨励事務 一 副業奨励ニ従事スル職員 前年度ニ継続シ専任技師一名技手一名主事補一名ヲ置キ副業ニ関スル指導奨励ヲ継続スルト共ニ必要ト認メタル事項ノ調査研究ヲナス 二 奨励施設 (イ) 講習会伝習会開催 特ニ副業技術ノ指導ヲ必要ト認メタル事項ニ付講習会伝習会ノ開催ヲ希望スル者ハ該施設ヲ必要トスル事由並ニ日時会場ヲ記載シ受講者名簿ヲ添付ノ上開催申請書ヲ一ケ月前ニ提出セラレ度 (ロ) 講師又ハ実地指導教師ノ派遣 適当ナル団体ニ対シ其申請ニヨリ講師又ハ実地指導教師ヲ派遣スルヲ以テ之ガ希望者ハ(イ)ノ場合ニ準ジタル手続ニ依ラレ度 (ハ) 奨励金交付 副業奨励上適切ナル施設ヲ助成スル為市町村農会水産会産業組合漁業組合其他申合組合ニシテ県ニ於テ適当ナリト認メタルモノニ対シ奨励金ヲ交付スルヲ以テ之ガ交付ヲ受ケントスル者ハ本年ニ限リ六月末日迄ニ昭和二年七月県令第九十三号副業奨励規程別項参照ニ依リ申請書ヲ提出セラレ度 第二 奨励事業 本年度ニ於テ奨励金又ハ現物ヲ交付シテ奨励セントスル副業ハ農産林産水産工産畜産副業品販売路拡張ノ六類ニシテ其奨励施設ノ内容左ノ如シ 一 農産副業 (イ) 農産製造奨励 漬物其他蔬菜果実類ノ加工製茶等副業的農産物加工ニ関スル講習会ヲ開催スルト共ニ生産販売ニ関スル共同施設 (ロ) 藁稈細工奨励 縄莚蜀黍箒等ノ伝習会ヲ開設スルト共ニ製品ノ改良統一及生産販売ニ関スル共同施設 (ハ) 屑繭加工奨励 玉繭出穀繭等ヲ利用シ玉糸真綿加工ノ講習会ヲ開設スルト共ニ生産販売ニ関スル施設 (ニ) 苗木配付 空廃地利用ヲ目的トシテ栗及柿ヲ集団的ニ栽植セシメ将来地方的ニ相当ノ生産ヲ挙ゲ得ル様計画ヲ樹テタル団体ニシテ適当ナリト認ムルモノニ対シ左記苗木交付要綱ニヨリ苗木ノ無償交付ヲナサントス 1 団体若クハ団体各員ノ栽植面積一団地五畝歩以上ノコト 2 団体若クハ団体各員ニ対スル交付本数ハ二十五本ヲ限度トス 3 成育中ハ十分ナル肥培監理ヲナスコト 4 成育ノ途中ニ於テ枯損ノ場合ハ補植ヲナスコト 5 事業ノ施行不適当ト認メタルトキハ苗木評価額ノ一部若シクハ全部ノ還付ヲ命ズルコトアリ 6 苗木ノ配付ヲ受ケタル者ニ対シ知事ハ監督上必要ナル命令検査指示ヲ行フコトアリ 7 本年ニ限リ六月三十日迄ニ別紙第三号様式ニ依ル苗木交付申請書ヲ知事ニ提出スルコトヲ要ス 8 交付ヲ受ケタル者ハ第四号式ニ依ル事業並経費決算報告ヲ四月三十日迄ニ提出スルコトヲ要ス 二 林産副業 (イ) 製炭改良奨励 製炭実地指導教師ヲシテ各地巡回指導セシメ又ハ製炭ニ関スル伝習会ヲ開設スルト共ニ製品ノ改良統一並ニ販売ニ関スル共同施設 (ロ) 山葵栽培奨励 実地指導教師ヲシテ各地ヲ巡回指導セシムルト同時ニ山葵田ノ開墾改良施設 (ハ) 筍栽培奨励 筍栽培ノ講習講演会ヲナスト同時ニ生産販売ニ関スル施設 三 水産副業 (イ) 水産製造奨励 其地方ニ適スル鹿尾菜荒布和布畳鰮薩摩揚鰮味淋乾鰤ノ藁巻等ノ水産製造ノ改良普及ヲ図ル為講習伝習会等ヲ開催スルト共ニ生産販売ニ関スル適当ナル施設 (ロ) 淡水養魚奨励 淡水ノ養魚池(鯉金魚)ノ新設又ハ魚苗(鯉金魚)ノ共同購入生産品販売等ノ施設 四 工産副業 (イ) 家庭製作品奨励 家庭副業トシテ適当ナル布帛加工編物麻糸織物等ノ講習会ヲ開催スルト共ニ生産販売ニ関スル施設 (ロ) 木竹加工奨励 竹細工並木工品ノ製作等ノ講習会ヲ開催スルト共ニ生産販売ニ関スル施設 (ハ) 土産品製作奨励 名所旧跡等遊覧客ノ参集スル地方ニ於テ郷土色ヲ背景トシテ適切ナル土産品ノ製造講習並生産販売ニ関スル施設 (ニ) 和紙製造奨励 桑皮楮ノ生産並ニ之レガ利用ニヨル和紙製造ノ伝習会ヲ開催スルト共ニ生産並販売ニ関スル共同施設 五 畜産副業 (イ) 養豚奨励 豚舎ノ新設生産並販売ニ関スル共同施設 (ロ) 養兎奨励 家兎生産ニ関スル設備講習会開設生産販売共同施設 六 副業品販路拡張奨励 副業生産品ノ販路拡張ヲ図ランガ為展覧会試売ニ出品スルト共ニ販路拡張トナルベキ各般ノ施設 第三 経費予算 昭和七年度副業奨励費中事業費予算左ノ如シ 副業奨励規程(昭和二年七月二十六日公布神奈川県令第九十三号) 第一条 副業奨励ノ為本規程ニ依リ毎年度予算ノ範囲ニ於テ奨励金ヲ交付ス 第二条 奨励金ハ左ノ各号ノ一ニ該当スル市町村又ハ十五名以上ヲ以テ組織スル団体ノ施設ニ対シ知事ニ於テ適当ト認ムル場合ニ交付ス但シ特別ノ事情ニ依リ十五名以下ノ団体又ハ個人ト雖モ奨励金ヲ交付スルコトアルベシ 一 講習会伝習会ノ開催又ハ実地指導教師ノ招聘派遣 二 生産ニ関スル設備 三 種苗種禽種卵種畜又ハ器具機械ノ共同購入 四 生産品ノ共同販売若クハ販路拡張ニ関スル施設 五 前各号ノ外副業奨励上適切ナル事項 第三条 本奨励金ノ交付額ハ知事ニ於テ適当ト認メタル其事業予算額ノ半額以内トス但シ特別ノ事情アル場合ハ此ノ限リニ在ラズ 第四条 奨励金ノ交付ヲ受ケントスル者ハ当該年度四月末日迄ニ第一号様式ニ依ル申請書ヲ知事ニ提出スベシ但シ二年目以後ノ奨励金交付申請書ニハ第一号様式ニ依ル添付書類第二号乃至第四号ノ事項ニ付異動ナキ場合ハ其添付ヲ省略スルコトヲ得 第五条 奨励金ノ交付ヲ受ケタル者ハ第二号様式ニ依ル事業成績並経費決算報告書ヲ翌年度四月三十日迄ニ知事ニ提出スベシ 第六条 奨励金交付ヲ受ケタル者其事業計画又ハ経費予算ヲ変更セントスルトキハ其事由ヲ具シ知事ノ認可ヲ受クベシ 前項ノ場合経費予算各減額シタルトキハ交付金額ヲ減額スルコトアルベシ 奨励金ノ交付ヲ受ケタル者当該年度内ニ事業完了スルコト能ハザルトキハ知事ノ認可ヲ受ケ次年度ニ繰越施行スルコトヲ得 第七条 奨励金ノ交付ヲ受クル者ニ対シ知事ハ奨励及監督上必要ナル命令ヲ発シ又ハ部下ノ官吏吏員ヲシテ事業ノ施行並収支ノ状況ニ付検査又ハ指示セシムルコトアルベシ 第八条 奨励金ノ交付ヲ受ケタルモノニシテ左記各号ノ一ニ該当スルトキハ奨励金交付ノ指令ヲ取消シ又ハ交付金ノ一部若シクハ全部ノ還付ヲ命ズルコトアルベシ 一 申請書添付書及事業成績書ニ虚偽ノ記載ヲ為シタルトキ 二 本規程及命令ニ違反シタルトキ 三 経費支出額ガ申請書記載額ニ対シ著シク減少シタルトキ 四 事業施行ノ方法不適当ト認メタルトキ 附則 本令ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス 大正十二年四月神奈川県令第四十七号ハ之ヲ廃止ス (仙石原村役場「勧業書類綴」(昭和七年)箱根町役場蔵) 〔注〕 様式等雛形は省略。 一二 失業対策事業に関する国庫補助の件通牒 七社第二三六八号 昭和七年六月七日 学務部長 市町村長殿 失業応急事業ニ関スル件 政府ニ於テハ産業ノ開発ヲ図ル為道路河川港湾其ノ他土木事業ヲ起興シ併セテ失業ノ防止並救済ニ努ムルコトヽ相成候ニ就テハ貴市町村施行ノ公営事業及民間事業ニ関シテモ其ノ施行ノ時期地域方法等ニ於テ失業ノ防止並救済ノ為最モ有効ナル方法ヲ講シ政府施行事業ト併セテ失業ノ緩和ヲ図ラレ候様致度右ノ手段ニ依ルモ尚救済ヲ要スヘキ失業者多数存シ之レカ救済ノ為特ニ事業ヲ起興セムトスルトキハ失業応急事業トシテ左記条件ニ依リ国庫補助相成ルノミナラス預金部資金ハ都合ノ許ス限リ低利資金ヲ融通スル旨内務大蔵両次官ヨリ通牒ノ次第モ有之候ニ就テハ右御了知ノ上部内失業状況ニ応シ適宜ノ御措置相成度依命此段及通牒候也 記 (甲) 一般労働者失業応急事業国庫補助条件要綱 一 政府ハ本文記載ノ如ク一般的ニ各種土木事業ヲ起興シ失業ノ防止並救済ニ努ムルヲ以テ特ニ失業応急事業トシテノ施行地域ハ原則トシテ六大都市関係府県及福岡県トスルコト但シ其ノ他ニ於テモ救済ヲ要スヘキ失業者特ニ多キ地方ニシテ必要已ムヲ得サル場合ニハ之ヲ認ムルコトアルヘキコト 二 事業施行主体ハ道府県市町村市町村組合タルコト 三 事業費ニ対スル労力費ノ割合カ二割以上ヲ占ムル事業ナルコト但シ労力費カ事業費ノ一割以上ニシテ之ト国産材料費トノ合計カ事業費ノ五割以上タル場合ニ於テモ認ムルコト 四 事業ハ延人員一万人以上ヲ使用スルモノナルコト 五 事業ハ施行団体ノ直営タルコト但シ技術上直営トシテ施行困難ナル場合ハ請負ニ附スルコトヲ認ムルコト 六 国庫補助額ハ労力費及労働手帳作製費ノ二分ノ一トス 七 事業ハ失業者ニシテ特ニ生活困難ナルモノヲ救済スルヲ目的トスルモノナルヲ以テ其ノ施行ニ関シテハ特ニ左記各号ニ拠ルコト (イ) 失業者中救済ヲ必要トスルモノナリヤ否ヤニ関シテハ方面委員警察官吏宿泊所長等ノ活動ヲ促シ之カ認定ニ遺憾ナキヲ期シ且認定セラレタルモノニ対シテハ本人ノ写真ヲ添付セル労働手帳ヲ職業紹介所ヲ経テ交付スルコト (ロ) 右労働手帳ノ様式形状作製時期作製方法交付時期交付方法等ニ関シテハ地方ニ於テ適宜塩梅工夫シ得ルコト尚手帳ハ単ニ失業応急事業ニ就職希望ノ登録ヲ受ケ居ル証左ニ過キスシテ決シテ就業ヲ保障セルモノニ非ル趣旨ヲ被交付者ニ徹底セシムルコト (ハ) 事業ニ使用スル労働者ハ原則トシテ労働手帳ヲ交付シタル要救済失業者ヲ職業紹介所ノ紹介ニ依リ採用シ其ノ数ハ少クトモ全使用労働者数ノ七割ヲ下ルコトヲ得サルコト未タ適当ナル職業紹介所無キ地方ニ於テ失業応急事業ヲ施行セムトスル場合ハ先ツ常時的又ハ臨時的ノ職業紹介所ヲ設置シ使用労働者ノ紹介ニ遺憾ナキヲ期スコルト (ニ) 前項要救済者ノ採用ニ就テハ其ノ生活状況失業期間等ヲ参酌シ困窮ノ度甚シキモノヲ優先セシメテ且相互間就労機会ノ分配ヲ公平ナラシムルコト従ツテ職業紹介所ヨリ採用スル要救済失業者中ノ顔付(指定人夫)ノ数ハ技術上必要ノ最少限度ニ止メ其ノ数ハ少クトモ其ノ三割以内タルヘキコト (ホ) 失業応急事業ノ為他地方ヨリ不自然ニ労働者ヲ招致シ又ハ他ノ事業ニ従事セル労働者ヲ奪フカ如キ結果ヲ来ササル様細心留意スルコト (ヘ) 労働賃銀ハ其ノ地方ニ於ケル同種ノ者ノ賃銀ヨリ低額ナルヲ原則トシ且成ルヘク多数ノ労働者ヲ就業セシムル為夜業歩増等ハ之ヲ避クル様努ムルコト (ト) 労働賃銀ハ額刎ネヲ避ケ且日払トシ必要ニ応シ立替支払制度ヲ利用スルコト 八 事業ヲ施行セムトスルトキハ左記事由ヲ具シ予メ内務大臣ノ認可ヲ受クルコト (イ) 労働者ノ失業状況 特ニ労働者ノ種別(日傭労働者及其他ノ労働者)毎ニ労働者ノ総数失業者数及要救済者数ヲ示シ失業ノ状況ヲ記載シ且右状況ヲ見ルニ至レル具体的事由ヲ明ニスルコト (ロ) 事業施行ヲ必要トスル具体的事由 特ニ通牒本文ニ記載セル如キ失業緩和ノ手段ヲ講スルモ尚当該事業ノ施行ヲ必要トスル事由ヲ数字ヲ以テ具体的ニ示スコト (ハ) 事業ノ種類並其ノ計画概要 (ニ) 事業関係予算書 事業ノ財源ヲ起債ニ求ムルトキハ起債決議書謄本ヲ併而添付スルコト (ホ) 労力費労働者使用延人員及使用人員中要救済失業者使用ノ割合 (ヘ) 労働者一日平均使用人員及一日平均賃銀 (ト) 事業着手並終了ノ予定年月日 (チ) 事業施行箇所ヲ示シタル図面 (リ) 設計書 (ヌ) 本要項第五項但書ニ依リ事業ヲ請負ニ附セムトスル場合ハ其ノ已ムヲ得サル事由及契約条件(就中労働者使用ニ関スル条件詳細)尚(ハ)号以下ノ事項ヲ変更セムトスルトキハ予メ内務大臣ノ認可ヲ受クルコト 九 事業ノ着手一時休止又ハ終了ノ場合ニハ其ノ年月日ヲ具シ直ニ其ノ旨内務大臣宛報告シ且施行中ハ認可件別ニ左記ニ依ル事業成績ヲ社会局長宛報告スルコト 一般労働者失業応急事業成績 備考 一 本表ハ月報トシ毎月十日迄ニ前月末迄ノ分ヲ報告スルコト 二 事業種目は工事種類別(道路河川水道下水其他等)ニ区別シ現場別ニ区別スルコトヲ要セス 三 本表ハ凡テ事業開始以来ノ累計ヲ示シ且支出済額ハ支払ノ有無ニ不拘支払義務額ヲ計上スルモノトス 四 使用労働者延人員ハ出役頭数ノ延人員トス 五 実際使用労働者延人員ノ内職業紹介所利用ニ依ルモノノ数ヲ其ノ左側ニ( )ヲ附シテ示スコト 六 工事施行日数ハ一事業種目ニ多数ノ工事ヲ一括シテ掲記スル場合ニハ最初ニ着手シタル工事ヨリ起算シタル日数ヲ示スコト 七 前年度ヨリ繰越施行スルモノハ其ノ事業完了迄当初年度分トシテ計上スルコト (乙) 小額給料生活者失業応急事業国庫補助条件要綱 一 事業施行主体ハ六大都市及関係府県タルコト 二 事業ハ小額給料生活者ノ失業者(知識階級ニ属スル未就職者ヲ含ム以下同シ)ニシテ生活困難ナル者ヲ救済スル為特ニ施設シタル当該公共団体ノ事務又ハ官庁ノ委託ニ係ル事務ニシテ失業者ヲ従事セシムルニ適当ナルモノナルコト但シ必要ナル場合ハ職業輔導ヲモ併セ行フコトヲ得ルコト 前項ノ事務ハ或特定ノ事務ナルコトヲ要シ従テ不特定事務ノ為ニ漠然ト一定期間使用スルカ如キモノニアラサルコト 三 官庁ノ委託ニ係ル事務トハ当該官庁ニ於テ当該特定事務ノ遂行ニ関シ何等ノ経費ヲ有セス之カ遂行ヲ公共団体ニ対シ委託セルモノヲ指称ス但シ其ノ経費カ地方費ノ負担ニ属スヘキモノハ之ヲ含マサルコト 四 事業施行期間ハ一年未満トシ成ルヘク次年度ニ亘ラサルコト 五 国庫ハ本事業ヲ為ス公共団体ニ対シ左ノ割合ヲ以テ補助スルコト (イ) 官庁委託ニ係ル事務ニ就テハ就業者手当ノ全額 (ロ) 公共団体ノ事務ニ就テハ就業者手当ノ二分ノ一 (ハ) 前各号以外ニ事業施行上必要ナル経常諸費ノ二分ノ一但シ就業者手当総額ノ二割ヲ超ユル部分ニ対シテハ補助ノ限ニ在ラス 六 事業ハ失業者ニシテ生活困難ナルモノヲ救済スル目的トスルモノナルヲ以テ其ノ施行ニ関シテハ特ニ左記各号ニ拠ルコト (イ) 失業者中救済ヲ必要トスルモノナリヤ否ヤニ関シテハ戸別調査ヲ為シ当該事業ニ適当セル相当ノ技能ヲ有スルモノニシテ本人ノ扶養スヘキ家族ヲ有シ困窮ノ度甚シキ者ヨリ採用スルコト (ロ) 事業ニ使用スル小額給料生活者ハ職業紹介所ノ紹介ニ依ルモノタルコト (ハ) 採用ニ当リテハ就業手帳又ハ之ニ代ルヘキモノヲ交付スルヲ妨ケサルモ之カ交付ニ際シテハ一定ノ期間当該特定事業ノ為臨時ニ採用セラレタルモノナル旨ヲ徹底セシムルコト (ニ) 失業応急事業ノ為他地方ヨリ不自然ニ小額給料生活者ヲ招致シ又ハ他ノ事業ニ従事セルモノヲ奪フカ如キ結果ヲ来ササル様細心留意スルコト (ホ) 就業者手当ハ其ノ地方ニ於ケル同種ノ者ノ手当ヨリ低額ナルヲ原則トスルコト (ヘ) 就業者手当ハ月二回以上ニ分チテ支払ヲナスコト (ト) 就業者ヲシテ本事業ニ固定セシメサル為事業施行主体ハ事務ノ性質等ノ許ス限リ一定期間毎ニ一応就業者ノ就業ヲ打切リ又常時職業紹介所トノ連絡ヲ緊密ニシ能フ限リ本事業ニ就業スルモノヲ普通職業ニ就業セシムル様斡旋スルコト 七 事業ヲ施行セムトスルトキハ左記事項ヲ具シ予メ内務大臣ノ認可ヲ受クルコト (イ) 給料生活者ノ失業状況 給料生活者ノ総数失業者数及要救済者数ヲ明示シテ失業状況ヲ記載スルコト (ロ) 失業応急事業ノ施行ヲ必要トスル具体的事由及当該事業ヲ適当ナリトシタル理由 (ハ) 事業ノ種類並其ノ計画概要 官庁ノ委託ニ係ル事務ニ就テハ第三項ニ該当スル旨ノ当該官庁ノ証明書ヲ添付スルコト (ニ) 事業関係予算書 事業ノ財源ヲ起債ニ求ムルトキハ起債決議書謄本ヲ併而添付スルコト (ホ) 就業者手当総額及使用予定人員 (ヘ) 一日平均使用予定人員及一日平均就業者手当 (ト) 事業着手並終了ノ予定年月日 尚(ハ)号以下ノ事項ヲ変更セムトスルトキハ予メ内務大臣ノ認可ヲ受クルコト 八 事業ノ着手又ハ終了ノ場合ハ其ノ年月日ヲ具シ直チニ其ノ旨内務大臣宛報告シ且施行中ハ認可件別ニ左記ニ依ル事業成績並就業者異動調ヲ社会局長宛報告スルコト ㈠小額給料生活者失業応急事業 成績備考 一 本表ハ月報トシ毎月十日迄ニ前月末迄ノ分ヲ報告スルコト 二 本表ハ凡テ事業開始以来ノ累計ヲ示シ且支出済額ハ支払ノ有無ニ不拘支払義務額ヲ計上スルモノトコ 三 前年度ヨリ繰越施行スルモノハ其ノ事業完了迄当初年度分トシテ計上スルコト ㈡小額給料生活者失業応急事業 就業者異動調 備考 事業種目欄ノ配列ハ前表ト合致スルヲ要ス (「神奈川県公報」第五八一号) 一三 神奈川県納税奨励規程 神奈川県告示第六百一号 納税奨励規程左ノ通定ム 昭和七年九月一日 神奈川県知事 横山助成 納税奨励規程 第一条 納税思想ノ普及ヲ図リ租税ノ完納ヲ奨励スル為本規程ノ定ムルトコロニ依リ毎年度予算ノ範囲内ニ於テ奨励金又ハ物品ヲ交付ス 第二条 納税組合ニシテ前一年度間ヲ通シ県税ヲ法定期限内ニ完納シタルトキハ当該納税組合ニ対シ奨励金又ハ物品ヲ交付ス納税組合ヲ組織セスト雖モ市内ノ町又ハ町村内ノ部落ニシテ前項ニ該当スル事績アリタルトキハ前項ニ準シ之ニ対シ奨励金又ハ物品ヲ交付ス 第三条 一定区域内ニ居住スル者共同シテ県税ヲ納付スル目的ヲ以テ新ニ納税組合ヲ設立シタルトキハ当該組合ニ対シ奨励金ヲ交付ス但シ組合員二十名未満ノモノハ此ノ限ニ在ラス 同業者共同シテ其ノ業態ニ関スル県税ノ納付ヲ目的トシテ組合ヲ組織スル場合ハ前項但書ノ規定ニ拘ラス之ニ対シ奨励金ヲ交付ス 第四条 左ニ掲クル期間継続シテ県税ヲ年度内ニ県金庫ニ完納シタル市区町村アルトキハ各期間毎ニ当該市区町村ニ対シ県税完納表彰旗及奨励金ヲ交付ス 一等 十年 二等 五年 三等 三年 一等表彰旗ヲ受ケタル市区町村ニシテ爾後年度内ニ完納ヲ継続シタルトキハ継続五年毎ニ飾総及奨励金ヲ交付ス 下級ノ表彰旗ヲ受ケタル市区町村ニシテ上級ノ表彰旗ヲ受ケタルトキハ下級ノ表彰旗ハ之ヲ返付セシム 表彰旗ヲ受ケタル市区町村ニシテ表彰旗ヲ受ケタル年度以後ニ於テ滞納繰越ヲ生シタルトキハ表彰旗ハ之ヲ返付セシム 前各項ノ規定ハ組合員数三百人以上ノ納税組合ニ之ヲ準用ス 第五条 納税奨励ニ関シ功績顕著ナルモノアリタルトキハ奨励金又ハ物品ヲ交付シテ之ヲ表彰ス 第六条 市区町村長ハ第二条又ハ第五条ニ該当スルモノアリタルトキハ毎年度八月三十一日迄ニ第三条ニ該当スルモノアリタルトキハ其ノ都度左記各号ノ事項ヲ具シ之ヲ知事ニ上申スヘシ 一 第二条ニ該当スルモノ ㈠ 組合ノ名称所在地 ㈡ 組合ノ区域組合員 ㈢ 組合ノ代表者 ㈣ 毎年度別県税科目別賦課額及納付額 ㈤ 組合ニ於テ納税奨励ノ為メ施設シタル事績概要 ㈥ 其ノ他必要ト認ムル事項 二 第三条ニ該当スルモノ ㈠ 組合ノ名称所在地 ㈡ 組合ノ区域及組合員数 ㈢ 組合ノ代表者 ㈣ 組合ノ規約 ㈤ 組合ノ一年度間県税納付見込額 ㈥ 設立以来ノ組合事績ノ概要 ㈦ 其他必要ト認ムル事項 三 第五条ニ該当スルモノ ㈠ 功労者ノ氏名又ハ団体名及住所又ハ所在地 ㈡ 履歴又ハ目的ノ概要 ㈢ 事績 ㈣ 其ノ他必要ト認ムル事項 第七条 税務出張所長ハ第四条ニ該当スル市区町村又ハ納税組合ヲ調査シ毎年度八月三十一日迄ニ左記各号ノ事項ヲ具シ之ヲ知事ニ上申スヘシ 一 市区町村名又ハ組合員数 二 前年度以前各等所定期間ノ県税年度別科目別賦課額及納付額 三 納税事務整理状況 四 其ノ他必要ト認ムル事項 第八条 税務出張所長ニ於テ市区町村吏員中徴税事務ノ成績優良ニシテ第五条ニ該当スト認ムルモノアルトキハ毎年度八月三十一日迄ニ第六条第三号ノ事項ヲ具シ之ヲ知事ニ上申スヘシ 附則 本規程ハ告示ノ日ヨリ之ヲ施行ス但シ第二条ノ規程ハ昭和六年度第四条ノ規程ハ昭和六年度以前ノ事実ニ付キテモ亦之ヲ適用ス 本規程ニ定ムル上申ノ期限ハ昭和七年度ニ限リ九月三十日トス (「神奈川県公報」号外) 一四 養蚕実行組合設置奨励に関する件通知 足農収第三六三号 昭和七年九月三日 足柄下郡農会長 町村農会長殿 養蚕実行組合設置奨励ニ関スル件 今回政府ニ於テ蚕業匡救対策トシテ桑園整理改植奨励夏秋蚕繭共同保管助成及養蚕業ノ応急対策指導督励ニ関スル経費ヲ昭和七年度追加予算トシテ臨時議会ニ提出相成候 右ハ孰レモ養蚕業者ニ有利ナル事業ニシテ議会通過ノ上ハ急速実施ノ事ト存候モ其ノ内容ヲ窺フニ養蚕実行組合員ニアラザレバ其ノ恩恵ニ浴スルコト能ハザル次第ニ有之候条此際養蚕実行組合員ニアラザル養蚕業者ハ急速ニ養蚕実行組合ヲ設立スルカ或ハ既設ノ養蚕実行組合ニ加盟シ其ノ利益ヲ均霑スル様特ニ御配慮相成度此段及移牒候也 追而今后政府及県ニ於ケル養蚕業ノ保護奨励ハ総テ養蚕実行組合ヲ中心トシテ督励致ス方針ノ趣ニ付特ニ申添候 (仙石原村農会「農会書類綴」(昭和七年)箱根町役場蔵) 一五 足柄下郡町村長会の時局匡救に関する調査報告 時局匡救ニ関スル調査(評議員会ニ於テ決定ノモノ) イ 資金疏通問題 1 不動産資金化ノ状況 本郡ハ関東大震災ノ為メ蒙レル災害ノ為メ個人ノ不動産ハ大部分資金化シテ担保物件ニ供セラレ居ルカ依然滞納ノ状況ニアリ今回ノ時局匡救ノ恩典ニアスカラス 2 産業組合ニ対スル低資融通状況 本郡ノ各産業組合ハ低資融通ノ申込ミヲナシ居レ共未タ供給ヲ受ケタルモノナシ 3 蚕糸低資融通ノ模様 該当ナシ 4 各種公共団体低資融通ノ状況 第二項ニ同シ 5 其他関係事項 ナシ ロ 負債整理問題 1 負債ノ状況ト之カ整理ニ対スル地方ノ要望 本郡ハ関東大震災ノ為メ公私ノ負債莫大ナル増加ヲナシ其整理ニ苦シメルカ個人ノ負債ハ各銀行ニ提供セル担保物件ヲ以テ利率五分位ノ長期債ニ借換ヘヲナス途ヲ講セラレムコトヲ要望ス 2 金銭債務臨時処理法実施ノ成績 相当ノ効果ヲ収メ債権債務両者共ニ満足セル模様ナリ 3 其他関係事項 ナシ ハ 産業統制問題 1 蚕価並米価ノ変化及影響 蚕価ハ稍好望ナレトモ米価ハ依然トシテ上騰セサルタメ本郡農家ハ尚疲弊ノ極ニアリ 2 右両者ニ対スル今後ノ対策希望 生繭価ハ一〆七円米価ハ四斗一俵十二円ノ公価ヲ維持センコトヲ要望ス 3 農漁山村及中小商工業ノ収支経済状態並生活ノ状況 凡テ収支償ハス其ノ生活状態ハ暗胆タリ 4 其他関係事項 ナシ ニ 公共事業問題 1 土木事業実施ニ対スル政府ヨリノ指令内容及予算分布状態余リニ少額ニシテ焼石ニ水ノ如シ 2 各府県ノ各種土木事業ノ選択実施ノ状況 郡町村長会ノ調査権内ヲ超越セルヲ以テ不明ナリ 3 土木事業ニ伴フ地方負担ノ状況 地元負担ノ財源ナク各町村共借入ノ止ムヲ得サル状況ナリ依テ工事費ノ半額ヲ着工許可ト同時ニ交付シテ賃金支払ノ円滑ヲ期セラレタシ 4 其他関係事項 ナシ ホ 其他ノ事項 1 払下米配給ノ状況ト其影 本郡ノ払下米ハ昭和七年内ニ於テ四万七八千俵ニ及ヒタルモ各町村共此較的公平ニ配給セラレシカ其影響ハ消費者多キ町村ニハ大ニ喜ハレタルモ生産者多キ町村ニハ其産米ノ価格ニ悪結果ヲ来セリ尚払下米ノ下級消費者ニ配給スル途ナカリシハ遺憾ナリトス 2 各地ニ於ケル思想的運動ノ状況 イ 左右両系ノ思想運動 不明 ロ 労働運動 ナシ ハ 小作争議等 ナシ 3 軍需品工業ニ関スル事項 ナシ 4 失業者ノ状態 本郡ニハ各町村ニ失業者アリタレ共今回ノ匡救事業ニ依リ幾分緩和セラルヽ見込ナリ 5 其他関係事項 (仙石原村役場役場蔵)「神奈川県町村長足柄下郡町村長小田原外廿五ケ町村組合会長会書類綴」(昭和七―八年)箱根町 一六 神奈川県農村匡救耕地拡張改良事業補助規則 神奈川県令第七十六号 農村匡救耕地拡張改良事業補助規程左ノ通定ム 昭和七年十月二十五日 神奈川県知事横山助成 農村匡救耕地拡張改良事業補助規則 第一条 農村匡救ノ目的ヲ以テ耕地ノ拡張改良事業ヲ施行スル者ニ対シ知事ニ於テ適当ト認ムル場合本則ノ定ムル所ニ依リ毎年度予算ノ範囲内ニ於テ補助金ヲ交付ス 第二条 補助金ハ耕地ノ拡張改良事業ニ要シタル工事費(開墾助成法ニ依ル二年量ノ開墾事業ニ付テハ事業費)ニ対シ知事ニ於テ之ヲ査定シ昭和七年度ニ於テハ左ノ歩合ニ依リ之ヲ交付ス 但シ昭和八年度以降ノ歩合ニ付テハ更ニ之ヲ定ム 一 開墾助成法ニ依ル二年量ノ開墾事業 百分ノ二十 二 小開墾事業(災害復旧事業ヲ含ム) 百分ノ七十 三 小用排水事業 百分ノ七十 四 暗渠排水事業 百分ノ七十 五 小設備事業 百分ノ七十 開墾助成法ニ依ル二年量ノ開墾事業ハ一団地ノ施行面積五町歩以上小開墾事業ハ同三反歩以上五町歩未満(但シ災害復旧事業ニ付テハ同三反歩以上)小用排水事業ハ支配地積五町歩以上五百町歩未満暗渠排水事業ハ同三反歩以上小設備事業(耕地ニ関スル道路提塘井堰樋管樋門等ノ改良新設)ハ一箇所工事費三百円以上ノモノニ限ル但シ開墾助成法ニ依ル二年量ノ開墾事業ヲ除キタル以外ノ事業ニ付テハ土地ノ状況ニ依リ此ノ制限ニ依ラサルコトヲ得 第三条 前条ノ工事費トハ工事ノ為ニ支出シタル一切ノ金額(夫役現品ノ換算金ヲ含ム)中ヨリ工事監督費事務費ノ類ヲ除キタルモノ即チ人夫賃材料費敷地買収費補償費ノ類ヲ謂フ 第四条 補助金ノ交付ヲ受ケムトスル者ハ工事著手前様式第一号ニ依ル申請書ニ様式第二号ノ設計書ヲ添付シ知事ニ提出スヘシ前項ノ設計書ヲ変更セムトスル者ハ変更設計書ヲ添付シ知事ニ申請スヘシ 数人共同シテ事業ヲ行フ場合ニ在リテハ代表者ヲ定メ其ノ正当ナルコトヲ証スル書面及事業施行ニ関スル契約書ノ謄本ヲ申請書ト共ニ差出スヘシ 第五条 知事ニ於テ前条ノ申請書ヲ受理シ補助金ヲ交付スヘキモノト認メタルトキハ指令書ヲ交付ス 第六条 工事ノ指導又ハ監督ヲ受ケムトスル者ハ様式第三号ニ依リ技術員ノ派遺ヲ知事ニ申請スルコトヲ得 第七条 工事ニ著手シ又ハ竣功シタルトキハ遅滞ナク知事ニ届出ツヘシ 第八条 補助金ノ交付ヲ受ケムトスルトキハ様式第四号ニ依ル補助金請求書ニ様式第五号ノ工事出来形並工事費(又ハ事業費)精算調書ヲ添付シ知事ニ提出スヘシ 第九条 補助金ハ工事出来高ニ対シ出納並出来形検査ノ上年四回以内ニ分割交付ス但シ特別ノ事情アル場合ハ此ノ限ニ在ラス 第十条 補助金ノ交付ヲ受クル者ハ事業ノ施行及経費ノ収支ニ関シ該当官吏又ハ吏員ノ指揮命令又ハ検査ヲ拒ムコトヲ得ス 第十一条 左ノ各号ノ一ニ該当スルトキハ補助ノ指令ヲ取消シ又ハ変更シ既ニ交付シタル補助金ノ全部又ハ一部ノ還付ヲ命スルコトアルヘシ 一 本則又ハ本則ニ基キ発スル命令ニ違背シ其ノ他不正ノ行為アリト認メタルトキ 二 工事ノ出来形不完全ナリト認メタルトキ 三 工事ノ竣功ノ見込ナシト認メタルトキ 四 事業ヲ廃止シタルトキ 附則 本規則ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス 様式第一号 何々事業費又ハ何々工事費補助金交付申請 昭和 年度ニ於テ別紙設計書ニ依リ何々事業又ハ何々工事施行致度候ニ付神奈川県農村匡救耕地拡張改良事業補助規則ニ依リ補助金御交付相成度此段申請候也 年 月 日 住所 工事施行者又ハ代表者 氏名 印 知事宛 様式第二号 設計書 一 事業施行地ノ現況 二 工事計画説明 三 工事ノ仕様 四 工事施行後ニ於ケル土地ノ地目別地積 五 工事ノ著手及竣功ノ予定時期 六 工事費其ノ他一切ノ費用予算並明細書 七 事業施行地ノ現形及予定図 備考 一 事業施行地ノ現況ハ施行地区ノ位置地積土地ノ現状等記述ノコト 二 工事費其ノ他一切ノ費用予算ハ各年度別ニ工事費ニ付テハ各工種別ニ事務費ニ付テハ給料及報酬旅費備品費消耗品費通信運搬費測量製図費雑費等各科目別ニ詳記ノコト 明細書中夫役現品ニ付テハ種目数量及換算金額ヲ記載シ其ノ換算ノ基礎ヲ具体的ニ説明ノコト 様式第三号 何々工事指導(又ハ監督)申請 一 指導(又ハ監督)事項 何々 二 指導(又ハ監督)希望時期 三 何々 右工事指導(又ハ監督)相受度候ニ付吏員御派遣相成度此段申請候也 年 月 日 住所 右工事施行者又ハ代表者 氏名 印 知事宛 様式第四号 何々事業費又ハ何々工事費補助金請求書 金 円 昭和何年自何月何日至何月何日何々事業費又ハ工事費精算額 右何年何月何日神奈川県指令耕第 号ニ依リ何々事業又ハ何々工事 施行致候ニ付補助金御交付相成度別紙工事出来形並事業費又ハ工事 費精算調書添付此段請求候也 年 月 日 住所 右工事施行者又ハ代表者 氏名 印 知事宛 様式第五号 何々工事出来形並事業費又ハ工事費精算調書自昭和何年何月何日 至昭和何年何月何日 (「神奈川県公報」第六二二号) 一七 小田原土木出張所農村振興土木事業等に関する事務打合会議案 小土発第一三七号 昭和八年六月二十九日 小田原土木出張所長(印) 仙石原村長殿 事務打合会議開催ノ件 七月四日(火曜)午前九時ヨリ元郡庁舎会議室ニ於テ農振工事其他事務打合会開催致度候条可相成土木事務主任者帯同定刻迄ニ御参集相成度此段及通知候也 迫而一般土木事務ニ関シ提案事項有之候ハヾ其節御提示共ニ研究致度候ニ付申添候 〔別冊〕 「土木事務会議案小田原土木出張所」 昭和八年度農振土木事業其他事務打合会議案 昭和八・七・一 小田原土木出張所 ○協議事項 一 雑費ノ支途ニ関スル件 1 六分以内 2 二分シ町村長扱 土木出張所長扱 3 土木出張所扱ハ現金前渡ノ取扱ト致シタシ 4 技術及事務員給料諸手当通信費諸用紙其他消耗品代ニ当ツ 5 給料賞与ニ付テハ事務主任委任ヲ受ケ支払ヲナス 6 通信費ハ土木出張所長ノ証明ニ依リ支出ス 7 消耗品其ノ他ハ各商店ヨリ請求セシメ所長証明ノ上支出ス 8 毎月末支出計算書ヲ二通作製シ町村長会長ト土木出張所長トニ保管ス 9 現金出納簿経理支出整理簿ニ依リ処理ス 10 以上ノ取扱ニ付テハ経理課長ヨリ更ニ詳細指示ヲ受クル筈ニテ大略ノ骨子ナルヲ以テ御了承セラレタシ 二 技術及事務員採用ニ関スル件 1 本年度ハ賞与支出モ包含セラルヽコト 三 諸用紙共同調製ニ関スル件 1 工事執行伺工事ケ所調書施行認可申請請負条件就労状況報告昨年ヨリ増加 四 測量杭木及手伝人夫提供ニ関スル件 ○指示事項 一 補助率ニ関スル件 1 前年ノ通リ七割五分補助ナルコト 二 予算決議ニ関スル件 1 此ノ場合治水工事アルモノニシテ随意契約ニ依ラントスルモノニ対シテハ町村会ノ同意決議ヲ失念セザルコト 三 直営請負ノ区分ニ関スル件 1 監督雑費計算率ニ相違アルガ故ナリ 四 工事施行ニ関スル件 市町村土木工事起工ケ所ノ選定工事執行方法労働者使用方法等ニ関シテハ前年ノ例ニ依ルベキハ勿論ナルモ尚左記事項ニ付特ニ留意シ共ニ自奮自励一層能率シ向上シ昨年ニ倍加セル良績ヲ挙ケシメラルヽ様鋭意努力セラレタシ 1 起工ケ所ノ選定ニ付テハ経済ヲ考慮シ効果至大ナルケ所ニシテ労力費亦多キ工事ヲ選択スベキハ勿論ナルモ更ニ路線ノ重要性ヲ思考シ最モ改良効果大ナルモノヲ選定シ特ニ数ケ所ニ渉ラサル様留意セラルヽコト尚河川工事ニ付テハ指定セル河川ニノミ使用ノコト 2 工事ノ選択ニ当リ地方的勢力ニ動カサレ或ハ其ノ他ノ情実ニ禍サレ不急ナル事業ヲ起工シ又ハ部落間ニ於テ事業ノ争奪ヲ醸スガ如キコトナカラシムルコト 3 工事ハ必ス年度内ニ完成セシムルノ要アルヲ以テ速ニ起工ケ所ヲ決定シ各地方ニ於ケル農閑期ヲ利用随時工事ニ着手セシメ遅クモ十二月末日迄ニハ竣功ヲ期セシムル方針ヲ以テ指導監督スルコト従テ一度起工ケ所ノ決定ヲ見タル場合ハ特別ノ事由アルモノニセヨ再ビ変更セサル様特ニ留意セラルヽコト 4 特別ノ事由ニ依リ府県道ヲ市町村事業トシテ改良ヲ為ス場合ニ於ケル補助率モ町村事業ニ於ケルト同様四分之三トス而シテ右事業ハ特ニ之カ設計監督ニ留意シ将来府県道トシテノ効用ヲ発揮スルニ遺憾ナカラシムルコト 5 道路ハ道路工事執行令其ノ他ハ神奈川県工事執行規程ニ準ズルコト 6 地元部落請負ノ方法ニ依リ執行スル場合ハ特ニ左記各項ニ留意セラルヽコト イ 設計金額ヲ以テ部落ニ請負ハシムルコト ロ 下請負ハ之ヲ認メザルコト已ヲ得サル事由ニ依リ下請ヲナス場合ニアリテハ請負ノ方法条件ニ付キ土木出張所長及町村長ノ承認ヲ受ケシムルコト 7 工事ニハ必ズ地元及隣接町村ノ住民ヲシテ就労セシムルコト イ 特ニ生活困難ナルモノヲ優先シテ就労セシムルコト ロ 就労圏内ニ於ケル町村ニアリテハ就労者名簿ヲ調製シ就労ノ機会ヲ均等ナラシムルコト ハ 就労圏内ニ内務省直轄工事又ハ県施行ノ工事アル場合ハ各関係者ト就労者ノ割当数ヲ速ニ協定スルコト ニ 賃金ハ可成日払トスルコト 8 町村ノ負担ヲ軽減スル目的ヲ以テ労力ノ提供又ハ労力費ノ寄付ヲ強要スルカ如キコトナキ様特ニ留意セラルヽコト 9 職工人夫賃金ハ設計単価ヨリ二十銭以上扣除セザルノ件 (参考) 五 報告書類ニ関スル件 1 就労状況報告ハ昨年度ノ成績ヲ見ルニ実ニ不成績ト云ハサルヲ得ス一ケ町村ノ報告ナキ為メ下郡全部ノ不成績トナリシヲ以テ本年度ハ必ズ期限ヲ違ヘサル様セラルヽコト 2 工事功程報告ハ毎月十五末日現在ニヨリ町村ヨリノ報告ヲ取纒メ報告スベキニ依リ毎期所定ノ期日内ニ報告セラルヽコト六 砂利砂及石材無料採取ニ関スル件 道路愛護作業ト同様申出ニ依リ採取シ得ヘキニ付係員ト打合セノコト 七 農村振興土木工事費ノ経理ニ関スル件 前年度ニ於ケル標記工事ノ執行ニ当リ結果県下ニ於テ左記ノ如キ不備アルヲ認メタルニ依リ本年度ニ在リテハ之等欠点ナキ様充分留意セラレタシ イ 事業費精算ニ当リ配当工事費額ニ符合セシムル為殊更ニ事実ニ反スル証憑書ヲ作成セルモノアリ右ハ事実ニ依リ精算ヲ為スコト ロ 雑費ノ支出ニ当リ事業費ニ対スル一定歩合ノ額ハ必ズ支出スルヲ要スルモノト誤解シ事実ナキ仮空ノ支出ヲ為セルモノアリ前項同様精算ヲ為スコト 八 町村道ノ維持管理ニ関スル件 町村道ノ維持管理ニ関シテハ注意ヲ促スマデモナキ義ナレ共農村振興事業トシテ前年来施行ニ係ルモノヽ内路線認定ノ変更道路区域ノ決定又ハ道路ノ供用開廃等道路法ノ規定ニ依ル手続洩レノモノ又ハ買収若ハ上地ニ依ル用地ノ登記未済ノモノ等ハ速ニ其ノ手続ヲ完了スルト同時ニ非常時農村対策トシテナシタル本事業ノ効果ヲ永遠ニ保持センガタメ一層道路愛護ノ奉仕的精神ノ涵養ニ努力セラレタシ 九 農振土木事業施行ニ当リ理事者ノ責任ニ関スル件 農村振興土木事業施行ニ関シ工事監督其他出来得ル限リ県ニ於テ之ヲ為スト雖第一次責任監督ハ管理者タル町村長ニ在ルハ今更事新シク申ス迄モナキ義ナレ共偶々然ラザル町村ノナキニシモアラズ昨年度ノ施行ニ付経験ヲナメタル事実アルヲ以テ此ノ点篤ト留意セラレタシ 十 所属所員明示ニ関スル件 十一 農村振興土木事業雑費割当ニ関スル件 十二 雑費納入期厳守ニ関スル件 毎期(二十日限)遅滞ナク納入セラルヽコト 十三 其ノ他ノ事項ハ前年ノ例ニ依ル 〔別表一〕 農村振興土木事業雑費割当表。 〔別表二〕 所員受持区域表 昭和八年六月一日改正 小田原土木出張所 田島村 下曾我村(但シ八年度農振工事ヲ除ク) 土木工手 反町泰吉 大窪村 温泉村湯本町(湯本元箱根線及農振工事ヲ除ク) 土木道路工手 亀井伯 旭橋改築工事 土木工手 内堀朝治 湯本元箱根線畑宿樫木茶屋ヨリ国道一号線元箱根村分岐点マデ 土木工手 松尾勇夫 (仙石原村役場「土木書類」(昭和八年)箱根町役場蔵) 一八 時局に対する国民の信念培養の指導要項実施事項 八教第八六〇号 昭和八年四月二十一日 学務部長 市町村長殿 学校長昭和八年三月三十日文部省訓令第三号並ニ第四号ヲ以テ現下ノ非常時ニ処スヘキ国民ノ覚悟ニ関シ訓令相成リタルニ付テハ特ニ左記指導要項並ニ実施要項御留意ノ上貴部内学校青年訓練所社会教育関係諸団体神社宗教団体等ト提携シ訓令ノ趣旨徹底方ニ関シ万遺漏無キヲ期セラレ度旨其ノ筋ヨリ通牒ノ次第モ有之依命此段通牒候也 記 一 指導要項 イ 時局ノ真相ヲ明ニシ正義ニ立脚セル国民的信念ノ透徹ヲ図ルコト ロ 中正ナル思想ヲ堅持シ各其ノ分ニ励ミテ奉公ノ誠ヲ竭サシムルコト ハ 社会ノ現状ニ鑑ミ相戒メテ風教ノ粛正ニ努メシムルコト ニ 堅忍持久ノ精神ヲ養ヒ克己ノ生活ニ耐ヘシムルコト 二 実施要項 イ 敬神崇祖ノ思想ノ徹底 ロ 国旗掲揚ノ奨励 ハ 時局ニ関スル訓話 ニ 体育ノ奨励 ホ 団体的行動ノ訓練 へ 公共的運動ニ対スル協力ノ奨励 ト 風紀粛正並ニ生活ノ緊張ニ関スル協同的行動ノ奨励 チ 困苦欠乏ニ耐フル訓練 リ 警備並ニ防空ノ訓練 ヌ 銃後活動ニ関スル訓練 備考 文部省訓令第三号第四号ハ昭和八年三月三十日官報参照 (「神奈川県公報」第六七四号) 一九 神奈川県精神作興週間に関する件要項 精神作興週間に関する要項 一 趣旨 「国家興隆ノ本ハ国民精神ノ剛健ニ在リ」我徒この聖旨を奉体して策励奮起その徹底を期すべく微力を傾倒する所あり 之れを以て既に教化の大綱略々整へるものあるを見るも時局の変転日に甚だしくして之れに対応すべき方途尚未だ備はらざるに今又未曾有の時艱に遭遇せり 偶々本年十一月十日は先帝この大詔を渙発せられて満十年に相当すその「今ニ及ヒテ時弊ヲ革メスンハ或ハ前緒ヲ失墜セムコトヲ恐ル」の詔尚炳乎たるを拝すれども我徒の微力遂に聖慮の万一に奉答し得ずして今日に至る真に恐懼に堪えず 茲に既往を省み更に現下世局の弥々重大なるに想到して感慨量るなし仍ちこの記念の時を迎へて茲に精神作興週間を設定し新にこの聖旨を奉じ且今次国際連盟離脱に際して賜りたる詔書の御趣旨の普及徹底を図り以て非常時国民の精神を振作し自力更生の意気を喚起し挙国振張の実を挙げむことを期す 二 強調要目 (一) 国民相戒メテ自己ヲ反省シ家族的協同生活ノ本義ヲ自覚セシムルコト (二) 非常時日本ノ真相ヲ明知シ挙国振張ノ秋タルヲ痛感セシムルコト (三) 克己忍苦ノ修練ニ耐へ剛健ナル国民精神ヲ振作セシムルコト 三 運動の機関 中央及道府県教化連合団体之れが主体となり中央地方官民各方面は勿論各種有力団体言論機関放送局等の賛助協力を求めて全国一斉に運動の徹底を期すること 四 期間及実行事項 (一) 期間 十一月七日より十三日まで(詔書渙発記念日たる十一月十日を中心とする前後一週間)右の内十一月十日を「克己日」とす (二) 実行事項 (イ) 全期間中の実行事項の一斑 1 各地方の実情に基づき週間中の各日につき適切なる実行事項を定めて其の実行をなすこと 2 本週間を起点として団体的申合せによる生活更新の実行を期すること 3 懇談会座談会講演会講話会其他適宜集会を催し時局の真相を熟知せしめ聖旨を徹底せしむること 4 印刷物の配布「リーフレット、ポスター等の配布」 (ロ) 克己日「十一月十日」の実行事項の一斑 1 各戸に国旗を掲揚すること 2 道府県市町村部落団体等に於て神社(又は仏閣学校等)に参集し多摩御陵遥拝式並に詔書奉読式を挙げ終つて共同的実行事項を定めて厳粛なる宣誓をなすこと等 3 町村部落団体等に於ては適宜起床時間を定めて一斉に早起を敢行し良習慣の動機となすこと 4 国民各自身辺を顧み克己忍苦以て非常時に処する生活訓練をなすこと 5 当日の克己によりて節減し得たる余財は額の多少を論ぜず之を拠出して軍資金国防資金出征軍人並遺家族慰問金国債償還資金其他公共施設資金に献じ又は各自貯金或は共同積立金に充つること 神奈川県社会事業協会教化部 (仙石原村役場「庶務書類」(昭和八年)箱根町役場蔵) 二〇 神奈川県下自力更生町村の事例㈠ 「昭和七年十月更生へ進む滞納無き町村神奈川県市町村更生委員会」 序言 近時農山漁村の疲弊中小商工業の不況は愈々深刻となりその影響が漸次公租公課の上に及ぼしつゝあることは洵に憂ふべき現象である。市町村税に於ても近年年を逐うて滞納が著しく増加し試みに之を本年七月一日現在の過年度滞納額について表示すれば大正十五年昭和元年度以前ノ分一、〇七〇、三六〇円昭和四年度分 五〇二、三三九円昭和二年度分 二七八、八六一円昭和五年度分 八一〇、九二八円昭和三年度分 二七〇、七五七円昭和六年度分一、三八七、六六八円となりその累計は実に四、三二〇、九一三円の巨額に達し方に市町村財政をして危機に瀕せしめつつある。 かくの如く民心の弛緩と財政窮乏の結果滞納の弊風が滔々として拡大せられて行くのは真に遺憾に堪へない次第であるがその中に立つて克く納税の義務を怠らず全然滞納のない町村が現に県下に八つも存するのは聊か意を強うするに足らう。其の由来する所を尋ぬれば或は村民の自覚に基くもの或は村当局の指導又は施設の宜しきを得たるによるもの或は聖賢の薫化今日に及べるもの等多種多様であるが要するに村民と村当局とが一致協力して自力更生の途に邁進した結果に外ならぬのである。以下之れ等滞納なき八ケ町村の努力の跡を検討し以て自力更生の資料たらしめたいのである。 昭和七年九月 神奈川県市町村更生委員会 目次 三浦郡初声村 中郡南秦野村 鎌倉郡村岡村 足柄下郡元箱根村 足柄上郡共和村 足柄上郡清水村 足柄上郡桜井村 足柄上郡金田村 更生へ進む滞納なき町村 三浦郡初声村 本村は三浦半島の西端に位し浩渺たる太平洋の波の磯うつ所山紫に水清き勝地である。畏くも上皇室に於かせられては此の地を以つて御用邸御造営の地として御選定遊ばされて居るのであつて戸数六百二十三戸人口三千六百八十九人の農漁を主たる生業とする村落である。 本村が納税完納村となる迄即昭和二年度以前に於ける納税状況を見るに明治三十四、五年頃は村治上にも兎角円満を欠き納税成績も亦甚だ宜しくなかつた。依つて明治四十四年頃大いに納税思想の普及に努めたのであつたが容易に良好なる結果に至らず。国県税は相当の成績を示してゐるに拘らず村は毎年度出納閉鎖期の近くになつて俄に滞納の督促を強行して辛うじて年度内に完納せしめつゝあつた様な状態であつた。当時の郡長からも此の弊風を改めて納期を厳守せしめる様屡々勧告もあつたのであるが未だ村民の心を一新せしめるに足る適当な機会もなく荏苒年を経つゝある中昭和三年二月現河田村長の提唱に依り御大典記念事業として従来ある五人組の組織を利用して全村に亘り九十の納税組合を作るに至つたものである。 爾来各納税者は夫々組合長へ現金と徴税令書を持参し組合長は之を取纒めて納期末日迄に役場へ納付することとなつたが一部の組合では日掛又は月掛の貯金をなし之を税金に充てるの方法もとつた。昭和六年度に至り満三ケ年完納の組合八十四を表彰し大いに其の功労を賞揚すると共に弥々此の良風の永続を期せしめ且一般村民の奮起を促した結果諸税納期の末日は組合関係納税者が先を争つて役場に殺到するといふ有様である。 現下不況の秋尚且此の美風の保持せられてゐる所以のものは現河田村長の組合提唱に起因するは無論であるが村民が之れに呼応して一致協力その完成に力め各自勤勉力行大いに敦厚なる気風を振作した賜とも謂ふべく一戸当二十九円の高率なる村税も勤勉節約をモツトーとする村民の前には何等の痛痒をも感ぜしめないものゝ様である。 此の外本村には全村を区域とし村長を組合長助役を副組合長として昭和四年七月に創立せられた有限責任初声信用販売購買組合がある。之が利用に依つて農山漁村不況の波を自力によつて漕ぎ進まんと努力しつゝあるは実に頼もしい村と謂ふべきである。 中郡南秦野村 本村は彼の煙草を以て有名なる秦野町の南方に在つて戸数八百五十八人口は五千三十五人を有する村落である。 本村民は従来農を以て本業としてゐたが隣接秦野町の発展と小田急電鉄の開通に伴つて本村地内に停車場を設けられてから急速な発展をなし商工業者の来往も頻繁となり且全戸数の約半数は何れも各種の商工業を営むに至つた。然し営業者の大部分は日月税者であり随つて業者の転出入も繁劇である所から人情も一様ならず貧富の懸隔も甚しく負担の公平納税の円滑を期することは頗る困難なことであり村当局の常に苦慮する所であつた。従来本村は納税成績が余り良好の方ではなく動もすれば滞納が増加するといふ傾向を示すに至つたので当局者は此の弊風を一掃する為めには納税組合を組織することが緊要であることを痛感し明治四十四年の初期に於て試に字西大竹に納税組合を設けたのであつたが其の成績が極めて良好であつたので全村に亘つて之が設置を見るに至つたのである。 組合は各字毎に一組合として十五組合を作り各組合には組長を置き更に各組合が数組に分れてゐる。各戸には納税期限一覧表を配布し予め納税期日を一般に知悉せしめ徴税令書は役場から之を組長に交付し組長からは組合員に配布し且税金を取纒めて収入役に納付するの制度を採つてゐる。納税組合が設置せられてからは納期迄には完納されるのが常例となり適々納期に後れる様なものがあつても期日後三日以内には各税を通じて屹度完納せられるといふ様な優良の成績を示して居る。 尚本村は南秦野村納税組合表彰規程を設けて毎会計年度末には表彰式を挙げて表彰金品を贈り或は納税奨励に関する講演会を開催し或は小学校児童を通じて納税の重要なる所以を説き或は納税標語を配布する等常に納税義務の観念を鼓吹してゐる結果村民亦克く当局の意の存する所を諒得し滞納は恥辱の最たるものであるとなし互に競つて其の義務の履行に力めるといふ風になつた。農村不況に喘ぐ折柄自立的更生の実を挙げつつあるものと謂ふべきである。 鎌倉郡村岡村 本村は東海道線の藤沢駅から六、七町の処に在つて戸数は僅に二百四十五戸人口千六百九十八人といふ民風の頗る質朴敦厚なる一小村である。歴代の村当局は常に村内の情況に細心の注意を払ひ且役場吏員の言行は直に村民視聴の的となり其の思想上に及ぼす所亦極めて深きを信じ常に其の儀表たらんことを念とし又機会ある毎に村民一般に村勢並に財政の情況を周知せしむると共に納税思想の涵養に最善を竭して居る。従つて役場事務の如きも凡て整然として一点の疑惑を受くるが如きことなく村民は亦当局者に絶大の信頼を寄せてゐる。 この故に納税成績は単に村税のみならず県税国税に就ても頗る良好であつて昭和五年には国税二十ケ年完納の故を以て表彰を受けるに至つた。依つて益々従来の納税成績を保持せんが為に昭和六年納税奨励規程を制定し納税組合の設置を奨励した結果現に十五の組合が組織せられ村民二百五人が之に加入してゐる。納期内完納者には納税額の一割を奨励金として交付する予定である。 村民は又一致協力して経済上の共同施設を企画利用して居る。其の主なるものは村岡村購買販売利用信用組合園芸組合等である。加入者は二百二十七を算し生産の統制規格の統一販路の拡張消費の合理化を図り貯蓄の奨励及金融の円滑方法を講じ着々其の実績を挙げつゝある。信用組合に於ける貯金額の如きは現に十万余円に上り多くの農村が不況に悲鳴を上げつゝある今日更生の歩を強く堅く踏みしめ進むものと言ふを憚らない。 足柄下郡元箱根村 本村は所謂総称しての箱根の中心を為す地域を占め湖上の富士を以て有名なる芦ノ湖の大部を含む広大なる地籍を有して居る。戸数は僅々八十四戸人口四百五十六人の小部落ではあるが箱根権現姥子大涌谷等の名勝史蹟は何れも同村内に在る。住民の大部は所謂遊覧地箱根の恩恵と冬季に於ける篠竹採取等の山林収入に依つて生計を立てつゝある。 実質的には極めて小村であるから行政組織も他と異り明治十四、五年戸長役場の時代から隣接箱根町及芦ノ湯村との組合を組織し来つたもので現に箱根町外二ケ村組合と称し役場事務の全部並救助事務勧業事務教育事務の共同処理をして居る。 従前から広大な基本財産土地を所有して居たのではあるが其の一部が御料地として宮内省御買上の恩典に浴した結果現金有価証券合せて二十余万円を有するに至り其の益金を以て村費全額を経理し得たが為に大正十四年度迄は村税を賦課する必要もなく県下唯一の無税村として全国的に其の名を知られて居たが水道布設其の他事業の為基本財産を村費に運用した結果自然収入の減少を来し大正十五年昭和元年度始めて県税雑種税附加税を賦課し昭和二年度からは戸数割を除く他の国県税附加税全部を賦課することゝなつて現在に及んだものであるが当初から滞納として翌年度に繰越された事実はないのである。 前記の如く村税の賦課が徐々に始められたといふ関係とまだ他町村に於て最も徴収に困難を感じつゝある戸数割を賦課して居ない為に納税者が割合に苦痛なく義務を果し得るといふことも言へようが其の間豆相大震災に依る甚大な被害及今次の深刻な不況等打続いての打撃に遭遇しながらも尚且村税完納の美風を持続しつゝあることは村民の不撓不屈の精神の発露とも言ふべく自力更生の範を如実に示したものと称すべきである。 足柄上郡共和村 東海道山北駅から渓谷を辿り山嶺に倚つて急傾斜の小径を登ること約二里海抜三百米の高処に点在する二百有二戸の村落が此の共和村である。素より山間の僻村交通機関と言ふべき程のものは何一つ無く自転車の利用さへ殆ど不能の状態にある。住民は五百二十八人あるが生業の主なるものは養蚕や薪炭等で天恵の薄い山村ではあるが民情は極めて質朴温順である。 村役場には吏員としては従来村長唯一人であつたが大正十年信用組合の事務を取扱ひ始めてからは助役も常勤し収入役は村長兼摂のまゝで事務の整理も極めて良好であるから村民の信頼も亦厚い。 歴代の当局者は頗る村政に熱心で常に村民を相誠め相励まして勤倹貯蓄を奨励し大正十年三月には村民一般より成立せる前記信用購買組合を設立し事務所を役場に置いて一切の事務を処理し金融の円滑を図ると共に貯蓄の観念を普及せしめ各戸毎月一口二十銭以上の強制的貯蓄を励行して居るから現に打続く農山村の不況にも各自相当の貯金を有し青年団処女会戸主会等の団体預金を合せると約八万円の巨額に上つてゐる。 又村の一般経費の中に村有林管理費(造林下刈)数百円を計上して比較的納税困難と認められる者には該労役に服して之を納税の資に充てしめてゐる。尚大正十三年以来県有林野の砂防工事が行はれてゐるので無産階級の者も金融が潤沢であり且之等に対する労銀の支払は凡て信用組合で取扱ふ関係上自然納税成績も良好となつたものである。 足柄上郡清水村 本村は県の最西部に位し戸数三百十八戸人口二千六百人を有する村落である。 村内には東京電燈株式会社の峯嵐の両大発電所が在るので従来該会社の納める営業税附加税(現営業収益税附加税)だけでも相当多額に上るために一般村民の負担は比較的に軽く財政的には大いに恵まれて居つた関係上納税に就ては苦慮する者もなかつた。然るに近来会社の事業不振から其の納税額も年々に減少して行くので其の補塡は勢村民の負担を増加することゝなり大正十三年に於ける一戸当りの負担は七円昭和元年度に於ては十円当七年度の如きは十三円といふ風に漸次増加して来た結果滞納の弊が漸く現れて来るやうになつたのに鑑み昭和六年各部落に二組宛の納税組合を設置して組合長副組合長を置き凡ての税金は組合長が取纒めて期日までには必ず納付することゝし年一回の納税金額に応じた奨励金を交付することになつた。 又村当局は地味が茶業に適してゐることを力説して大いに茶園の開墾増植を奨励し産業の振興を図り昭和元年には製茶事業の村営を企画して工場を新築し数台の製茶機械を据付け村内の生葉を一手に引受けて製造出荷した処成績頗る良好で年々に隆昌に趣き相当村民の福利を増大しつゝある。 尚昭和二年からは自動車運輸事業の村営を計画し特別経済を以て之を実施するに至つたが現在では昭和七年度予算一万四千円に上り昭和五年度の決算では村一般費の繰入を為さずに約一千円の剰余金を生ずる様な有様で相当収益を得つゝある。 斯く村当局は常に村民の福利を増進することを念とし一方財政的にも恵まれてゐるので当局に対する村民の信望も篤く従て納税の成績にも好影響を及ぼし今日完納村の誇を贏ち得たものと思はれる。 足柄上郡桜井村 酒匂川の西岸に在つて戸数は二百七十六戸人口千六百二十六人を有する純農村で彼の尊徳二宮翁出生の地である。 翁の薫化は今日に及び村民が翁の徳を慕ふの念は頗る篤く勤倹力行義務を重んずるの風が全村に漲つてゐる。小田原急行電鉄の開通以来交通は至便となり沿道の村民には人情に風俗に著しく頽廃の嫌あるものも少くないが本村は華美に流れず軽浮の風の染まず文明の利器を利用して益々産業の振興に力めてゐる。 永年に亘る勤倹努力の効は各戸に報いられ本村には大なる富豪とては無いが富は広く均霑し純小作人僅に四十余他は何れも相当田畑を所有し耕作反別一戸当平均一町歩余に及び殆ど二毛作を為してゐる。又近年米穀価格の低落に鑑み果樹園芸に一層の力を注いだ結果昭和三年頃より葡萄年産額一万貫価格三千余円無花果年産額三万箱価格亦三千余円梨の産額は五六千貫二千余円の収益に上り裏作の主なるものには一寸蚕豆の年産五万貫五六千円の如き何れも出荷組合の手を経て小田急電鉄を利用して東京小田原熱海方面に販出せられる。 縄綯ひ俵編み莚織等生業上の必需品で自家に於て製作し得るものは凡て夜業を以て之を処弁し四季を通して昼夜間断なく業務に精励する有様であるから全く貧困者と称すべき者なく大正十二年創設せられた信用購買組合も遺憾なく利用せられて居る。本年度に於ける一戸当三十四円五十銭といふ村税負担も何等苦痛を感ずる者なく納付せられつゝある。克く自力を以て向上発展しつゝある良村と言ふべきである。 足柄上郡金田村 本村は酒匂川の東岸に在る戸数三百十八戸人口二千二百二十八人の純農村であつて生業は主として米麦作野菜養豚養鶏果樹園等である。位置地勢等の関係上一般に財政的には恵まれず比較的有産階級の人も少く従つて納税困難の人も少くないのであるが歴代の村当局に其の人を得大正十年頃には納税遅延勝の者へは村長自ら出向き時には親戚知人等を立会はせて大いに納税義務の重大を説き或は金策を授け或は強圧的訓誡督励を試みる等百方手を尽し又集会等の機会ある毎に納税観念の鼓吹に力めた結果村民も大いに理解し「滞納して多くの人に迷惑を掛けることは大なる罪悪である借金しても税金だけは期日迄に必ず納めなければならぬ」との自覚を深める様になつた。 大正十二年従来の五人組の制度を活用して納税組合を設け十戸乃至十七戸を以て一組合を組織したが其の数が現に三十二ある。又昭知二年三月には金田村納税奨励規程を設けた。 之れ等の定めに依ると納税組合長は各自組合の税金を取纒めて納入する制度であるが表彰区分の関係上特に納税指定日(納期日の二日前)を定め指定日迄に完納した組合は優良組合納期日迄に完納した組合は佳良組合として表彰に等差を設けてある。 継続五ケ年間納期内完納組合 七 同 四ケ年間納期内完納組合 一五 同 三ケ年間納期内完納組合 二二 其の他も納期日後二三日中には全部完納するといふ状態である。 前記納税優良組合に対しては毎年一回村民一同を集めて表彰式を挙げるのであるが此の時は税務署長県税務出張所長等の臨席を乞ひ式後納税に関する講演会を催するのが例である。 其の他徴税令書納額告知書等を差込み置く状差を各戸に配布し之には各税の納期を印刷して置く等細心の注意を払つて常に納税思想の普及に努めて居るから納税義務観念は相当徹底し可なりの困苦を忍びつゝも納税成績は極めて良好である。 尚昭和四年十一月東京税務監督局長より昭和三年度国税完納の廉により表彰を受くるに至つた。 (仙石原村役場「庶務書類」(昭和七年)箱根町役場蔵) 二一 神奈川県下自力更生町村の事例㈡ 再ビ更生へ進ム滞納ナキ町村ニ就テ 昨年七月一日現在ヲ以テ市町村税ノ過年度滞納額ヲ調査セルニ実ニ四、三二〇、九一三円ノ巨額ニ達シ方ニ市町村財政ノ危機ヲ思ハシメタルニ此ノ間ニ処シテ全然滞納ナキ町村ガ八ケ町村モ存在セシコトハ我ガ郷土ノ誇トシテ当時天下ニ発表セシ処ナリ 然ルニ本年三月末現在ニヨリ更ニ市町村税ノ滞納額ヲ調査セルニ驚クベシ総額五、七五一、八一六円ノ巨額ニ達シ昨年七月一日現在ト比較スルニ一、四三〇、九〇三円ノ増加ヲ来セリ而シテ自力更生ノ模範ト謳ハレタル滞納ナキ八ケ町村中依然トシテ其ノ名声ヲ保持セルハ三浦郡初声村中郡南秦野村足柄上郡桜井村ノ三ケ村ニ止マリ鎌倉郡村岡村足柄上郡共和村清水村金田村足柄下郡元箱根村ノ五ケ村ハ僅カナル滞納額ノ為ニ此ノ列ニ残ラザリシハ誠ニ遺憾ノ極デアル 然シ乍ラ茲ニ吾々ノ最モ誇リトナスベキハ此ノ滔々タル滞納ノ弊風ノ間ニ処シテ新タニ滞納ナキ二ケ村ヲ加へ今尚五ケ村ノ税金完納ノ美風ヲ保持スル優良ナル町村ヲ有スルコトヽナリ今左ニ新タニ更生へ進ム滞納ナキ町村ニ加リタル二ケ村ノ努力ノ跡ヲ検討シ以テ自力更生ノ資料タラシメントス 更生へ進む滞納なき町村 足柄上郡曾我村 東海道線下曾我駅から西北へ約半里戸数四七〇人口三〇〇〇其の面積五万粁の純農村である 村民は古くから農業を営み質朴勤倹よく其の生業に励み東海道線は村内中央を南北に走り文化の煙は豊饒な田園から軽佻浮薄な生活へと間断なく誘惑するけれ共天与の土を固く愛する村民は如何なる誘惑にも惑はず孜々として天来の生業を完うせんとする牢固なる信念は遂に平和村模範村として今日あらしめた所以であり此の麗はしい思想が村政に反映し滞納なき町村として推賞される様になつたのは寧ろ当然と謂はねばならぬ。 けれ共多年の間には経済界の変動あり財政窮迫の時細民をして完納せしめる為歴代の理事者が嘗めた幾多の苦心を想はねばならぬ。又明治四十年の頃一時政浄から此の平和村を攪乱せむとする秋さへあつた。当時一部理事者に対する反感等から動もすれば滞納者を出さんとする危機に当面した時の理事者は深く之を憂へ考究の結果青年団員をして督励せしめる事とした。即ち理事者は更めて青年団員に納税義務の重大を説き各部落の団員は各自部落を受持ち納期の前後各戸を訪問して督励した。大概一名位の青年を有する各戸は名誉の為互に競て納税する様になつた。爾来約五ケ年間此の計画を継続したが青年団員は或は納期の前日納税者を訪れて納期日を注意し期日の翌日は更に各戸を訪ひ納入済か否かを質し未納者に対しては完納に到る迄は何回となく訪問する等此の間に於ける彼等の努力は真に涙ぐましいものがあつた。 理事者の此の計画は真に当を得たものと謂ふへく此の結果納税成績は目に見へて向上し納税思想は此処に根強くも亦完全に播植されたのである。爾来今日に到る迄此の思想は聊かの動きもなく継続され納期日には一日にして殆と全額納められ時に一二困窮者に於て都合の為遅れる事はあつても必ず納期日には役場に出頭して事情を訴へ数日内に日を約して去れば必ず約束の日には完納され無断滞納する様な者は全くない。 昭和六年四月従来殆と有名無実であつた納税奨励規程を根本的に改正し平均八戸位を単位とする納税組合六十を組織し伝統的に優秀な納税成績へ更に一段の拍車を加へる事にした。 規程第四条に一ケ年ヲ通シ納期指定日迄ニ完納セル組ニハ左記標準ニ依リ奨励金並賞状ヲ交付ス 一 国税納付金ノ千分ノ一 (当該組合員総額ノ税額) 一 県税納付金ノ千分ノ二 ( 〃 ) 一 村税納付金ノ千分ノ二 ( 〃 ) 四ケ年間続続完納セル組ニ対シテハ其ノ組ニ於テ四ケ年間受領セル奨励金ノ十分ノ一ヲ交付ス とあり此の規定に基く第一回表彰式を客年十二月小学校で挙行した表彰を受けたもの実に全組合当日は名誉職は勿論全村民出席して質素乍らも村内の手料理に満喫し甘露に酔ひ乍ら表彰を感謝する和気靄々たる情景は現代稀に見る理想郷といはねばならぬ。斯く村民の脳裡へ深刻に浸潤された納税思想は総てに反映して農会費部落協議費赤十字掖済会々費等諸団体費徴収に当ても期日違はず納入して理事者に手数をかける様なことは絶対にない。 又理事者及有志は政争から来る村内の軋轢を極度に憂へ村民の親睦を図ると共に生活を改善して其の安定を図る為客年十二月全村民を会員とする公正会なるものを組織し会長以下役員はよく会員を善導し一糸乱れず目的に邁進しつゝあり。理事者の指導は村民の自覚と相俟つて今日の善蹟を挙げ得た事は真に模範とするに足るものである。 足柄下郡仙石原村 本村は足柄下郡の西端箱根連山の中腹に位する高原の一寒村に過きないと雖天然の宝庫たる温泉随所に湧出し四囲何れも山岳重畳して中央に濶け南に芦ノ湖を控へ西空には富士の霊峰を仰き而も芦ノ湖を源とする早川の渓流は滾々として東流し山に水に風光絶佳而も第二号国道村内を貫通して交通至つて便利であるが為四季を通して浴客遊覧客の絶えることなく誠に羨望に価する仙境である。戸数百八十六人口千六十余人何れも農業林業を以て生業としてゐる。民風頗る質朴敦厚且つ当局との接触緊密であつて相提携して村治の発展に努めてゐる。 歴代の理事者は常に村内の状況を監察して機会ある毎に村勢財政の現況を一般に知悉せしめて改善の資料とし殊に納税思想の涵養に付ては更に一段の力を加へて之か徹底を図つて居るか故に村民全体は従来から国県村各税を通して全然滞納の声を聞かないのであるが偶々村内土地の異動に伴つて他市町村人が納むへき不動産取得税を滞納することがあるので折角完納の美風を是れ等の人々によつて傷つくることのあるのは同村のため甚た遺憾に堪へないのである。然しながら周囲の感化は遂に彼等をして常道に導き茲に全く滞納なき村として県下に其の誇を示し得たのである。 納税奨励施設としては村規程に基いて相当の予算を計上し毎年一月開会する戸主会の総会席上で表彰状に物品を添へて之を贈呈し表彰を続けてゐる納税組合は全村一組合(組合員一八六人)として活動してゐる。 今や世相は刻々として変化し財界又混沌として累卵の危ふきにある今日尚且此の美風を完全に掌握し得た所以のものは理事者不断の努力は勿論であるが一面村民一般の不撓不屈の精神の発露の結果と云ふべく自力更生の範を如実に示すものと称して敢て過言でないのである。 (仙石原村役場「庶務書類」(昭和八年)箱根町役場蔵) 二二 昭和十年度精神作興週間ならびに運動に関する件要項 「 昭和十年度精神作興週間並克己日運動に関する要項愛国婦人会神奈川県支部財団法人中央教化団体連合会」 目次 一 趣旨 二 指道要目 三 運動の機関 四 期間及実行事項 ㈠期間 ㈡実行事項 五 準備及施設 ㈠中央教化団体連合会に於ける準備及施設 ㈡道府県朝鮮台湾各教化連合団体に於ける準備及施設 精神作興週間並克己日運動に関する要項 一 趣旨 曩に重畳せる国難打開の一方途として昭和八年十一月十日国民精神作興詔書渙発十周年記念日をトし前後一週間官民各方面協戮の下に「精神作興週間」並「克己日」を設定して全国民の精神的総動員を促し以て聊か非常時下に於ける民心の振作に資する所あり爾来この声歳と共に大を加ふ惟ふに本運動たる「国家興隆ノ本ハ国民精神ノ剛健ニ在リ」との聖訓を格遵し国民各自職分淬励の裡に其の決意を新にし尽忠報国の微忱を効さんとしたるに外ならず而も今この重大時局に対処して更に之を高調するの要愈々緊切なるを痛感せざるを得ず即ち茲に三度これを提唱し自覚ある国民の協戮によりて之を全土に展開せしめ以て国家躍進の一助に寄与する所あらんとす 二 指導要目 ㈠ 聖訓ヲ奉戴シ弥々国体精華ノ発揚国民精神ノ作興ニ努ムルコト ㈡ 国民各自深ク責務ヲ省ミ奮励努力其ノ生活ノ充実向上ヲ期セシムルコト ㈢ 克己忍苦ノ修練ヲ積ミ進ンデ国家公共奉仕ノ実ヲ挙ゲシムルコト 三 運動の機関 中央及道府県朝鮮台湾各教化連合団体之が主体となり中央地方官民各方面は勿論各種有力団体言論報道機関等の賛助協力を求めて全国一斉に運動の徹底を期すること 四 期間及実行事項 ㈠ 期間 十一月七日より十三日まで(詔書渙発記念日たる十一月十日を中心とする前後一週間)右の内十一月十日を「克己日」とす ㈡ 実行事項 イ 全期間中の実行事項一斑 1 各地方の実情に基づき週間中を通じ又は其の各日に就き適切なる実行事項を定め之が貫行を期すること 2 本週間を起点として団体的(例へば数府県連合府県郡市町村部落其他の団体毎に)申合せによる生活更新の実行を期すること 3 懇談会講演会其他適宜集会を催し趣旨の普及指導要目の徹底を期すること 4 教化御奨励の 聖旨を奉体し地方教化連合団体に於ては其の基金の造成教化網の完成教化常会の開設等適切なる教化振興の記念施設を講ずること ロ 十一月十日克己日の実行事項一斑 克己日としては昭和六年十二月十五日全国一斉に実施せる第一回克己日の趣旨に準じ地方事情に適応したる方法によるべきも大要左記各項を参酌実施のこと 1 当日は国民精神作興詔書渙発記念日なるを以てなるべく道府県市町村部落団体等に於て神社(又は仏閣教会学校公会堂等)に参集し詔書捧読式を挙げ終つて共同的実行事項を定め厳粛なる宣誓等をなすこと 2 町村部落団体等に於て公共奉仕の勤労作業其他適宜の施設をなすこと 3 国民各自身辺を顧み克己忍苦以て重大時に処するの生活訓練をなすこと 4 当日の克己によりて節減し得たる余財は額の多少を論ぜず之を醵出して国防資金出動軍人並遺家族慰問金国債償還資金其他府県郡市町村教化振興基金並公共施設資金に献じ又は各自貯金或は共同積立金に充つること之が取扱に関しては適宜地方教化連合団体に於て定むること 五 準備及施設 ㈠ 中央教化団体連合会に於ける準備及施設 イ 週間設定の趣旨徹底に関する施設 1 政府道府県庁朝鮮台湾両総督府樺太南洋関東州各庁に協力援助を求む 2 加盟団体の協力を求むるは勿論更に全国的組織を有する教化関係団体各宗教団体本部及其他有力なる中央諸団体に対し提携協力を求む 3 印刷物による趣旨宣伝 趣旨要項の冊子ポスターリーフレット等必要と認むるものを印刷配布す ロ 日本精神作興資料懸賞募集当選作発表 週間中に於て去る九月一日に懸賞募集したる日本精神作興資料漢詩民謡伝説実話の当選作品発表をなす ハ 記念講演のラヂオ放送 日本放送協会に協力を求め記念講演を全国中継にて放送のこと(予定) ㈡ 道府県朝鮮台湾各教化連合団体に於ける準備及施設 イ 当該地方に於ける本運動の主体となり管下市町村各郡市町村教化連合団体各種教化関係団体及新聞雑誌等の報道機関放送局に其の参加協力を求め一斉活動を促すに遺憾なき方法を講ずること ロ 中央教化団体連合会にて発刊せる諸印刷物の複製又は別にパンフレットポスターリーフレット等の作製配布をなすこと ハ 講演会映画会座談会街頭宣伝等普通一般に行はるゝ方法に依るは勿論各地方の実情に即して夫々適切なる方法を講ずること 猶週間中の具体的実行事項を例示すること 備考 本運動に必要なる参考資料 一 昭和七年八月十十一日開催の第九回全国教化連合団体代 表者大会に於ける決議 二 昭和八年五月十七十八十九日開催の同上第十回大会決議 三 昭和九年四月二十九三十日開催の同上第十一回大会決議 四 昭和十年六月十二十三日開催の同上第十二回大会決議 五 昭和六年十二月十五日実施の満蒙派遣軍将士慰問並軍資献金「克己日」設定に関する要項 六 本会発行「国民更生運動要綱及綱領解説」 七 同「大詔奉体と非常時日本(指導大綱解説)」 八 同「国際連盟離脱に関する詔書衍義」 九 同「国民精神作興詔書衍義」 十 同「重畳せる非常時諸相の検討」 十一 同「非常時と我が国防」 十二 同「世界の大勢と日本」 (仙石原村役場「庶務書類」(昭和十年)箱根町役場蔵) 二三 建国祭行事徹底に関する件通知 謹啓 災禍頻発の旧年を送りて茲に歳華を新たにすると共に民心頓に作興を覚ゆるは皇国の瑞祥洵に同慶の至りに存じ候 建国際の行事に就いては予ねて格段の御尽力によりて逐年盛大と相成り今や日本国民の居住する処旭日の旗翻る限り内外を挙げて重大なる年中行事と相成り申候 顧みれば建国祭本部を創立してこれが実行を提唱いたし候て以来未だ僅に満十年を数ふるに過ぎざるに斯くの如き普及と盛況とを見るに至り候ことは申すまでもなく皇国精神の自らなる帰趨を示すものにして国体の尊厳国民性の発露今更ながら感激を深うするのみに御座候 就いては今後と雖も尚一層の建国の大理想に基き高朗なる国民精神の発揚を期したく候につき本年も亦格段の御尽力を以て各地各家庭を挙げて建国祭行事の徹底いたすよう御計画相煩度御願ひ申上候 本部に於ては昨年古典に因める建国祭人形を謹製し宮中に奉献の儀御願申上候処直ちに御嘉納の光栄に浴したるのみならず紀元節当日には畏くもこれを宮中にお飾りつけ相成りたるやに漏れ承り恐懼感激致居候 本年は又前述の如く本部を設置して以来十周年に相当いたし候につき東京に於ては提灯行列をもつて盛大に当夜を祝く計画もこれあり尚既に発表いたし候通り建国精神を象徴する映画の筋書を懸賞募集しこれを撮影して映画をもつて全国民に普及いたすべき計画も着々進行いたし居り候 梅の節句の家庭的古典料理も亦今年は専業者間に於て一層の工夫を凝らして普及をはかるやうに努力いたし居候 各地に於ても夫々御工夫の上可然創意を加へて朗らかなる祭事とせられるやう御尽力御願上候 皇紀二千五百九十五年の紀元節も目睫にあり世界的重大事件を前にして我等は悠々日本帝国の建国を偲び併せて仁愛勇武の国民性の発揮につとめ可申候 此上ながら御自愛御奮励の程偏へに御願申上候拝具 追伸 一 別冊建国祭施設要項御一覧の上在郷軍人分会長男女青年団長青年訓練所主事教化団体長等に可然御通達相願度 二 機関印刷物(会報団報)発行の向に対し建国祭に関する記事を掲載相成様御取計相願度 三 本年より建国祭ポスターの御送附を廃することに致候に付貴方に於せられ可然御調製相願度 四 建国祭当日の状況其ノ他資料を集録保存致すべきに付東京市四谷区明治神宮外苑霞ケ丘口日本青年館内建国祭本部宛御送附相成様御配慮願度 昭和十年一月七日 昭和十年建国祭委員長 丸山鶴吉 同 副委員長 鳥巣玉樹 同 同 中島虎吉 同 同 大野緑一郎 同 相談役 永田秀次郎 同 同 後藤文夫 同 同 石光真臣 町村長殿 (仙石原村役場「庶務書類」(昭和十年)箱根町役場蔵) 〔注〕別冊要項は省略。 第三節 経済更生実施事情 二四 足柄下郡吉浜村経済更生計画書 足柄下郡吉浜村経済更生計画書 第一 目的 本村ニ於テハ数年来ノ不況ニ依リ生産物価格ノ暴落ヲ来シ為ニ各農家ノ収入激減シ別紙基本調査ノ示スガ如ク昭和七年度ニ於テハ負債総計六拾六万円(一戸平均壱千五拾円)ニ達シ而モ村全体ノ収支ハ差引参万弐千八拾八円ノ損失ヲ見タリ故ニ今ニシテ自主的精神ヲ振起シ更生ノ途ヲ開カザレバ将来大ナル悲境ニ陥ルベキヲ以テ今般県助成ノ趣旨ヲ体シ左記経済更生計画ヲ樹立シ全村民ノ和衷協同ト各種団体ノ連絡協調ノ下ニ産業的並ニ社会的改善ヲ遂行シ本村ノ経済更生ヲ完成セントス 第二 目標 本目標ハ第三計画要綱ノ実行ニ依リ向フ五ケ年(昭和拾弐年)ノ終リニ於テ到達セントス 一 経済更生目標 二 生産目標 三 収支目標 第三 計画要綱 一 土地ニ関スル事項 ㈠ 自作農地ノ創設 本村ニ於ケル土地所有ノ状況ハ農家ニシテ土地ヲ所有セザルモノ八〇戸五反歩未満一六四戸五反歩以上七〇戸一町歩以上四〇戸二町歩以上七戸三町歩以上三戸ニシテ之レガ経営状態ヲ見ルニ自作者一一一戸自作兼小作者一七三戸小作者八二戸ニシテ比較的小作者多数ナルヲ以テ之等自作兼小作者及小作者ノ農業経営ノ安定思想善導上土地ヲ所有セシムルヲ肝要ト認メ向フ五ケ年間ニ予定地合計二四町歩ノ創設ヲ行ハントス 創設目標 ㈡ 耕地ノ改良 本村ノ耕地ノ現況ヲ見ルニ畑二百町歩余ニシテ其ノ大部分ハ柑橘園ナリ而シテ之レニ通ル道路ハ急勾配ニシテ且幅員狭ク辛シテ人馬ヲ通スルニ過ギザル所多キヲ以テ今後三ケ年ヲ期シ部落毎ニ改修シテ幹線ニハ自動車ヲ支線ニハ車馬ヲ通シ耕作上ノ利便ヲ図ラントス 以上ノ計画ヲ実施センガ為メ耕地整理組合ヲシテ之レガ施行ヲナサシメ工事ノ年割予定ヲ樹ツルコト左ノ如シ ㈢ 耕地ノ拡張 農家一戸当平均耕作地積田一反歩畑五反歩ナルガ村有地並ニ私有地ニシテ畑ニ開墾スベキ適地三十町歩アリ之ガ開墾工事ヲ耕地整理組合ヲシテ実施セシメ左記ノ通リ工事ノ年割予定ヲ樹立シ以テ将来一戸当平均耕作地積ヲ畑七反歩以上タラシメ農業経営ノ安定ヲ図ラムトス ㈣ 閑地ノ利用 大震災ニヨリ山間部ニハ各所ニ閑地アリ又畦畔廃川敷廃道敷等多々アルヲ以テ之等ヲ整理シテ栗梅柿等ヲ植栽シ土地ノ集約的利用ヲ図ラントス ㈤ 宅地ノ利用 本村ハ宅地総面積四六〇六二坪アリ此内海岸ニ沿ヘル吉浜部落ハ比較的閑地少ク利用ノ余地ナキモ其他ニ於テハ相当ノ閑地アルヲ以テ之レガ整理ヲ行ヒ柿梅栗其他適当ナル蔬菜花卉等ヲ栽植シテ各戸平均年収五円以上全村弐千円以上ノ生産ヲ挙ケシメントス ㈥ 船揚場ノ拡張整備 本村ニハ発動機付漁船四隻無動力漁船十五隻ニシテ船揚場ハ字船岡ニ一ケ所アリサレド狭隘ニシテ朝夕出漁ノ際ハ勿論一朝波浪高キトキハ漁船ノ引揚ニ不便尠カラズ故ニ漁業組合ヲシテ左記ニ依リ之レカ整備拡張ヲ行ハントス 記 二 生産ニ関スル事項 一 農業経営組織 本村ノ農業生産ハ大体全収入ヲ左記標準ニ依リ収得シツヽアリ 猶又本村ノ生産状態ヲ見ルニ 稲作水稲陸稲{四三町一 其収量 一三〇七石 四四町四 仝 四五一石 麦作大麦小麦{五六町四 仝 一〇一六石 三四町八 仝 四一九石 西瓜 七町 其収量 四二〇〇〇貫 温州蜜柑 一二二町九 仝 五七四八八九貫 収繭 三七六六瓦 仝 一八四四貫 等ヲ主要ナルモノトシ殆ド之ヲ以テ生活ノ資源トナセリ就中蜜柑 ハ本村ニ於ケル主産物ニシテ其ノ不作ト価格ノ低落ハ直チニ生活ニ大ナル影響ヲ来スヲ以テ之ガ品質ノ向上ト収穫ノ増加ヲ図ルト共ニ販売組織ニ改善ヲ加フルハ緊要トスル所ナリ西瓜ハ夏期ニ於ケル重要産物ニシテ避暑客ヲ始メ一般ノ需要ハ益々増加ノ傾向ニアルヲ以テ之又栽培ノ増加ニ努メントス殊ニ本村ハ米作ノ生産額尠ク食糧ハ大部分之ヲ他ヨリ購入セザルベカラザルノ状態ニ在リ其他ノ普通作物園芸畜産副業等ハ別紙基本調査ニ示スガ如ク不振ノ状態ナルヲ以テ自給ヲ原則トシテ左記事項ノ励行ヲ図リ極力増産ニ努メシメントス (イ) 土地資本利用ノ集約化 本村農家ノ経営規模ハ一般ニ狭小ナルニ鑑ミ市場其他ノ経済事情ヲ考慮シ土地労力資本ノ利用ヲ極力集約化シ反当収量ノ増加ヲ図ラントス (ロ) 農業ノ計画的経営ノ励行 本村農家中農業ヲ計画的ニ経営スルモノ少キヲ以テ本年ヨリ各農家ニ将来ニ亘ル計画ヲ樹立セシメ之ニ基キ家族相協力シテ其ノ実行ニ努メシムルコト (ハ) 農家簿記ノ励行 本村農家中簿記ヲ記帳スルモノ甚タ少ク為ニ農家経営改善上遺憾ノ点多キヲ以テ本年ヨリ本村ニ於テ一定ノ帳簿ヲ印刷シ各戸ニ一冊宛無償交付ヲナシ其ノ記入ヲ励行セシメムトス ㈡ 労力利用ノ合理化 本村ニ於ケル農家労力ハ個人的ニ見ル時ハ良否ノ差アルモ之ヲ村ノ総体ヨリ見ルトキハ農業従事者六八二名ニ対シ余剰日数一七一四一六日アリ一人当リ一ケ年四五八日余ニ達シ之ヨリ家事日数ヲ控除スルモ尚相当ノ余剰日数アルヲ認メラルヽモ其農業経営ノ状態カ人力ニノミ依頼スルノ嫌アリ一面畜力利用ノ状況ヲ見ルモ馬匹八〇頭役牛一六頭其使用日数八三一六日ニ過ギズ其他改良農具ノ利用少ク又其利用個人的ニシテ作業能率必ズシモ良好ナラズ尚一層改善ノ余地アリト認ムルガ故ニ左記施設ノ実行ニ依リ能率ノ増進ヲ図リ其ノ余剰労力ヲ園芸其他ノ副業ニ向ケントス (イ) 畜力利用奨励 田畑合計一町二反以上ノ耕地者ニハ必ス役牛一頭ヲ飼養セシメ田畑ノ耕起生産物肥料等ノ運搬ニ利用セシメントス (ロ) 共同作業所ノ設置並ニ利用 産業組合並ニ柑橘出荷組合ニ於テ設置シアル共同作業場六ケ所アルヲ以テ之レヲ単ニ蜜柑ノ荷造ノミニ止メス各種ノ農産物ノ荷造作業ニ利用シ更ニ石油発動機又ハ「モーター」ヲ動力トシテ精米麦製粉其他肥料ノ配合等ヲ行ハシメントス (ハ) 貯蔵庫建設 各部落又ハ柑橘出荷団体ヲシテ柑橘貯蔵庫ノ建設ヲ奨励シテ新設又ハ増設セシメ以テ市場ノ需要ニ応シ価格ノ維持ト需供ノ調節ニ努メシム (ニ) 改良農具ノ利用奨励 各部落ノ産業組合出荷団体等ニ石油発動機又ハモーターヲ動力トシテ籾摺機脱穀機選果機等ヲ利用セシメントス (ホ) 労力ノ交換 濫リニ多クノ雇傭労力ヲ使用スルハ農業経営上不利益尠カラザルヲ以テ蜜柑採収植付収納等ノ雇傭労力ヲ一時ニ多ク要スル場合ニ於テハ相互ニ労力ノ交換ヲ行ヒ可及的雇傭労力ニ要スル経費ヲ節約スルニ努メシメ猶所要能力ハ可成之レヲ村内ニ於テ求メ村農会又ハ出荷団体ヲシテ之レカ斡旋ヲナサシム㈢ 生産方法ノ改良 本村ノ生産技術ニ関シテハ尚ホ未熟ナルモノアリ将来出来得ル限リ農業ノ学理ヲ応用シ生産ノ合理化ヲ期セシムルタメ特ニ左記事項ノ実行ヲナサントス而シテ其実行ニ当リテハ村農会指導ノ下ニ各部落毎ニ実行団体ヲ設ケ産業組合養蚕組合養豚組合柑橘出荷組合等ノ各種団体カ互ニ連絡提携シ本事業ノ完璧ヲ期スルモノトス(イ) 普通作物ノ改善 現在裁培セラルル普通作物ノ種類ハ五種ニシテ其而積ハ百七十余町歩ナルモ其内米麦最モ主要ナル位置ヲ占メ百六十余町歩ニ達スルモ其生産額ハ二百三十石ニ過ギザルヲ以テ到底村民全体ノ消費量ヲ充スコト能ハズ依テ先ツ耕地ノ拡張ト相俟ツテ米麦作ノ改良ニ重キヲ置キ生産額ノ増加ヲ目標トシ反当ノ収量増加ト生産費ノ軽減ニ力ヲ注キ各農家ヲシテ左ノ施設ヲ行ハシム ⑴ 深耕及増土ヲ奨励シ堆肥ノ使用量ノ増加 ⑵ 品種ノ整理優良品種ノ普及施設―米麦採種圃ノ設置 ⑶ 合理的栽培法ノ指導施設―指導地ノ設置 村農会ニ於テ各部落毎ニ米麦作ノ熱心家一名宛ヲ指定シ一定ノ計画ヲ示シ之ニ基ク栽培方法ノ実施指導ヲナス ⑷ 苗ノ共同育成施設―共同苗代ノ経営 ⑸ 技術競技ニ関スル施設―農業競技会ノ開催 村農会主催ニテ水陸稲大小麦ノ立毛品評会ヲ開催シ競争心ヲ刺戟シテ各個人ノ技術ヲ平行的ニ向上セシメントス ⑹ 播種挿秧期日ノ協定 播種期ハ五月五日ト定メ挿秧期ハ六月十八日以後トス ㈣ 工芸作物 落花生ハ従来生産ノ大部分ヲ自家消費トナシタリシガ今後之ガ作付反別ヲ増シ収量ヲ増加シテ共同販売ノ下ニ収益ヲ図ラントス ㈤ 園芸作物ノ改善 本村ハ気候温暖ニシテ土質ハ砂質壌土又ハ粘質壌土ニシテ地味ハ中庸ナルヲ以テ各種園芸作物ニ適スルト雖モ未ダ従来ノ因襲ニ依リ時代ノ趨勢ニ逆行セルモノ少カラス故ニ各農家ヲ指導督励シテ生産技術ノ熟達ト共ニ栽培方法ニ改善ヲ加へ品質ヲ一定シテ大量生産ニ依リテ収入ノ増加ヲ図ラントス 右ノ目的ヲ達スル為メ特ニ左記ノ作物ノ改良増殖ニ努メントス 一 蔬菜 西瓜 品種ノ選択ヲ計リ採種圃ヲ設ケ一代雑種ノ利用ニヨリ栽培ノ統一ト栽培ノ容易化ヲ計リ現在七町歩ノ栽培面積ヲ十五町歩ニ拡張シテ年収量七万八千貫ノ増加ヲ図ル 茄子胡瓜トマト 冬期ノ余剰労力ヲ以テ鍛冶屋及川堀ノ山林地帯ノ部落ニハ落葉ヲ利用セシメテ堆肥製造ヲ計リ其ノ発熱ヲ温床ニ用ヒテ技術的ノ促成栽培ヲ奨励ス又水田ニハ三毛作ノ指導地ヲ設置シテ之ガ奨励ヲナス 大根白菜 品種統一病虫害ノ予防駆除ヲ励行シ播種期ヲ定ム沢庵漬其ノ他ノ漬物ノ奨励ヲナス 甘藷 品種ノ改良ヲナシ夏期ニ於ケル旱魃ノ安全作物トシテ開墾地ニ栽培ヲ奨励ス 馬齢薯 西瓜ノ後作トシテ好適種ナルヲ以テ優良品種ヲ普及シテ早出ヲ計ル其他柑橘園ノ間作トシテ奨励ス 二 果樹 温州蜜柑 優良苗木ノ普及ヲ計ル(優良母樹ヲ選定シ採穂樹ヲ作ル)肥料試験地ヲ二ケ所設置スルコト 病虫害ノ一斉駆除ヲ励行スルコト 剪定技術者ノ養成ヲナシテ剪定ノ統一ヲナスコト 以上ノ事業ヲ行ヒ品質ノ向上ト収量ノ増加ヲ計ラントス 晩生柑橘 バレンシヤ日向夏等ノ晩生種ノ柑橘ヲ栽培セシメ三四月頃ノ温暖期ノ需要ニ応シテ収益ヲ計ル以上ノ園芸作物ヲ選択シ之ヲ奨励シテ相当市場ニ於テ認メ得ラルヽ程度ニ生産ヲ心掛ケ且ツ荷造品質等ヲ一定シテ出荷セシムルモノトス 之レガ為メ其地勢ニ応シ各部落ニ左表ノ通リ作物ノ栽培ヲ奨励ス 一 部落別園芸作物栽培標準 ㈥ 養蚕業ノ改善 ⑴ 桑園 桑園ハ他作物トノ関係上現在以上ニ其面積ヲ拡大セズ専ラ肥培管理ヲ懇ニシ現在反当十四貫二百匁ノ収繭量ヲ将来十七貫ニ達セシムルヲ目標トシ左記事項ヲ実行セントス (以上ノ実行ニヨリ二町二反ノ減反ヲ生シ之ヲ蔬菜ノ栽培ニ利用セントス) 1 桑園ノ一割ヲ夏秋蚕専用ニ改ムルコト 2 反当三百貫以上ノ自給肥料(堆肥又ハ緑肥)ヲ施スコト3 品種ノ改良ト共ニ桑苗ノ自給生産ヲ為シ荒廃桑園ノ整理改植ヲナスコト ⑵ 養蚕 現在ニ於ケル春秋蚕飼育割合春蚕六割初秋蚕一割晩秋蚕三割ナルモ価格ノ乱高下著シキヲ以テ暫ク現在ノ程度ニ止ムルモノトス ㈦ 病虫害ノ予防駆除 本村ニ於テハ一般ニ前記各作物ニ対スル病虫害ノ研究幼稚ナルタメ動モスレハ之レヲ等閑ニ付シ往々不慮ノ損失ヲ蒙ルコトアリ殊ニ近年柑橘ニ於ケル「ルビー」蝋虫芥殻虫ノ発生甚シク樹脂病煤病等モ逐年漫延ノ傾向ナルヲ以テ村農会又ハ各部落ニ於テ講習講話会並ニ指導会ヲ開催シ該知識ノ向上ヲ図ルト共ニ之レカ予防駆除ヲ一斉ニ励行シテ其根絶ヲ期セントス ㈧ 畜産業ノ改善 本村ハ基本調書ニ示スカ如ク自給肥料ノ施用量ハ耕地反当僅カニ一七五貫ニシテ年々金肥十二円ヲ購入シツヽアリ依テ之カ節約ノ為メ畜産ヲ奨励シ廐肥ヲ増産セシムルト共ニ収入ノ増加ヲ図ルタメ左ノ事項ヲ実行セントス ⑴ 飼養頭数ノ増加 家畜家禽ノ飼養数ハ耕地反別ニ依リ厩肥ノ所要量及自家労力等ヲ基本トシテ家畜家禽ノ飼養頭数ヲ定ムルコト ⑵ 自給飼料ノ奨励 飼料費軽減ノ為メ努メテ自家生産ニ依リ之ヲ補ヒ飼料ノ自給化ヲ図ルコト 之カ為メ唐モロコシ等ノ穀類ノ下等品甘藷大根其他ノ根菜類野菜類等総テ農産残物ヲ利用シ又大豆粕麦糖魚粕等ノ如キ飼料ハ之ヲ飼料化スルハ勿論事情ノ許ス限リ毎戸相当面積ヲ飼料作物ノ栽培ニ充ツルコト ⑶ 種畜種禽ノ改良並ニ共同事業ノ奨励 1 役肉牛及馬ノ飼養ヲ奨励スルト共ニ耕耘運搬其他畜力利用ニ努メ役用後相当年齢ニ達シタル牛ハ売買又ハ交換前販売価格ノ増加ヲ図ル為メ努メテ飼育シ販売スルコト 2 豚ハ現在飼養頭数僅カニ二百八頭ニ過キサルヲ以テ之ヲ今後四百頭ニ増加シ左ノ計画ニヨリ部落別ニ養豚組合ヲ設置シテ飼養ノ奨励ヲナサントス 以上ノ計画ノ下ニ県畜種場其他ヨリ優良種ヲ購入シ蕃殖ヲ図ラントス 3 鶏ハ飼養管理不完全ニシテ且ツ産卵成績頗ル不良ナルヲ以テ今後飼養数ヲ現在一六八五羽ヲ今後三ケ年間二五〇〇〇羽ニ増加スルト共ニ左ノ方法ニヨリ之レカ改善ヲ加ヘントス 一 共同育雛場ヲ設置シテ各人ニ優良種鶏ヲ配給スルコト 一 飼料ノ共同購入ヲナスコト 一 飼料配合ヲ合理的ニナシ廉価ニシテ且適当ナル飼料ノ供給ヲナスコト 一 生産物ハ販売ヲ統一スルコト 一 駄鶏ヲ淘汰シ柵飼トナスコト 以上ノ各事項ヲ実行スルニ当リ各部落ニ養鶏組合ヲ設置シ左ノ目標ニ向ツテ実行ヲ期セントス 共同雛育場ハ鍛冶屋部落ニ設置ス 4 畜舎家禽舎ノ良否ハ生産能率ニ影響スル所甚大ナルヲ以テ之カ改善ヲ期スル為メ各団体毎ニ改善ノ方法ヲ講スルコト 5 厩肥舎ノ建設奨励 従来貴重ナル廐肥ヲ軽視シ日光雨露ニ曝シ家畜飼養ノ目的ヲ没却スルモノ多シ依テ之ヲ完全ニ利用スル為メ簡易ナル廐肥舎ヲ設クルコト 以上ノ事項ヲ実行スルコトニ依リ生産目標ニ到達セントス ㈨ 副業ノ改善 一 余剰労力並ニ能率増進ニ依リ将来生スベキ余剰労力ヲ基本トシ自家生産ノ材料ヲ以テ製造シ得ル適当ナル副業ヲ選択シ生活費ノ補充ト貯畜ノ資源ニ充テントス 二 タオル生産 曩ニ副業トシテタオル生産ヲ奨励シ生産技術ノ熟達ト機械ノ整備ヲ得タルモ財界不況ノ為メ之レカ拡張ヲ控ヘタリサレド今後景気恢復ヲ俟ツテ其普及ト発展ヲ図ラントス (一〇) 肥料ノ改善 本村ニ於ケル施用肥料中自給肥料ノ生産僅少ニシテ反当厩堆肥四二二三九五貫緑肥二二四三二貫合計四四四八二七貫ニ過キス故ニ努メテ堆肥ノ奨励ヲナシ金肥ノ施用量ヲ減少セシメントス猶金肥ハ村農会指導ノ下ニ適切ナル配合ヲナシテ施肥ノ合理化ヲ行ハントス 一 自給肥料ノ生産増加計画 二 主要作物施肥標準ノ指示 村農会ニ於テ主要作物ノ種類ニヨリ肥料ノ配合標準ヲ定メ価格ト成分トヲ案配シテ配合表ヲ作リ之レヲ印刷等ニナシテ各農家ニ配布スルモノトス 三 販売購買金融ニ関スル事項 販売購買金融ニ関シテハ産業組合ニ於テ村内各種産業団体ト提携シテ左記事項ヲ統一実行スルコト ㈠ 生産物ノ整理統一ト共同販売ノ徹底 (イ) 柑橘ハ本村ノ主要産物ナルヲ以テ県営検査ノ標準ニ基キ品等規格ニ留意シ之レヲ共同作業場ニ集果シテ選果機ヲ利用シ産業組合又ハ出荷組合等ニ依リ共同販売ヲナス 右ノ外西瓜其ノ他ノ蔬菜類ノ荷造リ等ハ該作業場ニ於テ行ヒ統一ノ下ニ之レヲ販売スルモノトス (ロ) 共同作業場ノ建設 以上ノ目的ヲ達成スル為メ各部落ニ共同作業場ヲ設置ス (ハ) 柑橘貯蔵庫ノ設置 柑橘ヲ有利ニ販売スル目的ヲ以テ貯蔵庫ヲ建設シ以テ収入ノ増加ヲ図ラントス ㈡ 購買品ノ選択統一ト購買方法ノ改善 農業需要品又ハ家庭必需品ハ可成共同購入ヲ実行シ単独購入ノ不利不便ヲ避クルコト 殊ニ米ハ本村生産額僅少ニシテ一ケ年約七万円ヲ他ヨリ購入セザルベカラザルノ状態ナルヲ以テ之レガ購入方法ノ如何ハ直チニ本村経済ニ大ナル影響アルヲ以テ努メテ系統機関ヲ利用シ産地ヨリ直接購入シ廉価ニ之レヲ供給スルコト其ノ他ノ購入品ノ仕入等モ出来得ル限リ購買組合ヲ利用シ己ヲ得ザルモノハ広ク購買市場ヲ精査シ優良品ノ低価購入ヲ計ルコト ㈢ 金融機関ノ充実ト其ノ機能ノ向上 一 出来得ル限リ普通銀行其ノ他個人金融者ヨリ借入ヲ避ケ産業組合ヨリ融通ヲ受クルコト 二 産業組合ヲ拡充強化シテ村内金融機関ノ衝ニ当ラシム ㈣ 産業組合拡充ノ目標 一 産業組合ハ本村ニ於ケル経済上重要ナル事業ナルヲ以テ之レガ拡充強化ヲ計ル為メ組合機能ヲ発揮シ以テ各自経済ノ基礎ヲ強固ナラシメントス (イ) 組合員ニ関スル事項 有限責任吉浜信用組合 有限責任吉浜購買組合 無限責任信用販売購買組合庚子社 保証責任川堀信用組合 (ロ) 資金ニ関スル事項 有限責任吉浜信用組合 有限責任吉浜購買組合 無限責任信用販売購買組合庚子社 保証責任川堀信用組合 (ハ) 事業ニ関スル事項 一 信用事項 有限責任吉浜信用組合(昭和九年ヨリ保証責任ニ変更ス) 無限責任信用販売購買組合庚子社 保証責任川堀信用組合 二 販売事業 無限責任信用販売購買組合庚子社 三 購買事業 有限責任吉浜購買組合 無限責任信用販売購買組合庚子社 本村ハ産業組合ノ益々重要ナルニ鑑ミ各部落ニアル既設組合ヲシテ現在経営シツヽアル事業ノ内容ノ充実ヲ計ルト共ニ昭和九年度ヨリ左記事業ヲ兼営セントス 一 吉浜部落 吉浜信用組合並ニ購買組合ハ出荷団体ト合流シテ五ケ年計画ノ下ニ左ノ事業ヲ行フ 一 販売事業 一 鍛冶屋部落 無限責任信用販売購買組合庚子社ハ既ニ三種ノ事業ヲ経営セルモ更ニ昭和九年度ヨリ利用事業ヲ行ハントス 一 利用事業 一 川堀部落 川堀信用組合ハ信用事業ノミヲ経営セルヲ以テ昭和九年度ヨリ販売購買事業ヲ兼営セントス 一 販売事業 一 購買事業 四 負債整理ニ関スル事項 本村負債総額金六拾六万円中銀行関係弐拾六万弐千四百円内 {農工銀行 拾 弐万円普通銀行 拾四万二千四百円}産業組合関係弐拾六万八千円政府低利資金七万参千円個人関係其ノ他六万余円アルヲ以テ此内普通銀行四万弐千四百円ト個人関係其ノ他六万円ト合計金弐拾万弐千四百円ヲ左ノ通リ整理シ各自負債ノ軽減ヲ図ラントス 一金九万円也 産業組合ニ借替へ可成年賦償還トス 一金五万円也 負債整理組合ニ於テ条件緩和ニヨリ借替へ償還ス 一金六万弐千四百円也 各自経済更生計画ノ実行ニ依リ剰余金ヲ以テ償還ス 一 全村ノ金融ハ総テ産業組合ヲ以テ之レヲ統一スルコト 一 負債整理組合ヲ設置シ負債ヲ根本的ニ整理スルコト 一 負債整理組合員ニハ組合ニ対シ左ノ誓約書ヲ提出セシムルコト 誓約書 一 家族ハ敬愛ヲ旨トシ益々家庭ノ円満ニ努ムルコト 二 経済更生計画ヲ誠実ニ実行シ生産ノ増加ヲ図ルコト 三 経済更生計画ニ基キ節約ヲ守リ努メテ剰余金ヲ多額ナラシムルコト 四 負債ノ償還ニハ期日ヲ違ヘザルコト 五 収穫物其ノ他ノ収入中特定ノ貯金ヲ実行シ負債償還貯金トナスコト 六 組合ノ承認ヲ得ザレバ新ナル借入金ハ絶対ニ為サザルコト 七 組合ノ承認ヲ得ザレバ何人ノ依頼ト雖モ債務ノ保証ヲ為サザルコト 八 収穫物其ノ他主ナル物ノ販売又ハ主ナル物資ノ購入ニハ組合ノ指導ヲ受クルコト 九 農事及家事ニ関スル主要事項ハ総テ組合ニ協議スルコト 一〇 其ノ他組合ヨリ指定セラレタル事項ハ総テ遵守スルコト 右ノ各項ハ組合ニ於テ樹立セラレタル負債償還計画実行完成迄厳守可致家族一同承知ノ上誓約仕候也 以上 一 精神教育ノ徹底 1 聖旨ノ捧体 勅語並ニ詔書ノ聖旨ヲ奉体シテ其ノ徹底ヲ図ルコト 2 敬神崇祖ノ精神ノ発場 敬神祖崇ノ念ヲ篤クシ神社ヲ郷土生活ノ中心トナスコト 家ノ祭祀ヲ重ンズルコト 3 宗教心ノ養成 宗教心ヲ養ヒ確固タル信仰ノ下ニ立脚セシムルコト 4 農村生活ノ自覚 愛郷心ヲ喚起シ農村ノ特質ヲ研究シ安ンジテ其ノ生活ニ勤ムコト 子弟教育ニ関シ其ノ方針ヲ過ラシメサルコト 5 公民教育ノ振興 建国ノ精神ヲ強調シ我国立憲政治並ニ自治制度ノ理解ヲナスコト 公共生活ヲ訓練シ団体的活動ヲ促進スルコト 義務心ヲ向上セシメ責任観念ヲ涵養スルコト 至誠ヲ重シ勤倹ノ美風ヲ奨励スルコト 一 生活改善 陋習ヲ改善シ弊風ヲ打破シテ冗費ヲ省キ合理的ニ消費節約ヲ行ヒ生活ノ安定ヲ図ランガ為別紙生活改善ニ関スル実行要目ヲ制定シ併テ左記事項ヲ実行スルモノトス 一 本村ハ米産額僅少ニシテ到底其ノ需要ヲ充スコト不能現在一ケ年約七千俵六万七千八百三十二円ノ米ヲ他ヨリ購入セサルベカラサルノ状態ナルヲ以テ先ヅ食糧ノ自給策トシテ水陸稲ノ増収ヲ計リ之レニ依ツテ年収二百石金額四千四百円ノ節約ヲナシ猶又麦ノ増収ニ依リ七百円ノ食糧費ヲ節減スルコト 一 節酒励行ニヨリ現在八千八百四十七円ノ消費ヨリ約千五百円ノ節約ヲナスコト 一 砂糖及菓子類現在一万八千円ヨリ二千五百円ノ節約ヲナスコト 一 味噌醤油等ノ自家醸造ヲ励行シ現在ノ消費額一万二百五十二円ヨリ約三千七百円ノ節約ヲナスコト 一 生活改善ノ実行ニヨリ冠婚葬祭費及被服費現在五万三千九百六十一円ヨリ約四千九百三十円ノ節約ヲナスコト 一 其ノ他ノ生活費ニ於テ現在十二万九千四百二十四円ノ内ヨリ約七千七百二十円ヲ節約スルコト 以上ノ実行ニヨリ総額二万五千四百五十円(一戸当リ金四十円)ノ生活費ノ節約ヲナスモノトス 右ノ外左ノ事項ヲ行フモノトス 一 記帳ヲ励行シテ予算生活ヲ行ヒ現金ノ支払ヲ実行スルコト 一 服装ヲ簡素ニシテ作業服ハ活動ニ便ナルモノヲ選ビ其ノ使用ヲ奨励スルコト 一 保健衛生 衛生思想ヲ涵養シ公衆衛生ニ関スル知識ヲ普及スルコト 一 農村行事ノ改善ト日常ノ生活改善ノ実行要目ヲ定メ之レヲ信条トシテ趣旨ノ徹底ヲ図ルト共ニ其ノ実蹟ヲ挙ゲシメムトス 実施方法 一 前項ノ趣旨ヲ一般ニ徹底セシムルタメ左ノ方途ヲ講スルコト 1 講演会講習会座談会ヲ開クコト 2 実地要目ノ申合セヲナスコト 3 実地指導ヲナスコト 4 印刷物ノ配布ヲナスコト 5 展覧会品評会ヲ開催スルコト 6 表彰其ノ他ノ奨励方法ヲ行フコト 二 各部落毎ニ実行組合ヲ設ケ計画ノ実行ヲ収メシムルコト 三 学校青年訓練所教育教化産業等ノ各種団体神職宗教家トノ連絡提携ヲ保チ其ノ実現ニ努ムル事 五 計画実行方法 本経済更生計画ノ実行ハ本村経済更生委員会ノ統制ノ下ニ左記各機関互ニ連絡協調ヲ図リ各々其ノ分野ニ応ジテ其ノ分担スル計画ノ遂行ニ当ルモノトス 一 経済的事項ハ主トシテ産業組合ニ於テ行フ 二 農業改良ノ指導督励ハ村農会之レニ当ル 三 各部落毎ニ実行組合ヲ設ケ各部門ニ依ツテ分担シ其ノ実行ヲ期スルモノトス 四 村内ヲ九区ニ別ケ更ニ之レヲ数班ニ分チ各実行委員ハ委員長指揮ノ下ニ部内ヲ指導督励スルモノトス 生活改善実行要目 一 起床ハ日ノ出三十分前トシ各区ニ於テ適当ノ方法ニ依リ時間ヲ報知スルコト 各種会合ハ時間ヲ厳守シ定刻十分前ニ必ズ会場ニ集合スルコト 夜間十時ヲ過ギテハ用談ノ外空シク時間ヲ費サザルコト 但シ事故アルトキハ其ノ旨主催者ニ申出ヅルコト 個人間ニ於ケル会見訪問等モ亦右ニ同ジ 一 誕生祝七五三祝初節句祝ハ内祝ニ止ムルコト 但シ長男長女ニ限ル 右ニ対スル祝儀ハ壱円以内トシ返礼トシテ赤飯以外ノモノハナササルコト 一 青年会ノ入会ニ対シテハ近親ノ外祝儀ヲ贈ラサルコト 一 婚礼ハ左ノ方法ノ一ヲ選ビ神前式ヲ以テ荘厳ニ行フコト イ 村社ノ神前ニ於テ行フコト ロ 家庭神前ニ於テ神職ノ出張ヲ乞ヒ挙行スルコト ハ 家庭神前ニ於テ媒酌人其他ノ者カ神職ニ代ツテ行フコト 一 婚礼ノ調度費ハ左ノ標準ニ依ル 特別税戸数割年額 十円以下ノモノ 金百円 以内 仝 二十円以下ノモノ 金弐百円 以内 仝 三十円以下ノモノ 金弐百五拾円 以内 仝 五十円以下ノモノ 金参百五拾円 以内 仝 五十円ヲ超ヘタルモノ 金五百円 以内 右ノ外婚礼費用ヲ節約シ育児費其他有意義ノ費用ニ充ツルタメ之レヲ持参スルコト 一 調度品ヲ婚家ニ持参シタルトキハ衣裳見セヲナササルコト 一 結納金ハ五拾円以内トシ結納返シヲナササルコト 一 披露ノ宴会ハ開会ヨリ二時間以内ト定メ午後十二時ヲ超ヘサルコト 一 招待客ハ近親並ニ近隣ノ組合内ニ止ムルコト 一 友人間ハ祝儀ヲ廃シ互ニ招待ヲナササルコト 一 宴会ハ質素ヲ旨トシ分度ヲ守リ一人ニ付金弐円以内ニ於テ行フコト 但シ引物ハ新客ノミトス 一 宴会ノ席上ニ於テハ濫リニ酒ヲ強ヒサルコト 一 婚礼ノ祝儀ハ親戚並ニ特別縁故者ノ外ハ金壱円以内トスルコト一 披露廻礼里帰リヲ廃スルコト 但シ通常服ヲ着シ簡単ニ行フコトハ此ノ限リニアラズ 一 結婚後ハ成ルベク速カニ戸籍上ノ手続キヲ履行スルコト 一 葬具ハ共同備付ノモノヲ使用スルコト 一 出棺及儀式ハ時間ヲ厳守スルコト 一 葬儀ノ花ハ団体ヨリ贈ラレタルモノヽ外可成之レヲ差シ控へ一対位ニ止ムルコト 一 婦人ノ会葬者ハ通常礼服又ハ通常服ヲ着用シ白衣ヲ着用スルニ及バサル事 一 念仏ハ左ノ忌日ニノミ之レヲ行フコト 出棺当日初七日三七日(廿一日)五七日(三十五日)四十九日百ケ日 一 念仏講者ニハ夜食ヲ供シ(おたま)其他ノ土産物ハ一切廃スルコト 一 忌吊ヲ全廃スル事 一 香奠ハ五拾銭以内トスル事 但シ近親及特別縁故者ハ此ノ限リニアラズ 一 香奠返シハ従来ノ通リ全廃スル事 一 他町村ノ葬儀ニハ直接縁故者ノミ会葬シ其ノ他ノ者ハ会葬者ノ自宅ヲ訪問シテ弔意ヲ表スル事 一 年忌ハ質素ヲ旨トシ自宅又ハ寺院ニ於テ近親又ハ縁故者ノミヲ以テ行フ事 一 毎月一回以上必ズ展墓ヲ行フ事 一 入営ノ祝宴ヲ廃シ幟ハ従前通リ贈ラサル事 但シ出征凱旋等ノ場合ハ此ノ限リニアラズ 一 入退営兵ノ服装ハ可成軍服又ハ之レニ準ズルモノトシ和服ノ場合ハ有リ合セノモノヲ着用シ之レガ為メ特ニ新調ヲナサヽル事 一 除隊兵ノ土産物ヲ廃シ祝宴ヲナサヽル事 一 国家ノ祝祭日ニハ必ス国旗ヲ掲揚スル事 一 神社ニハ毎月一日十五日参拝スル事 一 田植ニハ耕作主ヨリ依頼ヲ受ケタル場合ノ外ハ其ノ手伝ヒヲ遠慮スル事 一 農事ノ手伝ヒヲナス者ニ対シテハ簡単ナル食事ヲ供スルニ止メ酒其他ノ饗応ヲナササル事 一 農繁ノ際交互ニ手伝ヲナス時ハ互ニ食事ヲ供セサル事 一 節酒節煙ヲ行ヒ可成ク巻煙草ヲ廃スル事 一 未成年者ノ禁酒禁煙ニ対シテハ特ニ監督ヲナスコト 一 普請祝ハ質素ニ之レヲ行ヒ腰掛俵ハ全廃スル事 一 上棟ノ手伝ハ当事者ト打合セ必要人員ニ止ムル事 本実行要目ニ拠リ難キ特別ノ事情アル者ハ予メ吉浜村更生委員会長ニ申出デ其ノ承諾ヲ得ル事ヲ要ス 右実行要目ハ昭和八年十一月一日ヨリ施行ス 吉浜村経済更生委員会 吉浜村生活改善実行方法 第一条 吉浜村更生委員会ハ村内ヲ区ニ分チ各区ヨリ実行委員ヲ五名乃至八名選挙シ其ノ任期ヲ二ケ年トス 実行委員ハ実行部長及其ノ代理者各一名ヲ互選ス 第二条 生活改善実行部員ハ常ニ部内ノ生活改善事項ノ実行ニ留意シ実行要目ニ記載シタル事実ノ発生シタル場合ニ於テハ予メ当事者ノ家庭ヲ訪問シテ実行上ノ注意ヲ促シ其ノ実行ヲ監視シ相当ノ援助ヲ与フルモノトス 前項ノ場合ニ於テ実行部長ヨリ其ノ実行ヲ促シ再三注意ヲ加フルニモ係ラズ実行ノ誠意ヲ示ササルモノアル時ハ実行部長ハ状ヲ具シテ之レヲ更生委員会長ニ報告スルモノトス 第三条 吉浜村更生委員会長ガ前条ノ報告ヲ受ケタル時ハ実行部長会ニ諮リ適宜ノ処置ヲ執ルモノトス 第四条 更生委員会長ハ毎月一回実行部長会ヲ招集シ各区実行ノ状況ヲ報告セシメ互ニ意見ノ交換ヲナシ各区実行上ノ連絡統制ヲ計ルモノトス 第五条 生活改善事項ノ実行ヲナスニ当リ他町村ニ関係アリト認ムル時ハ実行部長ハ之レヲ更生委員会長ニ報告シ更生委員会長ハ直チニ関係町村長ヲ経テ生活改善実行ノ趣旨ヲ徹底セシムル文書ニ実行要目ヲ添へ発送ノ手続キヲナスモノトス 第六条 吉浜村更生委員会ハ生活改善ニ関スル部落懇談会主婦会又ハ研究会講演会等ヲ開催シ趣旨ノ徹底ヲ期ス 第七条 至誠ニシテ勤勉克ク家運ノ挽回ヲ謀リ他ノ模範トスルニ足ルモノアリト認ムル時ハ実行部長ハ之ヲ調査シ更生委員会長ニ報告シ更生委員会長ハ実行部長会ノ意見ヲ諮ヒ之ガ表彰ヲ村長ニ申請スルモノトス 第八条 本規定ニ定ムルモノヽ外生活改善事項ノ実行ニ関シ必要ナル事項ハ実行部長会ノ決議ニ依リテ之ヲ定メ更生委員会長ニ報告スルモノトス 以上 一 本村ハ経済更生計画樹立実行ニ関シ左記役職員ヲ網羅シテ趣旨ノ徹底ヲ図ルト共ニ之レガ指導督励ニ当リ其ノ目的ノ達成ニ邁進セントス 一 吉浜村経済更生委員会 会長 村長 岩本福太郎 副会長 助役 小沢栄三郎 更生委員 浅田岩次郎 小沢開蔵 小沢菊治 井上武雄 小沢久三浅田長吉 力石由太郎 中村真一 河野周作 力石由太郎小沢陸蔵 常盤作太郎 柏木親重 鈴木慶吉 吉田弁吉杉山周吉 力石梅吉 岩本勝次郎 小沢藤吉 藤中里次郎林彦次郎 内藤清吉 力石秀太郎 小沢栄太郎 岩本君之助小沢金太郎 村上新吉 家本清治 露木儀三郎 内藤彦太郎近藤徳寧 常盤梅次郎 小沢一郎 幹事 浅田岩次郎 小沢開蔵 鈴木弘慥 富田武夫 常盤竜蔵小沢菊治 井上武雄 林泰助 向笠武治 力石芳雄 書記 林泰助 井上武雄 小沢菊治 一 経済更生計画樹立実行ニ関シテハ之レヲ産業経済社会教化ノ四部ニ分チ各部門ニヨリ担当委員ヲ定メ指導督励ニ任ス 一 産業部 部長 小沢栄三郎 副部長 常盤作太郎 主任 井上武雄 穂坂次郎 産業部実行委員 第一区委員長力石梅吉 副力石房吉 力石伝蔵 岡崎竟治小沢米太郎 秋沢茂三郎 力石森三郎 部落評議員 力石秀太郎 小沢栄太郎 岩本浅吉 岩本房次郎小沢幸蔵 岩本君之助 第二区委員長村上新吉 副小沢柳吉 岩本勝次郎 力石勘次郎青木豊吉 力石勝治 浅田房治 第三区 稲葉音吉 小沢虎蔵 浅田長吉 小沢時蔵夏目儀三郎 露木儀三郎 力石長吉 向笠富次郎浅田福松 大津祐男 第四区委員長一〇一二力石由太郎 副原力石由太郎 夏目菊治 藤中里次郎山口金平 藤池助七 小沢藤吉 内藤七之助内藤作平 石塚作太郎 加藤仙吉 小沢亀太郎力石栄蔵 松野幸太郎 米岡幸作 柳沢与市 第五区 小野広 鈴木鶴吉 柏木定吉 鈴木慶吉 鈴木松次郎 内藤清吉 鈴木久信 内藤徳次郎柏木春吉 柏木藤吉 常盤定蔵 鈴木庄太郎榎本岩太郎 小沢剛 常盤幾太郎 柏木森太郎露木安一郎 常盤松蔵 西山平吉 常盤寿延北村竜蔵 常盤作太郎 柏木鶴吉 木村鶴吉北村東作 深沢将蔵 小沢健蔵 吉田弁吉柏木親重 杉山周吉 柏木源助 常盤正雄常盤定敏 常盤晴夫 内藤正則 榎本義隆柏木重雄 部落顧問 近藤徳寧 常盤梅次郎 一 経済部 部長 浅田岩次郎 副部長 近藤徳寧 主事 林泰助 主任 常盤竜蔵 委員 第一区 小沢栄太郎 岩本房次郎 力石秀太郎 岩本君之助 力石梅吉 第二区 浅田長吉 家本清治 小沢金太郎 岩本勝次郎村上新吉 小沢和三郎 中村真一 向笠富次郎(原)力石由太郎 露木儀三郎 藤中里次郎 小沢栄三郎小沢一郎 杉山久太郎 第三区 常盤梅次郎 柏木親重 杉山周吉 鈴木慶吉北村柳吉 内藤善吉 常盤作太郎 小清水太次郎 一 社会部 部長 岩本福太郎 副部長 小沢栄三郎 主事 小沢菊治 実行委員 第一区 実行部長 力石秀太郎 仝副部長 小沢栄太郎 委員 力石梅吉 力石房吉 小沢幸蔵 小沢米太郎 第二区 実行部長 小沢金太郎 仝副部長 浅田房治 委員 青木豊吉 根本良之助 小沢親三 向笠延吉 第三区 実行部長 小沢藤吉 仝副部長 力石八百蔵 委員 家本清治 露木儀三郎 小沢和三郎 小沢時蔵浅田幸太 夏目儀三郎 御守常吉 第四区 実行部長 中村真一 仝副部長 力石由太郎 委員 山口金平 小沢広家 柳沢与市 力石栄蔵 第五区 実行部長 力石由太郎 仝副部長 藤中里次郎 委員 内藤作平 内藤七之助 藤池助七 土肥野長太郎 第六区 実行部長 河野周作 仝副部長 林彦次郎 委員 中村八郎 西本兵作 飯田松太郎 榎木清土屋浜之助 小沢浜之助 第七区 実行部長 小沢陸蔵 仝副部長 柏木親重 委員 小沢健蔵 深沢福太郎 鈴木梅蔵 常盤寿延常盤梅次郎 第八区 実行部長 杉山周吉 仝副部長 木村福次郎 委員 小沢剛 常盤定蔵 常盤善太 柏木森太郎 第九区 実行部長 鈴木慶吉 仝副部長 鈴木松次郎 委員 柏木藤吉 杉本富太郎 鈴木演治 内藤徳次郎 小野広 一 教化部 部長 小沢久三 副部長 常盤貞雄 主事 小沢開蔵 委員 熊沢清太郎 原忠太郎 小沢新太郎 向笠孝之富田吾兵衛 細川正義 柳川鼎 石井亀代鈴木弘慥 鈴木隆明 坪井俊彦 米山祖雄近藤徳寧 笠原恵孝 露木文吾 小沢陸蔵内藤七之助 岩本助太郎 露木英男 常盤正雄林武蔵 榎本昌男 力石正司 岩本常蔵根本延三 内藤正則 木村久治 常盤晴夫向笠ツナ 岩本チヨウ 力石ハナ 御守ヒコ青木ヨシ 杉山ヤマ 鈴木リセ子 一 基本調査ニ関スル調査員 常任調査員 (役場吏員) 調査部長 浅田岩次郎 調査員 鈴木弘慥 井上武雄 小沢菊治 向笠武治富田武夫 林泰助 小沢開蔵 力石芳雄 部落調査員 第一区 第一班 岩本助太郎 第二班 岩本治三九第三班 岩本常蔵 第四班 力石森三郎 第二区 第一班 向笠春蔵 第二班 岩本勝次郎第三班 鈴木隆明 第四班 小沢金太郎第五班 村上新吉 第六班 坪井俊彦第七班 菊池内匠 第三区 第一班 向笠孝之 第二班 小沢時蔵第三班 大津祐男 第四班 神保寅之助第五班 根本延三 第六班 向笠一雄第七班 夏目儀三郎 第四区 第一班 力石芳雄 第二班 山口金平第三班 佐藤隆治 第四班 力石栄蔵 第五区 第一班 藤中幸作 第二班 小沢藤吉第三班 内藤七之助 第六区 第一班 榎本清 第二班 小沢真一第三班 西本兵作 第四班 斎藤和郎第五班 青木喜助 第六班 土屋浜之助 第七区 第一班 原忠太郎 第二班 北村東作第三班 竹原幸久 第四班 木村久治 第八区 第一班 柏木源助 第二班 小沢剛第三班 常盤晴夫 第四班 常盤正雄第五班 榎本昭造 第九区 第一班 鈴木歌吉 第二班 常盤定敏第三班 小野広 第四班 加藤忠太郎第五班 鈴木久信 (仙石原村役場「視察町村参考書類」(昭和十一年)箱根町役場蔵) 〔注〕別紙基本調査書省略。 二五 中郡大磯町大磯漁業組合経済更生計画書 「昭和八年度経済更生計画書中郡大磯町大磯漁業組合」 大磯町漁業組合経済更生計画書目次 第一 目的 第二 目標 一 経済更生目標 二 生産目標 三 収支目標 第三 計画要項 一 土地ニ関スル事項 ㈠ 船揚場船溜場ノ拡張整備 二 生産ニ関スル事項 ㈠ 副業奨励 ㈡ 水産業改善 (イ) 漁業共同経営ノ改善及組織ノ改善 (ロ) 漁業ノ統制 (ハ) 漁業ノ新計画 ㈢ 水産物ノ価値増進対策 ㈣ 沿岸漁業ノ拡充 (イ) 蕃殖保護ノ徹底 ⑴ 種苗放養及害敵ノ駆除 ⑵ 築磯ノ設置 ⑶ 瀬ノ海魚礁ノ愛護 (ロ) 漁業権ノ整理及充実 ㈤ 発動機付漁船ニ依ル漁業経営ノ改善 (イ) 隻数噸数馬力数ノ統制 (ロ) 機関ノ規格統一 (ハ) 燃料費ノ軽減 三 販売購買金融ニ関スル事項 ㈠ 販売ニ関スル事項 ㈡ 購買ニ関スル事項 ㈢ 金融ニ関スル事項 四 負債整理ニ関スル事項 五 衛生設備ニ関スル事項 ㈠住居ノ改善 ㈡ 医療設備 ㈢ 浴場設備 六 社会教育ニ関スル実行要目 ㈠ 精神教育 ㈡ 生活改善 婚礼 葬儀 年始中元歳暮等ノ贈答 出産並子女ノ祝 附 大磯漁業組合更生規約 大磯漁業組合更生計画書 第一 目的 本漁業組合ニ於テハ数年来財界ノ不況ニ依ル魚価ノ暴落ト漁獲ノ減少トノ為ニ各漁家ノ収入激減シ別紙基本調査ノ示スカ如ク昭和七年度ニ於テハ負債総計四六三七四円(一戸平均一三六円)ニ達シ而カモ組合員全体ノ収支ハ差引三二七三七円ノ損失ヲ見タリ故ニ今ニシテ自主的精神ヲ振起シ更生ノ途ヲ開カザレバ将来大ナル悲境ニ陥ルベキヲ以テ今般県助成ノ趣旨ヲ体シ左記経済更生計画ヲ樹立シ全組合員ノ和衷協同ト各種団体ノ連絡協調ノ下ニ産業的並ニ社会的改善ヲ遂行シ本組合ノ経済更生ヲ完成セントス 第二 目標 本目標ハ第三計画要項ノ実行ニ依リ向フ五ケ年(昭和十二年)ノ終リニ於テ到達セントス 一 経済更生目標 二 生産目標 三 収支目標 第三 計画要項 一 土地ニ関スル事項 ㈠ 船揚場船溜場ノ拡張整備 本組合ニハ発動機付漁船五十三隻無動力漁船百五隻アルニ船揚場ハ二ケ所三二七〇坪ニ過ギズ朝夕出漁ニ際シテ混雑ヲ来シ漁業能率ヲ減スルコト尠カラス故ニ左記ニ依リ更ニ之カ整備ヲ行ハントス 震災直後岩盤隆起ノ為漁船ノ出入ニ際シ危険甚シク且其ノ引揚ニ著シキ障害アリタルヲ以テ海底ヲ浚渫シテ水深ヲ増加シ海岸ノ切均シテ行ヒ護岸工事ヲ施シテ海水ノ浸蝕ヲ防ギ以テ之ヲ船揚場トシ傍ラ漂砂防禦ニ備フル為防砂堤及砂壁ヲ設ケタルモ尚充分ナラサルヲ認メ昭和八年工費金弐万四千円ヲ投シテ更ニ浚渫並防波壁ヲ設定セリ 然レドモ尚拡張ノ要アルヲ以テ更ニ沖合東西ノ方向ニ約六十間ノ防波堤ヲ築造シテ船溜ノ完璧ヲ期シ出漁ニ便ヲ得セシメントス 二 生産ニ関スル事項 ㈠ 副業奨励 (イ) 漁家ノ余剰労力(家庭婦女子並時化休漁)ヲ利用シ副業トシテ横浜市中区南太田町横浜麻真田集団工場(代表者田中兵助氏)ノ応援ヲ得テ工場建物五十坪ヲ建設シ動力設備ニ依リ最初五十台ノ機械ヲ据付ケテ麻継ヲ為サシメ年収五千円ノ収入ヲ計ラントス (ロ) 家庭ノ副食品タル野菜類ハ従来土地狭隘ニシテ耕作地ニ乏シク悉ク購入シ居ル状態ニアリ其ノ購入年額ハ実ニ七千有余円ニ達ス故ニ大磯町有地ノ三千坪並ニ官有地ニシテ耕作可能ノ土地約三千坪及渡辺千秋氏所有ノ埋立地五千坪ヲ借入レ栽培上ニ関シテハ中郡農会ノ実地指導ノ下ニ共同菜圃ヲ設ケ自給自足ノ途ヲ講□ ㈡ 水産業改善 (イ) 漁業共同経営ノ改善及組織ノ改善 個人経営ヨリ漸次共同経営ニ移シテ出資制度ニ依リ小規模漁業ヨリ漸次向上セシメ被傭者観念ヲ離脱シテ責任感ヲ強カラシメ以テ漁業経営機能ノ充実ヲ図リ冗費ノ節約福利ノ増進ヲ計ラントス (ロ) 漁業ノ統制 漁業ノ発展ニ関シ遠キ将来ヲ考慮シ各種漁業間ノ調和ヲ図リ漁船漁具等ニツキテモ其ノ統制ヲ図ラントス (ハ) 漁業ノ新計画 ⑴ 本組合漁業者ハ従来鰹漁業其ノ他ノ餌料ハ何レモ須賀三崎静岡方面ヨリ購入シ居リ之ガ為ニ常ニ好漁ノ機会ヲ失シ拱手傍観スルノ不利ナル状態ニアリ依テ組合員ニ低資ヲ供給シ出資制度ニ依リ巾着網漁業者組合ノ組織ヲナサシメ餌料自給自足ノ途ヲ講シ生産費ノ低減ヲ計リ利益ヲ増進セントス ⑵ 揚繰網ヲ経営セシメ定置漁業鰤大謀網ノ漁期(五月三十日)終了後ニ於ケル漁業余剰労力ヲ直ニ揚繰網漁業ニ転換セシメ漁業者ノ利益ヲ均等ナラシメントス ㈢ 水産物ノ価値増進対策 水産物ヲ良ク市場化スルコトハ最モ重要視セラル将来ハ生産ノ増加ト之カ処理トニ向ツテ特ニ左記事項ニ付意ヲ用フル必要アリ (イ) 魚類ハ腐敗シ易キ特質ヲ有スルヲ以テ農林省ノ補助ヲ得テ製氷設備ヲ行フカ若ハ製氷会社ト特約シ氷ノ需給関係ヲ円滑ニシ鮮度ヲ高カラシムルコトニ意ヲ用フ (ロ) 水産製造加工処理所ヲ設置シ共同作業ニ依リ水産物加工製造ヲ奨励シ漁獲ノ予想困難ニシテ不時多量ニ漁獲セラルル鰮ニ対シテハ煮乾製造又ハ圧搾シテ魚肥ノ製造ヲ行ヒ鰤ハ鰤藁捲ノ製造ヲ為シ以テ価値ノ培加ヲ図ラントス ㈣ 沿岸漁業ノ拡充 (イ) 蕃殖保護ノ徹底 ⑴ 種苗放養及害敵ノ駆除 竜蝦ノ親蝦一千尾ヲ放養シ自昭和九年四月至昭和十年八月禁漁期間ヲ設定シ且害敵タル蛸駆除ノ為メ蛸壷ニ依リ一挙ニシテ増産ト蕃殖ノ実ヲ挙グルモノトス ⑵ 築磯ノ設置(魚族ノ誘致) 大型ノ廃船ヲ購入シ餌料ヲ積載シテ之ヲ沈下セシメ人工魚礁ヲ造リ鰺鯖黒鯛鱸等ノ魚族ヲ誘致シ漁獲高ヲ増加セントス ⑶ 瀬ノ海魚礁ノ愛護 相模湾内瀬ノ海魚礁ニ対シテハ極力関係漁業組合ト連絡シテ魚族蕃殖及保護ノ実ヲ挙ゲ漁獲ノ増加ヲ計ル (ロ) 漁業権ノ整理及充実 利用少ナキ定置漁業改良三捜張漁業二統ヲ整理シ定置漁業鰮猪口網漁業権ヲ設定シ漁業組合ノ利益増進ヲ計ラントス ㈤ 発動機付漁船ニ依ル漁業経営ノ改善 (イ) 隻数噸数馬力数ノ統制 相模湾内瀬ノ海魚礁ハ魚族豊富ニシテ本組合ヨリ出漁スルモノ多ク最近強力ナル火光ヲ用ユル網漁業ニ依リ著シク漁獲減少シ逐年沿岸漁業ノ衰退ノ傾向アルニ鑑ミ将来遠洋漁業奨励ヲ為トス共ニ一面極メテ近距離ニ有力ナル漁場ヲ持ツ本組合ハ出漁船数噸数ニ考慮ヲ用ヒ更ニ馬力数ニ付テモ消費節約ノ見地ヨリ最大限度ヲ定ムルノ要アリ充分基礎調査ノ上実施セントス (ロ) 機関ノ規格統一 機関ノ修繕ニハ最モ多額ノ経費ヲ要シ漁業者ノ等シク苦痛トスル所ニシテ機関ノ種類多ク部分品モ千差万別ナルヲ以テ調査ノ上規格統一ヲ行ヒ然ル後之ニ必要ナル修繕工場若ハ指定工場ヲ設置セントス (ハ) 燃料費ノ軽減 燃料ノ使用ハ年額弐万円ノ巨額ニ達スルヲ以テ本組合共同購買事業取扱種目ノ一ニ加へ且機関ノ合理的使用法ヲ徹底セシメテ消費節約ヲ図ラムトス 三 販売購買金融ニ関スル事項 ㈠ 販売ニ関シテハ現行法ノ定ムル所ニ依リ既設市場トノ関係上遺憾ナカラ計画シ得サル悩ミアリ故ニ販売ニ関シテハ左記事項ニ意ヲ用ユ (イ) 漁獲物ハ漁業者唯一ノ収入資源ナルヲ以テ自己ニ有利ニ且確実ニ販売スルノ必要ヲ認ム単一魚市場ノ取扱ニノミ委スルコトハ本組合ノ実情ニ即シテ最モ考慮スヘキ重点ナリ依テ中郡農会其ノ他産業団体ノ応援ヲ求メ郡内経済更生町村ト協定シ農産物トノ物々交換ハ相互ノ利益ヲ増進シ一面保健衛生上ノ見地ヨリスルモ最モ機宜ニ適スル方法ニシテ併セテ魚価牽制ノ一手段ナリ (ロ) 計画実施ニ依ル副業水産製産品及漁獲物ハ何レモ製品ノ統一ニ力ヲ用ヒ共同出荷共同販売ニ依リ経費ノ節減ヲ計ル ㈡ 購買ニ関シテハ現在取扱中ノ日常生活必需品ニ対シ購買品ノ選択ニ注意ヲ払ヒ特ニ現金購入ニ依リ廉価ニ配給シ家計費ノ逓減ニ資セントス 漁業必需品タル氷石油餌料漁具等ハ組合購買部ニ於テ取扱ヒ生産費低減ニ資スル外不況打開ノ途ナシ故ニ主トシテ共同購入ヲ行ヒ単独購入ノ不利不便ヲ避ケ系統機関ヲ利用シ購買市場ヲ精査シ優良品ノ低価購入ヲ図ル ㈢ 金融ニ関スル事項 (イ) □□銀行ノ借入ヲ成ルヘク避ケ極力組合ヨリ融通ノ途ヲ講ズルコト (ロ) 経済更生部落ニ指定セラレテ以来旧債償還ノ目的ヲ以テ既ニ実行中ノ日掛貯金(更生貯金)ヲ励行シ更ニ出漁貯金(端銭貯金)ヲ実施セントス 四 負債整理ニ関スル事項 ㈠ 本組合負債総額四万六千円(一戸当一三〇円) ハ各自経済更生計画ノ実行ニ依リ生ズル余剰金ヲ以テ返済ス ㈡ 親戚知人及無尽其ノ他金融会社等ノ借入金ハ組合ノ低利資金ニ借換セシム ㈢ 以上ハ組合役員会ノ決議ニ依リ借換者決定シ順位ハ自力更生ノ精神ニ富メル者ヨリ漸次決定ス 五 衛生設備ニ関スル事項 ㈠ 漁業組合員ノ住居ハ宅地ノ面積狭隘ノ為乍遺憾通風採光ニ欠クル所多シ殊ニ台所ノ改善ハ生活上最モ重要事項ニ付改築其ノ他ニ当リテハ此ノ主旨ニ基キ慫慂セントス ㈡ 医療設備 大磯町内ニ開業医アルモ従来漁業者ノ家庭ニ対シテハ事情ノ如何ヲ問ハス極メテ悲惨ナル情態ニアリ依テ組合嘱託医ヲ設置シ実費診療ヲ為サセシムルト共ニ県ノ助力ヲ仰ギ定期診療所ヲ開設セントス ㈢ 浴場設備 漁業者ノ家庭ニ風呂ノ設備アルモノ極メテ少数ニシテ漁業者ノ入浴料ハ家計上極メテ多額ニシテ不漁ニ際シテハ家族ハ全ク入浴セサルモノアリ衛生上遺憾ノ点多シ依ツテ組合共同浴場ノ設置ヲ為サントス 六 社会教育ニ関スル実行要目 ㈠ 精神教育 1 勅語並詔書ノ聖旨ヲ奉体スルコト 2 祝祭日及神社ノ祭典当日軍人送迎ノ際ニハ各戸ニ国旗ヲ掲揚スルコト 3 毎月一日十五日ニハ必ズ氏神ニ参拝スルコト 4 毎月一日十五日ニハ神棚及仏壇ヲ清掃スルコト 5 出漁及帰家ノ際ニハ必ズ神仏ヲ念スルコト 6 祖先ノ祭祀ハ質素ナル方法ニテ必ズ之ヲ行フコト 7 郷土ノ特質ヲ研究シ愛郷ノ念ヲ発揚スルコト 8 漁業ニ関スル研究ヲ為シ之ニ対スル信念ヲ持ツコト 9 父老ヲ尊敬シ長幼ノ序ヲ重ンスルコト 10 選挙ニ関スル知識ヲ啓キ且之ヲ公正ニ履行スルコト 11 各種団体ニ対シ協力互助ノ精神ヲ発揚スルコト 12 集会等ノ時間ヲ励行スルコト 13 利己心ヲ抑制シテ漁業組合ノ精神ヲ発揚スルコト 14 子女ノ教育ニハ一層ノ力ヲ用フルコト 15 町内会員中ノ葬儀ニハ可成会葬シテ死者ニ対スル礼ヲ行フコト ㈡ 生活改善 1 予算生活ヲ実行スルコト 2 漁業組合ノ購買部ヲヨク利用スルコト 3 冗費ヲ省キ倹素ナル生活ヲナスコト ◎ 婚礼 イ 持参品ハ虚飾ニ流レズ必ズ分度ヲ守ルコト ロ 式服ハ之ヲ質素ニシ式場ニ於ケル晴着ノ着換ヲ全廃スル コト ハ 饗宴ハ可成質素ニシ特ニ酒ノ無理強ヒヲナサザルコト ニ 衣服調度品ノ披露ヲ全廃スルコト ホ 三ツ目五ツ目等ノ振舞ヲ全廃スルコト へ 婿嫁ノ目見得歩キノ配茶ヲ廃止スルコト ◎ 葬儀 イ 穴掘及忌中払ヒノ外ハ一切酒ヲ用ヒサルコト ロ 香奠返シハ可成簡単ニスルコト ハ 生花造花ノ贈受ハ可成少クシ放鳥ハ之ヲ全廃スルコト ◎ 年始中元歳暮等ノ贈答 イ 年始ノ贈答ハ結紙ノミニ止ムルコト ロ 中元歳暮ノ進物ハ質素ニシテ実用品ヲ用フルコト ◎ 兵士ノ入退営 イ 長旗ハ必ズ一本ニ限ルコト ロ 入退営ノ饗応ハ之ヲ全廃スルコト ハ 退営者ノ土産ハ手拭一節ヲ以テ限度トスルコト ◎ 出産並子女ノ祝 イ 産児舞孫抱ハ訪問ノミニ止メ贈答品ハ全廃スルコト ロ 初孫祝ノ贈答品ハ近親者ノミニ止ムルコト ハ 男女初節句ノ祝ハ成ルヘク質素ニスルコト ニ 七五三ノ祝ハ家祝ノミニ止ムルコト 4 保健衛生ニ関シテハ大イニ意ヲ用フルコト 5 婦女子ハ余剰労力ヲ活用シテ家計ノ補助ヲナスコト ⦿大磯漁業組合更生会規約 第一条 本会ハ生活改善勤倹力行ノ美風ヲ奨メ自力更生ノ実行ヲ期シ会員相互ノ福利ヲ増進スルヲ以テ目的トス 第二条 本会ハ大磯漁業組合更生会ト称ス 第三条 本会ノ事務所ハ之ヲ大磯漁業組合事務所内ニ置ク 第四条 本会員ハ自己ノ都合ニ依リ脱会スルコトヲ得ス 第五条 本会ニ左ノ役員ヲ置ク 会長一名 副会長 名 組長 名 第六条 役員ハ総テ名誉職トシ大磯漁業組合役員之ヲ兼ヌルモノトス 第七条 役員ノ職務ヲ左ノ如ク定ム 会長ハ本会ヲ代表シ会務ヲ総理ス 副会長ハ会長ヲ補佐シ会長事故アルトキハ年長順ニ依リ会長ノ職務ヲ代理ス 組長ハ組内ノ事務ヲ処理シ且ツ実行要目ニ関スル実行ヲ監査シ違背者ニ対シテハ警告ヲ発シ又ハ之ヲ会長ニ申告ス 第八条 本会ニハ本会ノ発展ヲ図ル為メ顧問及嘱託員ヲ置クコトヲ得 第九条 総会ハ之ヲ通常総会臨時総会ノ二種トス 第十条 通常総会ハ大磯漁業組合通常総会ニ附随シテ之ヲ開キ左ノ事項ヲ行フ 一 会務及成績ノ報告 一 講演談話申合等 一 其他必要ト認ムル事項 第十一条 臨時総会ハ必要ニ応シ会長ノ意見又ハ会員十分ノ一以上ヨリ請求アタリル場合之ヲ開会ス 第十二条 役員会ハ必要ノ都度開会シ左ノ事項ニ付協議ス 一 会長ノ諮問ニ関スル事項 一 目的貫徹ニ関スル実行方法 一 経費ニ関スル事項 一 其ノ他重要ナル事項 第十三条 本会ハ本会ノ目的貫徹ヲ期スルタメ会員ノ主婦ニ対スル啓発決意実行ノ指導方法ヲ講スルコトヽス 第十四条 本会ハ特ニ副業ニ関スル斡旋及指導ヲ施行スルコトヽス 第十五条 本会ニ要スル経費一切ハ大磯漁業組合ニ於テ之ヲ支弁スルモノトス 第十六条 本会ノ会員ニシテ本会ノ規約ニ違背シタルモノアルトキハ総会又ハ役員会ノ決議ニ依リテ之ヲ処置スルモノトス 附則 一 本規約ノ改正ハ総会ニ計リテ会員半数以上ノ賛成アルニアラサレハ之ヲナスコトヲ得ス 一 本規約ハ会員ノ記名捺印ヲ了シ之ヲ事務所ニ保管ス 一本規約ハ昭和 年 月日ヨリ之ヲ施行ス (神奈川県農政部水産課「経済更生関係」(昭和八年)神奈川県庁蔵) 〔注〕別紙基本調査書省略。 二六 中郡成瀬村経済更生計画実行費調 「昭和七年度指定(農村) 経済更生計画及其ノ実行費 神奈川県中郡成瀬村」 目次 第一 経済更生計画ノ要旨 第二 村ノ概況 第三 村民ノ収支及負債並更生ノ目標 第四 経済更生計画実行ニ要スル施設項目 第五 特別助成ノ対象トナル計画事項ヲ包含スル経済更生計画実 行費調 神奈川県中郡成瀬村経済更生計画及其ノ実行費 第一 経済更生計画ノ要旨 数年来ノ不況ニ依リ生産物価格ノ暴落ヲ来シ為ニ各農家ノ収入激減シ村民ノ経済力ハ極メテ窮迫シ居レリ而シテ之ガ更生ヲ図ルノ方策多々アルベシト雖モ本村民ガ真ニ農民精神ヲ体得シ自奮自励総協力ニ依リ而モ老若男女ガ其ノ受持ヲ通ジテ本村ヲ提ゲ邁進スルノ精神ヲ根基トシ左ノ更生計画大綱ヲ実現スルノ一途アルノミナリ ㈠ 産業組合ヲ拡充活用シ産業及経済ノ発達ヲ期スルコト ㈡ 負債整理組合ヲ設立シ負債ヲ整理スルコト ㈢ 共同収益地ヲ設定シ更生基金備荒共済基金ヲ積立ツルコト ㈣ 食糧自給シ得ザル農家ニ耕地ヲ供給シ食糧ノ自給自足ヲ図ルコト ㈤ 家畜ノ増殖特ニ本村ニ適スル牛豚緬羊ノ普及ヲ図ル為畜舎ノ改良空地ノ整理牧草植栽採草地設定受乳所設置集卵所設置牛豚購入資金融通ヲ図ルコト ㈥ 共同出荷場ヲ各部落ニ一個所宛設置シ農産物販売統制ノ徹底ヲ図ルコト ㈦ 改良農具ヲ完備シ共同利用ニヨリ能率増進ニ資シ労力ノ分配利用ニヨリ裏作栽培ノ増加ニ努メムトス ㈧ 自給肥料ノ増産ト施肥ノ合理化ヲ図ラン為堆肥舎ノ全農家建設ヲ計画シ産業組合ニヨル肥料配合ノ徹底ヲ図ルモノトス ㈨ 農民道場ニ青年男女ヲ入場セシメ中堅人物ノ養成ニ努メ精神振作ヲ為スコト 而シテ之ガ計画実行ニ当リテハ各部落ニ連帯責任ヲ負フ実行組合ヲ設置シ此ノ実行組合ハ各実行班ニ分チ恰モ往年ノ五人組制度ノ如クナシ之等実行組合ヲ産業組合農会ト密接ナル関係ヲ保タシメ学校其ノ他教化団体モ夫々連絡協調シ村経済更生委員会ニ於テハ之等総テヲ統制シ計画実行ノ円滑ヲ期スルモノトス 各部落ヨリ中堅青年ヲ選抜シ農民道場ニ入場セシメ帰村ノ上ハ之ヲ実行組合ニ配属セシメ幹部ノ指揮ノ下ニ又ハ独立シテ郷土更生ノ第一線ニ当ラシムルト共ニ村民各戸ニ我ガ家ノ更生計画ヲ部落ノ実行組合ニ「部落計画」ヲ夫々樹立セシメ村ノ経済更生計画ノ実行ヲ徹底セシメントスルモノナリ 第二 村ノ概況 一 位置及地勢其ノ他村情大観 村民ノ気風ハ質朴温順ニシテ勤倹ナリ納税観念良好ニシテ九九%ノ完納率ヲ示セリ農業以外ノ営業ハ醤油醸造業一戸材木業一戸雑貨店三戸ニシテ経済更生計画ヲ徹底セシムル上ニ於テモ別ニ影響ヲ及ボスコトナシ 産業組合ガ米穀類ノ販売統制ヲ強調シ肥料飼料ノ配給計画ヲ徹底セシムルモコレニヨリ生業ノ脅威ヲ受クル者ナシ 備考 商工業ハ計二九戸アルモ内工七雑業一〇菓子飲食等七戸ニシテ大ナル営業ハ僅々五戸ナリ 二 戸口 三 土地面積 イ 地目及所有別土地面積 備考 本町民所有地本村地積ヨリ多ハ他町村ニ本村民ノ所有地多キニヨル ロ 利用経営別土地面積 ハ 山林原野放牧採草地等ノ利用状況 山林原野ノ利用ハ頗ル行届キ放牧地等ハ地積ノ関係上ソノ余裕ナシ採草地ハ僅カニ道路ノ畦畔堤塘等ニコレヲ求ムルモ堆肥ノ原料トシテ或ハ家畜ノ飼料トシテヨク利用セラル ニ 魚場水面等水産資源ノ利用状況 ナシ 四 主ナル生産物(最近五ケ年平均) 農産物 二五四、八三七円 林産物 三、〇五〇円 水産物 ナシ 工産物 ナシ 鉱山物 ナシ 其ノ他 一、〇七〇円 五 村民ノ収支及負債(昭和八年) 村全体 農家全体 農家一戸当 収入 三四六、四六〇円 二六〇、七二〇円 六六八円 支出 三七〇、九八八円 二八二、二四八円 七〇六円 差引不足 二四、五二八円 二一、五二八円 不足 三八円 負債 五〇〇、〇〇〇円 二五〇、〇〇〇円 六二五円 預貯金額 一三二、〇〇〇円 一一二、〇〇〇円 二八〇円 備考 負債ハ推定ナリ村全体ニハ村債九万円(内自作農創設資金三万円)耕地整理組合十五万円計二十四万円ヲ合算シアリ農家全体ニハソノ分ヲ除外シ且ツ農家ニ非サルヽモノヽ分一万円ヲ除キタリ 六 部落別経済大観(昭和十年) 備考 租税公課ノ比較的多キハ耕地整理組合ノ分賦金モ公課ニ合算セルニヨル 七 農家ノ負債及貯金調査(昭和十年) イ 負債戸数及負債額 ロ 借入先別内外別負債額 ハ 利率別負債額 七分未満 二一、五〇〇円 七分以上一割未満 二二一、三〇〇円 一割以上一割五分未満 七、二〇〇円 一割五分以上 ― 計 二五〇、〇〇〇円 ニ 担保別負債額 有担保 田畑担保 一五三、〇〇〇円 其ノ他 六、〇〇〇円 無担保 九一、〇〇〇円 ホ 貯金額 ロ 成瀬村財政状況 1 成瀬村歳入出一覧表(昭和十年) 2 歳入総額ニ対スル村税総額(昭和十年度) 3 成瀬村有基本財産表 一 土地 二 建物 三 債券 四 現金 4 村債 5 租税納税成績調(昭和十年度) ニ 産業組合 名称 保証責任成瀬村信用販売購買利用組合 区域 成瀬村一円 設立年月日 大正十年四月三十日 組合員数其ノ他ハ別冊昭和十年度報告書添付 ホ 産業組合更生計画 別紙本組合経営方針及拡充計画達成目標添付 へ 成瀬村農会 名称 成瀬村農会 区域 成瀬村一円 会員数 六百名 農会歳入出予算(昭和十一年)別冊ノ通リ 八、経済更生計画実行組織 (イ)町村ニ於ケル経済更生ニ関スル指導及実行ノ統制組織一覧表 第三 村民ノ収支及負債並更生ノ目標 一 収支目標 二 生産目標 第四 経済更生計画実行ニ要スル施設項目 一 経済更生委員会ノ活動 イ 現況及将来 経済更生委員会ニハ会長一名(村長)副会長一名(助役)幹事若干名及委員二十六名ヲ常置シ村内ヲ二十六区ニ分割シ各区ニ一名ヅヽ委員及督励員ヲ配置シ計画実行及各事業ノ連絡ニ当ラシム ロ 経営主体 村 ハ 所要経費 百円(一ケ年分)継続事業 二 技術員増員 イ 現況及将来 現在村費ニテ一名農会費ニテ一名養蚕実行組合ニテ一名計三名常置シアルモ将来農産物販売統制ヲ拡充スル為産業組合ニテ一名ヲ設置セムトス ロ 計画実行主体 産業組合 ハ 所要経費 一ケ年分 七百円 継続事業 ニ 経費支弁方法 自弁(産業組合)七百円 助成 ナシ 借入 ナシ 三 採種圃設置 イ 現況及将来 現在本村ニ栽培セラルヽ稲作及小麦等ハ其ノ品種雑駁ニシテ之ヲ統制セズンバ収量ハ勿論販売統制上不利甚ダシキ為農会ニ於テ採種圃ヲ設ケ優良ナル籾種子及小麦種子ノ配布ヲナシ品種ヲ統制シ増収並販売上ノ利便ヲ計ラムトス ロ 計画実行主体 農会 ハ 所要経費 二千六百五十円(一ケ年分) 継続事業 ニ 経費負担区分 農会負担 三百円 種子代収入見込 二千三百五十円 四 農産物其他ノ品評会ノ開催 イ 現況及将来 大小麦立毛水稲苗代堆肥増産及各種農産物品評会ヲ順次開催シ品質ノ向上増殖ニ資セムトス 又小麦作ニ於テハコレガ改善ノ為更生区単位ノ共進会ヲ開催シ増殖ト販売統制ニ資セムトス ロ 計画実行主体 農会 ハ 所要経費 三百二十円(一ケ年分) 継続事業 ニ 経費負担 村農会 五 負債整理 イ 現況及将来 村民ノ負債ハ村債及耕地整理組合債ヲ除キタル個人負債ニ於テモ総額二十四万円アリテ内負債整理組合ヲ設立シテ整理ヲ要スベキ八万円ニ対シ三箇ノ組合ヲ設立シ負債ノ整理ヲ計ラントス ロ 計画実行主体 負債整理委員会ノ設置 村 ハ 所要経費 百円 ニ 経費負担区分 別途助成金百円ヲ以テ之ニ充ツ 六 記帳奨励 イ 現況及将来 農家経営ノ改善ニハ各戸農家ニ記帳ヲナサシメ之ヲ基礎ニ改善計画ヲ樹立シ各農家ノ経済更生ヲ計ラン為全農家ニ帳簿ヲ備へ付ケ記帳ヲ奨励セムトス ロ 計画実行主体 村農会 ハ 所要経費 金八十円(一ケ年分) 継続事業 ニ 経費負担区分 農会負担 四十円 各自負担 四十円 七 堆厩肥舎新設 イ 現況及将来 堆肥舎改善計画ノ現況ハ完全堆肥舎ハ僅七十余棟ニ過ギズコレヲ農家全部ニ完成セシムベク二百棟ノ増設ノ計画五ケ年ニテ達成 ロ 計画実行主体 村農会 ハ 所要経費 金二万三千八百円也 一棟 百十九円 二百棟分 ニ 経費負担区分 農会負担 二千円 村農会費ヨリ支出五ケ年間ニ行フモノトス 借入金 三千円 産業組合ヨリ貸付ス年々六百円宛五ケ年分(農家ニテ自弁金不足ノモノニ貸付) 各農家自弁金 一万八千八百円 八 畦畔整備 イ 現況及将来 水田ノ畦畔ハ年々畦塗リ作業雑草除草等ノ為労力其ノ他ノ不経済少ナカラザルニ付コノ際共同苗代地帯全部ニ対シ畦畔ヲ全部コンクリートニ改善セントス 関係農家 一五〇戸 関係水田面積 七十五町歩 畦畔延長 七千五百米 ロ 計画実行主体 農事実行組合 ハ 所要経費 六千四百八十円 ニ 経費負担区分 受益者出金 三千二百四十円 助成金 三千二百四十円 九 共同収益地設置 イ 現況及将来 各部落ニ若干ノ共有地等アレド部落協議費ノ一部ニ充当スル程度ニテ将来ニ備フベキ為ノ共同収益場即チ備荒田畑ノ共同耕作地ヲ各部落毎ニ設置セシメ労力ヲ奉仕シ粗収ヲ全額蓄積セムトス 村及各部落別ノ計画事項左ノ通リ 成瀬村 一 成瀬村ノ事業トシテ無立木山林三町歩購入青年学校生徒ノ実習トシテ植林事業ヲナス 二 本村内ノ土地ニテ他町村民ノ所有セル水田約四町歩購入シ村民中ノ小作農及転業農家ニ耕作セシム 以上土地購入金 山林 二千四百円 水田 一万四千円 合計 一万六千四百円也 内 村債ニヨルモノ 一万五千円 助成金 一千二百円 二十ケ年間ニ村債ヲ土地ノ収益ニヨリ償還シ一万六千四百円ノ備荒貯蓄ヲナスモノトス 石田 見附島 下落合 三農事実行組合 用排水路ヲ利用シ用排水ニ支障ナキ様稲作ヲ作付シコレヨリ下落合ハ米十五俵見附島モ米十五俵石田ハ米二十俵ヲ収穫シコレヲ販売シ年額下落合見附島ハ各々百五十円石田ハ二百円ヲ蓄積シ十ケ年計画ニ於テ三組合合計七千四百円ノ備荒貯蓄ヲナス 東富岡農事実行組合 荒廃地一町歩ヲ購入シ之ヲ開畑シ反当年額四十円十ケ年計画元利合計五千九百二十円ノ備荒貯蓄ヲナサムトス 購入費 反当 六十円 計 六百円 助成金 三百円 粟窪農事実行組合 無立木地ノ山林一町歩ヲ購入シコレニ植林(杉苗)シ三十ケ年ノ計画ヲ樹立ス苗木ノ成育スル迄間作ニ農産物ヲ収穫シ三千円ノ備荒貯蓄ヲナサムトス 購入費 反当 八〇円 計 八百円 助成 四百円 北高森農事実行組合 畑二反歩ヲ借入シ桑苗ヲ育成シ桑苗約三万本ヲ生産コレヲ販売シ其ノ代金中経費ヲ差引キタル残額ヲ積立ツルモノトス年額六百円ノ売上ニ対シ経費概算三百円差引年三百円十ケ年元利計四千五百円ノ備荒貯蓄ヲナサムトス 前高森農事実行組合 山林七町歩ヲ購入開畑シ反当年収四十円宛二百八十円十ケ年元利計四千円ノ備荒貯蓄ヲナスモノトス 購入費 反当 八十円 計五百六十円 助成 二百八十円 下糟屋農事実行組合 水田一町歩共同耕作ニヨリ反当五十円年額五百円十ケ年元利七千五百円ノ備荒貯蓄ノ予定 小金塚農事実行組合 水田四反歩ノ共同耕作ヲナシ反当五十円計二百円十ケ年元利三千円ノ備荒貯蓄ヲナス予定 以上共同収益金ヲ以テ備荒積立ヲナシ計画目標達成後ニハ金五万一千七百二十円ノ備荒貯蓄ヲナスモノトス ロ 計画実行主体 村及農事実行組合 ハ 所要経費 一万九千三百九十五円 内訳{土地購入費(村)一万六千四百円 仝 (実行組合)一千九百六十円 経営費 (実行組合)一千三十五円 ニ 経費負担区分 村費 二百円 村債 一万五千円 実行組合出金 二千十五円 助成金 二千百八十円 一〇 藁工品共同作業所 イ 現況及将来 本村水田地方ノ副業トシテ藁細工ヲ奨励スル為之ガ製品ヲ取纒メ加工スル為村内中央ニ共同作業所ヲ設置セムトス ロ 計画実行主体 産業組合 ハ 所要経費 金一千七百三十円 ニ 経費負担区分 自弁 金三百六十五円 助成 金八百六十五円 借入 金五百円 ホ 借入金償還計画 産業組合償還年次表別紙ノ内ニ含ム 一一 共同集積倉庫ノ増設 イ 現況及将来 本村ニハ農業倉庫二棟六十坪アレド内一棟四十坪ノモノハ震災以前ノモノニテ震災ノ為使用能力ハ半減セル現状ナリ然ルニ本村産業組合ノ米麦販売取扱総数ハ経済更生計画樹立後特ニ増加シ現在村内販売総数ノ七割以上ヲ統制スル有様ニテ倉庫ノ収容力少ナキハ甚ダ不便ナリ一面購買事業ノ増大ニ供ヒ旧農業倉庫ヲ購買部用ニ変更シ新タニ完全ナル農業倉庫一棟五十坪ノモノヲ村内中央ノ産業組合事務所附近ニ増設セムトス ロ 計画実行主体 産業組合 ハ 所要経費 金四千円 ニ 経費負担区分 自弁 金五百円 助成 金二千円 借入 金一千五百円 ホ 借入金償還計画 低利資金ヲ借入シ五ケ年据置十五年賦償還年次表ハ別紙産業組合債償還年次表ニ含ム 一二 有畜農業経営 イ 現況及将来 有畜農業経営ヲ徹底普及シ多角形農業ニヨル農家収入ノ増加自給肥料ノ増産ヲ計ルベク現在畜舎ノ改良ヲセシ者僅一百戸乳牛飼養者五十人優良種豚飼養者十人ニ過ギズコレニ対シ畜舎改良二百棟ヲ増シ乳牛購入五十頭優良種豚ノ飼育奨励一百頭ヲ計画ス五ケ年計画ナリ ロ 計画実行主体 村農会 ハ 所要経費 金一万四千五百円 内訳 畜舎改良 二百棟分 一棟四十五円 九千円 乳牛購入資金 五十頭分 一頭一百円 五千円(五ケ年分一ケ年一千円宛貸付資金) 優良種豚購入奨励 一百頭分 一頭五円 助成五百円ニ 経費負担区分 農会費負担 金一千五百円 助成 ナシ 借入(産業組合)金五千円 産業組合ニテ低利資金ヲ借入シソレヲ貸付ス 各農家出金 金八千円 一三 共同受乳所共同集卵所設置 イ 現況及将来 有畜農業経営ノ発達ニ供ヒ村ノ中央役場附近ニ建坪二十坪ノ受乳所及集卵所ヲ新設セムトス昭和十二年中ニ達成ノ予定 ロ 計画実行主体 産業組合 ハ 所要経費 金九百八十円 ニ 経費負担区分 自弁 金四百九十円 助成 金四百九十円 一四 部落共同集荷所 イ 現況及将来 各部落ニ共同集荷揚ノ設置ヲナシ販購事業ノ利便ニ資セントス 一面部落ノ共同作業ニ便ナラシム 八部落ニ各一ケ所宛設置一棟二十坪平均ノモノヲ建設セムトス ロ 計画実行主体 産業組合 ハ 所要経費 金六千四百円 ニ 経営負担区分 組合員寄附金 金一千三百二十円 産業組合出金 金一千円 農事実行組合出金 金一千五百十六円 助成金 金二千五百十六円 一五 改良農具ノ共同利用設備 イ 現況及将来 本村ハ米麦養蚕ヲ主タル産業トセル関係上一ケ年中ニ於テ春繭出荷後田植開始マデ僅々十日間ニ大小麦ノ収穫調整ヲ行フ為コノ機ニ大ナル労働力ノ不足ヲ来シ為ニ田植ノ時期モ遅延シ米ノ収穫ニモ甚大ナル影響アル故各部落ノ十戸内外ノ農家組合単位ニ動力農具ヲ完備シ前記ノ欠点ヲ改善シ併セテ共同作業ニヨル農家経営ノ合理化ヲ企図セムトス 現在本村ニハ二ツノ動力農具利用農家組合アリテ其ノ成績実ニ良好ナレバコレヲ全村ニ普及セシメムトス 完備スベキ動力農具(一農家組合設備) 石油発動機(三馬力)一台 二百二十円 脱穀機 一台 五十五円 籾摺機 一台 百二十円 計 三百九十五円 以上ヲ全村ニ十六組合分完備セムトス 他ニ 米撰機 四十台(一台十三円) 製簇機 十三台(一台四十五円) 桑抜根機 十一台(一台十七円) ヲ併セテ設備セムトス(機械代ニハ運賃ヲ含ム) ロ 計画実行主体 農事実行組合 ハ 所要経費 金七千六百十二円 ニ 経費負担区分 受益者出金 三千八百六円 助成 三千八百六円 一六 産業組合事務所設置 イ 現況及将来 本村産業組合ハ茲数年ニ著シキ事業分量ノ増加ヲ来セルモ未ダ役場内ニ同居シ貯金其ノ他ノ不利不便少ナカラザルニヨリ昭和十五年迄ニ独立セル事務所ヲ設置シ大イニ事業ノ拡大ヲ計ラムトス ロ 計画実行主体 産業組合 ハ 所要経費 金三千四百八十円 ニ 経費負担区分 産業組合出金 金九百八十円 組合員寄附金 金五百円 助成 ナシ 借入 金二千円 ホ 借入金償還計画 低利資金ヲ借入シ五ケ年据置十五ケ年賦ニテ償還償還財源ハ組合ノ事業拡大ニ供フ剰余金ヨリ之ニ充ツ 一七 火力乾燥場設置 イ 現況及将来 小麦ノ収穫期ハ往々ニシテ雨期ニ際会シ為ニ粒々辛苦ノ小麦ヲシテ著シク品質ヲ低下シ損害ノ及ブ所農家一個人ノ損失ニアラズシテ延イテハ国家ノ損失トナル為本村ニ於テモ已ニ見附島ト石田ノ二部落ニ一棟ヅヽノ火力乾燥場ヲ設置セシモ未ダ不足ニ付下糟屋部落ニ一棟前高森部落ニ二棟(内一棟ハ葉煙草乾燥室ニ兼用)ヲ増設セントス ロ 計画実行主体 農事実行組合 ハ 所要経費 金七百十四円 ニ 経費負担区分 組合員寄附金 七十八円 実行組合出金 三百円 助成金 三百円 一八 緬羊飼育奨励 イ 現況及将来 農家ノ副業ニ緬羊ノ飼育ヲ奨励セム為本郡畜産組合ニ於テ農林省ヨリ貸下ゲノ緬羊五十頭ヲ本村内ニ飼養場ヲ設置シ飼養中ニ付之ガ仔緬羊ヲ本村内希望農家ニ集団的ニ貸下ゲヲ受ケ最初第一年度ニ於テ二十頭五ケ年計画ニテ飼羊数二百頭ニ達セシメントス之ガ羊毛処理モ畜産組合加工場ヲ利用シ各農家自ラ行ワシメントス ロ 計画実行主体 農会 ハ 所要経費 種牝羊一頭四十円二十頭トシテ八百円ヲ要スルモ貸下ゲヲ受ケ仔羊ヲ以テ返済ノ計画ナリ 一九 畜牛繋留場設置 イ 現況及将来 畜牛ノ病疫予防ノ為毎年数回村内ノ畜牛ヲ一個所ニ繋留シ検疫或ハ予防注射等ヲ行ヒオルモ其ノ都度仮設ノ建物ノ為甚ダ不経済且ツ不便ナルニヨリ今般永久的設備ヲ完成シ常時ニ於テハ産業組合ノ物置場或ハ集荷場等ニ兼用セムトス 間口十二間奥行四間建坪四十八坪ノモノ一棟 ロ 計画実行主体 村 ハ 所要経費 七百二十円 ニ 経費負担区分 畜牛組合員寄附金 二百二十円 村費 二百五十円 助成金 二百五十円 二〇 農繁期託児所ノ経営 イ 現況及将来 本村ノ農繁期ハ六月及十一月ニシテ小学校ニ於テハ尋常科三年以上授業短縮ヲ行ヒテ各自ノ力ニ応ジテ農業ノ手伝ヒ又ハ子守等ヲ行フモソレ以外別段助力ノ途ナク乳幼児ノ保護意ノ如クナラズ往々溺水シ又ハ失火等不慮ノ災ヲ招クコト多キ為ニ幼児ヲ有スル家庭ノ主婦ハ農業ニ従事スルコト能ハザルノ状態ナリ依テ農繁期託児所一ケ所ヲ小学校内ニ開設シテ乳幼児ノ保護ヲナサムトス ロ 経営実行主体 成瀬村 ハ 所要経費 三百八十円 内訳 経営費 一百円 一ケ年分 設備費 二百八十円 ニ 経営負担区分 自弁金 二百四十円 助成金 一百四十円 二一 農民教育充実 イ 現況及将来 農家ノ長男ニ農業教育ヲ徹底スル為現在ノ青年学校ノミニテ不充分ニツキ青年学校卒業者及農学校卒業者ヲシテ経済更生ノ目標達成迄毎年農民道場ニ講習生ヲ順次派遣シ特ニ一二三月ノ農閑期ヲ利用シテ成人講習ヲ開講セムトス ロ 計画実行主体 青年学校(村) ハ 所要経費 一百円(一ケ年分) ニ 経費負担区分 村 費 一百円 二二 荷物自動車設置 イ 現況及将来 産業組合ニ於テ農産物ノ販売ノ為及肥料其ノ他物資ノ購入ノ為運搬設備トシテ貨物自動車二噸車一台ヲ購入セントス 現在本村産業組合ニテ一ケ年ニ取扱フ事業分量ハ米七千俵(自動車百四十台分)大小麦三千五百俵(七十台分)菜種及落花生五万斤(自動車十台分)肥飼料五百噸(自動車百五十台分)合計年取扱自動車数三百七十台ニシテ一日平均一台トナリコレガ支払運賃モ一台十円トシテ年額三千七百円トナリ将来コレ等運搬物資ハ漸増ノ一途ニツキ自動車一台ヲ新調シ産業組合及組合員ノ物質運搬ニ大イニ利用セントス ロ 計画実行主体 産業組合 ハ 所要経費 購入金四千円 ニ 経費負担区分 低利資金借入 金二千円 助成金 金二千円 ホ 借入金償還計画 償却費計画トシテ四千円ヲ五ケ年ニ償却ノ為一ケ年八百円償却ヲ見ル一ケ年運賃収入三千七百円支出運転手及助手給料一千円ガソリン其ノ他消耗品費千二百円差引七百円ノ利益ヲ生ズル見込 二三 裏作奨励 イ 現況及将来 本村ノ耕地整理完了地ハ二百余町歩モアルモ内裏作栽培可能面積ハ八十町歩以上アリ然ルニ未ダ三十五町歩ノ裏作作付ニシテ今後経済更生運動ニヨリ五十町歩ノ増加ヲナサムトス ロ 計画実行主体 農会 ハ 所要経費 一百円(一ケ年分)継続事業 ニ 経費負担 村農会 二四 婦人会設置 イ 現況及将来 本村ニハ産業的及修養的各種団体ガ整備セラレオルモ婦人ノ活動及修養ニ資スル婦人会ガ未ダニ存置セラレザル現状故今般学校ヲ中心トシテ婦人会ヲ設置シ児童教養上ニ於ケル家庭トノ連絡経済更生計画ノ各戸計画樹立及生活改善施設等ニ於ケル婦人ノ活動ニ資セントス ロ 計画実行主体 学校 (村) ハ 所要経費 金一百円(一ケ年分)継続事業 ニ 経費負担区分 村費負担 第五 特別助成ノ対象トナル計画事項ヲ包含スル経済更生計画実行費調 一 低利資金関係一覧表 其ノ一 其ノ二 二 既設施設計画事項(計画樹立後施設セルモノ) 三 計画樹立前ノ施設ニシテ現存ノモノ 一 共同施設 二 個人施設ニシテ国又ハ道府県ノ補助ヲ受ケル施設 四 村ノ施設ナラザルモノニシテ本村内ニアル施設中経済更生上利便多キモノ 一 中郡畜産組合経営種畜繋養場 本村石田ニ昭和十年度ニ於テ新設セラレシモノニシテ牛豚ノ種畜ヲ繋養シ種付及仔畜ノ払下ゲヲ行ヒ以テ家畜ノ改良ヲ計ル事業ナリ 一面農林省ヨリ貸下ノ緬羊五〇頭ヲ飼養シ将来緬羊ノ貸付及羊毛処理ノ副業ヲナスベク計画セラル故ニ本村民ハ最モ便利ニ優良家畜ノ種付払下ゲ等ノ恩沢ニ浴スルヲ得ルタメ有畜農業発展上将来大ナル期待ヲ持ツモノナリ 二 神奈川県営苗圃 本村東富岡ニ昭和十年度ヨリ新設セラレタルモノニシテ敷地五町歩ヲ要シ山林苗木各種ノ育成ヲナシ以テ優良山林苗木ヲ廉価ニ払下ル施設ナリコレ亦本村山林多キ地方農家ノ利便甚ダ多ク且ツ一ケ年ニ老幼男女ニ至ル迄延人員約四五千人ヲ使用スルタメ農家ニ現金収入ヲ計ル上ニ於テモ好都合ノ施設ナリ (麻溝村役場「経済更生特別助関係書類」(昭和十三年)相模原市役所蔵) 「注〕 別冊別紙共省略。 二七 神奈川県下農山漁村経済更生計画実施概況(一―四) ㈠ 中郡国府村 ㈡ 中郡成瀬村 ㈢ 中郡大磯漁業組合 ㈣ 足柄下郡吉浜村 (神奈川県「農山漁村経済更生計画実行ノ概況」(昭和十年)農林省図書館蔵) 二八 中郡成瀬村経済更生進行状況 「昭和七年度指定 経済更生進度状況 中郡成瀬村」 更生計画実施中ノ本村ノ概況 昭和七年本村ハ経済更生ノ指定ヲ受クルヤ全村ヲ二十六ノ更生区ニ分割シ各区ニ委員ヲ置キ各農家ニ就キ更生計画ヲ樹立セシムル外之ガ計画ノ指導農事ノ研究部落民ノ一致融和ヲ図ル等ノタメ極力部落座談会ヲ開催セリ 昭和十二年中開会数 九四回 出席延人員 二、四〇七名 猶特ニ左ノ事項ニ対シテハ特ニ実行ニ努メタリ 一 記帳奨励 農家ガ記帳ノ生活ヲ為スハ更生ノ為尤モ必要ナルタメ之ガ奨励ニ努メ現在農家戸数四一四戸ニ対シ三五〇戸ノ実行ヲ見今後農家全部ニ対シ実行ヲ徹底セシメントス 一 納税奨励 納税思想ノ鼓吹ニ努メタルニ村民ノ経済的更生ト相俟ツテ別紙ノ如ク殆ド完納ニ近キ好成績ヲ挙グルヲ得タリ 一 更生事業計画ニ依ル設備ノ完成 本村経済更生ヲ計ルタメ昭和十一年度以来農林省ノ特別助成ヲ仰ギ村民ノ自己出資労力奉仕等ニ依リ左ノ如キ設備ヲ完了セリ 経済更生特別助成ニ依リ設備セラレタル施設 一 産業組合 計画当時不幸解散ニ頻セントスル組合ノ更生ヲ決意シ先ズ農産物ノ販売統制ニ手ヲ染メ昨年度ハ村内販売農産物(畜産及生繭ヲ除ク)ノ八割余ヲ統制シ次ニ購買品中肥料ノ配給ニ主力ヲ注ギ猶施肥ノ合理化ヲ図ル為肥料配合工場肥料配給倉庫ヲ建設村農会ニ於テ肥料配合計画樹立セシメ配合作業ハ肥料知識ノ向上ト共同労役ノ実習ノ目的ヲ以テ青年団員及青年学校生徒ニ当ラシメ昨年度八二〇五叺ヲ配給セリ目下ハ貯金ノ奨励ニ専ラ意ヲ注ギ之レガ組合資金ニ依リ高利債固定債等ノ借替ヘヲ行ヒ徹底的ニ村民ノ更生ヲ計ラムトス 産業組合更生進度状況別紙ノ通リ 一 教化方面 小学校ニ於テハ専ラ児童ノ勤労教育ニ依ル自主的教育ニ意ヲ注ギ自治機関タル日ノ丸少年団ヲ結成シ之ガ中心団体トナリテ左ノ事業ヲ行ヘリ校舎内外ノ清潔整頓従来放課後実施セル校舎内ノ掃除ヲ正課トシテ舎外ノ清掃ヲ併セ勤労精神ト自立自営ノ精神ノ涵養ニ努ム 道路ノ清掃 勤労精神ト奉公ノ念ヲ涵養スルタメ村内主要道路ヲ清掃ス 神社仏閣ノ清掃 敬神崇祖ノ念ト早起ノ習慣ヲ得セシメルタメ毎日曜日早朝神社仏閣ノ清掃ニ当ラシム 銃後ノ施設 少年勤労奉仕班ヲ編成シ簡易ナル応召遺家族ノ作業ニ当ラシメ畑ノ除草稲刈麦畑ノ手入等ニ奉仕セシメシニ応召農家ヲシテ感激セシメタリ 奉仕延人員 一、四四一名 勤労教育 秋蚕一蛾育一坪農業自給肥料増産教育ニ依リ草刈デーノ実施(本年度ハ軍部供出用ノ乾草一、〇〇〇貫ヲ製造スル計画ナリ) 貯蓄教育 二宮尊徳翁ノ教育ヲ中心トセル勤倹貯蓄ノ教育ヲ施シ勤労収入其ノ他ヲ「報徳貯金」ト名ヅケ貯金セシム 三月末日現在貯金額三、七九〇円也 男女青年団 青年学校 青年修練場設置 勤労奉仕観念及団体訓練ノ目的ヲ以テ青年修練場ヲ設ケ三町三反八畝余ヲ植林シ将来有望ナル村基本財産タラシメントス 肥料配合 産業組合ノ部ニ於テ前述ノ通リ 家庭薬配給 女子青年団ヲシテ家庭薬ヲ配給セシメ家庭衛生ニ当ラシム 〔「一 納税奨励」の別紙〕 〔「一 産業組合」の別紙〕 産業組合更生進度表 イ 資産ノ部 ロ 事業ノ部 (麻溝村役場「経済更生特別助成関係書類」(昭和十三年)相模原市立図書館蔵) 第二章 戦争体制の組織 第一節 国民精神総動員 二九 国民精神総動員第二回強調週間実施要綱 および実情(一―二) ㈠ 国民精神総動員第二回強調週間ニ関スル件 (昭和十三年一月二十一日十二地第四、九一六号総務学務両部長通牒市町村長及公私立中等学校長宛) 聖戦第二年ニ入リ我ガ皇軍ノ武威大ニ揚リ国内亦愛国ノ熱情ニ湧ク皇紀二千五百九十八年ノ紀元節ヲ期シ国民精神総動員第二回強調週間ヲ全国一斉ニ実施相成候ニ就テハ別紙実施要項ニ依リ地方ニ適応セル計画ヲ樹テ之ガ実績ヲ挙グルニ遺憾ナキ様実施相成度及通牒候〔別紙〕 国民精神総動員第二回強調週間実施要綱 一 趣旨 興隆日本ノ建設ハ肇国精神ノ顕現ニ在リ仍テ事変下ノ紀元節ヲ機トシ我ガ尊厳ナル国体宏遠ナル肇国ノ理想日本文化ノ精粋ヲ国民ニ徹底セシメ国民精神総動員強調週間ヲ設定シ国民精神総動員ノ中核タル国体観念ノ明徴日本精神ノ昂揚ヲ強調シ之ヲ社会万般ノ上ニ具現セシメントス 二 期間 自昭和十三年二月十一日(紀元節) 至昭和十三年二月十七日ノ一週間 三 実施方法 (一) 紀元節奉祝ニ関スルコト (イ) 官庁学校等ニ於テ奉拝式又ハ祝賀式ヲ行フニ当リテハ特ニ前文趣旨ノ徹底ヲ図ルニ努ムルコト 従来式ヲ挙行セザル銀行会社工場等ニ於テモ努メテ之ヲ行フコト止ムヲ得ザル事由ニ依リ挙式セザル向ニ対シテハ右ニ準スベキ方法ヲ講ズルコト (ロ) 市区町村ニ在リテハ市区町村民ノ為成ベク次号ニ掲グル時刻ヲ期シ神社学校公会堂等適当ナル場所ニ於テ祝賀ノ方法ヲ講ジテ(建国祭 愛国行進等)前文趣旨ノ徹底ヲ図ルコト (ハ) 当日午前十時ヲ期シ「紀元節奉祝ノ時間」ヲ設ケ前各号ノ式典ニ参列セザル一般国民ハ各家庭其ノ他ノ場所ニ於テ夫々宮城遥拝ヲ行フコト 此ノ為同時刻ニハ汽笛サイレン鐘等ヲ用ヒ適当ナル周知方法ヲ講ズルコト 尚「ラヂオ」ハ同時刻ニ「紀元節奉祝ノ時間」ノ放送ヲ行フ予定 (ニ) 各家庭寄宿舎船舶等ニ対シテハ左ノ事項ノ実行ヲ慫慂スルコト 一 各戸必ズ国旗ヲ掲揚スルコト 一 家族揃ヒ宮城遥拝ヲ行フコト 一 赤飯等ヲ用ヒテ意義ヲ深カラシムルコト(将来国家ノ祝日ト一般家庭生活トヲ愈々密接ナラシメントスル趣旨ニ有之) (二) 強調週間中市町村ニ於テハ左ノ事項ヲ参考トシテ強調施設ヲ実施スルコト (イ) 神社聖蹟忠魂碑等ノ浄域ノ清掃奉仕 (ロ) 実行委員会市町村振興委員会経済更生委員会ヲ開催シ日本精神ノ昂揚社会風潮ノ改善等ニ関スル積極的活動ヲ促スコト (ハ) 国体日本精神ニ関スル講習会ヲ開催スルコト (ニ) 各種団体ノ活動ヲ促シ本運動ノ徹底ヲ期スルコト (ホ) 部落範囲ニ於ケル時局認識堅忍持久ノ申合セ及懇談会ヲ開催スルコト (へ) 各種ノ集会行進等ニ於テハ愛国行進曲ヲ合唱スルコト (ト) 小学生等ノ紀元節作品(絵画作文等)ノ慰問品状ヲ発送スルコト(無邪気ナル生徒ノ作品ニヨリ銃後ノ紀元節ノ模様ノ一端ヲ戦線ノ勇士ニ伝へ度キ趣旨ニ有之) (チ) 政府ニ於テハ「週報」特輯号ノ発行冊子ポスタービラ等ヲ作成シ配付セラルヽ予定ニ付之ヲ利用シ周知ノ方法ヲ講ズルコト (リ) 「ラヂオ」ハ本週間中放送番組ノ特別編成ヲ行ハルヽ予定 ㈡ 実施状況 (一) 紀元節奉祝ニ関スルコト (イ) 官庁学校等ニ於テ奉拝式又ハ祝賀式ヲ行ヒ特ニ前文趣旨ノ徹底ヲ図ルニ努メタリ 従来式ヲ挙行セザル銀行会社工場等ニ於テモ努メテ之ヲ行ヒ止ムヲ得ザル事由ニ依リ挙式セザル向ニ対シテハ右ニ準ズベキ方法ヲ講ゼリ (ロ) 市区町村ニ在リテハ市区町村民ノ為次号ニ掲グル時刻ヲ期シ神社学校公会堂等適当ナル場所ニ於テ祝賀ノ方法ヲ講ジ(建国祭愛国行進等)前文趣旨ノ徹底ヲ図リタリ (ハ) 当日午前十時ヲ期シ「紀元節奉祝ノ時間」ヲ設ケ前各号ノ式典ニ参列セザル一般国民ハ各家庭其ノ他ノ場所ニ於テ夫々宮城遥拝ヲ行ヘリ 此ノ為同時刻ニハ汽笛サイレン鐘等ヲ用ヒ適当ナル周知方法ヲ講ゼリ (ニ) 各家庭寄宿舎船舶等ハ左ノ事項ヲ実行セリ 一 各戸洩ナク国旗ヲ掲揚シ 一 家族揃ヒ宮城遥拝ヲ行ヒ 一 赤飯等ヲ用ヒテ意義ヲ深カラシメタリ (二) 強調週間中左ノ事項ヲ強調施設ヲ実施セリ (イ) 神社聖蹟忠魂碑等ノ浄域ノ清掃奉仕 (ロ) 実行委員会市町村振興委員会経済更生委員会ヲ開催シ日本精神ノ昂揚社会風潮ノ改善等ニ関スル積極的活動ヲ促シ(ハ) 国体日本精神ニ関スル講演会ヲ開催シ (ニ) 各種団体ノ活動ヲ促シ本運動ノ徹底ヲ期シ (ホ) 部落範囲ニ於ケル時局認識堅忍持久ノ申合セ及懇談会ヲ開催シ (へ) 各種ノ集会行進等ニ於テハ愛国行進曲ヲ合唱シ (ト) 小学生等ノ紀元節作品(絵画作文)等ノ慰問品状ヲ発送セリ (神奈川県「国民精神総動員実施概況第四輯」(昭和十四年)久保田昌孝氏寄託相模原市立図書館蔵) 三〇 国民精神総動員第二回強調週間実践要綱 国民精神総動員第二回強調週間ニ関スル件 (昭和十三年二月九日十二地第四、九一六号総務学務両部長通牒市町村長各学校長宛) 標記ノ件ニ関シ客月二十一日十二地第四、九一六号ヲ以テ通牒致置候処家庭実践一日一行別紙ノ通決定シ中央放送局ヨリ全国ニ放送可相成候条一般家庭ニ於テ実践方可然御取計相成度 記 国民精神総動員第二回強調週間家庭実践一日一行 一 紀元節の奉祝 各戸洩なく国旗を掲揚し午前十時の奉祝時間には家族打揃つて宮城遥拝を行ひまた赤飯等を用ひて国祭日の意義を深からしめ肇国の精神を偲び家庭奉祝の実を挙ぐること 一 敬神崇祖の実践 神社に参拝して赤誠を捧げ非常時下に於ける国民の覚悟を固むると共に各家庭にありては神棚仏檀等を清めて礼拝し祖先を偲び「家」の観念を深め一家の和親につとむること 一 御製の奉誦 明治天皇の御製を奉誦して一層大御心の奉体につとめ長期戦下に於ける国民の覚悟を新にすること 一 国史美談の回顧 家族揃つて古来の忠臣義士若くは郷土の孝子節婦等の伝記事蹟を語り合ひ先人の遺風を偲ぶこと 一 国債購入の勧奨 第二回愛国国債を挙つて購入し銃後の御奉公に努むること 一 社会奉仕の実践 家族夫々分に応じ自宅附近又は関係場所の清潔整理若くは警備に当る等奉公の精神養成に努むること 一 出征軍人及び遺家族の慰問 近隣の出征軍人の遺家族の家庭を訪問して慰藉激励し又近親知人等の出征者に対しては慰問文を送ること (神奈川県「国民精神総動員実施概況第四輯」(昭和十四年)久保田昌孝氏寄託相模原市立図書館蔵) 三一 神奈川県民の国民精神総動員運動に対する態度本運動ニ関スル県民ノ態度 1 長期戦ニ対スル県民一般ノ態度 事変ノ愈々長期ニ亘リ此ノ曠古ノ聖業ヲ達成スル為ニハ益々国民ノ非常ナル覚悟ヲ促ス事ガ急務ナルニ鑑ミ本県ニ於ケル国民精神総動員運動モ亦此ノ新情勢ニ対応スル時局ノ正シキ認識ノ上ニ基礎ヲ置キ長期戦ニ対スル県民ノ覚悟ト真意ヲ理解セシムルニ努ムルト共ニ県民斉シク益々日本精神ヲ発揚シ以テ挙県一体ノ体制ノ下ニ愈々奉公ノ誠ヲ致シ堅忍持久ノ精神ヲ堅持シテ国力ノ充実ヲ図ル一方銃後後援ノ強化ニ万全ヲ期シ今次事変ノ目的達成ニ邁進シツツアリ 併シテ之ガ運動ノ方法トシテハ県民ノ長期戦ニ対応スベキ覚悟ヲ強調スル為各種会合ニ於テ政府声明ノ趣旨ニ基キ知事訓示ヲ以テ県民ニ長期戦ニ関スル決意ヲ促スト共ニ昭和十三年二月十一日紀元節ヨリ一週間ニ亘ル第二回強調週間ニ於テハ国民精神総動員ノ中核タル国体観念ノ明徴日本精神ノ昂揚ヲ強調シ之ガ一層徹底ヲ図ル為講演会映画会等ヲ開催其ノ他パンフレツトビラ等ノ配付ニ依リ県民一般ノ啓発宣伝ニ努メツツアリ 2 貯蓄奨励ニ対スル県民ノ態度並ソノ実績 国民貯蓄奨励ニ関シテハ曩ニ政府ニ於テ具体的方策ヲ樹立シ八十億円ヲ目標トシテ奨励セラルルニ当リ賀屋前大蔵大臣閣下ノ講演ヲ初メ其ノ他各種講演映画ニ更ニ二回ニ亘リ実施セラレタル強調週間等ニ依リ県下市町村部落ノ隅々迄モ本趣旨ノ透徹ヲ見タル結果近代戦下ニ於ケル国家総力戦ノ意義ヲ克ク諒得シ貯蓄組合ノ結成国債購入等ニ曾テ見ザル真摯ナル心組ヲ以テ実行シツツアリ而シテ其ノ貯蓄組合結成状況九月末現在ニ付テ見ルニ県下総市町村数一四七ニ対シ貯蓄組合数三、三二六実ニ其ノ市町村数ノ二十二倍ニ当リ次ニ管下総戸数三八二、一四二戸ニ対シ貯蓄組合員数三五五、七〇九名ニ達シ其ノ加入率ハ九割三分ヲ示ス而シテ貯蓄額ニ於テハ二百余万円ヲ算シ(事変貯蓄以外ノ個人預金ヲ含マズ)本運動ニ対スル県民一般ノ熱意ヲ察知スルヲ得ベク更ニ他方本県内ニ本支店ヲ有スル銀行信託無尽各会社並ニ郵便局信用組合連合会等ノ金融機関九月末現在貯蓄高ハ五億八千二百余万円デ之ニ前記国民貯蓄総額二百万円ヲ合算スル時ハ本県貯蓄総額五億八千五百万円ニ達スル成績ニテ之ヲ本県人口百九十万人ニ対比スル時ハ実ニ一人当リ貯蓄高三百七円ニシテ長期建設下ニ於ケル県民ノ貯蓄報国ノ意気ヲ語ルモノト謂フベシ 3 消費節約生活改善ニ対スル県民ノ態度 事変発生以来県民斉シク挙国一致尽忠報国ノ精神ヲ以テ現下ノ時局ニ対処シ凡ユル困苦欠乏ニ堪ユルノ心構ヘヲ持ツテ所期ノ目的達成ニ邁進シツツアルモ其ノ運動ノ一端トシテ戦局ノ拡大ニ伴フ軍需ノ増加ニ因ル物資需給調整計画ニ基ク処ノ物資ノ消費節約及生活ノ改善ノ実践ニ当リテハ非常時国民生活様式ノ確立ヲ目標トシテ着々之ガ実効ヲ収メツツアリ 即チ曩ニハ非常時財政経済ニ協力スベキ実践項目ヲ挙ゲテ家庭ニ於ケル消費節約ノ目標ヲ定メ日常生活ノ消費節約ヲ実践躬行シ又ハ各強調週間ノ実施申合等ニ依リ服装ノ簡素新調ノ見合セ冠婚葬祭ノ簡易化年末年始其ノ他ニ於ケル虚飾ノ廃止等極力生活ノ刷新ヲ図ルト共ニ冗費ヲ節約シテ貯蓄ヲ励行シ或ハ代用品使用ノ奨励廃品ノ回収等ヲ実行シテ愈々事変下総力戦ノ下ニ全県一致シテ銃後県民ノ使命遂行ト非常時国民生活ノ刷新ニ協力実践シツツアリ 4 銃後後援ニ対スル県民ノ態度 支那事変勃発スルヤ県ニ於テハ県民ニ対シ事変ノ真相ヲ認識セシムル為各種ノ会合ヲ利用シ或ハ印刷物等ヲ以テ之ガ徹底ニ努メタルガ為其ノ後事態ノ推移ニ伴ヒ政府ハ国民精神総動員運動ヲ開始セラレタルヲ以テ其ノ方針ニ従ヒ昭和十二年十月初旬官民合同ノ実行委員会ヲ組織シ本県ニ即応セル実施方策ヲ樹立シテ日本精神ノ発揚社会風潮ノ改善非常時財政経済ヘノ協力ニ努メ就中出征軍人ノ遺家族ノ扶助並援護相談ニ或ハ出征軍人傷痍軍人ノ慰藉慰問等銃後ノ護リノ強化持続ニ努メツツアリ 県民ハ克ク今次事変ノ如何ニ重大ナルカヲ認識シ和衷協力シテ皇軍将兵ノ労苦ヲ感謝シ戦歿軍人ニ対スル慰霊傷痍軍人ノ平癒並出征軍人ノ武運長久ノ祈願ヲ行ヒ遺家族ニ対シテハ隣保相扶ノ念ヲ昂揚シテ勤労奉仕ヲ一層徹底シ自営業ヲ営ム者ニ対シテハ営業ノ維持継続ニ或ハ慰問事業ニ又ハ軍需産業ノ拡充資源ノ愛護等ニ堅忍不抜ノ精神ヲ振起シテ常ニ困苦欠乏ニ耐ユルノ心構ヲ以テ聖業ノ達成ニ精進シツツアリ (神奈川県「国民精神総動員実施概況第四輯」(昭和十四年)久保田昌孝氏寄託相模原市立図書館蔵) 三二 昭和十三年度市町村長会議における県知事半井清の訓示指示注意事項(一―二) ㈠ 「 昭和十三年六月半井神奈川県知事訓示要旨 」 半井神奈川県知事訓示要旨 本日各位ノ御会同ヲ煩ハシマシタノハ先般地方長官会議ニ於テ内閣総理大臣以下各省大臣ヨリ訓達セラレマシタ所ニ基キ現下ノ情勢ニ於ケル国民ノ邁進スベキ方途ト覚悟トヲ伝達シ更ニ各位ノ一段ノ協力ヲ御願ヒ致サムトスルニアルノデアリマス。 畏クモ 天皇陛下ニハ特ニ地方長官一同ヲ宮中ニ召サレテ御陪食ヲ仰セ付ケラレ長時間ニ亘リ夫々拝謁ヲ賜ハリマシテ詳細ニ地方民情ヲ始メ銃後ノ護リニ関シ各道府県ノ実情ヲ 御聴取遊バサレタノデアリマス。殊ニ本県下ノ情況ニ就キマシテハ有難キ 御下問ヲ拝シマシタノデ謹ンデ奏上申シ上ゲマシタ次第デアリマス。事変下ノ民草ニ 大御心ヲ垂レサセ給フ 聖慮ノホド誠ニ恐懼感激ニ堪ヘナイ次第デアリマス。 我ガ国現下ノ情勢ニ於ケル当面ノ急務ハ速ニ支那事変ヲ根本的ニ解決シ以テ東洋永遠ノ平和ヲ確立スルニ在ルノデアリマシテ之ガ為ニハ蒋介石政権ヲ徹底的ニ膺懲シテ之ガ潰滅ヲ見ルマデハ断ジテ退転セザルト共ニ北支中南支ニ成立致シマシタ親日新政権ノ育成発達ニハ国ヲ挙ゲテ全力ヲ集中スルト云フ大方針ヲ以テ一路邁進セネバナラヌノデアリマス。 聖戦約一ケ年ニ亘リ我ガ忠勇無比ナル将兵ハ日夜奮戦力闘赫々タル戦果ヲ収メ皇国ノ威信ヲ世界ニ宣揚シツツアリマスコトハ私共ノ真ニ感謝感激ニ堪ヘナイ所デアリマス。銃後ノ護リニ任ズル者ハ益々時局ノ重大ナルヲ認識シ挙国一致堅忍持久ノ精神ヲ以テ時艱ノ克服ニ邁進スルト共ニ前線ニ在ル将兵ヲシテ後顧ノ憂ヘナカラシムル為最善ノ努力ヲ払フコトガ最モ喫緊ノ事デアルト信ジマス。 各位ハ昨年国民精神総動員運動ヲ実施致シマシテ以来克ク本運動ノ趣旨ヲ体シ不断ノ努力ヲ致サレタノデアリマシテ其ノ御熱誠ニ対シ深ク謝意ヲ表スル次第デアリマス。其ノ結果愛国ノ赤誠ガ澎湃トシテ興リ涙グマシキ幾多ノ情景ガ次々ニ展開サレテ居ルノデアリマス。又他府県ニ率先シテ学生々徒及男女青年ヲ初メ県民一般ノ勤労奉仕資源ノ充実並開発銃後ノ結束ニ日本精神ノ発露ヲ見ツツアルコトハ私ノ密ニ心強ク思ツテ居ル所デアリマス。此ノ際特ニ一言申シ上ゲテ置キマスコトハ先般 皇后陛下ノ有難キ 思召ニヨリ事変戦傷病者ノ御慰問ト銃後援護事業ノ概況トヲ 御聴取遊バサルル為御差遣ノ 高松宮妃殿下 当県庁ニ御成リ遊バサレマシタ砌県下ニ於ケル銃後援護ノ活動状況ノ写真及遺家族ニ対シ授産致シマシタ作品ノ数々ヲ 台覧ニ供シ御説明ヲ言上致シマシタ所妃殿下ニハ御熱心ニ御聴取遊バサレマシテ有難イ御言葉ヲ賜ハリマシタ次第デアリマス。 各位ハ今後益々本運動ノ強化持続ニ力ヲ効サレタイノデアリマス。去ル第七十三回帝国議会ハ事変下挙国一致ノ国民ノ意思ガ反映致シマシテ時局ニ対処スベキ国家総動員法ヲ初メ幾多ノ重要法律案ガ全部通過シ又八十億円ニ上ル多額ノ予算モ成立致シタノデアリマス。国家総動員法ハ全国民ガ一致協力シテ国防ニ当ル為ノ根本的事項ヲ規定シタモノデアリマスカラ各位ハ克ク本法ノ趣旨ヲ了得セラレ国民ヲシテ本旨ニ則リ欣然之ガ運用ニ協力セシメラレタイノデアリマス。尚多額ナル国ノ予算執行ニ伴フ物価騰貴ノ趨向ヲ防止スルガ為ニハ政府ニ於テモ資金物資及労力ノ需給調節ニ或ハ生産力ノ拡充ニ極力手段ヲ尽サレツツアルノデアリマスガ市町村予算ノ計画執行ニ当ツテモ此ノ国家ノ方針ニ則リ従前指示シタル所ニ遵ヒマシテ緩急宜シキヲ制シ苟モ不急ナル事業ノ執行ハ之ヲ取止メ又ハ延期シ冗費ハ力メテ之ヲ節約スル等特ニ考慮ヲ煩ハシタイノデアリマス。 政府ノ勧奨致シマス国民貯蓄奨励ニ付テハ各位ノ協力ヲ求ムベク曩ニ通牒致シマシタ次第デアリマスガ本年度八十億円ニ達スル予算ノ財源ト致シマシテハ大部分公債ニ拠リ今後一ケ年間ニ発行スル国債額ハ五十余億円ニ達スルモノト予想セラレ又生産力拡充資金モ大体三十億円以上ヲ要スル見込デアリマスカラ総計八十億円ハ国民ノ貯蓄ニ待タネバナラヌノデアリマス。各位ハ克ク此ノ趣旨ヲ諒得セラレマシテ事変前ニ比シ所得ノ増加シタ者ハ其ノ増加所得ヲ然ラザル者ト雖モ比ノ際極力生活ヲ改善シ消費ノ節約ヲ図リ貯蓄ノ増加ニ努ムル様勧奨シ以テ国策ノ貫徹ニ協力セラレタイノデアリマス。 本年度ニ於ケル臨時地方財政補給金ハ事変ニ伴フ地方歳入出ノ変動並土地賃貸価格ノ改訂ニ因ル収入減少等ノ為特ニ前年度ヨリモ三千万円ヲ増額セラレ総額一億三千万円トナツタノデアリマス。申ス迄モナク補給金交付ノ根本趣旨ハ過重ナル地方負担ノ軽減ヲ図リ経済更生ノ障碍ヲ除去セムトスルニアルノデアリマスカラ各位ハ本年度ニ於テモ比ノ趣旨ヲ克ク一般ニ周知徹底セシメラレ更ニ進ンデハ自力更生ノ精神ヲ旺盛ニシ納税思想ノ涵養貯蓄心ノ喚起其ノ他自治振興ノ機運ヲ醸成スル等地方更生ノ実ヲ挙グルコトニ格段ノ努力ヲ望ム次第デアリマス。 本年ハ恰モ憲法発布五十年ニ当リ又自治制発布五十周年ヲ迎ヘタノデアリマス。其ノ式典ニ当リマシテハ特ニ優渥ナル 勅語ヲ賜ハリ国民奉公ノ道ヲ 御諭シニナリマシタコトハ寔ニ恐懼感激ニ堪ヘヌ次第デアリマス。地方自治ノ要職ニ在ル各位ハ比ノ 聖旨ヲ奉体シ愈々和衷協同隣保団結ノ精神ヲ実践ニ移シ益々自治報国ノ実ヲ挙ゲラルル様期待シテ已マヌ次第デアリマス。 終リニ防空ノ完璧ヲ期シマスコトハ内外ノ情勢ニ鑑ミ極メテ緊切ノ要務デアリマス。従テアラユル機会ニ教育訓練ヲ徹底セシメラルルト共ニ設備資材ノ充実ニ努メラレムコトヲ望ム次第デアリマス。 以上ハ事変下ニ対処スル政府ノ方針ヲ伝達シ併セテ私ノ所信ヲ申述ベタノデアリマシテ各位ハ克ク叙上ノ趣旨ヲ体シ之ヲ管内ニ普ク周知徹底セシメテ益々国家総動員態勢ヲ完成シ時艱ノ克服ニ邁進シ奉公ノ誠ヲ竭サレムコトヲ切望シテ已マヌ次第デアリマス。 ㈡ 「 昭和十三年六月市町村長会議指示注意事項 」 指示事項 目次 一 国民精神総動員運動ニ関スル件 一 自治振興ニ関スル件 一 支那事変ニ際シ召集中ノ者ノ選挙権及被選挙権ニ関スル件 一 国民貯蓄奨励ニ関スル件 一 市町村義務教育費国庫負担法ニ依ル国庫支出金ノ交付時期ノ特例ニ関スル件 一 国民体力向上ニ関スル件 一 青年学校教育義務制実施準備ニ関スル件 一 敬神思想ノ徹底ニ関スル件 一 召集及徴発事務ニ関スル件 一 農繁期託児所及共同炊事実施ニ関スル件 一 軍事援護相談所設置ニ関スル件 一 傷痍軍人ノ保護優遇ニ関スル件 一 軍事援護事業ニ関スル件 一 職業紹介法ノ施行ニ関スル件 一 入営者職業保障法中改正法律ノ施行ニ関スル件 一 応召者遺家族ノ職業保護ノ徹底ニ関スル件 一 農業保険法ニ関スル件 一 農地調整法ニ関スル件 一 自作農創設維持ニ関スル件 一 事変ニ伴フ農山漁村応急施設ニ関スル件 一 農山漁村経済更生計画ノ拡充強化ニ関スル件 一 臨時農村負債処理法ニ関スル件 一 農産資源開発奨励ニ関スル件 一 米穀ノ生産維持ニ関スル件 一 肥料ノ消費調整並自給肥料ノ増産ニ関スル件 一 馬ノ資質向上ニ関スル件 一 畜牛補充施設ニ関スル件 一 自給飼料ノ増産並輸入飼料ノ配給統制ニ関スル件 一 軍需生産品供出ニ関スル件 一 物価調整ニ関スル件 一 石油ノ消費規正ニ関スル件 一 銃後営業援護ニ関スル件 一 綿糸鉄鋼等ノ統制実施ニ関スル件 一 農耕地ノ改善補給ニ関スル件 一 民有林間伐増産ニ関スル件 一 民有林造林奨励ニ関スル件 一 防空法ノ運用ニ関スル件 一 国民精神総動員運動ニ関スル件 国民精神総動員運動ニ付テハ各位ノ努力ニ依リ相当実績ヲ挙ゲツツアル処ナルモ頑迷ナル蒋介石ハ未ダ尚長期抗戦ヲ称へ為メニ我ガ忠勇ナル将兵真ノ東洋平和建設ノ為勇躍邁進シツツアルノ現状ニ鑑ミ今後益々銃後ノ護リヲ固メ後顧ノ憂ヒナカラシムル様更ニ一段ノ努力ヲ払ハレタシ 一 自治振興ニ関スル件 市町村自治振興ノ成否ハ直ニ国運ノ隆替ニ影響スル所大ナルモノアリ之ガ為曩ニ市町村振興委員会又ハ経済更生委員会或ハ選挙粛正委員会部落常会等ヲ組織シテ各々其ノ目的ノ範囲内ニ於テ自治振興ニ貢献セラレツツアリト雖未ダ其ノ所期ノ目的ヲ達成スルニ至ラザルハ甚ダ遺憾トスル所ナリ 本年ハ恰モ自治制発布五十周年ノ記念スベキ好機ヲ迎ヘタルヲ以テ過去ノ実績ヲ顧ミ又時局ノ重大性ニ鑑ミテ比ノ際一層健全ナル自治ノ進展ヲ促スハ極メテ意義深キコトヽ存スルヲ以テ各位ハ既往ノ組織ニ改善刷新ヲ加ヘテ有機的活動ヲ促シ又ハ古来ノ伍人組制度ヲ強化シテ自治振興ノ実ヲ挙グル様一層ノ努力ヲ致サレタシ 一 支那事変ニ際シ召集中ノ者ノ選挙権及被選挙権ニ関スル件 支那事変ニ際シ召集中ノ者ノ選挙権及被選挙権ハ衆議院議員選挙法第七条第二項府県制第六条第二項市制第十一条同第十四条町村制第九条同第十二条ニ依リ孰レモ資格ヲ喪失スルモノナル処去ル五月十七日法律第八十四号支那事変ニ際シ召集中ノ者ノ選挙権及被選挙権等ニ関スル法律公布セラレ又同日勅令第三百三十三号及内務省令第二十一号ノ公布ニ依リ衆議院議員府県会議員又ハ市町村区会議員等ノ選挙ヲ行フ場合ニ於テ「支那事変ニ際シ召集中ナルニ因リ選挙人名簿ニ登録セラレザリシ者ニシテ召集ヲ解除セラレタルモノアルトキ」ハ市町村長等ノ名簿調製義務者ハ臨時ニ其ノ者ノ選挙人名簿ヲ調製スルコトヽナリ又府県会議員市町村区会議員ニシテ「支那事変ニ際シ召集中ナルニ因リ其ノ職ヲ失ヒタル者召集ヲ解除セラレタルトキ」ハ其ノ職ニ復スルコトヽナリタルヲ以テ市町村区会議員選挙ヲ行ハルヽ場合又ハ議員ノ職ニ復スベキ者アルニ至リタルトキハ規定ノ手続履行ニ関シ遺漏ナキヲ期セラレタシ 一 国民貯蓄奨励ニ関スル件 国民貯蓄奨励ニ関シテハ本月一日附十三事第八一号ヲ以テ通牒セル所ナルモ此ノ事業ノ成否ハ直ニ事変ノ目的達成ニ必要ナル背後ノ経済力ニ至大ノ関係ヲ有スルニ鑑ミ各位ハ此ノ際充分之ガ趣旨ヲ諒得シ指導者階級ヲ指導督励ノ上実効ヲ収ムルニ協力セラレタシ 附 国民貯蓄奨励要領 県民ハ政府ノ勧奨セル国民貯蓄奨励方針ニ基キ今後発行セラルベキ巨額ナル国債ノ消化並ニ生産力拡充ノ資金ノ供給ヲ円滑ナラシメ且ツ物価騰貴ノ経済界ニ及ボス悪影響ノ大ナルヲ慮リ勤倹力行貯蓄報国ノ実ヲ挙ゲ銃後ノ強化ニ一致協力邁進スルモノトス 一 貯蓄ノ目標 県民ハ出征将兵ノ労苦ヲ思ヒ且ツ銃後国民トシテ国家財政経済ニ協力スル趣旨ヲ以テ勤倹力行殊ニ生活ノ改善ニ努メ従来行ヒ来リタル程度ノ貯蓄ノ外事変前ニ比シ所得ノ増加シタル者ハ原則トシテ増加所得ノ全部ヲ出来得ル限リ貯蓄シ従来ニ比シ所得ノ増加セザル者ト雖モ生活ノ改善ニ依リ(市町村町内会団体ニ於テ生活改善特ニ虚礼廃止ノ決議ヲ為ス等)出来得ル限リ貯蓄ニ努ムルコト二 貯蓄ノ方法 貯蓄ノ方法ハ郵便貯金銀行預金信託預金組合貯金保険加入公債応募等確実ナルモノナルニ於テハ各自自由ニ之ヲ選択シ差支ナキモ之ガ貯蓄ハ自由ニ処分スルコトナク出来得ル限リ据置トスル方針ヲ以テスルコト 三 貯蓄ヲ取扱フ機関並ニ組織 貯蓄ヲ取扱フ機関トシテハ産業組合商業組合漁業組合或ハ官公署職場等ニ於ケル既設ノ団体等ニ於テ貯金ヲ取扱ヒツツアル向ニ於テハ之ヲ拡充シ何等貯蓄ヲ取扱フノ組織ナキ向ニ於テハ町内会部落或ハ官公署職場ニ於テ此ノ際速カニ貯蓄組合ヲ設置シ各々具体的計画ヲ樹立シ直チニ実行スルコト 而シテ之ガ成果ヲ収ムル為メニハ共同一致隣保団結ノ精神ヲ振起シ自治的ニ之ヲ行フノ要極メテ緊密ナルニ鑑ミ部落ニ於テハ伍人組或ハ什人組ヲ整備シ都市ニ於テハ町内会等ノ組織ヲ整備シ一円融合以テ目的ノ達成ニ協力邁進スルコト 四 貯蓄組合ノ設置 1 官公署 銀行 会社 工場 イ 官公署銀行会社工場等ニアリテハ各執務庁営業所工場等ニ組合ヲ設置シ若シ既設ノ貯蓄組合等アル場合ハ之ヲ拡充又ハ利用スル等貯蓄ニ努ムルコト ロ 貯蓄組合ハ国民貯蓄奨励局ノ規約例(以下規約例ト称ス)其ノ一別表ノ割合ニ依リ実行スルコト ハ 銀行会社工場等ニアリテハ社員従業員ト組合ヲ分割スルモ差支ナキコト ニ 勤務人員少数(二十人以下)ノ場合ハ組合ヲ設置セズ規約例其ノ四ニ依ル規約ヲ定メ貯蓄ヲ実行スルモ差支ナキコト 2 各種団体 イ 各種団体ニ於テモ貯蓄組合ヲ設置シ(此ノ場合其ノ団体ニ於テ其ノ儘貯蓄ノ実行出来得ルモノハ特ニ貯蓄組合ヲ設置セザルモ差支ナキコト)尚産業組合商業組合漁業組合等既ニ貯蓄ヲ実行シツツアル組合ニアリハテ一層組合ヲ拡充シ日掛月掛売上貯金等其ノ状況ニ応ジ貯蓄ニ努ムルコト ロ 貯蓄割合ニ就テハ規約例其ノ二別表ニ依ルコト 3 一般市町村民 イ 市町村内ニ産業組合商業組合漁業組合或ハ納税組合等貯蓄ヲ取扱フ団体アル場合ハ成ルベク之ガ組合ニ加入スルコト ロ 町内部落ニ貯蓄ヲ取扱フ何等ノ団体ナキ場合ハ規約例其ノ三ニ依リ貯蓄組合ヲ設置スルコト ハ 町内部落ニ於ケル組合員ノ数ハ別ニ規定セザルモ大体一組合ハ百戸程度ヲ限度トスルコト ニ 貯蓄額ハ規約例其ノ三別表ニ依リ納税額町会費等ヲ標準トシ或ハ日掛貯金一口何銭月掛貯金一口何円売上貯金何割等ト定ムルモ一方法ニ付キ夫々地方ノ状況ニ応ジ之ヲ定ムルコト ホ 官公吏銀行員会社員工場従業員等ニシテ勤務先ニ於テ貯蓄スル者ト雖モ居住地貯蓄組合ニ於テ出来得ル限ニ組合ニ加入シ貯蓄ノ励行ニ努ムルコト へ 特殊ノ事情ニ依リ組合ヲ設置セザル者ハ規約例其ノ四ニ依リ貯蓄ヲ励行スルコト此ノ場合ノ貯蓄割合ハ規約例ノ四別表ニ依ル外適宜相当ノ割合ヲ定メ貯蓄ニ努ムルコト 4 各種学校 公私立各種学校ニ於テハ児童生徒ニ対シ月何銭或ハ一口何銭ト定メ可成貯蓄ノ実行ニ努ムルコト(此ノ場合特ニ組合トセザルモ可) 五 貯蓄組合ノ帳簿 貯蓄組合ノ帳簿ハ其ノ組合ニ於テ適宜ニ設備シテ差支ナキモ大体ノ様式ヲ示セバ別記ノ如シ 組合員名簿 備考 戸主ニ非サルモ其ノ所得ニ依リ家族ノ生活ヲ営ムニ於テハ扶養家族ヲ有スル者ト看做ス 一 市町村義務教育費国庫負担ニ依ル国庫支出金ノ交付時期ノ特例ニ関スル件 本年四月十六日勅令第二百五十三号ヲ以テ市町村義務教育費国庫負担法ニ依ル国庫支出金交付時期ノ特例ニ関スル勅令ヲ制定即日施行セラレタル処右ハ本年土地賃貸価格ノ改訂ニ伴ヒ本年度当初ニ於ケル市町村財政ヲ考慮シ小学校教員俸給ノ経理ニ支障ヲ生ゼシメザル為特ニ本年度ニ限リ義務教育費ニ対スル国庫支出金ノ繰上ゲ交付ヲ必要ト認メ制定実施セラレタルモノナルニ付テハ此ノ点十分留意ノ上将来教員俸給ノ支払ニ関シ万遺憾ナキヲ期セラレタシ 一 国民体力向上ニ関スル件 国民ノ体力向上セシメ国民精神ヲ振作シ真ニ国家ノ要望ニ副フベキ健全有為ナル日本国民ヲ育成スルハ極メテ緊要ノコトナリ県ニ於テハ之ガ一助トシテ本年度ヨリ青年団ヲ通ジ県下青年ノ体位向上ヲ企図シ近ク之ガ実施ノ予定ナリ此ノ際各位ハ国民ヲシテ普ク保健ニ関スル注意ヲ喚起セシメ体育運動ヲ生活化スルト共ニ体育運動ノ国家的意義ヲ強調シ国民ヲシテ普ク心身ヲ鍛錬陶冶スルノ機会ヲ与フルト共ニ青少年ノ体力検査或ハ集団的勤労訓練ヲ行フ等地方ノ実情ニ即応セル計画ヲ樹立シ之ガ目的達成ニ努力セラレタシ 一 青年学校教育義務制実施準備ニ関スル件 青年学校教育義務制ハ昭和十三年度ヲ準備期間トシ同十四年度ヨリ実施セラルヽヲ以テ県ハ本趣旨ノ徹底ヲ期スルト共ニ義務制実施ニ伴ヒ必要ナル教員ノ臨時養成ヲ図リ優秀ナル教員ノ育成ニ努メツヽアル処ナルヲ以テ各位ハ地方ノ実情ニ応ジ適当ナル計画ヲ樹立セラレ未ダ専任教員ノ設置ヲ見ザル町村ニ在リテハ之ガ設置ニ付キ遺憾ナキヲ期セラレタシ 一 敬神思想ノ徹底ニ関スル件 現下ノ非常時局ニ際シ国ヲ挙ゲテ尊皇愛国ノ精神益々旺盛ニ趨キ随所ニ神社崇敬ノ至誠ノ発露ヲ見ルハ寔ニ欣ブベキ現象ナリ然レドモ国家ノ将来ニ想到スルトキハ更ニ一層惟神ノ大道ヲ宣揚シ挙国国民精神総動員ノ実ヲ挙グルノ要愈々緊切ナルモノアリ各位ハ宜シク神職ト協力シ祭祀ヲ厳修シ神徳ノ宣揚ニ努メ氏子崇敬者ヲ始メ広ク国民ノ敬神観念ノ向上ニ資スルト共ニ普ク国民ヲシテ神社ヲ中心トシ渾然融和シ報国ノ至誠ヲ捧ゲシムベク適切ナル方途ヲ講ゼラレタシ 一 召集及徴発事務ニ関スル件 今次事変ニ際シテハ屡々多数ノ召集及徴発ヲ実施セラレタルモ各位ノ適切ナル指導ト当時者ノ不断ノ努力トニ依リ概ネ順調ニ実施シ得タルハ寔ニ感謝ニ堪ヘザル所ナリ 然レドモ尚細部ヲ観察スレバ平時ニ於ケル此等ノ準備ニ周到確実ヲ欠キ為ニ之ガ実施ニ際シ一部齟齬渋滞ヲ来シタル事例無シトセズ 而シテ事変ハ愈々長期戦ヲ予想セラルヽヲ以テ此等召集徴発事務ハ将来益々複雑多岐ヲ加フルノミナラズ出師準備ノ基礎トシテ其ノ重要度ハ愈々増加シ来ルベキヲ以テ各位ハ克ク其ノ本質ヲ認識シ一層当事者ヲシテ法規ノ研究ト書類ノ整備ニ万遺漏ナキヲ期シ以テ将来ニ於ケル出師準備ノ要求ニ即応セシメラレタシ 一 農繁期託児所及共同炊事実施ニ関スル件 農繁期ニ於ケル幼児保護及労働能率増進ヲ目的トシテ実施セラルヽ農繁期託児所ハ経費僅少経営簡易ニシテ而モ農村福祉ニ寄与スル所甚ダ大ナルモノアリ又農繁期ニ於ケル保健及労働能率ノ増進ヲ目的トスル農繁期共同炊事ハ昨秋中郡高部屋村ニ於テ実施シ頗ル好成績ヲ見タリ今次事変ニ多数応召者ヲ出セル農村トシテハ殊ニ益々本施設ノ必要アルモノト認メ県ニ於テモ其ノ開設ヲ一層奨励スルコトヽナリタルヲ以テ市町村又ハ社会事業後援会其ノ他地方実情ニ応ジ之ガ開設方ニ関シ一段ノ尽力ヲ効サレタシ 一 軍事援護相談所ノ設置ニ関スル件 出動又ハ応召軍人ノ家族遺族ハ其ノ主働者ヲ失ヒ又ハ不在トナリタル為家業ノ維持経営其ノ他身上及家事万般ニ関スル相談指導ヲ要スル事項尠シトセズ就中考慮ヲ要スベキハ恩給賜金等ニ関スル紛議等モ予想セラルヽヲ以テ之ガ指導斡旋ニ関シテハ既ニ人事相談所ノ設置其ノ他適当ナル方途ヲ講ゼラレツヽアル所ト存ゼラルヽモ時局ノ推移ニ鑑ミ総合的且全県的ニ此種ノ専門ノ機関ヲ設置シ積極的ニ之ガ相談指導斡旋ヲナス要アルヲ認メ今般県ニ神奈川県軍事援護中央相談所ヲ設置シ市区町村ニ対シテハ之ガ設置ニ要スル経費ニ対シ県費ヲ補助シ市区町村軍事援護相談所ヲ設置シ両者呼応協力シ銃後々援ノ円滑ナル運行ヲ期スルコトヽナリタルヲ以テ各位ニ於テハ県ニ於テ作成セル準則ニ依リ適当ナル相談所ヲ設置セラレ之ガ運営ニ関シ遺憾ナキヲ期セラレタシ 一 傷痍軍人ノ保護優遇ニ関スル件 身ヲ挺シテ皇国ニ報ジタル傷痍軍人ニ対シテハ国民挙ツテ感謝ノ至情ヲ現シ此等勇士ガ郷里ニ在ツテ更ニ至誠奉公克ク忠良ナル臣民タル本分ヲ尽スニ遺憾ナカラシムル為政府ニ於テハ医療保護職業保護又ハ子弟ニ対スル育英助成等各種優遇保護ノ方途ヲ講ジ以テ其ノ心身ノ恢復ヲ図ルト共ニ之ヲシテ適職ニ就カシメ社会的経済的ニ十分ナル活動ヲ期シツヽアリ各位ハ本事業ノ重要性ニ鑑ミ之ガ実施ニ当リテハ格段ノ力ヲ効シ傷痍軍人保護並ニ優遇ノ完キヲ期セラレタシ 一 軍事援護事業ニ関スル件 今次事変ニ当リ召集解除又ハ除隊トナリタル下士官兵ノ帰郷ニ際シテハ就業斡旋ニ意ヲ用ヒ速ニ生活ノ安定ヲ得シムルハ最モ緊要ナリ各位ニ於テハ既ニ配意中ノコトヽ存ゼラルヽモ今後一層之ガ徹底ヲ図リ以テ召集解除又ハ除隊兵ノ生業援護ニ遺憾ナキヲ期セラレタシ尚戦傷病死セル軍人軍属ノ遺児ニ対スル育英ノ途ヲ講ズルコトヽ相成リタルヲ以テ各位ニ於テハ本事業ノ趣旨ニ鑑ミ之ガ活用ニ関シ遺漏ナキヲ期セラレタシ 一 職業紹介法ノ施行ニ関スル件 改正職業紹介法ハ我国現下ノ情勢ニ鑑ミ労務ノ適正ナル配置ヲ図ル為政府ニ於テ職業紹介事業ヲ管掌スルト共ニ之ニ類似スル事業等ヲ規制セントスルモノニシテ来ル七月一日ヨリ之ヲ施行スル予定ニシテ目下諸般ノ準備中ナルモ国営職業紹介所ハ改正法律ノ施行ト同時ニ大体都市ニ之ヲ設置(郡部ハ明年度当初設置ノ見込)シ関係市町村ヲ其ノ管轄区域トシ之ニ必要ナル職員ヲ配置スルノ外之ガ補助機関トシテ職業紹介所ニ連絡委員ヲ置キ且市区町村長ニモ補助的事務ヲ掌理セシムルコトヽセリ各位ハ本法ノ改正趣旨及内容ヲ充分理解シ之ガ適正ナル運用ニ付充分協力セラレタシ 一 入営者職業保障法中改正法律ノ施行ニ関スル件 入営者職業保障法中改正法律ハ過般公布施行セラレタリ同法改正ノ要旨ハ再雇傭ニ関スル規定ノ適用範囲ヲ拡張シ又再雇傭ノ場合ニ於ケル処遇ニ関スル規定ノ趣旨ヲ明確ニシ更ニ再雇用ニ関スル規定ノ適用ヲ受ケザル退営者ノ就職保護ニ関スル規定ヲ加へ之ニ依リ入営者及応召者ノ職業保障ノ徹底ヲ期セントスルニ在リ各位ハ克ク現下ノ情勢ニ鑑ミ同法改正ノ趣旨ノ普及徹底ヲ図リ之ガ適正ナル運用ニ留意スルト共ニ職業紹介所其ノ他関係方面ト緊密ナル連携ヲ保チ召集解除者ノ就職斡旋ニ遺憾ナキヲ期セラレタシ 一 応召者遺家族ノ職業保護ノ徹底ニ関スル件 今次事変ニ因ル応召者遺家族ノ職業保護ニ関シテハ各位ノ特別ナル配意ニ依リ各地方ノ実情ニ応ジタル施設ヲ講ジ予期以上ノ成績ヲ収メツヽアリト雖モ現下ノ情勢ハ本施設ノ普及拡充ヲ図ルノ要アリ県ニ於テハ「事変関係職業斡旋部」ノ特設其ノ他ニ依リ応召者遺家族ノ就職斡旋職業輔導授産施設等ニ付之ガ実効ヲ期スル為鋭意努力シツヽアルヲ以テ各位ハ本事業ノ重要性ニ鑑ミ一層有効適切ナル措置ヲ講ジ所期ノ目的達成ニ遺憾ナキヲ期セラレタシ 一 農業保険法ニ関スル件 過般ノ議会ヲ通過シタル農業保険法(昭和十三年四月二日法律第六十八号公布)ハ市農会町村農会地方ノ事情ニ依リテハ養蚕実行組合ヲシテ原則トシテ郡ノ区域ニ依リ農業保険組合ヲ設立セシメ之ヲシテ水稲桑葉及麦類ニ関スル農業保険ヲ行ハシメ其ノ組織スル連合会ヲシテ道府県ノ区域ニ依リ再保険事業ヲ行ハシメ更ニ政府ニ於テハ連合会ノ行フ再保険ニ対シ再保険事業ヲ行ハシメ明年度ヨリ之ガ実施ノ見込ヲ以テ本年度ニ於テ之ガ準備ヲ整ヘントスル方針ナルガ之ガ実施ニ当ツテハ農業保険組合及同連合会ノ設立及事業ノ経営農業保険組合ノ組合員タル市農会町村農会及養蚕実行組合ノ共済事業ノ経営等各般ノ事項ニ付適正ナル指導監督ヲ行ヒ以テ本制度ノ健全ナル普及発達ヲ図ルヲ要スルヲ以テ各位ハ充分之ガ趣旨ヲ体シ目的達成ニ協力セラレタシ 一 農地調整法ニ関スル件 農地調整法ノ施行ニ関スル勅令及省令ニ付テハ目下政府ニ於テ攻究中ナルモ農地調整法施行ニ当リテハ克ク立法ノ趣旨ヲ周知セシメ同法制定ノ目的達成ノ為遺憾ナキヲ期セラレタシ尚同法施行ニ伴ヒ道府県及市町村ニ農地委員会ヲ設置シ現在ノ自作農審議会ノ審議事項ヲ処理セシムルノ外農地ニ関スル諸般ノ事項ヲ地方ノ実情ニ即シテ適当ニ処理セシムル予定ヲ以テ目下農地委員会ノ組織権限等ニ関スル勅令ヲ準備中トノ事ナルガ市町村ニ於ケル農地委員会ノ設置委員ノ任命等ニ付テハ各位ノ配慮ヲ煩スコトトナルベキヲ以テ之等ニ付予メ準備シ円滑ナル運用ヲ期セラレタシ 一 自作農創設維持ニ関スル件 自作農創設維持施設ハ大正十五年之ヲ実施セラレ爾来着々其ノ実績ヲ挙ゲ来リタル処政府ニ於テハ近時農村事情ノ推移ニ鑑ミ一層之ガ施設ノ整備充実ノ必要ヲ認メ自作農創設維持資金ノ増額ヲ為スノ外自作農創設ノ為ニ市町村其ノ他ノ団体ガ農地ヲ一時取得管理スルニ要スル資金ノ貸付ヲ認メ尚未墾地開発ニ依ル自作農創設ヲ助成スル為之ニ要スル資金ノ融通ヲ為スト共ニ其ノ開発ニ対シ奨励金ヲ交付シ以テ農地制度ノ改善ニ資シ農業経営及農村生活ノ安定向上ヲ期セラルルヲ以テ本県ニ於テモ先般従来ノ自作農創設維持資金貸付規則ヲ廃止シ之ニ代へ自作農創設維持奨励規則ヲ制定公布シ之ガ施設ノ拡充ヲ図ルコトトナリタルニ依リ本事業ニ対シ遺憾ナキヲ期セラレタシ 一 事変ニ伴フ農山漁村応急施設ニ関スル件 今次事変ノ勃発ニ伴ヒ農山漁村ニ於テハ人馬ノ応召徴発等ニ因リ労力不足ヲ来シ農林漁業経営上幾多ノ困難ヲ予想セラレタルヲ以テ曩ニ県ハ之ガ応急策トシテ勤労奉仕班ノ設置奨励農具畜力利用機具等ノ共同利用施設ノ助成共同授産施設養蚕共同施設ノ助成等各般ノ方法ヲ講ジ辛ウジテ昨秋収穫期ヨリ今日ニ至ル迄経営ヲ維持シ得タル状況ナリ然レドモ今春ニ於テハ一時ニ多量ノ労働力ヲ必要トシ昨秋ニ倍シ農林漁業経営上困難ヲ生ズル虞アルハ勿論事変長期ニ亘ル時ハ更ニ一層ノ困難ヲ予想セラルルヲ以テ今後ハ右応急施設ヲ拡充シ勤労奉仕施設ヲ中心トシテ其ノ徹底ヲ図リ之ガ対策ニ万全ヲ期セントス各位ニ於テモ町村民ニ献身的活動ヲ促シ各種団体ノ連絡協調ヲ図リ長期活動ニ堪へ得ル様充分配慮セラレタシ 一 農山漁村経済更生計画ノ拡充強化ニ関スル件 農山漁村経済更生運動ハ昭和七年以来実行セラレ着々実績ヲ挙ゲ計画樹立町村数モ昭和十二年迄ノ六ケ年ニ八十三ケ町村ニ達シ県下全町村ノ半数以上ニ及ブノ状況ナルガ是等町村ニ於テハ農民精神ノ作興ト整備セラレタル組織トニ因リ今回ノ事変ニ於テモ応召農山漁家ノ経営ノ安固及生活ノ安定軍需農林水産物ノ供出馬匹徴発等ニ関シ必要ナル措置又ハ諸般ノ対策ノ実行ヲ極メテ容易ナラシメタリ現下ノ非常時局並事変後ノ対策トシテ一層農山漁村経済更生運動ヲ強化徹底シ農山漁村ノ計画経済ヲ確立スルコトハ極メテ緊要ニシテ之ガ為ニハ既ニ樹立セラレタル経済更生計画ニ検討ヲ加へ必要ニ応ジ速ニ適切ナル修正補充ヲ為スト共ニ更ニ長期戦ニ備フル為国民精神総動員ノ趣旨ニ則リ経済更生ノ指導督励ニ邁進セラレタシ 一 臨時農村負債処理法ニ関スル件 過般ノ議会ニ於テ成立ヲ見タル臨時農村負債処理法(昭和十三年四月二日法律第六十九号)ハ支那事変ニ因ル戦死傷者遺家族ニシテ農山漁村ニ居住スルモノノ経済更生ヲ図ル為従来ノ負債整理制度ニ準ジ其ノ負債ヲ処理スルコトヲ目的トシテ制定セラレタルモノニシテ新ニ県ニ臨時負債処理委員会ヲ設ケ其ノ委員会ニ於テ条件緩和ノ斡旋及負債処理計画ヲ樹立セシムルト共ニ市町村産業組合中央金庫及農工銀行ヲシテ之ニ必要ナル負債処理資金ヲ融通セシメ右融通ヲ為スニ因リテ是等ノ機関ガ損失ヲ受ケタルトキハ政府ハ現行ノ損失補償制度ニ依ルモノノ二倍ニ相当スル損失補償ヲ為スモノナリ 本法ハ不日施行ヲ見ルベキモ之ガ実施ニ当リテハ本制度ノ趣旨ニ鑑ミ特ニ細心ノ注意ヲ払ヒ速ニ其ノ目的達成ニ遺憾ナキヲ期スル様努力セラレタシ 一 農産資源開発奨励ニ関スル件 現下ノ時局ニ鑑ミ軍需農産物工業原料農産物及貿易関係農産物ノ改良増殖ヲ図ルハ喫緊ノ要務ナルヲ以テ政府ノ方針ニ順応シ相当予算ヲ計上酒精原料用甘藷飼料原料用玉蜀黍油脂原料用菜種繊維原料用苧麻棉其ノ他貿易農産物ノ増殖奨励ノ為優良種苗ノ育成配給栽培ノ拡張其ノ他生産改良指導ニ関スル各種施設ヲ拡充スルコトトセルヲ以テ各位ハ右ノ趣旨ヲ体シ是等農産資源ノ開発ニ協力シ就中酒精原料農産物ノ増殖ニ付テハ既ニ系統農会ヲシテ夫々増殖供出等ニ関シ計画実行セシメツツアル次第ナルガ右ハ政府ノ燃料国策上絶対ニ必要ナル数量ナルヲ以テ酒精原料以外ノ食用澱粉及焼酎原料等ノ需給状況ヲモ考慮ノ上之ガ供給ニ遺憾ナキヲ期セラレタシ 一 米穀ノ生産維持ニ関スル件 支那事変ニ伴フ農村労力ノ不足等ニ因リ米穀ノ生産減退ノ虞ナキヲ保セザルヲ以テ之ガ生産ヲ確保センガ為本年度政府ノ奨励方針ニ順応シテ予算ヲ計上シ稲熱病ノ発生甚シキ地方ニ於ケル防除用薬剤購入ヲ助成シ之ガ共同防除ヲ奨励スルコトトセルヲ以テ各位ニ於テモ本施設ニ対応シ米穀ノ生産維持ニ協力セラレタシ 一 肥料ノ消費調整並自給肥料ノ増産ニ関スル件 現下ノ時局ニ際シ農業生産ノ確保増進ヲ図ルノ要アルニ拘ラズ農業生産上極メテ重要ナル肥料ノ給源ニ付テ見ルニ販売肥料ハ肥料及肥料原料ノ輸入ノ困難ニ伴ヒ其ノ供給漸ク不足ヲ示スニ至レルノ外自給肥料亦人馬ノ応召徴発ニ因リ生産減退ヲ来スノ虞ナキヲ保シ難キヲ以テ販売肥料中過燐酸石灰及加里塩等ノ合理的消費節約方ニ就キテハ一層留意ノ上遺憾ナキヲ期セラルベク又自給肥料ニ付テハ之ガ増産ヲ図ル為従来ノ奨励施設タル緑肥採種圃ノ設置緑肥種子購入配付緑肥根瘤菌培養配布畜舎床ノ改造及自給肥料増産一斉運動等ヲ拡充セルヲ以テ各位ニ於テハ本施設ノ普及徹底ヲ図ラレタシ 一 馬ノ資質向上ニ関スル件 県ハ政府ノ方針ニ則リ馬ノ国防上及農業経営上ノ重要性ニ鑑ミ昭和十三年度ニ於テモ将来ニ於ケル軍ノ需要ヲ充足シ且其ノ産業上ノ能率ヲ増進スル為軍用候補馬ノ資質向上ニ関スル施設ヲ行フコトト為シタリ右ハ馬資源ヲ涵養シテ農業労力ノ不足ヲ補ヒ自給肥料ノ増産ニ資スルコトトナレルヲ以テ各位ニ於テハ馬ノ国防上ノ重要性ニ鑑ミ目的達成上遺憾ナキヲ期セラレタク特ニ軍用候補馬ノ資質向上ハ馬飼養者ノ自発的改善ニ俟ツコト大ナルヲ以テ之ガ督励ニ付留意セラレタシ 一 畜牛補充施設ニ関スル件 支那事変ニ伴フ軍ノ牛肉需要ノ激増ト牛肉輸入ノ減少トニ因ル牛ノ屠殺ノ増加ニ対応シ応召等ニ因ル農業労力ノ不足ヲ補ヒ且自給肥料ノ増産ニ資スル応急施設トシテ政府ヨリ数種牡牛ノ貸付ヲ受ケ牛ノ増殖ヲ促進スルト共ニ前年度ニ引続キ朝鮮牛ノ共同購入事業ニ対シ助成スルコトトナレリ各位ハ本施設ノ趣旨ヲ体セラレ各地方ノ実情ニ照シ事業遂行ニ協力セラレタシ 一 自給飼料ノ増産並輸入飼料ノ配給統制ニ関スル件 本邦ノ畜産ハ農業経営ノ改善並畜産物ノ急激ナル需要増加ニ伴ヒ逐年顕著ナル発達ヲ遂ゲツツアリト雖モ国内飼料資源ノ開発之ニ伴ハザル為年々五六千万円ノ飼料ヲ海外ヨリ輸入シツツアリタル処今次事変ニ因リ飼料輸入ハ益々不安且不経済トナリツツアル現況ニ鑑ミ飼料ノ経済的給源ヲ確保スルハ刻下喫緊ノ要事ナリ之ガ為政府ハ昭和十三年度ニ於テ新ニ飼料ノ自給促進ニ関スル経費ヲ計上シサイレーヂ埋蔵施設ノ奨励飼料共同施設ノ奨励飼料自給促進ニ関スル講習講話及伝習会ノ奨励並県ニ飼料ニ関スル専任技術員ヲ設置シ自給飼料ノ増産ヲ図ルト共ニ輸入飼料ニ付テハ飼料配給統制法ヲ運用シ特殊機関ニヨリ海外飼料ノ輸入配給ヲ統制シ以テ供給ノ確保ト価格ノ低廉及安定ヲ期シ畜産資源ノ保持並国際収支ノ調整ニ資セントシテ着々諸般ノ準備ヲ為シツツアリ県ニ於テモ亦之ニ即応施設スルコトトナルベキニ付各位ハ之等施設事業ノ遂行ニ協力セラレタシ 一 軍需生産品供出ニ関スル件 支那事変勃発以来各種軍需農林水産物ノ供出ニ関シテハ農林省並軍当局ト連絡ヲ保チ生産者団体ノ努力ニ依リ大体順調ニ進捗シ来レルガ事変今後ノ推移ニ因ル軍ノ需要ニ対応スベク本年度ニ於テモ相当数量ヲ供出スル見込ナルヲ以テ各位ニ於テハ地方軍需生産物ノ供出実施上遺憾ナキ様協力セラレタシ 一 物価調整ニ関スル件 物資ノ需要調整ト物価調整トハ戦時体制下ニ於ケル国策遂行上最モ重要ナル問題ニシテ就中最近ニ於ケル物価ノ急激ナル騰貴抑制対策ノ樹立ハ特ニ緊急ヲ要スルモノアルヲ認メ政府ニ於テハ中央物価委員会ノ設置等各般ノ施設ヲ講ゼラレツツアルガ本県ニ於テモ近ク神奈川県地方物価委員会ヲ設置シ中央委員会ト緊密ナル連絡ヲ保持シ急激ナル物価暴騰ヲ抑制スルト共ニ物価調査員ヲ設置シテ物価ニ関スル調査及監視等ニ当ラシムル見込ニ付関係者ニ之ガ趣旨ノ徹底ヲ図ルト共ニ物価対策実施ニ付協力セラレタシ 一 石油ノ消費規正ニ関スル件 五月一日ヨリ実施セラレタル石油ノ消費規正ハ所要ノ軍需ヲ確保シ国際収支ノ適合ヲ図ル上ニ於テ最モ重要ナル国策ノ一ナルヲ以テ此ノ際各位ハ管内各方面ノ協力ヲ得テ設備ノ転換其ノ他各種ノ合理的方法ヲ講ジ産業上交通上ノ支障ヲ最少限度ニ止ムルト共ニ消費節約ノ目的達成ノ為一段ノ協力ヲ効サレタシ 一 銃後営業援護ニ関スル件 応召者ノ遺家族ニ対スル後援ハ既ニ各位並各種団体ノ協力ニヨリ着々実施セラレツツアルモ現下ノ情勢ニ鑑ミ特ニ応召中小商工業者ノ営業ノ存続維持ヲ図ルハ頗ル喫緊事ナルモノアルヲ以テ本県ハ政府ノ方針ニ則リ中小商工業営業援護委員会ヲ設置シ以テ営業援護及復員ニ関スル方針ノ樹立ヲ図ルト共ニ他方商工業奉仕員ヲ設置シテ援護措置ノ実施ニ当ラシムル見込ニ付之ガ施設ノ趣旨ヲ了得セラレ万遺憾ナキヲ期セラレタシ 一 綿糸鉄鋼等ノ統制実施ニ関スル件 時局ニ鑑ミ重要物資ニ付生産配給消費ノ各部門ニ亘ル統制ノ実施ハ益々強化セシムルノ要アリ既ニ棉花綿糸鉄鋼銑鉄鋳物金白金銅等ニ付キ夫々輸出入品等臨時措置法ニ基ク省令等実施セラレツツアルハ各位ノ承知セラルルトコロナリ是等各般ノ経済統制ノ円滑ナル実施ニハ各市町村内ノ関係業者ハ勿論一般市町村民ニ対シ之ガ趣旨ヲ了得セシメ其ノ協力ヲ得ザルベカラズ今日マデノ実施ノ経験ニ徴スルニ必ズシモ其ノ認識ニ於テ充分ナルモノアリト言ヒ得ザルヲ遺憾トス今後一層之ガ統制実施ニ万遺憾ナキヲ期セラレタシ (参考) 綿製品ステープルフアイバー等混用規則 (省令) 毛製品ステープルフアイバー等混用規則 (同) 綿糸配給統制規則 (同) 綿糸販売価格取締規則 (同) 鉄鋼工作物築造許可規則 (同) 白金使用制限規則 銅使用制限規則 (省令) 銑鉄鋳物ノ製造制限ニ関スル件 (同) 一 農耕地ノ改善補給ニ関スル件 不良農耕地ノ改善及過小農ノ耕地面積ノ補給ハ現下非常時ニ於ケル農産資源ノ拡充並ニ農山漁村民ノ生活安定上最モ適切喫緊ノ事項タルハ言ヲ俟タザル処ナルヲ以テ各位ハ本事業ニ対スル国及県ノ奨励施設ト相俟テ一層之ガ促進ニ留意セラレ銃後農山漁村ノ使命ヲ全フスルニ遺憾ナカラシメラレタシ 一 民有林間伐増産ニ関スル件 現下ノ情勢ニ鑑ミ木材殊ニパルプ資材ヲ増産シ之ガ供給ヲ保続スルハ国際収支ノ調整上極メテ緊急ナル要務ナルヲ以テ今回政府ニ於テハ民有林ノ間伐ニヨリ合理的ニパルプ資材ノ増産ヲ図ルコトトシ本県ニ於テモ右国策ニ順応シテ本年度ヨリ五ケ年間民有林ノ間伐ヲ奨励シ且生産及配給ヲ確実円滑ナラシムル為搬出設備及販売斡旋ヲモ行ハルルヲ以テ之ガ事業達成上遺憾ナキヲ期セラレタシ 一 民有林造林奨励ニ関スル件 時局ニ鑑ミ政府ニ於テハ木材殊ニパルプ資材ノ保続的供給ヲ必要トスル見地ヨリ新ニ伐採跡地ノ造林並ニ之ニ要スル樹苗ノ養成ヲ奨励スルコトトナレリ本県ニ於テハ昨年ノ災害林地跡地ニ対シテモ造林ヲ勧奨シツツアル折柄ニ付本事業ト併行シ奨励セムトスルモノナルヲ以テ本趣旨ニ基キ将来ニ於ケル木材及パルプ資材ノ生産確保ニ努メラレタシ 一 防空法ノ運用ニ関スル件 現下内外ノ情勢ニ鑑ミ国民防空ノ整備充実ヲ図ルハ極メテ緊要ナリトス仍テ防空法ノ運用ニ当リテハ県防空計画ニ準拠シ各市町村ノ実情ニ適応セル防空計画ノ樹立設備資材ノ充実防空訓練ノ徹底防空思想ノ普及等ニ一段ノ意ヲ用フルト共ニ防空ニ関スル事項ガ其ノ関係スル所甚ダ広汎ナルニ思ヲ致シ各機関各組織相互ノ連絡協調ニ特段ノ努力ヲ払ヒ相率ヒテ所期ノ効果ヲ挙グルニ万遺憾ナキヲ期セラレタシ 注意事項 目次 一 繭糸調査ニ関スル件 一 繭綿蒐集ニ関スル件 一 銃後授産施設事業ノ件 一 木炭瓦斯発生装置助成ニ関スル件 一 丹沢報国寮勤労奉仕ニ関スル件 一 繭糸調査ニ関スル件 糸価安定施設法運用ノ基礎資料調査ノ為同法施行規則ニ基キ関係市町村ニ繭糸調査員ヲ嘱託シ繭生糸ノ現在高及生糸ノ生産消費高調査ヲ行ヒツツアルモ本調査ノ結果ハ糸価安定対策上特ニ戦時経済界ノ異変ニ備フル為重要ナル資料タルヲ以テ其ノ趣旨ヲ諒セラレ充分調査員ヲ督励シ迅速且正確ニ行ハシメラルルト共ニ調査員応召或ハ其ノ他ノ事情ニ依リ右調査員ノ更迭ヲ必要トスル場合ハ速ニ之ガ手続ヲ採リ調査上遺憾ナキヲ期セラレタシ 一 繭綿蒐集ニ関スル件 今次事変ニ当リ軍部ヨリ繭綿ノ供給要望アルノミナラズ繊維国策ニ対処スル為民間事業会社ヨリ多量ノ要求アルヲ以テ目下各養蚕業団体ヲシテ蒐集セシメ共同処理方督励中ニ付各位ニ於テモ充分指導援助ヲ与ヘラレタシ 一 銃後授産施設事業ノ件 昨年ヨリ引続キ農山村ニ於ケル林務関係授産施設トシテ炭俵藤畚揚子等ノ製作ヲ奨励スルコトトナレリ本年度ハ相当多額ノ助成金アルヲ以テ之ガ運用ニ付十分配慮セラレタシ 一 木炭瓦斯発生装置助成ニ関スル件 燃料国策ノ一助トシテ昨年ヨリ木炭瓦斯発生機ノ装置助成ヲ見タリシモ末ダ之ガ普及ニ付キ徹底セザル向アルヲ以テ事変下ニ於ケル「ガソリン」ノ消費節約ノ趣旨ニ鑑ミ益々本装置ノ奨励ニ協力セラレタシ 一 丹沢報国寮勤労奉仕ニ関スル件 本県ニ於テハ昨年十月ヨリ丹沢報国寮ニ於テ森林治水事業ヲ根基トスル勤労奉仕事業ヲ実施シ県下各青年団員ヲ収容シ以テ日本精神ノ体現困苦欠乏ニ耐フル質実剛健ノ気風ノ養成ニ努メタリ而モ其ノ成績頗ル顕著ナルヲ以テ本年ハ更ニ箱根ニ第二報国寮ヲ建設シ中等学校生徒ヲ主トシ同一趣旨ニ基キ勤労奉仕ヲ実施スルコトトナレリ戦時体制下ニ於テ奉公ノ念ニ燃ユル青年ノ養成ハ刻下喫緊ノ要事ナルヲ以テ其ノ目的達成ニ更ニ一層協力セラレタシ (大山町長「知事召集市町村長会議訓示指示其他」(昭和十三年―)伊勢原市役所蔵) 〔注〕別表省略。 三三 藤沢町戦勝行事の件届 藤発第一二三〇号 昭和十三年十月二十七日 藤沢町長 藤沢警察署長宛 戦勝奉告祭旗行列並提灯行列挙行ノ件 漢口陥落ノ公報発表ヲ期シ戦勝奉告祭執行致候ニ就テハ当日左記計画ニ依リ旗行列並提灯行列挙行致候ニ付此段及御届候也 記 一 漢口陥落ノ公報発表アリタル日ノ翌日又ハ翌々日ヲ期シ午后二時ヨリ伊勢山公園忠魂碑前ニ於テ戦勝奉告祭執行(日取決定ノ上ハ電話ヲ以テ報告ス) 二 旗行列ハ奉告祭当日町立小学校六年以上ノ児童及女学校生徒ヲ以テ行ヒ午后一時各学校出発伊勢山公園ニ至リ奉告祭場ニ集合祭式終了ト同時ニ帰校奉告祭ニ参列セザル児童及生徒ハ各校長ノ裁量ヲ以テ通学区域ニ於テ旗行列ヲ行フ 三 提灯行列ハ奉告祭当日一般町民ヲ以テ行ヒ午後正六時三十分辻堂駅前出発府県道辻堂停車場羽鳥線ヲ北上シ東海道ニ出デヽ東進シ遊行寺橋ヲ渡リ農工銀行前ヲ右折藤沢橋ヲ経テ藤沢駅前広場ニ至リ午后八時半(予定)解散 (藤沢町役場「庶務書類」(昭和十三年)藤沢市文書館蔵) 三四 自治振興運動実施要項ならびに運動指定町村の状況(一―二) ㈠ 自治振興運動実施要項 今ヤ国ヲ挙ケテ新東亜ノ建設ニ邁進セムトスルニ当リ之カ遂行ノ為ニハ我カ光輝アル国史ノ精華ヲ省察シ其ノ伝統的皇国精神ヲ発揮シテ和協一心不退転ノ決意ト不撓ノ努力トヲ不断ニ続ケネハナラヌ 之カ為銃後ノ護リニ在ル者ノ特ニ肝要ナルコトハ各人カ時局ヲ正シク認識シテ必勝ノ途ニ協力シ益々堅忍持久各々其ノ職分ヲ守リ克ク困苦欠乏ニ堪へ剛健ナル国民精神ヲ振作更張シテ地方ノ振興ヲ図リ以テ自治報国ノ誠ヲ具現スルニ在ルモノト信ス 茲ニ二十ケ町村ヲ選定シ左記要項ニ依リ自治振興運動ヲ実施セムトスルモノナリ 記 一 指導精神 イ 時局認識 ロ 和協一心 ハ 自治報国 二 指導事項 イ 聖戦ノ意義 ロ 聖業翼賛 ハ 総親和 ニ 総努力 ホ 公共心ノ振作 へ 銃後諸施設ノ強化徹底 ト 紛争ノ根絶 チ 補給金ニ関スル趣旨ノ徹底 リ 公租公課ノ完納 ヌ 国民貯蓄ノ拡大 ル 其ノ他 三 実施方策 イ 自治振興委員会ヲ開キ率先協力セシムルコト ロ 部落常会又ハ懇談会等ヲ開キ趣旨ノ徹底ヲ期スルコト ハ 右諸会合開催ノ場合ハ県ヨリ指導員ヲ派遣スルコト 四 各町村ノ実施計画ハ速ニ樹立ノ上可成来ル二月十五日迄ニ報告セラレタシ ㈡ 町村状況 (西秦野村役場「庶務書類」(昭和十四年)秦野市役所蔵) 第二節 総動員 三五 日中戦争勃発一周年記念献納運動実施要綱 支那事変勃発一周年記念実施事項中「一戸一品献納運動」ニ関スル件 (昭和十三年六月二十五日十三事第一四三号総務学務部長通牒各市町村長宛) 支那事変勃発一周年記念実施事項ニ関シテハ別途通牒致候処右実施事項ノ一トシテ「一戸一品献納運動」全国一斉ニ実施ノコトヽ相成候ニ就テハ各種団体学校方面ト協力ノ上地方ノ実情ニ応ジ別記実施案適宜斟酌ノ上実施方可然御取計相成度 〔別記〕 一戸一品廃物献納運動実施案 一 目的 来ル七月七日ノ支那事変勃発一周年ヲ記念シ資源愛護ノ国民訓練トシテ一戸一品廃物献納運動ヲ行フ 一 献納品目 左記金物中ヨリ一品(廃品)ヲ選ビ献納スルコト (イ) 鉄類 古釘 ブリキ鑵 金属製玩具 鉄棒片其ノ他 (ロ) 銅 黄銅(真鍮) 亜鉛 古銅鍋 古銅網 銅又ハ黄銅製火箸 銅線 黄銅金具片其ノ他 (ハ) 鉛 鉛管片 鉛板片 鉛製玩具其ノ他 (ニ) 錫 錫箔 錫製チユーブ ブリキ鑵其ノ他 (ホ) アルミニウム 古弁当箱 古アルミニウム鍋 アルミニウム製匙又ハ箸 アルミニウム箔(煙草ノ銀紙)アルミニウム製チユーブ(歯磨容器)其ノ他 尚献納品ハ家庭内ノ廃品ヲ以テ之ニ当テ特ニ本運動ノ為ニ物品ヲ購入スルガ如キハ絶対ニ之ヲ避ケ其ノ量モ自由トスルコト 今次ノ献納運動ハ資源愛護ノ国民訓練ニ主眼ヲ置ク故ニ品目ハ簡単ナル古金物トシボロ其ノ他消毒ヲ要スベキ廃物ハ取扱ヒ煩雑ナルヲ以テ之ヲ除外セリ 一 協力スベキ民間団体其ノ他 在郷軍人会男女青年団婦人団体町内会廃品回収懇話会屑物業者及其ノ組合小学児童男女中等学校生徒等 (イ) 市区町村長ハ関係者ノ協議会ヲ開催シ諸般ノ打合ヲ行フコト (ロ) 学校教職員ハ本運動ニ協力スルコト 一 献納品蒐集方法 (イ) 在郷軍人男女青年団員婦人会員等ハ当日各家庭ヲ巡訪シ献納品ノ蒐集ニ当リ保管場所迄運搬ス (右ニ支障アル場合ハ小学児童男女中等学校生徒等ヲシテ献納品ヲ各家庭ヨリ保管場所へ持参セシムルモ一方法ナリ) (ロ) 保管場所ハ学校校庭又ハ雨天体操場等適当ナル場所ヲ選定スルコト 一 献納品ノ処分 献納品ハ保管場所ニ於テ前記懇話会又ハ屑物業ト協力シテ速ニ処分スルコト 一 献納品ノ管理及ビ代金処理 献納品ノ管理及ビ処分代金ノ保管ハ当該市区町村長之ニ当リ取纒メタル上ハ七月十五日迄ニ県庁事変係ニ持参スルコト 一 献金方法及ビ其ノ使途 市町村長処分代金ヲ取纒メ献金ニ当リテハ国防献金恤兵金傷痍軍人保護施設費等ト区分シテ政府ニ献納スルモノトスルモ国民精神総動員中央連盟ノ方針ハ成ルベク傷兵保護施設費(或ハ娯楽室建設等ノ形ニ於テ)トシテ献納致度希望ニ付出来得ル限リ此ノ趣旨ニ御同意協力セラレタシ 一 結果ノ報告 右実施ノ結果ニ付テハ大体左記様式ニ依リ詳細報告スルコト 備考 1 蒐集方法並保管場所蒐集参加人員等ハ詳細備考トシテ説明スルコト 2 現品献納或ハ現金ニ当リ特ニ推奨スルニ足ル者等特殊事例アリタル場合ハ別紙トシテ添付報告スルコト (神奈川県「国民精神総動員実施概況第四輯」 (昭和十四年)久保田昌孝氏寄託相模原市立図書館蔵) 三六 一戸一品献納代金蒐集の件報告 一戸一品献納代金蒐集状況ノ件 支那事変一周年記念行事トシテ一戸一品献納運動実施方御配意煩候処本月十一日現在ニ就テ別紙ノ成績ヲ収メ候条不取敢及報告候也 七月七日一戸一品献納運動代金調(昭和十三年八月十日現在) (神奈川県「国民精神総動員実施概況第四輯」 (昭和十四年)久保田昌孝氏寄託相模原市立図書館蔵) 三七 昭和十三年八月経済戦強調週間実施要綱 経済戦強調週間実施ニ関スル件 (昭和十三年七月二十八日十三事第一七一号総務部長通牒市町村長宛) 国民精神総動員ノ実施トシテ標記週間ヲ実施スベキ旨其ノ筋ヨリ指示有之候ニ付テハ別記要綱ニ依リ地方ニ即応セル事項ヲ定メ一般民衆ニ政府ノ意ノ存スル所ヲ強調認識セシメ之ガ実績ヲ挙グルニ万遺憾ナキヲ期セラレ度依命及通牒候也 追而右実施ノ上ハ其ノ結果ヲ八月二十五日迄ニ御報告相成度申添候 〔別記〕 経済戦強調週間実施要綱 一 趣旨 支那事変ハ支那側ノ長期抗戦ニ拘ラズ今ヤ戦局ノ一大進展ヲ見ルニ至リシモ事変ノ前途ハ猶遼遠ニシテ官民一体益々堅忍持久ノ覚悟ヲ固メ以テ聖戦所期ノ目的達成ニ邁進セザルベカラズ而シテ官民一体戦時態勢ヲ確立スルハ国家総力ノ拡充飛躍ノ根基ヲ確保スル所以ナルコトト現下経済戦ノ実情並ニ今後来ルベキ経済的諸問題ノ真相トヲ一般ニ認識セシメ挙国一致国家ノ目的ニ邁進スルノ決意ヲ固メシムルニアリ 仍テ此際総動員的経済戦遂行ヲ要スル所以ヲ明ラカニシ進ンデ県民一致ノ実践躬行ヲ求メントス 二 名称 経済戦強調週間 三 実施期間 八月十日ヨリ同十六日迄一週間ヲ強調週間トシ其ノ後ニ於テモ継続実践ヲ求ム 四 実施項目 現下ノ国際収支ノ見透シ及戦局ノ拡大ニ伴フ軍需ノ増加ニ因ル物資需給調整計画ニ即応シ戦争遂行ニ必要ナル諸般ノ物資ヲ充足シ且将来ニ備フル国防力ヲ強化セシムル為特ニ左ノ事項ニ重点ヲ置キ県民一致ノ実践ヲ促ス 実践スベキ事項 (一) 物資ノ消費節約 1 綿製品麻製品毛製品皮革製品ゴム製品金属製品ノ新規購入ヲ差控フルコト 2 紙類石炭ガソリン(燃料)水道電気瓦斯ノ節約ニ努ムルコト(二) 廃品ノ回収 各家庭ニ廃品整理箱等ヲ備へ置キ常時分類蒐集ニ努ムル等組織的回収ノ方法ヲ講ズルコト (三) 物資ノ活用 1 金ヲ政府ニ献納又ハ売却スルコト 2 不用品廃品ノ極度ノ更生利用ヲ計ルコト (四) 代用品使用ノ奨励 (例示) 綿製品麻製品毛製品皮革製品ゴム製品金属製品ニツキテハ代用品ヲ使用スルコト 1 下駄草履草鞋等ノ使用ヲ奨励スルコト 2 藁蒲団ノ使用ヲ奨励スルコト 3 金属類ノ備品装飾品ハ代用品ヲ使用スルコト (五) 貯蓄ノ実行 1 金銀銅ニユーム其ノ他金属類ハ代用品ヲ使用シ之ヲ売却シ国民貯蓄ヲナスコト 2 凡ユル方法ヲ以テ貯蓄ノ励行ヲナスコト (六) 物価騰貴ノ抑制ニ対スル協力 1 買占買溜売惜ミヲ為サヾルハ勿論価格料金ノ引上ヲ極力避クルコト (七) 生産ノ拡充 1 大麦苧麻棉花甘藷ノ増殖奨励ヲ計ルコト (八) 生活ノ刷新 1 生活一般ノ水準ヲ低下シ堅忍持久困苦ニ堪フルコト 2 冠婚葬祭ノ簡易化贈答宴会ノ自制其ノ他一般生活ノ刷新緊縮ヲ行フコト 3 服装ハ質素ヲ旨トシ統制物資ハ勿論生活用品ハ新調ヲ為サズ有リ合セニテ間ニ合スコト 五 実施方法 右実施ニ当リテハ講演会懇談会協議会等ヲ開催シ趣旨ノ徹底ヲ計リ職場若クハ町内会部落等ニ於テ特ニ申合ヲナシ実践ノ促進ヲ期スルコト (参考) 一 綿製品 衣類 手拭 足袋 靴下等 二 麻製品 洋服布 ハンカチーフ ワイシヤツ 紐 袋等 三 毛製品 洋服 シヤツ セエーター 襟巻 帽子 毛糸編物類 セル又ハモスリンノ衣服等 四 皮革製品 靴 鞄 ハンドバツグ トランク バンド 手袋 運動具等 五 ゴム製品 靴 手袋 タイヤー バンド エボナイト製品玩具 敷物等 六 金属製品 (イ) 金 白金 時計 指環 鎖 入歯 装身具等 (ロ) 鉄 瓦斯道具 鍋 釜鉄コンロ其ノ他ノ炊事道具 鉄ストーブ各種刃物家具釘鉄線トタン板玩具等 (ハ) 銅 真鍮 鍋 釜 薬鑵 火鉢 線 錠前 水指 水盤家庭用器具 器物等 (ニ) 鉛 ペイント 鉛管 玩具等 (ホ) 亜鉛 トタン トタン製品 ペイント等 (へ) 錫 各種錫器 ブリキ玩具 ブリキ鑵 菓子包装 歯磨チユーブ等 (ト) ニツケル ニツケル鍍金食器器具洋銀器具ライター等 (チ) アンチモン 琺瑯鉄器置物 煙草セツト 玩具等 (リ) アルミニユーム 鍋釜 其ノ他ノ炊事道具 家庭用器具 (神奈川県「国民精神総動員実施概況第四輯」 (昭和十四年)久保田昌孝氏寄託相模原市立図書館蔵) 三八 昭和十三年十二月経済戦強調週間実施要綱 経済戦強調週間実施ニ関スル件 (昭和十三年十一月二十九日十三事第三〇九号総務 経済 学務 警察部長通牒市町村長 警察署長 消防署長 学校長廨長宛) 経済戦対処ノ国民運動ニ関シテハ国民精神総動員運動ノ一トシテ屡次強調実施シ来リタル処武漢攻略後ノ情勢ニ対応シテ益々長期建設ノ体制ヲ整へ聖戦所期ノ目的ヲ達成センガ為今般別紙要綱ニ依リ更ニ経済戦強調週間ヲ実施致スコトト相成タルニ付テハ政府ノ意ノ存スル処ヲ一般ニ強調認識セシメ之ガ実績ヲ挙グルニ万遺憾ナキヲ期セラレ度依命此段及通牒候也 追テ右実施ノ上ハ其ノ結果ヲ十二月二十八日迄ニ御報告相成度申添候 〔別紙〕 経済戦強調週間実施要綱 一 趣旨 本年七月以後強調シ来リタル経済戦ニ関スル国民運動ヲ更ニ強調実施シ広東武漢攻略後ニ於ケル内外ノ諸情勢ニ対応シテ益々長期建設ノ体制ヲ整へ聖戦所期ノ目的達成ヲ期セントス 二 期間 自昭和十三年十二月十五日至昭和十三年十二月二十一日 一週間 三 実施要領 (一) 時局ノ現段階ニ於ケル経済戦ノ重要性並ニ政府ノ採リツツアル政策ニ対スル理解ヲ十分徹底セシムルト共ニ特ニ経済戦ノ強化ヲ図ル為左ノ三事項ニ重点ヲ置キ県民一致ノ実践徹底ヲ図ルコト イ 生活ノ刷新 ロ 物資ノ節約 ハ 貯蓄ノ実行 (二) 「生活ノ刷新」ニ関シテハ国民皆戦場ニ在ルノ心構ヘヲ以テ自粛自戒ニ努メ戦時国民生活ノ確立ヲ目標トシ特ニ年末年始ノ虚礼廃止ノ励行ニ努ムルコト (三) 「物資ノ節約」ニ関シテハ国防資材ノ確保生産力ノ拡充輸出ノ振興物価騰貴ノ抑制等ノ見地ヨリ物資ノ節約ヲ要スル所以ヲ明カニシ之ガ実行ヲ奨メ併セテ公定価格ノ遵守ニ努ムルコト (四) 「貯蓄ノ実行」ニ関シテハ貯蓄報国ノ意義ヲ更ニ徹底セシメ特ニ貯蓄組合ノ整備拡充ニ努ムルコト 四 実施方法 (一) 本週間実施ニ関シテハ曩ニ行ヒタル貯蓄報国強調週間ニ於ケル通牒ノ趣旨及其ノ実績ヲ十分考慮ノ上計画スルコト (二) 官公署学校各種団体会社銀行工場部落町内会等ニ於テハ生活ノ刷新物資ノ節約貯蓄ノ実行等ニ関スル適切ナル実践項目ヲ設定スルト共ニ之ガ実績ヲ挙グル様工夫スルコト (三) 本週間ヲ機トシ官公衙学校会社工場各種団体町内会部落等ニ於テハ特ニ左記事項ノ励行実践ニ努ムルコト イ 生活ノ刷新ニ関スル事項 1 社会風潮ヲ一新シ堅実ナル民風作興ニ努ムルコト 2 年末年始ノ形式的贈答ハ断然之ヲ廃止スルコト 3 事変下第三年ヲ迎フル新年ノ奉祝ニ当リテハ厳粛質素ヲ旨トスルコト 4 年賀状年賀広告ノ類ハ特ニ必要ナル範囲ニ之ヲ止ムルコト5 吉凶儀礼ノ改善並ニ簡易化ヲ図ルコト 6 各宴会ハ必要已ムヲ得ザル場合ノミニ之ヲ制限シ且努メテ質素ヲ旨トスルコト ロ 物資ノ節約ニ関スル事項 1 買溜ヲ為サザルハ勿論物資ノ活用ヲ図リ特ニ年末新年ニ際シ衣類調度等ノ新調ヲ見合スコト 2 百貨店商店等ニ於ケル年末年始ノ売出広告装飾福引等ハ之ヲ控へ目ニスルコト 3 価格料金ノ引上ヲ極力避クルト共ニ販売者ハ勿論購買者モ公定価格ヲ遵守スルコト 4 物資統制ノ趣旨ヲ徹底スルト共ニ廃品利用再製品代用品等ノ工夫研究並ニ冬期ニ於ケル薪石炭ガソリン瓦斯電熱等ノ燃料ノ消費節約ニ努ムルコト 5 公私ヲ問ハズ器具機械ノ愛護並ニ職場報国ノ念ヲ涵養シ之ガ徹底ヲ図ルコト ハ 貯蓄ノ実践ニ関スル事項 1 貯蓄組合ノ未ダ設置ナキ向ニ対シテハ此ノ際其ノ設置ニ努メ之ガ拡充ヲ図ルコト 2 毎月ノ貯蓄額ノ増加ニ努ムルト共ニ貯蓄組合未加入者ノ絶無ニ努ムルコト 3 官公署学校銀行会社工場等ノ勤務者ハ年末賞与ヲ極力貯蓄ニ充ツルコト 4 殷賑産業関係者其ノ他収入ノ増加セル向ニ在リテハ特ニ高率貯蓄ノ実践ニ努ムルコト 5 工場ニ於ケル貯蓄率ノ引上ニ関シテハ銃後生活刷新運動ヲ強調シ各自ノ貯蓄力ニ応ジ出来ル限リノ貯蓄ヲ為スコトヲ申合サシメ貯蓄率ノ向上ヲ図ルコト 6 賞与ノ一部ヲ以テ十二月五日及十五日ヨリ発行ノ貯蓄債券又ハ国債ノ購入ニ努ムルコト 貯蓄債券発行日 自十二月五日至十二月二十日 額面 五円 十円 支那事変国庫債券発行日自十二月十三日 至十二月二十四日 額面 十円 二十五円 五十円 百円 五百円 千円 7 劇場映画館其ノ他多数集合スル場所ニハ「貯蓄報国」又ハ之ニ類スル字幕ヲ掲出スルコト 五 学校ニ於ケル実施事項 (一) 校内訓話 (二) 貯蓄ニ関スル作文標語ポスターノ作成 (三) 映画ノ利用 (四) 貯蓄ニ関シ模範トナルベキ者ノ表彰 (五) 各教科ノ教授ニ際シ其ノ徹底ヲ図ルコト 六 県ノ実施事項 (一) 県下数ケ所ニ於テ懇談会講演会映画会ヲ開催ス (二) 商業組合工業組合貿易組合其ノ他商工団体ニ対シ貯蓄実行ニ関スル具体的方法ヲ決定シ之ガ実行方ヲ勧奨ス (三) 廃品回収強調日ヲ設定シ之ヲ強調実施ス (四) 廃品回収展覧会ヲ開催ス (五) 物価政策ノ現状及将来ニ就テ巡回講演会ヲ左記ノ通開催ス 川崎市 横須賀市 平塚市 小田原町 (六) 模範物価表示会ヲ県下二十九物価調査地区毎ニ開催ス (七) 代用品ノ発明奨励ノ為ノ発明奨励金交付ノ趣旨ノ方途ヲ講ズ(八) 輸出振興ニ就キ イ 輸出業者工業者ノ協議会ヲ開催ス ロ 商品別ニ依ル輸出業者生産業者ノ研究会ヲ創設ス (九) 商業組合ヲ通ジ歳末売出ニ関シ自粛スル様通牒ヲ発シ其ノ徹底ヲ図ル (十) 本運動ノ趣旨ノ徹底ヲ図ル為県下各戸ニ配布スベキ「ビラ」四十万枚ヲ印刷シ予メ市町村ニ配付ス (神奈川県「国民精神総動員実施概況第四輯」 (昭和十四年)久保田昌孝氏寄託相模原市立図書館蔵) 三九 戦時下配給統制に関する件通牒 昭和十四年三月十七日 経済部長 殿 釘針金(亜鉛引鉄線)鉄線ノ配給統制ニ関スル件 鉄鋼統制ノ強化ニ伴フ釘針金鉄線ノ生産減少ト其ノ需要増大ニ鑑ミ之ガ需給調整ヲ図ル為今回之ガ配給統制ヲ実施スルコトヽ相成候処本県ニ於テハ差当リ左記ニ依リ運用致スコトヽ相成候条貴管内関係業者其他一般ニ周知方可然御取計相煩度此段及通牒候也 記 一 統制品目ハ釘針金鉄線ニシテ釘トハ丸釘ニシテ(折釘カスガヒ等ヲ含マズ)針金トハ亜鉛鉄線ヲ言フ 二 主要需要(小口需要ト称ス)ト一般需要トニ区分ス小口需要トハ凡ソ左ノ需要ヲ指シ一口十頓未満ニシテ且ツ一規格毎ニ釘ニ付テハ一樽(六十瓩)以上針金ニ付テハ一巻(五十瓩)以上鉄線ニ付テハ三十瓩以上ノモノトス ㈠ 輸出関係ノ需要 ㈡ 軍需関係ノ需要 ㈢ 生産力拡充関係ノ需要 ㈣ 官庁関係ノ需要 ㈤ 農山漁村ノ生産力維持増進ニ関スル需要 ㈥ 市町村其ノ他之ニ準ズルモノヽ需要 ㈦ 其ノ他一般需要ニシテ数量ニ於テ相当多量且ツ重要ナル事由ノ認メラルヽモノ 三 小口需要者ハ県ノ発行スル購入票(様式別紙)ト引換ニ地問屋ヨリ購入スルモノトス購入票ノ交付ヲ受クルニハ申請書(様式別添)ヲ県(輸出関係ノ需要者ハ商工課宛其他ノ需要者ハ臨時物資調整課宛)ニ提出スルコト 四 右ノ申請書ニ関シテハ ⑴ 一月乃至三月分ニ付テハ本月二十五日迄ニ四月乃至六月分ニ付テハ四月二十日迄ニ提出スルコト ⑵ 輸出関係軍需関係土木建築関係等ニ関シテハ注文書請書又ハ証明書ノ写ヲ申請書ニ添附スルコト ⑶ 会社団体ヨリノ申請ハ代表名ニテ申請スルコト ⑷ 団体申込ノ場合ハ各団体員ニ付テノ明細書ヲ附スルコト ⑸ 一事業ニシテ二期以上ニ亘ルモノハ各期分数量毎ニ申請書ヲ作製スルコト ⑹ 申請量ハ最少ノ必要量ヲ申請スルコト ⑺ 釘針金鉄線別ニ申請書ヲ提出スルコト 五 小口需要者ニ非ザル一般需要者ハ従来通金物小売業者ヨリ自由ニ購入スルコト但地方問屋ハ一般需要者ニ対スル販売ヲ取扱ハス六 一口十頓以上ノモノヲ大口需要トシ県ヲ経テ日本線材製品工業組合連合会(所在 東京市京橋区宝町一ノ九 現任理事長石津武彦)ニ申請書ヲ提出シ中央釘針金鉄線配給協議会ノ査定ニ依リ配給ヲ受クルモノトス 右申請書記載要項ハ左ノ通 ㈠ 品目 ㈡ 使用目的 ㈢ 使用場所 ㈣ 使用期間(大体三ケ月ヲ標準トス) 七 一口トハ一契約ノ数量ヲ言フ 八 販売価格ハ最近公定サレタルヲ以テ之ニ依リ売買スルコト 九 詳細ハ経済部臨時物資調整課ニ照合ノコト (西秦野村役場「庶務書類」 (昭和十四年)秦野市役所蔵) 四〇 重要物資の廃品回収に関する件通牒 十四商第二九九一号 昭和十四年六月十七日 経済部長 渡辺広警察部長 辻山治平 県下各市町村長殿 〃 警察署長殿 重要物資ノ廃品回収ニ関スル件 標記ノ件ニ関シテハ曩ニ神奈川県廃品回収懇話会ヲ組成シタルト共ニ県下警察署管内毎ニ廃品買出人組合ヲ結成セシメ其ノ組合員ニ対シテハ本県制定ノ廃品買出人徽章ヲ交付シ之ガ佩用ヲ勧奨シツヽアルニ付テハ爾今関係業者並ニ一般廃品供出者ニ周知徹底方御取計ノ上左記ニ依リ実施上(取締上)万遺憾無之様期セラレ度此段及通牒候也 追而廃品買出最低価格ハ今後決定ノ都度通牒可致ニ付為念申添候 記 一 本県内ニ於テ廃品回収ニ従事スル廃品買出人ニ対シテハ其ノ品位向上ト信用ヲ高メ且取引ノ改善ヲ計ル為一定ノ徽章ヲ佩用セシム 二 廃品買出人徽章ハ住所(又ハ居所)所在ノ買出人組合ヲ通ジテ其ノ所轄警察署ニ申請ノ上交付ヲ受クベシ 三 警察官及市町村吏員ニ於テ徽章ヲ佩用セザル廃品買出人ヲ発見シタルトキハ右各項ノ注意ヲ与へ前項ノ手続ヲ履践セシムルコト 四 市町村長ハ廃品回収最低価格ノ通知ヲ受ケタルトキハ市町村内適当ナル場所ニ掲示スル等(例ヘバ市町村公報ニ登載スル如シ)之ガ一般的周知方ヲ図ルコト 五 廃品買出人ハ神奈川県廃品回収懇話会協定廃品買出最低価格ニ準拠シテ廃品ヲ回収スルコト 六 廃品買出人廃品回収ニ付不正行為又ハ回収ノ促進ヲ阻害スル行為アリタル場合ハ徽章ノ佩用ヲ禁止スルコトアルベシ 七 警察署ハ管下ノ廃品買出人組合ニ対シ必ラズ組合員ノ住所氏名年令及買出人徽章番号ヲ登載スル帳簿ヲ作成ノ上整備シ置クコト 八 右各項ハ昭和十四年六月二十日ヨリ実施ス 廃品買人徽章雛型 古物行商人徽章 赤紫色地 雑業徽章 黄色地 (西秦野村役場「庶務書類」(昭和十四年)秦野市役所蔵) 四一 中郡農会の農業労働力補給調整に関する会議事項 労力補給調整ニ関スル件 今事変勃発以来県下農村ニ於テハ将兵ノ応召軍需工業ヘノ転出農馬ノ徴発等ニ依ル労力不足ノ為メ農業経営ニ支障ヲ来タス虞尠ナカラサルニ鑑ミ之ガ対策トシテ昭和十二年秋作以来国庫助成ヲ受ケテ実施セル主ナル事項ヲ挙クレバ ㈠ 勤労奉仕運動 隣保共助ノ精神ヲ昂揚シ勤労奉国ノ至誠ヲ基調トスル勤労奉仕運動ヲ興シ応召農家ノ農業経営ヲ援護スル為メ町村ニ勤労奉仕部部落ニ勤労奉仕班ノ設置ヲ奨励シ昭和十二年度ニ壱万弐千円昭和十三年度ニ弐万参千七百五拾円ノ助成金ヲ交付シタルニ現在勤労奉仕部一九九勤労奉仕班一四二二ノ設置ヲ見タリ 昭和十四年度モ引続キ予算弐万五千円計上シテ之レガ助成ヲナサントス ㈡ 農具及畜力利用機具ノ奨励 農事実行組合等ヲシテ農具及畜力利用機具ノ共同利用ヲ為サシムル為メ国庫助成ヲ受ケテ奨励金ヲ交付セリ其ノ成績左ノ如シ ㈢ 共同作業ノ奨励 県農会ヲシテ国庫助成ニ依リ専任職員一名兼務職員三名ヲ設置セシメ郡市農会職員ヲ督励シテ管下千百三十ノ農事実行組合等ニ於ケル共同採種共同田植共同収穫及調整等ノ共同作業並必需品ノ共同購入及生産物ノ共同販売等ノ共同施設ノ実地指導ヲ為サシム ㈣ 農耕牛(朝鮮牛)ノ共同購入 農業労力及自給肥料ニ対スル銃後対策トシテ産地ヨリ朝鮮牛ノ共同購入ヲ畜産組合連合会ヲシテ施設セシメ国庫助成ヲ得テ輸送費並斡旋費ニ対シ昭和十二年度ニ於テ百七十八頭四千六百十八円昭和十三年度ニ於テ五百頭七千百六十九円ノ奨励金ヲ交付セリ 昭和十四年度ニ於テ引続キ五百頭ノ共同購入ヲ奨励セントス ㈤ 動力農具ノ移動配給調整ノ奨励 動力農具ノ地域的扁在ヲ調整シ且ツ之レガ利用率ヲ高揚セシメ農業労力ノ不足ヲ補ヒ以テ農業生産ノ確保増進ヲ図ル為メ国庫助成ヲ得テ県農会ヲシテ左ノ施設ヲ実施セシメタリ (イ) 農業機械ノ共同利用斡旋指導 (ロ) 郡市町村農会産業組合農事実行組合等ニ於ケル農業機械共同斡旋指導費補助 (ハ) 前項団体ニ於ケル既存農業機械ノ移転又ハ改装整備費補助(ニ) 前項団体ニ於ケル既存農業機械ノ地域的調整ヲ行フ為メ之レガ買入費補助 然レドモ今ヤ事変ハ興亜ノ大業建設ノ一段階ニ入リ農業労力ノ不足ハ愈々深刻トナルモノト予想セラルヽヲ以テ之レガ補給対策トシテ昭和十四年度ヨリ更ニ左ノ奨励施設ヲナシ万遺憾ナキヲ期センガ為メ夫々実施計画中ナリ 一 動力農具ノ奨励 予算額一五、〇〇〇円 農業労力ノ最モ不足ヲ来スハ収穫期ニシテ従来ノ実績ニ徴スルニ動力農具ハ手農具ニ比シ約十倍以上ノ作業能率ヲ有スルヲ以テ之ガ購入ヲ奨励シ応召農家ヲ中心トシテ共同利用ヲ為サシメントス 二 畜耕班ノ奨励 予算額一五、〇〇〇円 収穫期ニ亜グ労力不足ハ播種前ノ耕耘作業能率六倍以上ト認ムル畜力利用ニ依ル耕耘作業ヲ為サシムル為畜産組合ヲ通シテ町村ニ奨励シ応召農家余力アラバ一般農家ノ耕耘作業ヲ為サシメントス 三 労力補給集団移動労働施設 県内及県外ニ於テ季節的ニ労力余裕アル地方ト地方的ニ耕作作業ノ早晩ニ依ル余裕労力トヲ必要地方ニ移動セシムル為国庫助成ヲ得テ集団的移動労働班ノ設置ヲ県農会ヲシテ施設セシメントス 尚小学校中等学校ノ児童生徒ニ農業報国ノ精神ヲ涵養シ併セテ労力補給ノ一助ニナス為移動労働班ヲ組織セシメントシテ実施方法ニ関シ研究中ナリ (大磯町農会「庶務文章綴」(昭和十四年)大磯町役場蔵) (注)「七千百六十九」が「一四、一三五」と、又「一五、〇〇〇」が「六、三四〇」と訂正されている。 四二 中郡秦野町第九回経済警察協議会開催の件通知 秦経保発号外 昭和十四年十月二十一日 秦野警察署長 各町村長各協議員殿 第九回経済警察協議会開催方ノ件 今般国家総動員法ニ基ク九・一八価格停止ニ関スル勅令ノ公布アリタルヲ以テ之ニ関スル協議会ヲ左ノ通リ開催致シ度候条万障御差繰リノ上御出席相成度此段及通知候也 追而当日ハ協議会終了後秦野経済報国会役員会ヲ開催スル筈ニ付キ出席不能ノ場合ハ必ズ代人ヲ出席セシメラレ度 記 一 日時 十月二十三日午后一時ヨリ(時間厳守) 二 場所 秦野警察署楼上ニ於テ 三 議案 1 価格等統制令ニ就テ 2 賃金臨時措置令ニ就テ 3 家賃地代統制令ニ就テ (西秦野村役場「庶務書類」 (昭和十四年)秦野市役所蔵) 四三 中郡秦野経済報国会会則草案 秦野経済報国会々則草案 第一章 総則 第一条 本会ハ秦野経済報国会ト称ス 第二条 本会ハ秦野警察署管内ニ於ケル各町村長農会長産業組合長及統制関係業組合ヲ以テ之ヲ組織シ其ノ組合ニ所属スル組合員ハ本会ノ会員タルモノトス 但シ其ノ他ノ商工業ニ従事スル者ノ入会ヲ妨ゲズ 第三条 本会ハ事務所ヲ秦野警察署内ニ置ク 第二章 目的及事業 第四条 本会ハ現下ノ時局ニ鑑ミ経済統制諸法令ノ研究ヲ遂ゲ国策ノ趣旨ヲ広ク各会員ニ普及徹底セシメ之ガ違反ノ根絶ヲ期スルト共ニ関係官庁トノ連絡ヲ図リ報国ノ誠ヲ尽スヲ以テ目的トシ其ノ協議並ニ実行ノ機関トス 第五条 本会ハ前条ノ目的ヲ達成スル為左ノ事業ヲ行フ 1 経済統制ニ関スル協議会ノ開催 2 前項ニ於ケル申合事項ノ実施 3 公定価格ノ周知徹底 4 関係法令並ニ公定価格等ノ速報 5 講演会座談会等ノ開催 6 関係法令研究会ノ開催 7 会員及従業員ノ表彰教化並ニ慰安事業 8 其ノ他本会ノ目的ヲ達成スル為必要ナル事業 第三章 役員 第六条 本会ニ左ノ役員ヲ置キ書記ノ外ハ無報酬トス 名誉会長 一名 会長 一名 副会長 二名 常任幹事(係員) 若干名 幹事 〃 相談役 〃 会計 一名 書記 一名 第七条 名誉会長ハ秦野警察署長ノ職ニアルモノヲ推戴シ会長副会長ハ名誉会長ノ推薦トス 常任幹事ハ会長ノ推薦ニ依リ名誉会長之ヲ任命シ幹事ハ各組合長トス 会計及書記ハ会長之ヲ任命ス 相談役ハ各町村長及第二十七物価調整地区内物価調査委員ヲ推戴ス 第八条 役員ノ任期ハ二ケ年トシ其ノ時期ハ会計年度ニ準ズ 但シ重任ヲ妨ゲズ 第九条 役員ニシテ欠員ヲ生ジタル時ハ直ニ補充シ其ノ任期ハ前任者ノ残任期間トス 第十条 名誉会長ハ本会ニ対シ必要ナル指示命令ヲ発ス 会長ハ会務ヲ総括処理シ本会ヲ代表ス 会長事故アルトキハ副会長之ヲ代行ス 常任幹事ハ会長ヲ補佐シ幹事ト連絡シ会務ヲ処理ス 相談役ハ名誉会長及会長ノ諮問機関トス 会計ハ金銭出納ノ責ニ任ズ 書記ハ名誉会長並会長ノ指揮ニヨリ諸般ノ事務ヲ処理ス 第十一条 本会ニ功労アリタルモノハ顧問ニ推戴ス 第四章 会議 第十二条 本会ノ会議ヲ分ケテ定期総会協議会役員会ノ三種トス 第十三条 定期総会ハ毎年一回四月ニ之ヲ開催ス 但シ幹事以上ノ役員ヲ以テ之ニ代ルコトヲ得 第十四条 定期総会ニ於テ本会ノ事業及会計ニ関スル事項ヲ報告ス 第十五条 協議会ハ毎月一回名誉会長ニ之ヲ召集シ幹事以上ノ役員ヲ以テ開催ス 第十六条 役員会ハ必要ニ応シ名誉会長ニ諮リ会長之ヲ召集シ幹事以上ノ役員ヲ以テ開催ス 第五章 入会及脱退 第十七条 本会ニ加入セントスルモノハ其ノ旨所属ノ組合代表ノ幹事ヲ経テ申込ムベシ 第十八条 会員ニシテ脱退セントスル者ハ其ノ理由ヲ但シ幹事ヲ経テ名誉会長ニ届出其ノ承認ヲ受クベシ 第六章 経費 第十九条 本会ノ出納ハ会計法ニ従ヒ一般会計年度ニ拠ル 第二十条 本会ニ必要ナル経費ハ会員ヨリ之ヲ徴収シ其ノ金額ハ役員会ニ於テ審議シ総会ノ議決ニ依リ之ヲ決行ス 第二十一条 会費ノ納期ハ毎月末トス 第二十二条 経費ノ支出ハ会長ノ決裁ヲ経テ会計之ヲ支出ス 附則 第二十三条 本会則ニ規定ナキ事項発生セル時ハ会長ハ名誉会長ニ諮リ役員会ヲ召集シ之ヲ処理シ次期総会ニ報告スルモノトス 第二十四条 本会則ニ変更ノ要アルトキハ役員会ニ於テ審議ノ上総会ノ議決ニヨリ変更ス 第二十五条 本会則ハ昭和十四年 月 日総会ノ議決ヲ経テ即日ヨリ実施ス (西秦野村役場「庶務書類」(昭和十四年)秦野市役所蔵) 〔注〕 「名誉会長」の下に「署長」、「会長」の下に「業者」ヽ「副会長」の下に「警部補、業者」、「幹事」の下に「農会長、産業組合長」、「相談役」の下に「町村長」の書込みがある。 第三節 大政翼賛の進行過程 四四 大政翼賛会神奈川県郡市町村支部結成式に関する件通牒 昭和十六年三月十五日 大政翼賛会神奈川県支部 庶務兼組織部長(印) 各市町村長殿 郡市町村支部結成ニ関スル件 首題ノ件ニ関シテハ各郡市町村支部ニ於カレテ着々御備準中ノ事トハ存シ候モ郡協力会議等モ近ク開催ノ運ト相成候ニ就キ可及的速カニ支部結成式挙行相成度 追而近衛総裁告辞県支部常務委員会主催者祝辞追送可仕候ニ就キ可然御代読相煩度候 別紙 其の一 支部結成式次第(一例) 二 実践要綱並誓 支部長 理事分 三 同要綱解説 別紙其の一 支部結成式(一例) 一 一同敬礼 一 開会之辞 一 宮城遥拝 一 国歌奉唱 一 紀元二千六百年紀元節ニ当リ賜ハリタル詔書奉読 支部長 一 戦歿将兵ノ慰霊並出征将兵ノ武運長久祈念 一 支部長挨拶 一 誓 理事代表朗読 一 総裁告辞 (代読) 一 県支部常務委員会主宰者祝辞 (代読) 一 来賓祝辞 一 万歳奉唱 一 一同敬礼 (「大政翼賛」 (昭和十五―十八年)伊勢原市役所蔵) 四五 大政翼賛会支部規定 大政翼賛会支部規程 (昭和十六年四月十八日改正) 第一条 道府県郡(支庁長管轄区域ニ在リテハ其ノ区域以下同ジ) 市町村及六大都市ノ区(以下単ニ区ト称ス)ニ大政翼賛会支部ヲ置ク但シ町村数寡少ナル郡ニ在リテハ二郡以上ノ区域ニ一支部ヲ置クコトヲ得 第二条 支部ニ左ノ役員ヲ置ク但シ郡市(六大都市ヲ除ク)区町村ノ支部ニ顧問参与ヲ置ク場合ハ道府県支部長ノ承認ヲ得ルヲ要ス 支部長 一名 顧問 若干名 常務委員 若干名 参与 若干名 第三条 支部ノ役員ハ道府県支部長ニ在リテハ総裁之ヲ指名又ハ委嘱シ其ノ他ノ役員ニ在リテハ道府県支部長ノ推薦ニ依リ総裁之ヲ指名又ハ委嘱ス 役員ノ任期ハ一年トス但シ再指名又ハ再委嘱ヲ妨ゲズ 第四条 支部長ハ総裁及上級支部長ノ指揮ヲ受ケ支部ヲ統理ス 常務委員ハ支部長ヲ輔ケ支部ノ運営ニ参画ス 顧問ハ支部長ノ諮問ニ応ズ 参与ハ支部ノ企画及活動ニ参与ス 第五条 支部ニ其ノ事務ヲ処理スル為事務局ヲ置ク 第六条 道府県支部ノ事務局ニ庶務部及組織部ヲ置ク 庶務部ハ支部ノ庶務及協力会議並ニ国民生活ノ指導宣伝等ニ関スル事項ヲ掌ル 組織部ハ国民ノ地域的及職域的組織国民ニ対スル各種訓練及指導各種団体トノ連絡ニ関スル事項ヲ掌ル部ニ支部長ヲ置キ支部長之ヲ指名ス 第七条 六大都市ノ支部ノ事務局ニハ前条ニ準ジ部ヲ置クコトヲ得第八条 事務局ニ必要ナル職員ヲ置クコトヲ得 第九条 支部ニ協力会議ヲ附置ス但シ市(六大都市ヲ除ク)区町対ノ協力会議ハ市区町村常会ヲ以テ之ニ充ツ 第十条 協力会議ノ議員ハ其ノ区分ニ従ヒ左ニ掲グル者ノ中ヨリ指府県支部長ノ推薦ニ依リ総裁之ヲ指名又ハ委嘱ス 一 道府県協力会議ニ在リテハ イ 郡市協力会議員但シ各郡市ヨリ少クトモ一名ヲ指名スルコトヲ要ス ロ 各種団体代表者 ハ 道府県会議員 ニ 其ノ他適当ナル者 一 六大都市ノ市協力会議ニ在リテハ イ 協力会議員但シ各区ヨリ少クトモ一名ヲ指名スルコトヲ要ス ロ 各種団体代表者 ハ 市会議員 ニ 其ノ他適当ナル者 一 郡協力会議ニ在リテハ イ 町村協力会議員但シ各町村ヨリ少クトモ一名ヲ指名スルコトヲ要ス ロ 各種団体代表者 ハ 其ノ他適当ナル者 第十一条 協力会議員ノ定数ハ道府県及六大都市ニ在リテハ三十名乃至六十名トシ郡ニ在リテハ二十名乃至六十名トス但シ町村数五十以上ノ郡ニアリテハ七十名迄ヲ増スコトヲ得 第十二条 協力会議ノ議長ハ道府県支部長ノ推薦ニ依リ総裁之ヲ指名ス 第十三条 協力会議ハ支部長之ヲ招集ス 協力会議ハ年二回以上之ヲ開会ス 協力会議ノ会期ハ道府県協力会議ニ在リテハ三日以内トシ其ノ他ノ協力会議ニ在リテハ二日以内トス但シ必要ニ応ジ延長スルコトヲ妨ゲズ 第十四条 支部ノ経費ハ本部補助金其ノ他ノ収入ヲ以テ之ニ充ツ (「大政翼賛」(昭和十五―十八年)伊勢原市役所蔵) 四六 大政翼賛会神奈川県支部第一回協力会議 における支部長松村光磨の挨拶 松村県支部長挨拶 本日茲に本県第一回の大政翼賛会協力会議を開催することを得まして御挨拶を申上げる機会を得ましたことを洵に光栄に存ずる次第であります。 昨年秋本県支部結成以来各位には常に多大の御援助御協力を願つて居つた次第でありますが今回県協力会議の組織に当りましては此の仕事を御引受下さいまして本日は非常に御多忙の所を御出席下さいましたことは衷心より感謝に堪へない所であります。 我が国も今や聖戦五年を迎へまして我が忠勇なる第一線の将兵は益々我が国の武威を四海に輝かして居り国民亦物資の欠乏其の他有ゆる困苦欠乏に堪へ銃後の護りを完う致して居りまするが世界の情勢から之を判断致しますれば我が国は真に二千六百年来曾てない一大国難に逢着致して居るのであります。独り我が国のみならず世界の列強が今や其の国運を賭して其の民族の興亡を賭して死闘を繰返して居るやうに思ひます。我が国も此の支那事変解決の為には非常なる困難を見つゝあり又国際環境から申しましても我が国の地位は極めて困難であり而も又太平洋の怒濤はいつ何時如何なる事変を起すやも図り難い情勢になつて居りまして国民としては全く非常なる決心をしなければならぬと思ふのであります。 吾々は二千六百年の光輝ある歴史を吾々先祖に依つて承け継いだのでございまするが吾々は此の歴史を更に吾々の次代の国民に引継がなければならぬのでありまして吾々現代国民の責務たるや実に重大であると思ふのであります。さう云ふ意味合に於きまして吾々は有ゆる困難欠乏に堪へ有ゆるものを犠牲にして此の事変解決の為に邁進しなければならぬと思ふのであります。聖戦五年とは云ひながら我が国はまだ彼の「ヨーロッパ」に於ける空襲下の「ロンドン」の如き逆封鎖を喰つて居ります。 「イギリス」国民に比べて見ればマダ〳〵非常なる安泰であり平和であると思ふのであります。又赫々たる戦果を挙げつゝあります。「ドイツ」国民の全く身命を賭して二十年の復讐を遂げつゝある状況而も物資の欠乏に堪へて協力一致して居る様子を見ますと我が国民は洵に幸福であると思ふのでありまして併し此の幸福に狎れて却つて時局に対する認識を十分にしない為に或は国内に一部不平が起り或は色々国内の議が纒まらないとか真にまだ我が国が重大なる時局に面せりと云ひながらそこに到達して居ない感なきにしもあらずと思ふのであります。併し先程申上げましたる如く既に私が言ふまでもなく時局が益々深刻なる方面に進みつゝあります。表面或は国際情勢が緩和せるやの感なきにあらずと致しましても今後益々我が国が強大となり我が国が支那大陸へ発展すればする程益々我が国民の国際的地位は難かしくなつて参る訳でございましてさう云ふ意味合に於きまして吾々国民は更に覚悟を新にし又国家と致しましても今日まで之を止めたとは言ひながらまだ〳〵「イギリス」や「アメリカ」に其の経済を依存し有ゆる物資の援助を受けて居つたのでありまするが今後は独立独歩と申しまするか真に東亜の盟主として東亜新秩序の建設者として世界の列強を向ふに廻して戦はなければならぬ平和の戦争も又武器の戦争もせねばならぬと云ふことになりますと今後一層吾々は覚悟を新にして行かなければならぬかと思ふのであります。 さう云ふ意味合に於きまして此の大政翼賛会が昨年発足以来国民の非常なる熱意の下に其の運動を展開して来たのであります。又今年の春は大政翼賛会の運動を更に強力にし更に国民的挙国的に展開する為に其の改組も行はれたのでございまするが今後此の運動の更に一層力強く進められて行くべき国家的の要求と申しますかさう云ふものが更に大きくなつて行くと思ふのでありまして又翼賛会は段々と下部運動の熾烈となるに連れまして今後発展して行くことゝ思ひます。どうぞ各位は今後一層御協力の程を御願ひ申上げたいと存ずるのであります。 本日は第一回の協力会議でございまするがどうぞ十分下情を上通し又上意の下達すべきものは之を下達し御協力を戴きまして意義ある会議を御願ひ致したいと存ずる次第であります。二百万県民も此の第一回の協力会議の成果に付て非常なる注目を致して居ることゝ思ふのでございまするが私は必ずや是が県民の期待に十分副ひ得ることゝ確信致して居ります。甚だ簡単でございまするが一言茲に御挨拶を申上げる次第であります。 (大政翼賛会神奈川支部「第一回協力会議議事録」 (昭和十六年)伊勢原市役所蔵) 四七 大政翼賛会神奈川県支部第一回協力会議における運動経過報告 経過報告並協力会議運営要項 ○田辺庶務部長兼組織部長 協力会議のことに付て先に申上げます。県協力会議は御奉公の為の全県民の家族会議でありまして職能職域各分野に於きます所の衆智全能を一堂に集めより良き翼賛の道を発見せんとするものであります。従ひまして其の運営に当りましては常に能く国家の大目的を理解し運動の方向を正確に把握致しまして与へられましたる役割を尽して万民翼賛の実を挙げるやうに其の運営に万全を期さねばなりませぬ。協力会議で最も重要なことは上意の下達下情の上通でありまして此の事が適切に行はれるか否かは直ちに全翼賛運動の活溌なる展開に影響を及ぼすものであります。即ち上意を伝へて国家の目的や施設が国民全体に最も迅速に理解せられ国内に隈なく滲透するやう具体的に之を解明し其の自覚を喚起して国民自ら進んで協力実践する所の指導性を作り出し又下情を上通しては国民の正しき希望が完全に諒解せられて政治の上に反映する所あらしめる。斯くして官民一体となつて臣道実践の極致を尽すことに依りまして無限絶大なる国力の発揮を見ることが出来るのであります。斯かる任務を完遂する為には協力会議は単なる上意下達の機械的伝達機関たるに止まらず互譲相戒しめ切瑳琢磨如何にしたらよりよく御奉公が出来るかを反省し次の建設への総力の源泉ともなり臣道実践の道場ともなるべきものであります。従ひまして是に於きましては対立観念よりする攻撃や防禦形式的な質疑応答議論の為の議論は見られない筈でありまして総てが国家の大目的を前提として時局に応じ機宜に従ひ国民の総意により盛り上る建設と懇切なる指導とが行はれるのであります。会議は総て議長に依つて指導され進行するものであります。会議の運営は議長の統裁に依つてなされるものであります。議長の指導と会議員其の他役員の協力が愛国の熱情に依つて融合する所に其の本来の使命の達成を見らるゝ訳であります。明朗活発に所信を腹蔵なく披瀝しそれ〴〵の立場持場の良き意見優れた智慧をしてより高き臣道実践の一路に統一集結して大政翼賛運動へ貢献致すべく努むることが肝要であります。協力会議は翼賛運動に於ける燃え上る国民意識の血脈として其の組織細胞の末端に至るまで愛国の赤誠が強く明るく清らかに脈々と躍動して居るものたらしめねば相成りませぬ。尚協力会議は支部長が之を招集致します。議案は議員より出すものと支部其の他より出す場合もあります。議長の衆議統裁でありますが協力会議は数に依つて決するものではございませぬ。全員が和衷協力して自己の有する最も優れたものを選定吐露致します時渾然一体生きた生命が生れてそれを議長の統裁と云ふ形で結論するものであります。個人々々の意見を多数集めたものではなく個人の意見を基礎としながら全体的一個の生きたものたらしめることに依りましてより高き方途を発見し国運隆昌に資する国民家族会議でありますから構成組織の考へ方も従来のものとは異る訳であります。会議員が推薦せられます場合はそれ〴〵の地域なり職域なり或は各種団体なりの指導的な立場にある人から銓衡されるのでありますが既に使命を受けて会議に列したる以上はそれ等の地域や団体の利益代表の立場ではございませぬ。そこにあるものは唯己れの属する地域職域に於ける体験と知識とを顕現せんとする魂と意思があるのみであります。是こそ期待の掛けられる所であります。農村会議員は肥料製造者の苦労を聴いて是の協力の途を発見せんとし配給業者は消費者の立場を見て如何にして其の人々の生活に役立つべきかを考へ企業者は技術者の研鑚を採入れて之を実際に効果あらしむべきことを案ずる即ち全県全国民の知識と力の泉となり茲から新に起上らんとする国民の意思の支柱となる態度こそ絶体の要請であります。今回の会議は中央協力会議を目前に控へて居りますので議案に対しまして十分なる会議時間を取ることの出来なかつたことを非常に遺憾に存じます。是が為め説明は一人当り五分程度と云ふやうな非常な無理な御願ひを致しましたることを事務局と致しまして御詫び申上げる次第であります。会議場も協力会議場の作り方と致しましては本意でない点もございますが他に適当なる場所もございませぬので県会議場を其の儘之に充てたやうな次第であります。此の点併せて御諒承を御願ひ致したいと存じます。 前後致しましたが経過に付て極く簡単に申上げます。当神奈川県支部は昨年の十二月十三日に結成を見たのであります。爾来半歳を経過致して居りますが県協力会議の組織を最後と致しまして県下各支部悉く組織を見るに至つたのであります。其の間三月十一日から同月末日までの間三浦郡外七郡支部に於きまして郡協力会議を開催致しました。又五月一日より同月末日までの間に於きまして横浜市外五市の常会横浜市の協力会議を開催することが出来たのであります。又此の間に於きまして既に各位の御承知の通り神奈川県文化翼賛連盟の結成を見まして現に県下八十六団体会員数三千八百余人を算するものが外廓団体として発足致し着々其の歩を進められて居ります。一方湘風会始め思想団体に於きましても翼賛体制の建設に協力を寄せられて居りますことを欣幸とするものであります。県支部と致しましては県下各郡市町村支部と共に県及び市町村と表裏一体の関係を持続致しまして支部役員推進員の強力なる発動を促し及び協力会議の運営に努むると共に前申上げましたる外廓団体近く結成を見んと致して居ります壮年団或は在郷軍人分会産業報国会其の他産業経済関係の諸団体と緊密なる連絡を取りまして此の運動の強力なる展開を推進せんとして居ります。 以上を以ちまして経過並に説明を終りますが最後に一言自分の所信を述べさせて戴きます。大政翼賛会が発足以来八箇月を算へます。此の間に於きましても最も遺憾に思ひましたのは改組問題であります。此の緊迫したる国際情勢下に於きましてどうしても此の体制を整へねばならぬと云ふことは一億国民の恐らく異存のない所であらうと思ふのであります。然るに御承知の如き経過を辿つたのであります。勿論翼賛会は極めて短い期間に組織実施せられたものでありますから其の機構に於きまして或は人選に於きまして遺憾の点があつたことゝ考へる者でありますが唯見逃すことの出来ないと思ひますことは議会に於ける論議之が基底をなします所の精神であると思ひます。又之に呼応する所の所謂現状維持的の勢力の存在も其の一つでなければなりませぬ。国家の危急を前にして尚ほ私心を去り得ない存在を非常に遺憾に存じます。 最近翼賛会が精動化したと云ふやうなことを屡々聞くのでありますが此の点を特に申上げて皆様の御協力を御願ひ致したいと存じます。近衛総裁始め翼賛会は当初の理念方針を断じて変へないと云ふことを屡々強調されて居ります。高度の政治性を維持して居りますこと勿論であります。一口に申上げまするならば政府と表裏一体の関係から倒閣運動は許されませぬがそれ以外の政治的行動は一切差支へないとされて居るのであります。どうぞ今日の協力会議を契機と致しまして皆様の御力に依つて二百万県民の情熱を動員し当初の方針通り少くも我が神奈川県下に於きましては一日も早く此の翼賛体制の完成を見ますやう皆様の絶大なる御協力を御願ひ致します。 (大政翼賛会神奈川県支部「第一回協力会議議事録」(昭和十六年)伊勢原市役所蔵) 四八 大政翼賛会神奈川県支部第一回協力会議の指示事項 県支部指示事項 一 戦時食糧増産並節米運動実施方策ニ関スル件 二 昭和十六年度国民貯蓄奨励ニ関スル件 ○議長(寺島健君)右の指示事項に付きまして上意下達の為め支部役員たる参与の県振興課長に御説明願ひます。 ○桝本参与 私から便宜二つの事項に付きまして御説明を申上げます。戦時食糧増産並節米運動実施方策は御手許に配付してあります印刷物に依りまして其の要点だけを御説明申上げたいと思ひます。現下我が国に於ける重大な問題は此の戦時下に於ける国民の食糧確保の問題でございます。然るに本年度の米穀の需給状況を考へて見ますと昨年度に比較致しまして決して楽観を許さない状態にあるのであります。随ひまして吾々は全力を尽しまして其の需給の円滑なる運営に協力をしなければならぬと考へて居る訳であります。特に増産の問題に付きましては其の要素である天候是は人力を以て如何ともすべからざる問題でございますが他の点に付きましては吾々有ゆる人力の限りを尽しまして是が円滑なる遂行に協力しなければならないと考へるのであります。随ひまして政府の指示に依つて県の主管各課と翼賛会の支部と色々協議を致しまして茲に御示し申上げましたやうな食糧増産並に節米運動実施方策を設定致した訳であります。 そこで第一に本県下に於ける食糧農作物の目標を決定致しまして二頁の表にございますやうに此の数量を確保することを期した訳であります。さうして之を各町村に割当を致し各町村毎に又其の確保を期することに相成つて居る訳であります。そこで其の方法と致しましては第一は技術方面の改善でございます。即ち耕種の改善で耕種の改善に関する基準並に施肥基準等を設定致しましてそれに依つて増産を図ることになつて居ります。第二は土地の問題でございます。之に付きましては空閑地並に荒蕪地の活用それから開墾並に耕地改良次の第四桑園の整理是等に依って食糧の増産を期して居る訳であります。空閑地並に荒蕪地の活用は本県下に於きましては相当の面積があるやうでありまして其の一部は既に実施を致して居るのでありますが尚ほ相当の余裕もありますので各部落会町内会或は各種工場学校等の諸団体の奮起に依りまして一坪の土地も残さずに食量の増産に振向けて行くと云ふことで色々奨励助成を致して居る訳であります。尚ほ開墾並に耕地改良桑園整理等に付きましては農林省の助成等の方針に基きまして此の表に示してあるやうな助成の下に出来るだけ甘藷或は馬鈴薯其の他食糧となる農産物の増産に振向けることに相成つて居るのであります。第五に労力の増強の問題であります。労力の不足は今更茲で申上げるまでもないのでございまして之に付きましては相当他府県からも労力を移入して居つたのでありますが現下の情勢に於きましては之を十分に期待することは出来ないのでございます。どうしても自給自足の計画を徹底しなければならないと考へるのであります。そこで其の合理化の第一と致しまして農繁期に於ける共同作業の徹底でございます。之に付きましては県下四百五十の農事実行組合を指定致すと共に労力調整指定町村として二十箇町村を指定致しましてそれ〴〵共同託児所或は共同炊事或は勤労奉仕等の諸施設を包含致しまする共同作業の徹底を期して居る次第であります。次は女子の農業動員並に学生生徒児童の農業動員又工鉱業労務者帰農動員でございます。是等に依つて幾分でも労力の増強を期したいと考へて居るのでありますが特に学生生徒児童の農業動員に付きましては文部省農林省の御協議の下に特に詳細なる御指示がありました。之に依りまして各関係方面で其の計画を致して居る訳であります。尚ほ本年度特に注目すべき問題は三十日だけは学業を廃して余分に其の労力を勤労の方面に振向けてもそれは授業をしたものと看做すと云ふやうになつて居りまして之に付きましては学校方面と農会其の他各市町村方面と連絡の下に既に御実施に相成つて居るやうな状態でございます。 工鉱業方面の労務者動員に付きましては平和産業を主として二週間以上自家農業に服せしめる外他の労力不足方面に応援を致すことゝ相成つて居りまして是も各工場と各農村方面との連絡の下にそれ〴〵計画が進められて居るのであります。尚ほ此の外労力の能率増進の為に共同託児所並に共同炊事の奨励を致して居る訳であります。其の次は肥料の増産の問題でございます。金肥の増産は電力其の他資源の関係から致しまして此の増産を期待することは非常に望みが薄いのでございまして是は極力自給肥料の増産に依らなければならないのでございます。そこで第一と致しましては木灰の蒐集に依りまして加里肥料を幾分でも補足さして行かう斯う云ふ風に致して居ります。其の次は都市方面の御協力に依りまして特に都市家庭婦人の職域奉公と致しまして厨芥雑芥と云ふやうに塵芥を区別して其の厨芥は家畜の飼料特に豚の飼料と致します。又雑芥の方は之を堆肥化することに依りまして之を全国的に計算致しますと豚百万頭堆肥七百万貫の増産は優に出来るであらうと云ふ風に言はれて居るのであります。是は特に農村の青年団其の他の団体と都市の家庭とを結び付けた計画に依らなければならないと考へるのでありまして実際に今県下にも実施をされて居るのでございます。それから下水泥土の肥料化並に草刈を奨励致しまして是も堆肥の増産に協力致すことゝ相成つて居ります。 以上は大体の要綱でございまして是が為には県の経済部農産課に本部のあります食糧農産物指導班或は農村に於ける篤農家を中心と致しまする食糧増産実行共励委員或は内原の訓練所に於て訓練を経て来ました農業報国推進隊の設置等に依りまして各方面の下に以上のやうな要綱の趣旨徹底並に指導率先垂範と云ふことに努めて居るのであります。是が大体増産方面の要領でございます。次に其の一面と致しまして節米の問題でございます。是は米を有難く思ふと云ふことが勿論第一でございますが其の実施の方法と致しましては代用食混食の励行或は間食の廃止完全咀嚼の励行雑炊粥食の励行共同炊事栄養食の普及さう云ふ方面に付きまして或は部落会町内会は常会に於て是が徹底を期する或は学校を通じ或は婦人団体の活動に依りまして少くとも全国に於て百万石以上の節米の徹底を期すると云ふ意気込でそれ〴〵御協力を願つて居る訳でございます。此の方策の大体の要綱は以上の通りでございますが詳細は此の印刷物に依りまして御了知を願ひまして十分の御指導と御協力を御願ひする次第でございます。 次に昭和十六年度の国民貯蓄奨励方策でございます。是も印刷物がありますので極く概要だけを申上げたいと思ひます。本年度に於きまして政府は国債消化の資金と致しまして七十五億円生産力拡充資金と致しまして六十億円を要するので随て一年間に増加を要する国民貯蓄の目標額としては百三十五億円と相成つて居る訳であります。それで本県の割当は八億円と決定を見たのであります。併しながら昨年即ち十五年度の実績はどうかと申しますと洵にお恥しい話でありますが其の八億の約半数位しか達して居ないのであります。そこで大蔵省の方ではもう少し目標額を減したら宜いではないかと云ふやうな話もあつた位でありますが本県の実力から申しましても又国民貯蓄奨励方策から申しましても是が減額と云ふことは洵に面目ない次第であります。之に付きましては色々の事情はございまするが本年は全力を尽して目標を達成するやうに考へて居るのであります。それで三月には国民貯蓄達成委員会を組織致しますと共に各職場に於て又各地域に於て御世話を願ひします国民貯蓄達成実行委員を数千名御委嘱致し各方面の御協力を願ひますと共に具体的方策を決定することに相成つたのであります。 国民貯蓄奨励方針の要点を申上げますと第一は国民貯蓄組合の拡充強化でございます。是は本年三月に国民貯蓄組合法と云ふ法律が出まして近く是が実施に相成ることになつて居ります。是は免税或は其の指導方面に付きまして特に御考慮が払はれて居る訳でありまして之を中心と致しまして貯蓄の増加を期さうと云ふことに相成つて居ります。今までの組合の成績に再検討を加へますと共にまだ組合の出来て居ない所には其の設立を要望致しまして県民一人残らず此の組合を通じて貯蓄をするやうに御願ひしたいと考へて居るのであります。第二は貯蓄標準の適正化でございます。今までの実績を見ますと或は五十銭均一或は一円均一と云ふやうに洵に申訳的の貯蓄でございましたが今回は各人の収入資産其の他の能力に応じまして精一パイの御奉公をして戴くと云ふ所まで進んで戴きたいと考へて居るのであります。第三は浮動購買力の吸収でございますが之に付きましては小額債券の発行或は郵便切手貯金の復活等に依りまして相当の効果を挙げられるのであります。其の他考へなければならないことは販売代金等の預金振替等でございます。此の方面に付きましては実施の方策を細目に於て詳細に書いてありますが特に天引貯金を考慮致して居るのであります。第四は勤労の強化と貯蓄の励行で是は御説明申上げるまでもないと思ひます。第五が金融機関の活動強化で今度は金融機関の積極的な活動を促すことに相成つて居ります。それ〴〵各金融機関毎に責任額を持つて戴きますと共に預金者に便宜を与へるやうな具体的方法を講じて戴くことになつて居ります。それと同時に本県に於て特に考へなければならない問題は本県に在ります会社工場の中で東京方面に本店がございますと東京の方に預金されると云ふこともあります。是は出来るだけ県の貯蓄奨励の方策に御協力を願ふと云ふ意味から本県の金融機関を御利用願ふことゝし之に付ても相当積極的な御活動を御願ひすると云ふことになつて居ります。第六が貯蓄に対する障碍の除去でございますが此の方面に付きましては苟くも斯かる言動をなす者は徹底的に取締を励行することに相成つて居ります。大体以上のやうな要点を心構へと致しまして今度奨励を致して行くことに相成つて居るのでありますが今申上げましたのはほんの抽象的のことでございます。別の印刷物にございますやうに各官公署学校工場会社商店或は各種団体部落会町内会さう云つた各方面毎に細目を決定致しまして是が強力なる遂行を御願ひして居るのでございます。今申上げました外に国民貯蓄の性質と致しまして長期の貯蓄でなければならぬと云ふことは勿論でございますし尚ほ是が徹底を期します為には源泉に於て貯蓄させると云ふことが特に必要でございますので此の方面に付きましては細目の中に特に天引貯蓄と云ふ特別の方法を講じて居る訳でございます。之に依りまして八億の目標達成を期して居るのでございますのでどうぞ此の点に付きましても御指導御協力の程を切に御願ひ申上げる次第でございます。 ○議長(寺島健君)只今御指示になりました二つの事項は現下の状況に於きまして最も緊要なことゝ存じます。お互に御指示の事項の徹底的完遂の為に御協力を御願ひ致したいと存じます。 (大政翼賛会神奈川県支部「第一回協力会議議事録」(昭和十六年)伊勢原市役所蔵) 〔注〕別冊省略。 四九 興亜奉行日新方策実施要綱 十六振第四六号 昭和十六年一月二十七日 大政翼賛会神奈川県支部理事総務部長 各市町村長殿 各警察署長殿 興亜奉公日新方策実施ニ関スル件 興亜奉公日新方策実施要綱左記ノ通決定相成候ニ付テハ本運動ノ実施ニ当リテハ大政翼賛会県支部ニ於テ追テ具体的強化徹底方策ノ決定有之ヘクト被存候モ重点主義タル「勤労ト増産」ノ趣旨ニ鑑ミ時局下重心トナルヘキ諸種運動ノ強力ナル実践展開ニ意ヲ用ヒ夫々ノ地方ノ実情ニ即シ時宜季節ニ応シ自粛自省従来ノ運動ニ断乎タル刷新ヲ加へ一ニ実践ニ依リ積極的努力ヲ傾注シ一段ノ強化徹底ヲ期シ以テ大政翼賛ノ誠ヲ効ス様致サレ度尚運動ノ実践ニ関シテハ特ニ部落会町内会其ノ他常会ノ申合ニ依リ有効適切ナル方策ヲ決定ノ上之カ実践強化ニ努メラレ度此段及依頼候 追テ貴管下ニ於ケル本運動ノ周知徹底実践強化ニ付テハ貴職ヨリ充分ニ御手配相煩度因ニ右実践事項トシテハ末尾記載参考例参照ノ上然ル可ク御配慮相成度申添候 記 興亜奉公日新方策実施要綱 一 趣旨 興亜奉公日ハ昭和十四年九月一日ヲ以テ実施シ爾来此ノ日ハ国民ノ自粛自省ノ日トシ相互ニ戦場ノ労苦ヲ偲ヒ大政翼賛ノ誠ヲ致シ以テ之ヲ日常生活ニ於ケル恒久実践ノ源泉タラシムヘク之カ普及徹底ニ努メタリシモ一部ニハ今尚銃後奉公ニ遺憾ナルモノナシトセサルヲ以テ今回大政翼賛会ノ決定ニ基キ本県ニ於テハ一層興亜奉公日ノ趣旨ヲ徹底シ真ニ一億一心之カ実践ヲ期シ所期ノ目的ヲ達成セントス 二 実践事項 興亜奉公日ニ於ケル国民ノ実践ハ重点主義トシテ「勤労ト増産」ノ日タラシムルト共ニ其ノ季節地方ノ実情並ニ時局下ノ運動ヲ考慮ニ加へ反省ト実践ノ精神ヲ籠メテ積極的努力ヲ傾注スルコト 三 実施方策 (イ) 一般ノ方策 興亜奉公日ノ真義徹底ニ努メ特ニ部落会町内会等ノ常会ニ於テ之カ実践強化ヲ図ルコト (ロ) 官公署ノ方策 官公署ハ率先垂範ノ実ヲ挙クルコト (ハ) 会社工場銀行商店等ノ方策 各々実行ノ申合ヲ為シ実情ニ即シテ奉公日ノ実践ヲ期スルコト (ニ) 学校各種団体ノ方策 夫々興亜奉公日ノ趣旨徹底ニ努メ之カ実践ヲ強化スルコト 実施事項参考例 一 空閑地ノ利用開発 二 共同訓練ノ実施 三 心身ノ鍛錬 四 貯蓄ノ強化励行 五 節米ノ強化励行 六 銃後援護ノ強化 七 其ノ他成ル可ク奉公日ニ於ケル休日ヲ廃シ「勤労ト増産」ノ趣旨ニ副フ (「大政翼賛」(昭和十五-十八年)伊勢原市役所蔵) 五〇 神奈川県農山漁村経済更生整備計画樹立要綱 十六農政第二一二八号 昭和十六年五月十九日 経済部長 仙石原村長殿 農山漁村経済更生計画ノ整備ニ関スル件 農山漁村経済更生計画ノ樹立実行ハ昭和七年以来九ケ年ヲ経過シ来リ候処輓近我国ニ於ケル産業経済其ノ他諸般ノ情勢殊ニ今事変ヲ契機トスル戦時経済体制ニ即応シ農山漁村ヲシテ克ク経済更生ノ実ヲ挙ゲ以テ其ノ課セラレタル使命ノ遂行ニ遺憾ナカラシムルコトト共ニ国力ノ源泉タル農山漁村ノ基礎ヲ確立培養シ以テ長期建設ノ国策遂行ヲ完カラシムル必要有之嚮ニ中央ノ農林計画委員会ニ於テ農林大臣ノ諮問ニ対シ慎重審議ノ結果答申セラレタルモノニ基キ別冊「農山漁村経済更生整備計画樹立要綱」ヲ決定致候ニ付テハ既ニ計画ノ樹立ヲ了シタル町村ニ対シテハ右方針ニ基キ速ニ之ガ増補改訂ヲ行フト共ニ今後樹立スベキ町村ニ対シテハ従来ノ「農山漁村経済更生計画樹立要綱」ニ依ルノ外方針ニ則ラシメ以テ長期建設下ノ新事態ニ対処スベキ農山漁村経済更生計画ノ整備ニ付配意相成度依命此段及通牒候也 〔別冊〕 「昭和十六年三月農山漁村経済更生整備計画樹立要綱神奈川県経済部」 農山漁村経済更生計画整備方針 一 整備ノ要旨 経済更生計画ノ樹立実行ハ啻ニ農山漁村又ハ農山漁家各個ノ経済ノ建直シヲ図リ其ノ収支ノ均衡ヲ期スルニ止マラズ進ンデ東亜建設ノ新経済体制ニ即応シ農業報国ノ精神ヲ昂揚シ農山漁村ヲシテ其ノ課セラレタル各般ノ任務ヲ完全ニ遂行スルト共ニ更ニ進ンデ国力ノ源泉タル農山漁村ノ基礎ヲ確立培養スルコトヲ主眼トスルコト 二 組織ノ整備 ㈠ 実行基礎団体タル実行組合ノ整備強化ヲ図リ之レト農会及産業組合トノ一体的活動ノ実現ヲ期スルコト ㈡ 農会ノ経費及事業ヲ検討シテ機能ノ拡充強化ヲ図ルコト ㈢ 産業組合ノ農家全戸加入出資ノ増加貯金ノ奨励販売購買利用ノ各事業ノ拡充強化ヲ図ルコト 特ニ産業組合不振ノ町村ニ在リテハ此際根本的ニ之レガ立直シヲ計画シ将来ノ安定ヲ図ルコト 農会技術員ト産業組合職員トヲ相互ニ嘱託トシテ兼務セシムル等ノ方法ヲ講ジ両者ノ緊密ヲ図ルコト ㈣ 経済更生委員会ノ委員及各部ノ分担ハ必要ニ応ジ之ヲ改組シ之レガ整備強化ヲ図ルコト特ニ実行組合長ハ必ズ経済更生委員ニ加フルコト 経済更生委員会ノ部及其分担事項ハ次ノ通リトスルコト 統制部 計画ノ樹立及各部ノ統制督励ニ関スル事項 教育部 精神作興ニ関スル事項 生産部 重要農林水産物ノ増産農業経営ノ改善肥料農具其他資材ノ配給労力ノ需給調整等ニ関スル事項 経済部 販売購買金融土地等ニ関スル事項 社会部 生活刷新社会事業銃後援護施設等ニ関スル事項 ㈤ 町村内ノ各種機関及団体ハ経済更生委員会ノ統制指導ノ下ニ其ノ機能ヲ発揮セシムルコト ㈥ 部落常会ノ励行ヲ期スルコト 三 土地利用計画 ㈠ 農地ノ工場地又ハ住宅地等ヘノ利用変更ニ付テハ将来ニ於ケル農村人口ノ保有並ニ農家生活ノ安定其ノ他ノ事情ヲ考慮シ慎重ニ処置スルノ方法ヲ講ズルコト ㈡ 中堅農家ノ増強ヲ図ル為極力自作農ノ創設維持ニ努ムルコト㈢ 農地委員会ト協力シテ小作関係ヲ再検討シ特ニ小作料ノ適正化ヲ実行スルコト ㈣ 耕地ノ交換分ヲ励行シ作業能率ノ増進ト生産ノ増加ヲ図ルコト ㈤ 開田開畑暗渠排水客土床締等ノ耕地拡張改良事業ノ促進ヲ期スルコト ㈥ 農道林道溜池用排水路等ノ新設又ハ改修ノ促進ヲ期スルコト㈦ 空閑地ノ利用徹底ヲ期スルコト 四 労力調整計画 ㈠ 労力ノ調整ニ就テハ部落ヲ単位トシ農繁期ニ於ケル労力需給ノ基礎調査ヲ行ヒ之レニ基キ不足労力ハ共同作業ノ普及徹底ヲ根幹トシテ作業ノ繰上ゲ繰延べ整地作業ノ省略改良農具利用調整ノ徹底畜力利用等ニ依リ可及的其ノ町村内ニ於テ労力ノ自給ヲナス計画ヲ立テ尚不足スル労力ハ他ヨリ集団移動労力ノ請入レ計画ヲ為シ又余剰労力ハ他へ集団移動労力トシテ供出ノ計画ヲ為スコト ㈡ 部落毎ニ勤労奉仕班ヲ設ケ応召軍人遺家族ノ勤労奉仕ヲ行ヒ町村農会ニ於テ之レガ連絡督励ヲ行フコト ㈢ 必要ニ応ジ学校生徒児童ノ勤労奉仕ヲ計画スルコト ㈣ 部落ノ必要ニ応ジ改良農具ノ共同設備既存改良農具ノ合理的利用農繁期托児所共同炊事等ヲ計画セシムルコト ㈤ 協定賃金ノ実施ヲ励行スルコト ㈥ 軍需産業等ニ要スル労務者ノ送出ニ付テハ各部落ノ労力調整計画ニ基キ農業生産ニ必要ナル労力ノ確保ニ留意シ両者ノ間ニ於ケル調整ヲ図ルコト 五 重要農林水産物増産計画 ㈠ 国ノ増産計画ニ基キ県ヨリ割当ラレタル米麦甘藷馬鈴薯等重要農産物ノ増産ニ関シテハ之レヲ各部落ニ割当テ之等ノ栽培反別ノ確保及耕種改善基準農地開発計画等ヲ決定シ極力増産ノ遂行ヲ図ルコト 増産目標ハ充分当業者ニ認識セシムルコト ㈡ 其ノ他特ニ奨励セラレツヽアル南瓜蕎麦大小豆苧麻牛豚鶏兎繭及其ノ町村ノ特産物ニ関シテハ他ノ作物又ハ作業トノ関係ヲ考慮シ増産目標ヲ定メテ計画的ニ之レガ実現ヲ図ルコト ㈢ 山村ニ於ケル木材木炭ソノ他林産物ノ計画的増産ノ遂行ヲ期スルコトヲ中核トナス生産計画ヲ樹立シ之レガ実行ヲ確保スルコト尚土地利用ノ集約化ヲ図リ力メテ時局ニ於テ需要セラルヽ林産物ノ増産ニ努ムルコト ㈣ 森林組合ヲ整備強化シ森林トシテ経営スベキ土地ニ付テハ施業案ヲ確立シ森林資源ノ保護培養ヲ期シ施業ニ必要ナル資金ノ借入村内森林所有者ノ維持創設ヲ図ルコト ㈤ 林道網ノ普及整備ニ努メ林産資源ノ経済的利用開発ヲ期スルコト ㈥ 漁村ニアリテハ沿岸漁業資源ノ維持培養沿岸漁場ノ整備調整漁業ノ協同経営漁業用資材ノ合理的使用漁業組合ノ整備強化ヲ図ルコト ㈦ 漁村ニ於ケル農耕地ノ設置ヲ計リ食糧自給ニ努ムルト共ニ漁村資源ノ維持培養ニヨリ漁家ノ安定向上ヲ図ルコト尚漁村ニ於ケル青少年及婦人ノ教育ニ努メ農民精神ノ陶冶ヲ図ルコト 六 肥料ノ消費調整 ㈠ 肥料配給計画ヲ樹立スル為メ市町村ニアリテハ作物別作付反別ヲ調査シ肥料ノ需要量ヲ明ニシ毎年一-七月及八-十二月両期ノ肥料割当ヲ受ケタル場合ハ上記資料ニ基キ公正ニ農事実行組合若クハ部落ニ割当量ヲ決定スルコト ㈡ 配給肥料ノミニテハ作物別需要量ニ充タザル場合多キヲ以テ之レガ不足ヲ補フ為メ緑肥栽培堆厩肥ノ改良増産灰ノ蒐集屎尿ノ利用等極力自給肥料ノ増産利用ニ努メ地力ノ維持増進ヲ図ルト共ニ配給肥料ニ対シテハ共同設備ヲ利用シ合理的配合ヲ行ハシメ施肥ノ合理化ヲ図ルコト 七 飼料其ノ他資材配給計画 飼料農具其ノ他必需物資ノ配給ニ関シテハ毎月町村内必要数量ヲ調査シ配給ノ円滑適正ヲ期スルト共ニ既設農用資材ノ合理的使用代用品ノ活用等ヲ促進シソノ最大ノ効果ヲ発揮スルニ努ムルコト八 部落団体ノ整備統制 部落ニ現存スル産業経済ノ各種団体ヲシテ部落会トノ連絡調整ヲ計リ且ツ生産集荷配給並消費等ニツキ最適単位組織タラシムル様整備強化シ之レヲ基礎トシテ町村計画ノ完全ナル消化運営ヲ図ルタメ部落計画ヲ樹立シ実行ノ確保ヲ期スルコト 九 農家経済安定計画 農村ニ於ケル土地其ノ他ノ資源ト包容戸数ノ適正ナル均衡ヲ期シ農家経済ヲ安定セシムル為自然的経済的諸条件ヲ等シクスル地域毎ニ特ニ農業組織ニ重キヲ置キ調査地区ヲ決定シ地区内各戸ニツキ農業労力ノ状況農業生産手段ノ状況農作業改善状況農業経営ノ成果土地資源開発ノ状況農家所得ノ状況等各般ノ基礎的事項ニ渉リ調査シ安定農家適正規模ノ標準ヲ定メ中堅農家ノ土地細分ヲ防止シ且ツ学校其ノ他ノ関係機関ノ協力ヲ得中堅農家ノ相続者タル子弟ノ教育ニ特別ノ指導ヲ加へ以テ中堅農家ノ維持安定ヲ図ルコト 一〇 満洲開拓民ノ送出計画 ㈠ 町村内ニ於ケル資源ト包容戸数トヲ考慮シ満洲開拓民ノ送出ヲ適当トスルカ又ハ其可能性アル農村ニ於テハ分村計画又ハ二三男ニ対スル青少年移民ノ送出計画ヲ立テルコト ㈡ 右ノ場合ニ於ケル移住民ノ土地及其ノ他ノ財産負債ノ管理及処分負債ノ償還方法ノ決定移住者残留家族ノ援護等ノ指導ヲ講ズルコト 一一 社会改善計画 ㈠ 高度国防国家建設ノ国策ニ協力シ節米消費ノ節約物資ノ愛用等生活用式ノ全面的刷新ヲ一層強化徹底スルコト就中冠婚葬祭ニ於ケル永年ニ亘ル虚栄的形式的陋習ヲ排シ贅沢全廃運動ノ徹底ヲ計リ我国独特ノ家族制度ノ美風ノ顕揚ニ努ムルコト ㈡ 農村体位向上ヲ計ルタメ農村主婦ノ衛生知識涵養住宅台所ノ改善出稼帰郷者ノ健康診断乳幼児ノ保健養護寄生虫ノ駆除並予防等ノ施設ヲ講ズルコト 一二 貯蓄ノ奨励負債ノ整理 ㈠ 国民貯蓄奨励ノ方針ニ対応シ各種ノ貯蓄ヲ一層励行スルコト特ニ農林水産物価ノ騰貴及賃金収入ニ依リ収入ノ増加シタル者ニ就テハ特別ノ貯蓄ヲ為サシムル様計画ヲ樹立スルコト ㈡ 公債ノ消化ヲ円滑ナラシムルタメ産業組合ノ貯金ハ可及的公債ニ振向ケルコト ㈢ 時局ノ為増加セル収入ハ出来得ル限リ負債整理ニ充当セシムルハ勿論一層負債整理組合ノ活動ヲ図ルコト 一三 銃後援護施設ノ徹底 応召農家ノ生活ノ安定ヲ期シ後顧ノ憂ナカラシムル為応召農家へノ勤労奉仕耕地ノ共同管理負債ノ整理自作農地創設召集解除者ノ生業援護傷痍軍人並ニ遺家族ノ保護其ノ他軍事扶助並優遇方法ノ徹底ヲ期スル等各般ノ軍事援護施設ノ活用ヲ図ルコト 一四 精神ノ作興 ㈠ 以上各般ノ計画ノ目的達成ハ一ツニ町村民ノ精神作興団体訓練ニ俟タザルベカラズ之レガ為メニハ従来奨励シ来ル精神綱領ノ外特ニ自我功利ノ念ヲ排除シ公益ヲ重ンジ国策ニ順応スル精神ノ昂揚ヲ図ルコト ㈡ 部落常会ノ励行共同収益地ノ設置等ニヨリ精神的結合ヲ一層鞏固ナラシムルコト ㈢ 農家中堅青年ノ養成特ニ相続人ノ職業指導上ニ留意シ中堅青年ヲ選ンデ講習会農民道場等ニ出席セシムル様助成計画ヲ立ツルコト ㈣ 特ニ農村婦人ノ教養訓練ニ力ヲ致シ各種婦人団体ノ連絡統制ヲ計ルコト 経済更生計画整備ノ実施方針 一 既ニ樹立サレタル実行中ノ経済更生計画ノ内容ヲ国ノ要求ニ基ク計画生産肥料資材等ノ配給計画及労力調整計画等ニ対応シ増補改訂スルコト 二 更ニ此際農家ノ経営規模ノ適正化ヲ図リ地方ノ維持土地水面及共同施設ノ整備並ニ部落内ノ産業経済団体ノ整備等ニヨリ一層農山漁村ノ基礎ヲ積極的ニ確立スルコト 三 本整備方針ハ既ニ指定セル町村ノ経済更生計画ノ増補改訂ニ関スル方針タルノミナラズ今後指定スル町村ニ付テハ従来ノ農山漁村経済更生計画樹立要綱ト共ニ経済更生計画樹立実行上ノ方針タラシムルコト 四 既ニ指定セル町村ヲ原則トシテ二ケ年間ニ亘リ計画ノ増補改訂ヲナサシムルノ方針ノ下ニ県ニ於テ指定スルコト 五 町村指定ノ順位ハ生産達成上必要ナル町村ヨリ順次之ヲナシ地方「ブロツク」的ニ一地方ノ町村ヲ全部指定シ順次他ノ地方ニ及ボスコト 六 整備計画ハ産業生活等ノ状況ニ付考究シ地域的総合的ニ実施スルヲ適当トスルヲ以テ整備町村選定ニ当リテハ自然的経済的諸条件ヲ同ジクスル近隣数ケ町村又ハ郡単位等ニテ整備地区ヲ決定シ「ブロツク」的ニ全地域内ノ町村ヲシテ整備方針ニ基ク計画樹立町村タラシムルコト 七 整備計画樹立ニ当リテハ其ノ地域並町村ノ特異性ヲ活スニ努ムルハ勿論ナルモ国及県ノ計画トノ総合性ニ付遺憾ナキヲ期スルコト 八 整備計画樹立ニ当リテハ地域内各町村ノ共通重要事項ニツキ地域整備計画ノ大綱ヲ決定シ各町村ニアリテハ大綱ニ即応シ自村計画ノ増補改訂ヲナシ其ノ他各項ニツイテハ整備方針ニ基キ独自ノ整備計画ヲ樹立スルコト 九 指定ヲ受ケタル町村ニ於テ樹立又ハ増補改訂セル経済更生計画ハ県経済更生委員会ノ審議ヲ経テ知事之レヲ決定スルコト (仙石原村役場「振興書類」(昭和十六年)箱根町役場蔵) 五一 輸送力強化協力に関する件要請 昭和十六年七月十七日 大政翼賛会神奈川県支部長(印) 市町村支部長殿 輸送力の強化協力に関する件 独ソ開戦を契機とする世界情勢の急変に際し内外の時局は真に重大化し国内諸体制の整備確立は一刻も忽せになし得ざる秋と相成候就中近時旅行者の激増に依り交通機関は混雑を極め為に重点輸送力に影響する所尠しとせず此際全国民を挙げて正しき時局観に立ち国家に輸送力を捧ぐべき認識を透徹せしむるは緊迫せる新段階に即応する重要なる処置と思惟仕候 就ては国家の輸送力を減退せしむべきが如き左記事項は部落会長隣組長を通じて積極的に抑制中止せしむる様至急御手配相成度候 追而部落会長隣組長宛協力要請書(回覧板用)同封致置候に付申添候 記 旅行等の制限協力に関する事項 ㈠ 登山海水浴避暑等の旅行にして輸送能力に影響するものは停止せしむること ㈡ 団体視察参拝旅行等は自発的に取止めしむる様自粛を求むること ㈢ 学生生徒の旅行一般人の帰省旅行等も見合さしむる様協力せしむること ㈣ 勤労奉仕等も近接地を撰定し遠距離交通機関の利用を避けしむること ㈤ 運動競技講習会等も汽車利用のものは主催者をして見合さしむる様協力せしむること ㈥ 其他不急なる個人的汽車旅行を差控へしむる様誘導すること㈦ 停車場に於ける送迎の廃止方自粛を求むること ㈧ 個人的所要並に贈答等に為さるゝ輸送品を積極的に見合さしむる様協力せしむること ㈨ 郵便小包暑中見舞不要なる通信も輸送力に影響あることを認識せしむること (「大政翼賛」(昭和十五-十八年)伊勢原市役所蔵) 五二 神奈川県郷土芸術振興資料調査に関する件依頼 昭和十六年八月一二日 大政翼賛会神奈川県支部 庶務部長兼組織部長(印) 各市町村支部長殿 神奈川県郷土芸術振興資料ニ関スル件 大政翼賛運動ハ政治経済文化ノ刷新ト興隆ヲ要請致居就中文化ノ興隆ハ地方文化ノ発揚ニ俟ツモノ多ク本県トシテモ特ニ此点ヲ考慮シ既ニ神奈川県文化翼賛連盟ノ結成ヲ見着々生活文化ノ建設ニ努力セラレツヽアルノ実情ニ御座候就テハ之ガ振興ノ為ニ県下伝承芸術ノ振起活用ハ欠ク可カラザル事ニテ古クヨリ伝ヘラルヽ其ノ土地ノ芸能ニハ我国本来ノ民族文化ノ象徴サへ見出サルヽモノニ御座候此意味ニ於テ本支部ハ文化翼賛連盟ト相謀リ今秋ヲ期シ「神奈川県郷土芸能祭」ヲ開催シ其ノ存在ト価値ヲ恰ク江湖ニ紹介シ今後ノ振興ニ資シ度ト存候就テハ御多用中恐縮乍ラ右ノ趣旨御賛同ノ上貴支部管内ニ於ケル郷土芸術ヲ御調査ノ上左記要領ニヨリ折返シ御一報煩度其ノ御報告ハ取纒メ整理ノ上「神奈川県郷土芸術資料」トシテ印刷保存致ス様相成筈ニ御座候 尚郷土芸術トハ俚謡能楽民謡人形芝居踊其ノ他之ニ準ズルモノヲ指称スル次第ニ付為念申添候 凡例 (「大政翼賛」(昭和十五-十八年)伊勢原市役所蔵) 五三 木灰供出強化運動に関する実施要綱 昭和十六年十一月六日 大政翼賛会神奈川県支部 庶務部長兼組織部長(印) 各郡市町村支部長殿 木灰供出強化運動ニ関スル協力方依頼ノ件 標記ノ件ニ関シ今般神奈川県農会ニ於テ別紙実施要項ニ依リ食糧増産ノ重要資料タル加里肥料補給ノ一助トシテ木灰ノ供出強化ノ運動ヲ実施スルコトヽ相成本支部ハ之ニ協力致ス事ニ決定候ニ付テハ貴支部ニ於テモ同運動実施要項ニ基キ農会其他ノ関係団体ト充分連絡ノ上本運動ノ目的達成ニ御協力相成度特ニ実施ニ当ツテハ構成員ヲ動員シ部落会町内会隣組ノ常会等ヲ通シテ格別ノ御配意相成度此段及御依頼候也 〔別紙〕 木灰供出強化運動実施要項 一 主催 神奈川県農会 二 協力 大政翼賛会神奈川県支部 農業報国連盟神奈川県支部 産業組合中央会神奈川県支会 神奈川県信販購組合連合会 神奈川県青少年団 愛国婦人会神奈川県支部 大日本国防婦人会神奈川地方本部 神奈川県肥料協会 神奈川県塵芥灰配給組合 三 後援 神奈川県 四 蒐集目標 百十五万貫(来春迄) 五 期日 昭和十六年十一月一日ヨリ開始 六 地域 県内及市町村 七 実施事項 ㈠ 県協議会 (県農会ニ於テ計画スルコト) ㈡ 郡市協議会 (郡市農会ニ於テ県協議会ニ準ジテ計画スルコト) ㈢ 町村常会 (市町村ノ指示ニ基キ協議計画スルコト) ㈣ 隣組常会 (町内会ノ指示ニ基キ協議計画シ特ニ婦人部ニ徹底ヲ計ルコト) (注意)以上各協議会等ニハ各上級機関ヨリ出席シ指導督励スルコト ㈤ 県督励 (県農会ニ於テ中央督励ニ準ジテ計画スルコト) ㈥ 郡市督励 (郡市農会ニ於テ中央督励及県督励ニ準ジテ計画スルコト) ㈦ 趣旨書作製配布 ㈧ ポスターノ作製配布 ㈨ ラヂオ放送 (一般放送 政府時間 ニユース放送) (一〇) 各関係団体ノ機関雑誌及新聞ト連絡 (一一) 関係官庁ヨリ各関係機関ニ通牒 〔一二) 各関係団体ヨリ各系統団体ニ通牒 (一三) 回覧板ノ利用 (一四) 一般新聞社ト連絡 (一五) 優良事績ノ調査発表 (一六) 農村ニ対シテモ灰ノ蒐集利用強化ニ関シ督励 (一七} 其他各地方ノ実情ニ即シ適当ナル事項 八 実行方法 各市町村各市町村農会主唱シ市町村警防団婦人会学校青少年団等ト連絡シ左記事項ヲ実施スルコト但シ左記ハ実行方法等ノ一例ナルヲ以テ実行ニ当リテハ各地方ノ実情ニ即応シ最適当ナル方法ニ依ルコト ㈠ 各町村常会及隣組ヲ通ジ各戸ニ趣旨及実行方法ヲ通達スルコト ㈡ 各国民学校中等学校ノ生徒及青少年団等ヲ通ジ各家庭ニ趣旨及実行方法ヲ通達スルコト ㈢ 各戸ヲシテ古バケツ火消壷甕等適当ナル容器ヲ備付ケシメ毎日生産セラレタル木灰ヲ(煉炭灰石炭灰豆炭灰ヲ除キ)其ノ中ニ集メ完全ニ消火セシムルコト ㈣ 右ニ依リ完全ニ消火シタル木灰ヲ石油箱等ノ中ニ貯蔵セシムルコト ㈤ 右ニ依リ貯蔵シタル木灰ヲ毎月興亜奉公日(雨天順延)ノ午前中ニ隣組ヲ通ジ各市町村内ノ一定ノ場所ニ持出サシムルコト ㈥ 市町村農会ハ県農会及郡市農会ト連絡シ近隣村農会ノ協力ヲ受ケ予メ作成シタル蒐集計画ニ基キ毎月興亜奉公日ノ午後右ニ依リ持出サレタル木灰ヲ蒐集シ木灰仮置場ニ集荷スルコト 此ノ際婦人会学生生徒及青少年団員ヲシテ勤労奉仕セシムルコト ㈦ 集荷セラレタル木灰ハ県農会ト連絡シ適当ナル方法ヲ以テ公平ニ配給セシムルコト ㈧ 官衙学校及会社ニ於テ生産セラレタル木灰モ前記ニ準ジ供出スルコト (「大政翼賛」(昭和十五-十八年)伊勢原市役所蔵) 五四 戦時下仙石原村年末年始対策要綱 仙収第二六四八号 大政翼賛会仙石原村支部長石村喜作 昭和十六年十二月十一日 村常会員各位殿 年末年始対策要綱通知ノ件 年末年始対策要綱ハ別紙ノ通ニ候条現下ノ重大ナル時局ノ推移ニ鑑ミ部落並ニ団員一般へ之ガ徹底方特ニ御配慮相成度此段及通知候也 〔別紙〕 年末年始の対策要綱 聖戦こゝに六年有史以来の一大難局に直面しつゝ昭和十七年の新年を迎へるのである。 一億国民は真に時局の重大さを認識し更に決意を新にして一意難局の突破に当らねばならぬ。 従つて年末年始に際しては各自の生活に一層の緊張を加へ従来やゝもすれば起りがちなる遊楽的風潮を一掃すると共に簡素にして明朗且つ剛健なる必勝態勢下の新年に臨ますとするものである。 実施内容 一 虚礼や無駄の徹底的排除 忘年会新年会等の会合歳暮年始等の贈答及年賀状年頭の廻礼等は一切差控へ特に服装等は努めて簡素にすること 二 年末年始用品は最少限度に 年末年始用品は極力物資の節約に努め特に門松〆飾等をしつらへる場合は極めて簡素を旨としまた食糧品等は配給による消費規正を厳重に守り苟も買溜浪費等の絶対になき様心掛けること 三 物を買ふより先つ貯蓄 「百七十億貯蓄」の新目標は是が非でも達成せねばならぬ従つて賞与其の他の収入は極力貯蓄にふり向け経費を極度に切詰めて更らに年末年始用品のみに限らず新調新規購入等は絶対に見合せ貯蓄奉公に邁進すること 四 行楽旅行は絶対に廃止 年末年始の休暇に於ての行楽旅行は勿論不急不要の旅行は絶対に廃止し更に小包其の他の託送荷物等も極力差控へ鉄道輸送力の緩和に協力すること 五 隣保協同力強く和やかに 必勝態勢下の新年にふさはしく力強く和やかに隣組や部落会を中心に明朗且つ健全なる団体的娯楽行事を行ひ団欒を通じて近隣との結束を強め一朝有事の際に備へること (仙石原村役場「振興書類」(昭和十六年)箱根町役場蔵) 五五 足柄上郡仙石原村常会要綱(一-四) ㈠ 仙石原村常会要項 昭和十六年二月六日自午後七時 至午後九時 一 一同敬礼 一 宮城遥拝 一 黙祷 一 村是朗誦 一 伝達事項 ⑴ 大政翼賛実践要綱決定ノ件 別冊神奈川県総動員第十号表紙裏ノ通リ六項目ノ実践要綱ガ決定サレマシタ ⑵ 本年度農業ノ重要問題 高度国防国家ノ完成□軍民ノ食糧確保ガ重要デアリマシテ農林省デハ五ケ年計画デ四十七万町歩ノ水田可能地ト百十五万町歩ノ畑可能地ヲ取敢ズ水田二十万町歩畑三十万町歩ヲ開墾スルコトニ決定シマシタ ⑶ 国民学校実施ノ件 本年四月ノ新学期カラ国民学校制ガ実施サレマシテ全国一斉ニ看板ガ国民学校ト換ヘラレマシテ制度ヤ教育ノ内容ガ根本的ニ刷新改善サレマス 其内容ハ初等科六ケ年高等科二ケ年ニ分レテ何レモ義務教育デスカラ必ズ終了シナケレバナリマセン ⑷ 下部組織指導者訓練講習会訓練生推薦ノ件 今回大政翼賛会本部及大日本報徳社ニ於テ講習会ヲ開催セラルヽヲ以テ左記要項ニ依リ各部落ヨリ二月八日迄ニ適任者選定セラレ度其ノ中ヨリ村長ニ於テ推薦ス (イ) 部落会ノ実践運営ニ熱意アル人物ニシテ少壮身体強健ナルモノ (ロ) 旅費実費□村負担 (ハ) 講習期間 一週間(大政翼賛会本部主催水戸市) (ニ) 講習期間 十五日間(大日本報徳社主催掛川町) ⑸ ラジオ聴取ノ件 ラジオ無届聴取者ナキ様部落民ニ注意スルコト 一 報告事項 ⑴ 国際情勢ニ就テ 松岡外相並陸海相議会答辞ノ要点 一 協議懇談事項 ⑴ 部落会相互視察ニ関スル件 各部落ニ於テ相互ニ視察シ其長所ヲ採リ短所ヲ補フハ各部落会ノ発展上堅要ナルヲ以テ其実現ヲ望ム ⑵ 優良部落会選定ノ件 各部落会長ニ於テ優良部落ヲ別紙用紙ヲ以テ選挙セラレタシ ⑶ 国民健康保険組合設立ノ件 別紙通知書ノ通リ国民健康保険組合ヲ設立セルニ依リ同意書ニ所要ノ記入捺印ノ上来ル二月二十日迄ニ必ズ提出セラレタシ ⑷ 国債所有者報告ノ件 別紙ニ記入国庫債券報国債券貯蓄債券所有高報告セラレタシ ⑸ 二宮翁夜話精神ノ研究ニ就テ 毎月村常会ニ於テ二宮翁夜話ノ研究ヲナシ部落民ニ対シ其□□ノ普及ヲ図リ日常生活ニ実践セシムルコト ⑹ 其他必要事項 一 閉会ノ辞 〔注一〕 この六項目は次の通りである。 一 臣道の実に挺身す 即ち無上絶上絶対普遍的真理の顕現たる国体を信仰し歴代詔勅を奉体し職分奉公の誠をいたしひたすら惟神の大道を顕揚す 二 大東亜共栄圏の建設に協力す 即ち大東亜の共栄体制を完備しその興隆を図るとともに進んで世界新秩序の確立に努む 三 翼賛政治体制の建設に協力す 即ち経済文化生治を翼賛精神に帰一し強力なる総合的翼賛政治体制の確立に努む 四 翼賛経済体制の建設に協力す 即ち創意と能力と科学を最高度に発揮し翼賛精神に基く総合的計画経済を確立し以て生産の飛躍的増強を図り大東亜における自給自足経済の完成に努む 五 文化新体制の建設に協力す 即ち国体精神に基き雄渾高雅明朗にして科学性ある新日本文化を育成し内は民族精神を振起し外は大東亜文化の昂揚に努む 六 生活新体制の建設に協力す 即ち翼賛理念に基き新時代を推進する理想と気魄を養ひ忠孝一本国民悉く一家族の成員として国家理想に結集すべき科学性ある生活体制の樹立に努む 〔注二〕以下別紙省略。 ㈡ 仙石原村常会要綱 昭和十六年三月六日午後七時 一 儀礼 一同着席 宮城遥拝 黙祷 村是朗読 一 伝達事項 ㈠ 人口政策ノ確立 人口ノ減ツテ行ク国ハ必ズ滅亡シ人口ノ増シテ行ク国ハ漸次発展スルト言フ世界ノ情勢デアルカラ我国ノ毎年生レル二百十万余ノ産児ヲ(一ケ年ニ一割死亡)完全ニ保育シ又年々十四五万人死亡(日露戦死ノ二倍)スル結核患者(死亡者ノ約十倍百四五十万人)ノ撲滅ニ努メル為メ平素ヨリ心身ノ鍛錬ヲ怠ラズ昭和三十五年迄ニ内地人口一億ヲ確保シヨウト言フノガ人口国策ノ目標デアル ㈡ 国防保安法ニ就テ 国家ノ機密ガ外国ニ筒抜ケデアレバ戦争ハ必ラス負ケデスソコデ今議会デ国防保安法ト言フノガ出来テ御前会議枢密院会議閣議又ハ五相会議トカ議会ノ秘密会等ニ附議サレタ内容ヲ外国又ハ他へ洩ラスト死刑カ無期又ハ三年以上ノ懲役ニ処セラレル ㈢ 臨時農地等管理令ニ就テ 政府デハ臨時農地管理令ヲ本年二月一日公布セラレ今日ヨリ実施スルコトニナツテ居マス農地ノ潰レテ行クノヲ防グ為メ今後五十坪以上ノ農耕地耕作以外ノ目的ニ使用スル為メ他ニ売買譲渡スル場合ニハ原則トシテ地方長官ノ許可ヲ受ケルコトニナリマス又空閑地ノ利用ニ就テ法的根拠ヲ与ヘテアリマス即チ地方長官ハ空地ノ所有者ニ市町村ノ農地委員会ヲシテ耕作ヲ勧告サセ自分デ耕スコトガ出来ナケレバ外ノ者ニ耕作サセル様命令スルコトガ出来マス其ノ外賛沢ナ果物トカ値段ガ高クテ実用ニナラヌ物ヲ作ルコトヲ制限サレ時ニハ禁止サレルコトニナリマス ㈣ 臨時農地価格統制令ニ就テ 之ノ法モ二月一日カラ実施サレルコトニナリマシテ今後全国ノ農地ハ地租法ニヨツテ土地台帳ニ登録サレテイル賃貸価ニ一定ノ率ヲ掛ケタ価格ヲ超ヘテ取引スルコトガ出来ナイノデス其ノ率ハ去ル一月三十日農林省ヨリ全国府県郡市別ニ告示サレマシタ ㈤ 青年学校振興運動ノ件 本年四月一日ヨリ就学ノ義務ヲ有スル青年学校生徒ハ別表ノ通リデ有リマスカラ各部落会ニ於テ克ク義務制ノ主意ヲ徹底セシメ一人ノ不就学者モナイ様切望シマス ㈥ 大日本青少年団ノ新発足ニ就テ 去ル一月十六日文部大臣ガ団長トナツテ府県ノ団長ハ地方長官トシテ町村青少年団ヲ置キ其ノ区別ハ左ノ通リトス 青年団長青年学校長{青年団{普通団員 青年学校生徒及十四才乃至二十才ノ男子青年 幹部団員 幹部又ハ指導者トシテ加入スル二十一才乃至二十五才ノ男子青年 女子青年団 青年学校生徒及十四才乃至二十五才ノ未婚ノ女子青年 少年団長 小学校長 尋常小学校第三学年以上ノ小学児童団長ノ外ニ顧問審議員参与専門委員ヲ置キマス ㈦ 町村会議員等任期延長ニ関スル法律施行ノ件 昭和十六年法律第四号及第五号公布ニ相成現下内外ノ緊迫セル情況ニ鑑ミ国民間ニ不要ノ摩擦競争ヲ起スヲ避クル主旨ノ下ニ一ケ年間選挙ヲ執行セザルコトニシタル者ニツキ了承セラレタシ 二 協議懇談事項 ㈠ 馬鈴薯増産ニ就テ (種子用二千五百貫) 各部落ニ就テ開墾若シクハ空閑地ヲ利用シ馬鈴薯ヲ増産スルコト ㈡ 家計簿記帳者ニ新帳簿交付ノ件 家計簿ヲ記帳シタ者ニハ新帳簿ヲ村ヨリ交付イタシマス ㈢ 新入学児童ノ学用品購入ニ就テ 四月一日カラ新入学ノ生徒ガ有リマスガ学用品ノ購入ニツキマシテ新入学トカ或ハ進級セラレタ生徒ノ学用品ハ無理シテモ新調シテヤリタイノガ親心デアリマシヤウガ時局柄可成新調ヲ見合セテ兄姉ノ古カ或ハ親戚近所ノ下リ者ヲ以テ学童ノ誇リトスル様ニ家庭モ学校モ高唱シテ頂キタイノデス ㈣ 部落常会ノ運営ニ就テ 開会定刻ニ至ラバ必ズ儀礼伝達報告事項ヲ進行シ而シテ協議懇談事項ニ入ル前ニ貯金其ノ他ノ納金等取扱フ方法トシタ意見如何ニヤ ㈤ 優良町村ノ視察ニ就テ 部落会長優良町村ノ視察ヲ本月中ニ実施セントス部落会長故障アルトキハ会長ノ推薦ニ依リ其部落ノ熱心ナル者ヲ代理者トシテ認ムルコト 三 申合セ事項 四 二宮翁夜話ノ研究 常会ハ物心両方面ノ開拓ガ最モ必要デ其ノ精神方面ノ部門ヲコノ夜話ノ研究ニ依ツテ更生シテ行キタイト言フノデスカラ大変重要ナ事デス 五 常会歌合唱 六 閉会ノ儀礼 〔注〕別表省略。 ㈢ 仙石原村常会要綱 昭和十六年四月七日自午後七時三十分 至午後九時三十分 一 儀礼 一同着席 開会辞 宮城遥拝 黙祷 村是朗誦 一 伝達事項 ⑴ 戦時食糧増産並ニ節米運動実施ニ就テ 食糧ノ増産節米ニ関シテ数々伝達協議シテ居リマスガ尚一層部落民ニ徹底セシメ戦時食糧ノ確保ニ努メタイト思ヒマス (神奈川県総動員第十二号十六項) ⑵ 講会取締ニ就テ 昭和十六年二月二十日神奈川県令第十一号講会取締規則ヲ定メラレテ三月一日カラ施行サレマスカラ従来ヨリ講会ヲ設立シテ居ル者又ハ之レヨリ講会ヲ設立セントスルモノハ本令施行ノ日ヨリ六十日以内ニ届出デルコトニナツテ居ル(先般回覧板デ通知セリ)カラ必ラズ届出ヲ忘レヌコト 但シ届出用紙ハ便宜役場デ印刷シテアルカラ申出者ヘハ交付スル 一 協議懇談事項 ⑴ 肥料配給ニ関スル件 昭和十六年一月ヨリ七月迄ノ肥料ヲ別紙ノ通リ配給シタイト思ヒマス ⑵ 水稲種子消毒ニ関スル件 水稲増産ニハ病害ノ予防ガ最モ必要デスカラ種籾ノ消毒ヲ励行シテモライタイ尚方法ヤ薬ハ近ク各実行組合別ニ指導致シマス⑶ 木灰ノ蒐集ニ就テ 各家庭ノ主婦ハ毎朝木灰ヲ採ツテ火災ノ危険ナキ様又雨ニカカラヌヤウ保存シテ金肥ノ補足トシテモラヒタイ ⑷ 貸家貸間調査ノ件 本村ハ奥箱根ノ健康保養地トシテ避暑来遊者逐年賑フ盛況ヲ見季節ヲ前ニ避暑滞在ノタメ貸家貸間ヲ求メ役場ニ間合スモノ漸ク多シ之ニ伴ヒ村民中ニハ貸家ヲ備へ貸間ヲ営ムモノ亦多クヲ見ルハ観光地トシテ喜ブベキ現象ナリトス此際相互便宜ノタメ貸家貸間ヲナサントスルモノニ就キ予メ調査シ今夏避暑客ニ備へ出来得ル限リ仲介斡旋ノ労ヲ試ミントス 依テ部落内ニ就キ別紙用紙ニ依リ之ガ調査ヲ煩シ本月末日迄ニ当役場ニ御提出相成タシ ⑸ 部落常会長視察報告 杉山部落 中郡高部屋村 別紙視察報告書 ⑹ 金時祭ニ就テ 子供角力ヲ箱根山四校児童ニテ競技会ヲ施行シタキ希望ナルモ如何 ⑺ 申合セ事項 一 二宮翁夜話ノ研究 一 講演 一 常会歌合唱 一 閉会ノ辞 儀礼 〔注〕 別紙省略。 ㈣ 村常会要綱 昭和十六年十二月一日自午後七時 至午後九時 一 開会ノ辞 一 国民儀礼(宮城遥拝 祈念 村是朗誦 常会ノ誓) 一 伝達事項 ⑴ 一億前進の誓ひ樹立に就て 十二月一日の興亜奉公日は差し迫つた時局の重大性に鑑み全国民の決意を一層強化する為め「一億前進の誓ひを」道標に掲げて今次事変発生以来国を挙げて努力せられた生活戦の跡を反省すると共に更に前途の多難に対し従来に倍して一家と隣保が互に手を携へて万遺憾なき前進を力強く踏み出すことを要望する次第です 別紙大政翼賛臨時増刊号を熟読してください 一 実践事項 一 一億前進の誓ひの実行 ⑴ 貯蓄の強化 貯蓄の強化運動に関しては本年第七十七臨時議会に於て全国貯蓄目標を百七十億に増加した為め本年度に於て十二月より明年三月迄に八十億の貯蓄をどうでもせねばならぬので本村に於ても別表の通り各組合へ割当を増加した次第ですから目標額を極力達成する様にしてください ⑵ 金属類回収に就て (イ) 民間金属類特別回収(指定施設)は町村長より配付せられたる譲渡申込用紙に供出物件其の他所要事項を記入し期限迄に回収機関に譲渡の申込書二通を提出する事(仙石原村役場へ十二月五日迄に提出し取纒め送付す) (ロ) 一般家庭の金属類特別回収は十二月十日迄に各部落会長に於て工作物供出申込書を取纒め置く事 一 大政翼賛会推進員金属類特別回収勧奨委員委嘱書伝達 一 協議懇談申合事項 ⑴ 翼賛壮年団員内申ノ件 仙石原村翼賛壮年団ヲ結成スルニ当リ其年令ハ満二十一才ヨリ四十五才迄ノ男子ニシテ大政翼賛ノ実践者トシテ適当ナル者ヲ選ビ別紙用紙ニ所要ノ記入ヲナシ部落会長及在郷軍人会長ヨリ内申スルコト 人員ハ其ノ部落ニ現在スル人員ノ約半数以内トシ特ニ実践者トシテ適当ナル人物多数アルトキハ半数以上トナルモ差支ヘナシ⑵ 正月用糯米ノ配給ニ関スル件 本年度米穀国家管理制度ノ強化ニ伴ヒ消費者ニ対スル配給ハ全部政府所有米ノ払下ヲ得テ賄フ建前ト相成正月用糯米ノ一人当リ配給量ハ一キログラム(七合五勺)ノ範囲内ニ於テ行ハルベク内示有之候ニ付部落内世帯員名簿ヲ整理ノ上来ル十五日迄ニ別紙報告用紙ニ各戸ノ世帯員数報告相成度 但シ自家用保有米ヲ取持スル者ニシテ糯米ヲ所持スル者ハ除外スルコト ⑶ 一般家庭用酒類配給ニ関スル件 去ル十一月ヨリ実施セラレタル一般家庭用酒類配給ニ関シテハ切符制ノ実施ニ依リ円滑ニ行ハレツヽアルト察セラルヽモ右切符ハ記名者限リ有効ナルハ勿論他人ニ貸与又ハ業務者方面ニ融通スルガ如キ事アル場合ハ直チニ配給ヲ停止スベクニ付部落員ニ対シ指示相成度 ⑷ 正月用糯米供出ニ関スル件 本村ニ於ケル今年糯米作付反別三町一反四畝十六歩ニシテ之ガ実収高(十一月一日現在調)ハ三十五石ナリ依而上記ノ内ヨリ二石八斗ノ供出割当有タルニ依リ追而本村農会ヨリ発スル供出命令ニ依リ糯米作者ニ対シ供出セラル様示達相成度 但シ実収高一斗ニ対シ約八合ノ割 ⑸ 国民学校肥料汲取ニ関スル件 国民学校ノ肥料汲取希望者ハ十二月十日迄ニ仙石原村役場へ申出デ汲取方法ノ決定ヲ受ケラレタシ ⑹ 夜警施行ニ関スル件 昨年ハ警防団員ガ名簿順ニヨリ勤務セシモ種々ノ関係ニヨリ勤務ニ堪ヘザル事情ニアリ依テ之ガ処置如何ナルモノナルヤ 一 研究体験発表 山崎教化部長兼青年部長 鈴木経済部長 一 閉会ノ辞 敬礼 (仙石原村役場「村常会関係書類」(昭和十六-十八年)箱根町役場蔵) 〔注〕別紙、別表省略。 五六 大政翼賛会推進の報道網確立に関する件通牒 昭和十七年一月七日 大政翼賛会神奈川県支部長 大政翼賛会 市町村支部長殿 推進員ニヨル組織的報道網確立ニ関スル件 今回本部ヨリ左記要綱ニヨリ推進員ニヨル組織的報道網ヲ確立シ以テ各地方ニ展開セラレツヽアル翼賛運動ノ模範的事例ヲ交換シ運動ノ具体的方途ノ参考ニ資スルト共ニ併セテ推進員ノ積極的活動ヲ促進セシメ度トノ通牒有之候ニ就テハ右趣旨御諒承ノ上貴支部推進員中ヨリ適当ナル者一名報道責任推進員トシテ折返シ県支部宛推薦相成度尚左記ニ依リ活動セシメラレ度此段及通牒候也 記 一 貴支部推進員中一名ヲ報道責任者トシテ推薦セシメ氏名年齢職業学歴住所ヲ県支部宛報告スルコト 二 報道責任者ハ毎月ノ推進員ノ活動状況其他支部町内会部落会其他ノ団体並個人ノ模範的活動事例ヲ翌月五日迄ニ直接本部地方部及県支部宛報告スルコト 三 本部ニ於テハ右報告中適当ナルモノヲ本部会報ニ掲載シ又ハ随時事例集トシテ印刷配布ス 四 報告用紙封筒郵券ハ県支部ニテ負担 責任者決定報告次第送付ス (「大政翼賛」(昭和十五-十八年)伊勢原市役所蔵) 五七 翼賛壮年団員の立候補等取扱方針決定に関する件通牒 昭和十七年三月二十六日 神奈川県翼賛壮年団 名誉団長 近藤壌太郎 翼賛壮年団市町村名誉団長殿 役職員及団員ノ立候補等ニ対スル取扱方針決定ニ関スル件 今次行ハルヽ衆議院議員総選挙ニ際シテハ曩ニ「翼賛選挙貫徹運動壮年団実施要領」ヲ定メ詳細指示シタル所ナルガ飽クマデ右要領ニ従ヒ翼賛議会確立ノ実ヲ挙グル為又大日本翼賛壮年団トシテノ統制上ヨリ今回団ノ役職員及団員ノ立候補並選挙運動ニ関シ統制ヲ加フルコトヽシ本部ニ於テ左記ノ如キ方針ヲ定メタルニ付上述ノ趣旨ヲ十分御諒承ノ上同方針ヲ関係方面ニモ周知徹底セシメ之カ運用ニ関シ万遺憾ナキヲ期セラレ度及通牒候 記 大日本翼賛壮年団役職員及団員ニ対スル立候補等ノ取扱方針㈠ 立候補 一 各級団役員(名誉団長 顧問 参与ヲ除ク) 各級団本部職員 団員 (イ) 立候補ニ付予メ大日本翼賛壮年団長ノ承認ヲ受ケシムルコト (申請書ハ別紙様式ニ依リ当該道府県団長ヲ経由シテ提出スルコト当該道府県団長ハ別紙様式ニ依ル調書ヲ附シテ之ヲ進達スルコト) (ロ) 今次総選挙ノ目的ニ照シ厳選主義ヲ採ルコト (ハ) 承認ヲ受ケザルモ尚立候補セントスル者ハ辞職又ハ退団ノ上之ヲ為スコト (ニ) 推薦母体ニヨリ推薦セラレタルニヨリ立候補スルニ至リタル者ハ(イ)ノ承認ヲ要セズ顧問参与ニ準ジ当該道府県団長ヨリ報告スルコト 二 顧問 参与 立候補シタルトキハ当該道府県団長ヨリ前項ニ準ジタル調書ヲ附シ大日本翼賛壮年団長ニ報告スルコト ㈡ 選挙運動 一 各級団役員(名誉団長顧問参与ヲ除ク)及各級団本部長 (イ) 団統率及団務主宰ノ立場上他ノ候補者ノ為選挙事務長又ハ選挙委員トナルハ之ヲ遠慮スルコト但シ常務ヲ司ラザル理事(総務)ニ付テハ所属団長ノ承認ヲ得タルトキハ此ノ限ニ在ラザルコト 但団関係者ガ立候補シタル場合ニ限リ当該道府県団長ニ於テ特ニ支障ナシト認メ承認ヲ為シタルトキハ其ノ者ノ為ニ選挙事務長又ハ選挙委員トナルコトヲ得 二 各級団本部職員 (イ) 職務遂行ノ立場上他ノ候補者ノ為選挙事務長又ハ選挙委員トナルハ之ヲ遠慮スルコト若シ已ムヲ得ザル場合ハ辞職シテ之ニ当ルコト 但団関係者ガ立候補シタル場合ニ限リ当該道府県団長ニ於テ特ニ支障ナシト認メ承認ヲ為シタルトキハ其ノ者ノ為ニ選挙事務長又ハ選挙委員トナルコトヲ得 (ロ) 第三者トシテ演説又ハ推薦状ニ依ル選挙運動ヲナスハ可ナルモ努メテ翼賛議会確立ノ線ニ沿ハシムル様当該団長ニ於テ指導統制スルコト 三 団員 他ノ候補者ノ為選挙事務長若ハ選挙委員トナリ又ハ演説若ハ推薦状ニ依ル選挙運動ヲナスハ自由ナルモ努メテ翼賛議会確立ノ線ニ沿ハシムル様当該団長ニ於テ指導統制スルコト (「大政翼賛」(昭和十五-十八年)伊勢原市役所蔵) 〔注〕別紙省略。 五八 昭和十七年四月八日大詔奉戴日実施方策 昭和十七年四月四日 大政翼賛会神奈川県支部長 大政翼賛会 各郡市町村支部長殿 四月八日ノ大詔奉戴日実施方策ニ関スル件 四月八日ノ大詔奉戴日ハ曩ニ決定シタル実施要項中実施項目第一項乃至第四項(詔書捧読 必勝祈願 国旗掲揚 職域奉公)ノ実行ヲ期スルト共ニ更ニ別紙方策ニ基キ実施スルコトニ決定相成候条之ガ徹底方ニ付特ニ御配慮相成度此段及通牒候也 追而本運動ノ徹底方ニ付テハ夫々ノ機関ヲ経テ御配意相成コトヽ存候得共特ニ隣保班又ハ部落会町内会ヲ通ジテ本運動ノ実践ニ万全ヲ期セラレ度 尚実践事項解説ノ印刷物ハ貴支部宛本部ヨリ直送シアルニ付御配意相成度 当日ノラジオ放送ニ付テハ決定次第御通知可申上モ時日ノ関係上連絡不能ノ際ハ新聞報道ニヨラレ度 〔別紙〕 四月の大詔奉戴日実施方策 四月の大詔奉戴日は既に強調し来れる「承詔必謹」の精神に徹底し以て大東亜戦争完遂の基盤たるべき食生活を愈々強化し必勝の信念を固め大御心に副ひ奉らんため左記実施方策によりその趣旨を普く知らしめこれが具体化を図ることゝする。 実施方策 一 大詔に関する講話 四月八日午前六時三十分より十五分「国民の誓」の時間に於て大詔に関する講話を放送し全国民をして「承詔必謹」の精神の徹底を期すること。 一 実践事項 (イ) 翼賛選挙の貫徹 現下決戦下にも拘らず来る四月卅日を以て衆議院議員総選挙が敢て行はるゝ所以はその意義極めて深きものがある。国民はこの選挙の重要性に鑑み愛国の熱情を傾け清新強力なる翼賛議会の確立のため翼賛選挙を貫徹し以て大東亜戦争完遂に挙国邁進すべきである。 (ロ) 必勝食生活の実行 必勝の食生活の実行は決戦下極めて緊要である。この要請に応ふるには一面配給の円滑化のために協力するは勿論なるも他面国民は宜しく配給量の範囲に於て定量食の実行調理の工夫食べ方等の合理化により国民の栄養を高めると共に食膳感謝の習性に徹し必勝食生活を実行し以て大東亜戦争の完遂を期すべきである。 (ハ) 実践事項解説の放送 四月八日夜(時間未定)「常会の時間」に於て本項に関する解説の放送をなすこと。 〔別紙〕 必勝食生活の実行要目 一 戦時食の調理工夫 ⑴ 手許にある物出廻り豊富な品で工夫する ⑵ 残材料の再活用 ⑶ 炊き増しの工夫 燃料の節約 ⑷ 必勝食の励行 ⑸ 新興食糧の普及 ⑹ 偏食の是正 二 定量食の実行 ⑴ 配給量の計画消費 ⑵ 配給量中よりの非常用米蓄積 三 共同炊事の実行 ⑴ 隣組等に於ける主食の共同炊事 ⑵ 学校工場会社等の副食物共同炊事 ⑶ 非常炊出しの研究 四 食事方法の改善 ⑴ 完全咀嚼の徹底 五 食膳感謝 ⑴ 家庭に於ける食前食後の感謝 ⑵ 食堂に於ける食前食後の感謝の習慣樹立 (「大政翼賛」(昭和十五年-十八年)伊勢原市役所蔵) 五九 天長節国民奉祝実施要綱 昭和十七年四月八日 大政翼賛会神奈川県支部長 各郡市町村支部長殿 天長節国民奉祝実施要綱ニ関スル件 来ル四月二十九日ノ天長節国民奉祝実施要綱別紙(趣旨実施方法)ノ通決定相成候条可然御配慮相成度此段及通牒候也 〔別紙〕 天長節国民奉祝実施要綱 一 趣旨 皇威燦トシテ全世界ヲ光被スル世紀ノ大御代コヽニ天長節ヲ迎フルニ当リ謹ンデ聖寿ノ無窮ヲ寿ギ宏大無辺ナル聖恩ヲ欽仰シ奉ルト共ニ皇民一億愈々尽忠報国ノ精神ヲ振起シ大東亜戦争完遂ノタメ邁進スルノ決意ヲ固ムル趣旨ノ下ニ奉祝ヲ行フコト 一 実施方法 ㈠ 当日午前八時ヲ期シ「国民奉祝ノ時間」ヲ設定シ左記要領ニ依リ国民奉祝ノ途ヲ講ズルコト 尚「ラジオ」ハ同時刻ニ「国民奉祝ノ時間」ノ放送ヲ行フコト ㈡ 各家庭ニ於テハ「国民奉祝ノ時間」ニ夫々宮城遥拝ヲ行フコト ㈢ 市区町村ニ在リテハ市区町村民ノタメ神社学校公会堂等適当ナル場所ニ於テ祝賀ノ方法ヲ講ズルコト ㈣ 官公衙学校会社工場船舶等ニ於テハ奉拝式又ハ祝賀式ヲ行フコト ㈤ 官国幣社以下神社ニ於テ執行セラルヽ天長節祭ニハ成ルベク多数参列スルコト 尚神社ノ祭典ハ午前九時ヲ期シテ執行セラルヽ様取計フコト㈥ ソノ他ノ場合ニアリテハ国民各自「国民奉祝ノ時間」ヲ銘記シ同時刻ニハ各々在処ニ在リテ宮城遥拝ヲナスコト 附記 「国民奉祝ノ時間」ノ周知方法ニ就テ 1 「ラジオ」ハソノ禁止ナキ限リ午前八時ヲ期シ「国民奉祝ノ時間」ノ放送ヲ行フニヨリ之ニヨルコト 2 従来行ハレタル「汽笛 サイレン 鐘等」音響合図ニヨル周知ハ時局下禁止中ナルニヨリ国民各自ニ同時刻ヲ銘記セシムベキ方途ヲ講ズルコト 3 汽車汽船電車バス等ノ車中ソノ他集会ノ場合ニ於テハ乗務員又ハ司会者ハ「国民奉祝ノ時間」ヲ知ラスベキ方法ヲトルコト (「大政翼賛」(昭和十五-十八年)伊勢原市役所蔵) 六〇 大政翼賛会構成員と選挙に関する件通牒 昭和十七年四月十日 大政翼賛会神奈川県支部長 大政翼賛会 郡市町村支部長殿 翼賛会構成員ト選挙ニ関スル問題送付ノ件 本部ヨリ別紙翼賛会構成員ト選挙ニ関スル問題ニ付通牒有之候条送付候也 〔別紙〕 翼賛会構成員と選挙に関する問題 一 立候補の可否 ㈠ 役員の立候補 本部(総裁 副総裁 顧問 総務) 支部(道府県市町村支部長 常務委員 顧問 参与) 役員の立候補は本部たると支部たるとを問はず役員としての資格に於て立候補しても差支ない。 ㈡ 職員の立候補 本部(事務総長 局所長 部長 副部長 部員 書記) 支部(部長 部員 書記) 職員もその資格に於て立候補して差支ない。 ㈢ 推進員の立候補 推進員としての資格に於て立候補しても差支ない。 ㈣ 調査委員会委員本部参与中央地方協力会議長及会議員本部嘱託の立候補 其の資格に於て立候補して差支ない。 二 候補者の推薦届出の可否 候補者の推薦届出は単に特定人を議員候補者として届出る行為であつて選挙運動ではないのみならず推薦届出は個人の行為に過ぎない。 従つて原則として役職員其他総べて差支ない。只道府県支部長は道府県知事を以て之に充てゝをる関係上選挙の取締の責任者である道府県知事たる支部長が推薦届出を為し若くは選挙運動を為すことは妥当でない。 三 大政翼賛会として公認候補選出の可否 第七十六議会に於ける近衛首相の答弁より観ても翼賛会の性格上妥当でない。 四 選挙運動の可否 翼賛運動が全国民の運動であり超党派的の運動である限り翼賛会が或る特定の候補者の為めに選挙運動を為すことは妥当でない。然し乍ら翼賛会が高度の政治性を持ち且つ政治新体制の確立がその実践目標である以上議会の質的刷新を企画することは当然である。従つて翼賛会が精神運動としての翼賛選挙貫徹運動の部面を担当すると同時に実践運動として構成員が自ら立候補して選挙運動を為すことは翼賛政治建設上望ましいことであつて決して翼賛運動と矛盾するものではない。 翼賛会の構成員の選挙運動可否の問題もその選挙運動が本部又は支部自体の運動である場合若くは尠くとも翼賛会自体の運動と見らるゝ虞ある場合に限り否定すべきであつて全面的に之を否定することは必ずしも当らない。 個々の場合を摘記すれば次の通りである。 ㈠ 職員以外の選挙運動 ⑴ 自ら立候補して選挙運動を為すの可否 自ら立候補して選挙運動を為す場合は既に其の資格に於て立候補してをるのであるから候補者が翼賛会の構成員であることは自明の理であるばかりでなく立候補した以上選挙運動を為すことは当然であるから翼賛会自体の選挙運動と見らるゝ虞もない。従つて其の資格に於て選挙運動をしても差支ない。 ⑵ 選挙事務長又は選挙委員として選挙運動を為すの可否 選挙権者が特定の候補者の選挙事務長又は選挙委員として選挙運動を為すことは個人の資格に於て為すことであるから職員以外の構成員の場合に於ては差支ない。 ⑶ 演説又は推薦状に依り選挙運動を為すの可否 職員以外の構成員が演説又は推薦状に依り選挙運動を為す場合は其の肩書を利用することが翼賛会自体の選挙運動と見らるゝ虞ある場合に限り否定すべきである。従つて総裁府県支部長に限り之を避くべきであつて其の他の構成員が其の資格に於て選挙運動をしても必ずしも翼賛会の運動とは見られないから差支ない。 只此の場合に於ても構成員全員が連名を以て特定の候補者を推薦するが如きは妥当でない。 ㈡ 職員の選挙運動 ⑴ 自ら立候補して選挙運動を為すの可否 此の場合に於ても其の資格に於て選挙運動をしても差支ないことは職員以外の役員構成員等の場合と同様である。 然し乍ら職員の選挙運動は役員其の他の構成員等の場合と異なり其の職務上の立場から考慮する必要がある。従つて選挙運動の為めに職務を抛擲しその職責を果し得ない場合は解職すべきであるが現在本部支部には衆議院議員府県会市会議員等が多数あり之等の職員が自ら立候補して選挙運動を為す場合直ちに之を解職することは酷であり職務上の立場から考察しても選挙期間中に於ける事務の渋滞よりは之を更迭することによる支障の方が寧ろ大である。従つて現職のまゝ選挙運動をしても差支ない。 只道府県支部両部長の場合は第七十九議会に於て総理大臣より善処する旨答弁ありたるを以て善処の内容に就ては近く決定する筈である。 ⑵ 選挙事務長又は選挙委員として選挙運動をなすの可否 自ら立候補する場合と異なり他人の選挙事務長又は選挙委員となり常時選挙運動を為すが如きは職務上の立場から見て妥当でない。従つてこの場合は解職すべきである。 ⑶ 演説又は推薦状に依り選挙運動を為すの可否 職務上支障のない限り現職のまゝで差支ない。個人の資格に於て為すべきや否やに就ては職員以外の場合に準じ総裁道府県支部長に限り之を否定すべきであつて其の他の者は其の資格に於て選挙運動をしても差支ない。 五 職員の立候補の場合に於ける手続 職員が立候補する場合は本部に在りては総裁の許可を受くることを要し支部に在りては支部長の内申に基き総裁の許可を受けねばならない。許可の取扱方針等に関しては追而通牒する。 (「大政翼賛」(昭和十五-十八年)伊勢原市役所蔵) 六一 大政翼賛会神奈川県支部役員協力会議員 更新方針 昭和十七年五月二十九日 大政翼賛会神奈川県支部 組織部長 下田博 大政翼賛会郡市町村支部長殿 支部役員(常務委員)並協力会議員(郡支部)更新ニ関スル件標記ノ件ニ関シテハ夫々御配意中ノコトヽ存候得共来ル六月二十日迄ニ御銓衡ノ上県支部宛御報告相成度 追而更新方針ハ別紙添付候 〔別紙〕 支部役員並協力会議員更新方針 一 基本方針 ㈠ 過去一ケ年ニ渉ル翼賛運動ノ経験ニ徴シ本会ノ目的ヲ体得シ強烈ナル熱意ヲ有シ常時本運動ニ挺身スル少壮有為ノ士タルコトヽシ勢力均衡ノ弊ニ堕スルガ如キハ厳ニ之ヲ避クルコト ㈡ 其ノ銓衡ハ既往ノ経緯ニ関セズ全然白紙ノ立場ニ於テ之ニ臨ミ現構成員ニ必要ナル更新ヲ加フルコト但シ一部再指名(協力会議員ノ場合ハ三分ノ一ヲ超エザルコト)スルヲ妨ゲズ ㈢ 常務委員ヲシテ真ニ支部運営ノ枢機ニ参画シ其ノ中心指導力タラシムルノ方針ヲ以テ之ガ強化ヲ図ルコト ㈣ 郡協力会議長ヲシテ郡支部常務委員会ニ出席シ支部ノ運営ニ参画セシムルコト 二 候補者ノ資格 ㈠ 思想信念ニ於テ国体ノ本義ニ徹シ衆人ノ疑惑ヲ受クルコトナキモノタルコト ㈡ 其ノ地域又ハ職域ニ於テ衆人ノ心服スルモノタルコト ㈢ 其ノ地域又ハ職域ニ於テ率先ノ垂範旺盛ナル実践力ヲ有スルモノタルコト ㈣ 衆人ニ対シ充分推進力ヲ有スルモノタルコト ㈤ ナルベク当該郡市町村内ニ常住スルモノタルコト ㈥ 前科等(政治犯ヲ除ク)ナキモノタルコト ㈦ 政治団体ニ所属セザルモノタルコト ㈧ 過去及現在ニ於テ治安維持法違反ノ容疑ナキモノタルコト 三 郡市町村支部役員銓衡方針 ㈠ 常務委員ノ強化ニ付特ニ留意スルコト 委員数 郡市支部 拾名 町村支部 五名 ㈡ 郡市町村翼賛壮年団長ノ既ニ決定セル支部ニ於テハ右団長ヲ必ズ委員候補者トシテ加フルコト団長未決定ノ場合ハ委員数ノ中一名欠員トシ決定後推薦スルコト ㈢ 郡協力会議員 ⑴ 郡協力会議員ノ員数ハ区域内町村数二十五ヲ加ヘタルモノトシ凡ソ左ノ基準ニ依リ選任スルモノトス (イ) 町村協力会議員中ヨリ 町村数 (町村ヨリ地域的ニ選出スル) (ロ) 各種団体代表者中ヨリ 加算数ノ三分ノ二(拾名) (ハ) 其他適当ナル者ノ中ヨリ 加算数ノ三分ノ一(五名) ⑵ 町村協力会議員ハ従来概ネ町村常会長ヲ以テ充テタルモ町村長ハ町村支部長タルト同時ニ町村常会ノ議長タルヲ以テ之ニ専念セシムルコトヽシ上級協力会議員トシテハナルベク之ヲ認メザルコト ⑶ 各種団体代表者中少クトモ半数以上ハ当該地域内ノ翼賛壮年団ノ中ヨリ指名スルコト ◎名簿提出ニ関スル件 イ 郡支部経由提出ノコト ロ 提出部数 県支部 一部 郡支部 一部 ハ 新任重任ヲ明記ノコト (「大政翼賛」(昭和十五-十八年)伊勢市役所蔵) 六二 昭和十七年度神奈川県町村長会の宣言決議 宣言 大東亜戦争下茲ニ第二十三回定期総会ヲ開キ県下同僚相会シ聖戦目的完遂ノ決意ヲ新ニスルト共ニ自治振興ノ為研鑽討議ヲ尽スハ吾人ノ最モ本懐トスル所ナリ 惟フニ東亜ノ安定ヲ確保シ以テ世界ノ平和ニ寄与スルハ我ガ肇国ノ大理想ニシテ畏クモ宣戦ノ大詔ニ明示シ給フ処ナリ 帝国ハ今ヤ全力ヲ挙ゲテ其ノ目的完遂ノ為邁進シツツアリ 是洵ニ曠古ノ大業ナリ 皇師一タビ出デテ赫々ノ戦果ハ世界ノ耳目ヲ〓動セシメ着々大東亜建設ノ巨歩ヲ進メツツアリト雖其ノ前途尚遼遠ナリ 仍チ内一億ノ国民一体トナリテ国策ニ順応シ各々其ノ職域ニ奉公シ堅忍持久其ノ総力ヲ以テ戦争目的ヲ貫徹セザルベカラザルハ固ヨリ言ヲ俟タザル処ナルモ一面斯ル情勢ニ対応スベキ国内諸制度ノ一大刷新コソ喫緊ノ要務タルモ疑ハザルナリ 政府ハ夙ニ政治経済産業等諸方面ニ亙リ戦時体制化ヘノ再編成ニ真摯ノ努力ヲ傾注セラレ着々其ノ面目ヲ一新シツツアリト雖吾等多年ノ要望タル町村制ノ根本的改正ノ如キ未ダ以テ其ノ実現ヲ見ルニ至ラザルハ甚ダ遺憾トスル処ナリ 顧フニ国内体制ノ整備ハ政治ノ強化ヲ以テ最トナス 而シテ町村自治ハ実ニ国家百政ノ根基ニシテ町村長ハ総合行政庁トシテ戦時下国家ノ要望ニ即応シ食糧ノ増産物資ノ配給貯蓄ノ奨励軍事援護等重要国策ノ遂行ヲ初メ時局下部内民心ノ指導啓発ニ或ハ隣保共助ノ精神ノ昂揚等万般ノ施策一トシテ之ヲ通ジテ行ハレザルハナシ 則チ国政ノ強化ハ一ニ町村長ノ権限ヲ拡大シ鞏固ナル法制ノ基礎ノ上ニ立タシメ其ノ行政ノ総合性ヲ弥々最高度ニ発揮セシムルニ在ルハ論ヲ俟タザル処ニシテ各種産業行政ノ如キモ須ラク町村行政ニ一元化シ町村長ニ之ヲ統轄セシムルヲ要ス 町村吏員ノ地位ノ向上並ニ待遇ノ改善ヲ図ルハ戦時下町村行政ノ能率ヲ増進シ延イテハ国策遂行ヲ円滑迅速ナラシムル所以ニシテ之又吾人ノ恒ニ希求セル所ナリ 政府ハ速ニ之ガ実現ノ方途ヲ講ゼラレンコトヲ要望ス 曩ニ政府ハ戦時下敢テ衆議院ノ総選挙ヲ断行セラレ続イテ地方議会ノ選挙ヲモ施行セシメラレタルハ惟フニ中央地方ヲ通シ清新強力ナル議会ノ確立ヲ庶幾セントスルニ外ナラズ 而シテ地方自治体ニ於ケル選挙ノ結果ハ地方民意ノ動向ヲ明確ニシタルト共ニ其ノ力強キ総意ニ依リ構成セラレタル地方議会コソ真ニ画期的清新強力ナル議会タルヲ疑ハス 吾等ハ之ト相倚リ相携ヘテ愈々奮起シ挺身大政翼賛ノ実ヲ挙ゲ以テ聖慮ニ応へ奉ランコトヲ期ス 昭和十七年六月二十六日 神奈川県町村長会 決議 一 宣戦詔勅ノ聖旨ヲ奉戴シ聖戦ノ目的完遂ヲ期ス 一 戦時下ニ即応セル諸制度刷新特ニ町村制度改正ノ即時断行ヲ期 ス 一 町村吏員ノ待遇改善ヲ期ス (大山町「町村長会書類」(昭和十六-二十年)伊勢原市役所蔵) 六三 昭和十六年度大政翼賛会神奈川県支部事業報告 「昭和十六年度 大政翼賛会神奈川県支部事業報告 大政翼賛会神奈川県支部」 昭和十六年度 大政翼賛会神奈川県支部事業報告 一 翼賛運動推進ニ関スル事項 イ 会議 ㈠ 常務委員会 毎月第一木曜日ヲ定例委員会トシ支部長ヲ輔佐シ支部ノ運営ニツキ参画協議シ緊急ノ場合臨時会ヲ開ク等二十回ノ会合ヲ重ネタリ ㈡ 県協力会議 第一回(六月十日十四日ノ二日間)第二回(十二月五日) ノ二回ニ亘リ招集総会並政治経済文化教育国民生活ノ各委員会等ニ夫々左記事項ヲ伝達協力ヲ求ムルト共ニ各種下情ノ上通ヲナセリ 第一回 ⑴ 戦時食糧増産並節米運動実施方策ニ関スル件 ⑵ 昭和十六年度国民貯蓄奨励方策ニ関スル件 第二回 民間金属類特別回収ニ関スル件 ㈢ 顧問 参与会 中央協力会議ノ経過報告並県翼賛壮年団結成等ニ関シ支部ノ企画及活動ニ参画ヲ求メタリ 招請シタルコト五回 ㈣ 市町村支部長会議 十月十日市町村支部長ヲ招集シ主トシテ翼賛壮年団結成ニ関シ指示協議セリ ㈤ 郡市支部事務主任者会議 七月三十日十七年三月七日ノ二回ニ亘リ郡市支部事務主任ヲ招集事務上ノ連絡並運動展開上ノ指示ヲナシ協議懇談セリ ロ 推進員ノ銓衡指名 各地域ニ於テ翼賛運動ヲ推進セシムル為五月三十日附ヲ以テ八百十一名ノ推進員ヲ銓衡指名セリ 後本部ヨリ之カ拡充ノ指示アリタルヲ以テ十一月十八日附五千九百二十七名十二月十六日附二千九百二十七名(横浜市分)翌二月二十五日附六百四十三名(横浜市分)計一万二千百七十八名ヲ指名シ銅鉄回収国民貯蓄ニツキ強力ニ協力セシムルト共ニ壮年団ノ発足ニ際シテ之ガ中核トシテ其ノ結成ヲ促進シ特ニ大東亜戦争完遂翼賛選挙貫徹運動ニ際シテハ強力ナル推進力ヲ発揮セリ ハ 講演会 ㈠ 時局講演会 1 本部ト共同主催ニテ七月二十四日(川崎市)二十九日(小田原市)八月五日(平塚市)三回開催 2 本部ト共同主催ニテ十一月十日高橋三吉大将吉川英治氏石渡荘太郎氏等ノ講師ヲ迎へ緊迫セル国際情勢ニ対シ県民ノ覚悟ヲ促セリ 3 必勝士気昂揚大講演会 県並東京日日新聞社共同主催ニテ十二月二十二日-二十五日ニ亘リ小田原平塚横須賀川崎ノ四市ニ開催大東亜戦下県民士気ノ昂揚ニ資シタリ ㈡ 必勝士気昂揚国民大会 十二月十二日横浜公園音楽堂ニ県下各級支部代表者市民有志等約三千名招集大東亜戦必勝ノ決意ヲ堅ムル大会ヲ開催池崎忠孝氏ノ講演並皇軍ヘノ感謝ノ決議ヲ行ヒ陸軍飛行機三台上空ヨリ通信筒ノ投下ヲ行ヒ参集ノ会員ニ多大ノ感銘ヲ与ヘタリ 二 文化教育ニ関スル事項 ㈠ 第一回郷土芸能祭 神奈川県文化翼賛連盟ト共同主催ニテ十月二十五日横浜公園音楽堂ニ於テ県下伝習郷土芸能ノ会ヲ開催厚生運動ノ一面トシテ県民ニ一資料ヲ提供スルト共ニ埋モレタル郷土ノ伝習芸能ヲ紹介之ガ振興ニ資シタリ ㈡ 神奈川県文化翼賛連盟文化協力会議後援 四月十五日同会ガ文化協力会議ヲ開催シ県下ニ於ケル主トシテ芸能文化人ノ団結並相互研究ヲ企画セルヲ後援セルノ外同連盟ノ発展ノ為ニ応援シタリ 雑誌「教育」主催教育ニ関スル座談会ニ組織部長ヲ派遣郡市学校職員報国団ニ部員ヲ派遣スル等教育者方面ノ翼賛運動ノ推進ニ協力セリ 三 錬成ニ関スル事項 ㈠ 推進員錬成 八月二十日-二十二日ニ致ル二泊三日ヲ第一回トシ昭和十六年中ニ四回足柄下郡湯本町日本精神道場ニ於テ主トシテ推進員ヲ初メ郡市町村ノ指導者ヲ本部中央訓練所ノ方針ニ基キ錬成ス百四十六名 ㈡ 中央訓練所錬成 中央訓練所ノ錬成ニハ特別指導者錬成ニ十一名地区錬成ニ九十四名ヲ送リ錬成ヲ受ケシメタリ 八月東亜局主催大東亜建設講習会ニ二〇名 十七年二月東亜局主催南方事情講習会二十七名ヲ受講セシメタリ ㈢ 各種団体ノ錬成ノ後援 県会議員有志産業報国会商業報国会学校職員報国団等ニシテ中央訓練所ノ方針ニ依ル錬成ヲ希望セル諸団体ニハ道彦教典等可及的之ヲ斡旋後援シ中央訓練所ノ錬成方式ノ普及徹底ニ努メタリ 四 経済ニ関スル事項 ㈠ 草刈大会 県農会ト共同主催ニテ戦時食糧増産並飼料確保ノ国民運動トシテ実施各郡市毎ニ予選七月十九日足柄下郡仙石原村ニ於テ県大会(全日本大会ノ予選)ヲ行ヒ入選者ニ賞状並賞品(国債)ヲ授与セリ ㈡ 蕎麦播運動 七月県下水害ノ一対策トシテ農建同盟県産報ト共催ニテ勤労ノ余暇ヲ活用シ隣組及工場内ノ空閑地原野河原堤防等ノ利用ヲ勧奨シ種三百二斗ヲ頒布セリ ㈢ 木灰供出強化運動 県農会ト協力シ特ニ推進員ノ具体的任務トシテ実施ス(十一月-十七年三月) ㈣ 青年学校酒精甘藷増収競技会後援 重要国防資源タル酒精原料甘藷ノ栽培ヲ奨励セムタメ同競技会ノ主催者タル県並東日社ヲ後援シ入選者ニハ賞状並賞品(債券)ヲ授与セリ(十七年二月二十八日) ㈤ 新穀感謝祭(十一月二十三日) 新嘗祭ノ当日県社伊勢山皇大神宮ニテ執行県農会産組産報国婦愛婦県青少年団等ノ後援ノ下ニ各郡市支部ヨリ二点宛ノ農産物ヲ奉納各家庭ニ於テモ夫々適宜農産物ヲ神棚ニ供へ食物ニ対スル感謝ノ念ノ昂揚ニ努メタリ ㈥ ヒマ栽培献納運動 県農会郷軍横浜支部ト共同主催ニテ本県割宛四十五万本ヲ目標ニ種子ヲ学校工場都市ノ隣組農家等ニ頒布目下栽培中ナリ㈦ 経済道義昂揚運動(十七年二月四日-十日) 右ノ一週間ヲ経済道義昂揚週間ト称シ県商報経報物価統制協力会議ト共催ス 二月八日経済道義昂揚大会ヲ横浜市公園音楽堂ニテ開催ス 其ノ他座談会臨店監査検量配給動員訓練展示会等ヲ実施目的達成ニ努メタリ ㈧ 銅鉄回収運動ヘノ協力 推進員ノ重要ナル具体的任務ノ一トシテ率先一般物資ノ回収ニ協力方ヲ強調セリ ㈨ 半転業座談会(八月三十日) 県並読売新聞社ト共催関係係官並半転業者十名ヲ中心ニ半転業ノ経過将来等ニ関シ座談会ヲ催シ其ノ結果ヲ新聞ニ依リ県民ニ周知セシメタリ 五 国民生活ニ関スル事項 ㈠ 興亜奉公日並大詔奉戴日 本部ノ指示ニ基キ県ト密接ニ連繋シ毎月一日ノ興亜奉公日ノ実施要綱□□□シ国民□□□□ノ日トセリ 昭和十七年一月大詔奉戴日実施セラルルヤ更ニ国民士気ノ昂揚ニ重点ヲ置クト共ニ健全明朗ナル積極面ヲ発揮スルヤウ指導シツツアリ ㈡ 祝祭日等ノ奉祝 新年奉祝式年末年始対策紀元節奉祝式等ニ関シテハ本部ノ指示ニ基キ夫々下級支部ニ伝達指導セリ ㈢ 市民交通訓練 横浜市支部ニ於テ実施ヲ担当シ市民ノ交通訓練ヲ実施セリ ㈣ 健康優良児童ノ母ノ表彰 朝日新聞主催健康優良児童ノ表彰ニ際シ表彰ヲ受ケタル健康優良児ノ母六名ニ対シ支部長ノ表彰状ト共ニ色紙(県文化翼賛連盟美術部協力)ヲ贈呈シ愛育ノ労苦ヲ犒フト共ニ民族ノ母トシテ感謝ノ意ヲ表セリ 六 翼賛壮年団ニ関スル事項 ㈠ 結成準備並結成経過 1 九月二十六日両部長会議ニ於ケル指示ニ基キ十月初中旬ヨリ夫々常務委員会議顧問参与会議市町村支部長会議等ヲ招集郡市町村団ノ結成ヲ準備ス 2 県団ハ二月二十四日結成準備委員会ヲ招集会則ヲ決定シ団長以下役員ノ銓衡ヲ準備ス 3 県団結成式(三月十九日) 4 結成情況(三月三十一日現在) 百十六市町村中百十市町村団結成終了 ㈡ 活動情況 年度内ニ於ケル団活動ノ重要ナルモノハ大東亜戦争完遂翼賛選挙貫徹運動ニ際シ県並県翼賛会ト緊密ナル連絡ノ下ニ本部長総務等ヲ出来ル限リ郡市町村団結成式ニ臨席積極強力ナル啓蒙運動ヲ展開シ年度ヲ送レリ (「大政翼賛」(昭和十五-十八年)伊勢原市役所蔵) 六四 大政翼賛会神奈川県支部常会徹底事項説明資料 一月の常会徹底事項説明資料(世話役世話人用) 大政翼賛会神奈川県支部 「征戦第三年 総員戦闘配置へ」に就て 大東亜戦争はいよ〳〵第三年頑敵撃滅の「決勝の年」を迎へました。この年こそ皇国三千年の運命を決すべき年としてあらゆる意味に於て一億国民が一大覚悟をもつて臨まねばならぬ年であります。 戦局は敵の本格的総反攻によつていよ〳〵苛烈の度を加へながらも我が忠勇なる皇軍将兵の善謀勇戦により赫々たる戦果は挙つてゐますが彼等はあの莫大な損害をかへり見ず必死となつて歩一歩神洲に迫らんとしてゐます。今にして断乎これを撃砕し更らに反撃を加へねば重大な危機を招来するかもわからぬ重大なときです。戦争第三年は第二年よりも尚一層悽愴な戦ひ血の努力が要請されることは明らかであります。 この深刻な一大決戦の時にあつて最も重大な生産力の拡充もまた戦ふ国民の生活を安定するための食糧の確保も更らに敵が虎視耽々と狙ふ我が本土空襲に備へての国土防衛の強化にしてもつまるところは如何に「人」を適切に配置するかによつてその成否は決せられるものであることを忘れてはなりません。 既に東条首相から「一億国民総員戦闘配置につけ」の進発命令が発せられ学徒はこの声に応じて勇躍出陣しました。苛烈悽愴な戦争第三年目の年頭私ども国民の一人残らずが今こそ従来の行きがゝりや感情などを一切戦時的に切かへて神洲日本護衛のために晴れの応召者の気持をもつて直接戦争遂行に役立つ職場に就き一日も早く「総員戦闘配置」を完了せねばなりません。 イ 「平時的な仕事にある人々はこの際飛行機船舶その他の軍需工場などに進んで転出し女子も挺身隊となつて生産戦場で戦ひ抜くこと」に就て 「生産力でも敵を圧倒」 敵米英は尨大な生産力を唯一の頼みとして執拗なしかも不遜極まる決戦をいどみつゝあります。敵の企図するところは日本に航空機や船舶の莫大な消耗戦を強ひることによつてその生産補給の戦で最後の勝利を得やうとしてゐるのであります。この敵の企図を完全に撃砕するためには全生産力を一つに集めて戦力の増強特に航空機の飛躍的な増産と船舶その他の軍需品の尨大な生産増加がされねばなりません。 またこれが基礎である鉄や石炭、軽金属などの増産を図りこれによつて敵を圧倒するだけの兵器をどしどしと第一線に送り皇軍将兵に思ふ存分活躍してもらはねばなりません。 「国民勤労動員が戦力増強の鍵」 ところで生産の拡充を図り戦力を増強するには資材資金設備などいろいろの要素が必要ですがその根本は結局「人」であります。銃後の勤労力を充実しこれを完全に発揮させることが戦九を増強させるために最も重要なことです。この決戦段階に突入し国民の勤労動員の徹底を期することが絶対に必要となつて来ました。 従がつて今年は国民徴用の範囲が非常にひろげられまた男子の就業禁止の範囲もひろくなり女子の動員も一段と強化されることが当然予想されます。今や一億国民すべてが前線銃後の別なく等しく戦線に在るのであります。皇国非常の秋に際会した私どもはこの大みいくさを勝ちぬくため進んで応徴しまた平時的な仕事にあるものはこの際すべてを投げ出して直接戦力増強に役立つ職場に転喚するのは今であります。 「皇国女性も戦列に」 また女子にあつても男子の奮闘に即応して進んで勤労挺身隊や勤労報国隊に参加して勤労に邁進し男子に代つて各職場に敢闘することが皇国女性の真の姿でありこれあつてこそ敵米英の婦女子にも打ち勝つことが出来るのであります。 ロ 「米麦を増産するための土地改良をなし遂げまた米や甘藷の供出割当量は必ず果すこと」に就て 「今年こそ食糧自給の年」 昨年度の内地米の実収は六千六百七十万石の豊作でしたが朝鮮米が不作で内地補給が出来ずまた麦類が減産であつたためこの対策として農家に対しては極力本年度の早場米の供出促進を図り一般消費者に対しては薯類や小麦粉などの総合配給を強化しまた蕎麦その他雑穀の緊急増産を行ひ米の不足を補つて来ましたが更らに不足した分は已むなく外米の輸入を行つたのであります。 しかしこの深刻な決戦段階に入つては最早外米を運ぶために船を使ふことは断じて許されなくなりました。例へば米百万石の重量は約十五万トンですから六千三百トンのA型標準貨物船で運ぶとすれば約二十隻の延船腹を必要とします。これまで外米を運んだ船で第一線に送る武器や其他軍需資材原材料などを少しでも多く運ばねばならぬ時です。 従つて国内で消費する食糧はすべて国内で賄はねばなりません。 戦争に勝つためには食糧の自給自足の体制をしつかりと打ち建てることが先づ急務であります。 「今年の食糧事情は」 本年度(十九米穀年度)の食糧の需給関係はこの要請にもとづいて外米の輸入を全く絶ち切り日満を適ずる食糧の自給体制を確立しこれによつてやつて行くことゝなつたのであります。このため供給の面では内地米の第二回予想収穫高で六千二百五十五万石の米と今後増産を期待される麦類と薯類や雑穀とそれに移入を期されてゐる朝鮮米台湾米や満洲国の雑穀などが内地の供給を賄ふすべてゞあり一方需要の面では人口の自然増加によつて一般の消費の量がふへたことや国民動員の計画の徹底による労務者の特配の増加などが見込まれ結局酒造米の減少などで節米に努力あると共に一般の消費者に対する総合配給は更らに強化されることを予想せねばなりません。 「土地改良と米甘藷の供出」 戦争に勝つためには食糧の確保は絶対の要件でありしかも今年こそ食糧の自給体制が成るか否かの重大な時です。増産のため最も大きな使命をもつ土地改良は一刻も早くなし遂げねばなりません。差当つて最も力を入れねばならぬ麦の増産にしても一毛作田の暗渠排水などによる土地改良によつて全国で二十五万町歩の麦の裏作が可能となれば反当り一石として二百五十万石の増産が実現するわけで現下の差迫つた食糧事情にあるとき土地改良こそ如何なる困難があらうと必ずやり遂げねばならぬ喫緊の問題です。また農家ではこの際出来るだけ郷土食の実行などによつて米や甘藷の供出を完全に果さねばなりません。一般消費者は麦類や薯類などの総合配給が一層強化されるのでこれ等の混食を工夫しあくまでも食糧戦に勝ちぬきませう。 ハ 「疎開を行ふ都市に住む必要の少い人々はこの際地方に移ること」に就て 「空襲は必至」 敵米英はしきりに我が本土空襲の機を狙つてゐます。在支米空軍や米国の海上機動部隊の動きは一刻の油断も許されません。また英国もその勢力の一部を太平洋方面に廻航せんとする今日敵の本土空襲は必至の状勢にあります。しかも彼等の爆撃はドイツの諸都市に於ける無差別集団爆撃によつても明らかな通りさながら悪魔の如き非人道ぶりを示してゐます。「空襲は必至」今こそ国土防衛の徹底的強化を図らねばなりません。 「疎開は何故必要か」 都市で防空の備へを固めるためには第一に人口を余り密集させぬことまた建物と建物の間に適当な空地のあることなどが根本の要件です。特に航空機の性能が向上し大規模な空襲が行はれることを覚悟しなければならぬ今日重要都市は急速に建物や人の疎開を行ふ必要があります。 「疎開を行ふ地域」 差当つて重要都市で疎開を行ふのは京浜阪神名古屋北九州の各地方です。 「進んで地方に転出」 この際何より大事なことは疎開地域に住んでゐる必要の少い人々は自発的に地方に移りそこで戦力増強に役立つ仕事につくことです。この場合はなるべく郷土か或は縁故者のある土地へ移住するやうにしたいものです。地方ではこれ等の区域に居住する縁故者を引とりまた疎開のため移住する人々を心から迎へ出来るだけ家屋や空間の提供など充分世話を致しませう。 「疎開に当つては」 疎開のため移転する場合の家財道具の輸送やそれに要する資材などは出来るだけ当局で心配してゐます。また子弟の転校等についても便宜が図られることになつてゐます。なほ各市役所区役所等では疎開相談所が設けられ疎開についての相談に応じてゐます。 「疎開も戦闘配置の一つ」 疎開のため地方に移住する人々は決して疎開地から逃げるのだといふやうな考へ方であつてはなりません。あくまでも積極的に地方に帰つて戦力増強のための戦闘配備につくのが根本の目的です。 (仙石原村役場「村常会関係書類」(昭和十六-十八年)箱根町役場蔵) 六五 大日本体育会神奈川県支部設置に関する注意事項 郡市町村支部設置ニ関スル注意事項 第一 基本性格 郡市町村支部ハ大日本体育会ノ最下部ニシテ国民ノ日常生活ニ触レ本会活動ノ基調トナルモノナルニ付市町村支部ハ其ノ目的組織事業ガ之ニ即応スベキコト 第二 目的 ソノ地方特有ノ体育的事情ニ即応セル様目的ヲ具体的ナラシムルコト 第三 事業 第一線ノ活動機関トシテソノ地方ニ必要ナル事業ヲ具体的ナラシムルコト 1 郡市町村ニ於ケル体力ノ実情生活様態習慣等ニ基キ地方民ニ適シタル体力錬成ノ具体的方策ヲ樹立シ之ガ実践ヲ期スルコト 2 郡支部ト市町村支部トノ間ニハ密接ナル連繋アラシメ互ニ協力シ同種事業ノ重複ヲ戒シムルコト 3 大都市ニ於ケル事業ハ道府県ノ事業ニ最モ関係深キモノアルベキニヨリ互ニ密接ナル連絡ヲ保ツベキコト 第四 構成 1 郡市町村並ニソノ健民部及錬成委員トノ関係ヲ緊密一体タラシメ各協力団体(帝国在郷軍人会大政翼賛会青少年団翼賛壮年団婦人会等ノ各支部分会単位団)及学校関係ト密接ナ連携ヲ保ツコト 2 組織ハ努メテ簡単ヲ旨トシ特ニ町村支部ハ成ル可ク他ノ団体若ハ組織ヲ活用スル様ニスルコト 3 大都市ニ於ケル支部ノ組織ニ関シテハ道府県支部規則例ニ準ズルモ班ノ組織ハ第二次的ニ考慮シ専ラ実践組織ヲ中心的組織トシ且道府県支部ノ班組織ト重複セザル様密接ナル連携ヲ図ルコト 4 郡市町村内ノ各種体育運動団体ハ悉ク之ヲ解消セシメ支部ニ包摂スルコト 5 規約中ニ市町村支部ハ道府県支部ノ指揮監督ヲ受クルコトヲ含マシムルコト 第五 支部ノ設立 1 郡市町村支部ハ成ル可ク速ニ全市町村ニ設置スルコト 2 設立ニ当リテハ規則案役員予定表ヲ提シ道府県支部ノ副申ヲ具シ本会会長ノ承認ヲ受クルコト 但シ市支部ノ外ハソノ事務ヲ道府県支部長ニ委任ス (仙石原村役場「振興書類」 (昭和十八-二十年)箱根町役場蔵) 六六 農家増加収益の貯蓄化運動実施要綱 十八下総収第一四八〇号 昭和十八年七月十七日 足柄地方事務所長(印) 各町村長殿 米価引上ニ伴フ農家増加収益ノ貯蓄化ニ関スル件 政府ニ於テハ今般主要食糧タル米穀ニ対スル買入価格ノ引上ヲ断行セラレ相当多額ノ資金ガ農村ニ放出セラルヽ見込ニ有之之等資金ノ浮動ヲ防止スルハ現下ノ時局ニ鑑ミ喫緊ノ要務タルヲ以テ本年度収穫期以降ニ於テ農家ノ増加収益ノ貯蓄化ニ関シ強力ナル方策ヲ実施スル予定ニ有之候ニ就テハ別紙要綱ニ依リ予メ具体的措置ヲ考究準備ノ上之ガ実施上万遺憾ナキヲ期セラレ度依命此段及通牒候也 〔別紙〕 米価引上ニ伴フ農家増加収益ノ貯蓄化運動実施要綱 一 趣旨 政府ハ今般米価ノ大幅引上ヲ断行セラレタルニ伴ヒ政府ノ新ニ支出スル多額ノ資金カ農村ニ放出セラルヽコトヽナリ従ツテ之等資金ノ浮動ヲ防止スルコトハ現下時局ニ鑑ミ喫緊ノ要務ナルヲ以テ本年度農家ノ増加収益ノ貯蓄化ニ関シ強力ニシテ実効アル方策ヲ樹立シ以テ所期ノ目的達成ニ万遺憾ナキヲ期セントス 二 実施要領 ㈠ 米穀生産者ニ対シテハ此ノ際米価引上ニ依ル増加収益ヲ見込ミ浪費ヲ為スガ如キコトナキ様指導スルト共ニ之ヲ引当トスル借入金等モ之ヲ抑制セシムルコト ㈡ 信用組合農会農事実行組合大政翼賛会支部翼賛壮年団婦人会其他農村関係諸団体ノ緊密ナル協力ノ下ニ農家ノ消費生活ヲシテ苟モ放漫ニ流レザル様努メテ自粛セシムルコト ㈢ 増加収益ハ一応従来ノ如ク産業組合ニ於テ振替払ヲ行フト共ニ自作農創設土地購入資金土地改良資金等農業増産上真ニ有効適切ナル用途ニ充ツルノ外ハ挙ゲテ之ヲ産業組合ノ定期的貯蓄又ハ負債整理ニ振リ向ケシムル様措置スルコト ㈣ 本件措置ノ事前ニ於ケル大々的ナル宣伝ハ一面ニ於テハ米穀増産運動ニ悪影響ヲ及ボスベキ虞アルニ付之ガ指導ノ取扱方ニ関シテハ克ク農民心理ノ動向ヲ察知シ深甚ナル留意ヲ以テ万全ヲ期スルコト ㈤ 本件措置ニ基ク貯蓄額ハ本年県貯蓄目標額ノ範囲外トスルコト ㈥ 本件ニ依ル市町村別貯蓄目標額ハ別ニ決定スルコト (仙石原村役場「振興書類」 (昭和十八-二十年)箱根町役場蔵) 六七 戦時下衣生活簡素化実施に関する件通牒 十八下総第一四五一号 昭和十八年七月二十三日 足柄下地方事務所長(印) 各町村長殿 戦時衣生活簡素化実施ニ関スル件 国民貯蓄増強ノ一方途トシテ国民生活ノ決戦化ニ就テハ夫々適切ナル方途ヲ講セラレツヽ有之候処今般政府ハ「戦時衣生活簡素化実施」ニ関スル閣議ノ決定ヲ為シ戦時衣生活ハ益々決戦化セラレタル処更ニ次官会議ニ於テモ別紙ノ通官庁員ノ戦時衣生活ノ簡素化実施ニ関スル申合ヲ行ヒ官庁員率先シテ戦時衣生活ノ簡素化ヲ実践スルコトトナリ差当リ礼装廃止並ニ夏期上衣廃止ヲ実行スルコトト相成依テ当所ニ於テモ別紙写ニ依リ実施相成候ニ就テハ貴職員ハ固ヨリ其ノ他公共団体銀行会社工場ノ職員等ニ対シテモ之ガ実行方充分徹底セシメ以テ決戦生活実践ノ浸透ト国民貯蓄増強トニ格段ノ御配意相成度依命此段及通牒候也 追テ本件実施ニ当リテハ左記事項御留意ノ上之ガ徹底ヲ期セラレ度申添候 記 一 本件実施ノ趣旨ハ戦時ニ於ケル執務能率ノ増進並物資衣料費ノ節約等ニ資スルヲ目的トスルモノナルヲ以テ一般民ニ対シテモ之ガ趣旨ヲ充分理解セシメ実践ノ効果ヲ挙グル様凡ユル会合場所機会ヲ捉へ或ハ申合ヲ行ハシムル等之ガ実践気運ヲ蓄醸セシムルニ努ムルコト 二 特ニ職域等ニ在リテハ首脳部面ヨリ率先実行セシムル様適当ナル措置ヲ講シ以テ全般ノ実践ヲ促進スルコト 〔別紙〕 十八人第二八二号 昭和十八年六月三十日 官房長 各部課長殿 各廨長殿 戦時衣生活簡素化実施ニ関スル件 標記ノ件ニ関シ次官会議ニ於テ官庁員ハ率先シテ戦時衣生活ノ簡素化ヲ実行シ戦時衣生活簡素化ニ関スル国民運動ニ協力スルコトトシ差当リ 一 宮中ニ関スル場合及法令ニ特別ノ定アル場合ノ外公私一切ノ儀礼的ノ場合ニ於ケル衣服ニ関スル制限ヲ徹廃スルコト 一 夏期中ハ上衣ヲ着用セザルモ差支ナキコトトスルコト ヲ実行スルコトニ申合有之候ニ付右趣旨御了知ノ上其実行方可然御配意相成度 尚本趣旨ニヨリ当庁職員ノ夏期戦時衣生活実践要綱左ノ通決定致候 記 一 夏期ニ於テハ室内屋外ヲ問ハズ通勤外出ノ場合ニ於テモ上衣「カラー」「ネクタイ」ノ着用ヲ廃止スルヲ得ルコト 此ノ場合ニ在リテハ下着ハ必ズシモ「ワイシヤツ」ヲ着ルコトヲ要セザルモ半袖又ハ長袖ノモノヲ用ヒ全然袖ノナキ「運動シヤツ」ノ類ハ用ヒザルコト 其ノ他華美ナル色彩ヲ施セルモノ等官庁職員ノ服装トシテ不適当ト認メラルルモノハ之ヲ避クルコト 他ノ服装ニテ知事室ヘノ出入モ差支ナキコト 二 警報発令中等ノ場合ニ於テハ夫々其ノ場合ニ適スル服装ニ依ルコト 三 本件ノ実行ニ付テハ非礼ノ謗ヲ招クガゴトキコトナキ様外来者其他ニ対スル応接態度等ニハ留意スルコト 四 本件実行ノ為上衣ノ新調ヲ避クルハ勿論適当ナル下着ナキ場合ノ外下着ノ新調ヲモ避クルコト 追而夏期ノ期間ハ慨ネ七月一日ヨリ九月三十日ニ有之候 (仙石原村役場「振興書類」(昭和十八-二十年)箱根町役場蔵) 六八 第二期町村決戦体制確立実行方策要綱 第二期町村決戦態勢確立実行方策要綱 本施策は大東亜戦争決戦段階に於ける町村自治体の国家的使命を最高度に達成する為め改正町村制と切実なる時局の要請とに基き其の体制を整備強化し以て銃後国民生活の安定確保と戦力の増強とに万遺憾なきを期せんとするものなり 第一 目標 一 町村長を中心に町村内の諸勢力を結集して強力なる指導性を確立すること 一 町村役場を中心に町村内の諸組織を融合統一し各種施策の総合能率化を図ること 第二 実行方策要項 一 町村と町村農業会との一体的連繋を確保し以て揺なき国内態勢の基礎を確立すると共に各般に渉る重要国策の遂行に万遺憾なきを期すること ㈠ 町村農業会の長は総て之を町村長に於て兼任すること ㈡ 町村農業会は之を其の儘町村の経済部として活用するを最も適当とすること ㈢ 町村農業会の専務理事は総て之を町村の名誉職助役に任じ若くは名誉職助役を以て之に充て且つ経済部長に任ずること (註) ⑴ 町村農業会の専務理事を名誉職助役とする為必要あるときは此際助役の定数を増加すること ⑵ 町村役場の事務を鞅掌する助役は原則として之を一名に止め有給職とし少くとも町村農業会の専務理事と等額の待遇を与ふること ⑶ 右の町村農業会の専務理事たるべき名誉職助役と町村役場の事務を鞅掌する有給職助役とは之を夫々の部門に於ける事務上の責任者とし其の事務を委すに足る有為練達の士を配するに意を用ふること ⑷ 役場と農業会事務所とを成るべく同一建物内に置き事務の連絡及人事の交流を図ること 二 速に参与を設置し町村内各種重要施策の総合的運営と町村の総力体制の確立とを期すること ㈠ 参与の員数を成るべく少数に止めて其の人選を厳にし各種重要施策の権威ある審議機関たらしむべきは勿論町村内に於ける総力結集の中核たるに相応しき組織体たらしむること ㈡ 参与会に於て審議すべき事項は凡そ町村内に於て実施せらるゝ各種重要施策の全般に亘るは勿論なるも参与条例中に適宜審議事項の概目を明にし之が制度の実効を挙ぐるに努むること ㈢ 参与会に於て審議したる各種重要施策に付ては各種団体部落会町内会等の各分担事項を定め之を町村長より示達して其の遂行実践に当らしむることゝし各種団体等の機能の発揚に付充分なる督励を加ふること ㈣ 参与と町村常会とは常に緊密なる連繋を保持せしめ参与は之を町村常会の幹部会たるの機能を営ましむる如く運営し参与に諮りて決定せる重要事項は町村常会を通じて遍く町村住民に徹底せしむる如き方途を講ずること ㈤ 参与と各種委員との関係に付ては機能の重複を避け委員は専門的事項の企画調査並に執行の補助に当らしむることゝし委員に於て専門的に企画調査したる事項は之を参与に諮り其の審議を経たる後実行に移すこと (註) ⑴ 参与条例は概ね別記附録一の「参与条例案」の如きものなること ⑵ 参与制度の運用は町村内各種重要施策の総合的運営上重要なる意義を有するものなるを以て之が活用に充分意を用ふること ⑶ 参与は各種団体の代表者等の中より之を選任するものなりと雖も町村長が各種団体の長を兼ぬるを最善とすることには何等変りなきに付誤解を生ぜざる様注意すること 三 改正町村制の趣旨に則り此際町村に経済部委員及文化部委員を設置し将来は成るべく之以外に委員会を設けざること ㈠ 経済部委員の構成及職分を左の如くすること ⑴ 委員は町村の実情に応じ概ね町村農業会等の主要産業経済団体役職員其の他学識経験者中より適材を選任し定員を七名内外とすること ⑵ 委員会は町村長を以て会長とし経済部長(農業会の専務理事たる助役)を以て委員長とすること ⑶ 委員は食糧の増産及供出生産資材の配給労務の調整等を重点的職分とし之が企画調査及其の執行の補助に当るものとすること ㈡ 文化部委員の構成及職分を左の如くすること ⑴ 委員は町村の実情に応じ概ね在郷軍人分会青壮年団婦人会方面委員等文化系統団体の役職員其の他学識経験者中より適材を選任し定員を七名内外とすること ⑵ 委員会は町村長を以て会長とし文化部長を以て委員長とすること ⑶ 委員は簡素強靱なる戦時国民生活の確保安定健民施策の徹底各種国民運動の強化等を重点的職分とし之が企画調査及其の執行の補助に当るものとすること ㈢ 前各部委員設置に関しては別記附録二の「委員設置規則案」に準じ町村規則を以て之を定むること (註) ⑴ 委員は必ずしも公民たることを要せざるを以て実際の必要に基き真に適材を選任して之が活用を図ること ⑵ 各委員会に於て企画調査したる各種施策にして重要なる事項は町村長を通じて之を参与会に諮り其の審議を経て実行に移すこと 四 役場機構を拡充強化して概ね総務部経済部文化部及経理部の四部制とし事務の体系を整備すること ㈠ 総務部は概ね庶務文書議事税務土地土木警防戸籍兵事統計其の他他の部に属せざる事務を分掌するものとすること ㈡ 経済部は概ね農産物の増産及供出各種生産資材の配給事務及各種産業経済団体等の指導督励に関する事務を分掌するものとすること ㈢ 文化部は概ね社寺学務又は教育衛生社会事業等の事務及各種文化団体等の指導督励に関する事務を分掌するものとすること㈣ 経理部は概ね収入役の事務を分掌するものとすること ㈤ 町村の実情に応じ適宜各部に課若くは係を置くこと ㈥ 各部の部長は助役(経済部長は農業会専務理事たる名誉職助役)収入役(経理部長)主事其の他適当なる吏員を以て之に充つることとし助役収入役以外に適任者なき場合は差当り一助役を以て数部長を兼ねしめ追て適当に考慮すること ㈦ 課(係)長は従来通り主事書記技術員等を以て之に充て已むを得ざるときは差当り一人数係兼務とし必要に応じ追て適当に考慮すること ㈧ 前各項に依る役場機構の拡充強化並に事務の体系整備に関しては別記附録三「処務規程案」に準じ処務規程を改正すること (註) ⑴ 各部に於て此際特に重点的に力を注ぐべき事項概ね左の如し 総務部 貯蓄の増強 徴兵徴募及徴用 軍事援護 徴用扶助 防空及警防 部落会町内会の指導等 経済部 食糧の増産 生産物の供出 物資の配給 労務の調整 職業指導等 文化部 国民精神の錬成昂揚 結婚奨励 健民運動の徹底 生活の簡素化 農村新文化の建設等 経理部 国の中央地方を通ずる財政政策と町村財政の実際上の間に於ける不調和の調整 事務の合理化と政費の節約等 ⑵ 各種団体の職員は之を成るべく町村吏員(嘱託等)とすること ⑶ 各部に於ける事務の運営に関しては町村内の諸組織を充分に活用し処務の敏活徹底を期すること殊に経済部に在りては農業会其の他の産業団体を一元的に包括する様工夫すると共に此等団体の機能暢達に付充分なる意を効すこと ⑷ 部制の設定に関しては別記附録四「役場部制実例」を参照すること 五 部落会町内会(以下単に部落会と称す)の法制化を機とし此際之が運営の万全を期し其の健全なる発達に一段の努力を為すこと ㈠ 部落会の区域及名称は甚だしく不適当なるものを除くの外原則として此際変更せざること ㈡ 部落会の長は従来通り部落会の意嚮を徴し町村長に於て之を任命し真に部民の信望厚く国策に挺身し得る第一等の人材を挙ぐること ㈢ 部落会と同一区域の行政区は此際原則として之を廃止すること但し連合会の設置を必要とする町村に於ては其の連合会の区域を行政区として存置し区長を配置すること ㈣ 部落会又は行政区として存置する部落会連合会の区域(其の他適当なる区域)に町村長の任免に係る職員(部落指導員として成るべく地元の青壮年中より適任者を抜擢登用す)を駐在せしめ部落会長の事務的負担の軽減と事務処理の迅速徹底を期すること ㈤ 部落会費の徴収に付ては町村長に於て適当なる基準を定め妄りに之が増徴を為さしめざる様留意すること ㈥ 部落会の財産所有に付ては従来所有せるものに之を認むるを原則とし競つて財産を所有する傾向は之を抑止すること ㈦ 経費及財産の管理に付ては記帳を励行せしめ適正を期せしむる様町村長に於て常に指導監督すること ㈧ 部落に於ける各種名義の財産は此際部落会の所有たることを明確ならしむること但し部落有林野等にして部落の共同生活上又は維持管理上必要の度を超ゆるものは此際成るべく之を町村有に統一移管すること ㈨ 部落内の諸団体は之を部落会に統合し部落会に適当なる部制を設けて事務の体系を整備すること特に農事実行組合は此際総て部落会に統合すること (例) 総務部 健民部 青年部 農事部 (農事実行組合を之に統合すること) 配給部 納税部 警防部 婦人部 (一〇) 町村長は随時(町村常会の運用と睨み合せ)部落会長又は部長を招集して必要の指示を為し相互の連絡を緊密にして真に挙町村一体の総力態勢を確保することに力むること (大山町「町村長会書類」(昭和十六-十八年)伊勢原市役所蔵) 〔注〕別記省略。 六九 非常回収物件の回収対象および範囲に関する件通知 十八総収第一五四五号 昭和十八年八月二日 足柄下地方事務所長(印) 各町村長殿 非常回収物件及其範囲ニ関スル件 非常回収第二種実施方法ニ依ル物件中寝台ノ回収対象及範囲ニ付照会ノ向モ有之候条左記御諒知ノ上実施上遺漏無キヲ期セラレ度 記 一 寝台ノ回収対象 官庁公共団体及五台以上ヲ所有スル指定施設(ホテル病院等) 二 回収方法 代替物設置ノ状況ヲ考慮シ何レモ其全部ヲ回収スルモノトス即チ官庁公共団体ニ於テハ一台ノ場合ト雖モ回収シ指定施設ハ四台以下ヲ所有スルモノハ回収セズ五台以上ヲ所有スルモノハソノ全部ヲ回収スルモノトス (仙石原村役場「振興書類」 (昭和十八-二十年)箱根町役場蔵) 七〇 神奈川県一億敢闘総決起大会開催要項 十八下総第一五五五号 昭和十八年八月四日 足柄下地方事務所長(印) 仙石原村長殿 一億敢闘総蹶起大会開催ノ件 今般一億敢闘実践運動実施ニ関シ標記大会開催可相成候ニ就テハ左記要項ニ依リ夫々本運動関係者ヲ動員シ最モ盛大且真摯厳粛ニ実施致度候条多数参会相成様格段ノ御配意相煩度此段及通牒候也 記 一億敢闘総蹶起大会開催要項 一 趣旨 一億敢闘実践運動実施要項ノ趣旨ニ基キ本大会ヲ開催シ一段ト県民ノ戦場精神ヲ昂揚シ挙県生産ノ増強食糧ノ増産供出決戦生活ノ実践国民貯蓄ノ増強ニ蹶起敢闘シ戦力ノ増強ヲ図リ以テ対日反攻ヲ呼号スル宿敵米英ノ徹底的撃砕ヲ期ス 二 名称 一億敢闘総蹶起大会 三 主催 一億敢闘実践運動神奈川県本部 四 日時場所 八月七日午后七時ヨリ小田原市本町国民学校 五 参会者 町村長 県会議員 町村会議員 翼賛会並翼壮関係者町内会長 部落会長 各種団体関係者 其ノ他一般 六 大会次第並担当役割 一 開会ノ辞 一 国民儀礼 一 詔書奉読(小田原市長) 一 挨拶(秦理三郎) 一 講演(中村熊三高橋長治安藤覚) 一 誓詞 一 万歳奉唱 一 閉会ノ辞 (仙石原村役場「振興書類」 (昭和十八-二十年)箱根町役場蔵) 七一 翼賛壮年団の活動に関する件通牒 十八下経発第二一八六号 昭和十八年八月十二日 足柄下地方事務所長(印) 町村長殿 空荒廃地解消ニ干シ翼賛壮年団ノ活動ニ干スル件 決戦下ニ於ケル国民食糧ノ絶対的確保ノ必須要請ニ即応シ今ヤ凡ユル方途ヲ講ジ主要食糧農作物並ニ雑穀ノ増産ニ鋭意努メツツ有之単位面積ノ増収ニ於テハ大ナル期待ハ為シ得ザル現況ニアルヲ以テ此際空荒地(含原野牧場ノ類)等ノ解消ニ依リ一大増産ノ要緊切ナルモノアルニ鑑ミ之ガ事業ハ翼賛壮年団ニ於テ活発ナル運動展開ニ依リ町村内ニ於ケル右該当ノモノハ同団ノ責任ニ於テ其ノ実績ヲ収メシムルヲ最モ効果的ト思考致候ニ付テハ特急翼賛壮年団ヲシテ御計画セシメ実施相成様示達御督励相成度此段及通牒候也 追テ右計画樹立ノ上ハ左記ニ依リ其ノ都度報告方併而御指示相成度申添候 記 (仙石原村役場「振興書類」(昭和十八-二十年)箱根町役場蔵) 七二 大政翼賛会神奈川県支部決戦生活実践促進要綱 「昭和十八年九月 決戦生活実践促進要綱 附決戦食生活方策 冠婚葬祭其ノ他戦時様式規準 大政翼賛会神奈川県支部」 決戦生活実践促進要綱 一 趣旨 戦局の現段階は戦力の大飛躍的増強を要す而して其の実現は一日の遅延を許さず一億国民は大決心を以て生活の総てを「勝ち抜くため」の一点に凝集するの要現在より緊切なるはなし 然るに一般に決戦生活として実践すべき事項は既に知り尽しあるにも拘らず其の実行は尚未だ現戦局に即応せず 茲に於て吾等帝国臣民は愈々「天皇陛下の御為に」の日本魂を発揮し一億総蹶起して更に自省自奮一意決戦生活に突入し以て速かに米英を撃滅する為之が促進を期せんとす 二 主唱 大政翼賛会神奈川県支部 三 挺身実行団体 神奈川県翼賛壮年団 神奈川県産業報国会 農業報国連盟神奈川県支部 神奈川県経済協力会 海運報国団関東支団 神奈川県青少年団 大日本婦人会神奈川県支部 神奈川県労務報国会 四 国民の心構へ ㈠ 国民は総てを君国の為に捧ぐること 常に我国体に思を致し皇室の尊厳と皇室と国民との関係を理解し我等祖先の至誠尽忠を想起し国民は総てを君国の為捧げ「勝ち抜く」ことに専念すべきなり ㈡ 必勝の信念を堅持すること 世界に冠たる国体を有し尊厳無比なる皇室を奉戴 精強類なき皇軍を有し東亜共栄圏の要地を占領せる大日本帝国は如何なる大敵に対しても国民の総力を「勝ち抜くため」の一点に結集せば絶対不敗なることを銘心し不動の信念とすべし 之即ち必勝の信念なり ㈢ 戦局の変化に一喜一憂せざること 戦争に於ては各種の波瀾を生ずるを通常とす故に戦況の良果に楽観するは危険なり又一時不利なる如き戦況を生じたる場合悲観するが如きは必勝の信念を有せざる証拠なるを思ひ自ら之を恥とし苦難来らば愈々必勝の信念を堅持し之に対応の手段を講じ勇奮以て最後の勝利に向ひ邁進せざるべからず ㈣ 米英思想たる自由主義利己主義私利追及主義を自らの心中より駆逐すること国民は「 天皇陛下の御為」「御国の為」と云ふことは充分知り乍ら苛烈なる戦局にも無関心なるが如く闇取引買溜買漁り其の他自己の利益の為不徳の行為をなすもの尠からざるは利己主義私利追及主義より脱却せざるものにして「勝ち抜くため」の一大障碍となりつゝあるは厳に戒めざるべからず表面国家的の言動をなしつゝ裏面私利私慾を図るものは日本人を装ひたる米英人なることを思ひ自ら愛国心を喚起し真の日本人に立帰ると共に他は親愛と熱意とを以て之に協力するを要す ㈤ 国民は進んで犠牲を払ふことに努むること 犠牲を払はずして戦争に勝たんとするは戦闘に於て戦死負傷者を出さずして敵に勝たんとするに等しく愚なる考なり 戦場に於て各将兵各部隊が犠牲の平等を希ひたりとせば勝利は得られず皇軍将兵は自らの犠牲に於て他を勝たしめ各部隊は自己部隊の犠牲に於て他の部隊の戦闘を有利ならしめんとして努力しあることを忘るべからず ㈥ 国民は自己の負担の多きことに不満を持たざること 国民自ら喜んで多くを負担することに努むる結果は即ち前項犠牲心の発露と相俟ちて戦力大増強の根本なることを銘心すること 戦場に於ては我将兵各部隊は独立任務又は重大なる任務特に堅固なる敵陣地を攻撃する任務又は他より危険多き任務等(負担多き任務)を受くることを無上の名誉として奮闘是努め以て大戦果を挙げつゝあることに常に思を致すべし ㈦ 国民皆働の精神を昂揚すること 戦力増強の為には大なる労務を必要とするは論を俟たず故に勤労を尊び一人と雖も遊休徒食を許さず 特に政府は勤労に国家性を持たしめ徴用せられたるものに対し応徴士なる称号を与へ兵役に服するものと同意義の性質なるを明かにし又之が援護に関しても軍人援護と同様の取扱をなす如く規定したり国民は現在の勤労は旧来の一会社一私人の利益の為にあらずして国家戦力の増強に任ずる尊き御奉公に思を致し旧来の労務者に対する観念を一擲し勤労は国家に対する国民当然の義務なりとの観念を堅持し挺身勤労に従事し以て戦力増強に貢献すること必要なり 特に女子に於ては男子は男子にあらざれば能はざる勤労に従事せしめ其の他は総て女子勤労に依り之を補塡し以て戦力の飛躍的増強に貢献するの覚悟を要す ㈧ 困苦欠乏に堪ゆること 戦局の発展に伴ひ時に困苦悲惨の状を呈し欠乏愈々加る場合に於ては益々不屈不撓の精神を以て之を克服し最後の勝利に向ひ突進せざるべからず ㈨ 決戦に即応するやう心の切換を断行すること 安易と豊富とを求むる柔弱なる精神の存在を許さずこの際断然之を決戦的に切換へ国民中一名の落伍者もなく確固不動の戦場精神を以て終始すべきなり (一〇) 皇軍に感謝すること 常に思ひを戦場に致し護国の英霊に感謝の誠を捧ぐると共に皇軍の勇戦奮闘に応ふることに努むべきなり 五 決戦生活具体的実践事項 決戦生活の具体的実践事項に就ては従来隣組回覧板常会徹底事項大詔奉戴日実施事項其の他運動要綱に依り一般に充分知り尽しある処なるを以て本要綱に於ては新事項及特別のものを除く外は細部に亘り之を述べず只従来の事項を総合的に列挙し各人の実践せるものに照し合せ未だ実施せざる事項を取り上げ速に全事項を実践する為に便せんとす ㈠ 衣生活に就て (イ) 新調を見合せ已むを得ず新調するときは男子は国民服女子 は標準服とすること (ロ) 服装を簡素化し決戦生活に適する如く工夫すること (ハ) 臓衣及古着を充分活用し且つ婦人標準服の普及に努むること (ニ) 防空服装の着用徹底に努むること (ホ) 空襲其の他非常災害の場合を顧慮し襟裏等に住所氏名を記入せる片布を附すること ㈡ 食生活に就て(詳細別記の如し) (イ) 極力玄米食を用ふること (ロ) 混食雑穀食を用ふること (ハ) 右の外雑草樹根等より採取して食糧に供し得るものを利用すること 右三項は国内食糧自給の為食糧増産と相俟つて実行すべき緊要事なり殊に米のみに依存するは絶対に不可なり此後の戦局の推移天変地異其の他非常災害等を顧慮せば雑穀雑草食を研究し之を常食となす覚悟と実行とを必要とす ㈢ 住生活に就て (イ) 不必要なる住宅は之を戦力増強の為進んで提供すること (ロ) 寺院教会等の建物は可成戦力増強の為に活用すること 住職並に教会主は勿論特に檀家及信徒は戦力増強の為には進んで之を提供すること (ハ) 勉めて家具の新調を見合せ一般に必要ならざる家具調度を有する家庭は之を供出し新家庭に利用せしむること (ニ) 家屋内の整理整頓を良くし空襲火災其の他非常の際に備ふること (ホ) 電気及瓦斯其の他燃料を極力節約し戦力増強に努むること㈣ 其の他の事項に就て (イ) 航空兵海軍兵船員に子弟を志願せしむること (ロ) 軍人援護に努むること (ハ) 応徴士の援護に努むること (ニ) 船員の援護に努むること (ホ) 貯蓄を益々増強すること (ヘ) 空閑地の利用 (ト) 冠婚葬祭等を厳粛簡素に行ふこと(詳細別記の如し) 本項に就ては最も必要にして且従来実行頗る困難なるに顧み次の如く其の基準を定めたるを以て各市町村に於ては基準に示す範囲内に於て各々其の地方及家庭の実状に応ずる如く研究工夫をなし之を実施するものとす 〔別記一〕 決戦食生活方策 一 方針 決戦下緊迫せる国民食糧確保の為め政府に於ては凡ゆる食糧増産緊急対策を講ぜられ着々として其の成果を挙げられつゝありますが一方之と平行して其の消費の面に於て規制方策を忽がせにする時は所期の目的は完全に達成されません 茲に於て此際全県民総蹶起して一大決意の下に食生活刷新を断行し速かに外米依存より脱却して食糧の国内自給不敗の態勢を整へると共に剛健なる心身を養成し以て大東亜戦を勝ち抜きませう 二 方法 イ 玄米皆食の断行 ○当支部発行の「玄米食の炊き方」隣組読本を参考にすること○二三割の節米となり栄養保健上よろしく食生活簡素となり生活が安定します 「参考」 米の精白度による各栄養分の損失(大阪衛生試験所調) ロ 混食混炊の実行 ○甘藷馬鈴薯南瓜大根等の蔬菜類麦大豆粟稗等の雑穀の混炊混食 ○間食に使用せず必ず混炊にすること 「参考」 ○各食品百瓦中のビタミンB1B2の割当 (横須賀海軍軍需部調) ハ 郷土食の励行 ○其土地々々に古来より伝へられたる雑穀雑草其他を利用せる郷土食の励行 ニ 代用食の新工夫 ○現在の配食量にて玄米食にすれば充分足りるのみならず剰余を生ずる筈なれど子供等多き家にては当分の間代用食を工夫して補ふこと ホ 食用野草薬用野草等の利用 ○のぜりたんぽぽせりにら山牛蒡其他種々の野草の中に栄養価高きものあり之等を研究利用すること へ 過食抑制 ○日本人は元来過食の習慣ありと云はる 必要栄養分以上の過食の陋習を矯正すること ト 完全咀嚼 ○適当な食物を完全に咀嚼して其の食物の栄養を百パーセントに摂取すること ○完全咀嚼すれば今迄の量の三分の二又は半分にて栄養価充分なりと云はる チ 科学的調理の工夫 ○計量を正確にして時間や物資の無駄を省く ○分量の予定を正確にすること ○限られたる調味料による新工夫 ○食物の栄養的取混ぜ ○調理法の研究 一般に野菜類等煮過ぎる傾向あり之は其の物の栄養価を損じ味も落ち燃料にも関係します リ 果実蔬菜の皆食励行 ○果実蔬菜類は実と皮の間に栄養価ありと云はる 皮ごと食する習慣をつけること蜜柑など皮ごと食すれば一ケにて充分となる ○芋類大根等も皮ごと調理すること 果実蔬菜類の皮の部分には実の部分より四、五倍の栄養価あると云はる ヌ 食物貯蔵法の工夫 ○乾燥蔬菜干飯等食品貯蔵につき工夫すると共に防空時の食品につき平素より研究と用意を怠らぬこと ル 残物の利用更生 ○煮物残物蔬菜類の屑等の活用 ○養豚養兎養鶏等の飼料 ○農作物の肥料 ヲ 皆食の実行 ○汽車食堂等には未だに残飯相当量ありと云ふ食物の皆食を実行すること ワ 共同炊事 ○農村等に於て農繁期のみに限らず恒久化すること カ 共同献立 ○共同炊事の前提として都市隣組等より研究実行すること ヨ 台所の改善 ○台所を出来るだけ能率的又は衛生的に工夫すること タ 節食の修練 ○一日二食励行を試みること健康によろしく気分爽快となり能率増進し節米となり食物の真の味と有りがたさを知る 一ケ月一回より始め一週間一回として漸次恒久化す(但し過激労働者農業者等は漸減すること) 全国二食を励行すれば米二千万石以上余り国内生産米にて自給自足され一般健康も増進します ○一日断食 一ケ月一回より始め一週間一回位随時試みること 有事の際の準備ともなり前線を偲ぶ戦場生活の真の実践となる レ 無駄排除 食物を大切に取扱ふこと ○一世帯で一日一粒の米を無駄にすれば全国一日で二石九斗三升余(全国の世帯数約一八六七万世帯とし一升の米約六万四千粒として)一ケ年で一千六十九石余となる ○国民一人が一日三度の食事毎に一粒の御飯を茶碗に残せば九千万人として一日二億七千万粒一日四十二石余一ケ年一万五千三百九十五石余となる ソ 食物感謝の実践 ○毎日の食物は決して自分一人の力で食膳に運ばれたのではありません 神恩皇恩父母祖先の恩其他天地人一切の量り知れざる恩報によるもので皇国に於きましては畏れ多くも 上御一人からの賜りものです 食事毎に必ず報恩感謝の誠を捧げること 食前の詞として種々ありますが曩に当支部で常会の徹底事項として取上げた左記の詞を参考にすること 箸とらば天地御代の御恵み 君と親との御恩味はへ 頂きます 〔別記二〕 冠婚葬祭其の他の戦時様式規準 一 要旨 冠婚葬祭其の他儀礼は精神を主とし勉めて簡素厳粛ならしめ敢然旧套を脱し決戦に即応する如く努むるものとす 二 結婚様式の改善 ⑴ 見合 (イ) 見合は媒酌人の家庭若しくは之に準ずる場所を選び劇場料亭等を廃すること (ロ) 質実簡素を旨とし高価な服装や饗応は絶対になさざること(ハ) 相性十二支日取等の迷信に囚はれず双方合議の上健康診断書を交換すること ⑵ 結納 (イ) 簡素に約束の儀礼として行ふ程度とすること (ロ) 儀礼品としての指輪袴帯小袖等は之を全廃し末広熨斗に止めること (ハ) 結納金は少額(百円以内)に止め国債を用ひ又は単に目録のみとすること ⑶ 支度 (イ) 支度は双方合意の上極力簡素にすること (ロ) 調度衣類等は出来る限り新調を見合せること (ハ) 必要と余裕ある場合は貯金帳国債等を持参せしめ生活準備金として新家庭の堅実化を図ること ⑷ 式服 (イ) 式服は国民服団服制服婦人標準服等を用ふること (ロ) 振袖裲襠胸模様色直しは絶対廃すること 参列者の服装も之に準じ簡素にすること ⑸ 挙式 (イ) 挙式は神社家庭又は公共の場所を主とし簡素且厳粛に行ふこと (ロ) 挙式前国民儀礼を行ふこと (ハ) 神社以外の場所に於て挙式の場合は氏神に報告参拝を行ふと共に祖先の霊への報告を行ふこと (ニ) 神社其の他の挙式料はなるべく少額に止むること(廿円以下) ⑹ 披露 (イ) 披露宴は之を廃し通信を以て披露すること (ロ) 挨拶廻りは最少限度に止め金品を持参せざること ⑺ 結婚祝 (イ) 精神を主とし近親者以外は金品を贈らぬこと (ロ) 返礼は全廃すること ⑻ 其の他 (イ) 見合及記念写真はキヤビネ型八ツ切以内とす (ロ) 新婚旅行は廃止すること (ハ) 婚姻届は結婚式当日作製し速に届出づること 三 其の他の祝事改善 ⑴ 出産祝 (イ) 出産祝は精神を主とし可成物品を用ひず近親者のみに於て出来る限り貯金帳子宝貯金国債等で祝ふこと (ロ) 祝の返礼は行はざること ⑵ 御宮詣り 七五三には晴着の新調を全廃すること ⑶ 節句誕生祝金婚式還暦古希喜寿米寿等の祝事も時間と物資の徒費を避け簡素に行ふこと ⑷ 入営応召の歓送 精神を主とし簡素厳粛に行ふこと(別途県よりの通牒参照) 四 葬祭様式の改善 ⑴ 総て精神を主とし簡素厳粛に行ふこと ⑵ 死亡通知 (イ) 親戚の外は故人と親交ありし範囲に止め其の他は葬儀終了後通知すること (ロ) 新聞広告をなす場合は簡略を旨とし妄りに多数の名を連ね又は幾通りも掲載せざること ⑶ 通夜 (イ) 一般の通夜は九時を刻限とし酒食を全廃して御茶の程度に止むること (ロ) 出棺の際の立振舞は全廃すること ⑷ 喪服 (イ) 喪服は国民服団服又は制服婦人標準服等を用ふること (ロ) 一般参列者は礼を失せざる程度で簡素な服装とし喪服着用を要せざること ⑸ 葬列 (イ) 葬列は近親者のみとすること (ロ) 列立者も可成近親者等小範囲に限ること (ハ) 野辺送り自動車の使用は努めて之を制限し三台迄に止めること ⑹ 葬儀 (イ) 葬儀の時間を励行し相互に迷惑を掛けぬ様にすること (ロ) 会葬者に対する物品包切手等の配布品を全廃すること ⑺ 花輪香奠其の他 (イ) 花輪生花放鳥其の他供物等の寄贈は全廃すること (ロ) 香尊は精神を主とし小額に止め香奠返しは廃止すること (ハ) 会葬への礼状御礼廻りは全廃すること ⑻ 祭事法要 葬儀に準じて簡素を旨とし引物は全廃すること 五 実施方法 ⑴ 町村支部若しくは町内会部落会隣組に於ける実施事項の決定並に実行申合 (イ) 町村支部若しくは町内会に於ては夫々役員会を開き右基準に基き其の地域に適応せる実施の具体的事項を決定し各常会に於て実行の申合をなす (ロ) 各部落会隣組常会に於て決定事項を詳細説明し実行の申合をなさしむ (ハ) 新入者に対してはその都度世話役世話人より詳細に指導す ⑵ 各団体各職域への徹底 各団体各職域に於ても夫々之に協力実行せしむ ⑶ 当事者に対する指導 冠婚葬祭の当事者はその都度必ず隣組長部落会長町内会長要すれば支部長に申出で実施方法の指導を受けて取行ふものとす ⑷ 壮年団員 婦人会員 青年団員の協力 会員をして本運動の趣旨徹底に努め率先して改善様式の実行に当らしむこと ⑸ 貯蓄奨励 節約したる費用は冠婚葬祭節約貯蓄を行はしむる様指導す (仙石原村役場「村常会関係書」(昭和十六-十九年)箱根町役場蔵) 〔注〕通牒省略。 七三 足柄上郡仙石原村常会徹底事項 十二月常会徹底事項 昭和十八年十一月廿六日午後七時 午後九時 一 伝達事項 一 二百七十億貯蓄総攻撃期間設定ニ関スル件 大詔渙発第三年記念日ヲ迎へ前線将兵ノ士気大イニ振ヒ国民ノ必勝信念益々固ク敵米英撃滅ノ意気日ニ昂リ国内態勢ノ強化ト共ニ物的戦力ノ画期的増強愈々要望セラルヽ秋国民貯蓄ノ躍進的増強亦一層切実ノモノアリ 本年度上半期ノ貯蓄成績概ネ順調ニ進展シアルモ戦局ノ苛烈サハ二百七十億貯蓄ノ急速ナル達成ヲ期スベキ緊迫セル情勢ニアルヲ以テ今般「二百七十億貯蓄総攻撃」期間ヲ設定県民総蹶起「応召」ノ気魄ヲ以テ只管勤労ニ励ミ消費ノ節約ヲ断行シ誓ツテ貯蓄ノ増強ヲ期セザル可ラズ依ツテ本村ニ於テハ左ノ実施方策ニ依リ実施シ極力コレガ突破ニ努ムルモノトス 運動ノ名称 二百七十億貯蓄総攻撃期間 運動期間 自昭和十八年十二月一日 至昭和十八年十二月卅一日 運動期間中ノ増加目標額 六十億(本県三億円) 運動方法 各組ニ於テ国債貯金ヲ必ラズ励行シ貯蓄目標突破ニ一段ノ努力ヲスルコト 戦時生活ノ実践 応召ノ気概ヲ以テ衣食住ノ簡素化ヲ図ルコト 年末年始ノ贈答廃止 遊興宴会遊山等ノ自粛 二 十八年度産米供出ニ関スル件 聖戦ヲ勝チ抜ク為ニハ国民ノ総力ヲ挙ゲテ戦力増強ト果敢ナ実践ニ依ラナケレバナラヌ殊ニ食糧ノ確保ハ最モ緊要ナ事デ戦力増強ノ根本デアル而シテ此ノ食糧ヲ生産シ供給スル者ハ農家デアツテ之レガ完遂ハ農家ノ責任デアリ最大ノ義務デ農家ニ課セラレタ使命デアルカラ国家ニ御奉公スル唯一ノ臣道実践デアルカラ喜ンデ可成沢山供出スルコト此レガ為ニハ白米食ヲ絶対ニ禁止スルコト三 麦ノ増産ニ関スル件 前項ト同様国内ノ生産食糧ニ依ツテ自給出来ル様ニ麦ノ増産ニ専心ノ注意ヲ払ヒ殊ニ冬期ノ耕作ヲ怠ラヌ様セラレタシ 四 日本赤十字社員増募ニ関スル件 聖戦完遂決戦下ニ於テ赤十字社ノ活動ハ実ニ目ザマシキモノアリ本県ニ於テモ数次ニ渉リ救護班ヲ派遣シ重大任務ヲ遂行シ好成績ヲ挙ゲツヽアリ此レガ為メニハ多額ノ経費ヲ要スルコト論ヲ俟タザル所ニシテ全県下ニ社員増募割当テヲナシ必ラズ一戸一人当リ加入スルコトヽナリタルヲ以テ進ンデ社員ニ入社セラレンコトヲ望ム 二 協議懇談申合事項 一 常会出席督励並ニ書類整備ノ件 出席簿及常会記録会計簿等ノ整理ヲ完全ニシ殊ニ常会出席ヲ督励シ戦時下ニ於ケル国家中心意識ヲ深メ決戦生活ノ心構ヲ復読実践シ益々戦力ヲ増強セントス 〔欄外注記〕一 配給券ハ現品到着ノ後出スコト 砂糖 塩 期間ヲ可成余裕アル如クスルコト 一 醤油 味噌(需用家ノ要求スル程ナシ) 三 特別申合事項 十二月 師走 報恩感謝致しませう 報徳訓 『年々歳々報徳ヲ忘ルベカラズ』 大東亜戦争第二周年ヲ迎フルノ時ニ当リ戦局ハ益凄惨苛烈ヲ極メ第一次乃至第五次ブーゲンビル島沖航空戦ニ於テ赫々タル戦果ヲ収メ敵米英ノ出血ハ殆ト咯血的消耗戦ニシテ如何ニ豊富ナル物的資源モ無限ノ補充ハ不可能ナリ我等ハ皇軍将兵ノ勇戦奮闘ニ感謝スルト共ニ皇恩神徳ニ報ヰナケレバナラヌ年々歳々徳ニ報イルヲ忘レテハイケナイ特ニ本年ノ如キハ一層感謝ノ念ヲ昂メテ戦力ノ増強ニ努メマセウ 四 閉会ノ辞 一同起立 敬礼 (仙石原村役場「村常会関係書類」(昭和十六-十九年)箱根町役場蔵) 七四 町内会部落会等の機構整備指導に関する件通牒 二十下総第一八四号 昭和二十年三月二十三日 足柄地方事務所長 各町村長殿 町内会部落会等ノ指導ニ関スル件 町内会部落会等ノ整備及運営ノ指導ニ関シテハ屡次ノ訓令通牒ニ依リ夫々御措置相成居候処戦局ハ真ニ熾烈ニシテ将ニ危急ノ秋戦局ノ要請ニ即応シテ町内会部落会等ノ指導ヲ強化シ隣保自治ノ本義ニ基キ愈々結束ヲ固クシテ挙国戦争即生活ノ態勢ヲ確立シ以テ国民ノ全生活ヲ挙ゲテ戦力増強ト皇土防衛トニ寄与セシムルハ真ニ喫緊ノ要務ナリト被存此ノ際特ニ左ノ諸点ニ御留意ノ上真ニ非常ノ熱意ヲ以テ速ニ之ガ機構ノ整備及運営ノ指導ニ付格段ノ御努力相成度 記 一 機構ノ整備ニ関スル事項 ⑴ 町内会部落会等ノ役職員ニ付適任者ノ選任ニ一層ノ努力ヲ致スト共ニ之ガ指導ヲ強化シ苟モ其ノ地位ヲ濫用スル不正不当ノ所為ナカラシムルコト 役職員ニシテ若シ不適当ナリト認メラルヽ者アルトキハ実情ニ応ジ適宜措置ニ依リ之ガ更迭ヲ期セシムルコト ⑵ 市区町村ニ於テ直接町内会部落会等ノ指導ノ任ニ当ル職員ノ人選ニ付特段ノ意ヲ用ヒ指導力ニ富メル熱意アル人物ヲ起用シテ其ノ陣容強化ヲ期シ之ガ指導ヲシテ単ナル形式的事務ニ堕スルガ如キコトナカラシムルコト ⑶ 町村ノ職員ヲシテ地区別ニ町内会部落会等ノ分担ヲ定メ責任ヲ以テ之ガ指導並ニ市区役所町村役場ト町内会部落会トノ連絡ニ当ラシムル等ノコトヲモ考慮スルコト 二 常会運営其ノ他ニ関スル事項 ⑴ 常会ノ運営ハ形式ニ流レズ実践的ナルコトヲ旨トシ各種国策ノ滲透徹底ニ付一段ノ工夫ヲ致スト共ニ国民ノ憤激ヲ熾烈ナラシメ国策ノ遂行ニ対スル部民ノ自発的協力ノ風ヲ盛ナラシムル如ク指導スルコト ⑵ 町内会部落会等ノ指導ニ当リテハ其ノ国民ノ道徳的錬成ト精神的団結ヲ図ルノ基礎組織タル点ニモ深ク留意シ之ヲシテ単ナル行政補助的下部組織ニ堕スルガ如キコトナカラシムルコト ⑶ 非常事態ニ際シテノ防空防火救護等ノ諸活動及増産供出等ニ付隣保相扶ノ団結ニ依リ総力ノ発揮ニ遺憾ナキ対策ヲ樹立実施セシムルコト ⑷ 町内会部落会等ノ指導ニ対シテハ大政翼賛会ニ於テ設置セル指導委員トノ連繋ヲ密ニシ之ガ指導ノ一元化重点化ヲ徹底スルコト (仙石原村役場「振興書類」(昭和十八-二十年)箱根町役場蔵) 七五 常会指導員選定に関する件通牒 二十下総発第四四四号 昭和廿年四月廿八日 足柄下地方事務所長三橋甚蔵(印) 仙石原村長殿 常会指導員選定ニ関スル件 有史以来世界戦史ニ見ル長期戦ノ勝敗ハ四年目ノ危機ヲ切リ抜ケ得タル国ニ勝利ノ栄冠アリ之ニ躓ケル国ハ悲シムベキ運命ヲ辿ルノガ常ナリ 今ヤ我ガ国ハ大東亜戦争四年目ノ危機ニ直面シ又四年目ノ神機ヲ得テ居ルノ時ナル故特ニ国民ノ士気ヲ昂揚シ最後迄頑張ルノ気魄ヲ養フコト極メテ緊要ナリ而シテ之レガ指導教化ハ各種常会ノ運営強化ニ俟ツコト甚ダ多シ然ルニ近来稍モスレバ常会ニ弛緩ノ風アルハ洵ニ遺憾トスル所ナルヲ以テ各町村ニ於テハ各種常会ノ指導ニ重点ヲ置キ左記要項ニ依リ常会指導員ヲ選定シ強力ナル精神教化ヲ実践セラレ聖戦完遂ノ目的ヲ達セラルヽ様特段ノ御努力相成度尚選定セラレタル人名ヲ左記様式ニ依リ来ル五月十日迄ニ御報告相成度此段及通知候也 記 常会指導員選定要項 一 選定人員 一町村 五名乃至十名 二 選任範囲 役場吏員学校職員町村参与町村会議員大政翼賛会役員各種団体長其他有識者中ノ熱意アル実践者タルコト三 指導要領 毎月町内部落隣組婦人常会等ノ日割表ヲ作成シ指導者出場計画ヲ樹立スルコト 様式 常会指導者人名報告書 何町村 住所生年月日職名略歴役職名指導者氏名 (仙石原村役場「振興書類」(昭和十八-二十年)箱根町役場蔵) 七六 アメリカなど交戦国の文書図画等届出制周知徹底の件通知 相発第九九号 昭和二十年四月五日 相模原町長(印) 各出張所長殿 敵ノ文書図画等ノ届出等ニ関スル省令制定周知徹底方ノ件 標記ノ件警察署長ヨリ通知有之次第ニ付管内一般ニ周知徹底方御取計相成度 敵ハ客月十六十七ノ両日艦載機ニヨル本土爆撃ヲ敢行シ其ノ際当管下ニモ多数ノ宣伝ビラヲ撒布シ更ニ最近大阪府下工場地域ニ約二十万枚ノ宣伝ビラヲ撒布セル等銃後ノ思想謀略ハ執拗ヲ極メツツアリ之ニヨリ一部ニ於テハ既ニ之等宣伝ビラ撒布ニ関スル流言行ハレ居ル状況ニ鑑ミ此ノ際左記回覧板要領ニヨリ至急町内各隣組ニ回覧セシメ省令ノ周知徹底並之ニ対スル部民ノ自発的協力的気運ヲ喚起シ敵ノ思想謀略ヲ封殺セラルル様御取計相成度此段及依頼候也 尚回覧板要領記載ノ冒頭ニ当局ヨリノ依頼ニ基キタルモノナル旨附記相成度 (左記) 回覧板要領 昨秋以来敵機ノ本土空襲ハ漸次熾烈ヲ加ヘテ参リ之ニ伴ヒ敵側ハ予期セル如ク各地ニ多数ノ宣伝ビラヲ撒布スルニ至ツタノデアル 従来当局トシテハ指導ニヨリ之ニ宣伝ビラ等ノ提出ヲ求メ今日迄県民ノ理解アル協力ニヨリ極メテ良好ナル成績ヲ収メツツアルガ今後敵ノ策動ハ執拗且ツ巧妙ヲ極ムルモノト予想セラレ度重ナルト遂ニハ届出等モ怠リ勝ニナリ敵側ヨリ付込マレル隙ヲ招来スル虞ガアルノデ今回規則ヲ定メ届出又ハ提出義務ヲ明確ニシ県民ノ協力ヲ求メル次第デアルガ左記了知ノ上敵側ノ謀略宣伝ヲ破摧シ以テ防諜ニ協力願ヒマス 神奈川県警察部 上溝警察署 記 一 敵ノ文書図画等ノ届出等ニ関スル件 (昭和二十年三月十日内務省令第六号) 敵ノ撒布又ハ送付シタル文書図画其ノ他ノ物件ヲ発見シ又ハ拾得若ハ収受シタル者ハ速ニ之ヲ警察官吏ニ届出デ又ハ差出スベシ 故ナク前項ノ届出又ハ差出ヲ怠リタル者ハ三ケ月以下ノ徴役若ハ拘留又ハ百円以下ノ罰金若ハ科料ニ処ス 二 (イ) 右ノ文書図画トハ 宣伝謀略用ビラ偽造衣料切符等ノミナラズ不用意又ハ墜落ノ際ニ落下セル参考図書ノコトデアル (ロ) 其ノ他ノ物件トハ 謀略用偽造紙幣万年筆菓子等ノコトデアル 以上 (麻溝出張所「時局関係綴」(昭和二十年)相模原市立図書館蔵) 七七 空襲時における情報放送の周知に関する件通知 相収第四六八号 昭和二十年四月十一日 相模原町長(印) 各出張所長殿 敵襲時ニ於ケル情報放送ノ周知ニ関スル件 敵襲時ニ於ケルラジオニ依ル情報放送ヲラジオ聴取者以外ノ者ニ周知セシムルコトハ最近ノ警報発令方法ニ鑑ミ且亦真空管不足ニ依ルラジオ聴取可能者ノ減少傾向ニ鑑ミ特ニ必要アリト認メラルヽヲ以テ至急左記ニ例示セルガ如キ措置ヲ講ゼラルヽ様一般へ周知方万遺憾ナキ様御配意相成度 追テ本件省営及私営交通機関ノ停車場ニ於ケル周知方ニ関シテハ運輸通信省ヨリ別途手配済ニ付御了知相成度 記 一 普通地域ニ於ケルモノ 隣組等ニ於テラジオノ設置ナキ家庭ニモ情報放送ヲ聴取シ得ルヤウ敵襲時ニ組内適当ノラジオヲ高声ニ戸外ニ向ケ掛ケシムルコト右ニテモ定ラザル時ハ適当ナル担当者(防火群長隣組長等ニシテ家庭ニラジオヲ有スルモノノ如キ)ヲ定メ置キ情報放送ノ都度巡回又ハ拡声器若ハメガホン等適当ナル方法ニ依リラジオ施設ナキ組員ニ周知セシムルコト 二 公衆ノ集合スル場所ニ於ケルモノ 公衆ノ集合スル場所(劇場映画館公集堂大商店等)ニ於テハ其ノ管理者ヲシテ拡声器ニ依リ(拡声器ナキ場合ハ適当ノ方法ニ依リ)情報放送ヲ直ニ集合者ニ伝達セシムルコト 三 交通者ノ多キ街路ニ於ケルモノ 市町村又ハ警防団等ヲシテ遊休ノ拡声器其ノ他ノ資材ヲ活用シテ拡声器ヲ施設セシメ又ハ沿道ノラジオ所有者ヲシテ其ノ設備ノ許ス限リ成ルベク高声ニ街路ニ向ヒラジオヲ掛ケムシムルコト等ニ依リ通行者ガ情報ヲ聴取シ得ルヤウ図ルコト 之ガ為拡声器ノ蒐集ニ付速ニ適当ナル措置ヲ講ズルコト 四 一般ニ対スルモノ 既ノ計画ノラジオ班ヲ活用スル外警察署及警防団等ハ前項ノ拡声器其ノ他メガホン等ヲ利用シ情報放送ヲ必要地域ニ伝達スルコト追テ二、三、四ハ既ニ各警察署ニ於テ実施中ノモノニツキ為念 (麻溝出張所「時局関係綴」(昭和二十年)相模原市立図書館蔵) 七八 撃墜敵機搭乗員に対する地方官民の措置に関する件通牒 相収第三六七号 昭和二十年四月十一日 相模原町長(印) 各出張所長殿 撃墜(不時着)敵機及搭乗員ニ対スル地方官民ノ措置ニ関スル件 敵空襲ノ激化スルニ伴ヒ今後彼我飛行機ノ墜落及搭乗員ノ落下傘ニヨル降下等ノ事案激増スベキニ鑑ミ曩ニ警察署長ヨリ関係機関ニ対シ之ガ措置ニ関シ指導ノ徹底ヲ図リツヽアル処ナルモ一部ニ於テ其ノ徹底不十分ニシテ敵味方ヲ誤認シ之ガ措置ヲ誤リタル等ノ事案発生セル場合アルヲ以テ今般本省ヨリ通牒ノ次第モ有之警備機関ノミナラズ隣組一般ニモ其ノ措置ニ関シ回覧板常会等ヲ通シ周知徹底セシムル様致度ニ付テハ左記文案ニヨリ御措置相成度此段及通牒候也 記 回覧文案 空襲が激化するに伴ひ激撃戦の結果友軍又は敵の飛行機墜落不時着及び搭乗員の落下傘による降下等があると思はれますが此等を見たら直ぐ最寄憲兵隊又は警察官警防団に届出をすると共に左の事柄に御留意して下さい 一 飛行機の墜落又は不時着を見たら友軍機の場合は出来得る限り火災の消防乗員の救出に努め敵機のときは爆弾等により危険の場合もあるから近寄らないこと 二 落下傘により降下した搭乗員は飛行服装の為敵味方の区別が判り難く負傷又は気絶状態のことが多いので昂奮せずよく注意して友軍の勇士ならば速く救護し不幸にして戦死されて居たら鄭重に取扱ひ軍隊から引取に見える迄適当の場所に安置すること 三 落下傘により敵兵が降下した時は大勢で取り囲み又は武器等で嚇かして捕へ若し逃走又抵抗の気配を示して危険のときは力を合せて之を捕獲すること 四 捕獲した敵兵は軍で有利な情報をとる必要があるので捕へた以上は昂奮して私刑的行為を加へたりせず届出により引取に来る迄監視し機体部品特物等が落ちてゐたら隠さず届け出ること 五 此等の事柄に就いては防諜上口外を慎み流言を散らす様なことを絶対に防ぐこと (麻溝出張所「時局関係綴」(昭和二十年)相模原市立図書館蔵) 第二編 昭和戦後(一) 第一章 政治改革 第一節 敗戦と県民地域 七九 横須賀終戦連絡委員会業務報告(一-二) ㈠ 横須賀終戦連絡委員会業務報告(昭和二十年九月前半期) 第一 準備期間 東久邇内閣総理大臣宮殿下ハ昭和二十年八月末横須賀ニ入港及上陸予定ノ連合国軍ニ対シテ撤退地域ニ於ケル諸情報ヲ提供シ進駐準備ヲ容易ナラシムルト共ニ其ノ要求スル進駐ニ応ズル基地ノ整備及宿舎並ニ給養等ノ統制斡旋ト之ニ伴フ案内接待等ニ関スル事務ヲ処理スル為八月二十四日附ヲ以テ横須賀鎮守府司令長官戸塚海軍中将ニ令旨ヲ賜ヒ仝地ニ之ガ連絡委員会ヲ設置シ二十五日ヨリ業務ヲ開始スベキ旨命ジ給ヘリ依テ戸塚中将ハ二十四日海軍側委員ヲ招集スルト共ニ外務省外各省ニ対シ委員ノ派遣方要望シ越シタルニ付本省ヨリハ太田(三郎)書記官西山(昭)事務官及長谷川(孝昭)属ヲ帯同シテ横須賀ニ出張シ本委員会ノ創設ニ参画セリ 八月二十七日戸塚委員長ハ前日来東京湾口ニ停留中ノ連合国軍艦ニ連絡ノ為幕僚高崎参謀(別ニ通訳将校一名)ヲ派遣セルガ仝日夕刻仝参謀連合国側要求事項(文書ニ依ル)ヲ持参シテ帰還シ右回答ハ翌二十八日十三時三十分迄英文ヲ以テ為スベキ旨伝ヘタルニ付委員会ハ小村参謀長以下総員徹宵之ガ翻訳ト準備ニ忙殺セラレタリ 本要求要旨左ノ如シ 一 日本軍隊ハ九月二日十八時迄ニ最小限度ノ必要人員ヲ残シテ逗子金沢ヲ結ブ線外ニ撤退スベキコト 二 軍事施設ハ迅速ニ指定通整頓シ引渡準備ヲ完了スベキコト 三 通訳及案内人ヲ指定ノ員数及位置ニ配備シ置クコト 八月二十八日十三時三十分川畑参謀副長竹宮少尉(通訳)ヲ帯同シテ連合国艦隊ニ赴キ米国側ニ対シ前日ノ回答文ヲ手交セリ 仝日夕刻川畑参謀副長ハ若干ノ注意書ヲ受領シテ帰来セルガ其ノ要旨左ノ如シ 一 連合国海軍ハ曩ニ提示セル約束ニ随ヒ八月三十日横須賀地区ニ上陸ヲ開始ス其ノ際路上ニ群集又ハ車輛ノ通行往来ヲ禁止ス 二 連合国空軍ハ上陸ニ先立ツ二十四時間内ニ飛行機上ヨリ消毒薬ヲ撒布スベク右ハ蚊其ノ他虫類ノ撲滅ニ有効ナルモノニシテ撒布機ハ白煙ノ如キモノヲ曳クベキモ市民警怖スルニ及バズ 八月二十九日当鎮守府司令部ハ連合軍側ノ要求ニ基キ三笠会館ニ移転シ連絡委員会事務所モ同様右ニ移一転セリ 尚仝日本省派遣ノ通訳三十名(全員東京都中学教員)来着セルヲ以テ幕僚会議ヲ開催シ各省派遣員ト協議ノ上之ガ配置ヲ定メ所要事項ニ付最後的打合セヲ為シ米軍上陸ニ対スル一切ノ準備ヲ完了セリ 因ニ本省派遣員ハ太田書記官速日帰京シ西山事務官及長谷川属(官補書記生)ノ二名ニテ当面ノ事務ヲ処理シ居リタル処其ノ後古沢官補書記生岡本中島両嘱託及女子「タイピスト」弐名ヲ追加シ八月二十九日本官関副領事ヲ帯同シテ来援シ鎮守府幹部トモ協議ノ上三十日ノ上陸ニ備ヘタルガ事態ノ推移ニ随ヒ爾来引続キ当地ニ滞在連絡並ニ事務ノ処理ヲ統轄シ居ル次第ナリ 第二 米軍上陸初期ニ於ケル動向 九月三十日午前十時「ハルゼー」米国第三艦隊司令長官代理「バツヂヤー」少将ハ海軍桟橋ヨリ上陸シ仝桟橋上ニ於テ戸塚横須賀鎮守府司令長官ヨリ引渡書ノ転達ヲ受ケタリ 終ツテ午前十時半米国海兵隊ノ一部ハ完璧ノ戦時武装ヲ以テ桟橋ヨリ上陸ヲ開始シタルガ先鉾隊ノ一部(十数名)ハ機関銃小銃等ヲ擬シツヽ三笠会館内司令部事務室ニ侵入シ来リ将校二三名ニテ保管武器ノ存否ヲ確カメ案内役タル横鎮幕僚畠山参謀中佐ノ説明ニテ納得シ司令部玄関ニ兵数名ヲ残シテ退室セルガ孰レモ興奮緊張ノ面持ナリシモ我方ノ態度極メテ平静ニシテ何等興奮ノ色ナク紳士的応待振リニ米国将兵モ漸ク安堵セルモノノ如シ 他方市内ニ於テハ米国側ヨリ「上陸開始後占領指定地区附近ノ路上ニ動クモノハ人畜ノ如何ヲ問ハズ総テ飛行機ヨリ掃射スベキ」旨ノ予告アリタル為仝日ハ早朝ヨリ市民ノ住来影ヲ潜メ上陸米軍ハ横須賀駅前ヨリ警備隊本部前ニ到ル鋪装道路占領地区ヲ限界トシテ之ヲ占拠シ十数間毎ニ歩哨ヲ立テテ監視ヲ行ヘルガ占領地区内外共至ツテ平穏ニシテ一発ノ発砲事件モナク極メテ平和裡ニ進駐ヲ了シタリ然ルニ米軍上陸後六時間以内ニ米兵ニ依ル強姦既遂三件仝未遂一件及腕時計金銭巡査ノ帯剣小銃等ノ掠奪事件アリテ人心ノ動揺蔽ヒ難キモノアリシガ鎮守府幕僚ヲ中心ニ外務内務両省委員憲兵隊警察側代表ト協議ノ上上陸軍指揮官「バツヂヤー」少将宛公文ヲ以テ右取締及処分方ヲ申入ルルコトニ決定シ一括之ヲ米側ニ提示セリ 上陸米兵ノ動静ヨリ察スルニ当地区上陸米兵ハ太平洋上歴戦ノ海兵隊ニシテ当初心身共ニ疲労シ居リ気分荒ビ感情ヲ自制スルコト困難ニシテ酒色ヲ追求シ戦利品又ハ「スーヴエニア」トシテ入手シ得ル物品ハ手当リ次第掠奪セントスル傾向ヲ有シ居リタルガ米軍指揮官ノ威令ノ浸透ト統制力ニ依リ日ヲ逐フテ平静ニ復シ治安ハ日々ニ好転シ民心モ次第ニ安定スルヲ得タリ 第三 連絡会議(連絡委員会会報) 曩ニ連合軍ノ進駐ニ伴ヒ総理大臣宮殿下ノ令旨ニ基キ当地ニ戸塚鎮守府司令長官ヲ委員長トスル連絡委員会ヲ設置シタル次第ナルガ其ノ機構モ横鎮幕僚ヲ主体トシテ外務内務陸軍大蔵農商運輸及逓信ノ各省派遣員ヲ配合シ当初之ヲ総務部対外部及対内部ノ三部ニ大別シテ当面ノ事務処理ヲ計リ来リタル処其ノ後右ヲ総務部会連絡部会及処理部会ノ三部会組織トシ各部会ニ幹事長一名幹事二名委員及委員附若干名ヲ置カントセルモ終戦事務ノ処理上不便多ク仍テ本官ノ提案ニ基キ之ヲ総務部会軍事部会及民事部会ノ三部会ニ変更シ(別添付録一参照)一般軍事問題ハ川畑参謀副長ヲ幹事長トシ陸海軍関係官ノミヲ以テ組織セル軍事部会ニ於テ又民事全般ハ本官ヲ幹事長トスル民事部会ニ於テ夫々処理スルコトトセリ 尚本委員会ハ終戦事務処理上直接関係ヲ有スル横須賀市役所仝警察署仝駅及郵便局警備隊電気通信工事局税務所興信銀行支店三浦地方事務所東亜交通公社等ノ幹部ニ夫々事務ヲ委嘱シ(付録二参照)而テ連日午後四時ヨリ三笠会館内事務室ニ会合シテ各方面ノ情報及意見ノ交換ヲ為シ事件ノ処理方針ヲ決定シツヽアル次第ナリ〔以下略〕 〔注一、二〕別添省略。 ㈡ 終戦連絡横須賀事務局業務報告(昭和二十年十月) 第一 終戦連絡地方事務局ノ開設 昭和二十年十月一日勅令第五五〇号ヲ以テ終戦連絡事務局官制改正公布セラレ次デ十月十日右官制第二条ニ基キ外務省告示第五号ヲ以テ横須賀市ニ終戦連絡地方事務局開設セラレ「終戦連絡横須賀事務局」ト呼称セラルルコトヽナリ本官之ガ事務局長ニ任命セラレタル次第ナル処爾来横須賀終戦連絡委員会ハ横須賀鎮守府司令長官ヲ以テ委員長ニ充テラレ居タルガ其ノ実質ハ漸次海軍側ヨリ各省委員ニ事務ノ担当ヲ移譲セラレツヽアリシ次第ニシテ十月二十日戸塚中将連絡委員会委員長ヲ辞任シ右ニ伴ヒ鎮守府幕僚並ニ関係官一同久里浜旧通信学校ニ移転シ海軍側ヨリ川畑参謀副長(少将)泉大佐久馬及藤田(主計)中佐並ニ山内主計大尉ノ五名他ニ陸軍側ヨリ塚田大佐当事務局ニ残留スルコトヽナリ右ニ運輸省ヨリ吉武書記官及黒田事務官ノ来任(連絡官トシテ)ヲ得テ茲ニ新タナル発足ヲ見ルニ到リタル次第ナリ 依テ本官ハ十月二十五日公文ヲ以テ左記関係当局者ニ対シ前記地方事務局ノ開設ト本官事務局長就任ノ旨ヲ通告スルト共ニ委員会規程ノ先例ニ慣ヒ当事務局ノ事務ヲ委嘱セリ 記 横須賀市助役 加藤木保次 仝 市総務部長 松本烈 仝 市経済部長 羽生健次 仝 市土木部長 大村四郎 仝 市水道部長 神田真美 神奈川県横須賀土木出張所長 長谷川正勝 横須賀警察署長 山本圀士 仝 警部 松尾久一 仝 警部補 中村美 横須賀駅長鉄道官 山本義夫 神奈川県商工経済会横須賀支部長 松田徳太郎 仝 仝支部事務長 手島三郎 横浜興信銀行横須賀支店長 日本交通公社横須賀事務所長 巌野可明(日銀代理店) 三宅侃二 横須賀海仁会病院長 長谷川静一 横須賀税務署長 金子五郎 横須賀郵便局長 石井新蔵 横須賀電話工事局長 北園良雄 関東配電神奈川支店横須賀営業所長 角田孝太郎 横須賀国民勤労動員所長 深津直四郎 専売局横須賀出張所長 菅沼要 神奈川県三浦地方事務所長 渋谷寛吾 船舶運営会横須賀出張所長 和田金五郎 因ニ外務省側連絡官並ニ職員ハ左ノ通 終戦連絡横須賀事務局長連絡官 高岡禎一郎 連絡官 佐藤由已 仝 宇井儀一 仝 笠井重雄 仝 関興吉 仝 秋山孝 連絡官補 本多信寿 仝 長谷川孝昭 仝 古沢一男 官補書記生 岩間龍夫 嘱託 鈴木藤蔵 仝 中島薫 仝 内田勇(十月九日採用) 仝 山田孫次郎(十月二十五日採用) 仝 堀江生蔵 仝(タイピスト)横山リリ 前記機構ノ切替ニ依ル事務局ノ業務ハ概ネ委員会当時ノ体系ヲ踏襲スルコトヽセルガ軍事問題ニ関シテハ前述六名ノ陸海軍武官之ガ掌ニ当リ民事問題ニ関シテハ旧民事部会職員及運輸厚生(当時未赴任)両省連絡官ヲシテ之ヲ担当セシメ又庶務及会計ニ関シテハ十月十七日庶務一般ヲ木村主計大尉ヨリ仝十九日会計事務ヲ藤田主計中佐ヨリ夫々引継ヲ了シ本省側職員ヲシテ之ヲ管掌セシムルコトヽナレリ尚九月末米国第三艦隊帰国シ第五艦隊旗艦「ニユージヨージア」号横須賀ニ来航シ当港ヲ根拠地ト定メタルニ依リ海軍ニ於テハ武器弾薬軍需品及海軍諸施設ノ引渡ニ関シ第五艦隊ト連絡ノ為メ十月一日矢野少将ヲ機関長トスル連絡機関ヲ開設シ当事務局(当時委員会)庁舎内ニ事務所ヲ置キ十月三日矢野機関長実松大佐以下五名ノ補佐官及職員ト共ニ来任シ執務ヲ開始セルガ右ニ対シ内務省側ヨリ井上書記官坂東事務官及属官一名調査部派遣員トシテ之ニ参加セリ 第二 労働問題 進駐軍ニ対スル労務ノ供給ハ「ポツダム」宣言履行上重要ナル要素トシテ連合国最高司令部指令第二号四ニ明示セラレ居ルモノニシテ本問題ニ付テハ各地ニ於テ幾多困難ナル事態ヲ招来シ居ル趣ナルガ当地方ニ於テモ種々煩雑ナル事件ノ発生ヲ見居ル次第ナル処其ノ主タルモノヲ列挙スレバ ㈠ 労務省ノ出動員数ノ不足 ㈡ 労務者ノ怠慢及窃盗行為 ㈢ 継続事業ニ関スル労務者ノ「顔触」ノ変更 ㈣ 雨天其ノ他荒天日ニ於ケル出勤率ノ激減 ㈤ 労務者ノ賃銀ノ支払問題 ㈥ 少年及老年者ノ労務従事 右㈠及㈡ニ関シテハ九月中旬以来米側指揮官ヨリ本官並ニ警察署長ニ対シ其ノ都度不満ヲ表明シ我方ノ善処方ヲ強要セルガ十月一日「ケツシング」代将山本警察署長ヲ招致シ(イ)労務者ガ常ニ米側要求数ニ満タザルコト及(ロ)「セイムメン・セイムジヨツブス」(Same men S-ame jobs)ノ主旨ヲ徹底セシムベキコトヲ命ジ右解決不可能ナルニ於テハ断固タル措置ヲ執ルベキ旨言明セリ 警察当局トシテハ之ガ対策トシテ労務者ノ斡旋及統制ハ勤労動員署ニ於テ之ヲ担当アリ度キ旨希望シ又労務者ノ監督ノ設置等ヲ考慮セルモ結局労務請負業者ノ責任ニ於テ之ガ解決ヲ計ルコトニ決定シ労務者ノ怠慢ニ対スル警察ノ取締ヲ強化セシメ其ノ後事態ハ漸ク好転シ偶々十月四日荒天ニ於ケル火薬投棄作業中海上ニ於テ爆発事故発生シ四十四名ノ遭難者ヲ出ダシ(死者及行衛不明三十五名重軽傷九名)内本省臨時嘱託通訳二名ハ重傷ヲ負ヒ九死ニ一生ヲ得タル次第ニシテ米側ニ於テモ右犠牲者ニ対シ深甚ナル同情ヲ表明シ委員会ニ於テモ労働者災害扶助法ノ適用方ニ付研究スルコトヽセルガ九月下旬以来荒天屡々ニシテ労務者ノ出席数ノ激減ヲ見タルモ米側ニ於テハ寧ロ雨衣ノ提供ヲ考慮スル等同情的態度ヲ示シ来タレリ 然ルニ他面労銀ノ高騰ト需要ノ増大ニ伴ヒ労務者中ニ少年乃至老年者ヲ交フル傾向著シク十月二十七日「ケツシング」代将本官ヲ招致シ(イ)労務者ノ供給ヲ尚一層充分ナラシムルコト及(ロ)老人及少年ノ使用禁止方ヲ要求セルガ翌二十八日米軍司令部構内清掃者中ニ数名ノ少年ヲ含ミ居ルヲ発見セラレ「ケツシング」ハ再ビ本官及警察署長並ニ業者側責任者ヲ招致シ現場ヲ指摘シテ最後的考慮ヲ促シ前記二項((イ)及(ロ))ノ厳守方ヲ命令セルヲ以テ爾後警察側ヲシテ米司令部前其ノ他労務者集会地点ニ三名ノ警官ヲ配置シテ出勤労務者ノ減員ト老少年ノ参加ヲ防止セシムルコトヽセリ 次ニ米側ニ於テハ労務者(就中熟練労務者)ノ賃銀支払ニ付キ大ナル関心ヲ抱キ労務監督士官中個別的ニ事務局ニ問合セヲ為シ来タル者アリタルガ他方米軍司令部内労務係官ニ於テ佐藤連絡官ト之ガ支払方法ニ関シ種々協議ヲ重ネタル結果十月十七日米軍基地指揮官(Captain of the Yard) ヨリ戸塚中将並ニ本官ニ宛テ左記趣旨ノ指令ヲ送達シ越セリ(附録一参照)既チ 一九四五年十月十五日佐藤領事戸塚中将及米国陸海軍士官協議ノ結果熟練労働者ノ各組ノ代表ハ姓名住所及支払ヲ受ケザル労働時間ヲ纒メタル名薄ヲ日本政府当局ニ差出シ各組ノ米国監督官ハ本名薄ニ署名シ当該労務者ノ日本海軍関係者ナル場合ハ十月十八日迄ニ之ヲ戸塚中将ニ又一般市民ナル場合ハ之ヲ日本政府連絡事務局(高岡参事官宛)ニ提出シ十月二十日午後四時ヨリ五時迄ノ間ニ右名薄ニ基キ三笠会館内連絡事務局及海軍事務所ニ於テ賃銀ノ支払ヲ行ハルベク尚ホ自今毎土曜日同時刻本件支払ハ規則正シク為サルベキコト 右ニ随ヒ当事務局ニ於テハ熟練工及進駐軍ト直接契約ニ依リ雇傭セラレタル労務者ノ労銀支払ノ為メ準備完了シ居タルモ当日支払ヲ受ケタルモノ僅カニ数組ニ過ギザリシ状態ナリシガ其ノ後本旨令ノ徹底ニ伴ヒ之ガ支払ハ毎土曜日順調ニ行ハレツヽアリ尚元海軍工廠施設部及技術廠等ニ於テ終戦後引続キ元職場ニ留マリ進駐軍ニ労務ヲ提供シツヽアル海軍関係工員ニ対シテハ其ノ復員ト共ニ当事務局ヨリ支払ヲ受ケシムルコトヽナリ居レルガ又市役所其ノ他官公署直属ノ工員ノ賃銀ノ不均衡ニ関シテハ関係官公署ニ於テ研究セシムルコトヽセリ 以上当事務局ニ於ケル労務供給ノ概況ヲ申述ベタル次第ナルガ本件ニ関シテハ別号計細報告申進スルコトヽ致シ度ク為念申添フ 〔以下略〕 (「各地方軍政状況報告関係綴」(昭和二十年)外務省外交史料館蔵) 〔注一〕 本官とは終戦連絡横須賀事務局長高岡禎一郎をさす。 〔注二〕 附録一省略。 八〇 アメリカ合衆国進駐軍軍人宿舎勤務誓約書 誓約書 今般市役所ノ御斡旋ニ依リ米国進駐軍将校宿舎ニ就職致スコトヽ相成候処先方ノ申付通リ誠実ニ勤務シ国ノ名誉ト日本人ノ信用ヲ失墜致サヽル様心掛クルハ勿論斡旋者タル市御当局ニ対シテ御迷惑等ノ相掛ラザル様充分戒心留意致スベク茲ニ保証人連署ノ上誓約仕候也昭和二十年九月五日 横須賀市○○○○○○ 本人○○○○(印) 横須賀市○○○○○○ 保証人○○○○(印) 横須賀市長 梅津芳三殿 (「司令部将校宿舎傭人名簿」(昭和二十年)加藤木保次氏蔵) 八一 敗戦後の旧日本国軍隊の国家再建参加 昭和二十年八月十八日 突第一〇一三〇部隊長(印) 足柄下郡仙石原村長殿 当兵団作戦準備間ハ幾多障碍ノ発生ニモ不拘能ク軍ノ意ノ在ル所ヲ察セラレ労務等ニ絶大ナル御協力ヲ賜リ以御蔭短期間中ニ多大ノ成果ヲ挙クルコトヲ得誠ニ感謝ノ外ナク茲ニ衷心ヨリ識意ヲ奉表候 然ルニ事態ハ急転シ闘魂空シク悲涙ヲ呑ムデ矛ヲ収ムルノ余儀ナキニ至リタルハ折角ノ御尽力ニ対シ真ニ申訳ナキ仕儀ニ存候 此ノ上ハ唯々御聖断ノ御意図ニ副ヒ只管ニ大命ヲ待チ将来ノ国家建設ニ邁進仕度候 就者当兵団ニ於テ戦備ノ傍ラ左記事項ニ意ヲ用ヒ度候条貴管内ニ於テ御希望御要求有之候ハバ忌憚ナク御申越相成度乍微力万全ヲ尽ス所存ニ御座候 追而右要望ハ市役所地方事務所ニ於テ取纒メ一括御請求相成度依頼申上候 左記 一 道路小橋梁修繕 二 援農 三 小運送 四 戦災整理 (仙石原村役場「兵事書類」(昭和二十年)箱根町役場蔵) 八二 時局転換下の軍事援護に関する件通達 二十発兵収第一、三六四号 昭和二十年九月十七日 愛甲地方事務所長(印) 玉川村長殿 時局転換ノ下ニ於ケル軍事援護ニ関スル件 標記ノ件ニ関シテハ本月五日付二十発兵第一、三三三号ヲ以テ通知致置候処尚之ガ実施ニ際シテハ差当リ左記各項ニ留意シ特ニ町村ノ実情ニ即応シ迅速適切ナル措置ヲ講ズル様其筋ヨリ通牒有之候条急変セル時局下ノ軍人援護ニ遺憾ナキヲ期セラレ度 記 一 軍事扶助法ノ施行ニ当リテハ今後絶ヘズ召集解除又ハ除隊トナリタル下士官兵ノ実体ノ把握ニ意ヲ用ヒ其ノ扶助ノ継続又ハ変更或ハ廃止ニ細心ノ注意ヲ払フコト 一 急変セル時局ニ依リ軍人ノ遺族家族又ハ傷痍軍人等ニシテ新ニ生活困難トナリタルモノニ対シテハ軍事扶助法又ハ援護団体ノ援護ヲ迅速適切ニ実施スルコト 一 軍事援護事業計画ニ付テハ此ノ際再検討ヲ行ヒ実施ノ要ナキニ至リタルモノ又ハ見合スベキモノハ中止スル傍ラ新規計画ヲ要スル戦後ノ軍人援護事業ニ特ニ重点ヲ置キ速ニ其ノ転換ノ方針ヲ講ズルコト 一 召集解除者生業援護事業ニハ特ニ力ヲ注ギ苟モ皇国防衛ノ第一線ニ立チテ勇戦奮闘セル将兵ヲ失望落胆セシメザル様留意シ其ノ援護ニ万全ヲ期スルコト 一 町村軍事援護相談所市町村銃後奉公会等ニアリテハ戦時中比較的職員ニ其ノ人ヲ得ザリシ憾アリタルニ付此ノ際傷痍軍人召集解除者其ノ他ノ中ヨリ適任者ヲ極力採用シ人的充実ニヨリ其ノ積極的活動ヲ促進シ本来ノ目的達成ヲ図ルコト 一 戦歿軍人遺児育英資金給与者事業及戦歿者遺児委託教養事業ニ付テハ趣旨ノ普及徹底ト敏速的確ナル実施ヲ図リ特ニ弧児ニ付テハ克ク実情ヲ調査シ要援護者ニ対シテハ速ニ温キ援護ヲ差伸べ苟モ援護ヨリ洩ルヽガ如キコトナキ様万全ノ留意ヲナスコト 一 軍人遺族家族ノ授産事業ニ付テハ軍需品制作ニ重点ヲ置キ拡充ヲ図リ居リタルモ此ノ際事業ノ内容ニ再検討ヲ加へ国民生活必需品制作並ニ厚生作業等ニ機能ヲ転換セシメ積極的ニ事業ヲ強化シ援護ノ徹底ヲ期スルコト 一 帰還軍人ノ帰郷ニ際シテハ深キ感謝ノ念ヲ以テ之ヲ迎フルト共ニ軍人遺族家族ニ対シテハ婦人指導嘱託婦人相談員等ヲ極力活用シ此ノ際慰籍激励セシメラレタキコト 一 軍人援護教育ハ急変セル新事態ニ即応セシメツヽ将来ニ継続実施ノ要アリ 一 戦歿軍人個人ノ墓碑ノ建設ハ従来抑制セシメ居リタルモ賛沢ニ亘ルコトナキ様注意シ徐々ニ建設スルモ差支ヘナキコト (玉川村役場「復員関係書類」(昭和二十年)厚木市役所蔵) 八三 神奈川県下全市民代表の食糧供出懇請電報文案 供出懇請電報文案 一 関係県知事宛 神奈川県下全市市民ハ甚シキハ十有数日少クモ四日乃至五日ノ主食欠配シ正ニ飢餓線ニ彷徨ス 貴県生産者各位此ノ窮状ヲ諒トセラレ一日モ速カニ割当量ノ充分ナル供出ヲ御実行相成度此段 閣下ヨリ貴県内関係方面ニ洩レナク伝達御督励乞フ右切ニ懇請ス 神奈川県下全市市民代表 緊急食糧対策委員会 二 関係県農業会長宛 神奈川県下全市市民ハ甚ダシキハ十有数日少クモ四日乃至五日ノ主食欠配シ正ニ飢餓線上ニ彷徨ス 貴県生産者各位此窮状ヲ諒トセラレ一日モ速カニ割当量ノ充分ナル供出ヲ御実行相成度此段 貴下ヨリヨロシク伝達御督励乞フ 右切ニ懇請ス 神奈川県下全市市民代表 緊急食糧対策委員会 (加藤木保次氏蔵) 八四 横須賀市の食糧危機に関する陳情書 (一-二) ㈠ 陳情書 現下食糧事情ノ窮迫ハ愈々其ノ緊迫度ヲ加へ本市ニ於ケル主食ノ欠配状況多キハ十数日少キモ一週間ニ及ビ市民大衆ノ不安動揺益々顕著トナリテ集団的示威行為ヲ為スニ至リ危機ハ将ニ其ノ頂点ニ達シツヽアルヲ以テ本市会ハ市、警察当局ト協力シテ極力不祥事ノ発生ヲ防止スルト共ニ他面消費者代表ヲ新潟、秋田等ノ本県向米穀出荷県ニ派遣シ関係方面ニ対シ縷々窮状ヲ訴へ出荷ノ懇願ヲナシタルモ結果ニ於テ効ヲ奏スルコト能ハザリシヲ遺憾トス今ヤ市民ハ全ク餓死線上ヲ彷徨スルノ状態ニ置カレツヽアリ 仍テ県当局ハ更ニ一層ノ努力ヲ傾倒セラレ連合軍ニ対シ救援ノ懇願ヲ継続サルヽト共ニ政府当局ニ対シ速ニ強力適正ナル政治的非常措置ヲ実行サルヽ様具申相成度 茲ニ市会ノ決議ヲ以テ及陳情候也 昭和二十一年五月十五日 横須賀市会議長 酒井 衛 ㈡ 陳情書 閣下ニ於カレテハ平素横須賀市民ノ食糧事情ニ関シ多大ノ御理解ト御援助ヲ賜リ市民一同衷心ヨリ感謝致シテ居リマス。 御承知ノ通リ本市ニ於ケル米其他ノ主食ノ配給ハ最近著シク悪化シ欠配ハ平均一週間以上ニナツテ居リマス。ソノタメ市民大衆ノ不安動揺ハ日々顕著トナリ集団的示威行為スラ見ルニ至リマシタ。 若シ万一不祥事ノ発生スル様ナコトガアリマスレバ日本国民トシテ洵ニ不幸ナコトデアリ且全世界ニ対シ不名誉ナコトデアリマスカラ私達市会議員ハ市民代表トシテ市、警察当局ト協力シテ極力其ノ防止ニ努力シツヽアリマス。他面米ノ入荷ヲ促進スルタメ私達ハ市民代表数名ヲ出荷県ニ派遣シテ市民生活ノ窮状ヲ訴ヘテ出荷ノ懇願ヲ致シタノデアリマスガ農村ニ於ケル食糧事情モ亦前途不安ノタメ代表者達ノ努力モ結局効ヲ奏スルコトガ出来ナカツタノデアリマス。 市民ハ迫リツヽアル餓死ヲ怖レ巷ニハ吾々ハ近ク餓死スルノダトイフ悲痛ナ叫ビガ日々ニ高マリツヽアリマス。 斯ノ如キ市民ノ窮状ヲ救フ決定的ノ方法ハ閣下ノ御同情ニヨル御援助以外ニハナイノデアリマス。何卒横須賀市民ノ苦境ヲ一日モ速ニ御救援賜ル様市会議員一同市民ヲ代表シテ懇願致ス次第デアリマス。 年 月 日 横須賀市会議員一同 氏名(印) 海軍基地司令官 デツカー大佐 第八軍司令官 アイケルバーカー中将閣下 連合軍総司令官 マツカーサー元帥閣下 (横須賀市「市会に関する書類」(昭和二十年)横須賀市役所蔵) 八五 敗戦後の町村常会等指導方針要旨 常会指導要旨 昭和二十年九月廿五日印刷 足柄下地方事務所 一 戦争終結後ニ於ケル国運ノ再建ト勇邁ナル国民気魄ノ振作 大詔ノ渙発ニ依リ戦争終熄ヲ見茲ニ新日本建設ノ大業ヲ完遂シ正シキ道義観ニ立脚セル世界平和ニ貢献セントスルハ大詔ノ明示シ給フ処デアルカラ吾々国民ハ今後如何ナル艱難ニ遭遇スルモ堪へ難キニ堪へ忍ビ難キヲ忍ビ国体護持ト国運ノ開拓ニ邁進セナケレバナラヌ之ガ為メニハ吾々国民ハ徒ラニ悲観惟悴スルコトナク旺盛ナル復興精神ト剛健ナル国民気魄ノ振作ニ依ツテ益々敢闘セネバナラヌ 二 開闢ノ大道ト報徳精神 如何ニ国土ガ狭小ナルモ皇祖開闢ノ昔ヲ思ヘバ天分ハ莫大ナル増加デアルカラ国民ハ此ノ天分ニ随ツテ分度ヲ確立シ皇祖皇宗ノ国ヲ肇ムル精神ヲ以テ勤労スレバ必ラズ文化的平和ナ新日本ノ建設ハ完成スルノデアツテ之レガ即チ皇国二千六百年以来ノ神徳皇徳ノ君恩ニ報ユルニ我ガ徳ヲ以テ報ユルト云フ報徳ノ道デアリ開闢ノ大道デアルカラ報徳ノ教ニ依リテ国体ノ精華ヲ世界ニ発揚セネバナラヌ 三 自由尊重ト義務観念ノ昂揚 新シキ文化ト平和的国家ヲ建設シ国民ノ自由ヲ尊重スルコトハ今後ニ於ケル政治経済思想上各般ニ渉ル機構ノ一大転換デアルト共ニ吾々国民ハ義務履行観念ヲ最モ強ク最モ厳格ニ履行セネバナラヌ自由ト義務トハ表裏一体ノモノデ在ツテ義務観念ニ乏シキ者ガアレバ必ラズ他人ノ自由ヲ傷ケルコトニナルカラ深ク自由主義ノ正体ヲ研究シテ正シク理解シテ社界ニ貢献セネバナラヌ 四 食糧増産ト供出ニ就テ 国民ノ衣食住ニ不安ナカラシムルハ最モ緊急ナル国策デアルト同時ニ他力ニ依ツテ安定ヲ期スルニ非ラズシテ吾々ガ荊ノ道ヲ切リ開イテ食糧ノ増産ヲ図リ円満ナル供出ノ実ヲ挙ゲテ始メテ食生活ノ不安ヲ芟除スルコトガ出来ル 即チ農ハ国ノ大本タル所以ハ実ニ茲ニ存スルノデアルカラ二宮尊徳先生ノ荒地ハ荒地ノ力カラ開発シ生々発展ヲ期スルノデ全国ニハ四百万町歩ノ開墾可能地ガ力強キ国民ノ発奮力ヲ待ツテ居ル之レヲ完全ニ耕地トシテコソ食生活ハ安定スルノデ国民ハ私利私欲ノ為メ増産供出スルノデハナイ崇高ナル道義心ニ基ク社会政策ヲ理解シ喜ンデ之レニ応ジナケレバナラヌト同時ニ如斯尊キ農民精神ニ依ツテ増産サレタ食糧ノ尊サヲ思ヒ一人デモ徒食者ガアツテハナラヌ「一日勤メザレバ一日食サズ」ヲ元則トシテ一般ニ指導スルコトガ肝要デアル 「天地の恵み積み置く無尽蔵 鍬で堀り出せ鎌で刈りとれ」 二宮先生道歌 財非無 勤労無也 食非無 勤無故也 五 悪性インフレ防止ニ就テ 戦争終結ト同時ニ軍費ノ放出ハ終止スルガ戦災復興費産業転換費トカ或ハ各種ノ施設費等多種多様ノ出費ガ有ツテ我国経済ノ負担ハ益々加重スルノデアツテ最近著シク通貨ノ膨張ヲ見ルニ至ツタガ国民ニ戦争ガ終ツタカラ貯蓄ハ必要ガナイ等ト心ニ弛ミガ生ズルナラバ怖ルベキインフレーシヨンノ惨害ヲ被ルコト火ヲ見ルヨリ明ラカデ遂ニ収拾スベカラザル破壊混乱ニ陥ラシメルカラ国民経済安定ノ為ニモ国家経済ノ堅実ヲ期スル為メニモ各種貯蓄ヲ一層強化シ殊ニ闇取引等ノ為メ物価ノ高騰スル事ハ一面ニ売主トシテ個人ノ懐中ニ財価ガ増シタ様ニ思フガ貨幣価値ヲ其レダケ下落セシメテ即チ自己ノ財産価値ヲ其レ丈下ゲテ居ルノデアルカラ却テ大損ヲシテ居ルノデアル此ノ点ヲ克ク理解セシメテ官懈ノ取締リヲ受ケル迄モナク自発的ニ根絶ヲ期セネバナラヌ 六 時代ノ推移ニ即応セヨ 戦争終結ト同時ニ時々刻々ト時代ガ変遷スルコトハ当然ノ情勢デアルカラ吾々ハ常ニ常会ヲ通ジテ正シク時代ノ推移ヲ認識シテ将来国民ノ嚮フベキ方途ヲ誤ラザル様ニ研鑽指導セネバナラヌ殊ニ農ヲ営ムニモ工商業ヲ営ムニモ譲ノ精神ヲ以テ自己ノ利欲ヲシテ顧ミズ社会ヲ利スル為メ又各部落隣組ヲ一家族的ニ融和共助スル為メニモ譲ノ精神ヲ培ヒ道義ヲ昂揚セネバナラヌ 「一邑譲ニ興レバ一国譲ニ興ル 譲無損 奪無益」 (仙石原村役場「足柄下郡常会書類」(昭和十七年)箱根町役場蔵) 八六 神奈川県足柄下郡常会(一-六) ㈠ 十月郡常会提案事項 十月六日自 午前十時 至 正午 総務課 一 進駐軍ニ対スル国民ノ態度ニ就テ 進駐軍ニ対シテハ飽迄親切ニ日本国民トシテノ襟度ヲ失ハヌ様ニセネバナラヌ国情及風俗ノ相違ト言語ノ通ゼヌ為メ諸種ノ問題ヲ起シ易イカラ其点ニモ細心ノ注意ヲ払フ必要ガアル又学童ヤ少年等ノ取締指導ニ関シテモ学校当局者ニノミ依存スルコトナク父兄ガ其任ニ当ラナケレバナラヌカラ充分注意ヲ望ム 二 常会運営強化並ニ定例日変更ノ件 戦争終結後ニ於ケル国運ノ再建ト国民気魄ノ振作ノ為メ各種常会ノ運営ヲ最高度ニ発揮シ正シキ道義ニ立脚スル世界平和ニ貢献シ文化新日本ノ建設ニ邁進セネバナラヌカラ各町村ニ於テハ之レガ指導運営ニ極力意ヲ用ヰラレ万遺憾ナカランコトヲ望ム尚ホ常会定例日ヲ左記ノ通リ変更セントス ⑴{郡常会 毎月廿五日午前十時開始 町村常会 毎月自廿六日至翌月五日間ニ於テ決定 部落町内隣組常会 毎月町村常会終了後十日頃迄ニ終了 ⑵ 常会指導運営研究会ノ開催 別紙通牒ノ日割ヲ以テ開催シ県ヨリモ関係官出席ノ予定ニ付各町村長及庶務主任(主トシテ常会事務担当者)並ニ町村常会指導員全員参加出席セシメラレタシ 三 戦後ノ貯蓄推進並ニインフレ防止対策ニ関スル件 戦後ノ貯蓄推進ハ非常ニ困難ナル点アルモ通貨ノ膨張ニ伴ヒ悪性インフレ現出ノ恐レアルヲ以テ極力手持資金ノ吸収ニ努メ自己経済ノ保全ト国家経済ノ確立ヲ期セラレンコトヲ望ム 学務課 四 帰村青年学校義務就学該当者ノ公立青年学校へ入学督励並ニ一般青年層ノ教育指導強化ノ件 五 道義教育並ニ科学教育振興ノ件 国民ノ学力道義心ノ低下ハ敗戦ノ最大原因タリト思料セラルヽ今日日本再建ノ鍵ハ特ニ之レガ二道ノ振興発揚ニアリ而モ之レガ方途ハ只ニ学校教育ニノミ頼ルコトナク広ク一般社会ノ責ニ於テ完璧ヲ期セラルヽモノト思考セラルヽヲ以テ特ニ其点理解セラレ協力ヲ望ム 兵事厚生課 六 防空頭巾供出ニ関スル件 戦災者越冬対策ノ一助トシテ不用トナリタル防空頭巾ノ活用ヲ図ル為メ之ガ供出運動ヲ実施ス 七 帰還軍人ノ慰籍運動実施ニ関スル件 政府ノ方針ニヨリ十月一日ヨリ十月三十一日迄ノ一ケ月間帰還軍人ノ慰籍運動ヲ実施シ国民ヲシテ出征軍人ヲ歓送シタル日ノ感激ヲ忘レズ帰還軍人ニ対シ感謝ノ意ヲ表明セシムルト共ニ其労苦ヲ慰籍シ併セテ新生活ヘノ発足ヲ激励スルモノトス 八 恩賜財団軍人援護会ノ育英事業実施ニ関スル件 従来ノ学資補給ヲ更ニ範囲ヲ拡張シ昭和二十年四月ニ遡リ実施セラル 林産課 九 薪炭増産ノ件 今冬ニ於ケル燃料問題ハ極メテ深刻ナルモノト予想セラルヽヲ以テ之レガ生産割当量ハ絶対確保セラレ度ク併セテ生産者ノ選定原木ノ取得等ニ付平日協議会ヲ催シ度特別ノ配慮ヲ望ム 〔欄外注記〕薪 百束 炭 四百俵 一〇 軍残置材処分ノ件 戦災者及戦災転住者中永住希望者ノ住宅資材特配方ニ付承認ヲ得タルモ全部短尺モノニシテ柱梁土台等ハ今后ノ生産ニ俟ツモノナルニ付之ニ要スル原木ノ供出ニ付極力斡旋方配慮セラレタシ 経済課 一一 青果物及魚介類ノ統制撤廃ニ関スル件 九月十八日ノ閣議ニ於テ青果物及魚介類ノ統制ニ関シテハ一切撤廃スル方針ヲ決定相成タルコトハ新聞及ラヂオ等ニ依リ発表セラレタルモ今後ニ於ケル運営ニ付テハ未ダ何等ノ具体的指図モ無之従ツテ何分ノ指示アル迄ハ従来ノ方法ヲ以テ継続致スベキモノニ付供出配給ニ付テモ格段ノ御配意相成度 協議懇談事項 一 地方事務所ト町村トノ緊密連絡並ニ常会運営研究会ニ就テ 二 其他必要事項 特別実践事項 十月 和心協同 報徳訓 父母富貴在祖先勤功 吾身富貴在父母積善 子孫富貴在自己勤労 二宮先生道歌 むかしまく木の実大樹となりにけり 今蒔く木の実後の大木ぞ ㈡ 十一月郡常会提案事項 十月二十五日自 午前十時 至 正午 総務課 一 衆議院議員選挙ニ関スル件 〔欄外注記〕午前十時主任会議 学務課 二 青年団再組織ニ関スル件 〔欄外注記〕従来ハヒットラーユーゲント 自治的ニ組織 三 中等学校生素行ニ関スル件 四 疎開学童引上ニ関スル件 十月二十日ヨリ月末迄ノ間ニ引上完了ノ予定ナリ 〔欄外注記〕完了 経済課 五 企業許可ノ特別措置ニ関スル件 終戦後ノ企業許可令ノ運用ニ関シテ之ガ応急措置ヲ実施スルコトヽ相成十月十九日附市町村長宛通知ノ次第モ有之ニ付充分趣旨ノ徹底ト指導ニ努メラレタシ 六 本年度麦増産ニ関スル件 終戦後国内食糧自給態勢ヲ確保スルハ我国再建ノ重要ナル事項ニシテ明年端境期ノ食糧難ヲ切抜ケル為メ本年播種ノ麦大増産ニ俟タザルベカラズ依テ之ガ趣旨ノ徹底ニ付格段ノ協力ヲ望ム七 甘藷供出ニ関スル件 八 米早期供出完遂ニ関スル件 目下端境期ニ於ケル食糧事情ハ最モ重大ナル危機ニ頻シツヽアルヲ以テ之ガ供出完遂方特段ノ指導協力方ヲ切望ス 耕地係 九 緊急開墾ニ関スル件 食糧確保ノ為メ本県デハ新ニ四千八百町歩ノ緊急開墾ヲ計画シ十月末迄ニ一千九百町歩ヲ完成シ之レニ麦ヲ播付ケル予定デシタガ十月上旬ノ降雨ノ為メ進捗状況ハ楽観ヲ許シマセン一層努力セラレムコトヲ希望ス 注意事項 総務課 一 宝籤発行ニ関スル件 林産課 二 薪炭増産ニ関スル件 冬ヲ眼前ニシテ逼迫セン現下ノ薪炭需給事情ニ対シ一段ト督励セラレタシ 三 其他必要事項 特別実践事項 十一月新穀感謝 報徳訓 身命長養在衣食住三 衣食住三在田畑山林 田畑山林在人民勤耕 二宮先生道歌蒔けば生え植うれば育草も木もあはれ恵みの限りなき世ぞ ㈢ 十二月郡常会提案事項 十一月二十六日 自 午前十時 至 正午 総務課 一 官庁事務刷新週間ノ設定実施ニ関スル件 二 民生活安定ニ就テ 今年金ヲ使フト悪性ナインフレヲ起シ私共ノ生活ヲ破滅ニ導ク事ニ□□生活物資ハ追々出廻ツテ来マス、段々ト値段モ安ク良イ物ガ出テ来マスカラ暫ラク辛抱致シマセウ 経済課 三 生果物並鮮魚ノ公定価格並ニ配給統制撤廃ニ関スル件 四 甘藷並ニ米穀供出割当完遂ニ関スル件 同胞愛ヲオ米ヤ甘藷ノ供出ニ向ケマセウ、本年度産米ハ近年稀ニ見ル減収デアリマスガ食糧自給ノ窮迫ニ伴ツテ農家ノ供出割当ハ相当強化サレテオリマスノデ農家ノ努力ヲ願フト共ニ国民全部ガ一致協力シテコノ食糧危機ヲ突破セナケレバナリマセン 今年ノ米ノ供出ハ今迄ト異ツテ麦、大豆、甘藷、菜葉、桑葉、団栗、海藻等デモ一部代替供出ガ出来マスノデ未利用資源ヲ集メテ供出ニ邁進シテクダサイ 五 塩ノ自家製造ト消費ノ合理化ニ就テ 塩ハ食糧用ノ外ニ工業用トシテモ極メテ必要デスガ本年ハ支那、台湾、満鮮等カラ移入セヌ為メト中国地方ノ風水害ノ為食糧用ノ半量ニモ足リナイ現情デスカラ沿岸地帯デハ砂浜等ヲ利用シテ濃鹹水ヲ造リ料理、漬物、味噌、醤油ノ醸造等ニマデ使用スル様ニシテ海浜カラ離レタ町村モ沿岸町村ト連絡シテ自ラ製塩スル様ニ企テマセウ 学務課 六 新教育ノ動向 根幹 1 軍国主義教育ノ払拭 2 民主々義、平和主義教育ノ確立 手段 1 画一主義教育ノ排撃 2 個性教育ノ完成 3 詰込主義教育ノ排撃 4 自由、自発的努力教育強化 内容 1 女子教育ノ強化 2 科学教育ノ強化 3 芸能教育ノ向上 4 増産教育ノ向上 5 体力養成(体位保持) 6 公民教育ノ普及 厚生課 七 復員者(軍人及工場事業場カラノ帰省者)健康診断ニ関スル件戦争中ノ疲レヤ栄養不足ノ為ニ種々ノ病気ニカヽツテ居ル人ガ有リ又今迄内地ニ無イ様ナ流行病ヤ伝染病ニ罹ツテ居ル者ガアリマスカラ一日モ早ク健康診断ヲ受ケル様ニシテ下サイ 県デハ結核並ニ伝染病ニ関スル健康診断ヲ無料デシテ居リマスカラ町村役場ト連絡シテ必ラズ一度診察ヲ受ケシメル事 林産課 八 造林計画ト実行指導ニ関スル件 戦時中ノ過伐ニ対シ森林ノ保□並ニ其ノ治水的見地ヨリ跡地造林ノ緊要ナルヲ認メ目下管内林野ノ基本調査中ニテ完了次第造林計画ヲ樹立スルヲ以テ之ガ実行上夫々充分ナル督励指導ヲ望ム 九 戦災復興用材ノ取扱ニ関スル件 協議懇談申合事項 一 民生活ノ安定ト主要食糧問題ニ就テ 二 其他必要事項 〔欄外注記〕一戸二十五石当リ 特別実践事項 十二月志はす(師走)八紘一宇 報徳訓 今年衣食在昨年産業 来年衣食在今年艱難 年々歳々不可忘報徳 二宮先生道歌 受け得たる徳をおの〳〵譲りなば 四海の間父子の親しみ 〔欄外注記〕協議事項 食糧問題ニ就テ 塩ノ自家製造ト消費ノ合理化ニ就テ □□開田一斉堀耕起ニ関スル件 ㈣ 一月郡常会提案事項 十二月十三日 総務課 一 建設貯蓄ノ取扱ニ就テ 去ル九月十一日附閣議デ決定シマシタ国民貯蓄増強ノ重要性ハ新シキ目標ヲ皇国財政護持新日本建設ト悪性インフレ防止ニ置キ個人経済ノ安定ヲ目差シテ居ルノデスカラ今迄ノ様ニ割当的強制貯蓄ハ致シマセンガ従来ノ実績ヲ参酌シテ「各町村デ」国家ノ要望ニ適応スル様ニ一定ノ貯蓄目標ヲ樹立シ国民ノ愛国心ニ訴ヘテ現金手持ノ弊害ヲ克ク理解ヲシテ貯蓄ノ増強ニ一層努力ヲ望ミマス 厚生課 二 引揚民ニ対スル衣料供出ノ件 浦賀引揚民ノ生活ハ極度ニ逼迫シ特ニ被服ニ於テハ想像以上ノモノヲ着用シ婦女子ニ於テハ男子用ノ衣服ヲ着用スルノ現状ナルヲ以テ之等引揚民ニ対シ真ニ同情セザルベカラザルヲ以テ最低ノ越寒資材トシテ衣料ヲ贈与方協議アリタルニ付各部落ニ於テ数点宛取纒メ来ル二十五日迄ニ寄付供出セラレ度シ 三 甘藷並ニ米穀供出督励ニ関スル件 甘藷ノ供出ニ関シテハ再三依頼督励セル処ナルモ未ダ供出未了ノ町村アルヲ以テ供出完遂ノ万全ヲ期セラレ度尚本年度産米ノ供出ニ関シテハ特段ノ配意ヲ煩シタク希望シマス 林産課 四 簡易木炭伏焼法ノ普及化ニ就テ 木炭需給ノ逼迫ニ鑑ミ簡便容易ナル伏焼法ヲ普及シ以テ生産ヲ促進スルト共ニ其自給化ヲ図ラレ度シ 協議懇談申合事項 一 復員軍人並ニ軍需工場復員者ノ就業状況及補導施設ニ就テ 二 其ノ他必要事項 特別実践事項 一月 明朗敢闘 報徳訓 父母根元在天地令命 身体根元在父母生育 子孫相続在夫婦丹精 二宮先生道歌 ふる道に積る木の葉をかきわけて天照す神の足あとを見む ㈤ 一月郡常会提案事項 昭和二十一年一月十八日午後二時 総務課 一 建物調査令施行ノ件 別紙通牒ノ通リ今回警察署ヨリ移管セラル地方事務所ニ於テ取扱フコトニ相成リタルヲ以テ各町村ニ於テハ各個人ノ届出方励行セラレ各町村ヨリ建物竣功調査週間報告ヲ提出スル様特ニ配慮セラタシ 二 婦人会及青年団組織ノ件 十二月廿五日下総収第一〇四三号ヲ以テ通牒セル通リ大日本婦人会及大日本青少年団解散後ニ於テ新日本建設ニ即応セル婦人会及青壮年団ヲ組織スルハ極メテ必要ナルヲ以テ未結成ノ町村ハ直チニ結成シ前ニ通知セル要綱ニ依リ結成報告ヲ直チニ提出セラレタシ 三 湯本町火災義捐金募集ノ件 先般通知セル通リ去ル十一日湯本町ニ於テ大火災ニ罹リ多数ノ罹災民ハ見ルニ忍ビザル窮乏ニ陥リツヽアルヲ以テ之レガ救済ニ同胞愛ヲ以テ別表ノ如ク義捐金募集セラレ来ル廿五日迄ニ下地方事務所へ御醵金相願ヒ度シ □務課 四 □□科教授停止ノ件 国史修身地理ノ教科書使用禁止ニ伴ヒ三教科教育ノ一時停止サレタルニツキ了解アリタシ 五 学校職員ノ政治教育啓蒙運動ニ関スル件 婦人選挙権付与ニ伴フ政治教育啓蒙運動ニ関シ特ニ学校職員ヲシテ協力セシムルコトヽ相成タルニツキ御了解アリタシ 六 学校職員物価引下生活改善運動ニ関スル件 事態ヲ憂へ国民生活ノ安全ヲ希フノ真心ヨリ学校職員一致団結シ広ク愛国ノ至情ニ訴ヘテ標記ノ運動ヲ行フニツキ御協力ヲ願ヒタシ 経済課 七 昭和二十年産米供出促進ニ関スル件 昭和二十年産米供出確保ニ付テハ各段ノ御尽力相煩居候処目下ノ供出成績ヨリ見ル時之ガ供出完遂ニ特別ノ配意相成度 八 昭和二十一年米穀年度主要食糧需給計画ニ関スル件 主要食糧ノ需給情況容易ナラザル実情ニ鑑ミ之ガ配給ノ円滑適正ヲ期スル為メ供出ノ促進ヲ計ルト共ニ需給計画ヲ至急作成シ提出方特段ノ配意相成度 林産課 九 用材薪炭ノ取締励行ノ件 耕地係 一〇 第四次土地改良食糧増産対策事業量割当ニ関スル件 割当表 協議懇談申合事項 一 各種必要事項 特別実践事項 二月 徒食者一掃 報徳の教 一 まことの大道 真の道は学ばずしておのづから知り習はずしておのづから覚へ書籍もなく記録もなく師匠もなく而して人々自得して忘れず是れぞ誠の道の本体なり(夜話一) 〔注一、二〕別紙通牒、別表共に省略。 ㈥ 二月常会徹底事項 一 明朗な正しい投票をして立派な代議士を選出しませう 近く行はれんとする衆議院議員総選挙は終戦に伴ふ新日本建設の基盤たる民主政治の確立のため先般の第八十九回臨時議会で画期的に改正せられた新選挙法に依つて行はれます。その改正の眼目とする処は ○選挙権被選挙権の拡張 選挙権の年齢は二十五歳より□□□し被選挙権の年齢は三十歳より二十五歳に引き下げられ其の上国民の総意を遺憾なく発揮する為め長年叫ばれて来た婦人参政権が認められ今次総選挙から実施する事になり男子と同様に女子にも選挙権被選挙権が与へられたのです。女子有権者の数は男子有権者の数と略々同じですから婦人の投票は選挙の結果に大きな力を持つのであります。男子も女子も有権者はすべて演説会、選挙公報、新聞等に依つて十分立派な候補者を選定して一人残らず正しい投票を致しませう。 ○大選挙区制と投票の制限連記制の採用 本県からは十二名の議員を選出するのですが新時代にふさはしい立派な人が出やすい様に今迄県内を三選挙区に分けてゐたのを一選挙区にし投票も一票に一人だけ書いてゐたのを今度は一人で一枚の投票用紙に三人の候補者を書くことになりました。かやうに県下何れの所から立候補した人にでも投票出来る事になり尚其の上選挙運動取締規定が徹底的に簡素化されました。従来のやうに恐怖心をもつて選挙に臨むといふ悪い習慣を払拭して明朗闊達に新らしい人材を選挙致しませう。 ○選挙運動取締規定の徹底的簡素化 ⑴ 法定選挙運動者即ち選挙□□長及選挙委員以外の者は演説又は推薦状によるほかは選挙運動は禁止されてゐたのですが今度は自分が適当と信ずる者のために選挙運動が出来るやうになりました。 ⑵ 演説会出演者数を四人迄と制限してゐたのを此の制度も撤廃されました。 ⑶ 個々の面接又は電話に依る選挙運動は禁止されてゐたが之れも撤廃されました。しかし戸別訪問は従来通り禁止されて居ります。 以上の外細かい点で改正された部分がありますから若し選挙手続について疑問の点があれば遠慮なく警察署等に問合せ間違いの起らぬ様に注意致しませう。 二 お米の供出割当を完遂して部落挙つて『供出完納の家』を貼りませう。 同胞愛をお米の供出に向け食糧危機を突破するため遅くも二月十日迄に検査を受け二月十五日迄に必らず供出入庫を一人でも左のやうな罰則に触れないやうに致しませう。 ⑴ 供出を完了する迄は譲渡買受又は販売の委譲を受けた者は十年以下の懲役又は五万円以下の罰金 ⑵ 供出割当を受けた生産者地主が他へ譲渡をなし供出をしない場合は三年以下の懲役又は一万円以下の罰金 ⑶ ブローカーに対しては十年以下の懲役又は五万円以下の罰金一日も早く供出を完納して農業会から『供出完納の家』の門札をもらつて家の入口に貼りませう。 (仙石原村役場「足柄下郡常会書類」(昭和十七年)箱根町役場蔵) 八七 横須賀市戦災学徒数調査ノ件通達 昭和二十年十一月十二日 横須賀市教育部長 杉山彦一郎 国民各青年中等学校長殿 戦災学徒数調査ノ件 戦災ヲ被リタル学徒調査ノ必要有之戦災学徒数至急御調査ノ上来ル十五日迄学務課宛左記様式ニヨリ御回報相成度 記 (注意事項)学年別、男女別ニ記入ノ上計ヲ附スルコト (汐入国民学校「往復文書綴」 (昭和二十年)横須賀市立教育研究所蔵) 八八 横須賀市汐入国民学校欠食及虚弱学童数調 昭和二十一年一月廿九日 横須賀市汐入国民学校長 富田波之助 教育部長殿 欠食及虚弱学童調査ノ件 標記ノ件ニ関シ左記ノ通リ及報告候也 記 欠食及虚弱学童数調 横須賀市汐入国民学校 (汐入国民学校「往復文書綴」(昭和二十年)横須賀市立教育研究所蔵) 八九 連合国の指令占領目的に対する有害行為処罰の件通知 隣組回報 足柄下地方事務所役場(印) 昭和二十一年七月三十日 連合軍の指令違反や占領目的に有害な 行為に対する処罰に就てお報らせ 連合軍の指令違反の行為や占領目的に有害な行為に付ては国内法に罰則のないものが多く止むを得ず占領軍の軍事裁判で裁判せられて来ましたが既に新聞やラジオで御承知の通り去る六月十二日「連合国占領軍の占領目的に有害な行為に対する処罰等に関する勅令」が公布せられ七月十五日より実施せられました。 この勅令で連合国最高司令官の指令は勿論これを履行する為連合国占領軍の軍、軍団、師団の各司令官の指令及び日本政府の発する法令に違反する行為は悉く占領目的に有害な行為として日本側でも裁判し国内法に違反する行為は悉く占領目的に有害な行為として日本側でも裁判し国内法に罰則があればその法令で罰則がなくともこの勅令で十年以下の懲役又は七万五千円以下の罰金といふ厳罰に処せられます。特にこの勅令該当事項の取締に当る検察官が違反を見逃すとか情状酌量で不起訴処分にする等適正な措置をしなかつた場合には検察官自身も処罰されると云ふ内容を持つておる趣ですから我々は一層自粛自戒して迷惑が他に及ばない様注意しなければなりません。 ○勅令に該当する事項を左に例示致します。 ㈠ 現在の通常裁判手続によらずに処罰せられる場合(進駐軍の即決処分) 1 連合軍関係者を殺害したり暴行を加へたり、安全に対し有害な行為をしたり、或は連合軍関係者の財産を不法に所持し取得し受領し又は処分する等の行為 2 連合軍関係者の職務執行に関し妨害を加へ、その要求する情報を提供せず、又は虚偽や誤解を招く様な事を申述べ或はだましたりする行為 3 連合国最高司令官によつて又はその命令に基いて解散され又は非合法と宣言された団体を支援する様な行為 ㈡ 現在の通常裁判手続によつて処罰せられる場合 1 物価統制令、住宅緊急措置令、都会地転入抑制緊急措置令、 臨時建築制限令、土地工作物使用制限令、有毒飲食物等取締令、政党協会其他の団体の結成の禁止等に関する勅令等(まだ沢山ありますが町村民各位に密接な関係あるものを例示しました)ポツダム宣言受諾に伴ひ発せられた国内法に違反する行為(この場合は夫々当該国内法によつて処罰せられます) 2 その他㈠に掲げた様な罪以外の占領目的に有害な一切の行為 右諸行為の内物価統制令違反の所謂、闇行為、闇取引は極めて広般な内容のものですから充分に警察署経済防犯係に御相談になり違反のない様特段の御注意を願ひます。 (仙石原村役場「庶務書類」(昭和二十一年)箱根町役場蔵) 九〇 ポツダム宣言遵守に関する経済界取締強化の件通達 昭和二十一年八月十五日 中地方事務所長 相川村長殿 ポツダム宣言遵守に伴ふ八・一粛正について 昨年八月十五日を機として国民全部が之を遵守して平和新日本の建設に邁進せねばならぬ事は今更言ふまでもない事ですが殊に経済(営業)の自粛再編については常に監督機関の風有、苦難と犠牲を克服しつゝ指導を励行し相当なる効果を挙げつゝあるにも不拘斯業の実体は依然として粛正されざるのみならず取締の間隙を狙つて其の跳梁を逞しふし而も其の傾向は却つて増勢を示すのみならず最近に至つては取締を繞り或は業者間の商機伸張を企図する等悪質行為はその跡を絶たづ誠に治安上憂慮すべきものあるを以つて連合軍当局より申達の次第もあり八月一日を期して全国的一斉取締を強力に実施する事となりましたので左記要点に依り業界の粛正明朗化を期し一人の違反者もなき様指導徹底せしめられたい 追而 本件は昭和二十年勅令第五四二号ポツダム宣言受諾に伴ひ連合軍最高司令官の占領目的に反せざる様日本政府の発する法令にして本年七月十一日勅令第三一一号を以つて発令せられたるものである 註 占領目的に有害なる行為とは連合軍最高司令官の日本国政府に対する指令の趣旨に反する行為、其の指令を施行する為め連合国占領軍の軍団又は師団の各司令官の発する命令の主旨に反する行為を履行するため、日本国政府の発する法令に違反するを云ふのである 記 一 取締の要点 1 主要食糧及之を主材として加工せる食糧品及調味品 2 生鮮食糧品 3 繊維製品、燐寸、ゴム製品等 二 其の他一般物資に対しては価格統制令に依つて厳重に取締を受けること 三 農家に於ける売買も公定価格に基き厳重取締を受けること 四 本件は営業者は勿論、回覧板、常会等を以つて一般に浸透する様最善の措置を講じられたい (相川村役場「庶務書類」(昭和二十一年)厚木市役所蔵) 九一 神奈川県出身満州開拓移民等救済の件通達 昭和二十一年八月十九日 中地方事務所長 各市町村長殿 県出身満洲開拓民救済に関する件 本県として満洲に送出致しました開拓民並に満蒙開拓青少年義勇軍及県在満報国農場隊員は目下ぼつぼつ県内に帰還しつゝありますが今秋までには大部分の引揚を予想せられますが彼等の生活は吾々内地の人達の想像以上に困難なるものがあると思はれますので帰還後の援護並に対策は県に於ても種々講じて居りますが更に県下各農家の温き御援助を仰ぎ救護の万全を期し度いと思ひますので別紙満洲開拓民救済資金募集要綱に依つて救済金の募集を致し悲惨なる開拓民を救済することゝなりましたから部内各農家に趣旨徹底の上救済金募集方を御願致します (相川村役場「庶務書類」(昭和二十一年)厚木市役所蔵) 〔注〕別紙省略。 九二 神奈川県遺族会結成の趣旨 神奈川県遺族会結成の趣旨(案) 今次の戦争に於ける最大の犠牲者たる詢国英霊の遺族は今如何なる状態に置かれて居りましようか。或は一家の柱石と頼む父を又最愛の夫や子や兄弟を亡つた老いたる父母若き未亡人は敗戦後の深刻なる社会情勢の下に在つて生活の方途も立たづ他から温い救援の手も差延べられず孤立無援物心両面の苦痛に呻吟して居る状態にあります。然も社会の之れに対する慰安救援の施設は誠に貧弱であつて他の引揚同胞、戦災者等比し低調たるを免れず又一般社会の遺族に対する認識も曾つての感謝と同情の念が段々薄らぎつゝある状態に在ります事は社会道義の上からも誠に遺憾の至りであります。 然しながら今は国民の一人〳〵が真に廃墟の中から起ち上つて国家を再建しなければならない重大なる時であります。 我々遺族も亦徒に他の同情援護のみに俟たず遺族先づ自ら起ち上らなければなりません。お互に手を執り合つて涙の中から雄々しく起ち上り相寄り相扶け万苦を克服し自らの生活を建設し英霊をして後顧の憂なからしめ常に靖国の遺族たる誇りを持し其の行動を慎み進んで之れ周囲に及ぼし社界道義を昂揚し又我々が痛切に味はつた戦争の惨苦再び我々の子孫に繰返へさせぬ様戦の無き真の平和国家を建設し万の為めに泰平を開かせ賜ふ大御心に副い奉る事こそ我々遺族に与へれたる使命と存します。我々はこの崇高なる目的達成の為茲に全県下族を打つて一丸とする神奈川県遺族会を結せんとするものであります。 (大山町役場「庶務書類」(昭和二十一年)伊勢原市役所蔵) 九三 平塚市の危機打開と「甲地」への引上げに関する陳情書 陳情書 平塚市所在官公署職員に対する臨時家族手当及び臨時勤務地手当等の給与に干しては、これを六大都市に準ずる地域に、急速御指定方特別の御詮議を願いたく、当地の特殊事情を左に詳具、陳情申し上げます。 昭利廿二年三月二十日 記 一 当平塚市は、神奈川県の地域的中心地にして、京浜地区に近き故を以て、戦時中当市に疎開せるもの、住宅を求めるもの、或は工場を建設する者、年年激増し、農村としての昔の面影は片鱗だに見受けられず、駅の乗降人員も、現在の構造を以てしては狭きため、目下拡張中にして、真に衛星都市としての発展を遂げ、交通機干の発達と相俟つて、文化その他の面についても、京浜地区に遜色なきに□□ました。 しかも、当市は戦災に因り全市廃墟と化したるため、物資の焼失に伴うところの打撃は極めて多く、未だ建設途上何かと出費多い時に悪性インフレーの危機に直面し、物価、家賃等においても京浜都市より高騰しているものがあります。 二 当市には生産物資がありません。 工場施設は、すべて軍需工場に転換したため、当分生産の見込みがないのです。 生鮮魚類は当市消費の七割を他から移入するの実情で、その他当地産の農産物とともに、他都市からの集中的買出し等によつて更に闇価格高騰の傾向で、しかもこれ等生産者は闇行為の発覚を恐れて、近隣の者には売りおしみをしているので、容易に購入することが出来ません。よし購入し得たとするも、他都市から買出しに来る者より遥かに上廻る闇値でなければ入手し得ない現状であります。 しかも、現在の配給機構においては、生鮮食料品にしても、都市中心主義であるので、当市在住者には、余りにも恵まれぬ現状であります。 三 当市は戦災後着着、復興しているように見えますが実際に建築されているのは、娯楽街及び商店街にして、勤労者の住宅は遅遅として進まず、あまつさえ悪性インフレーのため俸給生活者は、物価高につれて、衣食住共に困窮いたしております。 以上申し述べましたことは、別紙資料の通りでありまして、現在甲地に指定されている各都市同様に市民一般は、その高物価と物資入手難に苦闘呻吟しつつあることを御諒察下さいまして、特別の御詮議をもつて是非とも甲地に御引揚賜わりますよう陳情に及んだ次第であります。 (平塚市立第二青年学校平塚市第二実務女学校「往復文書綴」(昭和二十二年)平塚市教育研究所蔵) 〔注〕別紙資料省略。 九四 敗戦後横須賀市の財政事情 横須賀市財政事情説明 (昭和二二・六現在) 御承知の通り本市の戦災は軽微に止まりましたが、他の戦災を受けた都市と事情が非常に異つてゐて、其の受けた打撃は戦災都市と同様に財政上非常なる圧迫を加へられて居る実情であります。 戦時中は本市の全地域に亘る厖大なる官有地に軍部関係諸施設が沢山あつて本市の都市的経営は所謂軍都として財政的犠牲を顧りみないで一億戦争目的遂行の為に施策実施をしておつたのであります。 他面市民の生活は概ね海軍工廠其ノ他軍関係工場に或は官納業者として軍関係施設に依存せられておつたのであります。この様な特殊事情により本市は昭和二十年度一般経常費支弁の為市税充当の外特定財源として軍関係市町村財政補給金六〇五、九三二円、海軍補助金三、三五〇、〇〇〇円、海軍特別助成金二七〇、〇〇〇円計四、二五五、九三二円の国庫補助がありましたが終戦の昭和二十一年度に於ては之等の必要なる財源は市税の増徴によつて経理しなければならなくなつた反面敗戦によつて市民の大半は進駐軍労務者として辛くも生計を維持し又嘗つて軍関係施設に依存してゐた官納業者は販路を失ひ中小商工業も自然衰微となつたので市税増徴にも非常なる制約が考へられ市財政は極度に弾力性を失ふ傾向を辿りつゝありました。 更に昨今に至つては本市財政需要は嘗つての戦時施設によつて残された厖大な負担の上に終戦以来激しつゞける経済事情に伴ひ急増の一途を辿り都市経営に及ぼす影響は甚だ深憂に堪へないものがあります。 戦後の我国の実情を直視すれば文化日本の再建の為複雑多岐な困難の下に戦後の復興を初めとして、民生の安定に或は進駐軍の要望による各種事業の完成を期して努力せざるを得ないものがあり今後本市財政需要の増嵩は予測し難い情勢であります。 大略右の如き財政事情にありますので義務的経常的経費は市税其の他税外収入を以て賄ひ、新規事業経費は国庫補助及起債を主とする財源によつて経理してゐるのであります。然るに本市昭和二十二年度事業費(二二・六現在含見込)三七、九二三、一〇〇円の中起債予定額は一四、六六六、〇〇〇円であるのに昭和二十一年度起債許可額五、〇三二、〇〇〇円について見るも借入済のものは僅かに三一六、〇〇〇円で政府資金借入は殆ど見込薄の状態であり、他方金融機関よりの借入は短期債によらなければ借入不能であり、本市の経営と財政に及ぼす支障は亦甚大なるものがあります。将又公債償還の元利金の支払についても昭和十八年度五一三、九四〇円、昭和十九年度五四七、三八一円、昭和二十年度七七六、一五二円、昭和二十一年度九〇四、四三〇円となつて利子のみについても昭和十九年度分一三二、八一四円に対し昭和二十一年度三九五、〇八七円となつて居ります。起債額についてみても昭和十八年度二九二、三〇〇円、昭和十九年度三、九九四、五〇〇円、昭和二十年度四、二七五、〇〇〇円、昭和二十一年度五、〇三二、〇〇〇円となつて之等は戦争目的遂行の為防空関係、疎開関係経費の起債による負債の膨張となつたのであります。 公企業を経営してゐない本市財政は総て財源を市税収入以外には求められないで、前述の様に毎年度事業経費並びに経常経費の一部として海軍より特定財源が下附せられてゐたが軍の解消によつて財源を別に求めなければならなくなつたのです。 次に本市当面の財政事情について観れば地方税法の改正に伴ふて国税の三収益税即ち地租、家屋、営業の三税が今回地方税として移譲せられましたので、その附加税として昭和二十二年度に於て二、四六三、五四三円の増収(当初予算六、八一三、〇六九円)、其の他独立税等の増収見込額六、四五五、六八二円、更に予算編成当初に見込たる給与改善費国庫補助金四、三五九、九九九円は分与税として配付さる見込に付今回減額し分与税に更正して分与税額八、四五五、二〇〇円(当初予算二、一一三、八〇〇円を含まず)、増減差引合計一三、〇一四、四二六円を見積り得るのでありますが、職員待遇改善費は一〇、七一二、六八九円(一、四〇〇円案)、二、六七六、〇〇〇円(一、六〇〇円案)計一三、三八八、六八九円を要し需用費一、五〇〇、〇〇〇円は印刷費、郵便、電話電報料、薪炭費等の値上り初級中学校費四、五〇〇、〇〇〇円、其他一、〇〇〇、〇〇〇円は生活保護費、消防費、地方振興費等合計二〇、三八八、六八九円の財政需要を必要とする現状でありまして、収支差引七、三七四、二六八円財政が不足でありますので市民税の許可限度の増徴をなし之が増収となる額二、四〇〇、〇〇〇円を見込むも尚四、九七四、二六八円の収入減となりますが、職員待遇改善費中一、六〇〇円案による所要経費二、六七六、〇〇〇円に対しては、地方税法改正に当り財源が附与されてないものでありますから別途附与されるものとしても尚二、二九八、二六八円不足となり加ふるに今後の財政需要に対しましては引当財源なく財政経理上格段の工夫、努力を致して居る次第であります。 尚、本年度に於る新規事業は別表の如くでありますが、前述の通り之等新規の積極的経費に国庫補助及起債にその財源を求めてゐるのであります。更に明年度以降に関し瞥見するならば戦時中借入た公債元金も昭和二十三年度より元金償還時期になつてをりますので、益々経常費支弁に支障を来してゐる現状でありますので一寸前言に戻りますが、国家的事業完遂の為必要な事業費起債額の借入れについても昭和二十一年度五、〇三二、〇〇〇円に対し、三一六、〇〇〇円を政府より低利資金の融通を受けたるのみにて他はすべて短期で然も高利によつて金融機関より融資を受けなければならぬ実情下にありますので、また昭和二十二年度起債の事もありますので本市の財政実情よりして事業資金の貸出しは、全面的に政府より低利資金を受ける必要があり逓信大臣宛簡保資金貸出方陳情書を提出し政府の特別なる措置に基く融通条件の緩和を願出る等本市財政の健全化を計らんとしてゐるのであります。 (横須賀市役所「財政税制行政に関する調書」(昭和十七年)横須賀市役所蔵) 〔注〕別表省略。 九五 伊勢原警察署管内の盗難事故防止要請 〔町村〕長殿 最近管内に盗難事件が毎日の様発生致しますので御手数乍ら左記回覧板を各隣組に配布をして御互の注意を御願いすると共に御協力の程懇願致します。 (御手数乍ら左記原稿を各町村に於て作成隣組に至急配布相成様御願い致します) 伊勢原警察署長 記 回覧板 皆さん御用意は大丈夫でせうか。昭和二十一年の最終も近づいて師走がやつて来ました。師走と新年が来ると毎年の如く『ドロボー』が活動しましてお互の大切な物ばかり盗去てしまいますが本年は特に衣類の盗難が非常に多くて 最近十一月二十日より十二月十日までの二十日間に伊勢原警察署管内の某所六ケ所で衣類四百十枚を盗れ其の他学校やお宮さんの硝子戸の硝子をはづして三ケ所で百五十枚を盗た 特種な事件もありますのでもう一度居宅、土蔵、物置等の鍵と皆様の心の鍵を調べて御協力を願います。 十二月十三日 伊勢原警察署長 大山町役場 (大山町役場「庶務書類」(昭和二十二年)伊勢原市役所蔵) 第二節 占領と県政 九六 終戦連絡横浜事務局等設置の経緯と業務組織 横浜事務局設置の経緯 ㈠ 占領軍受入設営委員会 昭和二十年八月十九日、河辺参謀次長マニラにて調印したる降伏に関する文書、其他一般命令等をもたらし連合軍の厚木及横浜上陸に伴ふ設営準備方要求あり仍て内閣総合計画局長官池田中将を中心とし外務省を主役として「占領軍受入設営委員会」を設け外務省より委員長、内閣総合計画局、内務、陸海軍、逓信、鉄道軍需、大蔵及関係地方庁より各委員一名を出し(外に補助事務員を含む)横浜地区の設営其他諸準備に当ることとなり外務次官の命に依り秋山特命全権公使委員長として又吉岡(範武)大使館参事官、武内総領事(時之助)、古内書記官(事務総長)牛場、服部(恒雄)各事務官を外務省側係員とし藤原神奈川県知事を副委員長として八月二十二日より九月二十九日迄之に関連する事務に当れり 本委員会は其後の横浜終戦連絡委員会及現在の終連横浜事務局の前身を為すものなるか神奈川県に於ては外に進駐軍受入本部なるものを組織し同県各部課長を網羅し特に警察部長を中心として必要建設物の保全管理に従事せしめたり 神奈川県に設営委員会事務所として県庁の四室を提供し又必要資材に関しては陸海軍特に横須賀鎮守府所蔵の資材其他軍需省及神奈川県手持資材を利用したり 委員及事務員の宿舎はニウグランド、ホテルたりしが同ホテルが進駐軍幹部宿舎と指定せらるるに及んで八月二十八日偕楽園に移したり 八月二十九日秋山公使は本省に移りたり ㈡ 横浜終戦連絡委員会 八月二十九日夕鈴木公使は重光外務大臣の命を受け前記設営委員会に代るべき横浜終戦連絡委員会(閣議決定)を主宰することとなり八月三十日朝横浜に赴いた。同委員会は前述吉岡大使館参事官以下の外務省員の外山□公使以下多数の新なる省員の援助を得陸、海、蔵、運、逓、商、等各省員をも加えた。他方有未陸軍中将を首班とし鎌田陸軍中将、中村海軍少将等を含むいはゆる有未機関も設置されて同様神奈川県庁内にその事務室を作つた。 米国進駐軍の先遣隊は八月二十八日、二十九日と厚木飛行場に到着したが「マツクアーサー」元帥及その幕僚第八軍司令部は八月三十日午後厚木に空路到着直ちに横浜に進駐、いはゆる横浜の関内を中心として連合軍最高司令部及第八軍司令部を設置し横浜終戦連絡委員会は八月三十日夕刻より米進駐軍との接触を開始した。 爾来連合軍最高司令部が九月十七日東京に移転するまで同司令部と接衝しその間九月二日横浜沖「ミスリー」号上の降服文書調印あり内地軍隊の解隊復員、進駐軍の内地各方面進駐、東条大将以下の戦犯容疑者引渡等に付接衝した。進駐そうそうの事であり米軍側はほとんど昼夜兼行の仕事振りでありこの三週間は文字通り委員会はほとんど不眠不休の状態であつた。而してGHQが横浜に在つた間は委員会は原則として直接第八軍司令部とは交渉が出来ぬ建前であつた。 ㈢ 終戦連絡横浜事務局 GHQが東京に移つた後は第八軍司令部との接衝に当る事となつたが昭和二十年九月二十二日の外務省告示第三号で終戦連絡横浜事務局が正式に設置された。そして第八軍は最初日本の東半分を占領していたが同年十二月末日をもつて西半分を占領していた第六軍が帰国して第八軍が日本全国の占領を行ふ事と成つたので横浜事務局の任務は全国的の性質を有するものが少くない。 他方同年の十月に第八軍は USACOM-C なる機関を設置し第八軍管下の物資補給と神奈川県の軍政を管掌させたが右機関は昭和二十一年三月末をもつて解体新に Tokyo-Kanagawa MilitaryGovernment Listrict が出来てこれが東京都及神奈川県の軍政に当る事と成つた。横浜事務局は第八軍司令部との接衝の外右USACOM-C 次いで Tokyo-Kanagawa Military OovernmentListrict との交渉にも当つて来たのである。 横浜事務局業務の概要 ○終戦連絡事務局官制第一条 終戦連絡事務局ハ外務大臣ノ管理ニ属シ今次ノ戦争終結ニ関シ連合国官憲トノ連絡ニ関スル事務ヲ掌ル ○昭和二十年九月二十二日外務省告示第三号 終戦連絡事務局官制第二条ノ規定ニ基キ昭和二十年九月二十二日横浜市ニ終戦連絡地方事務局ヲ設置シ終戦連絡横浜事務局ト呼称ス 終戦連絡横浜事務局ハ米国第八軍ノ管轄区域ト同ジ区域ヲ管轄シ管内米国軍ニ対スル情報ノ提供設営各種ノ便宜供与及其他ノ連絡事務ヲ掌ル、但シ管下ノ他ノ終戦連絡事務機関ノ所管ニ属スルモノヲ除ク ㈠ 横浜事務局と国内諸官庁との関係 終戦連絡地方事務局の業務は終戦連絡事務局官制ならびに昭和二十年九月六日閣議決定により連合国官憲に関する事務就中、連合軍司令部に対する諸情報の提供設営(関係各庁の十分なる協力によりこれを行う)各種の便宜供与及びその他連絡事務を担当することになつており、昭和二十年九月二十二日外務省告示第三号によつて横浜に地方事務局が設置せられた。 右に基き当事務局にて取扱いつつある業務は、(イ)設営関係として住宅、建築、営繕、土木、土地、建物、物資、労務等(ロ)経済関係として引継物資、賠償問題、工場転換、運輸その他経済関係諸事項(ハ)その他一般内政に関する事項、在外邦人送還、進駐軍の不法行為、刑事問題、戦犯裁判、便宜供与等凡ゆる業務に亘つており、且つこれ等の業務に付ては後述連合軍との関係において述べている通り、事務局は連合軍官憲に対し日本政府を代表し全面的に責任を負はされている関係上、これ等各業務に付単に内地官庁と連合軍との連絡に当るのみならず各案件に付実質的にその運営に関与している。県庁との連絡に当つては県渉外課及び他の凡ての部課と密接なる連絡を執り、渉外課員の当事務局への出張勤務を求めて事務の迅速なる処理を期しており、又設営関係及び物資関係においては先ずP、Dを受領これを県及び関係者に通達後これが実施についても県庁と連絡し処理している。 なお横浜事務局は担当区域として神奈川、山梨、長野、群馬、埼玉、新潟の各県を管轄しこれら各県の渉外課と夫々連絡している。(福島県は最初横浜事務局に属していたが仙台に移管せられた。なお東京都を中央事務局と共管している。) ㈡ 横浜事務局と連合軍との関係 次に連合軍との関係においては昭和二十年九月三日の指令第二号には 「日本帝国政府ハ一ノ中央機関ノ主要占領区域ノ各ニ必要ナル下級機関ヲ設置スルモノトス右機関ノ主要ナル職務ハ、占領者ノ為ニ要スル区域及施設ニ関スル情報ヲ提供シ且右区域及施設ノ為ノ要求ヲ受理スルニ在ルモノトス」 とあり、地方事務局は、単なる連絡に止まらず対外的に日本政府を代表して全責任を負う訳である。事務局は軍政部の行つている内政、経済、財政、物資調達、労務、土地、家屋、法務その他の各課のみならず戦犯裁判所現地部隊等凡ゆる方面より日本側への申出となつており、又日本側より連合軍側への申出の関門となつている。斯の如く広い範囲の業務を扱つているので、関係各官庁の十分なる協力を得て事務を処理し、又関係各庁に意見を提示し、あるいは連合軍側に意見を述べ責任を負ふ立場より各案件の運行に直接間接関与している。 特に横浜には第八軍司令部がある関係上、横浜事務局の業務は単なる地方的の事務に止まらず、全国に亘る事務従つて又常時中央と連絡すべき事務も著しく多い。 終戦連絡横浜事務局組織及分課規定(内規) ㈠終戦連絡横浜事務局に左の職員を置く 事務局長 一名 事務次長 一名 課長 五名 課員 若干名 ㈡次長は局長を佐け且局長の命を承け事務を総括す ㈢課長は上官の命を承け課務を掌理す ㈣課員は上官の命に従ひ課務に従事す ㈤終戦連絡横浜事務局に政治課、経済課、設営課、物資労務課及庶務課並に翻訳室を置く イ 政治課においては連絡、引揚、内政、不法行為、戦争犯罪関係事務その他他課に属さない事務を掌る ロ 経済課においては経済に関する事務を掌る ハ 設営課においては土地住宅、建築、建物、営繕、土木に関する事務を掌る ニ 物資労務課においては物資及労務に関する事務を掌る ホ 庶務課においては人事、文書、電信、会計、庶務及秘書に関する事務を掌る へ 翻訳室においては翻訳に関する事務を掌る 横浜終戦連絡事務局担任事務別職員表 昭和二十一年十二月一日現在 事務局長 連絡官(一級) 鈴木九万 次長 大使館一等書記官(二級) 河崎一郎 (設営課長兼務) 一 政治(二級官三名、三級官一名、嘱託二名) 中央及び地方との連絡、便宜供与、在外邦人送還、不法行為戦 犯関係事務 大使館二等書記官 (二級)永田大二郎 連絡官 (〃)石出瑞穂 〃 (〃)神原富比古 外務書記生(三級) 谷口□岸 嘱託 渡部登 堀久吉 田中豊 二 経済 賠償関係事務を含む一般経済事務 連絡官 (二級) 服部比佐治 〃 (〃) 東郷文彦 外交官補 (〃) 高橋正太郎 嘱託 本重志 高橋直 中野直樹 三 設営(二級官三名、三級官四名、嘱託四名) 住宅建築、営繕、土木、土地建物関係事務 大使館一等書記官(二級)河崎一郎 副領事(〃)田辺新一 外交官補(〃)高橋正太郎 外務書記生(三級)浅井順一 外務通訳生(〃)山口隆二 外務書記生(三級) 坂本頸介 嘱託 大儀見准 〃 江沢正年 〃 高久虔一 〃 本田和三 四 物資労務(二級官二名、嘱託一名) 物品調達及び労務関係事務 領事 (二級) 古川靖 連絡官 (〃) 早川聖 嘱託 藤田英雄 五 庶務 庶務、人事、文書、電信、会計、通訳監督、局長秘書及び翻訳関係事務 外務書記生 (三級) 飯島一平 連絡官 (〃) 中尾協 〃 (〃) 石川八州太郎 嘱託 中川康範 〃 武沢清見 〃 堀久吉 嘱託 酒井美代子 〃 中沢建 〃 勝泉外吉 〃 佐藤惣八 〃 内木寿満治 〃 巌真広 雇 黒田倫子 〃 横山英子 〃 伊藤美和子 〃 (タイピスト) 奥村登美子 〃 〃 石黒満弥子 〃 〃 斉藤登美子 〃 滝沢みつ子 〃 関野供哉 (終戦連絡横浜事務局「YLO執務報告」(昭和二十一年)布沢宏一氏寄付神奈川県庁蔵) 九七 極東委員に対する神奈川県管内事情説明 昭和廿一年二月十四日 神奈川県知事 内山岩太郎 外務大臣 吉田茂殿 極東委員ニ対スル管内事情説明ノ件 右別紙ノ通ノ状況ニ有之候条御参考迄及報告候 極東委員ニ対スル管内事情説明ノ件 曩ニ来朝中ノ極東委員一行ハ去ル一月卅一日来浜、県側ト会見懇談 ヲ遂ゲタルガ其状況大要左記ノ通ニ有之御参考迄御報告申上候 記 一 日時 一月卅一日、自午前十一時至午后三時 二 場所 横浜市中区本町四丁目 進駐軍将校倶楽部(元銀行集会所) 三 出席者 極東委員側 ニユージーランド カールバランスン卿 米国(顧問) ゲスプレークレー博士 オランダ ロイフリン氏 英国 チヤールスボクサー少佐 米国(常任幹事) ヒユーデイーフアーレー氏 終戦連絡事務局 鈴木横浜事務局長 県側 内山知事 後藤内政部長 八木警察部長 田代経済第一部長 広橋経済第二部長 田沼土木部長 佐藤官房主事 鍋田食料課長 田島横浜市助役 四 経過 一月廿七日委員側ヨリ米第八軍及終戦連絡横浜事務局長ヲ通ジ藤原前知事ニ対シ同卅一日午前十時会談希望ノ申入レアリ其後新旧知事ノ事務引継アリ、卅一日午前十時赴任ヲ一日繰上ゲタル内山新知事以下前記氏名ノ者全部所定ノ場所タル将校倶楽部ニ参着先方ハ第八軍訪問ノ為約一時間遅刻ノ上午前十一時頃来場 双方紹介、知事挨拶ノ後懇談開会ス 当初短時間ノ為内政部長ヨリ県政ノ概況ヲ説明スルコトトセルガ説明未了ノ中先方ヨリ当方ニ於テ用意シ置キタル県政概要説明書ノ提出ヲ求メ時間節約ノ為右ノ翻訳ヲ以テ概況説明ニ代へ度キ旨ノ申出アリ 以後自由懇談ニ入ル午前中ノ時間短縮セラレタル為先方ヨリ特ニ午後三十分間延長ノ申込アリ、午後一時三十分ヨリ再開ス、懇談ハ終始極メテ熱心有効ニ行ハレ知事ハ通訳抜キニテ常ニ自身説明ニ努メタリ為ニ当初ノ予定ヲ超過シ概ネ三時近ク迄一時間以上ニ亘リ懇談継続セラル閉会ニ際シテモ米人顧問ハ特ニ県政ノ成功ト日本ノ再建ヲ希望スルトノ発言アリ、米人常任幹事及オランダ人ト共ニ再会ヲ約シタリ 五 懇談内容 委員 一月四日ノ軍国主義的指導者追放指令等ト関連シテ日本ハ民主化ヲ如何ナル程度ニ進メツツアリヤ 内山知事 日本政府ハ目下充分慎重ニ考慮中デアル 如何ナル範囲迄之ヲ行フヤ其限界ニ付テハ目下検討中ニシテ未ダ適確ナル訓令ニ接シテ居ラヌ、日本政府ハ極力厳格ニ広範囲ニ解釈シ以テ指令ヲ遵守セントスル意向ナラント信ズルモ自分個人トシテハ単ニ一日或地位ヲ占メタリトノ理由ニテ立派ナ人物ヲ機械的ニ追放スルト共ニ他面其本質ニ於テ真ニ追放スベキモノヲ見逃スト言フガ如キコト無キ様此際特ニ注意ヲ要スルモノト信ズル 委員 国民ノ民主化ノ為従来ノ軍国主義的教育ニ付頭ノ切替ハ進ンデヰルカ状況ノ如何真ニデモクラシーヲ理解シ積極的ニ民主主義的教育ヲ行ヒツツアリヤ已ムヲ得ズ行ヒツツアリヤ 内山知事 短期間ニ頭ノ切替ヲ行フハ困難デアルガ出来得ル限リ速カニ実現スベク努力中ナリ学校教育ノ中心的地位ニ嘗ツテ非軍国主義的ナリトシテ排斥セラレタル世界法的自然法学者田中耕太郎教授ヲ据エタルガ如キハ其一例デアル 田島横浜市助役 横浜市ニ於テハ特ニ公民教育ニ力ヲ入レ昨年十月以来公民講座ヲ設置シ米人将校ヲ講師ニ招聘シ居ル状況ニテ徐々ニデハアルガ着実ニ民主化ノ実現ニ努力シツツアリ 委員 政治ノ動向並ニ選挙ノ見込如何 内山知事 現在日本ノ政治ノ分水嶺ハ天皇制ノ問題デアル此問題ヲ囲リ日本ノ政界ハ確然ト左右両分野ニ分レテ居ル夫ハ恰モ欧州ニ於ケル旧教ト新教又ハ王政ト共和制ノ争ヒノ如ク深刻デアル従ツテ此問題ニ付結論ノ一致セル進歩党、自由党、社会党ノ間ニハ政策的ニ殆ンド大ナル差異ヲ認メラレス尚共産党ノ提唱スル社会党トノ提携ニヨル人民戦線ノ統一的結成ハ不成立ニ終ルモノト見テヰル従ツテ新聞ラジオ等ニ誇大ニ表現セラレテ居ル彼等ノ勢力ノ実体ハ余リ大シタモノトハ思ハレヌ現在ノ新聞ノ論調ヲ以テ日本ノ輿論ナリト速断スルコトハ最モ危険デアル然シ乍ラ過去ニ於テ日本ノ朝野ガ遂ニ軍閥ノ跳梁ヲ許スニ至ツタアノ政治的無気力ト利己的態度ヲ以テ今日再ビ左翼ニ望ムナラバ遠カラズ彼等ノ跋跪ヲ如何トモ為シ得ザルニ至ル虞レガ十分デアル「自分ハ専門学校ノ学生ト中学生ヲ子供ニ持ツテ居ルガ彼等ノ自由ナル言ハ恰ヲ共産党ノソレノ如ク奔放過激ナ所ガ少クナイガ然シ充分話シ合ツテ見ルトソノ共産党ナラザルコトヲ知ルノデアル」 (右ノ説明ニ対シ大体ニ於テ之ヲ諒解シタル感アリアル部分ニハ特ニ我意ヲ得タリトノ感ヲ表ハセリ) 委員 食糧事情ニ付如何 内山知事 日本全体ガ絶対量ニ於テ相当ノ不足ヲ来シツツアルハ御承知ノ如クナルガ特ニ本県ノ主食糧ハ七〇%ヲ外部ニ依存スベキ状況ニアリ特ニ復員者、進駐軍労務者、連合軍貸与船乗組員等ニ喰込マレ絶対量ノ不足ハ真ニ深刻ナリ成程日本全体ニハ絶対量トシテ四-五ケ月分ノ手持ストツクアルヲ以テ其レ程心配ノ要ナシトノ意見アルモ他面其レ以後ヲ如何ニスルカノ見通シ無キ為食糧ニ対スル国民ノ不安ハ極端デアツテ之ガ国民ノ全活動ヲ臆病且消極的ナラシメテヰルノハ事実デアル連合国ノ中ニモ食糧ノ不足ニ困難シツツアル国ノ存スル此際日本ヘノ輸入ガ相当ノ困難ヲ伴フコトハ万々承知ナルモ現在ノ如ク絶対的ナル食糧不足ニ直面シツツアル日本ニ対シ食糧ヲ提供セラルルコトハ人道的ニモ理解サルルモノト信ジテ疑ハヌ殊ニ積極的ニ日本ノ再建ヲ指導援助セラレントスル連合国ニ於カレテハ日本再建ノ根本ガ道徳的ニモ物質的ニモ食糧問題ニ帰スルコト明白ナル今日其ノ一滴ノ呼水ノ意味ニ於テモ速カニ食糧輸入ヲ具体化スルコトノ必要ヲオ認メ願ヘルモノト信ズル (右ノ説明ニ対シテハ何レモ同情的ニ傾聴充分諒解セルモノノ如シ) 委員 連合軍ノ軍政ニ関シ此際特ニ或種ノ措置ヲ希望シ或ヒハ現在ノ措置ニシテ差止メヲ希望スル等ノコトアラバ此際開陳アリ度シ 八木警察部長 現在ニ於ケル治安状況並ニ終戦後著シク犯罪ノ増加セル傾向其中ニハ進駐軍ニヨル犯罪ガ相当件数含マレ居ルコト等ニ関シ詳細説明アリタル後右ノ実情ニ即応スル警察官ノ増員方ニ付特ニ配意ヲ乞ヒタリ右ニ関連シ委員側ヨリ警察官ノ素質如何、彼等ハ充分信頼スルニ足ルヤ、又彼等ノ待遇ニ付改善ノ要アルニアラズヤトノ質問アリ八木部長ヨリ終戦直前ニ於テハ遺憾乍ラ警察官ノ素質相当低下シタルモ終戦後逐次改善サレツツアルコト並ニ待遇ノ改善ハ考慮中ナリトノ説明アリタリ 田代経済第一部長 現下ノ喫緊ノ重要問題ハ食糧対策ナルガ我ガ神奈川県ハ消費県ニシテ特ニ他県ニ依存スルコト大ナルガ生産県ニ於テハ本年度産米少ク食糧ニ関シテハ何レモ逼迫シ居リ今後ニ於ケル食糧ノ輸入ニ付一段ノ御援助ヲ乞フ 広橋経済第二部長 本県ハ元来工業県ニシテ戦災ニヨリ相当打撃ヲ受ケタルモ極力平和産業ヘノ転換ヲ図リツツアリ、然シ乍ラ各工場ノ手持資材ハ何レモ三ケ月程度ニ過ギズ而モ今後材料入手ノ見通ナキ為製造ヲ手控ヘツツアリ若シ此儘放置スレバ機械ノ損朽ヲ免レズ戦災復興ノ為ニモ見返リ品製造ノ為ニモ是非綿花、鋼材其ノ他ノ必要資材ノ輸入ニ付御配意アリ度シ (右ニ対シテハ何レモ諒解セルモノノ如シ) 田島横浜市助役 一 横浜市ヲ再ビ生糸輸出港トシテ復活セシムル為現在一部使用ヲ許可セラレ居ル生糸検査所ヲ更ニ解放セラレ度 二 進駐軍占拠地域ガ今後何処迄拡大スルヤ予測セラレザル為復興計画樹立上困難ヲ感ジ居レリ、予メ占拠地域ヲ概定セラレンコトヲ望ム 三 進駐軍関係労務ノ供出ニハ格段ノ努力ヲ払ヒツツアルモ住宅ナキ為相当遠方ヨリノ通勤者多ク確保ニ困難ヲ来シツツアリ之等労務者用住宅建設ノ資材等ニ付格段ノ御配慮願ヒ度 内山知事 県内在留ノ台湾人ニ付テハ今日迄ニ略本国還送ヲ完了セルモ尚中華民国人朝鮮人ハ相当数在留シ事故モ各所ニ頻発シ居レリ、之ガ早急ナル帰還ノ促進ニ付御配慮願度委員 極東委員ノ使命ニ付テハ如何ナル風ニ考ヘテ居ラルルヤ 内山知事 (明白ナルモ返答ニ困難ヲ感ジツツ次ノ如ク答フ) 国民ノ諒解ハ必ズシモ一定セズ或者ハ日本ガ指令完遂ノ上ハ日本ヲ立派ナル国トスル目的ニテ連合軍指令部ヲ動カシ得ルモノト言フ然シ乍ラ相当多数ノ者ハ日本ヲ徴罰スル目的ノモノナリト言フ 余個人トシテハ日本ガポツダム宣言ノ趣旨ヲ体ジ誠意ヲ以テ指令部ノ指令ヲ遂行シ平和的日本ヲ再建セントスル時ハ近ク国際連合ノ一員トシテ立チ得ル様指揮援助セラルル有力ナル存在ト確信シ始メテカカル機会ニ恵レタルヲ幸ヒ余ノ考ヘヲ開陳スル次第ナリ 之ハ余一個ノ意見ナルガ衷心ヨリ希望スル次第ナリ 委員 然ラバ吾々ノ使命ニ付ステートメントヲ出スコトハ如何 内山知事 何卒民衆ヲ納得セシムル為ニモオ願ヒ致度 (我意ヲ得タリトノ感アリ) (「各地方軍政状況報告関係」 (昭和二十年)外務省外交史料館蔵) 九八 第八軍を中心とする軍政機構 軍政組織 (Miiitary Governmeコt 〇rganization) 政策と命令 (Policy and Orders) -連合軍の最高司令官 実施(Operations) ―第八軍、指揮官 (Commanding General) 軍司令官は、最高司令官の幕僚が取扱う軍政の諸方面の大部分を実施の段階で指揮しなくてはならないから、軍政としての第八軍の組織は諸方面を指揮するための諸分隊を包含し、添附図に見られるように、SCAP の組織に相当する三つの主要機関で構成されている。 ⑴この司令部(第八軍)の参謀部 ⑵二つのアメリカ軍団司令部、各々に軍政参謀部がある。 ⑶日本全国に配置された五四の軍政チーム 四六都道府県のそれぞれに一チーム、八行政区のそれぞれに一チームあり、四二二人の将校と一四六六人の兵士が配属されている。 隊員は、約六〇〇人の行政事務職員 (Authorized Civil ServicePersonnel) によつて補われ、このうちおよそ三二五人だけは確保された。 確保できた人員を最も効果的に活用するために、チームはそれぞれ配属される地域の大きさと重要さに従つて組織される。したがつて、チームはそれほど重要でない諸県における六人の将校と二五人の兵士で構成されたチームから、東京都と神奈川県における連合チームの六七人の兵士にいたるまでその規模は様々である。南本州の五県からなる中国地方と四国の四県地方は、イギリス連邦軍隊が進駐占領している。これら二つの地域と、東京都と神奈川県から成る東京-神奈川地城は、第八軍司令部が直接に監督する。残りの地方は二つのアメリカ軍団司令官たちを通して統制する。 軍政チームの組織全体は、多くの文民 (Civilians) が職員となるように力を尽くしており、将来この組織が望ましいものであることを証明するために最高司令官の直接統制に帰属するように、特別に設計されている。職員の中には幾人かの女性が高い地位についている。というのはこの仕事のある部分は日本女性に教育上の便宜を多く与えようとすることに向けられているからであり、また、日本人には多くの女性教師が存在しているからである。 軍政指揮系統の職務 (Functions Of Miiitary Government Echelons) 連合国軍の最高司令官は、日本の降伏を有効にするために、ポツダム宣言の条項と総合参謀本部の指令を実行する権限を与えられている。最高司令官は、日本の天皇および天皇の意図に添う日本帝国政府の様々な輔弼によつて、実行できる最大の範囲で、その権限を行使する。最高司令官はすべての政策を発表し、日本政府に対するすべての命令を発する。最高司令官は、第八軍が行う特別指令を遂行する日本人の監督任務の性質と範囲を詳述し、第八軍の司令官 (The Commanding General) に対し、指令を発する。 第八軍の司令官は軍政の実施上の諸方面の任務を課されている。 司令官の特別任務は最高司令官によつて日本政府に命ぜられた指令を実行している野戦部隊(The Field Units) に作戦上の指令を発し現場の状況に関して最高司令官に勧告し、日本政府あるいは日本人の下層階級による命令や通達の不履行を報告する。司令官は、非常の場合を除いて直接干渉の権限はない。 各々の軍団の司令官は、それぞれの責任をもたされている地域での軍政上の諸問題の調整と指揮監督の任務を担当する。八人の地方司令官は、それぞれの地位によつて 軍政の責任をもちそれぞれの地域にある県軍政チームの作戦活動の調整という任務を担当する。県の軍政チームは軍政における野外作戦部隊である。チームの隊員は大部分が日本人と親密に接触し、周囲の状況をじかに観察している。チームの司令官とその補佐グループは日本人の日常生活の政治、経済、教育、衛生、福祉、その他の諸方面に関心を高めなければならない。実際、日本人の生活には、各々の軍政チームの何人かの隊員には関係のないいくつかの面がある。 (竹前栄治氏蔵) 〔注〕添附図略。 九九 連合国軍隊横須賀進駐にともなう注意の 件布告(一-二) ㈠ 布告 一 彼我最高当局ノ了解ニ基キ連合軍(米国軍)ハ横須賀軍港地区及横須賀航空基地(追浜)ニ上陸シ両地区並ニ之ニ隣接スル地域内ノ海軍施設ニ進駐ス 二 右進駐ヲ行フ期間危険防止ノ為横須賀市域(逗子、長井、大楠、武山、浦賀、久里浜及北下浦各出張所区域ヲ除ク)内所在者ハ屋内ニ留マルベク車馬ノ運行ハ禁止セラル 三 進駐軍ニ対シ妨害ヲ加フルモノト思惟セラルベキ所在者ノ通行及車馬ノ運行ニ対シテハ連合軍飛行機ハ之ニ対シ攻撃ヲ加フルコトアルベキヲ以テ注意ヲ要ス 四 進駐開始ノ日時ハ八月三十日一〇・〇〇頃ナリ 昭和二十年八月二十九日 横須賀連絡委員会 〔欄外注記〕 (委員長ハ旧横鎮参謀等 委員ハ旧参謀等 事務所ハ三笠会館内) ㈡ 二十横総々第五九七号 昭和二十年八月二十九日 横須賀市長 梅津芳三 町内会長殿 連合軍(米軍)進駐ニ関スル件 今般連合軍(米軍)本市進駐ニ関シ横須賀連絡委員会ヨリノ布告ノ通リ八月三十日午前十時ヨリ特命アル迄別紙地区内所在者ノ通行及車馬ノ運行ハ絶対禁止スルコトヽ相成候ニ付至急各家庭ニ周知徹底セシメラレ万遺憾ナキヲ期セラレ度 追而八月三十日午前十時ヨリ特命アル迄他地域ヨリ旧横須賀地域(田浦、衣笠、各出張所管内及市役所本庁管内)ヘノ人車馬ノ通行モ絶対ニ禁止セシメラレ度申添候 (加藤木保次氏蔵) 〔注〕別紙省略。 一〇〇 神奈川県下の治安状況等に関する証言 発特高秘第六九四号 昭和二十年九月十一日 鳥取県警察部長 小倉政博(印) 内務省警保局保安課長殿 中国地方総監府第一部長殿 京浜京阪方面ヨリノ帰来者ノ言動ニ関スル件 要旨 一 治安状況 進駐後京浜地方ハ比較的平穏デ治安ハ維持サレテ居ル一部右翼ノ動揺ト将校ノ自刃ナドガアルガ民心ハ平静デアル 二 進駐軍ノ動向 米兵ハ一人デハ暴行セヌガ二、三人集団スルト暴行スル特ニ悪質ナノハ比島兵ダ 暴行ノ主ナモノハ自動車強奪、住居侵入、婦女強姦、時計万年筆等ノ窃取等デ又身体検査ノ際若イ婦女子ニモンペヲ脱セ凌辱スルコトモアル 農家ガ一番困ルノハ牛ノ徴発デアル 記念品漁リハ面白半分ニ遣ル様ダ 米兵ハ呑気デ又話セバ分リ親切ナ所モアル 三 進駐軍ニ対スル部民ノ意嚮 相当恐怖シテ居リ外出モ遠慮シテ居ル 併シ戦争ヲ継続スレバモツトヒドイニ此位ハ我慢セネバト諦観シテ居ル様ダ 警察官等米兵ニ暴行セラレタリ日本人ノ身体検査ハ嫌ダト云ツテ辞職ヲ願出ルモノガ相当アル 四 食糧事情 京浜地方ノ食糧事情ハ目下特配サレテ居ルノデヨイガ実際ハ相当窮迫シテ居ルノデ復員ニ依ル人口増加モアリ今冬ハ数十万ノ餓死者ガ出ルダロウ 五 進駐軍ニ対スル享楽機関 東京デハ各業者ヲ株主トシ五千万円ノ費用デ売店、カフエー、バー、ダンスホール、映画館等設置ノ計画アリ。警視庁管下デ二万ノ特殊接待婦ヲ募集シタラ五万ノ応募者ガアツタ 六 進駐軍ニ対スル心得 通訳ハ人選ニ相当考慮スベシ 婦女子強姦ハ服装デ剌激スルノガ原因ダカラ服装ハ清楚ニキチントセヨ 七 京浜地方ノ俘虜ノ動向 釈放サレタ俘虜ハ無銭遊興シテ居ル 自動車強奪ヲヤル 京浜地区ニ対スル連合軍進駐後ノ治安状況暴行事件一般部民ノ意嚮又ハ京阪方面ノ釈放セル連合軍俘虜ノ行動等ニ関シテハ地方民ハ多大ノ関心ヲ持チ同方面ヨリノ帰来者ノ言動、新聞記事等ガ誇大ニ宣伝セラレ各種流言流布セラレ居ルヲ以テ鋭意之ガ取締啓発ニ努メツヽアルガ連合軍進駐後京浜、京阪方面ヨリ管下ニ帰来セルモノヽ言動左記ノ通リニ有之 右及申報候也 記 一 東京都神奈川区恩田 会社重役 橋谷勝之助 当四十三年 ⑴ 私ハ九月八日賜仮帰郷シタガ終戦後ノ東京ハ平静デ暴動ノ起キタ地区ハナイ 治安維持ハ武装警官憲兵ガ当ツテ居ルガ之等ノ殆ドハ神奈川其ノ他ノ進駐地区ニ派遣サレテ居タ 一部右翼ノ動揺ガ少々見受ケラレルガ概シテ平静デ却ツテ田舎ガ騒イデ居ル ⑵ 食糧事情 現在余分ナ食糧ヲ配給シテ居ルガ近ク窮迫シ暴動ガ起キルハ必然ダ 住宅難復員ニ依ル人口増加等デ今冬ハ少クトモ三十万人位ノ餓死者ガ出ルダロウ 殊ニ外国ノ統計カラ子供ノ餓死者ガ多イト思フ ⑶ 進駐軍ノ行動 厚木ニ進駐シタ連合軍ハ逐次兵力ヲ増強地域ヲ拡大シテ居ル 米兵ハ街角等ニ立哨シテ居テ身体検査ノ際携行シタ時計等ヲ笑ヒ乍ラ失敬スル代償トシテ煙草一箇ヲ与ヘル若イ女性ハ路上デモンペヲ脱ガセタリスル 設計ヤ民間ノ自動車ヲ米記者等ガ横取リスルガ強奪デナク一時使用デアル 併シ米国人ハ話セバ分ル様ダ ⑷ 通訳問題 通訳ヲ利用シテ婦女子ノ世話ヲサセタ事例モアルカラ通訳ハ思想上充分ナ人選ガ望マシイ ⑸ 進駐軍ニ対スル享楽機関設置 京都デハ進駐軍ノ享楽機関トシテ各業者ヲ株主トシ五千万円ノ予算デ売店、カフエー、バー、ダンスホール、劇場、運動場等ヲ設置スル計画ヲ樹テ進行中デ三越モ娯楽場ニナル 先般警視庁管下デ二万人ノ特殊接待婦ヲ募集シタラ五万人ノ応募者ガアツタ 一 神奈川県国府津 補助憲兵 馬場利男 当三十二年 進駐軍ハ敵地ニ上陸シタ様ナ気持ハナク平気デ民家ニモ立入ル神奈川県地方ハ民心平静ダ 米兵ハ一人デハ暴行ハセヌガ二、三人集団スルト暴行スル民家保護ノタメニ米兵ニ殺サレタ者ガ相当アリ特ニ警察官ガ多イ 米兵デモ本国兵ハ良質デ悪質ナノハ比島兵ダ 彼等ハチヨコレートヤ煙草ヲ遣レバ万事OKト思ツテ居ル民心ノ動向ハ戦争ヲ継続スレバモツトヒドイ目ニ遭フガ此位ハ仕方ガナイト諦観シテイル 一 神奈川県平塚駐屯憲兵隊 憲兵伍長 清川喜治 進駐地区ハ相当混乱シテ居ル治安維持ニ当ル憲兵、警察官ハ無力デ暴行掠奪サレテモ民衆ハ許モセズ諦メテ居ル特ニ目立ツノハ牛ノ徴発デ相当金ハ支払フガ農家ハ最モ之ヲ嫌ツテ居ル 婦女子ノ暴行ハ相像以上デ公然ト行ハレテ居ル之ハ服装カラ受ケル刺激ニヨルモノガ大部分ダカラ此点婦女子ニ強調シタイ学生ハ憲兵ガ護衛シ通学サセテ居ル軍ヤ民衆ノ身体検査ハ厳重デ之ハ日本ノ憲兵ヤ巡査デ行フノデ「同胞ニコンナコトハ出来ヌ」ト辞職ヲ願出ルモノガ多数アル (内務省警保局「各種情報並民心ノ動向」(昭和二十年)神奈川県庁蔵) 一〇一 連合国軍隊進駐地域の住民の心得事項 よく読んでまわしてください! 号外 昭和二十年九月五日 玉川村長 各部落会長殿 〝連合軍進駐地附近住民の心得〟ニ関スル件 標記連合軍進駐ニ関スル注意事項ニ関シテハ既ニ新聞紙上ニ於テ充分御承知ノ事ト存シ候得共所轄警察署ヨリ左記注意事項部落一般ニ徹底相成度旨通牒有之候ニ付及移牒候也 記 連合軍進駐地附近住民の心得についての注意 去る八月二十八日以降米軍は神奈川県下に逐次進駐中で現在までの処、一般に秩序正しく極めて平穏であり、彼我平和的雰囲気の中に事態は進行中であるから一般国民は無用の不安動揺をなすことは絶対禁物である。 唯、極めて一部外国兵に命令不徹底、又は好奇心、出来心などから若干事故もあり又言葉の通じないところから一寸した「ゴタ〳〵」も散見されたので、之に鑑み我政府として不法行為に対して連合軍側に厳重申入れをなし事故防止に努めつゝあり一方現地警察も連合軍警備隊と連絡し治安維持について万全の策を採り、又連合軍側に於ても善処を約しつゝあるが、一般国民としては此の際更に自粛自戒各個人の権利は自分自身で充分護る事に努め不祥事発生を未然に防止せねばならない。 ○外国兵ハ国内ノ風俗習慣等ヲ理解セズ好奇心乃至出来心ニテ種々悪戯ヲナス傾向アルヲ以テ国民側ノ態度トシテ最モ重要ナルコトハ彼等ノ不法行為ヲ誘発セザル様努メテ隙ヲ見セナイ事ガ大切デアル 即チ外国兵ト色々ナ事デ個人的ニ交渉シナケレバナラヌ場合ガ起ツテモ努メテ冷静沈着ナ態度デ応対シ自分ノ権利(生命、貞操、及財産)ハ飽ク迄自分デ主張スル事ガ必要デアル ○進駐地附近ノ町内会、部落会、隣組ハ皆ガ相戒メ相助ケ合ツテ事故ノ未然防止ニ努力スル様ナ仕組ヲ必ズ確立スル事 亦隣リ組、部落会内ニ外国語ノ話セル者ガ有ル場合ハ之ヲ活用スルコト ○各人ハ成ル可ク外国兵士ト接触シナイ様注意スルコト 又婦女子ハ服装ヲ正シクシ独リアルキヤ夜間ノ外出ヲシナイコト 家ヲ留守ニシ或ハ女ノミデ留守居スル時ハ住家ノ戸じまりヲ厳重ニシ特ニ夜分ハ外部カラ中ガ見エナイ様ニスルコト ○外国兵ノ習慣トシテ其ノ土地ノ品物ヲ〝記念品〟トシテ持チ帰ル為種々ノ物品ヲ好奇心ニテ強要スルコトアルヲ以テ貴重品等ハ彼等ノ目ニフレヌ様注意スルコトモ肝要デアル ○万一暴行、掠奪等ノ事態ガ生ジタナラバ大声ヲ出シテ近所ニ救ヒヲ求メルトカ護身ノ為抵抗スルトカ等ノ自衛上必要ナル手段方法ヲ必ズトラネバナラヌ ○外国兵ノ不法行為ニ就テハ政府トシテモ厳重抗議ヲ為シ其ノ善処方ヲ求メルコトヽ成ツテ居リ米国側モ事実ガ明白ナル場合ハ適当ナル処置ヲトルノガ通例デアルカラ苟モ不法行為ノ行ハレタ場合ハ国民トシテ、犯行、場所、日時、犯行時、服装、其他ノ特徴等証拠トナル可キ事物ヲ速カニ警察官官吏憲兵ニ届出スル事ガ是非共必要デアル (玉川村役場「復員関係書類」(昭和二十年)厚木市役所蔵) 一〇二 連合軍憲兵と日本国警察との事務打合会報告 外秘号外 昭和弐拾年九月拾参日 神奈川県知事 藤原孝夫 内務大臣 山崎巌殿 横浜地方裁判所検事正 渡辺俊雄殿 連合軍憲兵トノ警察事務打合会開催ニ関スル件 連合軍ノ本土進駐ニ伴ヒ各地ニ諸般ノ事故発生シツヽアリ之ガ対策トシテ米憲兵側ヨリノ招致ニ依リ本月拾弐日横浜市加賀町警察署ニ於テ関係事務打合会ヲ開催セルガ状況左記ノ如クニ有之 右及申報候也 記 一 日時 昭和弐拾年九月拾弐日 午前九時三十分開会 〃拾時五分閉会 二 場所 横浜市加賀町警察署楼上訓授室 三 出席者 警察側 警察部長、警防、輸送、各課長及ビ横浜市内各警察署 長 (但シ戸塚署長欠席寿署ハ署長代理荒川警部補出 席) 米憲兵側(エム・ピー) 憲兵大尉ビーテイー 四 状況 開会ニ先立チ警察部長ヨリビーテイー大尉ニ対シ出席各署長並ニ其ノ代理ヲ招介ス 尋デ議事ニ入リ被我ノ希望及要望事項ヲ協議検討シタル結果別添議事要旨ノ如ク取締事項ヲ決定散会ス 議事要旨 一 横浜ニ於ケル「エム・ピー」(米国憲兵)ノ組織 (イ) 横浜ニ於ケル合衆国憲兵ノ代表者 憲兵大佐 パヂエツト(Paddgett) (ロ) 右代表ノ許ニ憲兵大尉二名アルガ主トシテ警察関係事務ノ担当者ハ 憲兵大尉 ビーテイー (Beotey) ナリ (ハ) 係員数 エム・ピー(米国憲兵) 現在員数 六百名 (ニ) 本部 加賀町警察署 (ホ) 憲兵大佐パヂエツトノ宿舎 横浜市中区海岸通一丁目 但シ税関西門ヨリ二軒目ノビルデイング内 (ヘ) 所属並区域 上掲エム・ピー(米国憲兵)ハ何レモ 合衆国第八軍団第十一軍ニ所属シ其ノ担当区域ハ横浜市内ノミヲ一区域 トシテ其レ以上ニ小分割セルモノナシ 二 目下ノ処横浜市内ニ於ケルエム・ピー(憲兵)ノ総数ハ如上ノ通リ特ニ訓練サレタルモノ六百名配置サレアルガ将来其ノ必要アラバ何時ニテモ増員サルヽ筈ナリ然レ共現在ハ其ノ必要ヲ認メズ故ニ今後日本警察官一、五〇〇名ト米国憲兵六〇〇名計二、一〇〇名ヲ以テ横浜市ノ治安維持ニ当ル 三 エム・ピー(憲兵)ハ普通ノ犯罪ニ就テハ之カ調査若ハ捜査等ヲセズ換言スレバ米国兵ニ係ル事犯ノミヲ取扱フ 四 横浜市内各警察署ニハ二、三日中ニエム・ピー(憲兵)ヲ各二名宛配置スル 加賀町警察署ヲエム・ピー(憲兵)ノ本部トスル尚右エム・ピー(憲兵)本部ニ在リテハ向後前記ノ如ク各署ニ配置セル憲兵ニ対シ事故ノ皆無等ニ因リ其ノ必要無キモノト認メラルヽ場合ニハ之ガ配置ヲ解クコトアルベシ 五 ラヂオ装置ノエム・ピー自動車ヲ市内各警察署管内ニ最少限度一台宛配ス右記自動車ハ必ズ一時間ニ一回宛予カシメ定メラレタ地点ヲ警邏ス 六 エム・ピー(憲兵)ハ一般市民ノ諸権益ヲ保護スル任務モアル故ニ両者ノ協力ヲ望ム 七 米国兵ノ諸犯罪行為防止若ハ犯人検挙ノ為メエム・ピー(憲兵)ニ対スル連絡ハ可及的速ニセラレタシ 従来米兵ニ干スル事件発生ニ当リ警察側ヨリエム・ピー(憲兵)ヘノ連絡或ハ通告ハ早クテ二、三時間位遅クテ二、三日後ニ行ハレ居タルガ斯ル事ニテハ犯人ノ検挙上ニ困難不能等ヲ来タス虞アルニ付特ニ此ノ点留意シ速ニサレ度シ 八 警察電話ノ修理ヲ速ニサレ度シ電柱不足ニ困リ修理ガ阻害シアルト雖モ万難ヲ排シ早急ニ之ガ完成ヲ計ルコト 但シ米国軍側ハ此ノ問題ニ就テハ絶対ニ援助不可能ナリ 九 市内各署ニハ警察官並エム・ピー(憲兵)等ノ輸送用トシテ最少限度自動車一台以上ヲ備へ置クコト ガソリンガ不足シ前掲自動車ノ運行不能ガアリトスレバ市内鶴見区大黒町一一番地ニ在ル給油所ヲ調査シ同所ヨリ之ガ補給ヲ為スコトヽスルモ之ハ一応調査ノ上知ラス 一〇 市内各署ニハ終日通訳者ヲ置キ昼夜ヲ問ハザル事故発生ニ備ヘラレ度シ 追而会談ガ可能ナレバ結構ナルモ若シ之ガ不能ニ在リトスレバ筆談ニテモ結構ニ付之ガ通訳者トシテ使用セシメラレ度シ (通訳ハ各署ニテ各々二名宛採用ノコト) (内務省「事故防止資料綴」(昭和二十年)国立公文書館蔵) 一〇三 物品買受等取締に関する件通牒 経第一第二六四号 昭和二十年九月二十二日 経済警察部長 警務部長 各警察署長殿 物品買受等取締ニ関スル件 近時進駐連合軍将兵ヨリ街頭又ハ家庭ニ於テ煙草、チヨコレート、チユーインガム、ビール等物品ヲ買受クル者激増ノ傾向ニアルハ甚ダ遺憾ナリ此種行為ヲ放任スルニ於テハ大日本国民ノ道義ヲ失堕スルノミナラズ延テハ統制経済ヲ攪乱スル虞アルヲ以テ爾今之等行為ニ対シテハ左記ニヨリ指導取締ニ努メ之ガ根絶ヲ期セラルベシ 記 一 町会常会其ノ他凡ユル機会ヲ利用シ又ハ回覧板(雛形参照)等ヲ通ジ一般部民ニ周知徹底ヲ図リ国民ノ教養ヲ高ムルコトニヨリテ自発的ニ止メシムル如ク指導スルコト 二 街頭ニ於テ物品ヲ買受クル為連合軍将兵ニ接近シ或ハ追随スル者アルトキハ穏カニ説諭ノ上之ヲ阻止スルコト 三 物品買受中ノ者ヲ発見シタルトキハ前号ニ準ジテ措置シ既ニ買受タル者ニ対シテハ将来ヲ訓戒説諭スルコト 四 前二号ノ措置ヲ為スニ当リ其ノ相手方タル連合軍将兵トノ間ニ摩擦紛議等ヲ惹起セザルコトニ細心ノ考慮ヲ払フハ勿論其ノ虞アル時キハ事後ニ於テ買受者其ノ他ニ懇篤説諭スルコト 五 物品ヲ買受ケタル者ニシテ当該物品ヲ他ニ転売シタル者アルトキハ立件送致スルコト 尚当該物品ガ外国製品ニシテ基準価格分明ナラザルモノハ夫々統制機関(例ヘバ煙草ニ就テハ専売局ノ如キ) ニ物品ノ価格査定ヲ委嘱シ基準価格ヲ定ムルコト 回覧板 一 最近街頭で連合軍兵士に追縋つたり取囲んで煙草「チヨコレート」 「チユーインガム」等を買ひ受け又は之等を道路で撤いた場合先を争つて拾ふ者がありますが、このやうなことはお互ひが日本国民たるのほこりを自分で傷け汚すことであり、全世界の物笑ひとなりますのでお互ひ節義を高く持つて之等のことは避けるやう戒めませう。 連合軍側に於ても兵士が私達に物品を売ることは固く禁じて居るのであります。 二 連合軍兵士と応待する場合は、はき〳〵とした明確な意志の表示を致しませう。 言葉が通じないのになまじか覚えた片ことまじりの英語を使用したり或は訳も判らず徒らにうなづいたり又只黙つて□たりすることは誤解の因となり相互の為ではありません。 (内務省「事故防止資料綴」(昭和二十年)国立公文書館蔵) 一〇四 神奈川県下連合軍兵士関係の事故防止対策 神奈川県ニ於ケル連合軍兵士関係ノ事故防止対策 神奈川県警察部 本県ニ於テ目下実施中ノ連合軍兵士関係ノ事故防止対策左ノ如シ 一 町内会、部落会、隣組等ニ対スル外国人取扱要領ノ指導啓蒙曩ニ内務省ヨリ指示セラレタル『連合軍進駐地附近ノ住民心得』ニ若干現地事情ヲ加味シ別添ノ如キ印刷物ヲ配付回覧セシムルト共ニ各常会ヲ通ジ更ニ之等各層ノ指導者ヨリ具体的事例ヲ口伝ニ依リ徹底セシメツヽアリ 二 新聞紙利用ニ依ル一般民衆ノ指導啓蒙 事故ノ予防警戒ノ為メ本省ノ新聞紙指導要領ニ則リ同盟並地元新聞記者ト緊密ナル連絡ノ下ニ差支ナキ範囲ノ記事ヲ発表民衆ノ警戒心誘発ニ努メツヽアリ 三 連合軍憲兵ト我方警察官トノ連絡協調ニ依ル第一線現場ニ於ケル事故防止 連合軍進駐直後ニ於ケル事故ノ頻発ニ鑑ミ連合軍側ノ軍秩ヲ維持スルハ結局連合軍側憲兵ヲ利用スルニ而カズトシ本県警察部長ハ八月三十一日ヨリ連合国進駐軍第八軍憲兵司令官シー・ヴイキヤドウエル大佐ト緊密ナル連絡ヲ保持スルト共ニ所轄警察署長ヲシテ同大佐ノ麾下各将校ト直接連絡ヲ執ラシメ且ツ先ノ所属部下ヲ警察署ニ常時配置ヲ受ケ事件発生ノ都度何時ニテモ警察官ト同道ニテ現場ニ臨検迅速ナル事件処理ニ当リ当該事件ノ検挙ト一般予防ニ相当ノ効果ヲ収メツヽアリ 今其ノ配置状況ヲ示セバ次ノ如シ (イ) 加賀町警察署 第八軍憲兵大尉以下将校八名 (ロ) 藤沢警察署(厚木飛行場管轄) 中尉以下 四名 (ハ) 鎌倉警察署 大尉以下下士官十六名 (ニ) 横須賀警察署 〃 二十五名 (ホ) 小田原警察署 中尉以下下士官二十名 (ヘ) 平塚警察署 少尉以下 四名 ◎註 横須賀市内各署ハ加賀町警察署ニ本部ヲ設置シ他ノ警察署ニハ特別配置セズ全区域ヲ一括処理シツヽアリ 四 終戦中央連絡委員会地区委員会ヲ通ジ連合軍当局ニ対スル抗議横浜、厚木、横須賀各地区ニ設置セラレタル終戦中央連絡委員会各地区委員会責任者ニ対シ各種事故発生ノ都度速カニ連絡セシメ夫々具体的事案ノ内容ヲ示シテ抗議ヲ提出シ連合軍当局ノ善処ヲ要請シツヽアルガ連合軍側ニ在リテモ具体的証拠ノ判然セルモノニ付テハ遺憾ノ意ヲ表スルト共ニ誠意ヲ以テ善処スベキ旨回答シツヽアリ(抗議後解決事件三件) 五 土産物販売店ノ整備拡充 進駐軍ノ一般民ニ対スル物品強取事件ノ根本原因ハ概ネ土産品乃至ハ紀念品漁リト認メラレ目下各地共斯ル商店殆ンド無キ実情ナルヲ以テ急速ニ斯種商店ノ開店整備ヲ期スベク関係方面ヲ督励シ目下準備中ナリ 六 慰安施設ノ整備拡充 カフエ、キヤバレー、ビヤホール、娯楽場、遊廓其ノ他一般慰安施設ノ早急整備拡充ヲ為スベク目下極力関係方面ヲ督励シツヽアルガ整備資材ノ不足ト保健衛生施設ノ不完備ニ悩ミツヽアリ 七 連合軍兵士トノ一般国民間ノ街頭ニ於ケル物品売買行為ノ取締 最近ノ日本国民ニシテ街頭ニ於テ連合軍兵士ヨリ煙草、チヨコレート其他各種ノ物品ヲ円価ノ価値ヲ崩ス程度ノ価格ヲ以テ購スル者激増シツヽアル実情ニシテ一般新聞指導ヲ以テ県民ノ覚醒ヲ促シツヽアルモ効果薄ク近ク連合軍憲兵側ト協議ノ上夫々分担ヲ完メテ一斉取締ヲ実施スベク計画中ナリ 八 警察英語通訳ノ増員配置ト一般人中ノ英語通訳可能者ノ利用 言語不通ニ依ル事故ノ発生モ亦相当数ニ達セル模様ナルヲ以テ差当リ県下各署ニ一名乃至三名ノ警察通訳ヲ増員配置スルト共ニ警察部外事課ニ機動性ヲ有スル優秀通訳十名ヲ常時配置シ各種事案処理ニ当ラシメツヽアリ又一方町内会、部落会、隣組等ニ対シテモ英語通訳可能者ヲ平素物色シ置キ万一ノ場合之ヲ利用シ得ル様指導シツヽアリ 九 警察官自体ニ対スル事故防止 連合軍進駐以来警察官自体ニ対スル連合軍側兵士ノ不法行為ハ目ニ余ルモノアリタルガ就中警察官ノ装備タル刃剣、拳銃等ノ強奪行為頻発セルヲ以テ別添ノ如キ簡素ナル英和両文印刷物ヲ作成ノ上警備警察官ニ配付シ会話ニ依ル拒否ノ代リニ先方ニ所要ノ部位ヲ指示シテ応対拒絶セシムルコトヽ為シタル外制服警察官ノ勤務配置等ニ関シ連合軍側警備兵ノ配置勤務ト睨ミ合セ相互友愛接近スルガ如キ雰囲気ノ醸成ニ努メ以テ事故防止ニ当リツヽアリ (内務省「事故防止資料綴」(昭和二十年)国立公文書館蔵) 〔注〕別添省略。 一〇五 連合国軍隊兵士による危害等防止心得事項 相収第一三一六号 昭和二十年九月十七日 神奈川県高座郡相模原町長 篠崎太一(印) 各出張所長殿 上溝町内会長進駐連合軍外出ニ依ル危害未然防止ニ対スル回覧ニ関スル件 管下駐留ノ連合軍ニ在リテハ近日中外出許可ノ見込ミニ付之ガ一般民衆トノ接触ニ依ル危害予防ノタメ左記案文至急回覧セラルヽ様御取計相成度 回覧板 相模原町内ニ駐留スル連合軍ハ近ク外出ヲ許可サレマスノデ一般町民ト種々ナル接触ガ起ルト思ヒマスカラオ互ヒニ次ノ諸点ニ充分注意シテ不慮ノ危害ヲ予防シマセウ 一 連合軍ハ外出シタ場合飲食店ヤ土産物ヲ買フタメ物品販売店ニ立寄ル事ガアリマスカラ無用ノ摩擦ヲ生ジナイ様注意スルコト 二 上官ノ命令デ一般家庭ニ出入スルコトハ厳禁サレテ居リマスガソレハ事故ヲ未然ニ防止スルタメノ措置デアリマス 三 中ニハ一般家庭ニ入ル者ガアルカモ知レマセンガソレハ日本ノ友達ガ欲シイノデスカラソノ時ハ穏カニ応待シテヤルコト 四 暴行ヲシタリ物ヲ強奪スル様ナコトヲスレバ厳重ニ処分サレルコトニナツテ居リマスノデ左様ナ素振リガ見エタラ断然立入ヲ拒絶スルコト 五 若シ事故ガ起ツタ時ニハ警察ガ米軍憲兵ト連絡シテ厳重処分スルコトニナツテ居リマスカラ米兵ノ人相特徴等ヲ良ク見テ置イテ直ニ警察ニ届ケルコト 六 横浜、横須賀等デハ可成リ多クノ事故ガ起ツタ様デスガ一部ノ被害者ハ泣寝入リシタタメニ犯罪捜査ガ出来ズ其ノタメニ尚米兵ノ不法事件ヲ多クシタ様ナ嫌モアリマシタガ事件ヲ早ク届出テ捜査シテ貰フコトハ其ノ後ノ事件発生ヲ少クスル事ニナリマスノデ被害者ハ小サナ事故デモ必ズ早ク届ケルコト 七 米兵ノ服ノ左肩ノ処ニ付イテ居ル印ハ師団ヲ表ハス印デス階級ノ印ハ准士官以下ナラバ服ノ両腕ノ処ニ「山形」デ表ハシテアリマスシ将校以上ハ右襟ノ処ニ付イテ居リマスカラ其ノ処ヲ良ク注意シテドンナ印ガ付イテ居タカヲ見テ置クコト 八 連合軍将兵ガ一般家庭ヲ訪レ「家ヲ貸シテ貰ヒタイ」トカ「自転車ガ欲シイ」トカ又ハ其ノ他ノ交渉ヲシタ場合ハ次ノ様ナ意味ノ文面ヲ記シタ英文ノ紙片ヲ示シテ下サイ MAN OF THE ALLIED TROOPS THE ORDER OF THE GENERAL HEADQUARTERS OFTHE ALLIED FORCES PROVIDES THAT ALL NEGOTI-ATIONS REGARDING BUILDINGS, HOUSES, AUTOMO-BILE, SHOULD BE DONE THROUGH THE CENTRALLIAISO之 OFFICE ANU NOT DIRECTLY BY PRIVATEI之DIVIDUALS (訳文) 連合軍ノ方へ 進駐軍総司令部ノ命ニヨリ建物、住居、自動車其ノ他ニ関シテハアナタガタ個人的ニ直接交渉スルコトナク終戦連絡事務局ヲ通シテ行フコトニナツテイマス。 (麻溝出張所「時局関係綴」(昭和二十年)相模原市立図書館蔵) 一〇六 進駐軍兵士の不法不当行為等防止の件指示 別紙㈤ 神奈川県警察部 不法行為を為し又は秩序を紊す進駐軍兵士の確認について 連合軍が進駐してから早くも一年となります。 紀律ある行動紳十的なる立派な態度そして又子供達にまで親しまれる明朗なまた親切な兵隊達、私達は大いに進駐軍兵士から学ばねばならない事が多いと思います。 併し乍らこれら立派な尊敬すべき進駐軍兵士の中にも稀には故意に或は不注意に種々の事件を引起して居ります。 此の事は私達日本人よりも進駐軍当局ではより以上に遺憾に思つて日本人の為又連合軍の名誉の為め斯様な事件が一件も起きぬ様努力されて居るのであります。 吾々日本人としては此の連合軍の御気持に報ゆる為めにも自から被害にかからぬ様注意すると共にこれら犯人検挙等には全面的に協力せねばならないのであります。 それで今後皆さんが不幸にも之等の被害にあつた時には次ぎの事がらを必ず注意して下さい。 一 証拠をよく握むこと A 自動車番号の確認 自動車の前後部の「バンバー」の向つて左側は部隊記号右側は部隊内の番号を示す この記号と番号の二つを必ず覚えておいて下さい (エンジンカバー)に書いてある長い数字は記憶しても効果は小ない 進駐軍自動車の番号の見方 (前からでも後からでも見方は同じです) 記号と番号の二つを覚える 暇のないときは記号だけでも 先に覚えておいて下さい 左は記号 (部隊の略号)です トラックや乗用車についても ジープと同じく左の記号と 右の番号を覚えておくことです 右は番号 (その自動車番号)です B 本人の肩章、襟章 C 靴(軍靴か私物か)バンド(色や金具に異つたものがある)其の他服装 D 本人の特徴、顔型身長体格等 E 其の他本人確認の助けとなるべき諸点 二 何部隊に属するか又行先地は何処かを確かむる為に相当の距離を保ちつゝ追跡して之を確かむること。 三 被害に逢つた時は直ちにこれを最も近い警察署或は交番か駐在所に届けること。 此の届けにははつきりと証拠となるべきものを報告して戴けば効果的です。然しはつきりした証拠を扼れなかつたとしても迅速に届けることを怠つてはなりません。 四 自動車の略図を添付してありますから良く御覧下さい。 五 次にかうした犯罪を未然に防ぐ事にお互が深く注意して貰ふ事です。 進駐軍兵士の犯罪も日本人の犯罪と殆ど同様で犯罪は起す方は勿論悪いのですが被害者の方にも注意が足りないと思はるゝ点が沢山あるのです。 例へば大金を持つて一人で夜歩くなどは絶対に避けねばならぬことは勿論夜間人通り少い場所と婦人のみの歩行や男であつても少人数で歩行することは危険です。 又戸締の不完全から思わぬ被害にかゝつた例は日本人の強盗事件と変りありません。 それから婦人の被害等もよく事情を聞きますと逃れば逃られる機会があるにもかゝわらずずる〳〵と引ずり込まれたりして居る例も沢山ありますが自から事を避けるためもつと勇敢に出てもらいたいと思います。 又交通事故ですが連合軍のジープや「トラツク」に刎ねられて死傷する人が随分多いのですが、これも被害を受けた人達がもう少し注意すれば防げると思います。 最後に一言申上げたいことは進駐軍兵士の事故であつても之等を防ぐためには常に隣組の人達が連絡協調することが絶対必要であると思います。 以上の事柄を良く守つて事故防止に御協力を願います。 (仙石原村役場「庶務書類」(昭和二十一年)箱根町役場蔵) 一〇七 連合国軍隊に対する食糧品供給に関する件通達 相物収第五七五号 昭和二十年九月十七日 相模原町長 各出張所長殿 連合国進駐軍ニ対スル食糧品供給ニ関スル件 標記ノ件ニ関スル諸般ノ措置ハ全軍司令部ト終戦連絡中央事務局横浜連絡委員会ト折衝ニ基キ夫々行ハレツヽ有之候処食糧品ノ供給ニ付テハ概ネ左記ニ依リ取扱フコトヽ相成候趣通牒ノ次第ニ付テハ右御了知ノ上万遺憾ナキ様此ノ段及通牒候也 記 一 進駐軍ニ対スル食糧品ノ供給ハ原則トシテ県ノ承認ヲ得タル上為スコト 二 進駐軍ノ食糧品ハ同軍幹部ト懇談ノ結果進駐軍ニ於テ自国ヨリ持参セルモノニ依リ賄フヲ原則トシ県民ノ食糧ニハ迷惑ヲ掛ケザル様申入アリタルニ付了知スルコト 但シ予定ノ食糧未着ノ場合或ハ生鮮食糧品等ニ於テ県民ノ需要ヲ満タシ尚且ツ余力アル場合ニ於テハ同軍ノ要請ニ基キ情況ニ応シ供給ノ方途ヲ講ズルコト (麻溝出張所「時局関係綴」(昭和二十年)相模原市立図書館蔵) 一〇八 市町村長懇談会における県知事藤原孝夫の訓示要綱 市町村長懇談会ニ於ケル知事訓示要綱 自十一月十二日至十一月十四日於県会議場 本日茲ニ各位ノ御会同ヲ煩ハシマシタノハ曩ニ地方長官会議ニ於テ政府ノ所信ヲ明ニセラレマシタノデ所懐ノ一端ヲ加ヘテ之ヲ御伝へ致シマスルト共ニ、此ノ機会ニ於キマシテ御互ニ胸襟ヲ披イテ、所謂膝ヲ交ヘテ篤ト懇談ヲ遂ゲ現下ノ難局突破ニ相共ニ全力ヲ捧ゲタイト存ズル次第デアリマス。 先ヅ各位ハ現下ノ我国ノ実態ニ付テ二ツノ点ヲ正確ニ把握シテ戴キタイノデアリマス。 其ノ一ハ、我国ガ満洲事変以来十数年ニ亘ル戦争ニ因リ我ガ国力ノ殆ンド全部ヲ消尽致シマシテ、今ヤ疲労困憊ノ極ニ達シテ居ル事実デアリマス。数百万ノ同胞ガ戦災ニ因リ、又ハ戦場ニ於テ、或ハ斃レ或ハ傷キマシテ、単リ貴重ナル人命ノ損害ヲ受ケタルノミナラズ、為ニ多クノ家族ニ孤児ヤ寡婦ヲ残スコトヽナリ、又他面凡ユル物資ハ戦争ノ目的ニ動員セラレ、消費セラレ、破壊セラレ、生活ノ必需品モ生産用ノ器材モ共ニ著シク払底シ、国家トシテモ個人トシテモ極メテ窮状ニ陥ツテ居ルノデアリマス。国及地方ノ財政モ亦一大緊縮ヲ断行シナケレバナラヌ状況ニ在ルコト御承知ノ通リデアリマス。斯カル惨怛タル情勢ノ下ニ於テ、国民生活ヲ恢復シ、平和国家トシテノ日本ヲ再興スルコトハ実ニ並大抵ノ苦労デハナイコトヲ十分ニ覚悟シテカヽラナケレバナリマセン。 其ノ二ハ我国ハ戦敗国デアルト言フ事実デアリマス。戦争ニ敗レテ「ポツダム」宣言ヲ受諾シマシタ結果、我国政ノ運営ハ連合軍最高司令部ノ指示ニ服スルコトヽナリ、我国主権ノ行使ハ自然ニ制限ヲ受クルニ至ツタノデアリマス。我国ハ開闢以来未ダ曾テ外国ト戦ツテ斯ル苦杯ヲ嘗メタコトガナイノデアリマスカラ、国民ガ容易ニ敗戦ノ冷カナル現実ヲ自覚シ得ラレナイノハ無理モナイコトデアリマスルケレドモ、事実ハ即チ事実デアリマス。但シ「ポツダム」宣言ハ我国ノ軍国主義ヲ払拭シ、民主主義、平和主義、合理主義ニ基イテ我国ヲ改革セムトスルモノデアリマスカラ、徹頭徹尾之ヲ忠実ニ履行スルコトハ、単リ我国ノ連合国側ニ対スル義務デアルノミナラズ、平和国家トシテノ新日本ヲ建設スルニ欠クベカラザル基礎デアリマス。従ツテ我国トシテハ、連合国側ノ意図ヲ明確ニ理解シ、政治、経済、文化等各般ニ亘ル諸施策ヲ樹立スルニ当ツテモ、常ニ其ノ枠内ニ於テ然モ之ヲ強力且迅速ニ実施シナケレバナリマセン。以上ノ二点ハ国政及地方行政ニ通ズル二大前提条件トモ申スベキモノデアリマス。以下当面ノ問題ニ関シ大要ヲ述ベタイト思ヒマス。 第一ハ民主政治ノ確立ト言フコトデアリマス。政府ハ既ニ言論、思想、結社ノ自由ヲ確保センガ為ニ法令並ニ制度ノ改廃ニ付テ必要ナル措置ヲ講ジタノデアリマス。自由ト言ツテモ公ノ秩序ヤ善良ナル風俗ヲ乱スガ如キ無節制ヲ意味スルモノデナイコトハ申ス迄モアリマセン。又政府ハ衆議院議員選挙法ノ画期的ナル改正ノ立案ヲ進メ真ニ自由公正ナル選挙ヲ行ヒ、国民総意ヲ遺憾ナク代表セル清新溌剌タル議会ノ成立ヲ待望シテ居ル次第デアリマス。実ニ自由ヲ尊重シ、民権ヲ伸張スルハ、我ガ民主政治ノ要諦デアリ、我ガ国体ノ真姿モ亦此ニ在ルト存ズルノデアリマシテ、之ガ実施ハ、平和日本ノ再興ノ根幹ヲ為スモノト申サネバナリマセン。此ノコトハ又、地方行政ニ付テモ根底トナルベキ事柄デアリマシテ、私モ県政ノ運営ニ当リ一段ト意ヲ用フル所存デアリマスガ、各位ニ於カレテモ同一ノ趣旨ニ依リ市町村行政ノ運営ニ当ラレ、常ニ能ク人心ノ帰趨ヲ察シ、之ヲ反映セシメ、真ニ所謂自治行政ノ具現ニ努力セラレタイノデアリマス〇而シテ斯ル政治、行政ノ基礎トナリマスモノハ教育ノ刷新デアリマス。此ノ際苟モ排外思想又ハ偏狭独善ノ世界観ヲ鼓吹スルガ如キ傾向ハ極力之ヲ避ケ、個性ノ完成ト国民並ニ社会ヘノ奉仕トヲ目標トスル教育施策ヲ確立シ、就中社会教育ノ普及強化ヲ徹底シ又近年著シク頽廃セル道義ノ昂揚ヲ図リ、社会ノ進運ニ寄与セシムルコトガ肝要デアリマス。各位ニ於カレテモ社会教育ノ徹底ト道義ノ昂揚方策ニ関シ格段ノ御努力ヲ御願ヒ致ス次第デアリマス。 コヽデ衆議院議員選挙ノ執行等ニ付一言附ケ加ヘタイト存ジマス。 現任衆議院議員ノ任期ハ明年四月二十九日ヲ以テ満了致スノデアリマスガ、上述ノ趣旨ニ依リ、政府ハ現下ノ新事態ニ即応シ、成ルベク速カナル機会ニ之ガ総選挙ヲ行フコトヲ希望シ、過般来衆議院議員選挙法ノ根本的改正ヲ断行スル意図ヲ以テ準備中デアリマシテ、其ノ骨子ハ、選挙権ノ年齢及被選挙権ノ年齢引下ゲ、婦人参政権ノ実施、大選挙区制並ニ之ニ伴フ制限連記制ノ採用及選挙運動取締規定ノ徹底的簡素化等デアリマス。今回企図セラレテ居リマスル選挙法ノ改正ハ洵ニ憲法施行以来画期的ナモノデアリマシテ、之ニ基ク総選挙ハ現下ノ事態ニ鑑ミ極メテ重要ナル意義ヲ有スルモノデアリマスガ故ニ、之ガ適切公正ナル執行ニ万全ヲ期セラレ度イノデアリマスガ、殊ニ改正法施行後短時日ノ間ニ総選挙執行ノ運ビトナルヤモ図ラレマセンノデ、選挙執行上諸般ノ調査、準備等ニ付テハ、今ヨリ万遺漏ナキヲ期セラレタイノデアリマス。 第二ハ国民生活ノ安定ト言フコトデアリマス。戦争ニ因リ破壊セラレタル国民生活ヲ速ニ安定セシムルハ喫緊ノ要務ト言ハネバナリマセン。特ニ食糧ノ問題ハ最モ深刻デアリマシテ、正ニ国民ヲ飢餓ヨリ救ヒ得ルヤ否ヤト言フ岐路ニ立ツテ居ルノデアリマス。政府ニ於キマシテハ海外ヨリノ食糧ノ移入ニ関シ、連合国側ノ同情アル考量ヲ求メテ居ルヤウデアリマスガ仮令其ノ同意ガ得ラレマシテモ、船舶、見返物資等ノ関係モアリ、前途ハ決シテ楽観ヲ許サナイ実情ニ在ルノデアリマス。政府ニ於テハ本問題解決ノ為ニ凡ユル手段ヲ講ゼラルヽト思ヒマスガ、国民ノ側ニ於テモ亦進ンデ協力シ、互ニ助ケ合ヒ、互ニ我慢シテ此ノ難局ヲ突破セナケレバナリマセン。 此ノ食糧問題ニ対処シテ努力スベキ主ナル方途ハ次ノ諸点ト存ジマス。第一ハ供出ノ促進デアリマス。第二ハ未利用資源ノ徹底的集収利用デアリ、第三ハ今秋播種スル麦ノ増産及ビ来春ノ馬鈴薯増産ニ最大ノ努力ヲ払フコトデアリマス。第四ハ水産物ノ増収ヲ図リ漁獲高ヲ徹底的ニ増進スルコトデアリ、第五ハ耕地ノ開拓等デアリマス。先ヅ供出ノ問題ニ就キマシテハ今年ハ総合供出制度ヲ採ラルヽコトヽナリ、米屑米麦類、藷類、雑穀ノ外各種未利用食糧資源ニ付テモ之ガ供出ヲ御願ヒ致スコトヽナリマシタト共ニ、民意ヲ尊重スル委員制度ヲ設ケ、又供出完了者ニハ其ノ必需物資ヲ特別配給セラルヽ見込デアリマス。 此供出ノ問題ハ極メテ困難ナ事柄デアリマスガ、之ガ成否ハ直ニ国民全体ノ飢餓ノ問題ニ係ルノデアリマスカラ各位ニ於カレテハ、我ガ国民ノ伝統的精神デアル同胞愛ノ観念ニ訴へ、生産者モ消費者モ共ニ食ヲ分チ合ツテ、此ノ難局ヲ突破スルヤウ、供出ノ完納ニ対シテ最善ノ努力ヲ払ハレンコトヲ切望スル次第デアリマス。 尚此ノ際特ニ御願ヒ致シタイ事ハ今日ノ配給ノ実情ニ鑑ミ、出来得ル限リ速ニ供出ヲ促進シ、又速ニ輸送シ得ル様特別ノ御協力ヲ御願ヒ致ス次第デアリマス。 未利用食糧資源ノ問題ニ付テハ、先ヅ此ノ秋ニ於テ集収シ得ル未利用資源ハ総テ之ヲ徹底的ニ掻キ集メル努力ヲ致サナケレバナリマセン。 例ヘバ、ドングリ、甘藷ノ「つる」及葉、澱粉粕、桑ノ残葉、蝗、海藻其ノ他凡ユル食用化シ得ル未利用資源ヲ集収貯蔵スルコトガ必要デアリマス。而シテ之ガ処理、加工ノ為、各地方ニ乾燥設備、製粉機等ノ施設、又大都市ニハ製パン等ノ施設ヲ必要トシマスガ、之等ノ措置ハ目下政府及県ニ於テ努力中デアリマス。此ノ未利用資源ノ集収ニ付テハ、既ニ各位ノ御配意ヲ得ツヽアリマスガ、其ノ重要性ニ鑑ミラレ、所謂学校仕事トシテ委セ切ラズ、地方民ガ全力ヲ挙ゲテ、各地方時期ヲ逸セズ、之ガ集収ニ当リマス様格段ノ御骨折ヲ御願致シマス。 次ハ今年度麦及馬鈴薯ノ問題デアリマスガ之ガ収穫ノ豊凶ハ今年度ノ米穀需給ニ最モ大ナル影響ヲ与フルモノデアリマス。而シテ増収ノ根本ハ何トシテモ適期播種ト作付面積ノ確保デアリマス。愈々其ノ時期ニ差迫ツタ今日之ガ指導推進ニ付一段ノ御努力ヲ御願ヒ致シマス。 水産ノ確保ニ付キマシテハ戦時中減退シマシタ漁獲高ノ急速ナル増強ニ努メ、水産資源ノ充実ヲ図ルコトデアリマス。之ハ施設ヨロシキヲ得レバ必ズ相当ノ期待ヲ持チ得ルト存ジマス。 政府ニ於テハ漁船ノ急速ナル建造、燃料ノ充足、漁網ノ補給等ニ努力セラレツヽアリマスガ、関係地方ニ於テモ凡ユル施策ヲ講ジ、之ガ増産ニ付一層ノ努力ヲ致サルヽ様御願致シマス。 斯ノ如ク我ガ国民ガ此ノ食糧難ヲ突破スルニ凡ユル努力ヲ傾倒シテ始メテ打開ノ道ガ開ケルノデアリマシテ、之ヲ怠ツテ連合国ニ対シ輸入ヲ要請スルガ如キハ成リ立タヌコトデアリマス。 尚今後ノ問題トシテハ、食糧自給態勢ノ確立ヲ期スル為政府ニ於テハ、国内ニ残サレタ未墾地ノ開墾、農地ノ改良及開拓ニ関スル大規模ナル開拓計画ヲ樹立シ、目下其ノ急速ナル実施ノ準備ヲ進メラレテ居リマス。之等ニ付テハ政府ノ具体的施策ノ通達ニ俟ツテ各位トモ御協議申上ゲタイト存ジテ居リマスガ、此ノ中、特ニ飛行場跡等直ニ耕地化シ得ルモノニ付テハ、別途急速ニ開拓スルコトニナリマシタノデ、関係市町村ニ於カレテモ特別ノ御推進御協力ヲ御願致ス次第デアリマス。 尚又魚類、野菜類等生鮮食糧品ノ配給ニ付テハ、政府ニ於テ近ク方策ヲ決定発表セラルヽ見込デアリマスコトヲ附ケ加ヘテ置キマス。 然シソレマデハ、従来ノ方式ニ依ルコト勿論デアリマシテ、其ノ過渡期ニ於テ混乱ヲ生ジマセヌ様各位ノ御協力ヲ御願シテ置ク次第デアリマス。 コヽデ食糧其ノモノデハアリマセンガ、食糧問題ニ重要ナル関連ヲ有ツベキ蚕糸業ニ付テ申上ゲマス。蚕糸業ハ今ヤ全ク戦時中ト事情ヲ異ニシ、今日ハ多量ノ食糧輸入ノ為ノ支払物資ニ生糸ガ最大ノ役目ノ果スコトヽナルノデアリマス。従ツテ此ノ生産ハ即食糧ノ生産デアルノデアリマス。依ツテ政府ハ従来ノ桑園面積整理ノ方針ヲ一擲シテ、蚕糸業ニ十二分ノ努力ヲ払フコトヽナリマシタ。各位ハ此ノ重要性ニツキ生産者ニ認識ヲ徹底セシメ、桑園ノ維持確保、其ノ能率ノ増進等、繭ノ増産ニ格段ノ御努力ヲ御願ヒ致シマス。 更ニ現下ノ国民生活ノ安定上、衣料、住宅其ノ他ノ生活必需物資ノ逼迫モ之ヲ看過シ得ナイ状況デアリマシテ、此ノ現状ヲ緩和スルニ必要ナ措置ニ付テハ、政府ニ於テモ凡ユル努力ヲ払ツテ居ル所デアリマスガ、各位ニ於カレテモ一段ノ御配意、御協力ヲ御願致ス次第デアリマス。 特ニ戦災地ニ於ケル住宅、寝具、衣類等ノ補給、所謂越冬対策ノ実施ハ、寸刻ヲ争フ焦眉ノ急務デアリマス。此ノ中、住宅ノ緊急建設ガ遅滞致シテ居リマスコトハ洵ニ遺憾デアリマス。其ノ理由ハ多々アルト存ジマスガ、主タル原因ハ木材集荷ノ不良デアリマス。政府ニ於テモ之ガ急速ナル出荷ヲ促進スル諸施策ヲ講ゼラレツヽアリマスガ、各位ニ於カレマシテモ特ニ御協力ヲ御願致ス次第デアリマス。尚、国民生活ニ大ナル関係ヲ有スル薪炭デスガ、寒冷ニ向フ節更ニ一層ノ御努力ヲ下サイマシテ所要薪炭□生産ヲ得ラレマスル様切ニ御願ヒ致シマス。 更ニ又、国民生活ノ安定上重要ナ問題ハ、悪性インフレーシヨンノ防止デアリマス。現在ノ情況ガ更ニ昂進センカ、寔ニ慄然タラザルヲ得マセン。政府ニ於テハ、之ガ防遏ノ為各種ノ施策ヲ講ジ努力セラレツヽアリマスガ、就中貯蓄ノ増強ハ戦後寧ロ一段ト重要ナ事柄トナツテ参ツタト存ジマス。現下ノ国民生活ノ情況ニ於テハ、之ガ推進ニ甚ダ困難ナ部面ガアルコトハヨク察セラレマスガ、然シ夫々ノ実情ニ即シ、剴切妥当、而モ強力ナル貯蓄ノ推進ニ一層ノ御努力アランコトヲ切望致シマス。 第三ハ戦災復興ノ問題デアリマス。戦災ニ因リ荒廃ニ帰シタル都市ヲ速ニ復興シ、再ビ平和産業ノ繁栄ヲ招来センガ為、官民一体トナツテ凡ユル努力ヲ捧ゲル必要ガアリマス。商工業方面ニ付キマシテハ民間経済人ノ自由ナル創意ト活溌ナル活動ヲ促シ、之ガ障害トナルガ如キ従来ノ経済統制ニ付テハ果敢ニ之ガ改廃ヲ行フ方針デアリマス。而シテ今後ニ於ケル我ガ国産業ハ主トシテ中小規模ノ経営型態ヲ以テ構成セラルヽモノト認メラレマスノデ、此ノ間中小工業ノ健全ナル育成コソ我ガ国産業政策ノ根幹ヲ為スモノト考ヘラレマス。就中民生安定ニ必要ナル分野ニ付テハ、積極的ニ之ガ援助指導ニ当ラレンコトヲ望ミマス。 尚以上ノ諸問題ニ関連シ、傷痍軍人、軍人遺家族、戦災者及海外同胞引揚者ノ援護、復員ノ補導、失業対策、輸送力ノ強化、物価対策等緊急且困難ナル問題ガ山積シテ居リマスガ、之等ニ付テハ後刻御懇談致シタイト存ジマスガ、各位ニ於カレマシテハ、政府ノ施策ニ呼応シ、関係機関ト緊密ナル連絡ヲ保持シ、以テ適切ナル措置ヲ考究実行セラレムコトヲ希望スル次第デアリマス。 尚先般連合軍ノ好意ニヨリ我陸海軍ヨリ連合軍ニ引渡スベキ資材、補給品及装備品ノ大部分ハ、民間救済用トシテ日本政府ニ交付セラルヽコトヽ成リマシタガ、我国民経済ノ実情ニ鑑ミルトキ洵ニ感謝スベキ所デアリマス。之ガ本県ニ交付セラルヽモノモ相当ノ数量ニナルト思ヒマスガ、目下各位ノ御協力ヲ願ツテ居リマス之等物資ノ保管ニ万全ヲ期セラレマスト共ニ、其ノ配分ガ決定セラレマシタ場合ニハ、最モ適切ナル方法ニ依リ迅速ニ措置シ、国民生活ノ安定及国民経済ノ復興ニ資セシメラルヽ様御配意ヲ願ヒマス。 今ヤ国内各地域ニ秩序整然タル連合軍ノ進駐ヲ見ルニ至リ、国民亦安心ト信頼ヲ以テ之ヲ迎ヘマシタコトハ洵ニ御同慶ニ堪ヘマセン。 各位ニ於カレテモ、進駐軍ノ諸般業務ノ遂行ニ対シ、誠意アル協力ヲ致サレ度イノデアリマス。 戦争終結ノ冷厳ナル事実ニ直面シ洵ニ万已ムヲ得ザルコトヽハイへ、一般ニ志気ガ今尚萎微沈滞シ、茫然自失ノ状態ニ在ルモノ少カラザル感ノアリマスコトハ洵ニ遺憾ナコトデアリマス。国民ノ奮起、協力ナクシテハ、各種ノ施策モ到底其ノ結実ヲ見ズ、平和新日本ノ速カナル再建モ望ミ得ザルコトハ明カデアリマス。各位ハ茲ニ思ヒヲ致サレ民心ノ興起ニ意ヲ用ヒラレンコトヲ切望スル次第デアリマス。 最後ニ一言致シタイ点ハ、此ノ難局ニ処スル行政運営ノ刷新デアリマス。行政ノ運営ガ簡素迅速ヲ旨トスベキコトハ常ニ申サレテ居ル所デアリマスガ、今日程之ガ必要ナ時ハナイト存ジマス。政府ニ於テモ今般行政整理ノ方針ヲ決定セラレ、行政各部門ノ機構ニ一大刷新ヲ加フルコトヽセラレテ居リマスガ、各位ニ於カレテモ夫々ノ実情ニ即シ陣容機構ヲ簡素強力化スルト共ニ、常ニ新ナル工夫ヲ凝シ、敏速事ヲ処シ、皆其ノ努力ヲ倍加シ、以テ其ノ業績ヲ挙グルニ一段ノ意ヲ用ヒラレンコトヲ希望シマス。 前途ハ甚ダ遠ク今後ノ苦難ノ益々加重セラルヽコト因ヨリ予想致サナケレバナリマセンガ、我々ノ努力ニ依ツテ必ズ打開ノ道ヲ啓ク決意ノ下ニ、平和ト文化トノ新日本建設ニ邁進シ、以テ聖旨ニ副ヒ奉ランコトヲ誓ヒタイト思ヒマス。 日夜職務ニ励精セラレツヽアル各位ニ対シ茲ニ深甚ノ謝意ヲ表スルト共ニ、向後更ニ一段ノ御奮闘ヲ切望シテ已マヌ次第デアリマス。 (仙石原村役場「庶務書類」(昭和二十年)箱根町役場蔵) 一〇九 昭和二十二年県知事内山岩太郎の年頭の辞 年頭の辞 神奈川県知事 内山岩太郎 私は只今日本放送協会の御厚意に依りまして日頃敬愛する二百万神奈川県民各位に直接新年の御挨拶を申上げ得ることを仕合せに存じます何は兎もあれ皆様明けまして御芽出度う御座います本年は昨年よりも幸福な年であることを希望して止みません 昨年は寔に多難な年でありましたが分けても彼の四五月頃皆様に籠城の覚悟を御願ひした時のことを思ひ出しますと今でもぞつとするのであります、本年神奈川県は米の供出も極めて順調で年頭既に殆ど百パーセントに近づきつつありまして量に於てこそ尠いのですが努力の跡を見れば精神的にも物質的にも極めて立派な成績であると申すことが出来ます、此の際農民の皆様には特に御礼申上げねばなりません此の成績を以て参りますれば生産県に参りましても自ら責任を果したと云う感じがありまして頗る心強い次第であります 昨年の食料危機に当つて米軍の放出食糧が我々の饑餓を救つて呉れたことは私の終生忘れることの出来ない所でありまして私は茲に皆様と共に謹んで感謝の意を表し度いと思ひます、これから政府当局にも御願ひし又生産県の御好意にすがり何とか皆様を再び饑餓に陥れない様に致し度いものとひたすら念願してゐる次第であります、扨て本年は如何なる年でありましやうか、敢て神奈川県とは申しません日本に取つて実に重大な年であります、我々は先づ我々の現在の姿を顧みなければなりませんがそれは恰も不幸なる親が事業に大失敗を演じ財産を費ひ果たし更に借金の山を残し近所隣にも顔向けの出来ない不始末の後を継いだ息子の如きものであることをしみじみと考へねばならないと思ひます、此の家を再興する為には先づ近隣の信用を恢復せねばなりません、此の跡取り息子は親父とは違つて律義者であり働き者である、夫婦仲もよければ子供も可愛い良い子である、彼れ程一生懸命に働き親の名誉恢復をやつてゐるのだから親が悪かつたからと言つて此の上責めることは可愛想である、無理である、彼には寧ろ同情すべき家名再興には進んで加勢してやるがよいと云はれる様にならねば駄目だと思ひます、諸君、私は本年は重大な年だと申しましたが、本年こそ日本人が真に「ポツダム」宣言の忠実なる履行に依つて民主的平和日本建設の確実なる証拠を全世界に見せねばならぬ時であります 交戦権をも放棄した日本国民は丸腰でも立派に世界に立つて行くと云ふ新しい大きな理想を持ち何ら秘す所なく虚心坦懐に且つ謙譲な気持を以て国際社会に再出発する大覚悟を如実に示さなければならない年であります これから次々に行はれる地方選挙には政党政派の如何を問はず有権者の総てが挙つて投票に参加しなければならない。今後の政治は人任かせではいけません、国民の一人一人が責任を持たねば駄目であります 政治の闇取引は過去のことであります、若し我々が真剣に自分の権利を行使しないならば必ず少数者の暗躍と横暴を来たし遂に少数独裁となり我々は内心不平を懐き乍ら飛んでもない泥田に引込まれることを覚悟しなければなりません、今後数ケ月間に行はれる数種の選挙は昨年の衆議院議員総選挙にも勝り日本国民の文化の程度と民主的政治能力の有無とを世界に示す具体的な出来事であることを銘記しなければなりません 日本は敗戦の結果尨大な賠償を支払はねばなりませんが、これは我々の目前に迫つた問題であります、次に来るものは連合国との平和条約であります、我々は一昨年無条件降服をしたのであります、しかし私が先に例を以て申上げました現在の日本国民の立派な跡取り息子であるか又は親に似て困つた息子であるかに依つて此の条約の時期も条件も随分変化し得るものと私は確信するのであります 私は二百万神奈川県民は申すに及ばず八千万日本国民に対し諸君は今こそ全国民が外交官になつた積りで外国に対し総ての者が責任を感じ此の一年を有意義に暮さねばならないと申上げ度いのであります 我々は今何よりも物が欲しい、お金否紙幣をいくら沢山握つて見ても之を使へば結局物価を釣上げるばかりでありましやう、前世界大戦の後欧州大陸を襲つた「インフレ」の波が如何に恐ろしきものであるかは我々日本人もよく考へねばならない所であります 我々は何よりも先づ物の生産に全力を傾注し紙幣を要求する前に物価を下げろと要求すべきではないかと考えます 我々は今衣食住は素より毎日の燃料にすら困つてゐる 特に戦災者引揚者復員者遺族等のことに思ひ致せば唯々胸が迫まる計りであります、私は知事として県民の皆様に申訳なく誠に御気の毒に堪へない皆様の御協力と御鞭韃に依つて今後共凡ゆる努力を致し度いと念願して居りますが皆様も何卒困苦窮乏に堪へ頑張つて下さい 県民諸君、世界史上未曾有の大戦争に凡ゆる犠牲を払つた日本国民は年頭に当り悲壮なる覚悟を新にせねばならない、我々の愛する国家の再建は前途遼遠にして且つ極めて苦しいものと此の年の初めに於てよく〳〵観念しなければならない それは一家の再興に勝るとも決して劣らぬ決心と努力を要するからであります 私は苦しい中にも希望に満ちた此の芽出度い新年を迎ふるに当り二百万神奈川県民諸君が夫々の御家庭に於て隣組に於てそして村でも町でも共に仲よく相倚り相助けて元気で此の一年を働き我等の愛する日本国家の再建に精進出来まする様心静に御祈りするものであります (終) (大山町役場「庶務書類」(昭和二十一年)伊勢原市役所蔵) 一一〇 旧日本軍隊の軍需品の無断持出等注意の件通達 隣組回報 昭和二十年八月三十日 足柄下地方事務所 小田原警察署 仙石原村役場 軍需品ノ無断持出シ方ニ対スル注意 今回当村駐屯軍ガ急遽撤退ニナリマシタノデ従来之等駐屯軍ガ管理シテ居マシタ軍需品ニ対スル監視ガ手薄ニナリマシタノヲ機会ニ各所ニ格納又ハ集積サレテヰタ火砲及附属品等ノ危険物ヲ軍需用品等ト共ニ無断デ運ンダ方ガアリマス 火砲類ハドウイフ拍子デイツ爆発スルカ判リマセンノデ非常ニ危険デス又子供達ガ悪戯ニ持出サレタ向モアリマス 隣組員オ互ニ注意シ合ヒ直チニ返サレル方ハ罰セラレマセンカラ大至急最寄リノ警察署(駐在所)及役場ニ返ス様ニシテ下サイ 一人ノ不注意カラ之等ノコトガ原因シテ思ヒガケナイ不祥事ヲ惹起シナイトモ限リマセンシ、ソレガ為ニ私達同胞ノ多数ノ方々ニ迷惑ヲカケル結果トモナル虞レガアリマスカラ私達国民ハ飽ク迄大日本帝国々民トシテノ矜恃ヲ保ツテ御聖旨ヲ奉戴シ御協力ヲ御願ヒ致シマス 尚秘匿シテ居ル疑ノアル家、場所ハ、警察署、憲兵隊ニ於テ家宅捜索ヲ行ヒマス 発覚ノ場合ハ厳罰ニ処セラレマスカラ予メ御注意下サイ (仙石原村役場「庶務書類」(昭和二十年)箱根町役場蔵) 一一一 旧戦力増強関連企業の転用および金属回 収に関する善後措置の件通牒 二十中経発第二六六三号 昭和二十年十二月十四日 神奈川県中地方事務所長 北秦野村長殿 戦力増強企業整備ニ伴フ工場ノ転用及金属回収ニ関スル 善後措置ノ件 昭和十八年六月一日閣議決定戦力増強企業整備基本要綱ニ基ク首題ノ件ニ関シテハ終戦後ノ新事態ニ対処シ民需産業ノ復興ニ即応シ且之ヲ促進スル如ク左記要領ニ依リ措置相成ルベキ旨其ノ筋ヨリ通牒ノ次第モ有之候条右御了知ノ上之ガ実施ニ遺憾無キヲ期セラレ度依命此段及通牒候也 追而金属類回収令ハ今般十月二十四日附ヲ以テ廃止セラレタルニ付了知相成度 尚工場及金属設備ノ転用ニ関シテハ地方総監ニ権限委譲シアリタルニ付□□本要領ニ基キ地方総監ニ於テ現ニ手続継続中ノモノト共ニ意見ヲ付シ地方長官ニ廻付相成度申添候 記 戦力増強企業整備ニ伴フ工場転用及金属類ノ回収ニ関スル善後措置要領 一 方針 昭和十八年六月一日閣議決定戦力増強企業整備基本要綱ニ基ク戦力増強企業整備ニ伴フ工場ノ転用及金属ノ回収ニ関シテハ終戦後ノ新事態ニ対処シ民需産業ノ復員、復興ニ即応シ且之ヲ促進スル如ク左ノ要領ニ依リ善後措置ヲ行フモノトス 二 要領 ㈠ 企業整備ノ実施ニ関スル措置 ⑴ 企業整備計画ノ樹立並ニ既定ノ計画ニ基ク企業整備ノ実施ハ昭和二十年八月十五日ヲ以テ之ヲ打切ルコト ㈡ 転用工場ニ関スル措置 1 工場(工場又ハ事業場ニ於ケル土地及建家トシ金属設備ニ属スルモノヲ含マズ以下同ジ)ニ関スル廃止ノ区分決定ハ八月十五日以降之ヲ行ハザルコト 八月十五日以降右ノ区分決定ヲ行ヒタルモノアルトキハ速カニ之ガ□□ヲ行フコト 2 八月十五日以前ニ於テ廃休ノ区分決定アリタル工場ニ関スル措置ハ左ニ依ルコト (イ) 八月十五日迄ニ転用工場トシテ区分決定無カリシモノニ付テハ爾後転用工場トシテノ決定ハ之ヲ為サザルコト (ロ) 八月十五日以前ニ於テ転用工場トシテノ区分決定アリタルモ具体的転用先未決定ナルモノニ付テハ速カニ転用工場ノ区分ヲ解除スルコト (ハ) 八月十五日以前ニ具体的転用先ノ決定シタル転用工場中転用ヲ受ケタル事業者ニ於テ之ガ処分ヲ為サントスルモノ及工場設備等未設置等ノ事情ニ在リ未ダ操業ニ至ラザルモノニ対シ転用前事業者ニ於テ返還希望アリタルトキハ優先的ニ之ヲ返還セシムル如ク指導スルコト 三 金属設備ニ関スル措置 金属設備(工場又ハ事業場ニ於ケル機械器具及金属ヲ主体トスル工作物等ニシテ金属類回収令ニ依ル回収ノ対象タリ得ベキ種類ノ設備トス)ノ供出ニ関スル措置ハ左ニ依ルコト 1 行政官庁又ハ統制団体ニ於テ行フ金属設備ノ供出決定通知ハ八月十五日以降之ガ行ハザルコト 八月十五日以降右ノ決定通知ヲ行ヒタルモノアル時ハ速カニ之ガ取消ヲ行フコト 2 金属設備ニシテ供出設備(産業設備営団若ハ国民更生金庫ニ譲渡セラルタル設備又ハ此等ノ機関ニ対シ譲渡ノ申立若ハ処分ノ委託アリタル設備並ニ右ノ機関ニ供出スベキコトニ行政官庁又ハ統制団体ニ於テ決定ノ上通知アリタル設備ヲ謂フ以下同ジ)タルモノニ付テハ (イ) 撤去解体方着手済ナルモ原状回復容易ナルモノニ付テハ能フル限リ撤去解体ヲ中止スルコト (ロ) 相当程度撤去解体ニ着手済ニシテ原状回復困難ナルモノニ付テハ撤去解体ヲ続行スルコト 3 供出設備中撤去解体未着手ノモノ及前号(イ)ニ該当スルモノニ付テハ譲渡ノ申込者若ハ処分ノ委託者ヲシテ譲渡ノ申込撤回若ハ処分ノ委託ノ解除ヲ為サシムル如ク措置スルコト 但シ供出者ニ於テ依然産業設備営団若ハ国民更生金庫ヘノ譲渡ヲ希望スルモノアルトキハ昭和二十年十一月三十日迄ニ右機関ニ其ノ旨出テシムルコト 4 産業設備営団、国民更生金庫及金属回収統制株式会社ノ保有(此等ノ機関ニ譲渡アリタルモ引取未済ニシテ供出者ノ事業場ニ残置セラレ居ルモノヲ含ム)ニ係ル供出設備ニ付テハ当該設備ノ所在地ヲ管轄スル地方長官ニ於テ其ノ指示ニ依リ転用ヲ行フモノトス 右ノ転用指示ハ概ネ左ニ掲グル者ニ対シ優先的ニ為サザルモノトス 同一業種ニ属スル空襲罹災工場 当該設備ノ供出者ニシテ転廃以前ノ事業ニ復元セ□□ル者 現ニ金属類回収令施行規則別表甲号ニ掲グル事業ヲ営ム者 5 既ニ転用決定シタルモ転用ヲ受ケタル事業者ニ於テ未設置ナル金属設備又ハ設置済ナルモ差当リ之ヲ使用スルノ計画ナキ金属設備ニ対シ転用前ノ事業者ニ於テ返還希望アリタルトキハ優先的ニ之ニ返還セシムル如ク指導スルコト 備考 一 産業設備営団ニ供出アリタル遊休工作機械、自動車、設備動員機械及未稼動重要物資ニ付テハ本要領ニ準ジ措置スルコト (北秦野村役場「庶務書類」(昭和二十年)秦野市役所蔵) 一一二 戦時補償打切の件通達 回覧板 小田原税務署 仙石原村役場 金融機関 戦時補償打切リニ関スル御知ラセ 一 戦時補償特別措置法ノ説明 政府ハ去ル議会デ協賛ヲ得タ戦時補償特別措置法ヲ去ル十月卅日ニ施行シマシタ、此レハ所謂軍需補償ヲ打切ルバカリデナク皆様ノ持ツテヰラレル戦争保険ヤ企業整備ヤ強制疎開等ノ特殊予金等モ打切ラレルコトニナリマスノデ皆様ノ財産ニ重大ナ関係ガ御座イマス 二 戦時補償トシテ打切ラレルモノ 1 戦争保険契約ニ依ツテ設ケラレタ特殊予金 2 企業整備ノ特殊予金 (政府特殊借入金債務者特殊借入金ヲ含ム) 3 強制疎開ノ特殊予金(右ニ同ジ) 三 打切ラレル人 法律ノ施行ニナツタ十月卅日現在デ此等ノ特殊予金等ヲ持ツテヰル人、従ツテ他人ノ特殊予金ヲ譲受ケタ人 貸金ノ弁済トシテ受取ツテ持ツテヰツタ人モ打切ラレマス 然シ打切ラレタ人ハ譲渡シタ人ヤ借金ヲ返済シタ人ニ打切ラレタ分ダケ請求スルコトガ出来マス 四 基礎控除 此等ノ特殊予金ハ全部打切ラレテシマフ訳デハナク左ノ金額ダケ 皆様ノ手許ニ残リマス 1 戦争保険強制疎開}ノ特殊予金{法人ノ場合 一請求権一万円 個人ノ場合 総 額五万円 2 企業整備ノ特殊予金{法人個人共 総額 五万円 説明 戦争保険ノ一請求権ト云フノハ一ツノ保険契約デ一回事故ノ場合受取ル保険金額デス、家族ノ中ニデモ名儀ノ異フ時ハ別々ニ五万円ヅツデスガ相続人ト被相続人ノ分ハ合算シテ計算シマス 戦争保険、強制疎開デ五万円マデ残ツタ方ハ企業整備ノ方ハ全額打切ラレマス、五万円ニ足リナイ時ハ足リナイ分ダケ企業整備ノ方カラモ残リマス、即チ合計シテ数十万円ノ特殊予金ガアツテモ五万円ダケシカ残リマセン 但シ法人ノ戦争保険強制疎開ノ特殊予金ハ、十請求権マデアレバ十万円残リマス 五 申告 前ニ述べタ基礎控除ヲ受ケテ許サレタ範囲ノ特殊予金ヲ手許ニ残スニハ政府ノ定メタ日マデニ手続ヲシナクテハナリマセン 其ノ手続ハ特殊予金ヲ預ケテイル銀行ヤ信託会社へ行ツテ所定ノ申告書ニ書込ンデ提出スルノデス 各所ノ銀行ニアル時ハ各銀行毎ニシマスガ基礎控除ハ一人デ幾口アツテモ五万円マデデス(法人ノ場合十請求権アレバ十万円マデ)申告スル期限ハ『十一月三十日』マデデス 企業整備ヤ其ノ他デ当然特殊予金トナルベキモノヲ特殊予金ニシナイデ銀行ノ借金ヲ返シタ人モ返済シタ銀行ニ申告ガ必要デス 終戦後此ノ法律ガ施行ニナルマデ特殊予金等ヲ払戻シテ銀行ノ借金ヲ返済シタ銀行ニ申告シナクテハナリマセン 六 申告ノナイ時 基礎控除ハ申告シタ人ニダケ認メラレマスノデ十一月三十日迄ニ申告ノナイ方ノ特殊預金ハ申告スレバ当然手許ニ残ル金額デアツテモ金額ノアツテヰル銀行ガ国家ニ納入シテシマヒマスカラ呉々モ御注意下サイ 七 残ツタ特殊予金 申告シテ残ツタ特殊予金ハ封鎖予金トナリマス 其ノ他種々細カイ事ヤ不明ノ点ハ最寄ノ銀行カ税務署ニ御問合セ下サイ (仙石原村役場「庶務書類」(昭和二十一年)箱根町役場蔵) 一一三 昭和二十一年度開拓増産隊要綱概要 昭和二十一年度開拓増産隊要綱概要 一 目標 帰農セントシテモ耕ス土地ノ無キ人ノ為ニ開墾地ヲ斡旋シ中堅農家ノ創設ヲ目標トス 二 隊員資格 (イ)農家ノ二、三男、復員者、疎開者等ニシテ年令十八才以上―三十才以下ノ者ナルコト(可成独身者タルコト) (ロ)心身健全ニシテ集団生活ニ耐へ得ル者 三 農家創設マデノ訓錬 1 編成 五〇名ヲ以テ一組、三組ヲ以テ一枝隊トシ左ノ通リトス 神奈川県開拓増産隊--第一枝隊―{第一組(五〇名) 第二組 第三組 -第二枝隊―{― ― ― -第三枝隊―{― ― ― -第四枝隊―{― ― ― 2 訓練(一ケ年間) 右編成に依リ県立修練農場(高座郡有馬村)県農事講習所(足柄上郡中井村)ニ於テ基礎訓練ヲ実施シ後ハ各枝隊各組毎ニ県内外ノ開墾地、土地改良事業等ニ協力シツツ農業技術、農事諸般ノ修得ヲ企ルモノトス 3 期間ハ昭和二十一年四月上旬ヨリ昭和二十二年三月末日迄一ケ年トス 4 訓練修了後ハ各組毎ニ県内県外ノ適地ニ入植ヲ行フモノトス 5 入植後各農家創設ニ付テハ、伐採材木ヲ以テ開拓隊中ノ建築隊ニ於テ家屋ヲ建築農具、家蓄等県ニ於テ斡旋ノ予定 四 給与 1 手当 一人当月六〇円程度支給ス 2 食糧 移動証明ニ依ル規準配給ノ他不足分ハ県ニ於テ加配ス 3 衣類 作業衣、地下足袋、等ハ期間中ニ支給ノ予定 4 農具県ニ於テ準備ス 五 申込順序 各居住地ノ市町村役場又、地方事務所ニ四月五日迄ニ申込ノコト (比々多村役場「雑書類」(昭和二十年)伊勢原市役所蔵) 一一四 神奈川県下の食糧情報第四報 昭和二十一年五月二十日現在 神奈川県食糧情報(第四報) 神奈川県 目次 一 概説 二 供出状況 三 県外搬入状況 四 配給状況 五 今後ノ見通 六 県民ノ動向 七 緊急措置要目 神奈川県食糧情報 第四報 (五月二十日) 一 概説 本県ノ食糧事情ハ益々逼迫ノ度ヲ加ヘツヽアリ乃チ現在一日当平均所要量三、九〇〇石ニ対シ五月中(五月十五日迄)ノ県外ヨリノ搬入量ハ一日平均僅カ四五〇石程度ニシテ政府ノ庫物払下ヲ加フルモ二、〇〇〇石ヲ出デズ所要量ノ約五〇%程度ナリ其ノ結果ハ欠配ハ日々累加持続サレ民心ノ不安動揺ハ愈々顕著トナリツヽアリ県ハ配給所要量ノ確保ニ付テハ県内、県外ニ対シ凡ユル方途ヲ講ジツヽアルモ現在ノ情勢下ニ於テハ殆ンド好転ノ曙光ヲ見出スコトヲ得ズ政府ニ於テ局面打開ノ施策ヲ講ズルニ非ラザレバ消費都市ハ正ニ饑餓ニ頻スルニ到ルベシ而シテ県下ノ供出状況ハ漸次上昇シツヽアリテ五月十日現在米雑穀ニ在リテハ一〇〇%突破ノ好成績ヲ挙グルコトヲ得タリ尚又県下各地ニ隣保相助ノ精神燃へ所謂同情米ノ拠出ニ依リ同胞相愛ノ美風漸ク顕ハレ挙県一致食糧危機突破ニ邁進スル気構横溢シツツアリ 二 供出状況 農家ノ供米状況ハ屡報ノ通リ農家ノ時局認識ト関係諸機関、団体等ノ懸命ナル努力トニ依ツテ漸次上昇シ五月十日現在ニ於テ左ノ如ク米雑穀ニ在リテハ一〇〇・四%ノ好成績ヲ挙グルニ至リタリ而シテ未利用資源ニ於テハ当初ノ計画ニ多少無理ノ点ガアリタルコト及収穫時期等ノ関係上五月十日現在ニ於テハ左ノ如キ甚ダ不良ナル成績ナルモ是ハ五月中旬以降採取サルベキ海藻類ニヨツテ相当(約米一〇、〇〇〇石相当量)ノ成績ヲ挙グベク目下鋭意努力中ナリ 三 県外搬入状況 県外ヨリノ搬入状況ハ左表ノ通リ四月中旬ヲ最頂点トシ以来漸次減少ノ一途ヲ辿リツヽアルガ五月中旬ニ於テハ稍々好調ヲ示セルモ所要量ニ対シテハ依然トシテ五分ノ一程度ヲ充シ得ルニ足ラズ而シテ今後ノ入荷見通シハ左表ノ如クシテ知事始メ各部長並市長県、市議員、工場代表者、一般消費者代表等数次ニ亘リ各産地ヲ訪問懇請シツヽアルモ甚ダ悲観的ナリ 県外産米搬入状況 尚十一月以降五月十七日迄ノ各県別総入荷量ヲ示セバ左ノ通リナリ (註)総入荷量ハ県食糧営団ノ入荷量(二六三、四八二石)ノミナラズ政府ノ庫入、直売ノモノ等本県内ニ搬入サレタル政府輸送ノモノ一切ヲ掲記ス 四 配給状況 五月十七日現在ノ地区別配給状況ヲ示セバ左表ノ通リニシテ欠配ハ日々ニ悪化シ都市ハ平均一〇・四日長キハ十三日ニ及ブモノアリ郡部ニアリテモ平均五・六日ニ及ブ而シテ食糧営団ノ手持米若干アルモ欠配分ニ補充スレバ皆無トナルノミナラズ逆ニ一三、一九八石約三日四分ノ不足ヲ生ズル状態ニ在リ (註)右ノ外政府直接割当ノモノ復員船用等ノモノ一日平均二〇〇石ノ所要アリ 配給凹凸ノ是正ニ付テハ屡報ノ如ク食糧営団ヲシテ常ニ努力セシメツヽアリ 五月十八日ヨリ同二十四日迄ノ七日間ノ需要計画ヲ樹ツルト左ノ通リニシテ約九日間ノ欠配ハ免レザル結果トナル ㈠ 需要量 六一、九四七石 欠配補充分 三四、六四七石(実際ノ欠配量) 期間中所要量 二七、三〇〇石(一日平均三、九〇〇石ノ七日分) ㈡ 供給量 二七、九六〇石 営団保有量 一九、七一八石(二一、四四九石中目下加工中ノ玄蕎麦玄粟等一、七三一石ヲ除ク) 県外廻着米 三、二二〇石(現在ノ廻着状況ヨリ推シ一日平均四六〇石ヲ予定ス) 政府払下 五、〇二二石(玉蜀黍九〇〇石 小麦紛一、四四二石 玄小麦二、五〇〇石 脱脂大豆一八〇石) ㈢ 差引不足 三三、九八七石(八日八分ノ欠配トナル) 尚五月十七日現在ニ於テ政府(農林省横浜食糧事務所)並ニ県食糧営団ノ在庫量ニ依ル維持日数ト欠配日数トヲ「グラフ」ヲ以テ示セバ左表ノ如クニシテ欠配量ヲ補充スレバ政府及営団ノ保有量ハ僅カニ三日間ヲ維持スルニ足ラザルナリ 備考 一日平均所要量ヲ左ノ通トシ維持日数ニ依リ示ス 二月 三、五〇〇石 三月 三、七〇〇石 四月 三、九〇〇石 五月 三、九〇〇石 五 今後ノ見通 第三報記述ノ当時ト略同様ノ見通シニシテ政府保有食糧(二六、九三三石中直チニ払下可能ノモノハ約一、五〇〇石)農家ノ供米未利用資源ノ供出並隠退蔵食糧等ノ調査摘発等ニ依リ或ル程度ノ数量ヲ確保シ得ルモ其ノ量タルヤ総需要量ニ対比スレバ極メテ微々タルモノナルヲ以テ如何ニシテモ県外ヨリノ搬入米ニ期待ヲ懸ケザルヲ是ズ而シ乍ラ各産地ノ情況ヲ詳サニ観ルニ既ニ出荷指図アリタルモノト雖尋常ノ手段ニテハ容易ニ入手困難ト謂フ甚ダ芳シカラザル実情ニ在リ仍テ県ハ従来ノ方針ヲ或程度変ヘテ本省ノ了解ノ下ニ積極的ニ見返物資ノ活用等ノ方法ニ依リ強引ニ入荷促進ノ対策ヲ講ズルコトヽセリ然レ共現在ノ状況ヲ以テスレバ本月下旬以降ノ需給計画ノ樹立ハ殆ンド不可能ノ状態ニ陥リツヽアリ 六 県民ノ動向 欠配ノ全般的且長期トナルニ伴ヒ消費大衆ノ不安動揺ハ愈々増大シ集団的、示威的行動ハ日々熾烈トナリツヽアリ特ニ工場労務者ノ大衆行動、中小都市ノ理事者、市会議員等ノ陳情者ノ数夥シク増加シツヽアルハ消費者ガ真ニ困窮ノ度ヲ加ヘツヽアルコトヲ如実ニ物語ルモノト思料サル、是等ノ陳情者ノ中ニハ食糧問題ヲ口実ニ単ニ政府官憲等ヲ非謗攻撃シ破壊的ノ言辞ヲ弄スルニ終始スルモノアルモ概ネ真剣ニ食糧危機ノ真相ヲ知リ食糧ノ確保又ハ配給ノ改善ニ協力シ官民共ニ此ノ難関ヲ突破セントスル気構ノモノ多キコトヲ観取サル県ハ是等ノ陳情者ニ対シテハ努メテ其ノ真相ヲ語リ正確ナル認識ノモトニ行動セシムルヤウ配意シツヽアリ 又最近ノ顕著ナル傾向トシテハ都鄙ヲ通ジテ自発的ニ町内会、隣組等ノ単位ニテ相互扶助ノ精神ニ基キ所謂同情米、同情金等ノ拠出ニ依リ隣保相扶クルテウ美風漸ク起リツヽアルハ蓋シ本県民性ノ醇豊ナルコトヲ示セルモノトシテ特記ス 七 緊急措置要目 曩ニ四月二十一日食糧対策トシテ緊急措置要目ヲ決定シ夫々実施シツヽアルモ食糧事情ノ緊迫化ニ伴ヒ更ニ新ナル措置ヲ講ズルノ必要アリ、五月十九日左ノ如ク其ノ要目ヲ追加決定シ急速且強力ニ実施スルコトヽナリタリ 一 農家ニ対シ保有食糧ノ積極的供出ヲ求ムルコト 一 町内会、隣組等ヲシテ消費生活者間ノ相互扶助ノ方途ヲ講ゼシムルコト 一 見返リ物資ニ依リ県外産米ノ搬入促進策ヲ講ズルコト 一 隠退蔵食糧ノ徹底的調査ト摘発ヲ断行スルコト此ノ場合民間人ノ協力ヲ求ムルコト 一 未利用資源殊ニ野草類ノ採取ヲ積極的ニ実施スルコト 一 農産物ノ増産運動ヲ急速ニ展開スルコト殊ニ戦災空地ノ利用ヲ図ルコト 一 生鮮食糧品(魚類、青果物)ノ積極的集荷配給ヲ為スコト 一 横浜、川崎、横須賀等都市ニ在リテハ人口ノ再疎開ヲ実施スルコト 四月二十一日決定ノ緊急措置要目ノ処理状況ヲ記スレバ左ノ如シ (牧野村役場「主要食糧ニ関スル綴」(昭和二十一年)藤野町役場蔵) 一一五 神奈川県市町村長懇談会の食糧対策決議 決議 吾国の食糧事情は今や未曾有の深刻さを以て食糧危機に発展しつゝあり殊に消費県たる本県は処により既に遅配、欠配十数日に達し今後の見通も寔に暗澹たるものあり全く飢餓の危機に直面し一般民衆の不安動揺は日増しに増大しつゝあるを以て我等はこれが対策の一環として飢餓突破県民運動を展開し県民一致の共愛共助の精神により左記各項の実現を期し且本県の窮状を政府当局に陳情し之れが対策善処方を要望するものとす 右決議す 昭和二十一年五月二十一日 神奈川県市町村長懇談会 一 救援食糧の積極的供出運動 二 隣保共助の運動 三 野草、海藻類の採集運動 四 焦土、空閑地急速活用増産運動 五 魚類、青果物の積極的供出運動 六 人口の転入抑制と再疎開の勧奨運動 七 備蓄食糧の積極的供出運動 八 隠退蔵食糧の摘発協力運動 九 麦、馬鈴薯の早期供出運動 十 幽霊人口の摘発協力運動 (仙石原村役場「庶務書類」(昭和二十一年)箱根町役場蔵) 一一六 食糧危機突破対策の件通達 昭和二十一年七月十七日 高座鎌倉地方事務所長(印) 各市町村長各国民学校長殿 青年学校長食糧危機突破対策について 食糧危機の現状に対処してこの度政府において食糧危機突破対策を決定したが学校については其の筋からの通牒もあつたので次の事項を参照して適当な措置を講ぜられたい 記 一 大消費都市にある国民学校青年学校中等学校の児童生徒で受入可能地方に縁故のある者に対してはこの際積極的に地方の同種学校へ転校する様勧奨しこれら児童生徒が復帰しうる時期には原校に優先復帰できるやうに取扱ふこと 二 この際大消費都市より転校の申込を受けた学校では定員又は規定に拘らず即時転校を認める様措置しその手続は校長の転校依頼状ですます事 三 第一項の学校の残留児童生徒に対する授業は次の様に実施する事 1 五月三十一日附二一高学収第三四四号教育の食糧危機非常措置に関する件通牒適用 2 授業短縮による学力低下を防ぐ為毎日簡単な宿題を課すとか其の他校外指導を行ふとか適当な教育的措置を講ずる 3 食糧事情の為保護者より欠席の申出があつた場合にはこれを許可し宿題を与へる等自宅で学習が出来るやうな措置を講ずる但しこの場合の欠席は及落の条件に加へない 備考 本通牒の大消費都市とは横浜、横須賀、川崎の三市とす 参考 文部省にては本県三市に加ふるに東京都三十五区及立川京都、布施、尼崎、西宮、神戸、広島、呉、福岡の各都市並に山梨県、青森県、北海道とす (大野青年学校「往復文書綴」(昭和四-二十一年)相模原市立図書館蔵) 一一七 昭和二十二年度米穀甘藷の買入対策要綱 昭和二十二米穀年度に於ける米穀・甘藷の買入対策要綱 神奈川県 方針 昭和二十二米穀年度に於ける米穀及甘藷の買入については食糧の需給事情と農村の実情とに鑑み生産者の生産増強に必要な食糧は之を総合的に保証すると共に其の生産意欲の昂揚を図り以て買入割当数量の確保を期する 要領 ⑴ 昭和二十二米穀年度の買入割当は本年産米穀、甘藷等及び明年度麦類馬鈴薯を通じ其の中より飯用(味噌醤油用を含む)及び種子用等の固有用途向として必要な一定量を農家に確保することを本則として之を行ふ ⑵ 農家飯用保有量は耕作農家人口一人当り別紙㈠の如き年齢別の保有量を定めその品目別の割合は従来の消費実績の比率を参酌して決定する(別紙㈡参照) ⑶ 米穀及び甘藷の買入割当に当つては原則としてその生産見込量より⑵により算定した飯用保有量と種子用等の固有用途向数量との合計を差引いた数量につき割当を行ふものとする 前項の生産見込量は耕作面積及び耕地の生産力を基準とし施肥量気象状況其の他の条件を参酌して之を算定す ⑷ 自己生産量を以て保有量を充たし得ない農家(一部保有農家に対しては買入割当を行はず不足分は一般消費者の基準に依つて配給を行ふ) ⑸ 市町村への買入割当は⑶により当該市町村の米穀及甘藷の生産見込量から⑵に依つて算定した農家飯用保有量と種子用等の固有用途向数量との合計を差引いた数量を割当てるものとする (本年産麦類及馬鈴薯の割当について行つた県割当を市町村調整用割当との区分は之を撤廃する) ⑹ 割当数量は米穀及び甘藷等の各品目毎に定めるが一定の限度に於て相互の代替は之を認める(別紙㈢参照) ⑺ 市町村長は県から割当てられた数量に基き市区町村食糧調整委員会の議を経て⑶に依り各農家の生産見込量及保有量に応じ食糧増産班(部落)を通じて各農家に対し必ず文書を以て割当を行ひ(別紙㈣参照)口頭割当、反別割当等を絶対に為さざるものとする ⑻ 市町村長は十月二十日迄に食糧増産班(部落)に割当を行ひ地方事務所長に報告するものとする食糧増産班長(部落)は十月二十一日迄に各農家に割当を行い市町村長に報告するものとする 割当数量は総べて之を公表する ⑼ 市町村長は農業会長の協力の下に食糧管理台帳を作成して各農家別にその耕作する田畑の各筆毎の面積及び食糧の平均収量実収高、家族構成員数、家畜頭数、種子用所要量及び年間保有量(一部保有農家については保有量及び要配給予定時期)等を記載し食糧の需給事情を明確ならしめるものとする ⑽ 食糧検査所は実収高の調査に当り市区町村食糧委員会等耕作者の代表を参加せしめ各耕作者を納得せしめ得るやうな方法をとるほか合同調査を行ひ各地方相互の均衡を得るに努めると共に気象並び成育状況に関する科学的資料をも汎く蒐集して調査の正確を期する ⑾ 食糧増産班(部落)に割当られた数量の買入が完了した場合に於て実収高の増加、その他により割当てられた数量を超えて米穀を売渡し農家に対し政府はその超過売渡分を特別の価格を以て買入れるものとす ⑿ 実収の結果が市町村を通じ当初の生産見込量に比し減少した場合は市町村又は市町村食糧調整委員会の議を経て村内農家の消費計画を再検討し減収の実情に応じて屑米等の利用其の他必要な措置を講じ割当数量の確保を図るものとする (別紙)㈠ 農家保有基準量 備考 一 玄米換算石とす 二 保有量は米麦藷類、雑穀の総合保有とす 三 総合保有率は過去消費実績等に依り之を定む 四 一日平均主食量は三合六勺、四勺は加工用其の他とす (別紙)㈡ 農家年間保有率 (別紙)㈢ 一 米穀甘藷及雑穀の代替買入限度 ㈠ 生甘藷及切手甘藷の米穀代替買入は買入割当量の五%を超えることを得ない ㈡ 雑穀の買入品目は粟、蕎麦、大豆、落花生とし代替買入の限度を設けない ㈢ 代替買入食糧の米穀換算率は別途通知する 二 米穀を以て総合保有率に基く保有量を保有□□□ざる甘藷作農家(米作に関係なき甘藷作農家)に対する措置 ㈠ 右の如き農家に対しては総合保有率に依る甘藷の保有量以上に従来程度迄の甘藷保有を認め爾余のものは供出せしめ其の結果所定の保有量に不足する場合は其の不足分は配給に依り補ふものとする ㈡ 之が詳細の措置は別途通牒する (別紙)㈣ 通知案 本年度産米穀及甘藷左記の通り買入割当しましたから検査を受けて期日迄に○○倉庫へ搬入して下さい 記 昭和 年 月 日 ○○ 村長 ○○ 村農業会長 ○○ 増産班長 殿 (牧野村役場「主要食糧に関する綴」(昭和二十一年)藤野町役場蔵) 一一八 神奈川県食糧緊急対策 神奈川県食糧緊急対策(昭和二二・八・二二)午前中 逼迫した食糧事情に対処して曩に政府は食糧緊急対策を発表したが二十一年産米の供出は遂にその全国的完遂を見るに至らず本年産麦馬鈴薯亦必ずしも良好でなく食糧の輸入も決して楽観を許さないこと等の為七-十の間に於ける主要食糧は凡ゆる供給の手段を講じても全需要に対し一六・一%の規正率即ち六月の遅配を其儘据置きして尚且二十日、各月平均五日の欠配を如何とも為し得ない情勢であつて其の計画も予測した条件の順調な進展を前提としてのみ可能であり今後の食糧需給は寔に容易ならぬ覚悟を必要とする事情の下にある この事態に鑑み県は政府の施策に即応し且つこれを補充する意味に於て今般次の様な諸対策を総合して速かに且つ確実に実施することゝする 県は県内生産地と消費都市との強靱なる協力の下に県民の自主的な努力を期待し大消費県として自己の当然為すべき処を実践し各種の対策をあわせ講じて県民及び勤労者の食糧をできるだけ実質的に確保し分配の公正化を格段に徹底して県民が窮乏に堪へて且つ希望ある将来の発表へ前進するための生産活動に支障ないようにあらゆる努力をつくすものとす 第一 麦及馬鈴薯の供出期限は曩に消費県としての建前より八月三十一日迄としたがこれが確実なる完遂の為特段の努力を傾注する 一 肥料のリンク配給の方法を供出の促進とその完遂とに役立つ様に改善する これが為に原則として供出期日迄に責任供出量の九〇%の供出をした場合に肥料の一般基準配給量(麦一反硫安約四貫馬鈴薯一反硫安約三貫)の配給をすることゝする 一方供出を完遂した者に対しては供出数量に応じ特に厚く配給量を増加する 即ち供出期日迄に九〇%を超えて供出した者に対しては越えた数量につき麦一俵硫安四貫、馬鈴薯一〇〇貫硫安四貫の特配を行ふ 尚供出期日迄に責任供出量の供出を完遂した者に対しては右の時に供出総量につき麦一俵硫安五〇〇匁、馬鈴薯一〇〇貫硫安五〇〇匁を特配する 二 報奨物資は早期供出分と総供出分とに区分した左の基準より特配する ⑴ 早期供出分 ⑵ 総供出分 但し酒煙草に付ては総量に制限があるので他の物資を以て代替することがある ⑶ 塩 供出割当を完遂した農家に対し供出数量一米石当り二瓩を特配する ⑷ 地下足袋、銘仙 部落割当が完遂せられた場合当該部落の供出総量により農林省の定むる基準に従つて供出完了農家に対し特配する ⑸ 政府の報奨金及び報奨物資の外県に於て供出軽減量分に対する供出に対しては左の基準に依つて一斗(米石)当り二点を特配する 第二 緊迫化せる食糧事情に鑑み農家の隣人愛に遡え自家保有麦、馬鈴薯等の醵出救援運動を左の方法により展開する 一 本運動は県下都市及農村の各種団体市町村一体となつて展開するものとする 尚本運動の細目は別に定める 二 醵出食糧(政府の超過買入とし)はその半量を其地区(市及に地方事務所単位)の要配給者の計画遅配分補塡に充当する□□県に於て配給操作をなすものとする 三 本醵出分に対しては政府で交付する報奨物資並に報奨金の外県に於て左の基準により繊維品、日用品其の他の水産加工品の一部を一斗(米石)当り五点として特配する 四 醵出救援食糧を受ける都市は其の醵出農村に対し感謝の意を表する為県の指示により一定の金品を其の農村の生産振興施設に寄附することゝする 第三 当面危局をのりきるため未利用資源を活用する 一 現在未利用資源として次の三種類を利用することゝする 1 海藻澱粉粕 一〇〇、〇〇〇貫 2 乾燥澱粉粕 一〇、〇〇〇貫 3 麬(外麦) 三〇瓩 二 未利用資源製品 1 海藻海宝麺 三〇〇、〇〇〇貫(一〇〇匁一合として米三、〇〇〇石) 2 海藻澱粉粕パン 四五匁(一食)一五三四、五〇〇ケ(米一、二七九石) 3 麬(外麦)パン及び餅 (イ) パン麬を微粉化して二〇%混入(六〇瓩)四五匁(一食) 四八〇、五〇〇ケ(米四〇八石) (ロ) 餅同じく微粉化して六〇%混入(三〇瓩)六〇〇匁(米一升)二〇、〇〇〇枚(米二〇〇石) 三 未利用資源製品完成見込 1 海宝麺 (七月-十月) 2 乾燥澱粉粕パン(八月-十月) 3 麬パン (八月-十月) 4 麬餅 (九月-十月) 第四 南瓜の大量移入を図ること(八十五万貫米換算四、二五〇石)肥料とのリンク制を活用し県内産五十五万貫県外産三十万貫の南瓜の入荷を計り大都市重点に配給せんとする 第五 蔬菜の緊急増産対策及出荷促進対策 一 蔬菜の増産出荷対策として八月より十月まで出荷出来る主なる蔬菜に対して硫安を基肥或は追肥として肥料を先渡し其の増産分は既定出荷計画に追加して増加出荷するものとする 増産分に対する先渡配給肥料の基準は左の通りにする 大根 六〇貫に対し 硫安一貫 茄子 三〇貫 〃 胡瓜 三〇貫 〃 菜類 六〇貫 〃 二 蔬菜の出荷意欲を促進する為硫安六〇噸を消費地に保管(三市の青果会社及農業会中支部倉庫)して置き蔬菜を三市に出荷した者に報奨用として特配する 七月の肥料のリンク率左の通りとする 第六 空閑地利用対策 本年春以来都市空閑地を極力利用し食糧の一部補給と蔬菜の確保を図る為指導をして来たが尚更に左記に依つて都市空閑地を活用し之れに必要な種子を七月中に有償配付するものとする 一 雑穀 二 蔬菜 第七 雑炊食堂の拡充 主要食糧を一段と圧縮未利用資源を利用し貧窮者多子家族等本施設を利用せしむること 救援食糧醵出運動による支部別期待数量(米石単位) (牧野村役場「主要食糧ニ関スル綴」(昭和二十一年)藤野町役場蔵) 一一九 神奈川県食糧調整委員会協議会決議文 決議文 本協議会は本日茲に大会を開催し次の諸事項を政府並に県に要望し速にこれが実現を期する。 一 食糧一割増産運動並に本年度主要食糧供出割当に付いて 1 農業生産資材を適期に配給すること 2 増産分については次年度供出算定基礎としないこと 3 土地改良事業を急速且つ積極的に実施すること 4 農業技術機構を急速に整備拡充すること 5 供出報償物資は供出と同時に配給すること 6 主要食糧の価格を早急に決定すること 二 農産物価格について 1 一般物価及び農産物価格の決定については民主的機関を設け農民代表を参加せしめること 2 農産物価格の決定に当つてはパリテイ制を検討し原則としてスライド制を採用し農業の再生産と農民の文化的生活水準を保証する価格たること 3 昭和二十二年産米価格を新物価体系の決定に基き是正の上追加支払をなすこと 三 農業課税について 1 農業課税の決定については農民代表を中心とする法制化された農業所得査定委員会を設けること 2 基礎控除三万円、家族控除一万円に引上げること 3 農業再生産を阻害せざる課税たること特に土地使用税に付いては絶対反対のこと 4 昭和二十二年度分については延納を認め追徴税及延滞利子は徴せざること 昭和二十三年度以降については分納を認めること 5 供出報償金は所得額の対象にしないこと 6 所得並に必要経費の算定基礎は公定価格に依ること 7 徴税取扱金融機関として農業協同組合を指定すること 四 報奨物資について 1 報奨物資は農業生産の必需物資たること 2 報奨物資は原則として無償とし有償の場合の価格は特に低廉たること 五 食糧調整委員会について 1 食糧調整委員会の経費は全額国庫負担とすること 2 食糧調整委員会書記の経費を増額すること 右決議する 昭和二十三年五月一日 神奈川県食糧調整委員協議会 (成瀬村役場「庶務書類」(昭和二十三年)伊勢原市役所蔵) 一二〇 経済危機緊急対策実施にともなう経済道 義昂揚に関する件 二十一教第二四二号 昭和二十一年三月七日 教育民生部長(印) 地方事務所長市区町村長殿 経済危機緊急対策実施ニ伴フ経済道義昂揚ニ関スル件 今般金融緊急措置令等一連ノ経済危機緊急対策ノ施行セラルヽニ就テハ其ノ成否ハ一ニ懸テ国民ノ之ニ対スル理解ト協力トニ存スルヲ以テ之ニ関スル教育的施策ハ極メテ緊要ナルニ依リ別紙要領参照ノ上各学校、社会教育諸団体、教宗派、教団関係者ト緊密ナル連絡ヲトリ之ガ実効ヲ挙グルヤウ格段ノ御努力相成度此段及依命通牒候也 別紙 経済道義昂揚並ニ新生活運動展開要領 一 要旨 アラユル機関、団体、組織ヲ広ク且急速ニ動員シ国民一般ニ対シテ今般ノ経済危機緊急対策ノ新日本建設上ニ於ケル真ノ意義ヲ諒得サセ社会連帯ノ観念ヲ徹底シ経済道義ヲ一段ト昂揚シ国民各自ガ深イ反省ト自発的ナ熱意ノ下ニ責任ヲ以テ新事態ニ即スル新生活様式ヲ樹立実行スル様ナ国民運動ヲ展開サセ社会風潮ノ一新ヲ図ラントスルモノデアル 二 指導要領 ㈠ 今度ノ経済危機緊急対策諸法令ニ含マレタ真精神ヲ徹底的ニ分リ易ク解説スルコト ㈡ 今度ノ措置ハ敗戦後一部ノ国民ガ各々自分ノミノ利益ニ趨ツテ物価ヲ釣リ上ゲ其ノ為ニ生産者側モ消費者側モ共ニ益々窮迫ノ一途ヲ辿リツヽアリ、斯クテハ新シイ日本ノ再建ガ不可能トナラウトシテヰル現状ニ於テ此ノ状態ヲ救フ最後ノ手段トシテ取ラレタモノデアリ、若シ国民ガ之ニ協力シナケレバ其ノ結果ハ恐ルベキ国家ノ混乱状態ヲ齎シ我ガ国ノ滅亡ヲモ招ク結果トナラヌトモ限ラナイ事ヲ充分諒解反省サセルコト ㈢ 今度ノ措置ニ伴ツテ国民ノ間ニ社会連帯ノ観念ヲ充分ニ徹底シ公共ノ福利ヲ顧ミズ利己的ナ行動ヲナスコトガ、真ノ意味ニ於テ自己ヲ利シ得ザルコトヲ解セシメ、全体ノ利益ト国民個々ノ利益トガ不可離ノ関係ニアリ、国民各個ノ生活ヲヨクスルコトガ即チ国家社会ヲヨクスル道デアリ、国家社会ノ為ヲ計ルコトガ自己ノ真ノ幸福ヲ増進スル所以ナル趣旨ヲ徹底セシムルト共ニ天ヲ畏レ独リヲ慎シム敬虔ナル信念ヲ抱カセ相携ヘテ新日本ノ建設ニ進マントスル根本的ナ自覚ヲ起サセル機会トスル様指導スルコト ㈣ 此ノ措置ニ即応スベキ国民ノ生活態度トシテハ消費、生産ノ両面カラ真面目ニ計画的ニ之ニ協力スル様ナ生活指導ヲ行フコト、即チ (イ) 消費者ノ立場ニ於テハ限ラレタ生活費ノ中デ入ルヲ計ツテ出ヅルヲ制スル予算生活ノ設計ヲ立テ不要ナ浪費ヲ慎シミ健実デ科学的文化的ナ生活ヲ送ル様ニ研究実行サセルコト (ロ) 一方、生産者ノ立場ニ於テ国民各自ガ自分ノ天分ニ合ツタ職業ヲ求メ、各々其ノ職域ニ於テ献身的ニ働クコトニ依ツテ国家ノ生産ヲ上ゲ新日本ノ再建ニ貢献スル様研究実行サセルコト 特ニ農村ニ於テハ供米ト言フコトガ新日本建設ニ奉仕スル自己ノ神聖ナ使命デアルコトヲ覚ラセルコト ㈤ 右ノ方針ニ則リ新生活様式ヲ樹立シ隣リ同志ガ仲良ク相携ヘテ励ミ助ケ、自分ノ市町村、町内、部落ヲ充実繁栄サセ又、自分ノ属スル職域団体ノ活動ヲ活発ニシ融和提携シ以テ国ヲ救ヒ日本ヲ建テ直ス気持ニ一致結束スル様ナ国民運動ノ展開ニ迄盛リ上ゲテユクコト 三 指導方法 ㈠ 学校教職員ヲ広ク動員シ、学生、生徒、児童ノ指導ニ当ラシメルト共ニ一般社会教育トシテ適宜各種ノ講演会、講座、座談会等ヲ開催シテ趣旨ノ徹底ヲ図ルコト ㈡ 学識者、徳望家殊ニ宗教家、宗教団体ノ奮起ヲ促シ其ノ協力ニ依ツテ趣旨ヲ徹底スルコト ㈢ 各種社会教育団体、言論報道機関ノ協力ヲ求メルコト ㈣ 青年団、婦人会等ヲ活用シ、特ニ純真ナ青年層ヲ此ノ運動ノ中心トスルコト ㈤ 公民教育講座、母親学級、勤労学級等ノ社会教育講座ニ於テ趣旨徹底ヲ図ルコト ㈥ 部落会、町内会、隣組等ノ常会ヲ利用スルコト ㈦ 指導的地位ニアル者ノ特ニ率先躬行ヲ求メルコト ㈧ 街頭、交通機関、各種集会等ニ於ケル日常ノ談話ニ於テ経済危機ノ克服ニ関スル真面目ナ話ガ交サレル様ニ指導スルコト (仙石原村役場「庶務書類」(昭和二十一年)箱根町役場蔵) 一二一 経済緊急対策抄 二二・六・一一 経済緊急対策抄 供出制度改正、横流れ絶滅 第一 国民生活、特に国民の勤労の基礎である食糧を確保することがすべての根本であるから、これ以上の遅配をくいとめ、横流れを絶滅させるためにあらゆる努力をつくす 物資の流通秩序を確立 第二 食糧の確保、物資の安定その他すべての経済安定施策のかなめである物資の流通秩序を確立する 賃銀の停止統制行わず 第三 これまでの経済の推移の結果、現行公定価格がまじめな産業企業の活動を著しく妨げている現状にあるので、この際賃銀、物価を全面的に改訂してその維持安定をはかる 財政金融の健全主義堅持 第四 通貨面からのインフレーシヨン促進の要因を除去するために財政金融の健全化をはかる 一 財政は国民経済全般の円滑な運行をはからい再建にもつとも効果のあるように運用することを主眼とし、健全財政主義を堅持する 二 歳出の節約繰延をはかるために実行予算を編成する 三 やむをえない歳出の増加は極力現行税制の適切な運用によつて補塡するが、事情によつては増税を考慮する 四 徴税機関の拡充や税源捕捉方法の改善を行い、インフレーシヨンやヤミによる不当な利得に対する課税を強化する 五 事業特別会計については、独立採算制の本旨を徹底する 六 予算実行上の監査を励行する 七 融資統制を継続強化し、赤字金融は厳にこれを抑制する但し重要産業に必要な資金はこれを確保する 八 通貨発行審議会の機能を活用し、国庫収支と産業資金の適時調整を実施して通貨発行量の合理的規正に資する 九 貯蓄増強運動を引続き強力に展開する 重点生産継続、経営の健全化 第五 経済回復の根本は生産の増強と生産能率の向上である政府は重点生産の継続と企業経営の健全化の中心としてその実現をはかる 能率賃金制の拡大に努力 第六 勤労者の自覚による勤労能率の向上こそ生産増強の原動力であるから、政府は乏しい国力をさいても、勤労者の生活と雇傭の確保に必要な手段をとる 国内消費を縮め輸出を振興 第七 食糧や再建のため必要な基礎資材の輸入をまかない、ひいては東洋諸国の復興に出来るだけ寄与するために、国内消費の一時的圧縮を忍んで輸出の振興に力を注ぐ 不成績な基本産業は管理 (平塚市立第二青年学校平塚市第二実務女学校「往復文書綴」(昭和二十二年)平塚市教育研究所蔵) 〔注〕以下欠。 一二二 物価引下運動実施に関する件通達 二十二地収第四九三号 昭和二十二年六月十四日 総務部長 各地方事務所長市区長殿 物価引下運動の実施について 最近全国各地に物価引下運動の機運が澎湃として起りつゝあるとき、これを育成助長し、救国貯蓄運動と表裏一体的関係においてまた貯蓄運動の一環として、その健全な発展を図ることが極めて緊要と認められるが、本運動の性質より見て各部及び職員組合等の協力のもとに、総合的、多面的に運用されなければ、所期の目的は達成し得ないと考えられるので、概ね左記の要領によつて相互の緊密な連絡のもとに、本運動を強力に展開したい。 なお貴部(組合、委員会)の指導運営方針等の意見を、六月二十日迄に提出されたい。 記 一 物価引下を目的とし商業者、生産者、消費者を含む国民運動として展開すること。 二 商業者、生産者に関しては、商工会議所、農・水産業会その他の商工業者の団体、消費者に関しては県、県通貨安定推進委員会、職員組合、労働組合をそれ〴〵運動の主体とすること。 三 各商工会議所は同業者の団体を指導して卸小売業者、百貨店、商店街団体に呼びかけ、一定の物価引下目標を定めその励行を図るため自主的運動態勢を確立すること。 四 商工会議所は同業者の申合せにより物価引下協力店を指定せしめ、指定協力店は取扱商品につき、定められた一定の引下価格を厳に励行せしめ、もしこれに違反する者あるときは、協力店たるの指定を取消すこと。 五 商工会議所及び農・水産業会は生産者に呼びかけ、指定協力店以外の店と取引をせぬように措置をするとゝもに、取引価格についても引下を考慮すること。 六 県及び県通貨安定推進委員会は労働組合と相提携し、消費者団体、青年団体、婦人団体、文化団体等によびかけ、指定協力店のみより購入し、その他の者よりの不買同盟を結成せしめること。 七 指定協力店の販売価格の決定に当つては、消費者代表の意見を反映せしめるように考慮するとゝもに、消費者をして常時監視せしめること。 (平塚市立第二青年学校平塚市第二実務女学校「往復文書綴」(昭和二十二年)平塚市教育研究所蔵) 一二三 統制物資不正売買取締徹底の件通達 中東刑防発号外 昭和二十三年十月二十日 中東地区警察署長 神奈川県警視本多郁三(印) 成瀬村々長 重田朝光殿 経済強力取締について 終戦後三年敗戦日本の経済復興の為にする国民大衆の政府当局に寄する絶大な協力と政府自身のたゆまぬ努力とに依り一時は崩壊の危機に瀕して居た国民経済も漸くにして今後に明かるい希望が持たれて来つゝあるが巷間やゝともすると経済再建を阻害する闇行為が半ば公然と行われて居り之については軍政府当局に於ても日本再建の癌であるとし至大な関心を寄せて居り今般その指令に依つて県下一斉に経済強力取締を統制諸物資全般に亘り実施する事に成つたので各位に於ては克くその趣旨を諒とされ取締の実効発揚に御協力下されん事を切に望みます。 各団体長は此の文書を構成員に対し回覧等の方法を以つて通達し本取締の性格乃至は趣旨を諒知せしめられ度い。 (成瀬村役場「庶務書類」(昭和二十三年)伊勢原市役所蔵) 一二四 物価安定署名運動展開に関する要請の件 二四教中収二一九号 昭和二十四年□□月□□日 神奈川県教育委員会事務局中出張所長 町村長町村婦人団体長殿 物価安定署名運動展開について インフレの暴騰と闇価格の横行に伴う極度の経済不安の只中にあつて又高物価改訂が行はれようとしています。この重大事態に対処すべく神奈川県新生活運動婦人団体協議会に於ては別紙の趣意のもとに県下全婦人が物価安定署名運動を展開することに二月二十三日の協議会で決定いたしましたので貴町村婦人団体に右趣旨御伝達の上町村取りまとめ三月七日迄(午前中)に必ず完成の上御届け願いたい。 記 署名方法の説明 一 用紙 規格藁半紙を使用。二つ折にして右端を綴じ込むこと。用紙は各婦人団体で負担することになつています。 二 書式 別紙書式要領で縦二十糎横十五糎の粋内を三段に分けて一列十名署名捺印のこと。 趣意書は署名簿頭書に明記のこと。 三 署名簿は三通作製のこと。 四 署名書は婦人代表により三月八日午前総理大臣及経済安定本部総裁に提出 五 尚婦人団体のない町村は適当な人に委嘱し一般婦人の署名を願い取まとめの上町村役場より中出張所に御届け願いたい。 物価安定署名運動 趣意書 経済的安定なくして平和日本の再建は望まれません。 然し終戦来インフレの暴騰と闇価格の横行は刻々に国民生活を脅かし続けています。私共家計を預る主婦は日夜家庭経済面に精魂を傾注し数年に亘る物価高騰に血みどろなる喘ぎを続けてゐることは周知の事実であります。私共神奈川県下各婦人団体に於てはこの苦難を切り拓くべく新生活運動に邁進し特に闇撲滅と生活改善の両面より必死の努力を重ねて来ました。 然るに政府はこゝに又々高物価改訂を行はうとしております。もしそんなことになりますと私共の努力は水泡に帰し家庭経済は破滅し国民生活は全く危機に晒されてしまいます。 この度の物価改訂に当り「せめて生活必需品の公値上げは絶対に喰ひ止めたい」という私共主婦としての切実な叫びをこゝに署名運動により表明し当局に嘆願致す次第であります。 昭和二十四年三月二日 神奈川県中郡成瀬村婦人会 婦人団体名 (成瀬村役場「庶務書類」(昭和二十三年)伊勢原市役所蔵) 一二五 物価監視委員任期延長の件通達 二四商第九三三八号 昭和二十四年十二月十九日 神奈川県知事内山岩太郎(印) 比々多村 近藤信綱殿 物価監視委員の委嘱について 貴下の物価監視委員としての任期は来る十二月二十日を以て満了となるのであるが現在は統制経済より自由経済への移行転換期に直面しており且又年末年始に際して一段と物価安定運動を活発に推進する必要も愈々増大しており、他方生活必需物資の配給、価格、量目等の維持励行に対する取締運動も強化されておるのでその実効を期するためにも本年度は各地区共物価監視委員の改選を行はないで引続き、更に一ケ年間任期を延長することと致し再度貴殿を第二十七区物価監視委員に委嘱することとなつたから本制度の円滑な運営とその有終の成果を挙げるよう重ねて御協力を御願いたい。 なお再選なので改めて辞令を用いないので併せて御高承を願いたい。 (比々多村役場「庶務書類」(昭和二十四年)伊勢原市役所蔵) 一二六 連合国総司令部の横浜市等地方財政状況視察 ○総司令部係官の地方財政状況視察 神奈川県はシヤウプ税制使節団の財政視察上のモデル県となつている関係上、その予備調査のため、五月十九日総司令部経済科学局歳入課アラン氏は横浜市役所を訪れ、市財政上の難点、歳入歳出の詳細、国庫並に県補助、支出金の現況、地方配付税、並に徴税制度につき三時間にわたり質疑応答を行つた。越えて二十日及二十三日には同市中区役所に赴き終日同所の徴税(地方税)事務につき研究すると共に窓口事務の実情を視察した。 右視察には神奈川軍政部の要請により当事務局係官が同行したが、視察の主眼点は歳入、殊に地方税の徴収方法、徴税強行手段、欠損処分方法等であつたが、同氏はニユーヨーク市財政事務に二十五年の経験を有する専門家であるためその着眼も核心をつき、又日本側係官も之に啓発される所が大であつた。同氏は今回の視察の結果得た資料をシヤウプ使節団に提供する任務を有しており来月も引きつゞき来県、県庁はじめ代表的市町村財政を視察する予定である。なお神奈川軍政部の要求により同軍政部に提出しておいた県及び県下各市町村の財政報告(執務報告第三十六号参照)は同氏が総司令部に持ち帰り直接資料の一部として利用している模様である。 (横浜終戦連絡事務局「YLCO執務報告第四十号」(昭和二十四年)神奈川県庁蔵) 〔注〕執務報告第三十六号省略。 一二七 座間相模原町地域の進駐軍の不法事件処理経過(一-二) ㈠ ○座間、相模原方面の進駐軍不法事件取締方 (イ) 神奈川県相模原町に於ける進駐軍兵士の邦人に対する不法事件頻発に関し、同町当局から神奈川県知事宛て町長、公安委員長其他諸団体員百五名連署の陳情書を提出したので右八軍当局へ申入れ方同知事から当事務局に要請があつた。 (ロ) 陳情書の要旨は終戦直後同地方に進駐した部隊は規律厳正で且これが果して歴戦の将兵かと疑うばかり仁愛の精神に充ちたものであつたが、其後来駐の部隊は多く黒人で日夜強窃盗、暴行、傷害等の事件が絶えず其為に過去約八ケ月町民は日没後は門戸を鎖じ夜間の外出は不可能なるに至つたと云うに在つて、本年一月初頭以来三月十五日までの同町に於ける不法事件統計として四十八件(此内正式届出事件三件)の要領を表として添付したものである。 (ハ) 然るに県下に於ける進駐軍関係事件の最も頻繁なのは座間地方であつて、前記期間内に於ける事件として座間附近の各警察から当事務局へ報告のあつた全事件数は六十一件、地区別内訳座間五六、海老名三、相模原及厚木各一件と云う実情なので、本件は相模原のみならず座間其他近隣町村一帯の問題として八軍憲兵司令官に申入れ其注意を喚起した。 (ニ) 右に続き座間郵便局集配人に対する兵士の暴行事件数件に付て東京郵政局長からも同様申入方要請に接したので同じく当事務局覚書として八軍に申入れを行つた。 (ホ) 四月十日八軍憲兵司令部から鈴木局長に対し同方面の事態に付ては八軍司令官からも厳命があつたので三月末MPの増強等により取締を強化したから其後の事態に関する日本側現地報告を徴せられたい旨口頭申出があつたので座間及相模原両警察当局に移牒の上査報を求めた処、三月二十五日からMP等五十三名による一日二十四時間制三交替式の徒歩及ヂープ巡羅が実施せられ、且駐屯部隊及憲兵司令官以下将校の監督巡視も頻繁に行われるに至つた為、爾来事態著しく改善せられ、医師、郵便電信の夜間サービスも四月初旬から再開せられ、相模原警察も臨時派出所増設、通訳の増員等により米側との連絡を密にした結果少数乍ら夜間開店営業する者も出で又夜間外出者も多少は見られるに至つた趣である。右の事態は当方に対する警察報告にも如実に反映せられ即之等地区に於ける一月乃至三月三十一日の不法事件計七一件中特別警戒実施の三月二十五日以後の事件は僅に二件に止つて居るので、八軍に対し報告旁々新措置に対し謝意を表して置いた。 (ヘ) 八軍司令部は四月二十九日附を以て本件に付ては直に適当取締措置を講じた結果事態改善せる旨並に取締は今後共継続して住民の不安除去に努むべき旨を当事務局宛及東京郵政局長宛公信として夫々回答越したので神奈川県知事及郵政局長に之を転達した。 ㈡ ○座間方面進駐軍の不法事件 本問題に付ての当方申入れ及之に対する八軍当局の取締措置に付ては前号月報記載の通りであるが、其後五月一日附座間警察報告として神奈川県知事から当事務局宛通知せられたところによれば三月末の取締強化以来同地方に発生した事件は強奪二件暴行一件を数えるのみで、加之従来頻発した不祥事件の主なる責任部隊たる第七六及第九三三高射砲部隊は四月末他に移駐を命ぜられたので町民も約十ケ月振りで平常に復したとのことである。 (横浜終戦連絡事務局「YLCO執務報告第五八・五九号」(昭和二十五年)神奈川県庁蔵) 〔注〕 資料㈠が五八号資料㈡が五九号より抜粋。 一二八 講和後横浜市の接収地処理に関する要望書 「講和後における接収地の処理問題に関する政府への要望書横浜市復興建設会議」 講和後における接収地の処理問題に関する政府への要望書 横浜市は昨年十月多数市民の賛成投票を以て国際港都建設法を制定し、以来この法律を根幹として近代的国際港都百年の大計を樹立する機会を得、直ちに必要にして有効な年度計画を樹て現にその一部は二十六年度の予算に具体化し、歩一歩将来の大計を固めんとしているのであるが、今回の講和条約の締結を機として港都々市計画遂行上致命的な関係を有し且又百万市民が戦後六ケ年その地域における経済活動を閉塞され、常に苦難の中に待望して止まなかつた市街地広域に亘る接収解除の問題が将に一挙に解決されんとする唯一絶対の時期に際会しているので、茲に事情を具し政府関係当局の特別の御考慮と御明察を賜わり国家全体の立場より最善の解決を見ることができるよう懇請する次第である。 第一 土地、建物、港湾施設接収の現況 ㈠ 市街地の接収状況 横浜市内の全接収面積は約二百十余万坪に及び、特に市の中枢地帯である中区ビジネスセンターは、その約七四パーセントに相当する広大な土地を占有されているのである。この使用状況を大別すれば次の通りである。 しかして現に接収を受けている市街地の内、中区内のいわゆる関内関外地区は横浜港湾の中心部に直結する背後の心臓部的要地であつて、かつては名実共に本市の貿易産業経済活動の中枢地帯であつたのである。一方神奈川子安生麦方面は、かつて本市が多大の経費を投じて造成した地域を含む臨港工業地帯として、これ又経済復興上極めて重要の地域である。更に本牧山手根岸方面は、気候温暖な点において、又空気の清浄にして眺望絶佳な点において、最好適住宅地として京浜間一般都人に広く知られている地帯である。 ㈡ 港湾施設の接収状況 港湾の接収状況はこれ又添付の図面に示す如く極端を極め、かつて日本の国際貿易に重要な役割を果し又現にその必要にせまられているにも拘わらず、現在民間貿易に解放されている公共施設、港域は僅かに全体の一割に過ぎない現状である。 ㈢ 公私建物の接収状況 現在接収建物の現況は、実に総坪数約二十万坪に及び何れも以前横浜市の経済的、文化的、教育的発展力の根源として重要な使命を果していたものがその大部分である。 第二 接収のため受けつゝある横浜市の経済的損失 元来横浜市はその都市の立地条件よりして終戦直後進駐軍の重要拠点として利用されることは当然のことであり、これがためにはむしろ市民も心よりこれを歓迎し進んで軍に協力し来つたのであるが、その間進駐軍におかれても県市政に対して尠からざる利便と御支援を与えられ、市民生活の上にも直接間接多くの福祉を供与され、この点百万市民斉しく感謝している次第である。しかしながら一方こうした広域の接収が相当長期に亘つている関係上諸般の経済事情がようやく落ちつきを示し、本格的な復興の段階に進みつゝあるに拘わらず横浜市の経済活動が大きく抑制されていることは事実であつて、これがため蒙りつゝある損失は今日までまことに図り知れざるものがあるのである。 茲に幾多の具体的資料を提示して事情を証明する前に、特に顕著な実情を概説すれば、前述のように進駐軍が接収している関内関外の地域は、横浜市の経済中枢部であつて、以前は横浜の経済活動を支持する金融機関や各商社の本支店の所在地域であり、多くの外国商社貿易関係業者の店舗が集中され、又観光客向きの一流店舗街が形成され、港湾の中心部に近接する唯一の心臓部的地域である。従来こうした地域に活動していた多くの市民は、殆ど追われて他に転じ、或は再起の機会を失い、逐次脱落し、又現在かろうじて取引上頗る条件の悪い都辺地に店舗を構え、僅かにその片影を維持している等、全く惨たんたる状況を呈しているのである。最近横浜港の貿易取引上の悪条件に堪え得ず多年市内に活動の経歴を残していた有力業者が、相次いで東京方面にその活動本拠を移転しつゝある事例に徴するも、本問題の解決が真に横浜市の経済復興の根本に通ずる基本的重要問題であることを示唆するものというべきである。更に港湾の状況を見るに、前述の如く全施設の約九割を軍の管理に供されているので、民間貿易は極度に抑制せられ、輸出入貨物の取扱についても沖取沖積荷役の増加、荒天時等による荷揚能率の減退、滞船日数の増嵩等により、自然港湾諸掛りの昂騰を招来し、立地条件上横浜港の利用を最も経済的とする輸出入貨物すら、漸次他港に移動する傾向を生じ、将に横浜港の危機的症状を露呈している現状である。かくして貿易を中軸として回転する横浜市の経済力は漸次衰退し、これが影響は県市税収入にも如実に現われ、この接収による直接的な県市税減収額は年間実に約拾億円に達する状況にあるのである。 第三 接収地と横浜市の復興問題 元来接収された土地、建物、港湾等は連合国が日本に対する占領政策遂行の途上、戦争活動の延長的形体において緊急的に出先機関の現地調達の方式で、あくまでも一時的の必要性からこれを接収したものであるのである。従つて将来の横浜市の総合的都市計画体型の観点に立つ必要な考慮の暇なく、随所に進駐軍の急速な利用計画が具体化され来つたので横浜の都市構成は全く分裂混乱の状態を呈しているのである。横浜市は終戦後今日までその復興に最大の関連を持つ接収地の解除を希求し、全市的な復興計画実現の緒につく日の、 一日もすみやかに来たらんことを待望しつゝあつた次第であるが、幸い来月四日桑港において対日講和条約が締結され、名実共に主権の独立を見る段階を迎え、前地域施設の解除問題につき恒久的な観点に立つて再検討される機会が到来しているように思考されるので、政府御当局におかれては是非とも、横浜市の経済発展と都市計画の基盤確立のため特段の考慮を尽されんことを懇請する次第である。 第四 駐兵協定に基く軍利用地設定問題 横浜市は接収地の問題について以上の如き見解を持つているのであるが、一方新たな日本の安全保障協定に基き、日本防衛の立場より、重要港湾を有する横浜市の客観的諸条件より考察して、或は今後共港湾市街地等の租借的軍利用計画が要求されることあるは止むを得ないことであると信ずるも、この場合従来現地応急の非常措置として接収された形体そのまゝの姿で、直ちに半ば恒久的な租借地計画に移行することは、横浜市の港都計画の見地からは勿論、市民の経済的生命線維持の立場よりも到底忍び難いところである。よつて政府御当局においても特に此際充分にこの間の事情を御了察願いたいのである。 尤も新たな駐兵協定に基ずく軍の租借地の設定については、アメリカ政府の要請に基ずき日本政府の責任においてこれを決定するものであるが、われわれが敢て云わんとするところは単に神奈川県、横浜市のみの一方的犠牲において、この問題を安易に解決することなく、県市のためにも、又国土防衛的見地よりも、はた又国家再建の立場よりも、日本の国民全体の負担において、最善の計画の出現を希望するものであつて、これがためには市域の内外に展開されるべき軍の利用地計画と、横浜市並びに神奈川県の都市計画とが完全に両立し得るよう、両者の調整を図らんことを衷心から懇請する次第である。この場合、地元県市が進んで政府に協力する意志のあることは勿論である。 第五 横浜市復興建設会議 以上の如き状況にあるので、横浜市並に神奈川全県の政界、財界、業界は挙げて横浜市の現状を憂慮し、講和後の変化に重大関心をもつているので、今回茲に県市の当面する重大問題解決のため、その中核的機構として、全体の力を一つに結んだ横浜市復興建設会議を設け、あらゆる角度より本問題を検討し、国家的見地に立つて最善の結論を発見し、その実現を強力に推進すると共に、併せて政府の施策に提携協力し以て県市百年の誤らざる大計を確立せんと企図している次第である。 希くば政府におかれても事情篤と御明察の上、本問題の解決に最善を尽されんことを庶希して止まない次第である。 昭和二十六年八月 日 横浜市復興建設会議 神奈川県知事 内山岩太郎 神奈川県会議長 加藤詮 横浜商工会議所会頭 平沼亮三 横浜市会議長 嶋村力 事務取扱横浜市助役 復興建設会議事務総長 田中省吾 横浜市長 平沼亮三 (横浜市復興建設会議「講話後における接収地の処理に関する政府への要望書」(昭和二十六年)神奈川県庁蔵) 〔注〕 本巻附録1を参照。 第三節 復興民主化政策 一二九 神奈川県戦災都市復興都市計画事業概要 神奈川県戦災都市復興都市計画事業概要 本県に於ける復興都市計画事業は、横浜、川崎、平塚、小田原の四市に於て施行中であるが経済安定本部の認証を得て公共事業として昭和二十一年度より実施中であり、その計画大要次の通りである。 一 事業実施の目的 戦前の我国の都市は道路の幅員は狭く区劃も不良で交通上、近代交通に適するものゝ極めて少く且つ公園其の他公共施設殆んど乏しく又家屋は木造小家屋が密集して衛生上、保安上、憂慮すべき状態であつたが之が改良は土地所有権及借地権、地上権等が錯雑して之等の整備は甚だ困難であつたが罹災によつて改良すべき好時期を得たといふ現況である。 先ず第一に都市復興は我国の経済復興の基礎である事であり、商工業の振興は農村の食糧増産と平行して実施されねばならないので都市の復興なくして平和日本の再建は成り立たない。之れが基盤となる都市計画に基く実施計画を急速に行ふ必要がある。 次に都市の交通、防火、衛生、文化等のため必要なる道路、広場、公園等の用地を確保すると共に街廊劃地を整備するために土地区劃整理事業を主体にして戦災都市復興都市計画事業が初められたのである。尚又我国の家屋は大部分木造のため年々大火災を生じ之れが防火の便も甚だ不良で本事業実施によつて防火区劃を構成せしめ損害を著しく軽減せしめるのが目的の第三である。 第四には住宅敷地の確保が目的である。罹災した敷地に住宅が促進出来ないのは区劃の不整及借地権其の他の関係が甚だ多く区劃整理によつてその敷地が合理的に配分せられ、道路用地、公園用地等の決定が解決せられゝば本格的なる家屋の建築も安心して出来且つ仮設的なる住宅にあらずして安定した地盤に立つて経済の復興が出来る為である。 第五には都市の失業者の救済に資せんとするもので機械及技術を要しない労力で実施出来得ることが、多大である為である。 二 復興都市計画事業の方法 都市の復興計画は特別都市計画法が新たに制定せられ之に基き各市の民主的なる委員の審議を経て神奈川県の都市計画委員会に於て決定せられる都市計画委員会は知事を会長として内閣総理大臣によつて任命せられたる当該市長、市会議員、県会議員及学識経験者並に県市の吏員より成り、之に於て計画が決定せられる。決定せられたる計画は市、県に於て年度計画を定め、之れが主管の建設院総裁に資料を呈出し、建設院に於て全国の事業を纒めて経済安定本部の認証を得、之によつて定められたる事業量を建設院を通じて県市に通牒せられ、実施に移されるのであるが実情は各県市に於て予定する事業量の四分の一程度であつて、之が為の事業は遅々として進まず多大なる迷惑を市民に与へて居る結果となつて居る。本事業の中核である区劃整理事業は区域内の宅地面積の一五%は無償で提供されるが、夫に上は政府が補償し之が換地及補償については民選により区劃整理委員から成る委員会に於て処理せらるゝもので神奈川県に於ては既にその議を経て換地が決定せられたるもの七ケ処地区に及び面積一、二二一、六〇〇坪に及んで居る。 三 区劃整理事業を急速に実施する必要性 a 本事業は先ず都市中心部が焼失したゝめ、市民は郊外に居住し中心部への通勤の為めに交通が雑踏を極めて居り特に駅附近は甚だしい。之が為め先づ駅附近及主要交通路線敷地の確保をなし交通の保安増加を計ると共に漸次市内の復興を促進して交通問題を解決せしむる為非常に役立つ。 b 焼失した地区を対象とするので家が今後全部建築せられた時よりも費用がずつと低廉であり之が為め早々実施すればする程低廉であり時期が遅れる程高価であり実施困難となる。 c 区劃整理を施行した地区は本建築も許可されることになり仮建築でないので市民は安住した住宅を建て得るし又商業も確固たる地盤を得て経済安定上根強い力となる。 d 現在区劃整理地区は一時建築の禁止が行はれたる処で現在建築せられたる建物は焼失前より一層無秩序なる仮建築であり之を放置する時は保安、衛生、交通上甚だ面白くない現象を呈し且つ区劃整理の完了を待つて本建築をなさんとして居る善良なる市民に建築敷地の提供が出来ず不公平なる結果を来す。之が為正常なる土地建物に対する投資等が円満に行はれず経済安定上阻害を来す虞がある。 四 本県に於ける事業概要 復興事業は県市の財政難及国家的なる災害の為め国の補助費を主体とし区劃整理事業八〇%を最高とし三三%以上の国庫の補助を得残額を地方公共団体の負担として実施して居るが経済安定本部で認証せられたる事業費以上は起債も不可能であり単独地方費負担も困難であり特に国の認証額を期待しなければ実施出来ない現状である。 横浜市、川崎市は日本の玄関であり貿易並に工業の中心地である。之が為めには両市の都市計画事業は之を目的として計画せられ着々実施中であるが毎年度民主的なる市会に於て多額の予算を計上するもその事業量は誠に少なく査定せられ此の程度に進めるならば今後三十年を要する事となり之が増額は緊急を要するものと考へられる。 平塚市は神奈川県中心部に於ける農業の集散地及地方農村文化の中心地であると共に漁港を有し水産物の重要地点であり、その工業地及住宅地としての発展も期すべき所あり。市街の大部分焼失した為め市民は本格的なる都市復興を希望して居るが之又予算僅少で此の儘移推すれば一般市街地再建は不可能なる状況に立至るのみならず、又区劃整理区内に別途公共事業として漁港を築造中であり、之が漁港を急速に完成する為めには本事業は之より先行して実施せざるを得ないものであり本事業の縮少によつては漁港も実施不可能に立入る現況である。 小田原市は面積も少なく事業も少量であるので二十三年度内に完成し全国の戦災都市の内最初に完成すべき現況である。 (神奈川県土木部計画課「復興関係書類」(昭和二十二年)神奈川県庁蔵) 一三〇 横須賀市更生対策要項 横須賀市更生対策要項 今ヤ我国ハ「ポツダム宣言」受諾ニ基キ連合諸国ノ管理方策ニ従ヒ平和国家建設ノ方途ヲ自主的ニ遂行スベク国ヲ挙ゲテ政治、経済、思想、文化等各般二亙リ旧制ハ逐次是正セラレ、所謂民主的理念実現ノ意図ノ下ニ新日本建設ニ鋭意経営努力ヲ致サレツヽアリ 翻ツテ本市ハ横須賀軍港ノ所在地トシテ軍活動専ラ行ハレ民生又軍ニ直接間接ニ依存スルノ実情ニ在リタルハ一般ノ知ル所ニシテ終戦ニ伴フ軍ノ解消ハ立市ノ基盤、民生ノ培養源ヲ一挙ニ剔抉シ本市ノ民生経済面ニ空前ノ影響ヲ与へ本市並ニ本市民ハ一旦ニシテ憂慮スベキ経済的危局ニ投入セシメラレ寔二寒心ニ堪ヘザルモノアリ 茲ニ於テ本市モ亦叙上ノ新日本建設ノ方途ニ準拠シ且ツ政府ノ国土計画ニ包摂セラレツヽ他面本市個有ノ地理的優位性其ノ他ノ積極的条件ニ依存シ本市恒久ノ更生根本策ヲ勘考シ以テ立市ノ基底ト為サザルベカラザルニ至レリ 然ル所幸ニシテ本市ハ戦禍ヲ免ガレ全市無疵ノ状態ニ在リ、本市民タルモノ宜シク自彊奮起新事態ニ処スベキハ固ヨリ言フヲ俟タズ、而モ全市域ニハ厖大ナル嘗テノ軍施設其ノ儘残在シ之等施設中我国産業文化振興並ニ本市更生ノ為転換活用スルヲ適当ト思料セラルヽモノ数多存在スル事実ハ本市更生ノ上ニ絶好ノ条件トシテ無限ノ光明ト天来ノ福音ヲ与フルモノニシテ真ニ本市ノ至幸トスル所ナリ 以下本市更生委員会ノ議ヲ経本市更生対策及ビ之ガ実現ニ資スベキ残存施設ノ転活用ニ関シ概述セントス 一 工業ノ振興 新日本ニ対シテハ往時ノ軍需工業ハ完全ニ解消セシメラレ又将来軍需転換ノ可能性アル工業等ハ許容セラレザル如ク規定セラレ専ラ平和工業ノ限度ニ於テノミ認メラルヽモノヽ如シ 此ノ制限ノ下我国民ノ間ニ生活手段ヲ喪失スル者無数ニ及ブコトヲ思フトキ農業立国ノ外所謂過剰人口対策上ヨリスルモ新生日本ノ平和的工業振興ハ必須ノコトヽ謂ハザルベカラズ 然ル所本市ノ東海岸ハ旧海軍工廠、海軍航空技術廠、海軍軍需部、造兵部等巨大ナル工業施設ニ依リ既ニ工業的地区ノ形態ヲ整へ居リタルモノニシテ之等地区ノ平和産業ヘノ転換ハ其ノ立地支配因子ニ従ヒ適種ノ撰定ヲ過ラザレバ其ノ期待甚ダ大ナリト謂フベシ即チ旧海軍工廠ハ内外船舶ノ修理又ハ商船等ノ造船造機又ハ木工業ニ旧軍需部ハ製缶製函工業並ニ食品工業ニ旧造兵部ハ平和的器械工業旧航空技術廠ハ建築用資材工業ニ金沢ノ旧航空技術廠□車輛工業又ハ附近ニ特産ノ粘土ヲ利用スルセメント工業ニ更ニ市東南方ニ一転シテ久里浜ノ旧海軍軍需部倉庫及防備隊工作学校等ノ施設ハ其ノ港湾地帯ヲ包含シテ漁業基地ニ併セ水産加工工業等ニ何レモ現存施設ヲ更生利用シテ容易ニ平和産業ニ転換シ得ベシ二 商業ノ振興 平和工業其ノ他ノ更生振興ニ伴ヒ商業ノ勃興又期待スベク旧横須賀軍港ハ天与ノ良港ナルニ加ヘテ数十年来巨額ノ国帑ヲ投ジテナサレタル完全ナル港湾施設ヲ有シ大船巨舶ト雖モ接岸可能ニシテ之ガ開放ニ依ル商工港トシテノ活用ハ本市貿易商業ノ振興ニ資スル処大ナルモノアルベシ即チ陸上連絡輸送施設ノ整備充実ニ依リ貿易横浜港ノ外港トシテ将又客船発着港トシテ天然的良港ノ特質ヲ顕著ニ発揮シ得ベシ 三 港湾ノ整備 三浦半島ハ天然的良港ニ恵マレツヽモ従来軍事上ノ制肘ヲ受ケ開放セラレタル港湾ハ僅ニ浦賀、安浦、三崎ノ三少港ヲ数フルノミニシテ海上ヨリノ輸送連絡ハ貧弱ヲ極メ加之何レモ陸上連絡施設ニ欠クル処多クシテ全ク地方的小港ノ域ヲ脱セズ港湾的使命ヲ果シ能ハズシテ本市産業界ニ寄与スル所乏シカリシハ甚ダ遺憾トスル処ナリ 横須賀港、長浦港、深浦港等ノ旧軍港ハ之ヲ全面的ニ平和的ニ改装スル一面海陸連絡施設ノ完璧ヲ期スルニ於テハ其ノ天然的良港ノ本質ニ加へ将来一般使用ニ開放セラルヽノ時商工港トシテ日本的大港湾タルコト万人ノ疑ハザル所タルベキヲ信ズ 久里浜港ハ其ノ修築ヲ急ギツヽアリシモ工事半途ニシテ終戦ニ遭遇シタルモノニシテ陸上連絡施設ハ既ニ成リ鉄道ハ省線、社線ノ二線ヲ有シ道路ニ於テハ国道、県道ノ整備ヲ終ル等間然スル所ナク之ヲ附近旧軍施設ト共ニ漁港トシテ改修スルニ於テハ太平洋漁業ノ一大根拠地トシテ日本水産界ニ寄与スル所甚大ニシテ以テ国民食糧問題ノ解決ニ多大ナル貢献ヲ為スベク国家的役割ヲ果スベキヤ必セリ 要約スルニ久里浜港ヲ除ク各港ハ其ノ海陸連絡施設ヲ整備シ横須賀港ノ商工港、深浦、長浦、浦賀港ノ工業港、久里浜並ニ太田和港ノ漁港等各港ニハ夫々本来ノ目的ニ則シタル諸々ノ平和産業ヲ附設シ自然地理的条件ヲ活用シテ半島ニ位置スル特色アル港湾都市トシテ更生シ平和的産業ノ国家目的ニ副ハントスルモノナリ 四 観光施設ノ整備拡充 三浦半島全域ハ風光ノ明眉秀麗ナルニモ拘ラズ随所ニ軍施設点在シ之ガ機密保持ノ必要上諸般ノ制限ヲ厳ニセラレタル為其ノ天然的風光ハ更ニ世ニ紹介宣伝セラルヽ機会ニ恵マレズ従而又現在観光施設ハ皆無ニ等シク将来ノ観光客誘致方策ニ欠クル所頗ル大ナルモノアリ自然美ニ恵マレ史実ニ豊カナル三浦半島ハ観光地トシテ好個ノ条件ヲ具備セリ此ノ天恵ヲ利用シ恒久平和ヲ理想トスル日本ヲ世界ノ平和線上ニ描出スルタメ此地ヲ国際観光要地タラシメ国民外交ノ一端ヲ担ハントスルハ将ニ戦後日本ノ国策ニ副ヒ極メテ有意義ナルコトヽ思料セラルヽ所ナリ依ツテ半島循環鉄道及軌道、周遊道路、国際的観光ホテルノ建設、其ノ他歓興施設、公園施設、案内施設等ノ整備拡充ハ漸ヲ逐ツテ之ヲ具現ノ要アリ観光ホテル等ノ施設ハ嘗テノ軍施設ヲ転用スルニ於テハ之ガ実現比較的容易ニシテ例之野比所在ノ旧海軍病院、網代湾ニ臨メル旧海軍施設ノ如キハ気候風光環境設備等他ニ比ナク理想的施設タリ得ベシ尚又陸海軍旧練兵場其ノ他ヲ利用シテ野球、庭球、ゴルフ等ノ運動施設ヲ整へ各所ノ丘陵ニ散在スル旧軍用地ヲ撰ビテ公園ニ転換シ或ハ秘島猿島ヲ開放シテ歓興施設トナス等ハ観光施設計画トシテ当然企図セラルベキモノナリ 五 学園ノ建設 青巒翠波ヲ背ニ白砂ヲ踏ミ松籟ヲ友トシテ四囲ノ静寂ナル環境ニ浸リツヽ只管勉学ニ励ミ得ル如キ環境ハ一度此地ニ入ル者ノ等シク認ムル所ニシテ幸ヒ残存セル旧陸海軍諸学校ノ施設中其ノ適スルモノヲ転用シテ帝都ヲ初メ戦災地ノ大学専門学校等ニ充当セバ即時其ノ用ヲナシ之ニ学ブ者ハ全テ寄宿制トシテ其ノ舎内ニ収容スルコトヲ得ベク教育効果ノ万全ヲ期シ得ベシ 即チ馬堀ノ旧陸軍野戦重砲兵学校、久里浜ノ旧海軍通信学校等ハ共ニ広大ナル施設ノ存スルヲ以テ大規模ナル学校又ハ研究所ノ転用ニ適シ其他田浦ノ旧海軍水雷学校、大楠ノ旧機関学校、旧砲術学校或ハ旧機雷研究所等ハ其ノ位置並ニ施設ノ内容規模等ヲ参酌シテ夫々適当ナル学校施設ニ転換セバ啻ニ新日本ノ教育上利スル所大ナルノミナラズ国家財産ヲ活用スルノ効顕著ニシテ機宜最善ノ措置ナルハ敢テ信ジテ疑ハザル所ナリ 六 住宅地帯ノ設定 本市ハ帝都ノ四十粁圏内ニアル衛星都市ノ一ト考フルヲ得時余ニシテ帝都ニ至ル交通至便ノ地点ニ位置スルヲ以テ其ノ冬暖夏涼ノ気候明眉ノ風光ト共ニ京浜地域ノ住宅地帯トシテハ蓋シ絶好ノ条件ヲ具備セリ就中半島西海岸ハ我国有数ノ住宅地帯ニシテ逗子葉山大楠等別荘地トシテ世ニ宣伝セラルヽ所以素ヨリ故アリ省線或ハ社線ニ依ル半島環状線完成ノ暁ハ住宅地帯ハ更ニ拡大セラレ居住者ノ利便ヲ増シ住宅地トシテノ都市的使命ヲ充分ニ果シ得ベシ七 交通運輸機関ノ整備拡充 前述ノ如キ各種ノ建設振興ニハ交通運輸機関ノ整備拡充ハ絶対的ナル必要条件ニシテ半島環状線ノ建設、横須賀武山間ノ半島横断電車ノ促進ハ最モ急ヲ要シ乗合自動車路線ノ拡充道路網ノ整備ハ之ニ次グ 而シテ省線根岸線ノ横須賀線トノ接続地点ヲ田浦附近ニ求ムルニ於テハ帝都連絡ノ最短線トナリテ本市ノ都市活動ノ動脈トナリ商工業ノ振興ニ寄与スル処大ナルヲ以テ強力ナル期成方策ヲ講ズルノ要アリト思料セラル 刻下ノ我国ハ食糧問題、インフレーシヨン問題、戦災復興問題、財政租税問題、人口再配置問題、失業問題等ニ直面シツヽアルノミナラズ当来ノ賠償問題其ノ他国運ヲ決定スベキ国家的諸問題ノ山積セルハ言フヲ俟タザル所ナリ 而カモ敢テ以上各項ヲ挙ゲテ本市更生ノ根本方針ヲ勘案スルハ地方的ナル戦後再生復興ノ諸対策措置ハ密接ニ国家ノ産業及文化ノ振興ニ相通ジ之ニ寄与スルモノアルヲ信スルト共ニ国土並ニ軍用ノ諸財産ヲ最高度ニ新日本建設ニ活用シ且ツハ動モスレバ焦躁ニ流レ失意ノ淵ニ沈湎セントスルノ傾キアル市民ノ民主的ナル自奮自励ヲ促シ政府並ニ関係諸官憲ノ同情アル理解ノ下大方各位ノ賛助協力ヲ冀ヒ其ノ実現ヲ期セントスルモノニ外ナラザルナリ 昭和二十年十二月 (横須賀市役所「市会に関する書類」(昭和二十年)横須賀市役所蔵) 一三一 川崎市民需対策委員会規程 川崎市告示第 号 川崎市民需対策委員会規程左ノ通定ム 昭和二十一年月日 川崎市長 江辺清夫 川崎市民需対策委員会規程 第一条 市民生活必需物資ノ適正ナル需給並ニ運営ヲ図ル為川崎市民需対策委員会ヲ設ク 第二条 委員ハ市吏員、市会議員、業者、連合町内会長、工場、隣組中ヨリ市長之ヲ委嘱又ハ命ス 第三条 委員長ハ市長、副委員長ハ第二助役及復興対策委員会産業部会主査ヲ以テ充ツ 第四条 委員会ハ必要ニ応シ随時委員長之ヲ招集ス 第五条 委員会ニ幹事及書記若干名ヲ置キ委員長之ヲ命ス 幹事ハ委員長ノ指揮ヲ承ケ会務ヲ整理シ書記ハ上司ノ命ヲ承ケ庶務ニ従事ス 付則 本規定ハ公布ノ日ヨリ之ヲ施行ス (川崎市役所「市例規関係書類上」(昭和二十一年)川崎市役所蔵) 一三二 武器引渡命令に対する緊急措置の件通牒 藤警備収第二〇六五号 昭和二十年九月二十日 藤沢警察署長地方警視松下英太郎 市町村長学校長殿 武器引渡命令ニ対スル緊急措置ニ関スル件 終戦後ニ於ケル銃砲火薬類ノ取締殊ニ帰郷兵等ノ所持スル拳銃其他危険物ノ取締ニ関シテハ曩ニ配布セル回覧板等ニ依リ措置セラレツヽアルコトヽ存候得共今次連合軍最高司令官ノ指示ニ基キ発セラレタル一般命令第一号第十一項ニ依リ一般民間ノ所有スル一切ノ武器ハ之ヲ連合国側ニ引渡準備ヲ為スノ要アルヲ以テ概ネ左記方針ニ依リ本月二十八日迄ニ緊急措置スルコトヽ相成リタルヲ以テ特段ノ配意相煩度此段及通牒候也 記 一 提出セシムベキ武器ノ種類 イ 軍用銃砲 小銃拳銃重軽機関銃等一切ノ軍用銃砲トス ロ 拳銃単銃仕込銃 民間所有ノモノ一切トス ハ 刀剣 軍刀指揮刀銃剣ノ類其ノ他一般刀剣トシ刃渡九寸五分以下ノ匕首ノ類ヲ除クコト 美術的骨董的価値アル刀剣ハ警察署ニ登録シ提出ノ用意(届出)ヲ為スニ止メ中央ヨリ改メテ指示アル迄一応蒐集ヲ見合スコト〔欄外注記〕所有者ノ申告ヲ尊重スル ニ 仕込刀剣 ホ 軍用火薬 弾薬手榴弾等 二 提出ヲ命スベキ範囲 一般個人ハ勿論学校公共団体等ニ付テモ漏ナク提出セシムルモノトス 三 提出期日 九月二十八日一斉ニ行フ 〔欄外注記〕晴雨不問 新聞ノ十月十日トアルハ所謂最終日限ナリ 四 提出場所 管下市町村役場トス 五 提出ノ要ナキモノ 陸海軍将校警察消防官吏刑務所官吏等服制ニ依リ職務上之ヲ所持スルモノハ提出ノ要ナキモノトス 但シ転官退職失官等ニ依リ職務上所持スル必要止ミタル時ハ直チニ之ヲ提出セシムルモノトス 六 提出シタル武器ノ取扱 イ 警察署長ハ提出シタル武器ニ対シ其種別毎ニ別添様式ニ依リ提出者名簿ヲ作製シ(市町村長ニ作製方依頼ス)又個々ノ武器ニ付名札ヲ附シ盗難毀損混合等ノコトナキ様厳重保管方ヲ市町村長ニ依頼スルモノトス ロ 学校等ノ所持スル武器ニシテ相当多量ノ場合ハ一応別添名簿ノミヲ警察署ニ送附シ現品ハ学校側ニ於テ厳重保管スルコト ハ 保管ノ武器ハ追テ連合軍側ノ指示ヲ俟チ連合軍側ニ引渡シ又ハ提出者ニ還付其ノ他ノ措置ヲ為スモノトス 但シ軍用銃砲軍用刀剣軍用火薬ニ付テハ警察署長(市町村長)保管スルモノトス 七 実施上ノ注意事項 イ 今回ノ武器蒐集ハ連合軍ニ対スル降伏条件履行ニ関シ行ハルヽモノニシテ之ガ成果ハ連合国側ニ対スル日本国民ノ誠意ノ程ヲ示スモノトシテ相手方ニ於テハ之ガ実施結果ニ対シ多大ノ関心ヲ払ハルベク思料セラルヽヲ以テ之ガ実施ニ当リテハ隣組常会ヲ主トシ回覧板掲示板等ヲ併用シ一戸一人ノ漏レナキ様一般ニ充分納得徹底セシムル等ノ方途ヲ講シ所持者ヲシテ進ンテ提出セシムル様配意セラレ度 ロ 在郷将校ニ対シテハ失官セザル限リ其ノ所持スル軍装用私物刀剣拳銃等ハ本措置ニ依リ強制スルハ妥当ナラザルヲ以テ此ノ機会ニ於テ特ニ懇切説得シ進ンデ提出スル様配意セラレ度 ハ 美術的骨董的価値ナキ日本刀ノ所持者ニ対シテハ別添様式ノ提出書ヲ作製シ日本刀提出ノ際之ヲ添付セシムルコト ニ 美術的骨董的価値アル刀剣ノ所持者ニ対シテハ別添様式ノ届出書ヲ作製ノ上届出セシメ刀剣ハ此際特ニ所持者ニ於テ保管ヲ厳重ニシ盗難紛失等ノ事故ナキ様厳ニ注意セシムルコト ホ 所持者ニシテ隠匿其ノ他ニ依リテ提出ニ応ゼザルトキハ直接連合国官憲ニヨリ強制セシメラルヽコトアルベキニ付一般ニ注意スルコト 『協議事項』 一 武器供出 〔欄外注記〕指揮刀警察へ寄附され度し(かくされると困る) 二 連合軍接遇 〔欄外注記〕子供が物をねだる闇取引 三 慰安施設 〔欄外注記〕婦女子に対する暴行を措止する 藤沢「新地」七〇人大和に新設す 茅ケ崎方面は考慮中 四 放出物資ノ措置 〔欄外注記〕二十五日ニ出ス 五 警備力ノ強化ニ関スル件 〔欄外注記〕基地ニ千名来リシガ五千名増加セシメル 警防団ヲAuxiliaryc.p.トス 巡査毎月一〇〇名(藤沢署ガ供出スル) 毎週月午前九時一〇〇円(初任給) 復員軍人 中少尉―警部補 大尉少佐―警部中大佐―警視 ◎「連合軍ノ進駐管内ニ立入ラザルコト」射殺サレル 六 土産品ノ販売所開設 〔欄外注記〕商工協会古物商二箇所 (湘南中学校「マ司令部指令綴」(昭和二十年)神奈川県立湘南高等学校蔵)〔注一~四〕別添省略。 〔注〕別紙に湘南中学校教員三一名の署名捺印がある。 一三三 神社への寄進行為等禁止および注意の件 通牒(一-二) ㈠ 二十二中総収第一六三号 昭和二十二年二月七日 中地方事務所長 各町村長殿 神道指令違反について 神社の奉納金、祭典費等募集について、昭和二十一年八月二十一日附二十一教第一九七六号を以て、町内会、部落会、隣組等が之に支援を与へたり。 又は此らの機関を利用しないように通牒したが同年十一月六日附を以て連合国最高司令部より更に禁止指令があつたので、重ねて十二月六日附を以て中総収第一、三〇四号を以て、此の種の違反は勅令三一一号が適用されるから違反のないよう取締られるように通牒して置いた。最近千葉県下の氏神、八幡神社の神輿製作に当り、此らの通牒に違反し町内会役員が寄附募集に関係した事件があり、千葉地方検事局に於て取調べた結果、通牒の趣旨を知つていたにもかゝはらず町内会長及び神社の総代が、町内会、隣組等の集会や回覧板を利用し、又寄附を強要した事実が判明し、町内会長、副会長二名及び神社総代一名が夫々起訴され罰金刑の求刑があつたのであるが今後もこの種の違反は容赦なく摘発されるから貴内の神社及び下部行政機関に対し、一層注意を喚起し、違反のないよう充分に注意せられたい。 (大山町役場「庶務書類」(昭和二十一年)伊勢原市役所蔵) ㈡ 中学第一五号 昭和二十三年一月十八日 神奈川県中地方事務所長 各学校長町村長殿 神道指令の履行徹底について 最近神道指令に関し左記のような事例が各地に頻発しているがこれらは何れも同指令の条項に違反するものであり関係方面より注意があつたので今後これに類似する事件が発生しない様一段と注意を加へられ度い。 尚貴管下一般に対しても十分注意を喚起せられ度い 記 某庁で某神社の大祭に当り、地方事務所等の地方公共団体の機関が其の名のもとに祝賀の意を表する広告を地方新聞に掲載した。 国鉄某駅の竣工式を神道式により執行し所在地市長等公職者が公の資格でこれに参列して玉串を奉奠した。 某神社で氏子崇敬者でない住民に対し総代をして氏子と同じ様な負担金を強制的に徴募させようとした。 備考 国家神道、神社神道に対する政府の保証支援保全監督及弘布の廃止に関する件 (昭和二十年十二月十五日連合国軍最高指令総司令部参謀副官発第三号日本政府に対する覚書) (神田村立神田小学校「指令綴」(昭和二十年)平塚市教育研究所蔵) 一三四 旧大政翼賛団体等解散団体の資産接収の 件通牒 二十一下総第一一八九号 昭和二十一年十二月十六日 足柄下地方事務所長 各町村長殿 解散団体の資産接収について 十一月二十六日勅令第五七〇号を以て大政翼賛会及び其の関係団体の資産(帳簿、書類及び記録を含む)はその取引、散逸を禁止せられると同時に政府に接収されることゝなつたから不当処分等のないやう貴町村内関係団体の責任者又は事務担当者に対して厳重注意を与えられるよう命によつて通牒する。 追つて大政翼賛会の関係団体とは左記の通りにつき為念申添える。 記 一 大政翼賛会の関係団体1 大政翼賛会興亜総本部2 大日本翼賛壮年団3 大日本産業報国会4 商業報国会5 日本海運報国団以上各団体の郡市又は警察署単位 6 農業報国連盟以上の系統団体 7 大日本婦人会8 大日本青少年団9 大日本労務報国会10 機械化国防協会(仙石原村役場「庶務書類」(昭和二十一年)箱根町役場蔵) 一三五 戦後国民貯蓄増強方策に関する件説明 「昭和二十年十二月 戦後ニ於ケル国民貯蓄増強方策ノ内容説明 神奈川県」 神奈川県 戦後ニ於ケル国民貯蓄増強方策ノ内容説明 昭和二十年九月十一日附閣議決定ヲ以テ戦後ニ於ケル国民貯蓄増強ノ重要性ハ闡明セラレ、其ノ新ラシキ目標ヲ皇国ノ護持新日本ノ建設、悪性「インフレーシヨン」ノ防止ニ置キ、戦争中ニ増シテ更ニ一段ノ努力ヲ払ハサルヘカラサルコトヽナレリ、而シテ之カ増強方策ハ同年九月二十八日附国民貯蓄奨励委員会ノ答申ニヨリ決定セラレタルガ今其ノ内容ヲ具体的ニ説明スルコト次ノ如シ 先ツ本文ニ述ヘラレタル要点ハ (イ) 過去八年ニ近キ貯蓄運動ノ経験ヲ生カスコト 右ハ戦後ニ於ケル貯蓄運動開始ニ当リ与ヘラレタル前提条件ニシテ若シ国民ヲシテ再建ニ対スル熱意ヲ燃ヤサシメ得ルニ於テハ既ニ習慣的トナレル貯蓄ヲ引続キ実行セシムルコト敢テ難キニ非ストモ謂ヒ得ヘシ、然レトモ八年ノ歳月ハ亦国民ニ貯蓄ニ対スル嫌圧感ヲ与ヘタル傾アルヲ以テ、従来行懸リ其ノ他ノ関係上改メ得サリシ諸問題ニシテ斯ル感情緩和ニ資シ得ヘキモノハ須ク此ノ機会ニ断乎是正セサルヘカラス、採長補短ノ意味ニ於ケル過去ノ経験ノ活用ハ固ヨリ言ヲ要セザル所トス (ロ) 新事態ニ適応スル新鮮ナル企画構想ヲ凝スコト 戦後ニ於ケル貯蓄ト雖モ其ノ実質ハ戦争中ノソレト何等撰フ所ナキモノナルヲ以テ引続キ之カ実践ヲ国民ニ要請セントセハ凡ユル外的条件ノ変化ヲ考慮ニ入レ新事態ニ相応シキ企画構想ニ基ク施策ヲ講シ国民ヲシテ成可新タナル感触ヲ以テ之ヲ受取ラシムル様措置スルコト肝要ナリ (ハ) 他ノ経済諸施策ト常時緊密ナル連絡ヲ採ルコト 貯蓄ハ悪性「インフレ」防止ノ為最有力ナル手段ナルモ猶其ノ一手段ナルコトヲ忘ルヘカラス、他ノ経済諸施策ト相俟ツテ初メテ所期ノ効果ヲ達成シ得ヘキモノナルカ故ニ常時此等ト緊密ナル連絡ヲ保持スルニ非レハ殆ト其ノ意味ヲ成ササルモノト謂フヘシ即チ貯蓄増強ノ為他ノ施策ニ変更ヲ求ムルノ要アル場合アルヘク又他ノ施策ノ効果ヲ挙クル為貯蓄施策ニ於テモ特別ノ配意ヲ要スルコトアルヘシ、凡テハ総合的見地ニ立ツテ善処スヘキモノトス 尚右連絡ニヨリ常時政府資金ノ撒布産業資金ノ放出其ノ他資金ノ移動経路ニ注意シ適時ニ之カ捕捉吸収ヲ図ルコト亦留意ノ要アルモノトス (註) 世ニ貯蓄増強ノ要諦ハ食糧ノ確保ニアリトシ或ハ配給ノ適正物価ノ低落ニアルト説ク者多シ、一応至言ナリ然リト雖比等カ完璧ニ実ヲ見タル暁ニハ国家的見地ニ於ケル貯蓄奨励ハ殆ト其ノ必要性ヲ失フヘク此等ノ施策ノ実現容易ナラス、又之ヲ実現セシムル為ニハ民間ノ過剰購買力吸収ノ要アルモノニシテ此ノ意味ニ於テ貯蓄ノ重要性ヲ理解スヘキモノトス、換言スレハ一切ノ諸施策ハ並列推進セラレテ初メテ所期ノ効果ヲ挙クヘク、単ニ一施策ノ推進ヲ以テシテハ真ノ成果ヲ庶幾シ得ヘキニ非ス、故ニ甲ノ施策ニ対シテハ何等ノ努力ヲ払フコトナク其ノ一切ヲ已ノ施策ノ徹底ニ委スルガ如キ態度ハ所謂問ヲ以テ問ニ答フルノ類ナルへシ、要之本文ニ示サレアルカ如ク貯蓄施策ト他ノ経済諸施策トノ連絡強調ハ最肝要ナルモ、同時ニ貯蓄ノ増強ハ金ト物トノ不均衡テフ異常的経済状態是正ノ手段タルノ本質ヲ銘記スル要アリ尚一部ニハ貯蓄増強ノ為ニハ各人ノ給料ノ引上ヲナスヘシトノ意見アルモ、勤労増生産増ノ結果トシテノ収入増ナルニ於テハ格別、単ニ名目的ナル収入引上ニヨル貯蓄増加カ殆ト意味ヲ成ササルハ詳説ノ要ナカルヘシ(ニ) 国民心理ノ動向ニ深ク留意スルコト 貯蓄ハ他ノ多クノ施策ト異ナリ法律ニヨリ強制力ヲ伴ハサルモノナルヲ以テ国民ノ真ノ協力ヲ得サル限リ殆ト何等ノ効果ヲモ庶幾スルコトヲ得ス如何ニ優秀ナル立案ト雖国民心理ノ現実ノ動向ニ逆行スルニ於テハ成績ノ挙揚ハ毫末モ期シ得ラレサルモノトス、此ノ点関係者一同深ク銘記セサルヘカラス特ニ今後連合国家ノ問ニ生スヘキ諸問題失業ノ激化其ノ他国内経済面ニ予想セラルヽ諸事態ト関連シ身心困憊ノ状態ニ於テ敗戦ニ直面セル国民ノ心理ハ必スヤ微妙ナル変化ヲ惹起スヘク、貯蓄施策ノ根底ハ常ニコノ心理ノ把握ニ之ヲ置カサルヘカラス然リト雖国民ノ心理ハ必スシモ固定的ナルモノニ非スシテ宣伝啓発ノ方法如何説明ノ良否、貯蓄手段ノ適否等ニヨリ成果ハ相当大幅ニ左右セラルヘキ弾力性ヲ有ス、故ニ国民ノ心理ニ全然逆行スルガ如キ施策ヲ排スルト共ニ右ノ点ニ深甚ノ注意ヲ払ヒ其ノ動向ニシテ順調ナラハ順調ナルカ如ク逆調ナラハ逆調ナルカ如ク夫々適切ニ対処シ須ク努力ヲコノ面ニ傾倒セサルヘカラズ (ホ) 貯蓄ノ質ノ向上ニ特ニ努力スルコト 戦争中ノ貯蓄ハ戦費ノ調達ヲ旗印ニ掲ケタル関係上量ノ増加ヲ主眼トシ之カ為一面ニ於テ相当ノ効果ヲ挙クルト共ニ他面可成ノ弊害ヲ斉セリ、之ニ対シ戦後ノ貯蓄ハ悪性「インフレ」ノ防止ヲ眼目トスルモノナルヲ以テ質ノ向上ニハ特別ノ関心ヲ払ハサルヘカラス、固ヨリ一定量ノ貯蓄ノ獲得ノ必要ナルハ言ヲ俟タサルモ、従来動モスレハ質ノ面ヲ軽視セル傾向顕著ナリノ故ニ今後ハ特ニコノ面ヲ強スルノ要アリ而シテ質ノ向上ニ付テハ考慮スヘキモノ多キモ其ノ最大重点ハ之ヲ応能ニ置クヘキモノトス、以上ヲ絶エズ念頭ニ置キツヽ貯蓄ノ増強ニ努力スヘキモノニシテ之ガ為採ルヘキ方策トシテ一応次ノ十二項目ヲ掲ケラレタリ、勿論右ハ大体ヲ示スニ止マリ事態ノ推移ニ処シ大々補正ヲ要スヘキハ言ヲ俟タス、以下方策各項目ノ意味スル所ヲ個条書ノ形式ニヨリ解説セントス 一 宣伝啓発ノ指導方針 第一 (イ) 宣伝啓発ノ重点ヲ先ツ悪性「インフレ」問題ニ置クコト 但シ時ト所ニヨリ或ハ発生ノ危険ト惨害ヲ説キ、或ハ防止可能ヲ強調スル等之ニヨル逆効果ノ招来ヲ充分注意スルコト、一般的ニ云ヘハ後者ノ強調特ニ国民一致シテ貯蓄ニ協力スレハ防止可能ノ所以ヲ懇切且具体的ニ説明スルヲ可トスヘキコト 尚将来ニ於ケル民需物資ノ出廻、財政負担ノ縮減、失業ニヨル賃銀低落等ノ関係ヲ説明シ中途ノ起伏如何ニ不拘結局物価ハ下落シ通貨価値ハ必ズ向上スベキコトヲ国民ニ確信セシムル様常ニ留意スルコト(コノ確信ヲ国民ニ植付クルコトヲ得ハ戦後ノ貯蓄運動ハ半ハ既ニ成功セルモ同然ナルベキコト) (ロ) 戦時中ニ於ケル国民貯蓄増強ノ効果ニ付テハ各方面ニ疑問ヲ有スル向多キヲ以テ常ニ其ノ蒙ヲ解クニ努ムルコト、右ハ戦後ニ於ケル貯蓄ノ役割ヲ知悉セシムルニ間接的乍ラ大ナル寄与ヲナスヘキヲ以テ相当ノ努力ヲ注クヘキコト 尚預貯金ノ引出制限(モラトリアム)平価切下、国債ノ将来等ニ付不安ヲ抱ク国民不尠ヲ以テ之ヲ平易ニ解説シ貯蓄増強ノ障害ヲナス前提ノ除去ニ努ムルコト (ハ) 従来ノ命令的ナル訴へ方(例ヘハ「貯蓄セヨ」)及感情ト結付クル訴へ方(例ヘハ「勝ツ為」)ヲ可成少クスルコト 反面国民ノ理性ニ訴フル訴へ方ヲ多クシ、可成結論マテヲ示サス途中マテノ過程ノ解明ニ止メ、結論ハ国民自ラ之ヲ下スカ如クシ、真ノ納得ニヨル協力ヲ促スニ努ムルコト 此ノ点官庁方面ヨリ直接国民ニ呼掛クル場合ハ特ニ注意スルコト (ニ) 今後貯蓄政策全体ハ著シク個人経済本位利益誘導本位ニ転向セラルルコトヽナルヘク、コノ面ヲ強調シ不可ナキ場合アルヘキモ右ハ多クハ個別勧奨ノ場合又ハ金融機関側ヨリスル場合ニ限ラルヘク其ノ他ノ場合ニアリテハ之ヲ表面ニ出スコト概ネ適当ナラサルヘキヲ以テ依然国家本位ヲトルノ要アルヘキコト 尚国家本位ニ説クニ当リテモ可成貯蓄ヲ表面ニ出サス、勤労、節約、買漁ノ抑制(已ムヲ得ス購入スル場合ニアリテモ可及的安価ニ之ヲ獲得スルノ要アルコト)価格、配給等ニ関スル統制ノ遵守ノ如キ面ヲ強調スル方効果的ナル場合多カルヘキコト (ホ) 宣伝啓発ノ実施ニ当リテハ努メテ新機軸新構想ヲ尚ヒ、或ハ特定事項ニ付一括シテ民間ノ専門家ニ委スル等ノ方法ヲ講シ、少クトモ宣伝媒体ノ異ナル毎ニ夫々専門家ノ意見ヲ徴スル等官僚独善ノ弊ニ流レサル様注意スルコト 尚民間側ノ諸団体及貯蓄取扱機関ニ対シ従来ニ倍スル活溌ナル宣伝啓発ヲ求ムルコト 二 宣伝啓発ノ指導方針 第二 (イ) 貯蓄及悪性「インフレ」防止ノ問題ハ時ト所ニヨリ更ニヨリ高邁ナル見地ニ於テ之ヲ力説スル必要アル場合不尠ルヘキコト、コノ場合ニ於テハ概ネ次ノ如ク解説スルコト 1 一朝悪性「インフレ」到来セハ之ニ利益ヲ受クルハ国民ノ一少部分ニ過キスシテ最大部分ハ其ノ生活ヲ破壊セラルヽコトヽナルノミナラス今ヤ国民ノ資産ハ大部分資金ノ形態ニ依リ蓄積セラレ居ルヲ以テ之ヲ無価値ナラシムベキコト従ツテ貯蓄ニ精進スルハ国民カ一致協力シテ自ラノ生活ト資産トヲ防衛スル所以ニ外ナラサルヲ以テ其ノ道義的責務ト称スベキモノナルコト故ニ一身一家ノ目前ノ利害ニ拘泥シ貯蓄ニ協力セサルモノハ国民共通ノ利益ノ毀損者ニシテ道義新日本建設ノ防害者トモ称スベキ筋合ナルコト 2 今後予見セラルヽ失業等ニ想到スレハ個人経済ノ立場ヨリ見タル貯蓄ノ必要性亦戦時中ヨリ増大セリトナスヘキコト更ニ新日本ノ基本条件カ文化、道義、平和ニアリトスレハ平和的社会建設ノ為ニハ国民各自カ恒産アル建全ナル平和的家庭ヲ営ムコトヲ絶対条件トナスヘク、又コノ条件充タサレタル後ニ於テ初メテ文化国家道義国家ノ建設ハ可能トナルヘキコト故ニ貯蓄ノ実践ハ新日本建設ニ不可欠ノ方途ナルコト(尚別掲六及八項参照)3 真ノ皇国護持ヲ期センニハ世界史上ニ前例ヲ見サル武装ナキ理想国家ヲ建設シ以テ人類永遠ノ平和確立ニ範ヲ垂ルヽヲ大目標トセサルヘカラサル処現在ニ於ケル皇国ハ文字通リノ弧立無援、僅ニ大和民族ノ相倚リ相扶クル以外何等頼ムヘキモノ無キ状態ニ在ルモノナルカ故ニ此ノ際ニ於ケル悪性「インフレ」ノ激化、経済秩序ノ破壊ハ皇国存立ノ基礎ヲ危フスルモノナルコト (ロ) 本項ノ説キ方ヲナス場合ニ於テモ別項(一ノ(ハ)(ニ)(ホ)及三、尚六及八参照)ニ述ヘタル所ニ留意スルコト 三 国民運動ノ色彩ノ濃化 (イ) 官庁ハ極力舞台裏ニ引込ミ専ラ事務処理、指導者トノ連絡、資料ノ供給等ニ当リ実体ハ自ラ行フモノニアリテモ努メテ表面ニ現レサル様留意シ為ニ官庁カ無為ニ過シ居ルカ如キ批評モ之ヲ甘受シ結果第一主義ヲ以テ臨ムコト (ロ) 直接一般大衆ニ呼掛クル第一線ニハ極力民間団体及民間人、特ニ地方的ニ徳望アル者公正ナル判断者ト目セラルヽ者(例ヘハ学者)等ノ活躍ヲ要請スルコト 貯蓄指導員、表彰受賞者其ノ他第一線貯蓄指導者トノ連絡ヲ密ニシ之カ再教育ニ力ヲ致シ其ノ一層ノ活動ヲ求ムルコト 前記民間人ノ言動ニシテ大局ニ於テ誤ル所ナクンハ政府ノ施策ニ対スル若干ノ非難等ノ如キハ欣然黙過スヘキコト (ハ) 貯蓄ニ関スル凡ユル民間ノ着想工夫等ヲ歓迎シ其ノ採用可能ノモノハ着々採上ケ実行ニ移シ且之ヲ宣伝スルコト 言論報道機関等トモ連絡ノ上貯蓄ニ関スル批判ヲ旺ナラシメ民意ノ動向ヲ察スルト共ニ常ニ最末端ニ至ル迄ノ貯蓄施策ノ適否ニ付厳粛ニ自己反省ヲ行フコト (ニ) 全国ヲ通スル画一的運動ヲ可成避ケ、部分的、地方的運動ノ伝播ニ力ヲ致スコト同時ニ個人間団体間ノ公明ナル競争意識ノ刺戟ニ努ムルコト、要スルニ地方ニ於ケル貯蓄関係諸委員会ヲ改組シ民主的色彩ヲ濃厚ナラシムルコト出来得レハ悪性「インフレ」防止ノ為メ自主的国民運動展開ノ気運ヲ醸成シ貯蓄運動ヲ其ノ最有力ナル一翼タラシムル様仕組ムコト 四 貯蓄下部機構ノ再整備 (イ) 下部機構ノ基礎ハ之ヲ団体的相互推進体タル貯蓄組合ニ置キ当面ノ重点トシテ先ツ地域及職域ノ復興強化ニ努ムルコト、之カ為1 貯蓄組合ヲシテ単ナル貯蓄取纒乃至斡旋機関ニ堕セシムルコトナク進ンデ自主的ニ貯蓄心ノ積極的昂揚ヲ図ル機関タラシムル様工夫スルコト従ツテ組合運営、目標額樹立等ニ付テモ自主性ヲ加味スル等工夫セルコト 2 各種貯蓄指導員及貯蓄主幹ノ一層ノ活動ヲ求ムルコト 3 転入者多キ組合ハ速ニ之ヲ同化シ転出者多キ組合ハ従来ノ努力ヲ弱メサル様措置スルコト 転出入ニ依ル貯蓄目標額ノ機動的変更転出入ニ当リテハ貯蓄ヲ保持及連絡ニ付適切ナル方途ヲ講スルコト (ロ) 地方的実情ニ関シ或ハ隣保組織ノ強化ニ協力シ、或ハ学校方面旧婦人会組織、宗教家等ノ側面的援助ヲ求ムルコト 又各地ニ自発的ニ漸次勃興ヲ予想セラルヽ各団体ノ貯蓄面ヘノ全面的協力ヲ促スコト (ハ) 業域方面ハ比較的影響ヲ受ケサルモノト認メラルヽヲ以テ従来ノ方針ヲ踏襲強化スルコト 五 貯蓄取扱機関ノ機能ノ促進 (イ) 貯蓄政策ノ切替ニ伴ヒ貯蓄取扱機関ノ責任ノ倍加セルヲ強調シ幹部以下ノ奮起ヲ促スコト (ロ) 貯蓄取扱機関ノ間ニ於ケル公正ナル競争ヲ刺戟スルト共ニ資金吸収額ニ対スル責任体制ヲ確立スルコト、要スルニ之カ為必要ナル法規ヲ整備シ之ニ努力セサルヲ得サル様仕組ムコト 成績優秀ナル貯蓄取扱機関又ハ従業員ニ対シ公的ニ褒賞ヲ与フルコト (ハ) 貯蓄取扱機関ヲシテ貯蓄者ニ対スル便益供与ニ専心セシムルコト 1 店舗ノ増設………最近ノ人口異動等ニ伴フ再配置、簡易店舗、季節的店舗、共同店舗等ノ設置ヲ行フコト 2 集金勧誘制度ノ復活………特別褒賞制、或ハ小口ノ払戻等モ考慮スルコト 3 要員及資材ノ確保………画期的措置ヲ講スルコト 4 組合貯蓄其ノ他貯蓄取扱機関ノ採算上好マシカラサル制度ヲ励行シ及戦時中停止セル「サーヴイス」ヲ復活スルコト 5 窓口事務ノ親切敏速化………職員ノ再訓練ト幹部ノ陣頭指揮必要ニ応シ随時査察ヲ行フコト (ニ) 郵便局貯蓄ヲシテ大蔵省ト常時緊密ナル連絡ヲトラシメ従来ノ如キ弊害ノ頻発ヲ未然ニ防止スルコト 六 新生活ヘノ精進ト既存貯蓄ノ保持奨励 (イ) 帝国再建ノ為之ニ相応シキ生活運動ヲ旺ナラシムルコト 即チ 1 帝国ハ其ノ国力経済力ヲ損耗シ且世界ニ弧立無援ノ現状ニアリ之ヲ再建スルハ一ニ国民ノ勤労ト節約ニ俟ツノ外ナキコト、若シ此ノ際国民カ自暴自棄ニ堕スルニ於テハ日本民族ハ事実上滅亡ノ外ナキコト(例ヘハ食糧ノ輸入ヲ期待センニハ少クトモ之ニ代ルヘキ輸出物資ヲ国民カ生産スルノ外ナキモノナルコト)同時ニ右努力ノ結果獲得セラルヘキ国民生活ノ向上、将来ノ光明ニ言及スルコト 2 戦争継続ト仮定スレハ又敗戦ニ対スル各人ノ責任、戦災者、外地ヨリノ引揚民及帰還兵ノ状態乃至帝国々力ノ現状ヲ考慮スレハ此ノ際己独リ積極的ニ消費生活ヲ向上セシメントスルカ如キ態度ハ警沢以上ノモノナルコト、尤モ今後ハ民需物資ノ出廻リ充分ナルヘク国民ハ之カ分配ニ預リ生活向上スルコトハ勿論ナルコト 真ノ民主主義、真ノ自由ハ無責任ナル言論行動ヲ意味スルモノニ非スシテ各人ノ社会的責任遂行ヲ基礎トナスモノナルコトヲ強調スルコト 3 戦争中体得セル勤労尊重ノ観念、物資ノ愛護活用ニ対スル創意工夫ヲ戦後ニ生カシ生活ノ合理化科学化ノ方向ニ指導シ新日本建設ニ相応シキ生活設計ヲ樹テ常ニ貯蓄源泉涵養ニ努ムルノ風潮ヲ持続セシムルコト 4 勤労ト節約ニ付テハ単ニ之ヲ道徳的ニ理解スル従来ノ観念ヨリ飛躍シテ効果第一、能率第一主義トシ、最少ノ原料、資材、労務、資金、時間等ヲ以テ最大ノ成果ヲ挙クルヲ眼目トナシ以ツテ文化国家建設ノ基盤トナスコト 従ツテ勤労ニアリテハ単ナル勤務時間ノ延長労働ノ強化等ヲ尊重スルノ風ヲ排シ何ヨリモ出来栄エヲ重ンスルコト、節約ニアリテハ単ニ個人ノ家庭生活面ニ於ケルモノヽミナラス其ノ勤務先ニ於ケル物、人、金一切ノ節約ニ観念ヲ拡張スルコト 5 以上ニ付テハ専ラ生活諸団体、教化修養団体、宗教団体、新タニ組織セラレルヘキ婦人団体、青少年団体、等ノ活動ヲ求ムルコト但シ飽迄個人ノ立場ヲ尊重シ劃一的形式的統一ヲ避クルコト (ロ) 右(イ)ノ観念ハ之ヲ弘ク個人以外ノ国、公共団体、会社其ノ他ノ法人及諸団体ニ及ホスヘキコト、就中4ニ於テ特ニ然リトス 1 国及公共団体ハ卒先ノ意味ニ於テ此ノ際経費ヲ緊縮シ濫費ヲ慎ムヘキコト 2 会社等ノ浪費ハ戦争中個人ノ節約運動推進ニ甚大ナル障害ヲナセルカ将来我カ産業カ実力ヲ以テ国際場裡ニ活躍スル為ニモ斯ノ如キハ厳ニ戒ムヘキトコロナルコト言ヲ俟タサルカ故ニ産業合理化ノ運動ト並行シテ法人方面ノ節約ヲ強調スルコト (ハ) 今次ノ失業ハ従来ノソレト趣ヲ異ニシ戦争中相当ノ貯蓄ヲ貯積セル者不尠ヲ以テ勤労能力アルニ不拘既成貯蓄ニ依存シテ徒食生活ヲ営マントスル者ノ予想セラルヽ点ニ着目シ之ニ対スル方策ヲ講スルコト 1 (イ)ノ1ニ則リ勤労ニ厭ヒ容易ニ就カントスル風潮ハ亡国ノ途ナルコトヲ強調スルコト、尚所謂闇ブローカー的生活ヲ極力排撃スルコト 2 一旦既成貯蓄ヲ崩済ス習慣付クニ於テハ容易ニ脱却シ得サルモノトナルコト 註 但シ右ハ貯蓄取扱機関ノ窓口ニ於テ引出要求ニ対シ制限ヲ加フヘシノ意ニ非ス 此ノ点厳重ナル区分ヲ要ス 3 既存貯蓄ノ保存奨励ノ為特別ノ制度ヲ考究スルコト 七 割当貯蓄及組合貯蓄制度ノ整備 (イ) 所謂割当貯蓄制度若ハ組合貯蓄制度ハ其ノ貯蓄全体中ニ占ムル分量カ比較的小ナルコト、其ノ実施ニ当リ屡々摩擦ヲ生ズルコト貯蓄ノ重要性ヲ徹底セシムル使命ハ既ニ果シタルコト等ノ理由ニヨリ一部ニ之カ廃止ヲ唱フル意味アルモ、戦後ノ貯蓄ハ悪性「インフレ」ノ防止ヲ主眼トシ質ノ面特ニ国民全部ノ実践ヲ期待シ得ル制度ニ力ヲ注クノ要アリ、従テ現行制度ハ他ニヨリ効果大ナル制度ノ発見セラレサル限リ引続キ実施スルモノナルコト (ロ) (甲)現行制度ノ最大欠陥ハ其ノ運営自主的ナラサルコト形式的ノ劃一主義ニ堕セルコト、応能実践ノ実ヲ挙ケ居ラサルコト等ナルカ就中応能貯蓄ニ非ル限リ「インフレ」防止ニ対スル寄与ノ大半ヲ失フコトナルヲ以テ単ナル目標突破ヲ眼目トスルコトナク、右弊害ノ除去ニ全力ヲ注クコト 1 応能ノ徹底ハ形式ニヨラズ実践ニ即スルヲ主眼トスヘキコト 2 貯蓄者本人並貯蓄者相互間ノ真ノ納得ニ重点ヲ置クヘキコト 3 単ニ各人ノ間ニ於ケル応能ノミナラス隣保班間町内会部落会間貯蓄組合間市区町村間都道府県間ノ応能均衡ニ及スヘキコト 4 本制度所期ノ目的ニ鑑ミ最高ヲ一定限度ニ止ムルト共ニ最底ハ可成之ヲ引上クルコト (乙)無用ノ摩擦ハ極力之ヲ避クルト共ニ本制度ノ円滑ナル運営ヲ図ル為新事態ニ即応スル新工夫ヲ凝シ貯蓄者ヲシテ新タナル気分ヲ以テ再出発セシムル様措置スルコト 例ヘハ 1 指導者推進者ノ人選ニ再教育ニ力ヲ尽スコト 2 貯蓄者ヲシテ貯蓄ハ自己ノ資産ナリノ認識ヲ徹底的ニ把握セシムルコト、之ニ障害ヲ加フルカ如キ運営方法ハ速ニ改善スルト共ニ之ニ効果方法ハ之ヲ普及スルコト 3 非協力者ヲ説得スル自主的民主的組織ヲ考究スルコト 4 成績優秀ナル団体ニ対スル物的褒賞ヲ考慮スルコト (ハ) 現行制度中ニハ整理統合ヲ要スルモノ相当包含セラレ居ルモノト認メラレルカ之カ断行ニハ尚幾多検討ヲ加フヘキ点アルト同時ニ徒ラナル拙速ハ貯蓄心一般ニ稍衰退ノ今日其ノ重要性ヲ国民ニ認識セシムル上ニ於テ逆効果ヲ招クノ虞不尠ヲ以テ戦後貯蓄ノ実践カ軌道ニ乗シ趨勢ヲ組合セツヽ可及的速ニ実行シ得ヘキモノヨリ順次整理改変ヲ行フコト 註 具体的ニハ追テ別途決定ノ見込 八 所得変動ノ捕捉ト国民皆国民態勢ノ確立 (イ) 戦争中国民所得ノ分布状態ニハ著シキ変動有タルカ戦後ニ於テハ更ニ之カ変動ヲ生スヘキコト必至ノ情勢ニナルカ故ニ国民各階層ノ所得ノ変動ニ対シテハ不断ノ注意ヲ払ヒ早期ニ之ヲ把握スルニ努メ適時ニ適切ナル手段ヲ講シ戦争中ニ於ケル所謂新興所得者階層ニ対スル対策ノ不徹底ノ如キ轍ヲ繰返ササルコト 1 所得ノ急増セル方面ニ対シテハ可成早期ニ強力且適切ニ充分ナル貯蓄ノ実行ヲ求ムルコト、尚所得ノ種類ニ応シ劃一的ナラサル様注意スルコト 註 差当リ右ニ該当スト認メラルルモノハ都市附近ノ農家闇ブローカー、人口異動ニ伴フ貸家、貸間収入者(一部)進駐軍相手ノ商業者等 2 戦後ハ課税ノ対象トシテハ大ナル担税力ヲ庶幾シ難キモ貯蓄ノ対象トシテハ恰好ナルノミナラス動モスレハ浮動化シ易キ各種ノ収入(例ヘハ戦争保険金、退職金、不動産売却代金等)ヲ得ル向不尠ヲ以テ常ニ此等ヲ捕捉注意スルコト、此等ニ対シテハ貯蓄等個人経済トノ繋リ今後ニ於ケル失業関係等ヲ説キ又貯蓄取扱機関ノ方面ヨリスル勧誘ヲ主トスルヲ可トスヘキ場合多カルヘキコト 3 戦災者(外地現地ヨリノ復員軍人及引揚民等ヲ含ム)トソレ以外ノ者トノ負担ノ公正、今後凡ユル施策ノ一大重点タルヘキモノナルヲ以テ充分留意スルコト、但シ貯蓄ハ自己ノ資産ノ保存ニ外ナラサルヲ以テ戦災者ト雖モ区分スルノ必要ナキ場合尠カラサルコト (ロ) 戦後ハ所得ノ減少者続出シ之ヲ理由トシテ貯蓄ヲ顧ミサル者モ現ハルヘク此等ノ者ノ貯蓄額ノ減少ハ固ヨリ已ムヲ得サル所ナルモ、悪性「インフレ」防止ノ見地ニ於テ将又貯蓄ノ道義性昂揚ノ立場ヨリ貯蓄実践ノ努力ニ至リテハ必ス従来ノ程度ヲ弱メサル様要請スルコト 1 若シ戦後所得ノ増加スル者ハソレタケ生活ヲ膨脹セシメ、減少スル者ハ戦争中ノ生活ヲ続ケントスルカ如キ態度ニ出ツレハ悪性「インフレ」ハ必至ナルヘキコトヲ銘記セシムルコト 九 地方的資金吸収方法ノ創設 (イ) 一定条件ノ下ニ地方的ニ夫々実情ニ適セル資金吸収方法(例ヘハ特殊ノ債券、割増金付、預金、富籤等)ヲ考案セシメ依リテ吸収セル資金ノ一定部分ハ之ヲ当該地方ノ復興資金ニ充当セシムル方途ヲ講スルコト (ロ) 場合ニヨリテハ貯蓄総目標額ヲ超ユル実績ニ対シ其ノ超過部分ノ一定割合ニ付前号ノ趣旨ヲ適用スルコト 一〇 現金使用ノ節約 (イ) 戦時中ハ取引方法ノ変化空襲運輸通信ノ不円滑貯蓄取扱機関ニ於ケル資材要員ノ不足等ニヨリ已ムナク手持現金ヲ大ナラシメタル傾向顕著ナルモノアリシカ右ノ諸事情ハ今後漸次解消セラルルコトヽナルヘキヲ以テ此ノ機会ニ於テ極力現金ノ使用ヲ節約セシメ手持現金ノ減少ヲ図ルコト、之カ為考慮セラルル方法トシテハ1 振替払、小切手使用ノ普及 2 預貯金ノ預換及各店払預金小切手制度ノ周知 3 特殊小切手制度等ノ創設 (ロ) 戦後ニ於テモ各種ノ政府補償金其ノ他物ノ裏付ナキ資金カ巨額ニ放出セラレ其ノ内ニハ性質上源泉ニ於テ封鎖スルヲ適当トスルモノ不尠ニ依リ特殊決済制度ヲ之ニ拡張シ要スレハ多数債権債務ノ一括処理、譲渡、期間、金利等ニ新構想ヲ加フルコト 一一 物ト結付キタル資金吸収方策ノ新設 軍用地兵舎其ノ他国有ノ不用遊休不動産並ニ動産、住宅、電話、酒、煙草等ノ嗜好品、或ル種ノ生活必需品等ト貯蓄トヲ結付ケ、貯蓄券制度ヲ整備シ或ハ特殊料理店ヲ開設シ、或ハ戦災ヲ免レタル者ヨリ日用品ヲ提供セシメテ之ヲ戦災者ニ相当ノ代償ニテ分配スルト共ニ右代金ヲ貯蓄セシムル等ノ方法ヲ講スルコト 一二 富籖ノ活用 勝札制度ヲ根本的ニ改メ名称ヲ変更シ或ハ正賞又ハ副賞トシテ物ヲ附シ売出期間売出方法等ニ変更ヲ加へ、抽籤期日ヲ早メ或ハ買入即時当否ノ明白トナルカ如キ手段ヲ講シ又地方的ニ乃至売捌店別特別ナル富籤ノ発行ヲ得シムル等種々工夫ヲ凝シ其ノ活用ヲ図ルコト (仙石原村役場「国民貯蓄債券消化関係書類」(昭和十九年)箱根町役場蔵) 一三六 金融緊急措置等実施にともなう国民貯蓄増強の件指針 二十一下総収第五四二号 昭和二十一年六月二十三日 足柄下地方事務所長 各町村長殿 金融緊急措置等実施に伴ふ国民貯蓄増強方に関する件 金融緊急措置等の実施に伴つてインフレーシヨン激化の原因を成しつゝあつた過剰購買力は一応大幅に封鎖されたが封鎖預金等の現金支払許容限度と現金支払いを本則とする新規の収入所得に起因する購買力の浮動化の傾向等に依つて依然購買力の吸収は喫緊事であつて今回の措置の実施のみで通貨金融面よりのインフレ対策は万全であるとし既存貯蓄の払出のみを頼つて勤倹貯蓄の気風を喪失するやうなことがあれば本措置の最終目的は到底達成し得ないのみでなく将来に於ける経済再建乃至は新日本建設への努力は一朝にして画餅に帰してしまふことは論を俟たぬところであつてこの為国民貯蓄の増強は今後の重要施策の一として愈々徹底強化を図る必要があると考へられる。 ついては今般大蔵省で「金融緊急措置等実施に伴ふ国民貯蓄増強指針」を別紙の通り決定して施策の徹底を期することになり本県でもこれを概ねの方針として運動を展開することになつたから右の趣旨を徹底して実効を挙げるやう格段の御配意をお願ひする次第である。〔別紙〕 金融緊急措置等実施に伴ふ国民貯蓄増強指針 一 一般的事項 ㈠ 国民貯蓄の重要性 金融緊急措置等(以下本措置と称す)の実施に伴ひインフレーシヨン昂進の要因を形成しつゝあつた過剰購買力は一時大幅に封鎖されるに至つたが左に掲ぐるやうな事情から国民貯蓄は依然其の重要性を減じない。 ⑴ 本措置に依る過剰購買力の封鎖は絶対的完全な封鎖ではなく必要事情に基く必要現金等の払出は相当な範囲に於て認められてゐるのであるから此等が集積すれば相当巨額の顕現購買力となつて再びインフレーシヨン進行の素因を形成する虞あること而も本措置実施に伴ふ心理的影響等を考慮すれば許容限度内の封鎖預金等の最大限の払出傾向を生ずべき虞が多分にあること。 ⑵ 本措置実施後の新規の収入所得に付ても色々封鎖の措置は講じてゐるが一面物資供給等の現状よりすれば依然購買力の吸収は喫緊事であり他面産業再建の基盤たるべき資本の補塡及蓄積は将来に亘り不可欠の要件であつて此等の要請は国民貯蓄の増強なくして絶対に充し得ないこと。 ⑶ 本措置も貯蓄増強施策も究極の目的は一に帰すべきであつて何れか一方のみを以て完璧な効果を期し得ぬことは明白であるから苟も本措置のみに頼り貯蓄を軽視するが如きことあらばインフレーシヨン防遏の最終目的は到底完遂することが出来ぬこと。 ㈡ 国民貯蓄の重点 国民貯蓄増強施策は今後に於ても「戦後に於ける国民貯蓄増強方策」の線に沿つて運営せらるべきものであるが本措置に伴ひ特に左の如き事項に重点を指向することが肝要である。 ⑴ 勤労増進、生産増強、消費節約を主眼とする「生活再建貯蓄」の励行インフレーシヨンの徹底的防遏は単なる通貨金融面の施策のみを以てしては所期の目的を達成し難く益々勤労を増進し物資の増産を図り愈々消費の節約に努め生活の合理化を図ることを主眼とする「生活再建貯蓄」の徹底的励行に依つて初めて真の目的を達成し得べき点に留意し此の面に於ける積極的な施策を講ずること。 ⑵ 貯蓄に対する信頼感の再建 本措置に依る通貨金融面の緊急対策の影響として貯蓄の将来に対する疑惑不安感等を抱く傾向を生じたるは否み難い事実であるが今回の措置が窮迫せる事態に対処する己むを得ざる措置なることを卒直に鮮明すると共に将来に於ける財政経済再建の鍵は一に懸つて今後の貯蓄成績如何に依拠する点に付ての理解納得を確保するに努め右の如き疑惑不安感の一掃を期すこと。 ⑶ 封鎖預金等の温存及自由貯蓄の増強 預貯金等の封鎖は急迫せる事態の落着に至る迄の臨機の措置であつて其の性質上無制限且永久的なものでないから許容限度内の払出と雖も真に已むを得ざる場合の外は極力之を行はざる気風を醸成すると共に新規の収入所得に付ては封鎖せらるゝことなき自由貯蓄の方法に依り大いに之を増強すること。 (註)本措置に依る封鎖預金等の現金支払は新規の収入、所得乃至は自由貯蓄の払出を以てしては賄ひ切れぬ場合の救済方法であるから此の点を誤解し此の方法を最高度に活用せざれば不利益を蒙ると謂ふ如き観念の払拭に努むること。 ⑷ 新事態に即応する新生活運動 本措置の実施を契機とする国民生活の一大刷新は焦眉の急務なる点に鑑み此の際積極的なる生活の新設計国民生活擁護の為の新生活運動の機運を醸成すること。 尚都市生活者就中俸給生活者方面に付ては定期的給与の現金支給限度及封鎖預金等の現金支給限度等を併せ考ふるときは却つて生活費の膨張を来さゞるを保し難きを以て此等の点に充分留意し新生活の実践を特に強調すること。 (註)新事態に即応する新生活運動に関しては婦人団体方面の活動を促進し家庭主婦等に呼びかけを為すこと。 ⑸ 現金収入の累積せらるべき部面に対する貯蓄推進 例へば農山漁村方面、中小商工業(特に一般大衆を相手とする各種営業)交通運輸業方面、露店商、日傭労務者等は本措置の適用上他の部面に比し現金収入の獲得の機会多き点に鑑み此等の方面に於ける高度の貯蓄実践を期すること。 ㈢ 啓発宣伝の方向 本措置は事業の性質上謂はゞ抜打的に公布施行せられ極めて短時日の間に大半の事項を処理する如き建前をとりたる関係上之が趣旨並に取扱要領等の普及徹底に当り相当の困難性あるは当然にして特に貯蓄増強の為の宣伝啓発等の関係に於ては右の事情を充分考慮し誤たざる方向を採ることが必要である。 ⑴ 総合的宣伝啓発 貯蓄関係のみを切離しての啓発宣伝は時勢に適合せざることは明白であり且本措置も貯蓄施策も究極の目的を同じくするものなるに鑑み今後に於ては総合的施策をして宣伝啓発に努むること。 ⑵ 協議会、打合会、説明会等の開催及解説書の撒布 関係施策との関連に於ける貯蓄関係事項の宣伝啓発の機会を可及的多からしめ且凡ゆる機会を捉へて趣旨の普及徹底を図ること。 ⑶ 関係方面との連絡 本措置の実施そのものに関しては財務局金融機関等を直接の関係当局とするも市町村、町内会、部落会等の機能の側面より協力なくしては其の円滑なる運営を期し得ぬ事情並に右の地方行政下部機構の行ふ貯蓄事務の遂行も今回の措置と併せ考慮せねばならぬ事情を勘案し此等関係方面の一層の連絡協調を図ること。 ⑷ 自主的、自律的機運の醸成 本措置並に之と併行する貯蓄の増強の窮極の目的とするところは国民経済を破壊し国民生活を窮迫せしむるインフレーシヨンを断乎防遏し新日本建設の礎石を築き上げることに存するのであるから此の点に関する国民自身の理解納得を確保し全国民の自主的自律的なる協同態勢の下に効果の達成を図る如き機運を醸成すること。 二 細目的事項 従来の各種貯蓄施策の中本措置実施に伴ひ特に考慮すべきもの又新に考案を要するものを列記すれば概ね次の如くである。 ㈠ 二月期郵便局売出及特別消化国債の取扱 右に関しては情勢の変化に依り予定額の消化極めて困難なること及特別消化の対象となるべき資金移動も今後封鎖支払の方法に移行すること多かるべきを以て当期分は取敢へず中止すること。 但し今回の売出中止は応急の措置にして今後のものに付ては追而検討の上其の方針を決定するものとす。 ㈡ 現存する貯蓄債券、報国債券、福券、割増定期貯蓄の割増金及勝札宝籤の換金の支払方法は昭和二十一年三月二日迄は旧券に依り支払をなし三日以後は封鎖支払の方法に依るものとす。 尚今後に於ては自由支払の方法による宝籤の発売等を積極的に実施する方針なること。 ㈢ スピード籤の取扱 昭和二十一年二月二十五日以降三月二日迄は発売を中止し当籤金の支払は同年二月二十四日迄発売のものに付ては三月二日迄は旧券に依る現金支払三月三日以降発売の分は新円に依る現金支払をなすものとす。 ㈣ 国債又は貯蓄債券、報国債券の買上代金の取扱 封鎖支払の方法に依るものとす。(引揚を為す朝鮮人及中国人に付ても同様なること) ㈤ 合同貯蓄の取扱 封鎖せられたる合同貯蓄の貯蓄者が貯蓄の払戻を受けんとするときは当該貯蓄の代表者に請求して払戻請求書に払戻を受けんとする金額に関する証明を受け金融通帳を持参して許容限度の払戻を受け得ること。 ㈥ 代表者名儀に依る組合貯蓄の取扱 封鎖せられたる代表者名儀貯蓄組合貯蓄に関しては代表者以外の組合員が貯蓄の払戻を受けんとするときは代表者に請求して自己の貯蓄額及払戻を受けんとする額の証明を受け且当該貯蓄組合長の払戻の同意ありたる旨の証明を添へ当該預貯蓄金通帳及自己の金融通帳を持参して許容限度の払戻を受け得ること。 ㈦ 勤務先預け金の取扱 (イ) 受入者が現金を有する場合は許容限度の払戻を受け得ること。 (ロ) 受入者が現金を有せず封鎖預金等の払出を俟つて当該預け金の払出をなさんとする場合は既存債務の弁済として封鎖預金等の封鎖支払の方法に依り払出請求書の預貯金等に振替預入を為したる上当該本人より□。 ㈧ 国民貯蓄組合の運営 本措置実施後に於ても国民貯蓄は依然重要であり国民貯蓄組合の運営に付ても特別の変更を加へる必要はない。但し地域、職域等の組合の種類に応じ夫々の構成員たるべき者の本措置に依る経済的影響を充分考慮して適宜の措置を為す必要がある。 ㈨ 農産物等振替払制度の運営 農林畜水産部等の供出代金の振替払制度は今後も大いに普及せねばならぬ所であるが振替払の方法は本措置に依る封鎖支払と異り必要ある場合の払出は何等拘束を為さゞる建前であるから右を混同せざるやう留意して適宜の指導を為す必要がある。 (一〇) 臨時資金調整法第十条の二に依る臨時収入等の貯蓄化に関する取扱 右に該当する場合の中一部(例へば住宅購入代金等)は本措置に依る封鎖支払の適用を受くることゝなり貯蓄勧奨手続は不要となるが其の他の場合に付ては更に施策の徹底を図る要がある。 (一一) 新種貯蓄制度の拡充普及 新規の収入、所得乃至は封鎖預金等の現金支払に依る新円を以てする自由貯蓄は今後大いに増強を図る必要ある点に鑑み封鎖支払の方法に依らざる割増定期貯蓄、宝籤等の活用を積極化する方針なること。 (仙石原村役場「庶務書類」(昭和二十一年)箱根町役場蔵) 一三七 救国貯蓄運動要綱 救国貯蓄運動要綱 (神奈川県) 一 趣旨 新憲法の制定、食糧事情の好転等、経済の安定化に発足し得る客観的条件の熟しつゝある秋本運動によつて通貨に対する一切の不安を除去し、浮動購買力の吸収、退蔵現金の資金化、復興資金の確保等、貯蓄心の昂揚を図り民生の安定、経済の復興が一にかゝつて国民自らの努力にあるべきを自覚せしめ新日本経済建設への国民的気運の醸成を図らんとするものである 二 名称 救国貯蓄運動 三 期間 自 昭和二十一年十一月三日 至 昭和二十一年十二月三十一日 四 実施要領 本運動は「貯蓄増強に関する件」 (昭和二十一年十月十一日閣議決定)及びこれに基く「救国貯蓄運動方策」の趣旨に則り「救国貯蓄運動事業計画書」によつて実施するが、特に左の諸点に留意する ㈠ 民主的国民運動とすること 本運動は真に民主的な国民運動たるの実を挙げることを目途としこれがため通貨安定推進委員と充分連絡協調すると共に民間各種団体、各階層の幹部に対する趣旨の徹底を図り、その積極的協力を獲得すること ㈡ 貯蓄に対する信頼感の回復を図ること 再封鎖、平貨切下は絶対に行はざる、政府の根本方針を国民に周知徹底せしめ、巷間に流布されるデマの一掃を図り、通貨預貯金に対する国民の信頼感の回復を図ること ㈢ 金融機関の活動を支援すること 金融機関の資金吸収活動に対しては積極的にこれを支援し金融機関のサービスの改善事務の能率化等一般が貯蓄し易き態勢の整備に努力するやう常に勧奨すること ㈣ 国民の自覚心に訴へ貯蓄心の昂揚を図ること 現下の経済危機を突破し、新日本経済を建設するためには国民総てが勤倹力行し貯蓄によつて資本の蓄積を図ることを不可欠の条件とし、若し国民が貯蓄せざるときは通貨の増発を来すことゝなり国民自ら墓穴を掘るに等しきものなる所以を理解納得せしめるに努め高圧的な啓発宣伝は断じて採らざること ㈤ 応能貯蓄の実行を推進すること 国民総ての応能貯蓄の実行を推進すると共に所謂新興所得階層に対してはこれに適切な方策を以て資金の吸収、貯蓄増強を図り農漁村の売却代金は必ず貯金振替とすること (仙石原村役場「庶務書類」(昭和二十一年)箱根町役場蔵) 一三八 中等学校長常会通達事項 中等学校長常会通達事項 十二月二十一日 於一高女講堂 一 連合軍トノ関係事項ニ関スル件 (イ) 校内武器一掃ニ関スル件 (ロ) 校内外戦時色払拭ニ関スル件 集団登校 挙手敬礼 額 学徒隊表示 等 一 昭和二十一年度中等学校入学者選抜ニ関スル件 一   高等専門学校入学者選抜ニ関スル件 一 終戦ニ伴フ中等学校措置ニ関スル件 一 教員ノ解職並ニ再任用ニ関スル件 一 中央航空研究所教習部普通科在学者ノ編入ニ関スル件 一 科学教育用資材ニ関スル調査ノ件 一 引上ゲ学校職員ノ措置ニ関スル件 一 石炭需給事情逼迫ニ伴フ汽車通学生徒ノ措置ニ関スル件 一 総選挙ニ対処スル公民啓発運動ニ関スル件 一 婦人教養施設ニ関スル件 一 学校農場等ノ調査ニ関スル件 一 航空機関係発動機其ノ他備品棄却処分ニ関スル件 一 中等学校体操科研究会開催ニ関スル件 一 中等学校新教育相互研究会ニ関スル件(反省、今後ノ運営) 一 其ノ他雑件 午後 約一時間三十分 講演「日本ノ将来ノ範トナルベキ瑞典国」 大使館一等通訳官 坂部源吾 講演要旨 武力ナキ日本ノ将来ヲ如何ニスベキカ 世界最高ノ文化、最大ノ徳義ヲ誇ル平和、中立国瑞典ニ範ヲトルベキデアル 瑞典ノ現状ハ如何(講演者ハ一九三六年ヨリ三八年迄瑞典ニ在勤セリ) (湘南中学校「マ司令部指令綴」(昭和二十年)神奈川県立湘南高等学校蔵) 〔注〕別紙に湘南中学校教員二八名の署名捺印がある。 一三九 校長会議事項 一月十四日校長会議事項 一 御真影奉還ニ関スル件 二 教科用図書ニ関スル件 〔欄外注記〕補助教材ヲ印刷スル場合ハ英訳シテ許可ヲ得テカラスル(処罰サレル) 三 連合軍最高司令部ヨリ発スル指令ノ徹底方ニ関スル件 〔欄外注記〕小使室ノ物置キ整理 四 一雇傭方針ニ関スル件 〔欄外注記〕陸海軍人ニ対シテ優先的庸用任用ハダメ復員者ノ任命モ同様差控ヘルコト 五 公民啓発運動ニ関スル件 〔欄外注記〕◎報告ヲ要ス 婦人参政権ニ従ヒ婦人団体ニ新ラシク選挙権ヲ得タ男子 六 学校農事指導者講習会ニ関スル件 七 二十年度末教員異動ニ関スル件 〔欄外注記〕年齢勇退 高等官ノ退職者ハ二月十日マデニ県ニ提出 疎開ヤ戦災ノタメ学校ノ異動ガアル異動通勤者ノ便利ノタメ異動ヲ行フ 八 学校体錬科関係事項ノ処理徹底ニ関スル件 〔欄外注記〕一月十八日マデ報告 二〇、九、二九 教第一四〇九(公報)武器引渡シ令ニ対スル学校教練用 二〇、一一、二二 第一八八八号(公報) 学校ノ内外ヲ問ハズ集会、行進、敬礼、登校下校ノ方法ニ関シテ軍事的色彩一掃 道具ノ処理方 テツカブト 飯合 九 修身国史地理ノ科目及教科書取扱ニ関スル件 〔欄外注記〕時間割ヲ消ス 文部省ニテハ中止 教科書ハ集メルコト 修身ノ時間ヲ学力補充ノ時間ニ充テル 一〇 十月三十日以降ノ復員教員ノ勤務ニ関スル件 〔欄外注記〕勤務スベカラズ(但シ職ハ失職セス 教育作用ヲ行ハナイ) 一一 来年度中等学校進学志願者数ニ関スル件 〔欄外注記〕進学指導ヲスルコト 横中 三五一 三二 計三八九名 {横中 三八九逗子 三八六三浦 三三八鎌中 三〇八} 三中 二〇一 平農 二四八 県高女 三六一 市立高女一 三九二 市工 二四一 市立第二 二八七 県工 一六四 逗子三 一〇六 横商 一四六 □南 二八四 三崎水産 六 信証 五三 県立 一六二 楠葉 五五 商工 二九〇 湘南 三九九 一中 二六一 二中 三四二 横浜 県立一女 三二三 二女 一〇二 鎌倉市立 一六九 (〃私立 五九一 北鎌倉 八九 紅蘭 五三 一二 児童栄養素球ニ関スル件 〔欄外注記〕一〇〇錠―八円 県保健課へ申込ムコト 一三 其ノ他 〔欄外注記〕生徒ノ衣類ニ関スル件 正服 正帽 裁縫教材古利用 奨学金 中学校ニ進学 一月三十一日マデニ推薦状 一 青年学校教授訓練要目改正ノ件 二 甘藷増収競技会褒賞授与式ニ関スル件 三 青年学校特別視察ニ関スル件 四 馬鈴薯栽培研究校打合会ニ関スル件 五 大八車購入希望申込ニ関スル件 (汐入国民学校「往復文書綴」(昭和二十年)横須賀市立教育研究所蔵) 一四〇 教職員の教育研究協議会新設に関する件 通知 教育民生部長 地方事務所長横浜横須賀川崎市長殿 中等学校長教職員の教育研究協議会新設に関する件 教育の劃期的刷新の秋に当り米国教育使節団報告書の意向もあり教職員の自発的活動を促進しこれに方向を与へ積極的に協力出来るやうにとの意図の下に今般新に左記のやうな趣旨の教育研究協議会を設置することを勧奨する旨其の筋から通牒があつたのでこの会の健全な発達に御尽力願ひたい。 記 一 学校教職員会は従来学校長司会の下に行はれ教育上の諸問題が研究協議せられ相当の成果を挙げつゝあるのであるが学校教育民主化促進の見地から之と別箇に学校長司会によらざる教職員の自主的な会合が作られ定期的な集会をして教育上の諸問題を研究協議することが望ましい。この教育会を教育研究協議会(以下協議会と略称する)と称しその運営に関しては次の如き注意が必要である。 二 協議会は各学校単位に設け教職員自らに依る自からの再教育機関として新教育方針の徹底教育内容及方法の刷新充実を図ることを目的とすること。 三 協議会は教職員各自が学術的建設的な立場に於て自由に忌憚なく意見交換し活発に研究協議出来るやう運営せられること。即ち言論と研究の自由が尊重せられると共に責任の自覚と協同の精神とを以て民主的に運営せられること。 四 協議会は各学校の現教職員を以て会員とすること。 五 協議会の組織研究題目の選定司会者等については会員自ら協議決定すること。 六 協議会には学校長は参加しないが会員の希望ある時は特定の会議に加はることが出来る。 七 研究協議は夫々の学校に於て具体的な重要な教育上の問題を捉へて科学的実際的に行はれその結果が夫々の学校の父兄児童生徒の要望に応ずるやうなすべきこと。 八 協議会は概ね次のやうな事項につき研究協議すること。 1 会員の研学修養 2 教育関係法令通牒等の趣旨の検討とその学級への導入 3 学校行事と児童自治 4 児童生徒の必要に応ずる為の教科課程、日課表、教材等の研究 5 民主教育の原理と方法、科学的考査方法 6 訓育、保健上の諸問題 7 児童、生徒環境等の調査と生活指導 8 学校教育設備 9 社会教育 九 協議会は学校長の協力機関たるの本分に則り研究協議せる所に基き学校長に報告し或は有益な提案をなし学校長は之を尊重しつゝ自らの責任と権威を以て学校の運営に当ること。 一〇 協議会はその研究協議した事項の中特に重要なものは文部省に上申する事。学校長は必要と認むる時は之を地方庁に進達すること。 一一 協議会は或は研究部門別に他の教育諸会の事業と結合し或は更に師範□□青年師範学校をはじめ各専門学校大学等の教職員研究室とも連繋してその目的を達成するやう努めること。 以上 (湘南中学校「マ司令部指令綴」(昭和二十年)神奈川県立湘南高等学校蔵) 一四一 復員軍人の教育職復帰又は採用等に関する件通知 二一高学収第四一一号 昭和二十一年七月二日 各国民学校長各青年学校長高座鎌倉地方事務所長 殿 復員軍人の復職又は採用等に関する件 標記の件について連合国最高司令部より別紙写の通り指令がありま したので御承知の上遺漏なく実施して下さい。尚この指令は昨年十一月一日附二〇秘収第一六〇一号(教育者中ヨリ本業トシテ陸海軍人タル経歴ヲ有スル者等整理ニ関スル件)及び本年一月十七日附二一教第四一号(復員軍人ノ復職又ハ採用ニ関スル件)の通牒の一部が解除されたものでありますがその復職又は採用については審査をうけなければならない。該当者は五月七日附で公布された教職員適格審査の関係法令に基いて審査の上措置されるのであるから左記事項参照の上よろしく御取計ひ下さい。 記 一 教員は職の如何に拘らず凡て審査をうける。 昨年十一月一日附二〇秘収第一六〇一号及び本年一月十七日附二一教第四一号通牒に依つて授業を保留されてゐる者及び復員軍人で新に教職につかうとする者は凡て他の一般教員の場合と同様五月七日附の教職員適格審査に関する規定の適用を受け同日附閣令、文部省令、農林省令、運輸省令第一号別表第二に掲げてある範囲に属する者は当然不適格者として教職につけないことになる。それ以外の者は適格審査委員会の審査をうけ適格の制定があつた場合には授業を担当することが出来又新に採用せられることが出来る。 二 教育関係官公吏等で本年五月七日附閣令、文部省令、農林省令、運輸省令第一号別表第三に掲げてある者は凡て審査をうける。昨年十一月一日附二〇秘収第一六〇一号及び本年一月七日附二一教第四一号通牒に依つて右職務に従事することを留保されてゐる者及び復員軍人で新に右職に就かうとする者も凡て一般教育関係官公吏と同様五月七日附教職員適格審査に関する規定を受け同日附閣令、文部省令、農林省令、運輸省令第一号別表第二に掲げてある範囲に属する者は当然不適格者として其の職に従事することは出来ない事になる。それ以外の者は適格審査委員会の審査をうけ適格の判定があつた場合にはその職に従事することができ又新に採用されることができる。右法令別表第三に掲げてある職以外の教育関係官公吏等は適格審査委員会の審査をうけないが適格審査に関する法令の趣旨に照し詮議し差支へなき場合に職務に従事することを留保されてゐる者は復職することが出来又新に採用されることが出来る。 三 官公私立学校の教職員の新規採用の場合は「便宜措置」として本年五月七日附閣令、文部省令、農林省令第一号別表第二の各項に該当しないと思料せられる者に限り取敢へず任用し任用後其の教職の適格不適格を審査すればよい。但し復員軍人の教職については本年五月二十二日附の連合国最高司令官覚書「復員軍人の教職従事に関する件」により必ず先づ審査を終了した後でないと就職することは出来ない。 (大野青年学校「往復文書綴」(昭和四-二十一年)相模市立図書館蔵) 〔注〕別紙省略。 一四二 教職員適格審査に関する件通知 二十二下学収第一二三号 昭和二十二年六月二十一日 足柄下地方事務所長(印) 中学校小学校青年学校長殿 教員適格審査に関する件 今般改正規定による標記委員会が六月二十日に設置され今後の新規採用者を審査する事になつたので爾后便宜措置として未審査者を採用する事は認められないから必ず審査済の者を採用する様念のため通知する。 尚先般校長会に於て指示の通り爾今未審査のものを採用したる場合に責任者は厳重なる処置をとられる事になつてゐるので遺憾のなき様留意されたい。 (西箱根青年学校「連合軍関係書類」(昭和二十一年)箱根町役場蔵) 一四三 昭和二十一年度母親学級開設要項 昭和二十一年度「母親学級」開設要項 一 趣旨 一般婦人ヲシテ終戦ニ依リ今後多難ナルベキ国民生活ニ処スル主婦若クハ母親タルニ相応シキ人格並ニ教養ノ向上ニ努メシムルト共ニ家庭生活ノ科学化並ニ公民トシテノ識見ヲ高カラシムルヲ以テ本旨トス 二 開設場所及主催者 成ルベク国民学校ヲ中心ニ開設シ学校長又ハ関係婦人団体等ニ之ヲ主催セシムルコト 開設ニ当リテハ国民学校教職員中ノ適当ナル者ヲシテ常ニ指導ニ当ラシムルコト 三 期間及時間 昭和二十二年三月末日迄ノ間ニ於テ毎月一定ノ日時ヲ選ビ開設スルコト 但シ地方ノ実情ニ応ジ業閑期等ヲ利用スルコト 尚今回ハ近ク施行セラルベキ総選挙ニ対処シ本年中ニ我ガ国体ト民主々義、立憲政治ノ本義、選挙ノ意義等政治教育ニ資スル題目ヲ選ビ施行スルコト 時間ハ一学級概ネ一〇時間乃至二〇時間程度トスルコト 四 対象 対象ハ一般婦人トシ一学級概ネ五〇名トスルコト 五 講師並講義内容 イ 講師 学識経験者中ヨリ広ク本学級ノ目的達成ニ適当ト認メラルヽ者ヲ選ブコト ロ 講議内容 人格ノ修養教養ノ向上ニ資スルモノ、子女教育ニ関スルモノ、家政家事科学ニ関スルモノ、公民的識見ノ涵養ニ関スルモノ、音楽体操映写会等趣味ニ関スルモノヲ適宜按配シ懇談会見学等有効ナル施設ヲ講ズルコト 六 開設上ノ注意事項 イ 開設ニ際シテハ関係諸団体ト緊密ナル連絡協力ヲ図ルコト ロ 開設計画決定ノ上ハ別記様式㈠ニヨリ二月五日迄ニ本施設終了後ハ直チニ別記様式㈡ニヨリ県教育課社会教育係宛報告書ヲ提出スルコト ハ 修了後ノ事後輔導ニ関シテハ適当ナル施設ヲ講ズル等適宜ノ措置ヲ講ズルコト 七 学級数及経費 イ 貴管下ニ於テ実施スベキ学級ハ二学級トス ロ 終了報告書ノ提出ヲ俟チ本学級ニ要セル経費ニ充ツルタメ一学級ニ付金五十円ヲ交付ス ハ 尚右開設ノ経費ニ関シテハ開設者、主催団体、関係市町村ニ於テモ成ルベク之ヲ分担シ其ノ実情ニ応ジ多数開設シ且ソノ内容ノ充実ヲ図ルコト 別記様式 ㈠ 昭和二十一年度「母親学級」開設予定報告書 主催者 (学校又ハ団体)名 主催責任者 職氏名 別記様式 ㈡ 昭和二十年度「母親学級」実施報告書 主催者 (学校又ハ団体)名 主催責任者 職氏名 (仙石原村役場「庶務書類」(昭和二十一年)箱根町役場蔵) 一四四 昭和二十二年度母親学級開設要項 中学第一七〇号 昭和二十二年五月二十一日 中地方事務所長 市町村長 中学校長婦人会長 青年学校長女子青年団長 小学校長殿 昭和二十二年度婦人教養施設「母親学級」開設について 婦人教養施設としての「母親学級」が開設され関係者の格段の配意により施設の普及充実等見るべきものあるが本年は特に新憲法の実施に伴ひ婦人の地位教養の画期的向上を図るべき新事態に対処して「母親学級」施設の方針、内容及運営方法等全般に亘つて新しい構想の下に之が刷新充実を期する必要がある。 就ては当管内に於て「母親学級」二十一学級を開設する様本県教育部長より通牒があつたので左記御参照の上関係各位の御協議により郷土の実情に即して自由活溌に創意工夫に満溢した学級の開設を進められ其の企画運営に遺憾なき様期せられ度い。 昭和二十二年度「母親学級」開設要項 一 趣旨 新憲法実施と内外の情勢の重大な変化により婦人の地位教養の画期的向上を図るべき現状に対処して「母親学級」を開設し民主々義理念に基く生活を通じ婦人教養の向上を期せんとする。 二 開催場所並に主催者 小学校、中学校、公民館等を中心に開設し学校長は関係婦人団体等に之を主催せしめているが公民館の設置されている町村ではその教養部の事業としてもこの学級を開催する様配慮し市町村民が自分の責任に於て自主的に施設を推進させて行く様に図ること。 三 期間及時間 昭和二十三年三月未日迄の間に於て毎月一定の日時を選んで継続的に開設することゝし地域の実情に即して計画され度い。 四 対象 対象は一般婦人として特に婦人会母親の会等の指導的地位にある者概ね五〇名位とする事がよいと思ふが地域の実情に即する様にして婦人にのみ限ることなく町村内で教養を求める者があれば誰でも開放する様考慮せられ度い。 五 教養内容 1 新憲法精神の普及徹底並に生活化及遵法精神の涵養に関するもの 2 民主々義の解明に関するもの 3 公民的識見の涵養に関するもの 4 科学思想、文学、芸術及宗教等文化の諸領域に関するもの 5 家庭生活並に職業の合理化に関するもの 6 家庭教育並に純潔教育に関するもの 7 保健、衛生及体育に関するもの 8 其の他趣味、娯楽に関するもの 地方の実情に即して適宜按配し且つ懇談実習及見学等の方法によつて成るべく具体的に取扱ふこと。 六 講師 各関係官庁団体と連絡をとり学識経験ある者を広く求め本学級の目的達成に適当と認めらるゝ者を選ぶ。 七 開設上の注意 イ 開設に際しては関係諸団体と緊密なる連絡協力を図ること。 ロ 開設計画決定の上は別記様式㈠により六月五日正后迄、本施設終了後は直に別記様式㈡により当所学務課宛三通報告書を提出すること。 ハ 修了後の事後輔導に関しては適当なる施設を講ずる等適宜に措置を講ずること。 八 学級数及経費 イ 当所内に於て実施すべき学級は二十一学級(別表の通)とする。 ロ 終りに報告書の提出を待ち本学級に要する費用に充つる為一学級に一〇〇円を交付する。 模範母親学級には三〇〇円とする。 ハ 尚右開設の経費に関しては開設者、主催団体、関係市町村に於ても成るべく予算を計上し其の実情に応じ多数開設して内容の充実を図ることゝする。 別記様式㈠ 昭和二十二年度母親学級開設予定報告書 主催者 (学校又は団体)名 主催責任者 職氏名 別記様式㈡ 昭和二十二年度母親学級実施報告書 主催者(学校又は団体)名 主催責任者 職氏名 (平塚市立第二青年学校平塚市第二実務女学校「往復文書綴」(昭和二十二年)平塚市教育研究所蔵) 〔注〕別表省略。 一四五 公民啓発運動に関する青年常会開催の件通牒 二十一教第一一四号 昭和二十一年二月六日 教育民生部長 地方事務所長市町村長殿 公民啓発運動ノ一環タル青年常会ノ開催ニ関スル件 来ルベキ総選挙ニ当リ曩ニ部落別「公民の集ひ」ヲ開催セシムルヤウ指示致シ置キタル処更ニ部落会ノ特種形態トシテ青年層ヲ主体トスル政治討論会ノ如キモノヲ開催シ自主的ニ青年層ニ於ケル政治的関心ヲ昂揚セシメ度ニ就テハ之ガ成果ヲ期スル為格段ノ配意相成度此段依命通牒候 追而各学校長既設青年団体長等ニ対シテハ貴職ヨリ本趣旨ヲ徹底セシメ其ノ努力ヲ要請セラレ度 尚青年公論会ノ開催等ニ関シテハ別紙要領ヲ参考トセラレ度 〔別紙〕 「青年公論会」(青年常会)の開き方 一 民主主義の政治は国民個人の自由な意思を尊重することを第一義とし真に国民の総意によつて政治が行はれることを本旨とする。われわれは日常自分で政治上の問題其他生活全般について深く考へ研究し又他人の意見を聴き之を批判すると共に自ら自分の意見をも発表して他人の批判を求むる習慣と実力とを養ふことが必要である。特に将来の新日本を背負ふべき青年諸君は其の純情と良心と熱意とを以て民主主義的な日本甦生の礎石となつていたゞかねばならない。この要領は青年諸君が各々其の属するグループ(青年団、女子青年団或は青年を母胎とする読書会、修養会、文化会等の青年文化団体)に於て「青年公論会」といつたやうな集りを開く場合の参考のために示すものである。 二 会は大体五十人位を単位として集るのが適当で連合討論会等の場合は其れ以上となつても差支へない。この会には団員以外の市町村の主だつた人々或は一般の人々にオブザーバーとして加つて貰ふのもよく又団員の間に尊敬の的となつてゐる人に参加して貰つて指導して貰ふのもよい。 三 会の開催にあたつては大体次のやうな点に留意して青年特有の熱が会場全体に漲り活気横溢したものにせねばならぬ。 1 お互に新日本の使命について正しい認識を持ち青年の熱意と創意とを以て新日本を建設せんとする機運を盛にすること。 2 自己の周囲にあるいろいろの問題について研究調査の眼を開き生活と政治とのつながりをよく諒解して良心と自覚とを以て総選挙に臨む気慨を作ること。 3 自分の判断で物を考へ自分で考へたことを他人に発表する習慣を養ふと共に又他人の言ふことを尊重して他人の言葉から自己の立場を反省するやうな癖をつけること。 四 会の運営にあたつて特に注意すべき点は大体次のやうな諸点である。 1 あらかじめ当面の重要な問題の二、三を選んで討論の議題として適宜に意見のあるものから発言して充分にその意を尽させその後之等の意見に関連させて出来るだけ多くの団員に意見を発表させるやうにし参会者の全部が討論に直接関係あることを卒直に且つ簡明に述べて問題の解決に貢献し合ふやうにすることが大切である。 2 討論にあたつてはなるべく観念を弄ぶやうな抽象的論議でなく努めて其の地方に於ける具体的問題を例に引いてこれ等の正しい解決のためには如何なる政治が行はれ又地方民としてどんな心構と協力とがなされねばならぬかを中心にして論議をすゝめることが必要である。 3 討論の指導にあたつては司会者が自分の持つ意見を独断的に参加者に押しつけることを避け参加者と共に考へ共に論ずるといつた雰囲気を作ることが必要であつて特に故意に討論にケチをつけたり討論中全然沈黙したり或は枝葉に亘つてあげ脚をとつたりするもののないやうに努め全員が討論に参加する様な形で会を進めることが大切である。 4 選挙の問題については選挙運動と混淆されるやうなことのないやう討論中特定の政党又は候補者を支持し又は排斥するやうな印象を与へぬやうに注意せねばならぬ。 5 会の指導にあたつては出来る限り参考となるやうな小冊子等を配布又は回覧するとかして団員の関心を高め自分の意見を整理して会に臨むやうにすることも一方法である。 五 討論に上ざるべき議題としては次のやうな問題が考へられる。 1 選挙に於ては政見本位で選ぶべきか、人物本位で選ぶべきか 2 選挙は国民の権利なりや、義務なりや 3 理想選挙を実施する為の具体的方策如何 4 新日本建設のための青年の任務如何 5 国民の政治的関心を高める為の具体的方策如何 6 理想郷土を築く為にわれわれは何を為すべきか 六 会を終るに当つては団員以外に参加した主なる町村指導者又は団と関係の深い人の批評を求め或は之に関する一応の結論を聞かせて貰ふことが必要であらう。 (仙石原村役場「庶務書類」(昭和二十一年)箱根町役場蔵) 一四六 総選挙に関する公民啓発運動実施の件通牒 二〇教第八五〇号 昭和二十一年一月十一日 内政部長(印) 地方事務所長市町村長殿 総選挙ニ対処スベキ公民啓発運動実施ニ関スル件 標記ノ件ニ関シテハ客月十五日附同号ヲ以テ通牒致置候処貴管下ニ於テハ夫々右運動ノ展開ニ鋭意御努力中ノコトヽ思料セラルヽモ今般総選挙期日ノ延期ニ伴ヒ該運動ニ期間的余猶ヲ生ジタルヲ以テ此際一層ノ努力ヲ傾倒シ特ニ各部落会町内会ニ於ケル公民ノ集ヒノ開催方ヲ強力ニ取進メラレ以テ目的達成ニ一段ノ御配意相成度此段及通牒候 追而曩ニ配布致候紙芝居幻燈フイルム等ハ此際機ヲ逸セズ充分利用スルヤウ御配意相成度為念申添候 尚期間終了後ハ左記ニ依リ直チニ管内ニ於ケル実施状況報告相成度 記 (仙石原村役場「庶務書類」(昭和二十一年)箱根町役場蔵) 一四七 公民館設置運営の件通知 昭和二十一年八月十六日 高座鎌倉地方事務所長(印) 各市町村長殿 公民館の設置運営について 現下の国情を打解し新日本再建を図るためには国民の教養を高め道徳的知識並政治的水準を引上げつゝ町村自治体に民主々義の実際訓練を与へ科学思想の普及と平和産業の振興の基を築かねばならない。此の要請に応ずる為に郷土図書館公会堂町村民集会所等の設置計画が進捗し其の実現を見つゝあるもの少くない事はまことに欣ばしい事である。今般文部省に於ても此の種の計画があり町村公民館の設置を奨励してゐるので別紙に基いて郷土の実情に即応した自律的創意的な公民館の設置について指導奨励を加へられたし。 (大野青年学校「往復文書綴」(昭和四―二十一年)相模原市立図書館蔵) 〔注〕別紙省略。 一四八 社会教育関係事項情況調査に関する件通知 昭和二十二年四月十四日 横須賀市教育部長 各小学校長殿 社会教育関係事項情況調査ニ関スル件 社会教育ノ重要性ニ鑑ミ各般ノ施設運営上向上発展ニ努力セラレ其ノ効果ヲ挙ゲラレツヽ存ジマス 事務多端ノ折柄ナレド昭和二十一年度中ノ婦人教養「母親学級」、青年団、少年団、少年教化事業ノ情況承知致シ度左記、別紙様式ニ依リ四月三十日迄ニ社教水島宛報告セラレタシ 尚校下各青年団ノ報告ハ御手数ナガラ当校係員ニ於テ一括報告方相煩ハシタシ 様式一 昭和二十一年度婦人教養「母親学級」実施報告 主催者 (校名) 主催責任者 印 様式二 昭和二十一年度少年団々勢情況報告 (校名) 様式三 少年教化事業情況ニ関スル報告 様式ハ随意 (汐入国民学校「往復文書綴」(昭和二十二年)横須賀市立教育研究所蔵) 一四九 連合軍の教育関係等指令の徹底に関する件通知(一―二) ㈠ 二十一教第二三号 昭和二十一年一月十一日 内政部長 横浜横須賀川崎市長地方事務所長殿 連合軍最高司令部ヨリ発スル指令ノ徹底方ニ関スル件 連合軍最高司令部ヨリ発スル指令並ニ之ニ基ク具体的措置ニ関シテハ夫々御配意相成居ルコトヽ存スルモ往々其ノ趣旨徹底不充分ノ為現地進駐軍部隊ノ調査等ニ際シ指令内容ノ不知等ノ理由ニ依ル指令違反ノ事例尠カラズ向後指令部ニ於テ指令伝達ノ責任ヲ明確ナラシメントスル意向モ有之今後左記方法ニ依リ確実徹底セシメ洩レナク遵守セシムル様格段ノ御配意相成度此段依命及通牒候 尚既往ノ指令徹底方ニ関シテモ同様御取計相成度申添フ 記 一 当庁ヨリ送付セル連合軍最高司令部ヨリ発シタル指令写ヲ受領セル場合ハ其ノ受領月日ヲ別記様式ニヨリ回報スルコト 二 指令ノ内容ヲ管下各関係者全員ニ熟知セシムル様措置スルコト指令ノ各条項並ニ其ノ精神ヲ遵守スルコトガ各官各個人ノ責任トセラレアル場合ニアリテハ特ニ留意スルコト 三 管下各学校団体等ニ移牒ノ場合ハ学校長又ハ団体ノ責任者ヨリ関係職員全部ニ洩レナク徹底方措置スル如ク注意セラレタキコト 四 前項ノ移牒受領ニ際シテハ学校長又ハ団体ノ責任者ヨリ受領月日ヲ回報セシムルコト 別記様式 ㈡ 二十一高学収第五七九号 昭和二十一年十月二十四日 高座鎌倉地方事務所長 各国民学校長青年学校長殿 連合軍関係指令徹底に関する件 標記の件に関しては昭和二十一年四月十七日付通牒したが今回更に連合軍より左記の如き指令が来ましたので周知の上万遺憾なきを期せられたい。 記 文部省発行新教育指針附録マツカーサー司令部発教育関係指令参照の上 1 日本教育制度の管理についての指令 2 教育関係者の資格についての指令 3 国家神道についての指令 4 修身科国史科地理科についての指令 は常時見易き掲示板に通牒の写しを貼布し置くこと並に他の連合軍関係通牒は少くとも二週間貼布熟読せしめ後別に一括して置くやうにすること。右四通牒に準ずるものは今後其の都度通知する。 各職員の捺印についても厳重実施せられたい。 (大野村役場「最高司令部指令綴」(昭和二十一年)相模原市立図書館蔵) 一五〇 国民学校後期用図書中の削除修正箇所徹底の件通牒 二一高学収第二六号 昭和二十一年三月十一日 高座鎌倉地方事務所長 学校長宛 国民学校後期用図書中ノ削除修正箇所ノ件 現行教科書ノ取扱ヒ方ニ関シテハ曩ニ通牒ノ次第ニ依リ図書中終戦ニ伴ヒ不適当トナリタル教材ニハ削除修正ヲ施シ使用セシメ居ルコトヽ存候処今般文部省ヨリ後期用使用国語(初等科第一学年乃至高等科第一学年用)及算数(初等科第三学年乃至第六学年用)図書中ノ削除修正箇所ニ付キ別表ノ通リ連合国軍最高司令部ノ承認ヲ得決定致シタル旨ヲ以テ通牒有之候条削除修正洩レ有之ハ別表ニ依リ必ズ削除修正セシメタル上使用セシメラレ度此段及通牒候 追而左記事項附記アリタルニ付予メ御了知相成度参考迄ニ申添候 一 教師用指導書ノ発行供給ノ件 今般師範学校及青年師範学校教員生徒並ニ中等学校青年学校及国民学校教員ニ対シ我ガ国ガ現在直面セル諸問題ヲ理解セシメ新事態ニ即応スル教育ノ根本方針ヲ示スト共ニ修身国史及地理ノ授業停止期間即チ之等三科目ノ新教科書出来迄ノ代行課程トシテ生徒児童ニ教授スベキ教材並ニ其ノ取扱ヒ方法ノ指示ヲ目的トセル教師用指導書ヲ発行供給スベク目下作成中ナリ 尚右ハ印刷ノ上前記各学校ニ供給ノ予定ナルモ原稿出来ノ上ハラジオ放送及新聞雑誌等ニ転載シ之ガ普及徹底ノ迅速化ヲ期スル予定ナリ 二 昭和二十一年度使用教科書ノ件 終戦後ノ新事態ニ即応スベキ各学校用新教科書ニ関シテハ本年中ニ新編纂ノ上明二十二年度ヨリ之ヲ使用セシムル予定ヲ以テ目下之ガ準備中ナリ 尚本年四月ヨリ使用セシムベキ教科書ニ付テハ取敢ヘズ暫定教科書ヲ編輯シ之ヲ発行供給スルコトニシ目下之ガ進行過程ヲ極力促進シツツアリ (「連合国軍関係通牒綴第十六号」(昭和二十一年)久保田昌孝氏旧蔵 相模原市立図書館蔵) 一五一 教科用図書使用に関する注意の件通牒 二一高学収第三四三号(二一・五・三〇)地方事務所長 学校長宛教科用図書の使用について 此度文部省教科書局長より標記のことについて通牒がありましたから左記事項充分徹底方御願ひします。 記 昭和二十一年度で使用する教科用図書については通牒済ですから御了知のことゝ思ひますが教科用図書は連合国軍総司令部の検閲承認を経て印刷発行されたものに限られるので本年三月迄使用されたものは勿論のこと他の印刷物(謄写刷でも)の使用は一切許されないものですから誤りのないやう念の為に更に御注意します。従つて前回の通牒で国民学校の芸能科図画及工作は「既に発行供給せられ児童所持の図書に付便宜削除訂正(其の箇所は追て文部省より指示)を厳密に施したるものゝ使用は認めらるゝものとす」とありましたが之は取り消します。 連合国軍総司令部の検閲承認を経た図書には奥付に左の様に附記してあります。 「Approved by Ministry of Education (Late―)」 尚発行中止の予定の中等学校音楽教科書は発行供給することになりましたから御了知下さい。 又修身国史及地理授業再開に至るまでの代行教育計画として編纂中の「新教育方針」の前編第一分冊は近く発行され各発行会社より学校宛五月下旬頃までに供給される見込であります。 (「連合国軍関係通牒綴第十六号」(昭和二十一年)久保田昌孝氏旧蔵 相模原市立図書館蔵) 一五二 国民学校青年学校中等学校師範学校青年師範学校用旧教科書の使用禁止の件通知 中学第九三号 昭和二十一年八月二十六日 中地方事務所長 国民学校長青年学校長殿 国民学校青年学校中等学校師範学校青年師範学校に於て使用する旧教科用図書の使用禁止について 標記各学校に於て使用する旧教科用図書の使用禁止に関し本月七日附二十一教第一、 一二一号教育民生部長通牒があつて旧教科書の使用は八月一日以降一切禁止されることになりましたから左記事項周知の上其の徹底に遺憾のない様にせられたい。 記 一 昭和二十一年六月十九日附二十一教第六六二号通牒第一項及び第二項によつて文部省において連合国軍総司令部の許可を得て発行した国定又は検定教科書が届くまでは従前の教科書に所要の削除訂正を施したものゝ使用が許され又用紙其の他の事情によつて発行をしない図書についても何分の指示がある迄は所要の削除訂正を施した従前の教科書を当分使用して差支なかつたのであるが之等は八月一日以降厳重に禁止され旧教科書は如何なる事情であつても一切使用し得ないこと 但し実業学校の実業学科目教科書及び師範学校の器楽の教科書に限り追て何分の指示ある迄は従前の通り取扱つてよろしい。 二 地理の授業については本年七月二十日附二一教九〇〇号通牒に基き実施上遺憾のない様にすること。 修身及び国史については現在尚授業が禁止されてゐる事を念の為申添る。 三 本年六月十五日附二十一教第六六二号通牒の第四項及び第五項については従前の通りであるから実施上遺憾のない様に留意すること。 (神田村立神田小学校「指令綴」(昭和二十年)平塚市教育研究所蔵) 一五三 師範学校中等学校教科書中発行供給中止図書取扱の件要項 二十一教第二〇三六号 昭和二十一年九月六日 教育民生部長 各中等学校長殿 師範学校中等学校教科書中発行供給中止図書の件 本年四月二十日附二一教第四四七号新学期授業実施について通牒致しましたが本年度使用教科用図書の発行供給計画要領中標記の件については別紙教科々目取扱要項に基き授業に十分留意の上指導に遺憾のない様御配慮煩はしたく通牒致します。 (別紙の分) ○中等書道 ㈠ 書写―字句を国語教科書の教材等に取り、書体や太字、細字、仮名、漢字の振りあひ等は従来の教科書にならつて毛筆もしくは硬筆を用ひ練習させるがよい。この際特に行草のくづし方について誤りなき示範を期せられたい。 ㈡ 鑑賞―軍国主義や極端なる国家主義的思想の鼓吹、或は一宗一派の宗教に渉る等、教育上好ましからぬ影響を与へる懸念のない材料で各学校備付のもの又は教師所持のものがあれば、それを利用して実施してよい。但し教科書のやうに生徒に持たせてそれに依つて授業することは許されない。 ○中等工業 教授要目に依り特に次の点に留意して教授せられたい。 ㈠ 我が国工業の歴史的発展を概観してその特質を明かにすること。 ㈡ 戦後の我が国工業の実状を述べその使命の重大なることを自覚させること。 ㈢ 実習を重んじ随時見学をなし技術を習得させると共に働く人々の心構へを学ばせるやう指導すること。 ㈣ 地方に於ける産業の実状に即して適切なる指導をなし研究的態度を養成すること。 ㈤ 各工業相互間及び工業と他の産業との関係、地理、交通その他の事情との有機的関連を明かにし各工業を羅列的にではなく、総合的に教授指導すること。 ㈥ 他教科殊に理数科との関連を密にし適切に指導せられたい。 ㈦ 航空機工業その他軍事工業には絶対に触れぬやう注意せられたい。 ○中等英習字 英習字一のみ発行し二、三は発行を中止した。 ㈠ 英習字の時間を設けてもよいし、読本の時間を割いてもよし、或は家庭における課題としてもよい。 ㈡ 既習教材中重要な語句文章、長い文章及び数字符号を含む文章等を練習させるがよい。 ㈢ 有罫の用紙ばかりでなく、無罫の用紙も用ひて正しく早く練習をさせるがよい。 ㈣ 練習した語句、文章の発音、読方、意味、語法をよく覚えさせなければならない。 ○中等英文法 単独のものを発行せず、読本巻二、三、四の巻末にそれぞれ附録とした。 ㈠ 生徒の学力、読本の進度等により英文法の時間を設けてもよいし読本の時間を割いてもよいし家庭に於ける課題としてもよい。 ㈡ 読本巻二、三、四の附録「文法」に掲げた各項目について既習の教材から帰納せしめるのもよいし更に読本の研究によつて文法の項目を増補してもよい。 ㈢ 国文法と比較した方が英文法の理解を助けると思はれる事項には国文法の知識を活用するがよい。 (湘南中学校「マ司令部指令綴」(昭和二十年)神奈川県立湘南高等学校蔵) 一五四 修身国史地理教科用図書の回収に関する件通知 昭和二十一年三月四日 足柄下地方事務所長 国民学校長青年学校長中等学校長殿 修身、国史、地理教科用図書ノ回収ニ関スル件 標記ノ件ニ関シテハ予メ指示致シ置キタル処ニシテ既ニ夫々御用意ノトコロト存ゼラレ候モ今般別記ノ通リ実施要項決定相成候条之ニ基キ確実ナル完遂ヲ期セラルル様格段ノ御配意相煩シ度候也 追而右ハ連合軍ヨリノ指令ニ基ク件ナルニツキ万遺憾ナキヲ期セラルルト共ニ期日ノ遵守相願度為念申添候 記 修身、国史及地理教科用図書ノ回収要項 一 回収スベキ教科用図書(以下単ニ図書ト称ス) 次ニ列挙スル生徒児童用教科書及教師用書(編纂趣意書、指導書及掛図ヲ含ム) ㈠ 国民学校教科用図書 (イ) ヨイコドモ 上下 初等科修身一、二、三、四 高等科修身一 男子用 高等科修身二 男子用 高等科修身一 女子用 (ロ) 初等科国史上、下 高等科国史上、下 (ハ) 初等科地理上、下 初等科地理附図上、下 高等科地理上、下 ㈡ 青年学校教科用図書 青年修身公民書 普通科 上巻下巻 青年修身公民書 本科五年制用 巻一、二、三、四、五 青年修身公民書 本科四年制用 巻一、二、三、四 青年修身公民書 本科女子三年制用 巻一、二、三 ㈢ 中等学校教科用図書 (イ) 中等修身男女用一、二、三 中等修身女子用一、二、三 修身(検定本)一 (ロ) 中等歴史二、三 歴史皇国篇(検定本) (ハ) 中等地理一、二、三、四 地理国土国勢篇(検定本) 新選大地図(検定本)日本編、外国編 ㈣ 右ノ外 ()イ 該当科目ニ於ケル旧教科書ヲ参考用ニ使用中ノモノアル場合ハ其ノ図書モ含ム (ロ) 右教科用図書ガ在校生ノ家庭ニ一冊モ残ラザル様回収スベキコト 二 回収要項 ㈠ 回収方法 (イ) 本件ハ連合軍総指令部ノ指令ニ基キ文部省ニ於テ該当図書ヲ回収シ之ヲ製紙資源トシテノ活用ニ資スル為実施スルモノトス (ロ) 各地方事務所及横浜横須賀川崎ノ三市ハ其ノ管内所在ノ各学校(前記教科用図書ヲ現ニ使用中ノ官公私立ノ学校教育機関ヲ含ム以下同ジ)ニ於ケル図書回収(学校教職員児童ヨリノ回収以下同ジ)ノ絶対責ニ任ズルモノナルニツキ承知アリタシ (ハ) 日本故紙統制組合ノ係員左記日程ニテ受取ニ出頭致スコトト相成ニツキ各学校毎ニ集積場所ニ輸送スルトトモニ別紙様式ニヨル報告書ヲ提出スベシ(二通引渡ノ際持参シ地方事務所立会人ニ手渡スベシ) (ニ) 集積場所及日時 足柄上郡 三月八日 松田町国民学校 受取人萩原為吉 足柄下郡 三月七日 小田原市万年町萩原為吉方 右同 (ホ) 引渡ノ際ハ地方事務所員立会フニツキ勝手引渡ヲセザルヤウ願度シ ㈡ 回収ニ関スル費用 学校教職員及生徒児童ヨリノ図書ノ回収ハ無償トス(学校教職員及生徒児童ヨリ無償ヲ以テ国ニ提出セシムベキ旨別途省令公布アル見込) 集積所迄ノ費用ハ各学校負担トス ㈢ 報告書ノ提出 提出スベキ報告書ハ必ズ図書各巻別ノ冊数、重量ヲ誤リナク記載シ輸送ノ方法等モ明記スルコト 様式(例) 回収図書報告書 校名 (西箱根青年学校「連合軍関係書類」(昭和二十一年)箱根町役場蔵) 一五五 国史の授業再開に関する注意の件通知 昭和二十一年十一月二日 足柄下地方事務所長(印) 国民学校長青年学校長殿 国史の授業の再開について 連合国軍最高司令部から授業再開の許可があつたから左記事項に御留意の上其の実施に遺憾のない様に取計られたい。 記 一 授業の再開は文部省に於て編纂し連合国軍最高司令部の認可した教科書を使用することを条件とするものであること。 前項の教科書は国民学校用「くにのあゆみ」上下、中等学校用「日本の歴史」上下及師範学校用「日本歴史」上下であつて、その中国民学校用教科書は既に製造を終り輸送中であるが、其の他は多少おくれる見込である。授業はすべて之等の教科書が到達した時から再開すること。 二 国民学校用図書の上巻は初等科第五学年及高等科第一学年に下巻は初等科第六学年及高等科第二学年に於て使用せしめること。 但し高等科に於ては児童の心理的、社会的諸事情を考慮して適切な指導を行ふこと。 三 青年学校に於ては教師に於て国民学校用又は中等学校用の教科書を使用し適宜授業を行ふこと。所要の冊数は学校から取次供給所を通じて至急各発行会社に申込むこと。 四 授業は本年度中に一応終了する予定を以て時間配当を計画すること。 五 授業の指導要旨については追つて詳細に通牒すべき筈のこと。 六 修身の授業の停止に付ては前の通牒に依り諒承されたいこと。 受命書 (西箱根青年学校「連合軍関係書類」(昭和二十一年)箱根町役場蔵) 一五六 国史授業指導要項 中学第一三二号 昭和二十一年十一月二十七日 中地方事務所長 国民学校長青年学校長殿 国史授業指導要項について 国史の授業再開については去る十一月六日附中学第一二一号を以て通知したが同通牒第五項に示した指導要旨は別紙の通りにつき右により教授せしめられたき旨本県教育民生部長より通牒があつたので御了知願ひたい。 尚「くにのあゆみ」上下の訂誤表を添付したから誤植の箇所を訂正して使用せしめられたい。 記 国史授業指導要項 第一 新国史教育の方針 正しい国史の教材を通じて歴史的事象に対する思考力と判断力とを養ひ以てわが国家及び社会の発展を総合的に且つ批判的に理解せしめると共に新日本建設に対する自覚と実践を培ふ。 第二 新教科書編纂の趣旨(授業全般について留意すべき点) 1 軍国主義、極端な国家主義、国家神道の宣伝並に排外的思想を助長する教材を排除する。 2 公正な立場からあくまで真理を追求する科学的態度を以て歴史の発展を総合的合理的に把握させ併せて正しい伝統の理解につとめさせる。 3 単なる治乱興亡の跡をたどり政権争奪の歴史に偏することなく国民生活の具体的展開の様相を社会経済文化の各方面より明かにする。 4 独断偏狭の史観に陥ることなく世界史的立場に立ち国際親善、共存共栄、文化の交流、互恵の史実を挙げ以て世界平和の増進並に人類文化の進展に寄与せしめる。 第三 教材の取扱上特に留意すべき点 1 古代及び上代史 この時代に関しては最近種々の議論が行はれてゐるが、教授者に於ては常に冷静な批判的態度を持ち絶えず学界の成果に留意して授業の内容を深めながらしかも極端な見解に走らない様に注意する。 ⑴ 神話・伝説 神話伝説は古代民族の理想を表明するものであり、且つそれが後世に与へた影響も少くない。しかしながら神話伝説はあくまで神話伝説として歴史的事実と混同しないことが必要である。故に教科書に於てはこれを記さない。 ⑵ 日本民族の由来 従来の神秘的取扱を排するが、その生成、渡来の経緯等に関してはなほ定説化してゐないので断定は差控へる。 ⑶ 日本国家の起源 従来古代史の叙述は記紀を中心として行はれて来たが、その最初の記述には神話的要素が多分に含まれてゐる。よつて今後は考古学、社会学その他の研究成果や大陸方面の文献等を参照し学問的に客観的史実と認められる場合に限つてこれを授ける。 ⑷ 日本文化の始源 徒らに考古学的な資料を羅列することなく外来文化との関係を明らかにし且つ農耕文化の渡来に伴ふ社会組織の変化等に注意し文化統一の経過を説明する。 ⑸ 摂関政治 摂関政治を政治史上の一現象として冷静に理解させその社会及び文化に及ぼした影響を説明する。 2 中世史及び近世史 この間の武家政治についてはその成立するに至つた社会的歴史的事情を明かにして封建社会の実態を批判的に説明し併せて現代に及ぼした影響を適切に考慮する。 ⑴ 建武中興 社会の動きからこれを取りあげ両統迭立の問題もありのまゝに説明する。 ⑵ 戦争・人物 従来戦争史的叙述が詳密を極めいはゆる英雄中心主義に陥る傾向があつた。かゝる態度を排除して一般社会及び国民生活との関係においてこれを扱ふと共に社会の進歩発展に寄与した人々の功績を充分に考慮してこれを郷土史とも結びつけて取り上げる。 ⑶ 社会経済史的事象 従来顧みられなかつた農民の生活や商工業都市の発達、庶民文化の向上等の史実にも注意を払ひ現在との関連を明らかにする。 3 現代史 新社会の建設は現代史の正しい理解に基いて行はれねばならない。この意味に於て現代史を一層重視する必要がある。殊に現代社会の理解に重要なる関連をもつ資本主義や立憲政治の発達、科学の進歩等の史実を明らかにする。 ⑴ 外交問題 維新前後から欧米諸国との交渉は漸く繁くなり、従つて世界情勢の推移がわが国に及ぼした影響は大きい。故にこの間の説明はどこまでも歴史的事実に基いて正しく取扱ひ且つ国際親善の立場に立つて従らに排外的とならない様に留意する。 ⑵ 対外戦争 平和国家の建設を目的とし世界平和樹立の一礎石たらんとするわが国に於て日清、日露以下の対外戦争の取扱は殊に注意する。 4 紀元 皇紀の算定については種々の説があるが、未だ学界の研究が十分でない実情に鑑み慎重な態度を要する。教科書では世界的立場に立つて国史理解を助けるために便宜上一応西暦を採用する。 5 皇室 わが皇室の存立は国史の展開に重要な意義をもつてゐるのでこれについてはあくまでも歴史的事実に基づき慎重な態度を以て取扱ふ。 第四 編纂形式上の特色 1 題名 ○初等科五年用「くにのあゆみ」上 ○初等科六年用「くにのあゆみ」下 歴史といふよりはもつとかみくだいて児童心理に合致させわが国の発展経過を示すために右の題名とする。 ○中等三年用「日本の歴史」上 ○中等四年用「日本の歴史」下 五学年に於ては下巻の現代史を中心として取扱ふ。 ○師範一年用「日本歴史」上 ○師範二年用「日本歴史」下 2 区分 ○初等用上古代から安土桃山まで 下江戸時代から現代まで ○近世及び現代の記述を従来よりも豊富にするため安土桃山時代を上巻にくり上げ江戸時代以後を下巻で取扱ふこと。 ○中等用上古代から室町末期まで 下近世から現代まで 安土桃山時代を近世の始めとして取扱つてゐるが、戦国時代及びヨーロツパ人の渡来に関しては生徒の理解を助けるため上巻の終りの部を下巻に於ても概括的に繰返した。 ○師範用も略々中等用と同一である。 3 章節 古代と上代、中世、近世、現代の大単化に従い大よそ政権所在地による時代区分に準拠す。 「小みだし」をつけて児童、生徒の理解に便ならしむ。 4 文章 従来の文章記述に多かつた修飾語を除き出来るだけ素直によみやすく記述して読解を容易ならしめようとした。 5 設問 従来やゝもすれば記憶の科目とされてゐたのに対し総合、比較、類推、批判を重んじ且つ自学、自習を促すため各章の終りに問題を添へた。 中等用及師範用には設問を附さないが、適宜教授者に於て考慮されたい。 6 挿絵 印刷の技術上少数の例にとゞめ章末に一括してのせた。教授者に於て適切な説明と適当の補充を加へることが望ましい。 7 年表 初等では簡単な二頁大として政権のうつりかはり、主なる事柄、大陸諸国の興亡等を教科書の章名と対比させ且つ欧米の重要要件についても同様取扱ふこと。 中等及び師範に於ても初等とほゞ同様である。 第五 授業の方法に関する注意 1 教科書の内容は従来より著しく豊富になつて居るから授業にあたつては必ずしもこれを詳説する要はない。むしろ国史の流れを理解させるに必要な事項を重点的に授けられたい。 2 徒らに暗記を強ひることなく説話、討議、見学、作業、自発的研究等児童、生徒の理解能力を考慮してその興味を喚起するやう種々の方法をとられたい。 3 国民学校教科書に提出した問題はたゞ例示したにとゞまるものであるから教授者において適切な問題を附加せられたい。 4 初等科六年生及び中等学校四年生の授業においては最初の数時間において新しい見方によつて従来の既習教材を整理批判することが必要である。 中等学校五年生の授業も前に準じ爾後は現代史を中心に行はれたい。 5 初等科における本年度の時間配当は一週およそ四時間として本年度中に一応終了の細目を立案せられたい。 中等学校及び師範学校に於ける時間配当に就いても本年度中に一応終了するやう計画されたい。 第六 第四学年「郷土の観察」の授業要旨 既に地理科の授業が開始されてゐるわけであるが歴史科授業再開に伴ひ次の点を考慮しつゝ実施されたい。 1 児童の直接的環境を自然的歴史的に理解させることによつて共同生活に対する認識を深めると共に未分化の状態において歴史及び地理の初歩的指導をなし上級学年の学習の素地をつくる。 2 教材の選択は児童生活に直接関係の深い周囲事象から始め学校聚落の実態調査からその社会との関係に及び更に交通産業史蹟を適宜に選定する。 3 郷土の観察は四年生において完結するものでなく全学年を通じて行はるべきものであるから最初は簡素な教材を選定して具体的に観察し処理する態度を養う。 4 児童が自ら興味を以て観察し考察する自発的態度を馴致し且つ他教科と連関を保ちつゝ発展的に理解させる。 第七 高等科国史の授業要旨 本年度は国民学校高等科においては初等科教科書「くにのあゆみ上」を用いて国史の授業を行ふ。(上は第一学年下は第二学年に当つ)この際高等児童の心理的社会的諸事情を考慮しそれぞれ実情に即した指導を要する。 特に次の諸点に特に留意せられたい。 1 高等科児童は既に初等科において旧教科書による国史教育を一応終つてゐるのであるから、新しい歴史の見方に基づいて既習事項を合理的に批判させ正しいわが国の歴史を理解させる。 2 授業に当つて「くにのあゆみ」の内容を拡大敷衍するにとゞまらず、あるひは見方をかえて各時代の文化的特色を比較考察させ、また時代史のわくを外して問題史的に考察を行はせるなど歴史的思考力、判断力、批判力等の陶冶につとめられたい。 3 教材の取扱上次の二点は特に重視して詳説すべきものである。 (イ) 社会経済の発展のあとを総合的に扱ひ現代の問題と結びつけて理解せしめる。 (ロ) 人類文化の発展といふ世界史的立場に立つて国史の流れに即し東洋史及び西洋史の知識を併せ授ける。 「くにのあゆみ」正誤表 上巻 頁 段 行 誤 正 二〇 下 一六 中尊寺 中尊寺 二一 上 一四 平治 平治 三七 上 一四 龍造寺 龍造寺 下巻 一二 上 一三 鎖国ののら ヽヽのち 四六 上 一〇 大正三年の七月 ヽヽ六月 四六 下 一四 西園寺 西園寺 五〇 下 六 近衛文麿 文麿 五一 上 一七 二十年の四月 五月 年表 誤 正 一〇八九 一〇八六 ペルリ来る ペリー来る ポッダム宣言 ポツダム宣言 蒙古 蒙古。 (神田村立神田小学校「指令綴」(昭和二十年)平塚市教育研究所蔵) 一五七 行進徒手体操等実施に関する注意の件通知 二十一教七八九号 昭和二十一年八月十日 教育民生部長 横浜、横須賀、川崎市長地方事務所長中等学校長殿 秩序、行進、徒手体操等実施に関する件 終戦後の学校体育については昭和二十年十一月二十二日付二〇教第一、五五三号「学校体錬科教授要項(目)ノ取扱ニ関スル件」及昭和二十一年一月十一日付二十一教第一五号「学校体錬科関係事項の処理徹底に関する件」通牒の次第もありますので夫々万全を期せられてゐることゝ存じますが、尚細部については種々疑問も生じそのため指導の上に積極性を欠いてゐる向もありますので此の際特に左記一例を送付いたしますから、更に之を参考として其の取扱に遺憾のないやうにして下さい。 追而体育運動実施について進駐軍関係より直接指示、注意又は指導を受けた場合は其の事実を成るべく具体的に記載し別紙記入様式により二通教育課長宛報告して下さい。 記 一 秩序運動 秩序運動として必要な命令、号令、指示、例へば「気を付け」「休め」「右(左)向け」「廻れ右」「整頓」「番号」等は最少限度に止め、且軍事的色彩がなく愉快な気持を与へるやうに行ふならばさしつかへない。然しそれ自体を反復訓練することは避けねばならない。 二 行進 隊列を組んでの行進は場所を移動する目的で行ふならば従来行つてゐたやうな正常歩行進や、音楽に合して調子よく歩くことはさしつかへない。 然しながら隊列行進それ自体の訓練を目的として行ふことは避けねばならない。又行進間に「一―二」「左―右」等と調子を唱へることは適当でない。軍隊で行つたやうな股上げ行進(速歩行進)は絶対に避けねばならない。 三 徒手体操 徒手体操は非軍事的態度で行はなければならない。此の意味で必要があれば全校の合同体操を行ふこともさしつかへない。 「集れ」「体操隊形をとれ」等の命令、号令、合図は行つてさしつかへない。然し軍隊式の口調や態度をとらないやうにしなければならない。 従つて必要あれば各種の開列(例へば片手間隔、二歩間隔、自由開列等)をすることはさしつかへない。 然しながら開列のしかたについて特別に訓練することは避けねばならない。 指導者の呼称は最少限度に用ひ然も愉快な調子で非軍事的に行はねばならない。○全員で呼称をとることはよくない。 ○体操に音楽を用ふることはよいことである。 ○新らしいラヂオ体操は授業の一部として行つてよい。 ○合同体操を行ふ場合は画一的な形式、調子、回数等にとらはれて個人差を無視しないやうにしなければならない。 四 其の他 操転器、廻転器(フープ)等航空適性強化を目的として使用した器具類を学校の施設内にて使用することは適当でない。 以上は一例をあげたに過ぎないが、要は学校より軍事色を払拭することが目的であるから学校長及教職員は「軍国主義及極端な国家主義を学校より排除すべき」旨の連合軍司令部通牒の文字のみならず、その精神に従ひ責任をもつて実施すると共に許される範囲のものについては積極的に指導することが肝要である。 様式 学校名 校長名 指導者氏名 一 年月日 二 場所 三 指示又ハ注意等ヲナシタ進駐軍関係者ノ氏名及所属官職名 四 指示、注意等ノ具体的事例 五 右ニ関シ学校トシテトツタ具体的措置 六 其ノ他参考トナル事項 (湘南中学校「マ司令部指令綴」(昭和二十年)神奈川県立湘南高等学校蔵) 〔注〕別紙に湘南中学校教員四十一名の署名、捺印がある。 一五八 演劇脚本および紙芝居の検閲に関する件通知 昭和二十二年四月十五日 高座鎌倉地方事務所長 各学校長殿 演劇脚本及び紙芝居の検閲に関する件 標記の件に関し文部省に於て左記の通り連合軍最高司令部の承認を得た旨通牒がありましたので通知致します。 記 一 演劇及び紙芝居で教官指導の下に学校内で学生、生徒児童が自演する場合は連合軍最高司令部民事検閲部の検閲を受け又は地方軍政府の承認を得るため脚本又は作品を提出することを要しない。 二 本件については県報、新聞、雑誌等の刊行物に公告発表せず問合せに対してのみ回答せられたい。 三 連合軍最高司令部民事検閲部は東京都芝区田村町関東□ゐる。 (「連合国軍関係通牒綴第十六号」(昭和二十年)久保田昌孝氏旧蔵 相模原市立図書館蔵) 一五九 御真影奉還に関する件通牒 二十秘第一、七三九号 昭和二十年十二月二十六日 内政部長 地方事務所長横浜、川崎横須賀市長学校長}殿 御真影奉還ニ関スル件 今般天皇御服御制定ニ伴ヒ曩ニ各学校ニ下賜ノ今上陛下御真影ハ将来新制定ノ御服装ニ改メラルベクマタ皇后陛下御真影モ右ニ準ジ下賜相成趣ニテ従来下賜ノ御真影ハ至急奉還致ス可キ旨文部次官ヨリ通牒有之候条奉還ニ関スル措置ニ付キテハ追ツテ近日指示可致モ奉拝ニ関シテハ左記ニ依リ(遺漏ナキヲ期セラレ度)管下学校長ニ対シ遺漏ナキ様徹底方至急御手配相成度 記 一 奉還上遺憾ナキヤウ十分ナル準備ヲナシ置クコト 一 来ル一月一日式場ニハ奉還スベキ御真影ハ奉掲セザルコト 一 拝賀式場ニ御真影ハ奉掲セザルモ敬虔真摯ノ念ヲ以テ終始シ大君ノ下愈々国家再建ノ決意ヲ鞏カラシメ相率ヰテ時艱克服ニ邁進スルヤウ適切ナル処置ヲ講ズルコト (汐入国民学校「往復文書綴」(昭和二十年)横須賀市立教育研究所蔵) 一六〇 国家神道神社神道に対する政府の保証支援保全監督および弘布禁止に関する件通牒 昭和廿一年一月廿七日 足柄下地方事務所長 国民青年学校長殿 国家神道神社神道ニ対スル政府ノ保証支援保全及監督並ニ弘布禁止ニ関スル件 標記ノ件ニ関スル客年十二月十五日連合軍最高司令部ヨリ政府ニ対シ指令アリタル処之ニ基ク実施要領別紙ノ通相定メラレタル趣其ノ筋ヨリ通牒ノ次第モ有之候条之ガ措置ニ関シ万全ヲ期セラレ度此段依命及通牒候 一 学校(私立神道学校ヲ除ク以下同シ)内ニ於ケル神道ノ教義ノ弘布ハ其ノ方法様式ノ如何ヲ問ハス禁止スルコト 二 学校内ニ於テ神社参拝者ハ神道ニ関連スル祭式ノ儀式及慣例ノ挙行乃至其ノ後援ヲ為シ得ザルコト右ニ関シ特ニ左ニ留意スルコト ㈠ 伊勢神宮、明治神宮等ニ対スル遥拝ハ之ヲ取止ムベキコト (註 宮城遥拝ハ差支ヘナシ) ㈡ 氏神等ニ対スル団体参拝ハ不可ナルコト ㈢ 氏神等ニ於ケル休業日ハ之ヲ廃止スルコト ㈣ 国祭日ニ対スル取扱ニ付キ内閣ニ於テ考究中ナルヲ以テ追而指示アルベキコト ㈤ 神宮・大麻・頒布、神饌田・神饌米奉献等ノ行事モ取止ムルコト 三 学校内ニ於ケル神社、神祠、神棚、大麻、鳥居及注縄等ハ撤去スルコト 尚御真影奉安殿、英霊殿又ハ郷土室等ニ対スル神道的象徴撤去スルコト 四 学則、校則、校訓又ハ綱領等ニ付テモ神道的字句ヲ除去スルコト 五 官公立学校ノ教職員ノ公的資格ニ於テ神道ノ支援保全及弘布ヲ為シ得ザルコト 尚教職員ノ右ニ該当スルガ如キ講義ヲ為シ得ザルコト 六 官公立学校ノ教職員ハ公的資格ニ於テ神社ニ新任乃至現状等ノ奉告ヲ為シ若ハ学校ヲ代表シテ神道ノ儀式ニ参列シ得ザルコト 七 教職員乃至生徒児童ニ対シ神道其ノ他如何ナル宗教ヲ問ハス之ヲ信仰セザルガ故ニ若クハカヽル特定宗教ノ慣例祭式、礼式等ニ参列セザルガ故ニ差別待遇ヲ為スコトヲ得ザルコト 八 学校ニ於テ現ニ使用セラレツツアル凡テノ教師用参考書及教科書中ノヨリ神道教義ニ関スル個所ヲ削除セシムルコトト共ニ教授セシメザルコト 尚削除スベキ個所ハ目下文部省ニテモ検討中ナルヲ以テ決定次第指示スベキモ不敢取本措置ヲ講ズルコト 九 「国体ノ本義」「臣民ノ道」ノ使用ハ之ヲナサザルコト 十 「大東亜戦争」「八紘一宇」等ノ用語ニ認メ得ザルモ之ト類似スル他ノ用語ノ使用禁止ニ付テハ目下検討中ナルヲ以テ追テ指示ノ 見込アルコト (西箱根青年学校「連合軍関係書類」(昭和二十一年)箱根町役場蔵) 一六一 勅語および詔書の取扱措置に関する件通知 二十一下学収第一一四号 昭和二十一年十月二十四日 足柄下地方事務所長(印) 西箱根青年学校長国民学校長殿 勅語及詔書の取扱について 標記の件については往々疑義をもつ向もあるから左記の通り御了知の上御措置願ひたい 記 一 教育勅語を以て我が国教育の唯一の淵源となす従来の考へ方を去つてこれと共に教育の淵源を広く古今東西の倫理、哲学、宗教等にも求むる態度を採るべきこと 一 式日等に於て従来教育勅語を奉読することを慣例としたが、今後は之を読まないことにすること 一 勅語及詔書の謄本等は今後も引続き学校に於て保管すべきものであるが、その保管及奉読に当つては之を神格化するやうな取扱をしないこと (西箱根青年学校「連合軍関係書類」(昭和二十一年)箱根町役場蔵) 〔注〕別紙受領書には、 「受領年月日 二一・一〇・二六」と記されている。 一六二 学校における宮城遥拝等禁止の件通牒 二二下学収第一二〇号 昭和二十二年六月十九日 足柄下地方事務所長(印) 各学校長殿 学校に於ける宮城遥拝について 標記の件について別記のような通牒があつたから了知の上注意されたい 記 儀式に際して学校が主催し、指導して行われた宮城遥拝、天皇陛下万歳は今後やめることとする。 また学校の校長及び教員は、学生生徒及び児童の教育に際し、天皇神様化の表現を強制したり、又は指導したりしてはならない。このことはもとより学生、生徒及び児童各人の天皇に対する自発的な尊敬の表現を妨げるものではない。 なお従来祝日において儀式を行うに際して、学校によつては、形式的画一的に行はれていた向もあるが、今後はこれを改め、これを行う場合は学校の実情に即して例へば学芸会、運動会、展覧会又は講話、講演等を行い、適切に祝日の趣旨を徹底させ参加者がひとしく喜びを共にするように実施されたい。 (西箱根青年学校「連合軍関係書類」(昭和二十一年)箱根町役場蔵) 〔注〕別紙受領書には、 「受領年月日」とあるが無記名のままである。 一六三 学校生徒の神社関係行事等への参加禁止徹底の件通知 中学第四二〇号 昭和二十二年十一月二十一日 中地方事務所長 各学校長、幼稚園長殿 神社関係について 標記の件については既に四大指令によつて周知のはずであるが最近之が徹底を欠く向もあるので左記の点につき特に御留意の上遺憾なきを期せられたい。 記 一 神社の主催する行事は勿論之に関係ある行事に学校として参加してはならない 二 神社の主催する展覧会、競技会等について学校に於て公表してはならない 三 学校が神社及神社に関係ある場所を会場として行事催物を行つてはならない 四 神社の関係行事に於て生徒が個人で受けた賞状等を学校に於て授与してはならない 五 教師が生徒を引率し神社に拝礼してはならない (神田村立神田小学校「指令綴」(昭和二十年)平塚市教育研究所蔵) 一六四 忠霊塔忠魂碑等撤去の徹底に関する件通知 中学第四五号 昭和二十三年二月十八日 中地方事務所長 町村長学校長殿 軍国主義的又は超国家主義性を有すると認められる忠霊塔、忠魂碑、銅像の措置について 右のことについては先に通牒(昭和二十三年十二月二十一日附中学第四五号)に依りそれ〴〵措置せられてあることと思ふが、未だ該当のものが現出する向もあるよう聞き及んで居るのでこれにあてはまるものがあれば至急撤去方実施するよう御取計い願ひたい。 撤去については本省よりの通牒写其の他参考書類を添附したのでそれに依られたい。 なお昭和二十三年一月三十一日以降撤去したものについては、その都度左記様式に依り地方事務所学務課宛報告書二通を提出せられたい。 記 本通牒受領後は受領証を必ず返送のこと (神田村立神田小学校「指令綴」(昭和二十年)平塚市教育研究所蔵) 〔注〕添附資料省略。 一六五 国旗掲揚の制限に関する件通知(一―二) ㈠ 二十一下学収第一四六号 足柄下地方事務所長(印) 青年学校長国民学校長殿 国旗掲揚に関する件 祝祭日等に於ける国旗掲揚方に関してはこれまでもその都度政府より連合国軍総司令部に申請し其の許可を得て実施して居る次第であるが、国旗の掲揚については往々疑義をもつ向もある様であるから連合国軍の占領下にある現下の我が国情に鑑みこれが取扱方に付掲揚等は厳に差控へられたく念のため通報します。追つて右の連合国軍総司令部の許可指令はその都度、新聞、ラジオ放送等に依つて承知せられたい。 (西箱根青年学校「連合軍関係書類」(昭和二十一年)箱根町役場蔵) 〔注〕別紙受領書には、 「受領年月日 二十二・一・八」と記されている。 ㈡ 二十二中総収号外 昭和二十二年十月三十一日 中地方事務所長(印) 各町村長殿 国旗掲揚に関する件 来る十一月三日明治節当日に於ける国旗掲揚は差支へないから通知する 尚当日参賀の儀は廃止されたから管下関係方面及び一般へも周知せられたい (大山町役場「庶務書類」(昭和二十一年)伊勢原市役所蔵) 一六六 国旗掲揚の制限措置解除の件通知 二十四中総収第二七四号 昭和二十四年二月二十三日 中地方事務所長 各町村長殿 国旗の掲揚について 国旗の国内に於ける無制限使用については已に御了知の事であるが別紙の通り総理庁よりの指示もあるので遺憾なき様一般に周知せしめると共に祝日その他適当の場合には率先国旗を掲揚する様御配慮願いたい (別紙) 写 自発第一二六号 昭和二十四年二月四日 総理庁官房自治課長 各都道府県知事殿 国旗の掲揚について マツカーサー元帥の年頭のメツセージにより国旗を国内において無制限に使用し掲揚する事が許可されたのであるが右に関し連合軍司令官から日本政府に対し左記要旨の通知があつたので「国民の祝日」においては勿論その他適当の場合において此れを掲揚し広く国民に一層国旗敬愛の風習を興すよう格段の御配慮を願いたい 尚「国内において」とはこの場合領海を含まず従つて船舶(港湾等に碇泊中のものを除く)は国旗を掲揚できない事に御注意願ひたい 記 一九四九年一月六日 日本政府宛覚書要旨 一 一九四九年一月一日より日本国内において無制限に日本国旗を掲揚する事を許可する 二 本件に関し占領軍には通知済である 成収第四四二号 昭和二十四年二月二十四日 中郡成瀬村役場 お知らせ 国旗の掲揚について 国旗の無制限使用についてはマツカーサー元帥の年頭のメツセージにより已に御承知の事と存じますが今回総理庁よりの指示もあり祝日は勿論其の他の場合でも極力国旗を掲揚するよう通牒がありましたから御知らせ致します (成瀬村役場「庶務書類」(昭和二十四年)伊勢原市役所蔵) 一六七 戦後民主教育の理念と実践要項 序 一 新教育は如何にあるべきか 二 新しい教師は如何にあるべきか 第一 新しい教師の活動は如何にあるべきか 1 新しい教師はどんな働きをするか 2 新しい教師はどんな基礎的の教養が必要か 第二 教育資料を如何に整理し参考にするか 1 新教育の原理と方法に就いてはどう理解したらよいか 2 教育動向の考察とその応用は如何にするか 第三 教師の実際活動は如何にあるべきか 1 実際活動の態度は如何にあるべきか 2 学級及校内の巡視は如何にすべきか 3 教師の実地活動の指導 4 学籍簿の運用 5 学校学級の施設の整備 第四 教師の研究活動は如何にあるべきか 1 基礎的研究の態度は 2 研究活動と図書館其他に付いて 3 各種研究機関の利用 4 研究成果の発表 5 新検査法の研究と活用 第五 教師の社会活動は如何にあるべきか 1 学校と社会との関係は如何にあるべきか 2 学校と社会をつなぐ者は誰か 3 学校と社会とはどうして結ばれるか 4 社会活動の限界は 〘新教育は如何にあるべきか〙 民主的の理想社会の建設↓国家再建 一 新教育は人間の再検討から ―人間本来の面目そのまゝの姿として認めらるゝこと ―人間自体の内に人格と尊厳とが正しく保証さるゝこと→個人尊重 ↓憲法教育基本法に明記さる 個人は孤立的存在ではない ↑ 自由と秩序との調和を愛する共同社会の成員として 一 新教育は真の民主的社会の把握の上に成立する 社会は不完全ながら進歩しつゝあり児童を如何なる目標に発達させるか ↓理想的民主社会の実現 ←←実現可能の社会の在り方を把握 ↑希望を抱いて育成する努力の過程 教育 三 新教育は豊富な内容を 社会が必要とする多くの内容を学校教育に用意する ↓社会に応じて 1 民主的社会についての社会的政治的経済的文化的理解と家庭社会国家及世界の正しき人としての態度 2 各個人の個人的及社会的資質の最大限度の発達 3 健康な身体とその保全の良習慣 4 芸術的教養とその生活 5 職業的能力を獲得する目的 教科書参考書社会現象の観察研究 民主生活を知る教師と児童の継続的努力 四 新教育は新教育方法によつて達成される 新教育↓新教員技術から ←児童発達心理学の研究から〈身体的精神的〉科学的の精査から 1 素質的に一人一人の個人差がある 社会的 協力的 民主的 2 個人性 社会的集団に参加させ経験を通して漸次民主的の態度↓行動化する↓学ぶ →自発的な←――形式的ならざる児童と教師 l集団的討議に堂々たる勇気 ―素直に受ける寛容な態度 五 新教育は優れた指導を望む 民主教育の徹底↓教師(自治協力の生活態度) 学校長↑↓教師―視学主事 ―教育委員 ――一体 →賢明な指導↓現場教育 〘新しい教育は如何にあるべきか〙 新しい精神で民主教育の実現 一 性格 資格、権限、職分、地位、待遇、養成、研修↓法律政令に示す 二 旧い教師 『与えられた教師』 権威主義 事務に忙殺 三 新しい教師 親しまれる児童の相談役 1 教育の熱愛者である ○教育的職分が天分であるという強い信念を持つ ○教育的発達を促がす計画を樹立する ○機会ある毎に児童のためになる創造的な能力を持つ 2 教育の責任者 ○教師と校長は新しい時代の人を作る責任を有する 3 思想に対する批判力を持つべき ○児童に対して圧迫感と不安を抱かせない ○不如意の下にも真の自由の世界の夢を具体化する様 ○時代の思想や文化の傾向に留意し批判を怠らない社会科学研究の一学徒であるべき ○新鮮な感覚と新しい思想を吸収し経験を通して思想を再組織して計画を立てる 4 真理の探究者であるべき ○常に生成発展する教育の原理を検討する ○生活を通して新しく現成されて行く補導者である ○人格に対する尊敬は何人にとつても自由の基盤である事を信ずる ○教育の内容、方法、生長と発達に対して研究し真理を究明する熱意と学問的態度を有する ○科学的方法によつて得た事実を常識によつて変えない 5 学校と社会の連絡者である ○学校と社会との関係を組織し改善するには如何にしたらよいか ○実態の調査をする 政治経済其の他の問題を知り親しく話す事が出来る様に ○民主的原理を説明する ○地方部落民の教育の考え方を指導する責任がある 6 明るい豊かな心情を持つ ○ユーモアに対して優れた感覚を持つ ○元気のある教師 学校を愛し村に親しみ子供のよい相談相手となり且つ家庭のよき相手となる。 〘新しい教師の活動は如何にあるべきか〙 一 新しい教師はどんなはたらきをすべきか ○児童をして自発自律の社会人たらしめる 個人の自由を伸ばし社会に対する責任を負う能力を完全に発揮 ○校長は教師の独自性によつて力量を自由に発揮し最良の教師になる様に助力するためにある ○教育心理学、手引、教科書、学習指導要領、専門家の研究書を研究する活発な活動を展開すべき ○校長は教師間の複雑な人間関係を処理すべきである 1 教師の研究団体を作るべき ○新しい書物にある事柄を相互に研究する、協力する、尊敬し合う 自らも向上発展することを望む a 人がら―感情の均衡 b 長所の発見―潜在力の発展 c 創造力への関心―教育計画、教育方法、教育方途 d 問題の着眼―問題の発見―正しき理解と解決―示唆 e 世人の視聴を集める―世人の注意を促す ―学校に対する具体的問題に関心 を深める ―新聞雑誌ラジオに注意 ―皆の力で皆の力を伸ばす―友情 2 教師の研究の方法は ○教師は教室の独裁者ではない―(校長は教師の独裁者にもあらず) ―(同心同行者なり) ○校長は教師の助言者なり a 民主的な方法―発案企画 b 研究集会―共通な問題を研究討議――相互啓発 ――専門家の依頼は重要 ――自発的 c 公開授業 ○協力的教育改善のため ○授業法に新工夫を持つ―改善、進歩のため ○材料は自然又は社会自身―観察 ――経験 ――問題の解決――知識技能を得て行く ○自発的活動 ○授業は千変万化―教師の力量を充分駆使する ○奮起する ○示唆、努力、向上の資料 d カリキユラムの構成 ○社会の要求に即して内容、運営が進歩的に吟味さるべき ○カリキユラムの継続的組織的の研究 (学校毎に研究すべきものである) 二 新しい教師はどんな基礎的の教養が必要か ○教育的意志 教職的教養の深化 1 教職的教養は重要である(教育意志) ○よりよい教育者たらんとする意志と児童に学ばんとする意志が合致して教育の効果成功あり(真しな教育活動) ○学習指導要領参考書は直接必要―児童の成長発達 ○教育心理、人間的の一般の教養―基礎的に必要―社会生活 a 教育心理 生成発達の実態の研究は重要である (教育計画方法に必要) (青年心理的、学習心理学、発達心理学、教育環境学、教育測定法) 教材の文化的心理的研究として教科課程論にも影響あり 日本の教育と外国との比較研究 日本の現在奨来の教育計画進展の方向を理解のため (教育史、教育社会学、教育管理、教育時事問題) b 教育の社会的意義 社会的の責任の重大さを感得 2 一般的教養(総合) ○教師の一般的教養の必要が強調されている 教師としての職能的教養技術、社会科学、人文自然科学 ○特に社会科が中心的の位置をしめている 指導要領を教師が作り出す a 社会科学 社会研究 新聞雑誌 社会問題 社会学の研究 政治経済研究 地方自治 家族制度 国家政治経済 人口食糧政策貿易 文化研究 道徳 宗教 芸術 b 人文科学 国文学の研究 哲学 c 自然科学 環境 栽培 飼育 生物界の物資循環 化学原素と其の化合物 物資と其のエネルギー 現象と数学 3 専門的教養(研究組織) 〘教育資料を如何に整理し参考にするか〙 一 新教育の原理と方法に就いてはどう理解したらよいか 憲法―民主的文化的な国家の建設 世界の平和と人類の福祉に貢献する ―国家理想の実現に基本法教育法施行規則 1 原理 〇一貫精神―人間の尊重 旧来の教育は人間の価値に先行して国家の政策があり人間の権利を阻害していた家族制度の伝統や社会生活の伝統があつた 法のもとに平等男女差なし言論信教集会の自由、公正な裁判の保証と自他の責任 右の如き基本的人権の上に教育が成立する(新教育の原理) ○教育目標の追求 社会人としての発展 個人としての生成 職業能力の育成 2 実現の方法は ○教育の目的を知り原理を十分了解するために諸書を生かす教育心理学 教科書 各教科指導要領 ○教師は教育は何を要求しているか どんな仕組で編まれているか 有効に働くにはどうしたらよいか 新教育の方法はどんな所に眼目工夫があるか ○教育方法の具体化 旧教育は理念的観念的に重点があつた―具体性がとぼしい其の矯正法は a 教育目標が明確に定まり実現方法が計画されること 多量の材料多岐な要求が整えられること 系統的秩序が整然とする 学年相応の目的が達せらるよう b 社会と共に教育が行われるよう 児童の生成発達の生活に即しつゝ社会の要求に応えるような教育をなすべき c 教育は児童と共に 教師は自ら教育計画を立案すべきである 教師は児童と共に計画し討議し生活に即し学習が展開出来る様に やがて児童が自主的自発的に学習が出来る様に d 教育は実物に即してすゝめるべき 言葉のみの教育は禁物―現実に即した教育計画 実物を多く用意する 実験する 記録する 整理する 説明する ○教育方法の個別化 如何なる方法で個性を発揮させるか ―地方独自の自由と創意による教育をするか――教師の実力 a 教師は新鮮な感覚で一人一人を了解する 個人差によつて適当な考慮を払うべき b 創造的の教育の実態を実現する 学校学級によつて教科過程によつて創造的に 田舎と都市 寒地と暖地 地方の特異性 教科過程の案出 c 自発的に興味と歓喜とを持つて学習する 疑問と好奇心―引込思案にならぬ様 ○教育方法の民主化 教育方法の民主化によつて新教育が徹底する 教師と児童の協力によつて教育 児童相互の協力によつて 教師児童父兄及一般社会人の協力と信頼によつて発展する教育 a 相互の誠意と信頼とを高め関係人が目標に向つて建設的な力を発揮し得る様に組織する 研究会 委員会 b 組織的な活動は進歩的でなければならない 自己の使命 児童、他の教師、校長、社会の協力者を真剣に考える ○基準の示すものは 理想と現実とは離れている(校舎、教師の不足、教具の不足、資材不足) 文教政策は確立されている 光を求め、障害を克服 最低限度の基礎確立↓積極的に―理想え 二 教育動向の考察と其の応用は如何にするか 動向に関心と熱意を持て↓新聞、ラジオ、雑誌 教育実際家の意見実験記録 学者の研究と所見 一般社会人の考察意見 教育関係者の政治経済文化社会記事の大観 ○教育雑誌及刊行物の研究 内容を推奨し合い 研究し合う ○教育資料としての新聞 日々の記事の読み方と整理を合理的に 教科書に準じて資料とする時は撰択と解釈に注意深く指導する 新聞利用手引き必要 ○ラジオと教育活動 声の教科書として利用すべきもの 教師の時間―研究の時間―示唆と刺戟あり 必らず記帳すべきものである―進駐軍の命 子供の時間―授業に準じてなすこと―効果あらしめる様 〘教師の実際活動は如何にあるべきか〙 一 実際活動の態度は如何にあるべきか 今迄の教育の中心は子供の外部にあつた。教師の中に、教科書の中に何処でもよいとにかく子供自身の直接の本能と活動との外部にあつた今こそ子供が太陽になつて、子供の仕組は其の周囲を廻る様にならねばならない。 教育の中心である子供 ―自然の生命に根ざす自発性に基づいて常に活動を続行している動的の存在 ―自発性の原理と生長えの適合 ↑↓教育活動の根幹であり↓社会的要求を満たすことに新教育の特質がある ○児童の実態研究に当れ 教師は児童の性と年齢により各々深い研究と理解を持つべきである 特に青春期の指導は大切である 教師の教育心理 豊富な資料―問題解決―ワークシヨツプ ○広い視野と深い根底のもとに 近来日本の教育は性格を改めて来た 新教育―目的、内容、方法、性格、を明瞭にして来た 教師は性格を身につけていなければならない ―学校は教育の中心的存在―将来も―躍動する生命体 →個々の児童の実態を深く正確に把握して完全な人格に発展させる 熱意(教師)と教育者の団体及自体の絶えざる修養 要は 学習指導要領の研究指導書の研究――十生活地域に即した創意と工夫 児童発達心理 将来は 個性を見落さない一人一人の全人的完成への指導であるべき 若き者への切実な期待 すぐれた知能 健全な感情的な調整 公民としての責任感 伸び行く健康体の育成 張り切つた力を与える ○学校の性格の把握 自校の性格の把握を明確にする 学校は常に―↓新しい方向と計画を持つべき―頭を切り替える ↓教育理念の基礎を築く 憲法 ―教育基本法学校教育法 施行規則―目的目標の把握 実際家の研究―環境の整理 ――具体的発展の要素――教科過程の存在 ―創意工夫 二 学級学校内の巡視は如何にすべきか 1 目的 教師の批評 授業参観して批評は建設的でない ↓学級及児童の美点は何処か ↓教師の問題(日常指導上の)を観察 即ち活動状況実施事項、方法面、教師の煩悶点を知るため 又他の学級及学校の教師及児童を引用して比較研究する PTAの関係 具体的事例 イ 学校経営と教師の実際部面とが相似しているのか否か ロ 男女共学の諸問題 相反するか 融合するか ハ 教師が欠勤した後の児童の活動状況 ニ 進歩的な立案か否か 日案、週案、月案、学期案、年計画案 ホ 自発的の学習か へ 図書、新聞、雑誌の利用 ト 教師児童の相合した授業及種々の試みは如何に チ 民主的な経営及指導 リ 児童の研究記録は如何にしてあるか ヌ 父兄との連絡は如何に ル 児童個性の伸展方法及方策は ヲ 児童の民主的傾向は ワ 学級の給食状況は カ 児童のクラブ活動状況は ヨ 各科の指導方針は タ 学校放送の活用状況は レ 映画利用状況 ソ 学習法↓討論法の目的と研究実際 ツ 時事問題の研究 ネ 補充題材は ナ 学級新聞、学校新聞、壁新聞は ラ 運動場の改善及利用 ム 農園の利用空間地の利用 ウ リクレーシヨン施設 エ 施設及設備 ノ 学級及其他の附近の美化整頓、衛生状況について オ 研究物 ク 特殊児童の補導 ヤ 社会施設の利用 マ 事故防止の訓練 ケ 生産的、報徳的訓練 フ 家庭的訓練 校長は教師の良き相談相手でなくてはならない 求めに応じて 示唆と資料の提供者―識見技術参考資料 2 新しい態度とは何か 総べて友誼的でなければならない 校長対教師 教師対児童 総べて信頼的で 〃 校長対児童 同情的友情的 激励的(校長) 裏面的に常に活動すべき優しい母親の存在 3 常に賞するを第一とする 児童の美点を常に捉えて短所を覆う事 指導に同情的、温情的、建設的に 長所は他学級に伝達する様に 4 学級参観に対して如何にあるべきか 教師は常に校長教頭に何時間目が適当なるかを申出ずべき 優れた実際活動は美点は何処であつたか 個別的に討議すべきだ 職員の常会に話すべきだ 問題を早くから提出して研究して頂くべきだ 常に理論と実際とが結ばれる様に討議すべきだ 三 教師の実地活動の指導は ○指導書の相互研究 学習形態の変化―教師の独裁から児童の興味え 教師の役割は―指導刺戟 激励 教授 ―教師各自が自発的に読むべき ―相互研究(疑問点を)して話し合う ○実地の成果の整理と発展 なす事↓成果の整理↓発展の集積↓無限え― ←努力 ←継続 ←反省 ←教師の喜び 四 学籍簿の運用は ○学籍簿の使用と活用 常時使用すべき帳簿であるべき―学籍簿は新教育の縮図なり工夫、活用、努力↓民主的社会形成者(全人格)として ↓個性の欠陥を矯正する(科学的) ↓記録、観察、実験、質問調査票、面接、検査、測定 ↓教育指導の源泉的意義を持て ○学籍簿利用の方法 児童指導用教師手引に記載される 評価法 学習の単位 学習の結果の評価 適応性と矯正法心理学的教養を持て 五 学校学級の施設の整備 ○児童用の図書教具類の整理 「教育あれで教養なし」 自発性に根ざす民主的学習形態上から重要である 社会科の研究(実態調査 図書 教具) 個人的↓グループ的 ○学校学級の美化衛生給食の施設に付いて 生活環境―美化施設―高尚な趣味 豊富な見識 ―有形無形の美 ―衛生―健康保全と増進 ―家庭と学校の協力 ―食糧事情 ―学校給食―科学的な調理と愛 ―衛生的、経済的、能率的 〘教師の研究活動は如何にあるべきか〙 一 基礎的研究の態度は 1 実際的で専門的であるべき 教育目的達成の要件 ○学問研究の本質である真理探究という自由な精神 ○実際生活を基礎として出発し其の成果が生活に体験づけられて行く ○真理探究↓掘下げた態度―○学究的、科学的 な態度 ○自信を持て ○形式的でない ○体験づける↓広い視野を持つ実際的な態度―2 本質的なものへの追求 六・三制は新しい性格を持つている 基盤は 自由と平等を基調とする民主的な新教育理念を求むべく人間的価値の理念に立脚する 教育者の使命は学級的、科学的、実際的な態度による教養に集結する 即ち、日本を民主的文化的平和国家として成長させる ○法規や図書の研究 ○社会的文化施設諸機関の研究 ○実際生活に即する教育 3 継続的、発展的であるべき 研究的態度の欠陥は継続的、発展的でなかつた 〇一つの研究が終ると終止符をつげるのは不可 広い視野と深い根底に立つ研究でありたい ○無限の成長の一過程的存在であれ 一段づゝ出現の成果を見出す―明日への発展の反省 ――継続 教育↓社会の実相と文化の成長を反映―一大革新させる 4 共同的である 個人の研究活動が基礎である―共同研究が更に肝要である ○各個人の努力の集積が組織を通して 総和の持つ偉力を期待する ○独善的になり易い教育界を共同して事に当るのが今後の進むべき行方だと思う 二 研究活動と図書館其の他に付いて 1 調査と其の資料 教員の研究活動と図書館は密接な関係である 読書研究は精神の糧である 図書館の存在の必要 学校図書館↓都市、学校勤務中は出来ない故に 特に 教育 ―心理 ―哲学 ―社会学――座右の銘とすべきだ 旅行記―物語伝記小説詩集美術音楽―補助教材 雑誌―ラジオ新聞切抜帳―利用 大学研究室の利用 三 各種研究機関の利用 1 各研究機関の調査とその利用 教育に関連のある研究機関と連絡をとるべき (大学、師範学校、国立、私立の教育研究学校) (図書館、研修所、研究室) (同種の学校の研究事項)―参観 講師の招持 2 地区研究組織の計画 共同研究―共通した事項の研究 研究協議会 新しい知識を得る 資料を蒐集する 特に社会科、職業指導、自由研究は重視すべき 四 研究成果の発表 書くことは話す以上に自己思想を統一し体系づける 教員はまとまつた発表をする事が大切―書くことも話すことも 1 将来の研究発表は 自主的は勿論である 中央の試案に熟考的である ○学校自体から生れる提案であるべき ←地区的研究 討論 批判 修正↓自己を磨き 刺激 教材論 原理論 方法論 施設設備論 学習効果の判定 学習形態 教科別の経営方法 学籍簿 五 新検査法の研究と活用 知能―学習性格―標準テスト正否法―完成法論文法―評価法 試験法―構成等級 適性―対照法多岐撰択法―○児童指導の上に適切有効に利用するか―要は科学的な指導 〘教師の社会的活動は如何にあるべきか〙 一 学校と社会との関係は如何にあるべき 郷土(市町村)は児童が社会を学ぶ生活の中心であり実験室である ○経験や生活態度を学習する ○民主国家人として素直に健康に成長する事を誰も望む ○学校も父兄も村も一体となつて教育の責任を分ち合う ○教育環境を整える―学校は文化の中心 ―村の生活から離されない ○村民総意と要望を教育に反映し協力と援助を与えるだらう 学校と社会が結ばれて民主教育の効果がある 二 学校と社会をつなぐ者は誰か 1 疎かつた学校と社会を密接にする者は校長、教師である 村の人の毎日の生活が学校につながり教育の理解と熱情が強固になり持続する所に新しい教育がある 2 校長教師は高い教育理想を持て 共同の問題に深い関心 村人と親しく語り合う―実態をつかむ―正確に社会改善に協力すべし 特に政治経済産業に関心を持つべし↓学習活動←思想↓書物雑誌映画 3 民主教育の根底は 村民と協力して村民の問題に献心的解決に意を注ぐ 三 学校と社会はどうして結ばれるか 1 社会が財政的援助を与える 両者の間柄を密接にする 2 相互のよりよい深い関心と理解をする イ PTAを大いに活用すること 家庭と学校と社会とが責任を分ち合う 子供を幸福に 学校をよくし 社会を改善する 会の適切な運用が社会と学校を結びつける 健全発達のため骨を惜しむ勿れ ロ 学校の教育計画に参加させる 教科の内容は児童の必要と興味によつて撰択塩梅する 教育委員会を通じて地方の実情意向を教育に反映する 広く大いに多人数を教育に参加させる(助言者、忠告者) 例 教育に理解ある人 経験の深い人 計画実行性のある人 学識々見のある人 篤農家 婦人会―家事技術家 男女青年団 職業代表者 ハ 学校の施設を一般に開放する ○正規の授業を妨げない範囲に於いて一般に開放する 学校図書室 実験室 作業室 家庭室 空いている室 音楽会 学芸会 展覧会 運動場 映画会 ○教育の雰囲気が乱されてはならない ○開放規則 学校長 村長 地方の有力者 児童の代表者が慎重に考えて ○規則の厳守 秩序の維持 教師と委員の定めた点に必らず素直に従う ○随時随所にて指導 ニ 学校が社会に奉仕する 教師も児童も社会に奉仕する心構と実践が必要 ○村の美化計画―道路清掃 ○農作物の害虫駆除―〓虫駆除、いなご取等 ○防疫作業―種々な調査 ○農繁短縮―家事手伝、労力奉仕 教師は常によい相談相手となる ホ 各種の実態調査をする 人口調査―産業状態資源交通状況――科学的な統計調査―知能発達程度に応じ 社会科のよき指導 協力と援助が常に必要 へ 各種の社会施設を利用する 農業協同組合―指導農場牛乳集荷場製材所工場―利用―休暇利用 見学―実習 ト 地方文化に深い関心を持て 文化の理解は新しい方向づけとなる―社会的使命 文化の背景――産業状況――各所史蹟――文化の認識を得る 四 社会活動の限界は 社会活動の範囲は広い 限界と軽重が必要 校長は常に教師を助けて民主的な教育理想を実現すべく教育的 効果をあげよりよい教育への――強い意志と聖らかな教育的な熱情 ―冷厳な理性による教育理念への反省 どうすれば教育効果が十分に挙がるか 有効 新しい教授法として教室を拡げて社会を取り入れる方法で社会的に、人間的に、教養に、知識技能を修得 社会の変化はさけられない 要は 社会と学校に貢献する (成瀬村役場「庶務書類」(昭和二十四年)伊勢原市役所蔵) 〔注〕表紙欠。 一六八 中郡成瀬村小学校時報創刊号 成小時報 創刊号 六・三制実施せられて二年は過ぎ三年を迎えました。 「敗戦日本を救うは教育にあり」という言葉は民衆の声であり又我々担当せる実さい家にあつては喜びであり又責任の益々大であることを痛感しています。 将に三年、実を結ぶべき時は来ました。 元より教育は教師のみによつて出来得べきものでない事は今更申上げる必要はありません。 家庭、学校、社会(村、国家)が真に一体となつてこそ、効果があるべきである。 学校にのみは偏知になり易く家庭のみでは偏情的に社会だけでは放任的になり何れを軽重する事は出来なく調和があつてこそ民主的な平和な新しい国家が出来ると思います。 かゝる意味に於いて学校の方針を述べ又家庭及村民の声を充分に聞き村の子供、国家の子供世界に通ずる教育を実施したい点よりこの「成小時報」 を刊行した理であります。 月に二、三回出したいと思います。 右記の理由でありますので、各家庭に必らず回覧して頂きたいと思います。 そして御意見や希望がありましたら、この紙の裏面によめるようにていねいに無記名で書いて下さい。 誠に恐縮ですが、伍長さんかPTAの役員の方でも結構ですから自発的にお廻し下さい。 最後の方は近所の子供さんにたのんで学校に持つて来て頂くようにお願いします。 成瀬小学校長 小柴俊也 学校だより 新しい先生 越地英三先生 転任の先生 大村弘廸先生(秦野中学校へ) 退職の先生 府川多津子先生 二十四年度の受持の先生 一年 A 小林ハツ先生 一年 B 長沢千恵子先生 二年 A 高橋すま先生 二年 B 重田美代子先生 三年 A 武田幸子先生 三年 B 松井慶四郎先生 四年 A 梠田金作先生 四年 B 大貫幸子先生 五年 A 溝呂木喜代子先生 五年 B 越地英三先生 六年 A (福住菊治先生 梶山洽子先生 六年 B (牧口矩伯先生 松本安司先生 成小の子供の数 受持先生のきめ方 三月二十四日、二十五日の二日間 1 先生方の第一、第二希望提出(多くあるため) 2 全員投票によりまとめる 3 案の提出 4 学校長の決定 四月の主なる行事 一日 一年入学式 五日 始業式、新任、転任、退職先生の挨拶式 六日 学級委員せんきよ 九日 自治会 一五日 身体検査 美化作業 二〇日 貯金日 二五日 遠足打合せ 二九日 天皇誕生日 其の他 給食開始十一日頃 職員研究協議会(時々) 特別事項 ◎お祭のため授業は短縮致しません(進駐軍指令) 校舎校地の使用について 1 教育目的には村長校長に申出 2 其の他一切は届出 A 集合届(五日前)警察 B 使用届(校長)三日前 3 政治関係政党関係は禁止 4 明細は村長又は校長に問合せされたい(進駐軍指令) 学校行事の内容の説明 △学級委員とは 自分の学級の向上を計るために意見をきいたり運営をする人先生と相談相手ともなる △自治会とは 学校及校外の生活を向上させるため自主的な活動(計画実行)を教師の指導のもとに行う △身体検査 身長、体重、胸囲、座高 座高が又新しくなる 医者、歯医者の検査 △美化作業 学校内をきれいに整頓する(修繕、花かざり) △貯金日とは 貯蓄精神の養成のため 二十三年度の貯金は九万九二一五円九〇銭 累計は 一九万九三五円一〇銭 △天皇誕生日 式はありません 国旗を立てゝ下さい △遠足 五月になつてから五、六年には横浜の貿易博覧会にやらして下さい お祭りのお小使を倹約してね △研究協議会 先生方が子供を幸福にし又自分をみがくための会で校長をぬきにした会 △ナトコ映画 近い内にあります △PTA 近い内に総会を開きます 規約も改正全員出席しないと成立しません (成瀬村役場「庶務書類」(昭和二十四年)伊勢原市役所蔵) 一六九 農地改革に関する歎願書 農地委員会長殿 竹中静恵(印) 歎願書 今般私儀所有ノ神奈川県高座郡相模原町淵野辺字岳ノ内上在耕作地ハ自作農創設特別措置法ニ依リ買収対象ニ指定セラレタルニ付別紙ノ如ク規定ニヨリ異議ノ申立書ヲ提出致シタルモ決シテ法ノ趣旨及御地委員会ノ決定ニ対不当ナル措置トシテ抗弁異議ヲ申立テタルモノニ絶対無之申立理由中ニ述ベタル如ク引揚者タル甥ヲシテ其ノ修得セル才能ヲ活用シ農業ニ挺身セシメタルニ於テハ農地ヲ最高度ニ活用食糧増産ニ寄与セシメルト共ニ引揚者救済援護ノ一石二鳥ノ成果ヲ揚ゲルコトヽナリ此ノ方針並ニ事情ヲ御同情御賢察賜リ度彼等ノ住宅モ早急ニ御地ニ建築致ス所存ナルニ付テハ今一応御協議賜度茲ニ歎願申上候也 六月二十日 (大野村役場「農地改革ニ伴フ歎願書陳情書等(仮題)」(昭和二十二年)相模原市立図書館蔵) 〔注〕別紙欠。 一七〇 農地改革数え唄 牧馬部落前村議沢田義平氏は本誌発刊に際し、次のような数へ唄を寄せられた。 此処に掲げ厚く謝意を表する次第である。 農地改革数へ唄 一ツトセ 一筆毎に調査して国の増産計らんと農地改革案をたつ 二ツトセ 不在地主や社、寺所有貸付農地は開放と保有農地は限度制 三ツトセ 見よや国法無理はせぬ地主自小作各々の委員は我が手で選ばれる 四ツトセ 欲は互の持前でいさゝか争議も無理はない調停役は委員会 五ツトセ 今更法には背かねど証券手にして泣く地主思へば心が偲ばれる 六ツトセ 無言ぢやいるけど受けし土地真心こめて増産に努めて感謝の意を表す 七ツトセ 中に委員は補助員と共に協力この土地に黄金の穂波打たせけり 八ツトセ やがて開かる農地発会長委員の労を謝し合せて地主に手を合はす 九ツトセ 交換分合進めつゝ小作契約文書とし綴つてこゝに納まれり 十ツトセ 共に応へん国策に互に努めん増産に栄ゆる御国の礎ぞ 因に同氏は当時補助員として本改革に御努力願つたことを附記する (牧野村農地委員会編「牧野村農地改革誌」(昭和二十六年)藤野町役場蔵) 一七一 足柄下郡湯本町町民の政治関心調査結果 二十一学収二九号 昭和二十一年三月五日 足柄下地方事務所長 湯本町長殿 国民政治関心調査ノ件 今般民主主義ニ対スル理解ノ程度具体的時局問題ニ対スル関心並理解程度等国民ノ政治関心調査ヲ実施致度ニ付左記事項御了知ノ上調査報告相成様御配意相成度 追而右ハ貴官ニ於カレテモ之ガ調査資料ニ基キ適切ナル対策樹立ノ資トセラレ度 尚之ヲ以テ選挙干渉ノ手段トスルガ如キ疑ヲ与ヘザルヤウ実施上特ニ留意セラレタク為念 記 一 調査事項ハ別表ノ通二十二問ニ付之ヲ行フコト 二 各町村ニ適当ナル機関ヲ利用シテ二〇名以上ニ付調査スルコト 三 調査ノ上ハ右資料ヲ取マトメ別記ノ如キ集計表ヲ作製シ三月十三日地方事務所学務課宛提出スルコト コノ際個人調査表ハ送付ニ及バズ 四 調査範囲ハ国民各階層ニ亘リ職業、年齢、性別等種々雑多ナルヲ可トス 五 集計表様式ハ裏面記載要領ヲ参照セラレ度 国民政治関心調査集計表 市町村名 以下二十二問ノ八迄各欄ヲ作ルコト (備考) 1 各欄共夫々回答用紙ニ記入セラレタル○ノ数ヲ記入スルコト 2 二十及二十一問ハ第三位迄二十二問ハ〇三ツマデヲ限度トシテ集計スルコト 国民政治関心調査表 一 調査期日 昭和二十一年三月十四日 二 調査場所 神奈川県足柄下郡湯本町 三 回答者 職業性別年齢ヲ記入スルコト 無記名ノコト 四 方法 イ 一番適当と思ふ答に一つだけ○印をつけて下さい ロ 示された答の中に自分の答が思ふやうに付けられぬ時は別に書き入れること 一 日本は何故敗けたと思ふか 1 日本の兵隊が弱かつたから 2 科学が外国より劣つてゐたから 3 一部の軍人が政権を取つて勝手な政治を行つたから 4 国民全体の道義が頽廃してゐたから 5 議会が腐敗していたから 6 分りません 二 戦時中の自分の行動を省みて如何思ふか 1 省みてやましくない行動を取つたつもりである 2 戦争に対する協力が足らなかつたことを懴悔してゐる 3 敗戦と分つてゐたので故意に協力しなかつた 4 自分も至らなかつたが政府のやり方も悪かつたと思ふ 三 過去を省みて議会政治の如何なる点が悪かつたと思ふか 1 選挙が腐敗してゐた 2 国民の日常生活が直接政治に反映してゐなかつた 3 議員が財閥と結託して利権あさりしてゐた 4 議会の権限が制限されてゐた 5 婦人参政権が与へられてゐなかつた 6 政党にはつきりした政策がなかつた 7 分りません 四 何故に選挙が腐敗してゐたか 1 国民の政治的関心がなかつた 2 買収が行はれた 3 情実によつて選挙された 4 官の干渉が強かつた 5 正しい政治教育が行はれなかつた 6 分りません 五 日本が平和国家として立上る為に先づ何を為すべきか 1 産業を復興せねばならぬ 2 民主主義を徹底せねばならぬ 3 文化を向上させねばならぬ 4 国内の争を止めねばならぬ 5 戦争責任者を処罰せねばならぬ 6 国民生活を安定させねばならぬ 7 分りません 六 民主々義の政治とは如何云ふ政治か 1 政府が国民の要求を聞いて国民の為の政治をすること 2 国民が主体となつて政治をとること 3 国民が政治に参与すること 4 国民の間で日常の色々の問題を処理してゆくこと 5 分りません 七 今度の総選挙は如何なる理由で行はれるか 1 議会が国民の意志を反映せぬものとして解散されたため 2 マツカーサー司令部の命令による 3 国内政治を刷新して民主生活を実現するため 4 分りません 八 初めて選挙権を与へられて如何なる感想をもつか 1 連合軍の指令によつて与へられたのだから一向有難くない 2 有り難い選挙権を有効に使はねばならぬと思ふ 3 選挙権を貰ふより米の一俵でも貰ふ方がよい 4 選挙権は有難いが如何使つてよいか分らない 九 総選挙は何日行はれるか 1 三月二十日 2 四月十日 3 三月三十一日 4 まだきまつてゐない 5 何日か知らない 一〇 選挙権は何歳以上の者に与へられてゐるか 1 満十八歳以上 2 満二十五歳以上 3 満二十歳以上 4 満二十一歳以上 5 何歳か知らない 一一 被選挙権は何歳以上の者に与へられてゐるか 1 満十八歳以上 2 満二十五歳以上 3 満二十歳以上 4 満二十一歳以上 5 何歳か知らない 一二 今度の選挙には如何なる態度で臨むか 1 自分の判断で選ぶ自信がある 2 新聞や講演会で候補者の人格識見をよく知つた上で選挙する 3 別に努力せずとも噂を聞いて居れば大体選ぶ人の見当がつくと思ふ 4 自分では知らぬから誰かに聞いて教へて貰ふつもりである 5 適任者がないから棄権する 一三 何を規準にして投票するか 1 自分がよいと思ふ政党に属する人を選ぶ 2 政党の政策とは関係なく其の人の政見を調べた上で選ぶ 3 政見よりも人物のしつかりした人を選ぶ 4 政見と人物の両面から選ぶ 5 好感のもてる人を選ぶ 6 誰れを選んでよいか分りません 一四 適当な人が見つからぬときは如何にするか 1 次善の人を選ぶ 2 棄権する 3 自分の信念を実現して呉れる人を推薦して立候補させる 4 自分で立候補する 5 分りません 一五 如何なる政策を実現したいか 1 現在の政府の政策を漸次民主的に改革する必要があると思ふ 2 統制のない自由な社会を実現したい 3 国民が大体平等な生活を送る様な社会にしたい 4 財産を全部国有にして公平に分けるがよい 5 政策のことは分らない 一六 すべての面で統制を撤廃した方がよいと思ふか 1 統制をやめれば却つて不公平になるから不可ない 2 統制をやめてすべてを自由にする方がよい 3 従来の統制を緩和する程度がよい 4 統制は益々強化すべきである 5 分りません 一七 米の供出について如何に考へるか 1 戦時中だまされて供出したから今後は絶対に供出しない 2 買上価格が安いから供出の少ないのは当り前である 3 政府の割当が不当であるから到底供出できない 4 国民全体の為に無理を押しても供出せねばならない 5 農村の必需品(農具、肥料等)を貰へばいくらも供出する 6 不作の為に供出出来ない 7 分りません 一八 食糧問題の解決は如何すればよいか 1 配給方法がまづいから之を改善せねばならない 2 農民は今迄の数倍も働くべきである 3 農業技術を改善し肥料を供給すべきである 4 連合軍に交渉して外米を移入すべきである 5 復員軍人や失業者を動員して大いに開墾すべきである 6 強権を発動して供出を促進すべきである 7 闇売を厳禁すべきである 8 方法がない 9 分りません 一九 失業問題の解決は如何すればよいか 1 政府で土木事業を起して就職させればよい 2 未耕地を開墾させるがよい 3 連合軍の許可を得て移民するがよい 4 炭鉱に送るがよい 5 工業を盛んにするがよい 6 方法がない 二〇 現在日本の政治問題で何を一番に解決すべきか(第三位まで重要な問題から番号をつけること) 1 憲法を改正すること 2 失業問題を解決すること 3 労働組合を整備すること 4 インフレーシヨンを防止すること 5 食糧問題を解決すること 6 在外同胞の引揚を促進すること 7 戦災者を援護すること 8 工業を振興すること 9 国民の教育水準を引上げること 10 輸送を円滑にすること 11 治安を維持すること 12 国際的信用を獲得すること 二一 貴方の町村で現在何の問題を速やかに解決すべきか(重要な問題から番号をつけること、第三位まで) 1 復員軍人に定職を与へること 2 沈滞した町村の気風を刷新すること 3 治安を回復すること 4 米の供出を促進すること 5 町村民の教養施設を作ること 6 部落設備を作ること 7 町村長以下の復員を交代させること 8 青年学校を整備すること 9 農業会の組織をかへること 10 町村民の生活を合理化すること 11 産業を興すこと 二二 貴方の教養のためにどんな方法を採つて居るか(二つ以上の方法を採つている者はそれ〴〵に○をつけること) 1 毎朝新聞を読んでゐる 2 毎月雑誌をよんでゐる 3 努めて講演会をきゝにゆく 4 研究会を聞いてお互の教養につとめている 5 ラヂオを聞いてゐる 6 巡回文庫を利用してゐる 7 学者の本をよんでゐる 8 特に努力してゐない (湯本町役場「庶務書類」(昭和二十一年)箱根町役場蔵) 〔注〕問一三の六の集計欄は欠。 一七二 憲法精神普及徹底の指導者講習会の件通知 中学第八一号 昭和二十二年三月二十四日 中地方事務所長 各町村長学校長殿 憲法精神普及徹底指導者講習会開催について 曩に公布せられた新憲法精神の普及徹底を図り県民生活のうちに深く浸透せしめ民主的文化日本の急速な実現を期する為標記講習会左記に依り実施せらるゝ事になりましたので貴職に於て適格者推薦の上受講せしめられたい 記 憲法精神普及徹底指導者講習会開催要項 一 趣旨 社会教育係官並に社会教育関係団体指導者層を一同に会し新憲法精神の真諦を把握せしめんとする 二 受講者 社会教育係官並に関係係官、婦人団体、母親学校、青年団体、産業団体、其の他一般有識者等の指導者たるべきもの 三 開催場所並日程は左表の通り 会場 参加範囲 期日及時間 講師 横浜第一高女校 横浜市五〇名 三月二十八日 未定 川崎市 三月三十日 大津国民学校 横須賀市 三月二十七日 金目村国民学校 中地方事務所管下 三月二十七日 鎌倉御成国民学校藤沢市湘南中学 高座鎌倉地方事務所管下 三月二十八日 小田原市本町国民学校 足柄下 〃 三月二十九日 未定 足柄上 〃 三月三十日 厚木国民学校 愛甲 〃 三月二十八日 中野 〃 津久井 〃 三月二十九日 三崎 〃 三浦 〃 三月三十日 (大山町役場「庶務書類」(昭和二十一年)伊勢原市役所蔵) 一七三 憲法普及に関する実施事項および計画案 中学第一二三号 昭和二十二年四月二十一日 中地方事務所長 市町村長 小学校長 中等学校長青年学校長殿 憲法普及に関する実施事項及八月迄の計画案 標記の件に関し憲法普及会神奈川県支部から左記の通り通知がありましたから市町村並に各学校におかれては新憲法精神普及徹底のため特別の御協力と御参加を願ひたい 記 実施事項及八月迄の計画案(四・一六) 憲法普及会神奈川県支部 (大山町役場「庶務書類」(昭和二十一年)伊勢原市役所蔵) 一七四 憲法施行記念週間 新憲法施行記念週間 憲法普及会神奈川県支部 一 期日 自 昭和二十二年五月三日 至 〃 五月九日 二 実施事項 1 ㈠ 記念講演会 一回 支部主催 イ 日時 五月五日 午后一時より仝四時迄 ロ 場所 横浜市内 ハ 講師 中央より招へい ニ 聴講者 一般市民、各学校教職員及青年会婦人会等の幹部 ホ 備考 ㈡ 都合によつては映画、演芸等を加ふ ○各官衙に於ける記念式典 2 各学校(小中)に於ける行事 各学校主催 イ 記念式典挙行 ロ 新憲法講演会(事情の許す限り) ハ 記念体育会、記念音楽会、記念学芸会、記念展らん会等各学校の事情に即したものを開催する ニ 標語による宣伝 学校生徒、児童の考案によるもの或は他の標語を清書し学校、劇場、街頭、店頭、車内等に掲出する 3 新憲法施行記念都市訪問、駅伝競走 川崎市出発……………湯ケ原町決勝 神奈川県体育会、読売新聞支局と共催 4 青少年団、婦人会及各種団体の行事 各団体主催 講演会、座談会、討論会等の開催 5 新憲法に関する青年弁論大会 神奈川新聞社、神奈川県青年団連盟と共催 五月八日 6 工場、事業場等に於ける行事 記念体育会、座談会、討論会等の開催 7 各町内、各部落関係行事 イ 五月三日国旗掲揚(マ司令部の許可を得て) ロ 各町内又部落毎に夫々の自治団体による記念式典挙行 8 記念映画の観覧 イ 憲法普及会本部製作の新憲法に関する映画を一斉封切予定 につき一般に観覧する様慫慂する ロ 各学校の児童生徒に対し前記映画の便宜な観覧方斡旋の予定 9 印刷物配布 「解説付憲法条文パンフレツト」(各戸に)「民主団体とは」 「新憲法早わかり」(二種共各町、各部落に) 10 記念事業 イ 記念植林 ―ロ 記念運動場――各市町村各学校等に於て適宜実施のこと ハ 記念図書館 各市町村、各学校、各団体に於て公民館の施設の一部として考慮するか単独に創設される ニ 県立図書館、新憲法記念館と共に考究したい 論文募集 憲法普及会神奈川県支部神奈川新聞社共催 一 趣旨 新憲法の精神を闡明し更に進んでこれが県民の日常生活の実際に言及する 二 課題 三部門に分つ 1 一般の部 新憲法を論じ県民生活の実際に及ぶ 2 中等諸学校の部 新憲法に対する吾等の覚悟 3 国民学校の部 私達の新憲法 三 応募規定 1 〆切 昭和廿二年五月三十一日 2 結果発表 昭和廿二年六月三十日 3 応募点数及分量 イ 一般の部 県民一般(点数自由)六千字(四百字詰十五枚)以内 ロ 中等校の部 各中等学校(青年学校も含む)弐点宛 弐千字(四百字詰五枚)以内 ハ 小学校の部 各小学校(五年以上)の弐点宛 八百字 (四百字詰弐枚)以内 4 原稿 楷書で句読点をつける 四 審査員 各部共五名の審査員を委嘱する 五 賞金 1 一般の部 一等一名(千円)二等二名(五百円宛) 三等三名(弐百円宛) 2 中等校の部 一等一名(三百円程度の品物) 二等二名(弐百円程度の品物) 三等三名(百円程度の品物) 3 小学校の部 一等一名(二百円程度の品物) 二等三名(百円程度の品物) 三等五名(五十円程度の品物) 六 其の他 1 原稿は神奈川県社会教育課内憲法普及会神奈川県支部宛送附する 尚一般の部は住所氏名職業年齢を学校の部は学校名学年氏名を書く 2 当選論文は新聞紙上に掲載したい 以上 (大山町役場「庶務書類」(昭和二十一年)伊勢原市役所蔵) 一七五 憲法施行記念週間行事および憲法に関する論文の募集の件通知 昭和二十二年四月二十三日 足柄下地方事務所長(印) 各小学校長中学校長市町村長殿 新憲法施行記念週間行事及新憲法に関する論文の募集に就て 昨年十一月三日公布された新憲法は愈々来る五月三日より実施せらるゝ事となり文化日本の建設に力強き一歩をふみ出すことになりました。就いては憲法普及会神奈川県支部に於て此曠古の盛典を記念し新日本の建全な発展を祝福するために標記の件世話人会の議を経て左記の通り実施する様依頼がきましたので関係各方面に徹底の上これが目的の達成に十分御協力願いたい。 記 一 新憲法施行記念週間行事 別紙の通り 特に 2 各官衙に於ける記念式典を夫々盛大に挙行されたい 3 各中小学校に於ける行事は小学校青年学校に対し然るべく連絡の上実施方御取計願いたい。 5 青少年団婦人会及各種団体の行事は青少年団に就いては県青年団連盟、各郡市関係団に又婦人会に就いては横浜市婦人団体連合会、川崎市婦人連盟、新生横須賀市婦人会、神奈川県婦人文化協会には夫々当支部より連絡の筈につき御含みの上御配慮願いたい。 8 各町内各部落の自治団体行事は夫々実施方奨励願いたい。 9 記念映画の観覧は一般に対しては適宜の方法により観覧方慫慂されたく各学校の児童生徒に対して適宜の方法で観覧出来る様斡旋方御願いたしたい。 10 印刷物配布は三種類共週間中に配布の予定で「民主団体とは」「新憲法早わかり」の二種は部数が少い(各町内、部落、団体等に一部)関係上利用方について特に御考慮を煩したい。 11 記念事業中記念植林は イ 県林務課に苗木の斡旋を申込まるゝ向は次の表に記載の上五月廿日迄に申出られたい(各市、各事務所にて取りまとめの上、中等学校には直接当支部より連絡する)。 ロ 苗木代は一・五円―三円程度で県より若干の補助ある見込。 ハ 当支部に於て申込の取まとめの上県林務課に申入をなし其の状況に就いては追つて連絡する。 (仙石原村役場「庶務書類」(昭和二十二年)箱根町役場蔵) 〔注〕別紙欠。 一七六 憲法普及会編「新しい憲法明るい生活」配付の件通知 昭和二十二年四月二十五日 足柄下地方事務所長(印) 各町村長殿 憲法普及会編パンフレツト「新しい憲法明るい生活」 配付の件 憲法普及会編パンフレツト「新しい憲法明るい生活」を左記により配付致しますから夫々貴町村各戸に洩れなく配付の上十分之を利用して新憲法精神の普及徹底の一助とされる様御配慮願ひます 尚 五月三日迄に各戸に配付する必要がありますので地方事務所に御出の折学務課より受領せられ度 記 (湯本町役場「庶務書類」(昭和二十二年)箱根町役場所蔵) 一七七 憲法討論会要領 「新憲法討論会」の開き方 一 趣旨 さきに公布された新憲法にはこれからの日本の進むべき方向と原則とが示されてゐる。国民の一人一人はこの新憲法の精神と内容とを誤りなく理解してそれ〴〵の生活を建設して行かねばならぬが特に新日本の先駆者となるべき青年に於て然りである。新憲法を理解するためには適当な書物に親しんで研究することも必要であるが同時にその研究の結果についてみんなの間で討論することが大切なのである。討論はある問題についてみんなが考えているところをお互に述べ会つて正しい結論のために協力することでありそれによつてみんなが偏見のない正しい考へ方を持つことができるばかりでなく新しい見地から一層深い研究をするやう刺戟することゝもなる有数な方法である。 この際青年諸君のグループ(青年団女子青年団或は青年を母胎とする読書会修養会文化会等の青年文化団体など)の間で「新憲法討論会」のような集りが盛んに開かれ新憲法研究の熱が大いに高まつて憲法の線に沿つて物事を民主的に解決する習慣が養われていて社会一般に新憲法の精神が日常生活化されるやうになることが望ましい。 二 論題 「新憲法討論会」にふすべき論題として凡そ次のやうな問題が考へられてゐる。 1 明治憲法は何故に改正されねばならなかつたか 2 新憲法と明治憲法とはどのような相違点をもつか 3 新憲法の精神はどんな原則に立つてゐるか 4 国民主権とはどんなことか天皇の地位についてどう考へるべ きか 5 戦争放棄の将来はどうなるかもし他国より戦争をしかけられたときはどうすべきか 6 基本的人権とは何か国民の自由と権利とを尊重する結果社会の秩序が乱れることはないか 7 新憲法はわれ〳〵の日常生活にどんな関連を持つてゐるか 8 いかにすれば新憲法の精神を日常生活化することができるか 三 討論の形式 討論会の形式はその議題により参加するものゝ知識や教養の程度によりまた中心に立つ司会者の能力によつていろ〳〵の方法があらう。参会者はあまり多人数にならぬ方が望ましく大体五十人内外が適当と思はれるから部落会町内会などの狭い範囲で集まつた方がよい。 大別して次のような方式をとる場合が多いと思う。 ⑴ 円卓式討論 人数が少く例へば三十人以下のような場合しかもみんなが議題について相当の理解を持つている際にはこの方式が一番相応しこの方式は一人の司会者を中心にして円く座を占めみんなが自由に発言し司会者の進行に従つて結論を導く方法であるが参加者の準備次第で効果をあげることができる。 ⑵ 講義式討論 この方法は⑴の場合よりも人数の多い場合に一人又は数人の講師を依頼して一応議題となつてゐる事項について解説を願ひそれが終つたあとで参加者から質してそれを素材として相互に討論をすゝめて行くやり方である。この際参加者が前もつて司会者の手元まで質問事項を差出し司会者がこれを整理して講師に手渡し答へて貰ふこともあり得る。 このほかにいろ〳〵の形式もあらうが「新憲法討論会」ではみんなのものが参加するような着意からそれ〴〵独自な形式を工夫するのが望ましい。 四 指導者について 討論の進行を指導して貰ふために先輩や有識者などを頼む場合でも出来るだけ平常指導を願へるような人が望ましいのであるが適当な人の見当らぬ場合には他から招いて指導して貰ふことも考へられる。しかしながらこれ等の人々はどこまでも会の進行のために脇役的な立場に立つので必要な助言は結構であるが会員の意見をその人の考へ通りに導いて行くことのないような注意が必要であらう。 五 準備 ⑴ 主催者は会の開催に先立ち議題の中心問題となるような点あるいは討論の順序などについて考へておきまた議題に関連する研究事項について簡単な参考資料(例へば憲法の正文など)を準備してみんなが積極的な関心をもつて討論に臨むよう配慮することが必要である。 ⑵ 予め数名の発言者を指定して置いてこれ等の人々に討論の緒を切つて貰ひその話題を中心として討論をすゝめるようにして活発な討論の空気が生れるように準備することも一方法である。 ⑶ 会場は殺風景な肩苦しいものにならぬよう座席などもみんなが平等な立場で自由に話し合えるよう留意し黒板や参考書などは必要に応じて準備しておくことが望ましい。 六 司会者として注意すべき事項 ⑴ 司会者は会の進行と会員の意見発表の取纒めに責任を持つものであるから討論の渦中に入つて流されることなくいつも大処高処から討論の全体に気をくばつて会員が充分その意を尽し正しい討論に進むことが出来るやうな工夫と努力とを払ふことが大切である。 ⑵ 会員の発言が中心の議題からはずれるような場合には随時に注意し討論がその議題を中心に正しく円滑に進むよう心を配ることが必要である。 ⑶ 司会者は結論を急いで参加者に充分意を尽させないことのないよう注意したい。 ⑷ 全然発言しない者のある場合は指名とか質問の形で討論に参加させるよう仕向けることが望ましい。 ⑸ 参加者が不得要領の議論をする場合でもその意を汲んでその意味を補足したりまた随時にそれまでの意見に一応の締めくゝりをつけたりして常に全体が新しい関心を持つて次の議論に発展するように導くべきである。 ⑹ 解決不能の事項に出会つた時には直ちに結論を与えずになるべく会員相互に解決するように導き又は臨席の指導者の意見をきくとかまた司会者としても研究の上後日答えるようにして問題を留保するのがよいであらう。 ⑺ 結論を導く際にもできるだけ各人の発言の中に含まれた取り上ぐべき点を活かすようにも司会者としては結論までの大要を報告して全員が道筋をはつきり理解できるように留意することが必要である。 六 討論者として注意すべき事項 ⑴ 討論に際してはいつも寛容の精神を忘れて努めて感情的にならぬようにして故意に枝葉の問題などに揚げ脚をとつたり心にもない罵倒嘲笑などに陥らぬようにする ⑵ 意見の発表には自己の経験と事実とに則して率直簡明に述べることゝし余り抽象的な議論に走らぬようにする ⑶ 参加者は発言者の言葉をよく聞いて疑問の点があれば理解できる迄冷静にその真意をたゞし同じ質問や議論などを蒸しかえさぬようにする ⑷ 討論中の放心や沈黙は討論が無意義になるし又参加者としての責任を欠くことになるからそのようなことのないやうにする ⑸ 全体の協力によつて達した結論や決議に対してはこれを尊重し責任をもつてこれに従う習慣を養うようにする 七 備考 以上は討論のための一つの参考であるが、参加者はこの精神をよく吟味していろ〳〵研究し最も適切な方法をつくり出して欲しい (平塚市立第二青年学校平塚市第二実務女学校「往復文書綴」(昭和二十二年)平塚市教育研究所蔵) 一七八 憲法の普及徹底の件通知 中学第一〇七号 昭和二十二年四月十五日 中地方事務所長 市長 町村長国民学校長青年学校長殿 新憲法の普及徹底について 憲法の普及徹底については曩に憲法普及会神奈川県支部が発足し既に活発な活動を展開しつゝあり、三月二十七日附中学第七五号にて憲法討論会の開催を奨励するなど極力その実効を期するやうに努めつゝあるのであるが来る五月三日の施行期日を目前に控へ新憲法を普く国民に滲透徹底させることは目下の急務であり、その為には県憲法普及会支部等より委嘱するものゝ外国民自身の自発的活動として憲法普及に関する講座講習会等を更に積極的、効果的に実施されることが望ましいので昭和二十二年度の事業計画を樹立される際にも左記事項を御留意の上新憲法の普及徹底について万遺憾なきを期せられたい。 記 一 憲法普及講座、講習会等は出来るだけ国民の自発的な活動として民間の社会教育団体、文化団体、青年団体、婦人団体等によつて自主的継続的に開催されるよう勧奨されたいこと。 二 「父母と先生の会」については神奈川県第一高等女学校、小田原市本町国民学校にて民間情報教育部の方々の講演会がありましたし「父母と先生の会」の参考資料も後日送附することにしていますが同会の結成を促進すると共に同会の事業として憲法に関する講座、講習会等を自発的に継続的に開催するよう奨励すること。 三 国民学校等に於ける母親学級、公民館に於ける教養部の事業としても憲法に関する講座を取入れるよう奨励すること。 四 右の講座、講習会等は農閑期、業閑期、殊に夜間等を利用して出来るだけ多数の参加者を得るよう努められ度い。 五 講座等開設に際しては必要な資料を出来るだけ多く作製の上聴取者の便に役し一般にも頒布するよう努めると共に幻燈映画、紙芝居等の利用についても考慮せられたいこと。 六 右の講座、講習会等の経費に関しては成るべく主催者側の負担とすることが望ましいが、市、町、村に於ても補助金を交付するなど出来るだけ援助を与へるよう努められたいこと。 備考 文部省より新憲法普及の資料として「新しい憲法のお話」(小学校五・六年程度)を作製五月上旬頃全国の小学校に頒布する予定であるから一般の講座等に於ても適宜に利用され度いこと。 (平塚市立第二青年学校平塚市第二実務女学校「往復文書綴」(昭和二十二年)平塚市教育研究所蔵) 一七九 憲法実施記念郡市対抗駅伝競争第一回打合会事項ならびに第二回全日本毎日マラソン大会要項に関する件通知 中学第一三二号 昭和二十二年四月二十二日 中地方事務所長 市町村長青年団長青年学校長殿 憲法実施記念郡市対抗駅伝競争第一回打合事項並に第二回全日本毎日マラソン大会要項に関する件 標記の件に関し本県体育課から別紙の通り通知がありましたので、市町村、青年団体並に各学校におかれては新憲法実施慶祝記念のた め及び体育振興のため特別の御協力と御参加を願い度い 別紙 ○憲法実施記念郡市対抗駅伝競走第一回打合事項 一 期日 昭和二十二年五月四日(日)晴雨にかかはらず挙行 一 集合 午前八時三〇分 出発正九時 一 走路 川崎市役所前より湯河原小学校前まで 一 仲継所 大体実施要項の通りですが、藤沢市に於ては藤沢市役所前(郵便局前)に変更いたします 一 協議事項 1 応援について a 自動車は川崎より小田原迄は可とするも以後は道路隘少のため、応援は遠慮されたい。尚どうしても行かんとの希望あらば全選手通過後行かれたい b 伴走は絶対に不可 2 選手の配置等は各所属チームに於て行はれ度い 3 メムバー交換 二十八日午后一時 県庁体育課 出席者 監督・主将 4 宿泊希望の者は二十八日迄に体育課迄申込れ度し ○第二回 全日本毎日マラソン大会要項 主催(毎日新聞社・日本陸上競技連盟) 一 期日 五月十八日(日曜日) 一 コース 大阪市東区御堂筋東別院毎日運動場 省線池田駅 (兵庫県)間往復 二十六マイル四分の一(オリムピック正式距離) 一 参加資格 年齢職業を問はず 但し日本に国籍を有するもの 一 参加選手 各道府県陸上競技協会より推薦されたる代表選手二名(本県に於ては一応希望者をたしかめ、それにより詮衡する) 一 競技方法 日本陸上競技連盟の規約による 一 参加章 参加全選手に記念メダルを授与す 一 表彰 優勝者に優勝楯を授与 なほ十位までを入賞とす 一 旅費宿泊費 代表選手の旅費(都道府県庁所在地より大阪まで)は片道支給三等 宿泊費として百円主催者側にて補助す なお、宿舎は主催者側にて斡旋するが主食は各自携行のこと 一 集合 五月十七日正午迄に毎日新聞社(大阪本社)三階講堂 一 申込連絡 神奈川県庁内体育課宛 五月五日迄 (平塚市立第二青年学校平塚市第二実務女学校「往復文書綴」(昭和二十二年)平塚市教育研究所蔵) 一八〇 憲法施行記念植林の件通知 昭和二十二年五日八日 中地方事務所長 市町村長 各団体長小学校長 中学校長 青年学校長殿 一 新憲法施行記念植林について 標記の事業について県林務課で苗木の斡旋をすることになつたので希望各市町村、各種団体、各学校は左記の様式により夫々申込書類を作製、五月十五日迄に当所学務課に御提出願い度い 左記 (様式) 備考 苗木代は一・五円―三円程度で若干の補助ある見込 二 新憲法施行記念週間中の実施事項の報告を各市町村単位にとりまとめ五月十五日迄に二部当所学務課に御提出願い度い (平塚市立第二青年学校平塚市第二実務女学校「往復文書綴」(昭和二十二年)平塚市教育研究所蔵) 一八一 憲法普及会神奈川県支部主催憲法精神普及徹底指導者講習会の件通知 中学第一八一号 昭和二十二年五月二十一日 中地方事務所長 町村長中学校長青年学校長小学校長殿 憲法普及会県支部主催新憲法精神普及徹底指導者講習会開催について 今回新憲法精神を各町村の町内部落に迄浸透せしむる必要を痛感いたしこれが指導者を養成するため標記講習会を左記要項により実施致すことゝなりましたので適格者御推薦の上受講せしめらるゝ様御配意願い度い 追つて 新制中学、青年学校、小学校及青年団、婦人会の出席者の氏名を当所学務課宛五月末日限り報告願い度い 記 指導者講習会要項 一 趣旨 県民一般に対し新憲法精神を普及徹底せしめるため指導者を養成するにある 二 受講者 県下各中等新制中学、青年学校、小学校の各学校より一、二名各青年団婦人会その他団体幹部一名以上とする 三 開催場所並に日程 (平塚市立第二青年学校平塚市第二実務女学校「往復文書綴」(昭和二十二年)平塚市教育研究所蔵) 一八二 憲法普及夏季大学講座の件通知 中学号外 昭和二十二年七月八日 中地方事務所長 小、中、青校長殿 憲法普及夏季大学講座開設について 今回新憲法の精神を更に一段と県民の各層に透徹せしめ且日常生活に之を具現せしめる必要を痛感する処から今般文部省憲法普及会神奈川県及普及会本県支部の共同主催の下に小学校、青年学校、新制中学校の各社会科担任教職員を対象とする憲法普及夏季大学講座を別記要項の通り開設致すことに相成りました、就きましては御多用中誠に恐縮ですが貴校に於ける受講者決定の上実施要項の受講者名簿を御提出下され度 憲法普及夏季大学講座開設に就いて 一 趣旨 新憲法の精神を更に一層県民の各層に透徹させる必要の有る事は申すまでもないところで有る仍て新日本の次代を創建する青少年学徒の直接指導の任に当る小学校、青年学校及新制中学校の社会科担任教職員に対し夏季休暇を活用して左記要項に依り新憲法に関し更に高次の透徹した識見を啓培せしめ併て社会教育第一線の指導陣の強化充実をはからうとするものである 二 実施要領 1 主催 憲法普及会 文部省 神奈川県 憲法普及会神奈川支部 2 名称 憲法普及夏季大学講座 3 開催期間 自七月二十六日 至七月二十八日 三日間 4 会場 茅ケ崎第一小学校講堂 5 受講者 小学校、青年学校、新制中学校、各校一名宛(社会科担当教職員)とする約七百名 但、成田町に開催の中央講習会に於ける受講者中の希望者は此の外に受講するも支障ない 6 日程及講師等 月日時刻要項講師 第一日 (土)七月二十六日自午前八・三〇至〃后三・三〇午前近代政治思想比較憲法論 質疑午后新憲法概説(主権)質疑東京帝大教授 堀豊彦 第二日 (日)七月二十七日自午前八・三〇至〃后三・三〇午前新憲法概説 質疑午后仝 前 質疑東京帝大教授 宮沢俊義 第三日 (月)七月二十八日自午前八・三〇至〃后三・三〇午前新憲法特別問題質疑(家族制度 教育経済婦人労働農林問題)午后仝 前 質疑東京帝大教授 川島武宜 備考 都合に依り毎日講義終了后約一時間憲法音頭(舞踊)の指導を実施する予定 7 本講座履修者に対しては修了証書を授与する 8 本講座履修時数は「小学校、新制中学校及幼稚園教員認定講習会実施基準」に依る本県主催の認定講習会の一部(一般課程の三時間分専門課程「中学校社会科」の三時間分従つて中学校社会科の教員ならば六時間分に当る)として認められる 9 三市、七事務所に於ては最小の小、青、新制中学の各校よりの受講者名簿を七月廿日迄に当支部に提出されたい 尚関係私立学校に於ても前項に準じて名簿の提出を煩したい 奉職校職名氏名生年月日 (平塚市立第二青年学校平塚市第二実務女学校「往復文書綴」(昭和二十二年)平塚市教育研究所蔵) 一八三 各種団体の集会運動等届出に関する徹底の件通知 藤教発第一二五号 昭和二十一年四日三十日 藤沢市長金子小一郎 湘南中学校長殿 各種団体ノ集会多衆運動等届出ニ関スル件 標記ノ件ニ関シ昭和二十一年四日二十日付藤庶収第四六六号藤沢警察署長通牒ニ依リ今般各種団体ノ集会多衆運動等ニ関シ連合軍騎兵第一旅団司令部ピンクストン中尉ヨリ別紙ノ通リ指令有之候ニ付イテ爾今各種団体ニシテ集会又ハ多衆運動等ヲ開□セントスル場合ハ二十四時間前ニ同司令部ニ到達シ得□時間的余裕ヲ見越シ左記事項ヲ事務所在地□轄警察署ニ届出シムル様貴職ヨリ周知徹底方御□計ヒ相成度及移牒候 記 一 日時及場所 二 参加予定人員 (写) 訳文 四月十五日午前十時 団体集会ニ就而 各種集会団体行動ニ就而ハ如何ナル行動ニ於テモ左記事項ヲ二十四時間前ニ第一騎兵旅団司令部宛通知ノコト 一 日時及場所 二 参加予定人員 騎兵第一旅団司令部 (湘南中学校「マ司令部指令綴」(昭和二十年)神奈川県立湘南高等学校蔵) 一八四 集会示威運動の届出の件通知 各家庭の皆様へ 集会並に多衆運動の届出について 進駐軍の指令に基く集会並多衆運動の届出につきましては皆様方の御協力に依り当相模原町に関する限り現在まで間違ひなく行われて参りましたが最近県下某所に於ては集会を無届にて行つた結果MPに逮捕され相当な処罰をされた事例もあり地方選挙切迫につれて各地に集会等が数多く開かれるのではないかと思われますので今後共集会並に多衆運動の届出は所定時間(七十二時間)前に警察署に行ひ間違の起らぬ様致される事を切に望みます 集会多衆運動とわ 行列、行進、示威運動、集会、祭典記念行事等多数の人の集ることを云ふので申添へます 昭和二十一年十一月二十五日 相模原町役場 上溝警察署 (大野青年学校「往復文書綴」(昭和四―二十一年)相模原市立図書館蔵) 一八五 軍国主義的政治団体結社等禁止に関する件 通牒 二十一収地第一三一号 昭和二十一年三日一日 地方事務所長 内務部長 湯本町長殿 政党協会其ノ他ノ団体ノ結成ノ禁止等ニ関スル件 昭和二十年勅令第五百四十二号「ポツダム宣言」受諾ニ伴ヒ発スル命令ニ関スル件ニ基ク政党、協会其ノ他ノ団体ノ結成禁止等ニ関シ本月二十三日勅令第百一号ヲ以テ公布相成候処右ハ我国ニ於ケル政治団体ノ性質ヲ一般ニ周知セシメ且秘密的軍国主義的極端ナル国家主義的及反民主主義的結社並ニ団体ノ組織ヲ阻止スルト共ニ個人ノ此ノ種ノ行為ヲ禁圧セントスル趣意ニ外ナラザル趣今般内務次官依命通牒ノ次第モ有之付テハ右ニ伴ヒ解散セシムベキ団体ノ措置並ニ届出ヲ要スル団体ノ取扱等ニ付テハ本月二十三日内務省令第十号ニ依リ左記事項御留意ノ上之ガ実施上万遺憾ナキヲ期セラレ度此段依命及通牒候也 記 一 勅令第二条及第四条第一号(イ)ノ規定ニ依リ指定セラレタル団体ノ資産(帳簿書類及記録ヲ含ム)ハ勅令第三条ノ規定ニ依リ接収保管セラルベキヲ以テ当該団体ノ資産ニ付テハ別途指示アル迄当該資産所在地ヲ管轄スル地方長官ニ於テ善良ナル管理者ノ注意ヲ以テ保管スルモノナルニ付之ニ該当スルモノハ直ニ報告ノコト 二 接収資産ノ保管、管理及処分ニ付テハ必要ニ応ジ特別ノ機構又ハ係ヲ設クル等ノ措置ヲ講ズベキヲ以テ予メ御了知ノコト 三 接収資産ヲ食糧ノ生産其ノ他民生ニ必要ナル用途ニ使用セントスルトキハ事情ヲ具シ内務大臣ノ承諾ヲ受クル義ニ付予メ御了知ノコト 四 廃止スベキ団体解散シタルトキハ市町村長ハ速ニ其ノ解散ノ年月日其ノ接収シタル資産ノ保管責任者タルベキ者(住所共)及保管方式ニ付財産目録ヲ附シ知事宛報告スベキコト 五 勅令第一条ノ規定ニ該当スル団体又ハ個人若集団ニ対スル取締ニ遺憾ナキヲ期スルト共ニ勅令第四条ノ規定ニ該当スル政党、協会其ノ他ノ団体ハ勅令第一条第一項ノ団体ト看做シ其ノ結成ヲ禁止セラレタルヲ以テ常ニ管内ノ査察ヲ怠ラズ取締上遺憾ナキヲ期スルコト 六 政党、協会其ノ他ノ団体ニシテ其ノ目的及行為ガ勅令第五条第一項各号ノ一ニ該当スルモノニアリテハ同条第二項ノ規定ニ依リ届出ヲ為スニ非ザレバ結成スルコトヲ得ザルヲ以テ右該当ノ団体等ニ付テハ其ノ主幹者ヲシテ別記様式ニ依ル届出ヲ為サシムルコト 七 市町村長ハ勅令第五条第二項ノ規定ニ依ル届出アリタル場合ハ其ノ記載ニ依リ勅令第一条第一項及第四条ノ規定ニ該当セザルヤ否ヤヲ確認シタル上之ヲ受理シ内務省令第十号第一条ノ規定ニ依リ届書ノ写三通ヲ作成シ知事ニ提出スルコト 八 地方長官前項ノ届書写ヲ受理シタルトキハ其ノ内容ヲ審査シ勅令第一条第一項及第四条ノ各号ニ該当スルヤ否ヤノ意見ヲ附シ内務大臣ニ進達スベキ義ニ付予メ御了知ノコト 九 市町村長及地方長官ハ勅令第五条第二項ノ届書縦覧ノ設備ヲ為スコト 一〇 本件施行ニ関シ取締ヲ除ク一般ノ事務ハ内務部ニ於テ之ヲ担当スベキニ付御了知ノコト 一一 廃止セラルベキ団体ハ本月二十五日内務省告示第十九、二十号ヲ以テ指定セラレタルニ付御了知ノコト 一二 既存ノ政党、協会其ノ他ノ団体等ハ勅令公布後二十日以内ニ届出ヲ要スルヲ以テ之等ノ団体等ニ対シテハ個別ニ届出ニ関シ指示スルコト 一三 政党等ノ今次総選挙ニ当リ候補者ヲ推薦スル団体ニアリテハ届出ヲ為スニ非ザレバ推薦行為ヲ為スヲ得ザルヲ以テ此ノ際至急届出ヲ為サシムル様特段ノ取計ヲナシ過誤ナキヲ期スルコト 一四 届出書中ニ記載ヲ要スル「主ナル財政的援助者」ノ項中其ノ金額ハ総計千円以上ニ付キ記載セシムルコト 一五 連合国総司令部ヨリ要請アリタルヲ以テ特ニ政党ニ対スル寄附者ニ付テハ前項ニ依リ調査ノ上至急報告ノコト 内務省告示第十九号 昭和二十一年勅令第百一号(昭和二十年勅令第五百四十二号「ポツダム」宣言ノ受諾ニ伴ヒ発スル命令ニ関スル件ニ基ク政党、協会其ノ他ノ団体ノ結成ノ禁止等ニ関スル件)第二条ノ規定ニ依リ左ノ団体ヲ指定ス 昭和二十一年二月二十五日 内務大臣 三土忠造 東亜連盟(東亜連盟同志会及東亜連盟協会ヲ意味ス) 大東亜協会、勤皇護国会、大化会、玄洋社、大日本勤皇会、勤皇維新同盟、日本思想研究会、青年亜細亜同盟、東亜思想研究所、政教社、聖戦完勝会、全日本国民特攻隊総本部、皇国同志会、東亜協会亜細亜大陸協会、興亜運動同志会、同仁会、振東塾、聖明塾 (以下略) 内務省告示第二十号 昭和二十一年勅令第百一号(1)第四条ノ規定ニ依リ左ノ団体ヲ指定ス 昭和二十一年二月二十五日 内務大臣 三土忠造 大日本一新会 (川崎、横浜) 大日本赤誠会(大日本青年党ヲ含ム) (横浜、平塚、横須賀、浦賀、中区、愛甲、川崎、磯子、 南区、中) 国際反共連盟(仁愛会) 尊攘同志会 (中区) 東方同志会 (横浜) やまとむすび (横浜、川崎) 明倫会 (横浜、戸部) 大日本興亜同盟、大日本生産党、大東塾、鶴鳴荘、建国会、黒龍会国際政経学会、国粋大衆党、国体擁護連合会、瑞穂倶楽部、天行会東方会、時局協議会、言論報国会、全日本青年倶楽部、大東亜青年同盟、国粋同盟、天関打開期成会、大日本皇通会、愛国社、皇民実践協議会、勤皇まことむすび、大日本勤皇同志会、御楯塾、同策社大日本経国連盟、世界皇化会、アジア青年社 (以下略) (湯本町役場「庶務書類」(昭和二十一年)箱根町役場所蔵) 一八六 軍国主義的政治団体結社等の禁止に関する調査の件通知 昭和廿一年六月廿九日 足柄下地方事務所長 殿 各種政治団体結社等の禁止に関する件 昭和廿一年勅令第百一号に基く標記の件に関する件、マ司令部に報告の必要があるので左記に依り至急に御調査の上御報告願ひたい 記 一 解散せる各種団体の昭和十二年七月七日以降解散当時迄の役員の地位にあつた人物の氏名住所及び地位を左記様式に依り迅速に提出されたい 本書類はマ司令部で公文書とされる 尚且完全な人名録をも提出されたい 解散団体の構成員調 一 役員 二 構成員人名録 備考 一 解散団体とは勅令第百一号第五条の二、第七条第二項の規定にして大政翼賛会、翼賛政治会及び大日本政治会並にこれ等の団体の関係団体である即ち町村では大体大政翼賛会の町村支部、翼賛壮年団、大日本婦人会の分会等である (仙石原村役場「庶務書類」(昭和二十一年)箱根町役場蔵) 一八七 足柄上郡仙石原村の軍国主義的政治団体結社等解散状況報告 号外 昭和二十一年七月八日 仙石原村長石村喜作 足柄下地方事務所長殿 各種政治団体結社等の禁止に関する件 昭和二十一年勅令第百一号に基く解散団体の構成員調の件 別紙之通取調報告致します 解散団体左記の通 一 大政翼賛会仙石原村支部 一 仙石原村翼賛壮年団 一 仙石原村青少年団 一 大日本婦人会仙石原村支部 大政翼賛会仙石原村支部 一 役員 三十一名 一 構成員人名録 全村組織ノ方式ニ付人名省略 仙石原村翼賛壮年団 一 役員 三十五名 一 構成員人名録 四十三名 仙石原村青少年団 一 役員 二名 一 構成員人名録 仙石原村青年団 別紙之通 仙石原村女子青年団 仝 仙石原村少年団 仝 〔別紙〕 仙石原青年団 一 役員 十三名 一 構成員人名録 十九名 仙石原村女子青年団 一 役員 二十一名 一 構成員人名録 六十二名 仙石原村少年団 一 役員 三名 一 構成員人名録 合計二四九名 大日本婦人会仙石原村支部 一 役員 五十七名 一 構成員人名録 二六九名 〔別紙〕 神奈川県足柄下郡仙石原村国民学校少年団長(印) 一 役職員 団長 一名 副団長 一名 一 構成員 初等科第三学年 五二名 初等科第四学年 五七名 初等科第五学年 四四名 初等科第六学年 四三名 高等科第一学年 三四名 高等科第二学年 一九名 (仙石原村役場「庶務書類」(昭和二十一年)箱根町役場蔵) 〔注〕役員、構成員の氏名は省略し、総計のみを掲載した。 一八八 政治団体の結成変更届等の励行に関する指導の件通牒 二三中総収第一一四〇号 昭和二十三年十二月九日 中地方事務所長 各町村長殿 結成変更届等の励行に関する指導について 政治団体の届出の励行について既に数次に亘つて指示した通りで之が励行に特別の御配慮を煩している処であるが団体主幹者或は事務担当者の法令に対する不慣、主旨の不徹底等から結成届変更届解散届及び財政的援助者に関する届出が適正に行われていない団体も尠くないようである。殊に去る四月結成発足した民主自由党に所属すべき旧日本自由党の支部にして解散結成等の届出をしないで政治活動を行つている団体も多数あるように認められ国会の解散総選挙の施行も予想せらるゝ折柄このような無届団体の政治活動は厳に禁止せらるべきである。 従つて各関係において此の際重ねて届出団体の責任者及事務担当者に対して法令の趣旨及び届出の重要性を充分説明し之が励行方を懇切に指導せられたい。 右については今般法務庁民事局長からも通牒があつたから特に御留意願いたい、尚御不明の点は当所へ問合せられたく念の為。 法務庁民事局民事甲第三五六七号 昭和二十三年十一月十二日 法務庁民事局長 都道府県知事御中 結成変更届等の励行に関する指導について 政治団体の届出の励行について既に数次に亘つて指示通牒しているので各都道府県におかれても従来各種の手段を講じて之が励行に配慮せられていることゝ思ふが団体主幹者或は事務担当者の法令に対する不如、無関心届出事務の煩瑣又は関係官公庁の指導の不徹底等から結成届、変更届、解散届及び財政的援助者に関する届出が適正に行われていない団体も尠くないようである。 殊に去る四月結成発足した民主自由党に所属すべき旧日本自由党の支部にして解散、結成若しくは名称変更等の届出をしないで政治活動を行つている団体も多数あるように認められ国会の解散総選挙の施行も予想せらるゝ折柄このような無届団体の政治活動は厳に禁止せらるべきである。 以上の点に鑑み最近本庁においては五大政党の各届出責任者を招致して届出の励行につき勧告し各支部に対してもその旨を徹底する措置をとるやう依頼した次第である。 従つて各関係係において此の際重ねて届出団体の責任者及び事務担当者に対して法令の趣旨及び届出の重要性を充分に説明し之が励行方を懇切に指導せられたい。 なほ本庁においては最近の政治情勢に備えて五大政党及び日本自由党支部の実体を把握したいので左記により報告相成りたい。 一 五大政党(民自、社会、民主、国協、共産党) 支部数 名称 主幹者 構成員数 結成年 月 日 二 日本自由党(世耕弘一氏首班) 支部数 名称 主幹者 構成員数 結成年 月 日 三 報告日時 昭和二十三年十月三十一日現在によること (成瀬村役場「庶務書類」(昭和二十三年)伊勢原市役所蔵) 一八九 川崎市集会集団行進および集団示威運動に関する条例の設定理由と条例(一―二) ㈠ (設定理由) 本市においては集会、集団行進および集団示威運動は従来これを直接対象として取扱うべき法令がなかつたため、専ら関係方面の指令にもとづき取扱を実施し来たのであるが、最近各地において無統制な集会、集団示威運動などのため公共の安寧を害する例多くこれが適正なる取締りは現下内外の情勢に鑑み、治安の確保上喫緊の要務とされているところであるがこのたび関係方面よりの要請もあり本条例の制定に因り集会、集団行進および集団示威運動等によつて起り得べき公共の危害を防止し安寧を保持することを目的として本条例の制定方を提案するものであります。 ㈡ 集会、集団行進及び集団示威運動に関する条例 第一条 道路、その他公共の場所で集会若しくは集団行進を行おうとするとき、又は場所のいかんを問わず集団示威運動を行おうとするときは公安委員会の許可を受けなければならない。 但し、次の各号に該当する場合はこの限りでない。 一 学生、生徒その他の遠足、修学旅行、体育、競技 二 通常の冠婚葬祭等の慣例による行事 第二条 前条の規定による許可の申請は、主催者である個人又は団体の代表者(以下主催者という)から集会、集団行進又は集団示威運動を行う日時の七十二時間前までに次の事項を記載した許可申請書三通を開催地を管轄する警察署を経由して提出しなければならない。 一 主催者の住所、氏名 二 前号の主催者が川崎市以外に居住するときは、川崎市内の連絡責任者の住所、氏名 三 集会、集団行進又は集団示威運動の日時 四 集会、集団行進又は集団示威運動の進路、場所及びその略図 五 参加予定団体名及びその代表者の住所、氏名 六 参加予定人員 七 集会、集団行進又は集団示威運動の目的及び名称 第三条 公安委員会は、前条の規定による申請があつたときは、集会、集団行進又は集団示威運動の実施が公共の安寧を保持する上に直接危険を及ぼすと明らかに認められる場合のほかはこれを許可しなければならない。 但し次の各号に関し必要な条件をつけることができる。 一 公官庁の事務の妨害防止に関する事項 二 じゆう器、きよう器その他の危険物携帯の制限等危害防止に関する事項 三 交通秩序維持に関する事項 四 集会、集団行進又は集団示威運動の秩序保持に関する事項 五 夜間の静ひつ保持に関する事項 六 公共の秩序又は公衆の衛生を保持するためやむを得ない場合の進路、場所又は日時の変更に関する事項 2 公安委員会は、前項の許可をしたときは、申請書の一通にその旨を記入し、特別の事由のない限り集会、集団行進又は集団示威運動を行う日時の二十四時間前までに、主催者又は連絡責任者に交付しなければならない。 3 公安委員会は、前二項の規定にかかわらず、公共の安寧を保持するために緊急の必要があると明らかに認められるに至つたときは、その許可を取り消し又は条件を変更することができる。 4 公安委員会は、第一項の規定により不許可の処分をしたとき、又は前項の規定により許可を取り消したときは、その旨を詳細な理由をつけて、すみやかに市議会に報告しなければならない。 第四条 警察長は、第一条の規定、第二条の規定による記載事項、前条第一項但し書の規定による条件又は同条第三項の規定に違反して行われた集会、集団行進又は集団示威運動の参加者に対して、公共の秩序を保持するため、警告を発しその行為を制止しその他の違反行為を是正するにつき必要な限度において所要の処置をとることができる。 第五条 第二条の規定による許可申請書に虚偽の事実を記載してこれを提出した主催者、及び第一条の規定、第二条の規定による記載事項、第三条第一項但し書の規定による条件又は同条第三項の規定に違反して行われた集会、集団行進又は集団示威運動の主催者、指導者又はせんどう者は、これを一年以下の懲役若しくは禁こ又は五万円以下の罰金に処する。 第六条 この条例の各規定は、第一条に定めた集会、集団行進又は集団示威運動以外に集会を行う権利を禁止し、若しくは制限し、又は集会、政治運動を監督し若しくはプラカード、出版物その他の文書図画を検閲する権限を公安委員会、警察官、警察吏員、警察職員又はその他の市吏員若しくは職員に与えるものと解釈してはならない。 第七条 この条例の各規定は、公務員の選挙に関する法律に矛盾し、又は選挙運動中における政治集会若しくは演説の事前の届出を必要ならしめるものと解釈してはならない。 付則 この条例は、公布の日から施行する。 (川崎市役所「市例規関係書類中」(昭和二十五年)川崎市役所蔵) 第二章 地方行政改革 第一節 県行政 一九〇 地方制度改正にともなう公民啓発運動に関する件通知 内務省発地第二六〇号昭和二十一年十月二日 内務次官 神奈川県知事殿地方制度改正に伴う公民啓発運動について 近く公布施行せられる地方制度関係改正法令は地方自治行政の一段の伸展を策し、改正憲法の実施と共に我国の民主主義化を実現せんとするものであつてその内容も地方自治団体首長の直接選挙、選挙権及被選挙権の拡張、自治行政への住民の直接参加等極めて多岐に亘り我国地方自治制度創設以来の根本的改正である。従つて之が円滑なる施行を確立する為には右法令の施行を直接担当する官公吏等の努力のみでは不充分であつて、全国民が今回の地方制度改正の趣旨を充分理解し、此の精神に基く積極的な協力がなければ、所期の目的を達し得ないから、左記事項留意の上所期の効果を挙ぐるに遺憾なきを期せられたい。 記 一 地方制度改正の趣旨を国民各層に充分徹底せしめること 二 今回の改正の内容が国民の政治的教養の向上に期待するところの大きいのに鑑み、差当り選挙終了後も絶えず国民の政治的教養向上の方途を講ずること 三 本運動は出来得る限り官製的運動であるやうな印象を与へないやう留意しその実施に当つては民間団体、民間有識者、言論報道機関等国民各層の積極的な活動を慫慂して之に対して必要な援助を与へること 四 地方制度改正の実施と共に改正憲法に関してもその啓発宣伝が行はれる筈であるから之と本運動との一体的関係を保持すること 五 選挙に際しては投票の尊重すべき所以を明にすると共に新に選挙権者となるべき者に対する政治教育に付て特段の努力を払ふこと 六 今冬より明春にかけては各種の選挙が連続的に実施せられることになるであろうから予め選挙権者に其の各々の選挙の意義を徹底せしめると共に此等の選挙に関しての公民啓発運動はこれを計画的に行ふこと 七 選挙に関しての啓発運動は選挙期日前尠くも十日以前には一応打切り選挙運動の妨害をしないこと 但しパンフレツトの配布やポスターの貼付等は選挙直前に及ぶも妨げない 八 運動実施の為中央に於て行ふべき事項は客年十二月十二日発地第二三一号内務、文部両次官及情報局次長通牒に準じて行ふ予定であるから地方に於ても右通牒に準じ創意工夫を凝らし地方の実情に適した事項を実施すること (仙石原村役場「庶務書類」(昭和二十一年)箱根町役場蔵) 一九一 公務員の集団欠勤に関する警告書 二十二中総収第一三七三五号 昭和二十二年十一月十四日 中地方事務所長 各町村長殿 官公庁従業員に対する警告書について 標記について政府は十月二十二日別紙の通り官公庁従業員に対する警告書を発表し現状勢下に対処する官公庁従業員の心構へを強く要望し業務の円滑なる遂行を期してゐるので市町村に於ても右警告書の趣旨を徹底せられると共に業務遂行上遺憾なきやうせられたく念のため通知する。 (別紙) 内第二、九九〇号 昭和二十二年十一月一日 内務次官 神奈川県知事殿 官公庁従業員に対する警告書について 政府に於いては十月二十二日別紙の通り官公庁従業員に対する警告書を発表し現状勢下に対処する官公庁従業員の心構へを強く要望し業務の円滑なる遂行を期してゐるから本警告書の趣旨を貴庁部内に徹底するやう特に御配意ありたい。 管下町村へも可然御伝達願ひたい。 官公庁従業員に対する警告書 一 官公庁労働組合員の一部が生活困難に名をかり集団的に欠勤し業務の円滑なる遂行に多大の支障を及ぼすものゝあることは誠に遺憾に堪へない。官公吏の集団的欠勤は官紀を紊乱し経済再建を妨害するのみならづ国民生活に与へる影響の重大性よりしても法規に照らして厳重に処断する方針である。 二 最近一部の組合員が集団的欠勤をなしこれを以つて争議行為にあらづと弁明してゐるが組合側の要求貫徹を支援せんとするものであつて争議行為と断定せざるを得ない。特にかゝる戦術的行為は組合本部の指令に基かない。いわゆるワイルドキヤツトストライキ(山猫争議)と称さるべき極めて悪質なる争議行為である。 従つてかゝる不当なる行為者に対しては当然給料の差引をなすのは勿論情勢によつてはその欠勤者並に共謀者に対しては業務妨害又は関係事業法違反等によつて断乎処分する方針である。 三 然しながら組合員中には右の事情をわきまへない者又は労働組合運動本来の使命を理解せづ一部分子の言動に盲従してゐるものゝあることを認め今日までの者は一応寛容なる処置に止める方針である。 四 官公庁労働組合の要求については目下中央労働委員会に於いて調停手続中でありその公正なる裁断のために政府、組合側共に誠意を尽くして平和的解決に努力すべきである。特に労働組合側に於ては官公吏の国民に対する職責の重大なるに鑑み冷静なる態度を保持し規律ある統制下に行動すべきである。かくてこそ健全なる労働組合の発達が期待されるのである。中央労働委員会の調停進行と共に一部に於いては諸種の戦術的行為が考慮されてゐると伝へられてゐるが政府は今後これらの行為に対して断乎たる態度を以つて臨むことを警告しその猛省を促すものである。 (大山町役場「庶務書類」(昭和二十一年)伊勢原市役所蔵) 一九二 自治体警察署警察官募集の件通知 二十二警秘発第三五八号の内 昭和二十二年十二月二十四日 神奈川県警察部長 県下各市町村長殿 拝啓厳寒の砌り益々御健勝の段御同慶の次第であります。就而御承知の通り先般警察法が公布されて警察制度が改正となり国家地方警察と自治体警察とに分れることゝなりますので、それに要する警察官二、六四二名を本県に於て来年四月末日迄に採用せねばならぬことゝ相成りましたのであります。その新規採用者の殆んど全部が自治体警察に配置される予定でありまして連合軍の指令もあり万難を排して絶対確保せねばならぬので左の点につき特段の御協力を御願ひ申し上げます。 一 市役所、区役所、町村役場に別添の立看板を掲示されたい 二 横浜市におきましては特に市電外部に警察官大募集の看板をお願ひしたい 三 本籍照会が各区役所、町村に行きましたら迅速に御回答下さる様関係者に御指示願ひたい 四 各種各様の集会、その他の機会に警察官を志願する様御勧誘をお願ひしたい 〔別添〕 拝啓 今年も最早数日に押し詰り公私共に御忙しいことでせう。 今次警察制度改革に伴ひ本県に於ても二千六百四十二人の警察官を緊急増員し明年四月末日迄に採用を完了し、同年六月末日迄に教養訓練をして治安維持の態勢強化を図るため改組に伴ふ要員に充つることになりました。 御承知の通り御互の町村は御互が護ることです。治安が乱れて平和日本の建設はありません。 当署に於ても今回の大増員に対し四十五名の責任割当があり全署員を動員して募集に当つて居りますが何卒御協力下され。人の生命財産の保護のため愛郷の精神に燃ゆる前途有望の青年を奮つて御推薦下さる様左記御了承の上御願申上ます。 昭和二十二年十二月二十四日 藤井伊勢原警察署長 町村長殿 青年団長殿 左記 一 応募資格 1 年齢 二十歳以上三十歳未満但し優秀なる者は三十歳以上の者も採用す 2 学力 中等学校卒業程度なるも学歴問はず 3 体格 身長五尺二寸以上 体重十三貫以上 4 条件 品行方正、身体強健、思想堅実、身許確実なるもの 二 試験 毎日午前九時より伊勢原警察署で行つて居ります 其の他 いろ〳〵の特典がありますから詳細は御問合せ下さい (成瀬村役場「庶務書類」(昭和二十三年)伊勢原市役所蔵) 一九三 神奈川県自治体警察署設置町村および町村長名 神奈川県自治警察署設置町村及町村長名 (座間町役場「警察に関する綴」(昭和二十三年)座間市教育委員会蔵) 一九四 神奈川県自治体警察町村連絡協議会規約 神奈川県自治体警察町村連絡協議会規約按 第一条 本会は、神奈川県自治体警察町村連絡協議会と称し、県下自治体警察設置の町村長を以て組織する。 第二条 本会は、事務所を神奈川県町村会事務局に置く。 第三条 本会は、自治体警察に関する相互の連絡協調を図るを以て目的とする。 第四条 本会は、前条の目的を達成するため左の事項を実施する。 一 自治体警察に関する研究 二 自治体警察相互の連絡調整 三 その他目的達成上必要な事項 第五条 本会の会議は、総会会長に於て必要と認めた場合に之を開く。 第六条 会議に於ける議長の職務は会長がこれを行ふ。会長事故ある場合は副会長がその職務を代理し、会長、副会長ともに事故あるときは出席者中より仮議長を選挙し、その者をして議長の職務を行わせる。 第七条 本会に、会長一名、副会長一名、幹事一名を置く。会長、副会長は総会に於て会員中よりこれを互選する。 幹事は神奈川県町村会事務局長を以てこれに充てる。 会長、副会長の任期は二年とする。 第八条 本会に顧問及び相談役を置くことが出来る。顧問及び相談役は会長の推薦により総会の決議を経てこれを委嘱する。 第九条 本会に必要なる経費は、会費及び補助金、寄附金その他の収入を以てこれを支弁する。 第十条 この規約は、総会の議決を経なければ変更することができない。 第十一条 この規約に規定せざる事項は、総会の議決を経なければならない。 (附則)この規約は昭和二十三年 月 日からこれを施行する。 (座間町役場「警察に関する綴」(昭和二十三年)座間市教育委員会蔵) 一九五 自治体警察町村連絡協議会(仮称)発足打合会の件通知 拝啓秋晴快適の候となりました。各位には愈々御清勝に亘らせれられ公務に忙殺され居ることゝ存じます。 陳者先般自治警察署の設置となりその運営に当り各独自の立場に於て運営され他の自治警察町村との連絡に欠如致し何にかと不便を感じて居る次第で御座いますが此の点について他の府県でも不便を感じ連絡調整の為め自治警察町村連絡協議会とか連盟とか結成致して相互の連絡協調を図つて居る向もあり本県内にても結成の必要な話しを仄聞致して居るような次第であります。 ついては本県内の自治警察町村の連絡協議会(仮称)設置について各位と御相談致したいと存じ僣越ではありますが左記により御打合せ致し御意見拝聴の上善処致し度く此の段御案内申上ぐる次第で万障御差繰り合せ御出席下さるよう御願い致します。 記 一 日時 昭和二十三年十月十三日 午后一時 二 場所 県庁第三議員控室 昭和二十三年十月五日 三浦郡三崎町長 杉崎定治 高座郡相模原町長 小林与次右エ門 中郡大磯町長 橋本実斐 高座郡座間町長殿 (座間町役場「警察に関する綴」(昭和二十三年)座間市教育委員会蔵) 一九六 自治体警察事務再配分に関する意見書提出依頼の件および中郡伊勢原町の所見 昭和二十六年一月十二日 神奈川県自治体警察町村連合会 会長 小林与次右エ門(印) 伊勢原町長殿 意見書提出依頼の件 今回全国町村会より別紙の如き自治体警察に関する意見書提出方依頼がありましたので御記入の上本会まで御届け下されたく御願い申上げます。 〔別紙〕 昭和二十五年十二月二十日 全国町村会長 白鳥義三郎 自治体警察設置各町村長殿 自治体警察事務再配分に関する意見提出依頼の件 既に御承知の通り、以前より地方自治拡充強化の一環として又大きい問題として行政事務再配分の問題が政府並に関係各方面で検討されており、近く、地方行政調査委員会議からはこれに関する勧告もなされますが、本会もさきに第一次試案を政府並に関係当局へ提出要望した次第であります。然るに唯一町村の自治体警察事務についてのみは、地方自治の本旨とか、経費、能力、能率等の諸点で町村に設置すべきか否かについて意見の一致を見ることが出来ずに未解決のまゝとなつていますので、本会としては早急に本問題に関する意見をとりまとめて関係当局に提案要望しなければなりません。 そこで、過般の本会の政調会、常任理事会の決定に従ひ、全国の警察設置町村に改めて本問題に関する御意見を承つて、これを本問題解決の資と致したいと考へます。 ついては、御多忙中恐縮ながら別紙調査表に記入要領御熟読の上、適宜御記入下さいまして、至急貴県(都道府)町村会へ御届け下さいますよう、此段宜敷く御願ひ申上げます。 自治体警察事務再配分に関する意見調査表記入要領 一 ㈠乃至㈥の各案中最善と考へる案一つを選んで、その下の可の字を○印で囲むこと。 二 右最善案を可とする理由を記入のこと。 三 残りの他の案を否とする理由についても記入のこと。 四 ㈠乃至㈥の各案以外に適切最良なる案があれば記入のこと。 五 人事交流等の意見欄についても適宜記入のこと。 六 調査町村の人口数、町村名、所在地名を記入のこと。 自治体警察事務再配分に関する意見調査表 (伊勢原町役場「庶務書類」(昭和二十六年)伊勢原市役所蔵) 一九七 高座郡座間町警察職員の宣誓教育訓練礼式および服装に関する規則 座間町規則第四号 座間町警察職員の宣誓、教育訓練、礼式及び服制に関する規則 警察法第五十条の第二項に基き座間町警察職員の宣誓、教育訓練、礼式及び服制に関する規則を次の通り定める。 第一条 座間町警察職員の宣誓、教育訓練、礼式及び服制に関しては当分の間この規則に定めあるを除く外なお神奈川県の例に